基材のパターニング方法
金属材料をレセプター上に形成する方法は、レセプター近傍にドナー要素を置く工程であって、ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、熱転写層は、触媒物質を備え、かつドナー要素の熱転写層は、レセプターの表面近傍に置かれる工程、ドナー要素からレセプターへと熱転写層の少なくとも一部を熱転写する工程、及び触媒物質上で金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター上に無電解的に堆積させる工程、からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材上への金属材料の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、高解像度の構造を形成することは、依然として製造工程の進歩における目標である。このような工程における代表的な用途は、プリント基板(PWB)のための導電性の配線である。無電解メッキは、このような構造の作製のために使用されるメッキ法である。無電解メッキの化学及びプロセスは、かなり依然から確立されており、一般的に市販されている。しかしながら、最終的に無電解メッキプロセスを施す基材へ触媒物質を選択的に適用するという点での進歩が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
金属材料をレセプター上に形成する方法は、レセプター近傍にドナー要素を置く工程であって、ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、熱転写層は、触媒物質を備え、かつドナー要素の熱転写層は、レセプターの表面近傍に置かれる工程、ドナー要素からレセプターへと熱転写層の少なくとも一部を熱転写する工程、及び触媒物質上で金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター上に無電解的に堆積する工程、からなる。
【0004】
レセプター基材;レセプター基材に付着可能である、パターニングされた第1層;触媒物質を含むパターニングされた第2層;及びパターニングされた第1層及びパターニングされた第2層と同一パターンを有する、無電解的に堆積した金属材料、をこの順番で備え、ここで、パターニングされた第1層及びパターニングされた第2層は、ドナー要素からレセプター基材へと熱転写され、かつレセプター基材上で見出されるそれらの順番にてレセプター基材上に始めから形成されている場合、第1層及び第2層は不相溶性である、物品。
【0005】
熱転写ドナー要素は、ドナー基材、光熱変換層、及び触媒物質を含む熱転写層の順番でそれらを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図1b】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図1c】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図1d】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図2a】ドナー基材、光熱変換(LTHC)層、中間層、及びレセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図2b】ドナー基材、光熱変換(LTHC)層、中間層、及びレセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図2c】ドナー基材、光熱変換(LTHC)層、中間層、及びレセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図3a】レセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図3b】レセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図3c】レセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図4】パターニングされた金属材料の代表的形成方法。
【図5】パターニングされた金属材料の代表的形成方法。
【図6】パターニングされた金属材料の代表的形成方法。
【図7】サンプルの顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で述べるもの以外の実施形態も検討されるものであり、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施可能である点が理解されるべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0008】
本発明で使用する全ての科学用語及び専門用語は、特に指示がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書にて提供される定義は、本明細書でしばしば使用される特定の用語の理解を促進しようとするものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0009】
特に明記しない限り、本明細書及び書類名特許請求の範囲で用いられる特徴的な大きさ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されることを理解されたい。したがって、特に記載のない限り、前述の明細書及び添付の請求の範囲に記載されている数のパラメータは、本明細書で開示する教示を利用する当業者が得ようと試みる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0010】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5)並びにその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を含む。本明細書及び添付特許請求の範囲内にて使用される場合、用語「又は」とは、別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0012】
レセプター表面近傍にドナー要素を置く工程であって、ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、熱転写層は、触媒物質を備え、かつドナー要素の熱転写層は、レセプター表面の近傍に置かれる工程、ドナー要素からレセプター表面へと熱転写層の少なくとも一部を熱転写する工程、及び触媒物質上で金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター表面上に無電解的に堆積させる工程からなる、金属材料をレセプター表面上に形成する方法が、本明細書にて開示される。
【0013】
本明細書に開示される方法は、金属の無電解めっきメッキプロセスを提供する。一実施形態では、それは、可溶性形態の堆積金属を還元剤とともに含有する無電解めっき溶液の使用を伴うことができる。可溶性形態の堆積金属は、通常は、イオン種又は無機錯体(即ち、1つ以上の配位子に配位した金属種)である。一般に、プロセスは、コーティングされる被加工物への電流印加を含まない。一般に、プロセスは触媒表面を利用する。触媒表面にて一旦堆積が開始されると、金属ソース溶液の連続還元、それ自体の金属表面によって触媒作用を受けて(したがって、用語「自己触媒」と呼ばれる)、めっきが進行する。本方法の実施形態では、触媒表面は、貴金属シード層などの触媒物質によって、あるいは、貴金属の塩などの触媒前駆体を還元することでこのような層を形成することによって、提供できる。
【0014】
本明細書に開示される方法は、レーザー誘起熱イメージング(LITI)に関する原理及び材料を利用する。LITIドナーフィルム、及びそれらの利用法に関する更なる詳細は、米国特許第6,866,979号、同第6,586,153号、同第6,468,715号、同第6,284,425号、同第6,194,119号、及び同第5,725,989号(それらの全てが、参考として本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。LITIは通常、乾式・デジタルパターニング法であって、その際、薄膜コーティングがドナーからレセプターへと空間を隔てて選択的に転写される。熱エネルギー供給源にさらされるドナー領域は、レセプターへと転写される。
【0015】
ドナー要素100の一例を図1aに示す。代表的ドナー要素100は、ドナー基材102及び熱転写層104を含む。
【0016】
ドナー基材102は、ポリマーフィルムなどの任意の有用な材料から形成できる。ポリマーフィルムの好適な種類の1つは、ポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムである。しかし、特定波長における高い光透過率を含む十分な光学特性(加熱及び転写のために光が使用される場合、光学特性は、それ相応のものであり得る)、並びに特定用途のための十分な機械的安定性及び熱安定性を備えたその他のフィルムを使用することが可能である。ドナー基材102は、少なくとも幾つかの場合では、均一コーティングをその上に形成することができるように平らである。ドナー基材102はまた、典型的には、加熱にもかかわらず、又はドナー要素の隣接層の加熱にもかかわらず、安定状態を保つ材料から選択できる。一実施形態では、ドナー基材の厚さは、0.025mm〜0.15mmの範囲であることができる。一実施形態では、ドナー基材の厚さは、0.05mm〜0.1mmの範囲であることができる。当業者は更に、より厚い又はより薄いドナー基材もまた使用できることを理解するであろう。
【0017】
ドナー要素100はまた、熱転写層104を含む。本明細書で開示したように使用する熱転写層104は、触媒物質を含む。触媒物質としては、触媒部位を表面上に提供して無電解メッキ可能にできる物質、及び無電解メッキプロセスにおいて金属物質の成長を触媒することができる物質が挙げられる。例えば、金属材料の成長を触媒することができる化合物は、還元反応によって活性な触媒物質を形成する。金属材料の成長を触媒することができる物質は、多くの場合、触媒前駆体と称される。一般に、触媒物質は、連続又は不連続薄膜中に、コロイド状分散体(例えば、アドバンスト・ナノ・プロダクツ(Advanced Nano Products)(韓国)から入手可能なもののような金属ナノ粒子をベースにしたナノ粒子又はインク)、及び上述したような触媒前駆体として存在することができる。一実施形態では、触媒物質は、コロイド状分散体を含まない。
【0018】
金属材料の成長を触媒できる物質の例としては、主族の金属、遷移金属、貴金属、希土類金属、及び半金属などの金属が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、VIIIB族元素又はIB族元素を利用できる。特定の金属としては、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、ランタン、ガドリニウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、タリウム、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、金属、又は金属類は非強磁性であり、例えば、銅、金、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム、銀、レニウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、及びスズである。一実施形態では、1種以上の貴金属が利用される。1種以上の金属を含有する物質もまた、触媒物質として使用できる。例えば、遷移金属の塩などの金属の塩又は錯体、例えば、パラジウム、白金、及び銀の塩を利用できる。金属塩は、塩化パラジウムなどの無機物、又は酢酸パラジウム若しくはプロパン酸パラジウムなの有機物であることができる。一実施形態では、アルカン酸塩を利用できる。
【0019】
一実施形態では、上記で例示したような金属などの触媒物質を含む組成物を利用できる。例えば、パラジウム若しくは銀ナノ粒子、又は銅若しくはニッケルナノ粒子などの金属ナノ粒子を含む組成物を利用できる。一実施形態では、熱転写層104は、蒸着パラジウムなどの蒸着金属を含むことができる。
【0020】
触媒物質はまた、金属材料の成長を触媒することができる、本明細書において触媒前駆体として参照される、物質も包含する。一実施形態では、触媒前駆体は、それを活性化状態に置くことによって金属材料の成長を触媒可能にすることができる。一実施形態では、例えば、上記で例示されたような金属を錯体にすることができる有機物質を、触媒前駆体として利用できる。このような実施形態では、活性化条件は、例えば、触媒前駆体を金属含有溶液にさらすことである。一実施形態では、例えば、一旦エネルギー供給源にさらし、金属材料の成長を触媒することができる物質は、触媒前駆体として利用できる。このような実施形態では、活性化条件は、エネルギー供給源にさらすことである。一実施形態では、例えば、一旦イオン交換プロセスを実施し、金属材料の成長を触媒することができる物質は、触媒前駆体として利用できる。このような実施形態では、活性化条件は、例えば触媒前駆体を金属含有溶液にさらすことであり、これによって触媒前駆体中のイオンを置換する。
【0021】
一実施形態では、活性化条件は化学反応であることができる。例えば、Pd2+又はAg2+などの金属イオンを含む触媒前駆体を、Pd2+をPd0へ又はAg2+をAg0還元する溶液へさらすことができる。利用可能な代表的還元剤としては、スズ(Sn2+)、ホルムアルデヒド、ホウ化水素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン水化物、硫酸ヒドラジン、及び中性硫酸ヒドラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
触媒前駆体が還元されて活性触媒が形成される一実施形態では、熱転写層104は触媒前駆体及び還元剤を含むことができる。例えば、熱転写層はPd2+又はAg2+、及び例えばSn2+などの還元剤を含むことができる。これにより、金属材料の成長を触媒する物質(例えば、Pd0又はAg0)を、その場で生成できる。あるいは、熱転写層104は、Sn2+を含むことができ、これは次に例えば、Pd2+又はAg2+の溶液にさらして、Pd0又はAg0を生成し、これが金属材料の成長を触媒する。あるいは、熱転写層104は、触媒前駆体を含む1つの層及び還元剤を含む1つの層を包含できる。例えば、熱転写層は、Sn2+を含むある層及びPd2+又はAg2+を含む別の層を包含できる。したがって、Pd2+又はAg2+からPd0又はAg0それぞれへの還元は、この2つの層を水にさらし、成分を移動させて反応させることにより達成できる。同様にして、2つの別個の工程にて、2つの層をレセプター表面へと転写できる。次に、一旦2つの層が転写されると、反応が生じて触媒が生成される。例えば、反応種が溶解及びマイグレーションすることによって、あるいは熱誘起マイグレーションによって、あるいは溶媒誘起移動度によって、反応が開始される。
【0023】
したがって、Pd2+又はAg2+からPd0又はAg0それぞれへの還元は、この2つの層を水にさらし、成分を移動させて反応させることにより達成できる。同様にして、2つの別個の工程にて、2つの層をレセプター表面へと転写できる。次に、一旦2つの層が転写されると、反応が生じて触媒が生成される。例えば、反応種が溶解及びマイグレーションすることによって、あるいは熱誘起マイグレーションによって、あるいは溶媒誘起移動度によって、反応が開始される。
【0024】
場合によっては、2つの化学的反応性層を多孔質又は膨潤性不活性層によって物理的に分離(反応に必要な時間まで)することが望ましい場合がある。発明者らは、化学的及び/又は物理的バリアとして機能することによって隣接層内での反応種の不完全反応を防止する、「分離層」(例えば、酸化剤及び還元剤、酸及び塩基、など)の使用を考える。分離層の特定の非限定例は、例えば酸官能性アクリル樹脂(例えば、エルバサイト(Elvacite)2776、ルーサイト・インターナショナル社(Lucite International, Inc.)製)、アミノ官能性アクリル樹脂(エルバサイト(Elvacite)4115、ルーサイト・インターナショナル社(Lucite International, Inc.)製)、又はセルロースアセテート又はセルロースアセテートブチレート(両方とも、シグマ・アルドリッチ社(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能)などの水膨潤性ポリマーを含む溶剤溶性ポリマー又はポリマーブレンドである。レーザー熱パターニング工程の前後において、3層転写積層体(例えば、酸化層/分離層/還元剤)をpHがコントロールされた水溶液(分離層を溶解させることなく膨潤させる)にさらすことによって、分離層をまたいだ分子又はイオン輸送が開始される。この輸送によって、2つの予め分離させた層の間で反応が生じる。分離層の多孔性(したがって、分離された層間での反応速度)はまた、その厚さ、架橋密度、又は相形態を変化させることによりコントロールできる。
【0025】
分離層として使用可能な更に別のクラスの物質は、比較的低温にて速やかに昇華又はきれいに分解する小分子(例えば、米国特許第5,756,689号「レーザー誘起物質移動イメージング材料のためのジアゾ化合物(Diazo compounds for laser-induced mass transfer imaging materials)」、同第5,747,217号「無色昇華性化合物を利用するレーザー誘起物質移動イメージング材料及び方法(Laser-induced mass transfer imaging materials and methods utilizing colorless sublimable compounds)」、又は同第5,691,098号「ジアゾ化合物を利用するレーザー誘起物質移動イメージング材料(Laser-Induced mass transfer imaging materials utilizing diazo compounds)」にて記載されているようなもの)である。これらの物質の1種以上を含む分離層をまたいだ分子又はイオン輸送は、レーザー熱パターニング工程の前後において層を段階的に加熱することにより、開始される。この輸送によって、2つの予め分離させた層の間で反応が生じる。分離層の多孔性(したがって、分離された層間での反応速度)はまた、その厚さ又は相形態を変化させることによりコントロールできる。
【0026】
エネルギー供給源にさらすことで触媒前駆体を活性化する一実施形態では、熱転写層104は触媒前駆体を含むことができ、かつ少なくともその一部がレセプターへ転写される前又は後のいずれかにて、エネルギー供給源にさらすことができる。一実施形態では、例えば、一旦エネルギー供給源にさらし、金属材料の成長を触媒することができる物質は、触媒前駆体として利用できる。例えば、酢酸パラジウムは、エキシマレーザからの強烈な紫外線にさらすことで分解し、無電解メッキのための触媒を形成することができる(J.Y.ザン(Zhang)、H.エスロム(Esrom)、I.W.ボイド(Boyd)著、応用表面科学(Applied Surface Science)、96〜98ページ、399巻、1996年)。別の実施例では、アルミナ表面は、エキシマレーザからの強烈な紫外線にさらして無電解触媒として活性化することができる(J.Y.ザン(Zhang)、I.W.ボイド(Boyd)、H.エスロム(Esrom)著、応用表面科学(Applied Surface Science)、109〜110ページ、253巻、1997年)。更に別の実施例では、アセチルアセトン銅は、エキシマレーザからの強烈な紫外線にさらすことで分解し、無電解メッキのための触媒を形成することができる(J.Y.ザン(Zhang)、H.エスロム(Esrom)著、応用表面科学(Applied Surface Science)、54ページ、465巻、1992年)。
【0027】
本明細書にて開示する熱転写層104は、触媒物質を含み、かつその他の物質を任意に含み得る。熱転写層104に含まれてよいその他の物質は、一般に最終物品に含まれるようなもの又は本明細書にて開示された方法を使用して作製されるデバイスである。一実施形態では、熱転写層104は、所望により、熱転写層をレセプター表面に接着させる能力に寄与する及び/又は触媒物質を無電解堆積槽へさらす能力に寄与する別の物質を含む。
【0028】
一実施形態では、熱転写層104は、ポリマーを含むことができる。一実施形態では、多孔質、膨潤性、又はヒドロゲル高分子材料を利用して、触媒物質表面が少なくとも部分的にさらされるのを容易にすることができる。触媒物質表面の曝露は、無電解めっき中にて有用であり得る。一実施形態では、熱転写層104に含まれている任意の他の物質としては、エッチング除去可能あるいは溶解除去可能な物質を挙げることができる。このような材料を利用する場合、金属材料を堆積させる前に、追加のエッチング又は溶解工程を利用できる。
【0029】
一実施形態では、熱転写層104は、レセプター表面への熱転写層104の接着性を向上させる物質を含むことができる。一実施形態では、熱転写層104の接着性に寄与するその他の代替物質は、熱転写層104の別個の層(ドナー基材から最も離れて配置されているので、ドナー要素からレセプターへの転写後に、レセプターと接触する)中に存在できる。例えば、ポリマー結合剤物質が、熱転写層104中に含まれることができる。ポリマー結合剤物質は、紫外線又は熱に対して架橋性であってよく、次に架橋可能であり、熱転写層104がドナー要素からレセプター表面へと転写された後で、接着性を向上してよい。熱転写層中に含まれ得る高分子結合剤の例としては、熱又は放射線にさらすことで、及び/又は適切な化学的硬化剤(例えば、H2O、O2など)を添加することによって架橋可能なものなどの紫外線架橋性物質又は熱架橋性物質が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、放射線硬化性物質を利用できる。好適な物質としては、高分子工業科学百科辞典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、第4巻、350〜390ページ及び418〜449ページ(ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1986年)及び第11巻、186〜212ページ(ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1988年)に列挙されているようなものが挙げられる。
【0030】
一般に、絶縁性及び導電性架橋性ポリマー結合剤物質の両方を、本明細書で利用できる。当業者に一般的に知られているような絶縁性架橋性ポリマーを利用できる。利用可能な絶縁架橋性(crossslinkable)ポリマーの一例としては、アクリレートが挙げられる。当業者に一般的に知られているような導電性架橋性ポリマーを利用できる。導電性架橋性ポリマーの例としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフルオレン、及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
利用可能な架橋性材料の具体例としては、シラン官能化トリアリールアミン、ベルマン(Bellmann)ら、「材料化学(Chem Mater)」(第10巻、1668〜1678ページ、1998年)に開示されているようなペンダントトリアリールアミンを備えたポリ(ノルボルネン)、バイヤール(Bayerl)ら、「高分子・速報(Macromol. Rapid Commun.)」(第20巻、224〜228ページ、1999年)に開示されているようなビス官能化ホール輸送トリアリールアミン、米国特許第6,030,550号に開示されているような各種架橋型導電性ポリアニリン及びその他のポリマー、PCT国際公開特許第97/33193号に開示されている架橋性ポリアリールポリアミン、及び特開平9−255774に開示されているような架橋性トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(その開示は、本明細書に参考として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
熱転写層のこのような一実施形態としては更に、キレート剤(例えば、EDTA)、カップリング剤、金属接着促進剤(例えば、イミダゾール)、コーティング補助剤(例えば、界面活性剤、分散剤など)、又はその他のコーティング添加剤を含む任意の添加剤も挙げられるが、これらに限定するものではない。他の構成成分を添加して、所望の特性又は所望の処理上の利点を提供できる。
【0033】
熱転写層104は、複数の層を任意に含み得る。複数の層を含む熱転写層は、多成分系転写ユニットと称される場合もある。(米国特許第6,194,119号は、多成分系転写ユニットの特定の定義を含まない。)これらの複数層は、有機、無機、有機金属、及び他の材料を用いて形成してよい。転写層は、複数の別個の層を有するものとして記載されかつ図示されるが、複数層が使用される少なくとも幾つかの場合によっては、それぞれの層の少なくとも一部を含む界面領域が存在し得ることが理解されるであろう。これは、例えば、層の混合又は層間での材料の拡散がある場合、転写層への転写前、転写中、又は転写後に生じる可能性がある。その他の場合、個々の層は、転写層への転写前、転写中、又は転写後に、完全に又は部分的に混合されてよい。これは、上述したように分離層の使用によって実施できる。いかなる場合でもこれらの構造は、複数の独立層を含むものとされるが、特に、最終物品の異なった機能が異なる領域にて実施される場合には、複数の独立層を含む。
【0034】
特に層が混合しない場合に多成分系転写ユニットを使用する1つの利点は、熱転写ユニットが作製される際に多成分系転写ユニット内の層の重要な界面特性が生成され、一実施形態では、それが転写中に保持されるということである。
【0035】
熱転写層の一例としては、レセプター上に多層構造の少なくとも一部を形成するために使用される単一又は多成分系転写ユニットが挙げられる。場合によっては、熱転写層は、所望の構造を形成するために必要な全ての層を含んでよい。他の場合、熱転写層は、所望の構造を形成するために必要な全ての層より少なく含んでよく、他の層は1つ以上の他のドナー要素からの転写又は幾つかの他の好適な転写若しくはパターニング方法によって、熱転写層からの転写の前、後、あるいはその両方で、形成される。更に他の場合には、構造物の1つ以上の層は、レセプター表面に設けられてもよく、残りの層(単一又は複数)は、1つ以上のドナー要素の熱転写層に包含される。あるいは、構造物の1つ以上の追加の層は、熱転写層がパターン化された後、レセプター上に転写されてよい。場合によっては、熱転写層を使用して、単一層のみの構造物を形成する。
【0036】
一実施形態では、代表的な熱転写層は、多層構造からなる少なくとも2つの層を形成可能な多成分系転写ユニットを含む。多層構造からなるこれら2つの層は、多くの場合、熱転写層の2つの層に相当する。
【0037】
熱転写層は、熱転写層の外側表面上に配置され、レセプターに対する接着性を促進する任意の接着剤層を含んでよい。接着剤層は、更にその他の機能を提供し得るが、例えば、接着剤層は、レセプターと転写層のその他の層との間で電気を伝導してよく、あるいは転写層をレセプターへ接着するだけであってよい。接着剤層は、例えば、導電性及び非導電性ポリマー、導電性及び非導電性充填ポリマー、並びに/又は導電性及び非導電性分散体を含む熱可塑性ポリマーを使用して形成できる。好適なポリマーの例としては、アクリルポリマー、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリアセチレン、及び本明細書を読んだ当業者に既知のその他の導電性有機材料が挙げられるが、これらに限定されない。好適な導電性分散体の例としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、超微粒粉体酸化インジウムスズ、超微細アンチモン酸化スズを含有するインク(ナノフェーズ・テクノロジーズ社(Nanophase Technologies Corporation)(イリノイ州バーリッジ(Burr Ridge))及びメテック(Metech)(ペンシルベニア州エルバーソン(Elverson))などの会社から市販されている材料)が挙げられる。導電性接着剤層は更に、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPBとしても知られている)などの蒸着又は真空蒸着した有機導電体蒸気を含むことができる。
【0038】
多成分系転写層を含む実施形態は、熱転写層がレセプターへ転写された後、所望の特性を物品に提供する最上部にある層(ドナー基材から最も離れた層であり、転写後にレセプター表面の直上にある)を任意に含み得る。例えば、一実施形態では、触媒含有層以前のレセプター上に導電層を持つことが有利であり得る。このような構造物は、基材から金属材料への電気的接続が望まれる物品の加工において有利であり得る。このような層に含まれ得る物質の例としては、導電性粒子及び導電性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。触媒含有層以前のレセプター上の絶縁層を有することもまた利点であり得る。このような構造物は、基材と金属材料との間の電気絶縁が望まれる物品の加工において有利であり得る。このような層に含まれ得る物質の例としては、絶縁ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
熱転写層が別個の層によって形成される場合もあるが、少なくとも幾つかの実施形態においては、熱転写層が構造内に複数の構成成分及び/又は複数の用途を有する層を含んでもよいことが理解されよう。少なくとも幾つかの実施形態においては、2層以上の別個の層が転写中にともに混合され得る、あるいは一体化されたり反応したりすることもまた理解されよう。いかなる場合でも、これらの層は、混合あるいは一体化されていても、個々の層と称される。例えば、上述したように接着剤層を含む一実施形態では、接着剤層の物質は、別個の層に、幾分混合した2つの個々の層に、あるいは接着剤並びに触媒物質(及び存在するかもしれない他の任意物質)を含む1つの層に、存在してよい。
【0040】
図1bは、ドナー要素120の別の実施形態を示す。この代表的ドナー要素120は、ドナー基材122、熱転写層124を含み、かつ供与基材122と熱転写層124との間に配置された光熱変換(LTHC)層126をも含む。LTHC層126は、光エネルギーを熱エネルギーへと変換する放射線吸収体を含有する。光エネルギーの熱エネルギーへの転換によって、熱転写層124の少なくとも一部がレセプター(図示せず)に転写される。
【0041】
放射線誘導熱転写において、LTHC層126は、発光源からドナー要素中へと放射される光のエネルギーと組み合わされる。一実施形態では、LTHC層は、入射光(例えば、レーザー光線)を吸収して、入射光の少なくとも一部を熱に変換し、ドナー要素からレセプターへと熱転写層を転写することができる放射線吸収体を含む。幾つかの実施形態では、別個のLTHC層は存在しないが、代わりに、ドナー基材又は熱転写層などのドナー要素の別の層中に放射線吸収体が配置される。その他の実施形態では、ドナー要素は、LTHC層を含み、かつ例えばドナー基材又は熱転写層などのドナー要素のその他の層の1つ以上の中に配置される追加の放射線吸収体(単一又は複数)をも含む。更に他の実施形態では、ドナー要素は、LTHC層又は放射線吸収体を含まず、かつドナー要素と接触する発熱体を使用して熱転写層が転写される。
【0042】
典型的には、LTHC層(又はその他の層)中の放射線吸収体は、電磁スペクトルの赤外線、可視線、及び/又は紫外線領域内の光を吸収する。放射線吸収体は通常、選択された結像用放射線を極めて吸収しやすく、0.2〜3の範囲の、そして一実施形態では、0.5〜2の範囲の、結像用放射線波長における光学密度を提供する。好適な放射線吸収性材料には、例えば、染料(例えば、可視染料、紫外線染料、赤外線染料、螢光染料、及び放射線偏光染料)、色素、金属、金属化合物、金属フィルム、及び他の好適な吸収材料などが挙げられる。好適な放射線吸収体の例には、カーボンブラック、金属酸化物、及び金属硫化物を挙げることができる。
【0043】
好適なLTHC層の一例としては、カーボンブラックなどの色素、有機ポリマーなどの結合剤を挙げることができる。別の好適なLTHC層としては、薄膜として形成された金属又は金属/金属酸化物、例えば黒色アルミニウム(即ち、黒い外観を有する部分酸化アルミニウム)を挙げることができる。金属及び金属化合物フィルムが、例えば、スパッタリング及び蒸着などの技術によって形成されてよい。微粒子コーティングは、結合剤及び任意の好適な乾式又は湿式コーティング技術を用いて形成されてよい。
【0044】
放射線吸収体材料を、LTHC層の全体にわたって均一に配置することができ、又は不均一に分散させることができる。例えば、米国特許第6,228,555号に記載されているように(その開示は本発明において参考として含まれる)、非均一LTHC層を使用して、ドナー要素の温度特性をコントロールできる。これにより、より高い転写感度(例えば、意図した転写パターンと実際の転写パターンとの間のより良好な忠実度)を有するドナー要素を得ることができる。
【0045】
LTHC層中にて放射線吸収剤として使用するのに好適な染料は、粒子状形態で存在してもよく、結合剤物質中に溶解されていてもよく、又は少なくとも部分的に結合剤物質中に分散されていてもよい。
【0046】
分散微粒子放射線吸収剤を用いる場合、粒径は、少なくとも幾つかの場合には、約10μm以下であってよく、約1μm以下であってよい。好適な染料としては、スペクトルの赤外線領域を吸収する染料が挙げられる。このような染料類の例は、M.マツオカ(Matsuoka, M.)著、「赤外線吸収材料(Infrared Absorbing Materials)」(プレナム出版社(Plenum Press)、ニューヨーク、1990年)、M.マツオカ(Matsuoka, M.)、「ダイオード・レーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)」(ぶんしん出版社(Bunshin Publishing Co.)、東京、1990年)、米国特許第4,722,583号、同第4,833,124号、同第4,912,083号、同第4,942,141号、同第4,948,776号、同第4,948,778号、同第4,950,639号、同第4,940,640号、同第4,952,552号、同第5,023,229号、同第5,024,990号、同第5,156,938号、同5,286,604号;同第5,340,699号、同第5,351,617号、同第5,360,694号、及び同第5,401,607号、欧州特許第321,923号及び同第568,993号、並びにK.A.ベイロ(Beilo, K. A.)ら著、「化学協会雑誌・化学通信(J. Chem. Soc., Chem. Commun.)」(第1993号、452〜454ページ、1993年)(それらの全てを参考として引用し、本明細書に組み込む)に見い出すことができる。グレンダール・プロテクティブ・テクノロジーズ社(Glendale Protective Technologies, Inc.)(フロリダ州レイクランド(Lakeland))から、CYASORB IR−99、IR−126、及びIR−165の表記にて販売されている赤外線吸収剤を使用してもよい。具体的な染料は、具体的な結合剤及び/又はコーティング溶媒中での溶解度及びそれとの相溶性、並びに吸収の波長範囲などの要因に基づき選択されてよい。
【0047】
色素材料もまた、放射線吸収材としてLTHC層中で用いられてもよい。好適な色素の例としては、フタロシアニン、ニッケルジチオレンに加え、カーボンブラック及びグラファイト、並びに参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,166,024号及び同第5,351,617号に記載されるその他の色素が挙げられる。更に、例えば、ピラゾロンイエロー、ジアニシジンレッド、及びニッケルアゾイエローの銅又はクロム錯体に基づく黒色アゾ色素が有用であり得る。例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、亜鉛、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ジルコニウム、鉄、鉛、及びテルル等の金属酸化物及び硫化物などの無機色素もまた、用いることができる。金属ホウ化物、炭化物、窒化物、炭窒化物、青銅構造酸化物、及び青銅族(例えば、WO2.9)に構造的に関連する酸化物もまた使用されてよい。
【0048】
金属性放射線吸収剤は、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,252,671号に記載されるような粒子形態にて、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,256,506号に開示されるようなフィルム形態のいずれかにて使用されてよい。好適な金属としては、例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、テルル及び亜鉛が挙げられる。
【0049】
示したように、結合剤中に粒子状放射線吸収体を配置してよい。コーティング中の放射線吸収体の重量%は、重量%の計算において溶剤を除き、一般に、1重量%〜30重量%であり、一実施形態では、3重量%〜20重量%であり、かつ別の実施形態では、5重量%〜15重量%であるが、LTHC中で使用する特定の放射線吸収体(単一又は複数)及び結合剤(単一又は複数)に依存する。
【0050】
LTHC層中にて使用するのに好適な結合剤としては、例えば、フェノール樹脂(例えば、ノボラック及びレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、セルロースエーテル及びエステル、ニトロセルロース、及びポリカーボネートなどのフィルム形成ポリマーが挙げられる。好適な結合剤には、重合又は架橋した、又は重合又は架橋可能であるモノマー、オリゴマー、又はポリマーが挙げられてよい。幾つかの実施形態では、結合剤は主として、任意のポリマーと架橋可能なモノマー及び/又はオリゴマーからなるコーティング材を使用して形成される。結合剤中にポリマーを使用する場合、結合剤は、1〜50重量%を、一実施形態では、10〜45重量%のポリマー(重量%を計算する場合、溶剤は除く)を含む。
【0051】
ドナー基材上にコーティングする際に、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを架橋して、LTHCを形成してよい。場合によっては、LTHC層の架橋が低すぎる場合、LTHC層は、熱によって損傷される、及び/又は転写層によりLTHC層の一部分がレセプターに転写される場合がある。
【0052】
少なくとも場合によって、熱可塑性樹脂(例えば、ポリマー)を含有することにより、LTHC層の性能(例えば、転写特性及び/又はコーティング性)が改善される可能性がある。熱可塑性樹脂が、ドナー基材へのLTHC層の接着性を改善する場合があると考えられる。一実施形態では、結合剤は、25〜50重量%(重量パーセントを計算するとき、溶剤を除外する)の熱可塑性樹脂、かつ一実施形態では、30〜45重量%の熱可塑性樹脂を含むが、より低量の熱可塑性樹脂(例えば、1〜15重量%)を使用してよい。典型的に、熱可塑性樹脂は、結合剤のその他の材料と相溶する(即ち、単一相混合の形成)ように選択される。当業者には知られているように、溶解度パラメータを使用して、相溶性を示すことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、9〜13(cal/cm3)1/2、一実施形態では、9.5〜12(cal/cm3)1/2の範囲の溶解度パラメータを有する熱可塑性樹脂が結合剤のために選択される。好適な熱可塑性樹脂の例としては、ポリアクリル酸、スチレン−アクリルポリマー及び樹脂、並びにポリビニルブチラールなどがある。
【0053】
コーティングプロセスを促進するために、界面活性剤及び分散剤などの従来のコーティング補助剤が添加されてよい。当該技術分野において既知の種々のコーティング方法を使用して、LTHC層をドナー基材上にコーティングしてよい。少なくとも場合によっては、高分子又は有機LTHC層を0.05μm〜20μmの厚みで、一実施形態では、0.5μmから10μmの厚みで、かつ一実施形態では、1μm〜7μmの厚みでコーティングされる。少なくとも場合によっては、無機LTHC層を0.001〜10μmの範囲の厚みで、かつ一実施形態では、0.002〜1μmの範囲の厚みまでコーティングされる。
【0054】
ドナー要素130の別の例が図1cに示され、かつドナー基材132、LTHC層136、中間層138、熱転写層134を含む。中間層138は一般に、熱転写層の転写部分の損傷及び汚染を最小化するために、かつ更に熱転写層の転写部分の変形を低減するために、ドナー要素中のLTHC層136と熱転写層134の間に配置される。中間層138はまた、ドナー要素残部への熱転写層の接着性に影響を与える場合がある。典型的には、中間層138は、高い耐熱性を有する。一実施形態では、中間層138は、特に、転写されたイメージを非機能的にする程度にまで、画像形成条件下で変形又は化学分解しない。中間層138は典型的には、転写プロセスの間、LTHC層136に接触したままであり、実質的に熱転写層134とともに転写されない。
【0055】
好適な中間層138としては、ポリマーフィルム、金属層(例えば、蒸着金属層)、無機層(例えば、ゾル/ゲル堆積層及び無機酸化物(例えば、シリカ、チタニア、及びその他の金属酸化物)の蒸着層)、並びに有機/無機複合層が挙げられるが、これらに限定されない。中間層材料として好適な有機材料としては、熱硬化性及び熱可塑性材料の両方が挙げられるが、これらに限定されない。好適な熱硬化性材料には、架橋された又は架橋可能なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ、及びポリウレタンが挙げられるがこれらに限定されない、熱、放射線、又は化学処理によって架橋され得る樹脂が挙げられる。熱硬化性材料は、例えば、熱可塑性前駆体としてLTHC層136上にコーティングされ、続いて架橋された中間層を形成するよう架橋されてよい。
【0056】
適した熱可塑性材料には、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、及びポリイミドなどが挙げられる。これらの熱可塑性有機材料を、従来のコーティング技術(例えば、溶剤コーティング、噴霧コーティング、又は押出しコーティング)によって適用してよい。通常は、中間層に用いるのに好適な熱可塑性材料のガラス転移温度(Tg)は、約25℃以上であり、一実施形態では、50℃以上であり、一実施形態では、100℃以上であり、かつ、別の実施形態では、150℃以上である。中間層は、画像形成放射線波長において、透過性、吸収性、反射性であるか、又はそれらの特定の組み合わせのどちらであってもよい。
【0057】
中間層材料として好適な無機材料には、画像形成光波長において非常に透過性又は反射性である材料を含む、例えば、金属、金属酸化物、金属硫化物、及び無機炭素コーティングが挙げられる。これらの材料は、従来技術(例えば、真空スパッタリング、真空蒸着又はプラズマジェット蒸着)により、光熱変換層に適用されてよい。
【0058】
中間層は、多くの利益をもたらし得る。中間層は、光熱変換層からの材料の転写に対してのバリアであり得る。それはまた、熱的に不安定な材料を転写することができるように、転写層において達する温度を調節できる。中間層の存在はまた、転写された材料の塑性復原を改善し得る。
【0059】
中間層は、例えば、光開始剤、界面活性剤、色素、可塑剤、及びコーティング補助剤を含む添加剤を含んでよい。中間層の厚さは、例えば、中間層の材料、LTHC層の材料、転写層の材料、画像形成放射線の波長、及び熱転写要素が画像形成放射線に暴露される持続時間等の要因に依存してよい。ポリマー中間層の場合、中間層の厚さは、通常、0.05μm〜10μmの範囲であり、一実施形態では、約0.1μm〜4μmであり、一実施形態では、0.5μm〜3μmであり、一実施形態では、0.8μm〜2μmである。無機中間層(例えば、金属又は金属化合物中間層)の場合、中間層の厚さは通常、0.005μm〜10μmの範囲であり、一実施形態では、約0.01μm〜3μmであり、一実施形態では、約0.02μm〜1μmである。
【0060】
図1dに示される、別の好適なドナー要素140は、ドナー基材142、LTHC層146、熱転写層144、中間層148、任意のプライマー層143、及び任意の剥離層145を含む。
【0061】
ドナー要素は、任意の剥離層145を含むことができる。任意の剥離層145は通常、例えば、発光源又は発熱体によってドナー要素を加熱した際の、ドナー要素(例えば、中間層及び/又はLTHC層)の残部からの熱転写層144の剥離を促進する。少なくとも幾つかの場合においては、剥離層は、加熱前にドナー要素残部への熱転写層の接着性を幾分提供する。好適な剥離層としては、導電性及び非導電性熱可塑性ポリマー、導電性及び非導電性充填ポリマー、並びに/又は導電性及び非導電性分散体が挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリマーの例としては、アクリルポリマー、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリアセチレン、及び当業者に既知のその他の導電性有機材料が挙げられる。好適な導電性分散液の例には、カーボンブラック、グラファイト、超微細微粒子インジウムスズ酸化物、超微細アンチモンスズ酸化物、並びにナノフェーズ・テクノロジーズ・コーポレーション(Nanophase Technologies Corporation)(イリノイ州バーリッジ(Burr Ridge))及びメテック(Metech)(ペンシルバニア州エルバーソン(Elverson))等の会社から市販される材料を含有するインクが挙げられる。剥離層のために好適なその他の材料としては、例えば、米国特許第5,747,217号(参考として本明細書に組み込まれている)に記載される材料を含む、昇華性絶縁材料及び昇華性半導体材料(フタロシアニンなど)が挙げられる。
【0062】
任意の剥離層145は、熱転写層の一部であってよく、あるいは別個の層であってよい。剥離層の全部又は一部は、熱転写層とともに転写されてよい。あるいは、ほとんどの又はほぼ全ての剥離層は、熱転写層が転写された際に、ドナー基材とともにとどまることができる。例えば昇華性材料を含む剥離層を用いる幾つかの場合には、転写工程中に剥離層の一部が消失することがある。
【0063】
典型的には、ドナー基材142とLTHC層146を形成するために使用される材料は、LTHC層146とドナー基材142との間の接着性を向上させるように選択する。任意の下塗層143を使用して、後続層コーティング中の均一性を増大させることができ、更には、LTHC層146とドナー基材142との間の層間結合強度を増大させることができる。任意のプライマー層を備えた好適な基材の一例は、テイジン(Teijin Ltd.)(製品番号HPE100、大阪、日本)から入手可能である。
【0064】
材料は、ドナー基材上にコーティングして、ドナー要素の熱転写層を形成できる。次に、ドナーからレセプターへの選択的熱転写によって、熱転写層材料をパターニングできる。ドナー上へのコーティング、続いて選択的転写によるパターニングは、層コーティング工程を層パターニング工程から分離することを意味する。コーティング工程とパターニング工程を分離する利点は、パターニング困難な(可能な限り、従来のパターニング工程を使用する)その他の材料の上部へ又はそれに隣接して、材料をパターニングできることである。例えば、本明細書で記載する方法では、溶解され、攻撃され、浸透され、かつ/又は溶剤の存在下にてその使用目的に対して使用不可能にし、溶剤感受性材料上に直接コーティングされる溶剤コーティング層である、溶剤感受性材料の最上部に溶剤コーティング層をパターニングできる。
【0065】
ドナー要素の熱転写層は、第一材料をドナー上に溶剤コーティングし、コーティングを適切に乾燥させ、次に第1材料をコーティングするために使用した溶剤の影響を受けやすい材料を含む第2の層を堆積させることによって製造できる。第2層への損傷は、第2層のコーティング前に、溶剤の多く又はほとんどを蒸発、さもなければ除去することによって、最小化又は排除できる。ドナー要素からレセプターへ、この多成分系熱転写層を熱転写することによって、第2層は、レセプターと溶剤コーティング第一材料との間に配置される。複数層ユニットの熱転写によって、レセプター上の転写層は、ドナー要素上の順番に対して、逆順となる。これによって、溶剤コーティング層下にて、溶剤感受性層をパターニングできる。加えて、層を複数層ユニットとしてともに転写する必要がない。溶剤感受性材料(単一又は複数)は、ドナー要素から熱転写し、続いて別のドナーを使用した別の熱転写工程によって溶剤コーティング材料(単一又は複数)を転写することを含む任意の好適な方法によってパターニングできる。溶剤と不相溶性のレセプター上の材料又は層に隣接してはいるが、必ずしもそれと接触していない溶剤コーティング材料のパターニングされた熱転写についても同様である。
【0066】
代表的方法を図2a〜図2cにて例示する。図2aは、上記ドナー要素230をレセプター200の表面に隣接して配置する工程を示す。この例示的ドナー要素230は、ドナー基材232、並びに熱転写層234(剥離層235、触媒層237(触媒物質を含む層)、及びポリマー層233(ポリマー結合剤物質を含む層)から構成されている)を含む。幾つかの実施形態では、触媒層237及びポリマー層233は、1つの均質層であり得る。一実施形態において、ドナー要素はレセプター表面と接触させられる。ドナー要素及びレセプターは、ドナー要素の熱転写層がレセプター表面に隣接して配置されるように構成される。少なくとも幾つかの実施形態においては、圧力又は真空を使用して、レセプター表面とぴったりと接触するようにドナー要素を保持できる。
【0067】
ドナー要素をそこへ転写可能なレセプターは、そこへ熱転写層が接着可能な、あるいはそこへ接着可能にすることができる、任意の材料を含むことができる。利用される特定のレセプターは、本明細書にて開示した方法を使用して加工される物品に少なくともある程度は依存し得る。レセプターの例としては、ポリマーフィルム、ガラス、又は金属などの任意の有用材料が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーフィルムの1つの好適な種類は、ポリエステルフィルム、例えば、PET又はPENフィルムである。一実施形態では、ガラスがレセプターである。別の実施形態では、レセプターは、フラットパネルディスプレイ裏面又はその機素などの電気又は電子回路のための支持体としての、ガラス又はポリマーを含む。利用可能な代表的レセプターは、熱転写層の熱転写に先立ってコンディショニング、又は処理できる。コンディショニングは、プラズマ又はオゾン若しくは有機過酸化物などの反応性化学物質へさらすなどの洗浄処理を含み得る。処理は更に、所望により、例えば、シランカップリング剤又は界面活性剤を用いた化学的表面改質を含み得る。
【0068】
本明細書に開示される方法において、ドナー要素がレセプターに隣接して配置された後、ドナー要素の熱転写層の少なくとも一部は、レセプターへと熱転写される。図2aの矢印250は、ドナー要素230の少なくとも一部をレセプター200へと転写する、熱エネルギーの適用を概略的に示す。ドナー要素230の少なくとも一部へと適用されるエネルギーは、エネルギーにさらされる熱転写層234の一部を転写するように機能する。
【0069】
放射線(例えば、光)を使用した熱転写の場合、開示された方法にて種々の放射線放出源が使用可能である。一実施形態では、転写はレーザーにて実施される。アナログ技術(例えば、マスクを通しての露光)には、高出力光源(例えば、キセノンフラッシュ・ランプ及びレーザー)が有用である。デジタルイメージング技術のためには、赤外線、可視光線、及び紫外線レーザーが特に有用であり得る。好適なレーザーには、例えば、高出力(例えば、≧100mW)単一モードレーザーダイオード、ファイバー連結レーザー・ダイオード、及びダイオード励起固体レーザー(例えば、Nd:YAG及びNd:YLF)が挙げられる。レーザー露光のドウェル時間は、例えば、約0.1マイクロ秒〜100マイクロ秒の範囲であることができ、レーザーフラックス(laser fluxes)は、例えば約0.01〜約1J/cm2の範囲であることができる。
【0070】
広領域にわたって、高いスポット配置精度が開示される場合(例えば、大量情報フルカラーディスプレイ用途)、レーザーは放射線源として特に有用であり得る。レーザー源は、大きな剛性基材(例えば、1m×1m×1mmのガラス)、及び連続的又はシート状フィルム基材(例えば、厚さ100μmのポリイミドシート)の両方に適合する。
【0071】
抵抗サーマルプリントヘッド又はアレイは、例えば、LTHC層及び放射線吸収体を含まない簡略化したドナー要素構造物とともに使用してもよい。これは、基材サイズがより小さい場合(例えば、任意の方向で約30cm未満)、あるいは英数字でセグメント化されたディスプレイに要求されるようなより大きいパターンの場合に特に有用であり得る。
【0072】
一般に、放射線源を使用して、LTHC層(及び/又は放射線吸収体を含有するその他の層(単一又は複数))をイメージ形成の形態で(例えば、デジタル的にあるいはアナログ的にマスクを介した露光によって)加熱し、ドナー要素からレセプターへとパターンに従って熱転写層をイメージで転写する。
【0073】
あるいは、抵抗発熱体などの発熱体を使用して、熱転写層を転写してよい。ドナー要素は、選択的に発熱体と接触させて、パターンに従って熱転写層の一部を熱転写できる。別の実施形態では、ドナー要素は、層に適用された電流を熱に変換できる層を含んでよい。
【0074】
通常、熱転写層は、任意の中間層及びLTHC層などのドナー要素のいかなるその他の層も転写することなく、レセプターへと転写される。任意の中間層が存在することにより、LTHC層からレセプターへの転写が排除又は低減され、又は熱転写層の転写部分の変形が低減される。一実施形態では、イメージング条件下にて、LTHC層への中間層の接着性は、熱転写層への中間層の接着性より大きい。場合によっては、反射性又は吸収性中間層を使用して、中間層を貫通するイメージング放射線レベルを減衰し、かつ放射された放射線と熱転写層及び/又はレセプターとの相互作用に起因し得る、熱転写層の転写部分へのあらゆる損傷を低減できる。レセプターがイメージング放射線を極めて吸収しやすい場合に生じうる熱損傷の低減において、これは特に有益であり得る。
【0075】
1メートル以上の長さ及び幅寸法を有するドナー要素を包含する、大きなドナー要素を使用することが可能である。操作においては、大きなドナー要素にわたってレーザーをラスターするか又は他の方法で移動させることができ、レーザーが所望のパターンに従ってドナー要素の部分を照らすように選択的に作動される。あるいは、レーザーが固定され、ドナー要素がレーザーの真下に移動されてもよい。
【0076】
1つ以上のドナー要素からの材料の選択的熱転写によって、材料をレセプター上にパターニングできる。ドナー要素は、ドナー要素の選択部分に指向性の熱を適用することによって加熱できる。発熱体を使用して(例えば、抵抗発熱体)、放射線(例えば、光線)を熱に変換して、及び/又は熱を発生させるよう電流をドナー要素の層へ適用することによって、熱を発生させることができる。多くの場合、例えば、ランプ又はレーザーからの光を使用する熱転写は、多くの場合に達成可能な正確性及び精度ゆえに有利であり得る。転写パターン(例えば、線、円形、正方形、又は他の形状)の寸法及び形状は、例えば、光線の大きさ、光線の露光パターン、ドナー要素と接触する向けられた光線の持続時間、並びに/又はドナー要素の材料を選択することにより制御できる。
【0077】
光を使用した熱転写は多くの場合、非常に小さなデバイス、例えば、小さな光学及び電子デバイス(例えば、トランジスタ及び集積回路のその他の部品を含む)、並びにエレクトロルミネセンスランプなどのディスプレイ及び制御回路に使用される部品に、より高い精度及び品質管理を提供する。更に、光を使用した熱転写は、少なくとも場合によっては、デバイス寸法よりも大きな領域にわたって複数のデバイスを形成する際に、より良い位置決めを提供し得る。一例として、多くの画素を持つディスプレイの部品は、この方法を使用して形成できる。
【0078】
場合によっては、複数のドナー要素を使用して、デバイス又はその他の対象体を形成し、あるいは隣接したデバイス、その他の対象物、又はその部分を形成してよい。複数のドナー要素としては、多成分系熱転写ユニットを備えたドナー要素及び単一熱転写層を転写するドナー要素が挙げられる。例えば、デバイス又はその他の対象体は、1つ以上の多成分系熱転写ユニットを備えたドナー要素及び/又はそれぞれが単一層若しくは多層ユニットを転写するために使用可能な1つ以上のドナー要素を用いて形成してよい。
【0079】
デバイス又はデバイスアレイを形成するために1種以上の層を熱転写して、例えば、多くの電子デバイス及び光学デバイスを形成するために使用されるフォトリソグラフィー・パターニングなどのプロセスの湿式処理工程を低減又は排除することもまた有用であり得る。ドナー要素から層をパターニングするための熱転写もまた、パターニング工程から層コーティング工程を分離する(例えば、このような組み合わせは、層状構造体のタイプが制限されたり、パターニング可能な隣接構造体のタイプが制限されたりする)ために有用であり得る。フォトリソグラフィ、インクジェット、スクリーン印刷及び各種マスクベース技術などの従来のパターニングプロセスにおいては、層は通常、基材上に直接コーティングされ、そこでパターニングされる。パターニングはコーティングと同時に生じ得る(インクジェット、スクリーン印刷、及び幾つかのマスクベースプロセス)か、コーティングの後で、エッチング又は別の除去技術によって生じ得る。このような従来のアプローチにおける問題は、材料をコーティングするために溶剤が使用されること、かつ/又は材料をパターニングするためにエッチングプロセスが使用されるために、予めコーティングした又はパターニングした層若しくは材料を損傷したり、溶解したり、浸透したり、かつ/若しくは操作不能にしたりすることである。
【0080】
図2bは、ドナー要素230がエネルギーにさらされた後のドナー要素230及びレセプター200を示す。図2bに示すように、熱エネルギーにさらされたドナー要素230の一部がレセプター(即ち、熱転写層の転写部分234b)へ転写される。熱エネルギーにさらされなかったドナー要素230の一部は、ドナー基材232上の熱転写層(即ち、熱転写層の残部234a)を保持する。
【0081】
触媒前駆体を含む一実施形態では、熱転写層の少なくとも一部がレセプターへと転写される前、その間、あるいはその後に、触媒前駆体を活性触媒へと変換できる。触媒前駆体のタイプに応じて、熱転写工程の前、その間、あるいはその後にて、活性化条件を実施できる。触媒前駆体が熱的に活性触媒へと変換される一実施形態において、熱転写層の熱転写中に活性化条件が生じ得る。あるいは、熱的に活性化可能な触媒前駆体を含む一実施形態では、触媒前駆体は熱転写層の熱転写の前後において活性化可能である。例えば、触媒前駆体は熱処理されて熱転写層が転写される前後において、ナノ粒子を形成できる。
【0082】
触媒前駆体の熱活性化の詳細は、少なくともある程度は使用された特定の前駆体に依存する。本明細書の開示を考えれば、当業者は、利用可能な特定の触媒前駆体をいかに活性化するかを知るであろう。例えば、利用される特定の触媒前駆体によっては、当業者は利用すべき特定タイプ及び特性の活性化エネルギーを知るであろう。例えば、幾つかの触媒前駆体は、多数の供給源(アルゴンイオンレーザー、Nd:YAGレーザー、及びシンクロトロンシステムを含むがこれらに限定するものではない)からのエネルギーによって活性化できる。当業者は、特定の触媒前駆体を選択した場合、エネルギー供給源のタイプ及びそのエネルギー供給源を使用する特定機能の詳細を知るであろう。
【0083】
熱転写層の少なくとも一部がレセプターへと熱転写された後、本明細書に開示される方法の次の段階は、触媒物質の上に金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター上へ無電解的に堆積することである。図2cは、金属材料242が熱転写層の転写部分234bの上に堆積された後の本代表的物品を示す。触媒材料が触媒前駆体である実施形態では、無電解メッキ工程の前又はその最中に、触媒前駆体を活性触媒へと変換できる。例えば、パターニングされたレセプター表面は、還元剤を含む無電解メッキ恒温槽内に置くことができる。
【0084】
用語「無電解メッキ」とは、金属の無電解めっきメッキプロセスを意味する。これは、典型的には、可溶性形態の堆積金属を還元剤とともに含有する無電解めっき溶液の使用を伴う。可溶性形態の堆積金属は、通常は、イオン種又は無機錯体(即ち、1つ以上の配位子に配位した金属種)である。一般に、無電解メッキは、コーティングされる被加工物への電流印加を含まない。ドナー要素からレセプター表面へと、触媒物質を含む熱転写層が一旦熱転写すると、レセプターを適切なメッキ浴内に浸漬させることができる。触媒物質、又は活性化された触媒物質(触媒前駆体の場合)は、めっき溶液からの堆積金属の堆積を触媒する。一旦開始されると、溶液金属供給源の連続的還元によってめっきは進行し、それ自体の金属表面によって触媒され、したがって、用語「自己触媒」と呼ばれる。別の実施形態では、無電解メッキは変位反応を伴い得る。このような実施形態では、第1金属を第2金属の金属塩の溶液中に浸漬させ、第1金属表面の一部を攻撃して、その表面に第2金属を同時に自然に堆積する。第1金属は、還元剤として機能し、用語「触媒物質」が利用される場合には、更に本明細書において参照される。
【0085】
無電解メッキを使用して形成できる金属材料としては、銅、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、コバルト、並びにこれらの金属の相互の又はリン若しくはホウ素との合金、並びにこれらの金属の相互の又はリン若しくはホウ素との化合物が挙げられる。別の実施形態では、自己触媒の代わりに変位メカニズムを介する化学メッキを使用して、亜鉛を形成できる。一例において、金属堆積金属としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、又は幾つかのこれらの組み合わせが挙げられる。堆積金属及び触媒物質は、同一であるか又は異なることができる。
【0086】
無電解メッキを触媒するために触媒物質が還元されなければならない触媒前駆体である一実施形態では、このような還元は、堆積金属の触媒成長とは別に又は金属堆積の触媒成長と同期して生じ得る。触媒物質が触媒成長とは別個に還元されるプロセスによって、より高速でそれが生じ、処理上の利点を可能にするという利点を提供してよい。触媒物質は、光還元、化学還元、熱還元、又は電子線還元によって還元できる。化学還元が利用される実施例では、好適な還元剤類としては、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、ホウ化水素、アミノボラン、及び次亜リン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
金属堆積を無電解的に堆積させる工程の前後において任意のすすぎ洗い工程を含む方法もまた、本明細書で利用できる。本明細書を読んだ当業者はまた、本明細書にて開示した方法の工程と組み合わせて利用可能な他の工程もまた意識するであろう。
【0088】
図3a〜図3cは、ドナー要素300及びレセプター310からなる別の代表的実施形態を示す。この代表的ドナー要素300は、少なくともドナー基材302及び熱転写層304を含む。この代表的熱転写層304は、通常、触媒物質を含む。図3a中の矢印350は、熱転写層304の少なくとも一部をレセプター310へ転写するエネルギーを概略的に示す。図3bで明らかなように、ドナー要素300をエネルギーにさらした後、レセプター310上の熱転写層の転写部分304b及びドナー基材302上の熱転写層304の残部304aとがある。図3cは、金属材料322が熱転写層の転写部分304bの上に堆積された後の物品を示す。
【0089】
本明細書にて開示する方法に伴う各種工程は通常、任意の順序で実施される。図4は、一般的に本明細書にて開示した工程を利用する1つの代表的な方法を示す。そこに見られるように、触媒物質(より具体的には、活性触媒)を有する熱転写層を含むドナー要素の少なくとも一部が、レセプターへと転写される(工程405)。次に、熱転写層の転写部分を化学メッキにさらして(工程420)、熱転写層の転写部分の上に金属材料を堆積し、それによってパターニングされた金属材料を有する物品を形成する。図4は更に、熱転写層に含まれている担体ポリマーを硬化する任意の工程430を示す。任意の硬化が、硬化した熱転写層をレセプター上に生成する。
【0090】
図5は、一般に本明細書にて開示した工程を利用する、別の代表的な方法を示す。この代表的な方法は、ドナーストックフィルムを触媒前駆体でコーティングすることによって(工程400)ドナー要素を製造し、触媒前駆体を備えたドナー要素を生成することを示す。一実施形態では、ドナーストックフィルムは、ドナー基材、LTHC層、及び中間層を含むことができる。次に、触媒前駆体を含むドナー要素は、触媒前駆体が触媒に変換される工程(工程410)か、あるいは熱転写層の少なくとも一部がレセプターへ転写される工程(工程405)のいずれかを有し得る。触媒前駆体が最初に変換される場合、次に熱転写がレセプターへ転写し(工程405)、あるいは、熱転写層が最初に転写される場合、次に触媒前駆体が活性触媒へ転換され得る(工程410)。どちらにしても、次の工程は金属材料を無電解的にメッキし(工程420)、パターニングされた金属材料を有する物品を生成するためのものである。
【0091】
図6は、触媒物質をより完全に無電解めっき溶液へとさらすためのエッチング440の任意の工程を含む方法の別の代表的実施形態を示す。当業者は、少なくとも部分的には、特定の高分子結合剤に基づいて、いかに触媒物質をさらすことができるかを容易に決定できる。
【0092】
本明細書を読んだ当業者は、図4〜図6で議論した任意の工程、及び本明細書のその他の部分を任意の適用可能な順序で組み合わせて、本明細書にて開示する方法を実施できることを理解するであろう。
【0093】
本明細書記載の方法を使用して形成された物品もまた、本明細書で開示される。開示された方法を使用して作製可能な物品は通常、金属材料で被われた熱転写層のパターニング部分を有する。一実施形態では、金属材料、即ち、金属コーティングで被われた熱転写層のパターニング部分は、全体的特徴と称される。一般に、熱転写層及び金属材料の部分、即ち、全体的特徴は、任意の寸法であり得る。一実施形態では、全体的特徴の寸法は、パターニングされた熱転写層の高さと金属材料の高さの両方を含む。これにより、全体的特徴の寸法は、幅が約1マイクロメートル(μm)以上で、高さが約20ナノメートル(nm)以上であり得る。このような物品の場合、熱転写層のパターニング部分の寸法は、幅が約1μmかつ高さが約20ナノメートル以上であり得る。一般に、熱転写層のパターニング部分上での金属材料の深さは、約1オングストローム(Å)以上である。当業者は、金属めっきをより長時間行うほど、金属材料層が厚くなることを理解するであろう。
【0094】
本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料のグリッドを有し、かつこのような物品を、例えば、電磁界干渉(EMI)遮蔽のために使用することができる。本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料を微量に有することができ、かつこのような物品は、例えば、タッチスクリーン、センサー応用、回路に使用して、反射性表示を作製したり、又は流量デバイス(パターニングされた金属様付着物は、親水性であり得、かつ非パターニング部分は疎水性であり得る)を作製したりできる。本明細書に開示される方法を使用して形成可能な代表的物品は、複数ディスプレイ・バックプレーンをマザーガラス(銅又はその他導電性金属のバスラインを備える)上に備えたフラットパネル・ディスプレイ・バックプレーンである。本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料の繰り返しドット又はアイランドを有し、かつこのような物品を、例えば、遮蔽効果を生成するために使用できる。物品は、電流を伝導するために使用可能な金属堆積物パターンを含む。
【0095】
本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料の反射性又は半透明層を有することができ、かつこのような物品は、例えば、微小電気機械(MEMs)又は微小電気光学デバイスのために使用できる。本明細書に開示される方法を使用して形成可能な代表的物品としては、マイクロミラー・アレイが挙げられる。
【0096】
本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、有利には、レセプター、熱転写層の一部、金属材料、又は幾つかのこれらの組み合わせ(全体的な物品の熱膨張特性が類似するようにされた)を有することができる。当業者は更に、本明細書にて開示する方法を使用して物品が一旦形成されると、本開示の範囲から逸脱することなく、更なる処理工程をその物品上で実施できるということを理解するであろう。
【実施例】
【0097】
本開示のこれらの一般概念を念頭に置いて、代表的ドナー要素、熱転写法、及び熱転写法によって作製されたデバイスについて、説明する。
【0098】
ドナーストックフィルム(ドナー基材、LTHC層、及び中間層)は、以下の方法で作製した。LTHC溶液(表1)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(M7Q、2.88ミル、デュポン・テイジン・フィルムズ(DuPont Teijin Films)(バージニア州ホープウェル(Hopewell)))上にコーティングした。LTHC溶液を実験室用マイクログルーヴコーター(型式CAG−150、康井精機(Yasui Seiki)(日本、神奈川)にて適用し、約2.7マイクロメートルの乾燥厚みを得た。コーティングは、紫外線(UV)照射下、インラインにて乾燥及び硬化させた。硬化させたコーティングは、1064nmの波長を有する入射光線を使用して測定した際、約1.18の光学密度を有した。中間層溶液(表2)は、LTHCと同一の方法を用いてコーティングし、約1.8マイクロメートルの乾燥厚みを得た。コーティングは、紫外線(UV)照射下、インラインにて乾燥及び硬化させた。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
サンプル1ドナー要素は、以下の方法で作製した。上述の如くLTHCとILの両方を含むドナーストックフィルムを、標準熱蒸着手順を使用し、バルザーズ(Balzers)真空槽内、バックグラウンド圧力1.3Pa(10−7トール)にて、100Åの銅フタロシアニン(CuPC)で真空コーティングした。次に、電子線堆積システムを使用して、2Å/秒の速度で、ドナーに10Åのパラジウム金属をコーティングした。次に、ポリスチレン(MW50K、ポリサイエンス社(Polysciences Inc.)(ペンシルベニア州ウォリントン(Warrington)))/ポリ(スチレン−コーメチルメタクリレート)(アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)))の5重量%トルエン溶液を用い、3番メイヤーロッドを使用してCuPCにオーバーコーティングし、約200nmの乾燥厚みを得た。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0103】
サンプル2ドナー要素は、以下の方法で作製した。上述の如くLTHCとILの両方を含むドナーストックフィルムを、標準熱蒸着手順を使用し、バルザーズ(Balzers)真空槽内、バックグラウンド圧力1.3Pa(10−7トール)にて、100の銅フタロシアニン(CuPC)で真空コーティングした。次に、2Å/秒の速度で、ドナーに10Åのパラジウム金属をコーティングした。特注電子線堆積システムは、カート・レスカー社(Kurt Lesker, Inc.)によって製造された。次に、約200nmの乾燥厚みを得るために、3番メイヤーロッドを使用して、UV硬化性溶液(表5)とともに溶液にて、CuPCをオーバーコーティングした。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0104】
【表4】
【0105】
後述するようにサンプルをイメージングした後、イメージングしたサンプルを100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼き、次に、ライト・ハマー(Light Hammer)紫外線硬化システム(フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems Inc.)製)を使用して硬化させた。サンプルは、100%出力のD(電球色)バルブに6メートル/分(20フィート/分)で通過させることによって、紫外線照射に4回さらした。
【0106】
サンプル3ドナー要素は、以下の方法で作製した。上記のようにLTHCと中間層の両方を含むドナーストックフィルムに、パラジウムナノ粒子を含有するUV硬化性高分子結合剤(表6)をコーティングした。
【0107】
【表5】
【0108】
3番メイヤーロッドを使用して、溶液をコーティングし、約200nmの乾燥厚みを得た。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0109】
後述するようにサンプルをイメージングした後、イメージングしたサンプルを200℃で20分間窒素パージしたオーブン内で焼き、次に、ライト・ハマー(Light Hammer)紫外線硬化システム(フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems Inc.)製)を使用して硬化させた。サンプルは、100%出力のD(電球色)バルブに6メートル/分(20フィート/分)で通過させることによって、紫外線照射に4回さらした。次に、イメージングしたサンプルを100W出力で1分間アルゴンプラズマ処理して、Pdナノ粒子を露出させた。
【0110】
サンプル4ドナー要素は、以下の方法で作製した。上記のようにLTHCと中間層の両方を含むドナーストックフィルムに、酢酸パラジウムを含有するUV硬化性高分子結合剤(表7)をコーティングした。3番メイヤーロッドを使用して、溶液をコーティングし、約200nmの乾燥厚みを得た。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0111】
【表6】
【0112】
後述するようにサンプルをイメージングした後、イメージングしたサンプルを200℃で20分間窒素パージしたオーブン内で焼き、次に、ライト・ハマー(Light Hammer)紫外線硬化システム(フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems Inc.)製)を使用して硬化させた。サンプルは、100%出力のD(電球色)バルブに3メートル/分(10フィート/分)で通過させることによって、紫外線照射に4回さらした。
【0113】
プラズマ・サイエンス(Plasma Science)からのアルゴンプラズマで表面処理した0.7mm厚ガラスピース基板上にサンプル番号1をラミネート加工した。アルゴンプラズマ処理は、100W出力で1分間行った。ドナーフィルムを単一モードNd:YAGレーザーレーザーをベースにしたイメージングシステム内に、フィルム平面にて1ワットの出力でさらすことによって、レーザーイメージングを実施した。リニアガルバノメーターシステムを使用して、基材をまたがるようにレーザービームを走査したが、この際、近似テレセントリック構成の一部としてのf−θスキャンレンズを使用して、像平面上に焦点を当てたレーザービームを用いた。1/e2強度で測定したレーザースポットサイズは、18×250マイクロメートルであった。ビームは、周波数400kHzで振動する三角形ディザパターンにて一定方向に走査した。公称線幅は、165マイクロメートルのピッチで、110マイクロメートルに設定した。
【0114】
サンプル番号2、3、及び4は、0.7mm厚ガラス基板ピース上にラミネート加工するが、サンプル2の場合、プラズマ・サイエンス(Plasma Science)からのアルゴンプラズマで表面処理したPETフィルムピース上にラミネート加工してもよい。アルゴンプラズマ処理は、100W出力で1分間行った。ドナーフィルムをマスクベースのイメージングシステムに、808nmの連続波モードで稼働するレーザーを用いてさらすことによって、レーザーイメージングを実施した。レーザーのスポットサイズは、100×100マイクロメートルであった。公称線幅は、165マイクロメートルのピッチで、100マイクロメートルに設定した。
【0115】
サンプルをイメージングした後、それらを無電解メッキ浴(表8)内にそれぞれ別個に浸した。メッキ浴溶液は、以下の方法で調製した。銅、タルトラート及び水酸化ナトリウムを1Lの蒸留水中に溶解させた。ホルムアルデヒドを最後に添加し、めっき溶液を55℃まで加熱した。サンプルを、20分まで浸し、銅めっきがイメージング領域に観察された。
【0116】
【表7】
【0117】
サンプル4を無電解メッキ浴にさらした後で、サンプルの顕微鏡写真を撮った。顕微鏡写真は、図7に見ることができる。
【0118】
本開示について、それらの様々な実施形態に関連して示し説明してきたが、当業者であれば、形状及び細部における様々な他の変更が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その分野においてなされ得ることが理解されよう。
【0119】
このため、基材パターニング方法の実施形態が開示されている。本開示が、本開示されたもの以外の実施形態で実施され得ることは、当業者には理解されよう。開示された実施形態は、図示の目的のために示され、制限のために示されてはおらず、本開示は以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材上への金属材料の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、高解像度の構造を形成することは、依然として製造工程の進歩における目標である。このような工程における代表的な用途は、プリント基板(PWB)のための導電性の配線である。無電解メッキは、このような構造の作製のために使用されるメッキ法である。無電解メッキの化学及びプロセスは、かなり依然から確立されており、一般的に市販されている。しかしながら、最終的に無電解メッキプロセスを施す基材へ触媒物質を選択的に適用するという点での進歩が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
金属材料をレセプター上に形成する方法は、レセプター近傍にドナー要素を置く工程であって、ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、熱転写層は、触媒物質を備え、かつドナー要素の熱転写層は、レセプターの表面近傍に置かれる工程、ドナー要素からレセプターへと熱転写層の少なくとも一部を熱転写する工程、及び触媒物質上で金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター上に無電解的に堆積する工程、からなる。
【0004】
レセプター基材;レセプター基材に付着可能である、パターニングされた第1層;触媒物質を含むパターニングされた第2層;及びパターニングされた第1層及びパターニングされた第2層と同一パターンを有する、無電解的に堆積した金属材料、をこの順番で備え、ここで、パターニングされた第1層及びパターニングされた第2層は、ドナー要素からレセプター基材へと熱転写され、かつレセプター基材上で見出されるそれらの順番にてレセプター基材上に始めから形成されている場合、第1層及び第2層は不相溶性である、物品。
【0005】
熱転写ドナー要素は、ドナー基材、光熱変換層、及び触媒物質を含む熱転写層の順番でそれらを備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図1b】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図1c】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図1d】本明細書で開示したドナー要素の一例の概略断面図。
【図2a】ドナー基材、光熱変換(LTHC)層、中間層、及びレセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図2b】ドナー基材、光熱変換(LTHC)層、中間層、及びレセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図2c】ドナー基材、光熱変換(LTHC)層、中間層、及びレセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図3a】レセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図3b】レセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図3c】レセプター表面へ転写される熱転写層を有するドナー要素の少なくとも一部を示す概略断面図。
【図4】パターニングされた金属材料の代表的形成方法。
【図5】パターニングされた金属材料の代表的形成方法。
【図6】パターニングされた金属材料の代表的形成方法。
【図7】サンプルの顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で述べるもの以外の実施形態も検討されるものであり、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施可能である点が理解されるべきである。したがって、以下の「発明を実施するための形態」は、限定する意味で理解すべきではない。
【0008】
本発明で使用する全ての科学用語及び専門用語は、特に指示がない限り、当該技術分野において一般的に使用される意味を有する。本明細書にて提供される定義は、本明細書でしばしば使用される特定の用語の理解を促進しようとするものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0009】
特に明記しない限り、本明細書及び書類名特許請求の範囲で用いられる特徴的な大きさ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されることを理解されたい。したがって、特に記載のない限り、前述の明細書及び添付の請求の範囲に記載されている数のパラメータは、本明細書で開示する教示を利用する当業者が得ようと試みる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0010】
端点による数の範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数(例えば1から5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5)並びにその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段のはっきりした指示がない限り、複数の指示対象を有する実施形態を含む。本明細書及び添付特許請求の範囲内にて使用される場合、用語「又は」とは、別段の明確な指示がない限り、一般的に「及び/又は」を包含する意味で用いられる。
【0012】
レセプター表面近傍にドナー要素を置く工程であって、ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、熱転写層は、触媒物質を備え、かつドナー要素の熱転写層は、レセプター表面の近傍に置かれる工程、ドナー要素からレセプター表面へと熱転写層の少なくとも一部を熱転写する工程、及び触媒物質上で金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター表面上に無電解的に堆積させる工程からなる、金属材料をレセプター表面上に形成する方法が、本明細書にて開示される。
【0013】
本明細書に開示される方法は、金属の無電解めっきメッキプロセスを提供する。一実施形態では、それは、可溶性形態の堆積金属を還元剤とともに含有する無電解めっき溶液の使用を伴うことができる。可溶性形態の堆積金属は、通常は、イオン種又は無機錯体(即ち、1つ以上の配位子に配位した金属種)である。一般に、プロセスは、コーティングされる被加工物への電流印加を含まない。一般に、プロセスは触媒表面を利用する。触媒表面にて一旦堆積が開始されると、金属ソース溶液の連続還元、それ自体の金属表面によって触媒作用を受けて(したがって、用語「自己触媒」と呼ばれる)、めっきが進行する。本方法の実施形態では、触媒表面は、貴金属シード層などの触媒物質によって、あるいは、貴金属の塩などの触媒前駆体を還元することでこのような層を形成することによって、提供できる。
【0014】
本明細書に開示される方法は、レーザー誘起熱イメージング(LITI)に関する原理及び材料を利用する。LITIドナーフィルム、及びそれらの利用法に関する更なる詳細は、米国特許第6,866,979号、同第6,586,153号、同第6,468,715号、同第6,284,425号、同第6,194,119号、及び同第5,725,989号(それらの全てが、参考として本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。LITIは通常、乾式・デジタルパターニング法であって、その際、薄膜コーティングがドナーからレセプターへと空間を隔てて選択的に転写される。熱エネルギー供給源にさらされるドナー領域は、レセプターへと転写される。
【0015】
ドナー要素100の一例を図1aに示す。代表的ドナー要素100は、ドナー基材102及び熱転写層104を含む。
【0016】
ドナー基材102は、ポリマーフィルムなどの任意の有用な材料から形成できる。ポリマーフィルムの好適な種類の1つは、ポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムである。しかし、特定波長における高い光透過率を含む十分な光学特性(加熱及び転写のために光が使用される場合、光学特性は、それ相応のものであり得る)、並びに特定用途のための十分な機械的安定性及び熱安定性を備えたその他のフィルムを使用することが可能である。ドナー基材102は、少なくとも幾つかの場合では、均一コーティングをその上に形成することができるように平らである。ドナー基材102はまた、典型的には、加熱にもかかわらず、又はドナー要素の隣接層の加熱にもかかわらず、安定状態を保つ材料から選択できる。一実施形態では、ドナー基材の厚さは、0.025mm〜0.15mmの範囲であることができる。一実施形態では、ドナー基材の厚さは、0.05mm〜0.1mmの範囲であることができる。当業者は更に、より厚い又はより薄いドナー基材もまた使用できることを理解するであろう。
【0017】
ドナー要素100はまた、熱転写層104を含む。本明細書で開示したように使用する熱転写層104は、触媒物質を含む。触媒物質としては、触媒部位を表面上に提供して無電解メッキ可能にできる物質、及び無電解メッキプロセスにおいて金属物質の成長を触媒することができる物質が挙げられる。例えば、金属材料の成長を触媒することができる化合物は、還元反応によって活性な触媒物質を形成する。金属材料の成長を触媒することができる物質は、多くの場合、触媒前駆体と称される。一般に、触媒物質は、連続又は不連続薄膜中に、コロイド状分散体(例えば、アドバンスト・ナノ・プロダクツ(Advanced Nano Products)(韓国)から入手可能なもののような金属ナノ粒子をベースにしたナノ粒子又はインク)、及び上述したような触媒前駆体として存在することができる。一実施形態では、触媒物質は、コロイド状分散体を含まない。
【0018】
金属材料の成長を触媒できる物質の例としては、主族の金属、遷移金属、貴金属、希土類金属、及び半金属などの金属が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、VIIIB族元素又はIB族元素を利用できる。特定の金属としては、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、ランタン、ガドリニウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、タリウム、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、金属、又は金属類は非強磁性であり、例えば、銅、金、イリジウム、パラジウム、白金、ロジウム、銀、レニウム、ルテニウム、オスミウム、インジウム、及びスズである。一実施形態では、1種以上の貴金属が利用される。1種以上の金属を含有する物質もまた、触媒物質として使用できる。例えば、遷移金属の塩などの金属の塩又は錯体、例えば、パラジウム、白金、及び銀の塩を利用できる。金属塩は、塩化パラジウムなどの無機物、又は酢酸パラジウム若しくはプロパン酸パラジウムなの有機物であることができる。一実施形態では、アルカン酸塩を利用できる。
【0019】
一実施形態では、上記で例示したような金属などの触媒物質を含む組成物を利用できる。例えば、パラジウム若しくは銀ナノ粒子、又は銅若しくはニッケルナノ粒子などの金属ナノ粒子を含む組成物を利用できる。一実施形態では、熱転写層104は、蒸着パラジウムなどの蒸着金属を含むことができる。
【0020】
触媒物質はまた、金属材料の成長を触媒することができる、本明細書において触媒前駆体として参照される、物質も包含する。一実施形態では、触媒前駆体は、それを活性化状態に置くことによって金属材料の成長を触媒可能にすることができる。一実施形態では、例えば、上記で例示されたような金属を錯体にすることができる有機物質を、触媒前駆体として利用できる。このような実施形態では、活性化条件は、例えば、触媒前駆体を金属含有溶液にさらすことである。一実施形態では、例えば、一旦エネルギー供給源にさらし、金属材料の成長を触媒することができる物質は、触媒前駆体として利用できる。このような実施形態では、活性化条件は、エネルギー供給源にさらすことである。一実施形態では、例えば、一旦イオン交換プロセスを実施し、金属材料の成長を触媒することができる物質は、触媒前駆体として利用できる。このような実施形態では、活性化条件は、例えば触媒前駆体を金属含有溶液にさらすことであり、これによって触媒前駆体中のイオンを置換する。
【0021】
一実施形態では、活性化条件は化学反応であることができる。例えば、Pd2+又はAg2+などの金属イオンを含む触媒前駆体を、Pd2+をPd0へ又はAg2+をAg0還元する溶液へさらすことができる。利用可能な代表的還元剤としては、スズ(Sn2+)、ホルムアルデヒド、ホウ化水素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン水化物、硫酸ヒドラジン、及び中性硫酸ヒドラジンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
触媒前駆体が還元されて活性触媒が形成される一実施形態では、熱転写層104は触媒前駆体及び還元剤を含むことができる。例えば、熱転写層はPd2+又はAg2+、及び例えばSn2+などの還元剤を含むことができる。これにより、金属材料の成長を触媒する物質(例えば、Pd0又はAg0)を、その場で生成できる。あるいは、熱転写層104は、Sn2+を含むことができ、これは次に例えば、Pd2+又はAg2+の溶液にさらして、Pd0又はAg0を生成し、これが金属材料の成長を触媒する。あるいは、熱転写層104は、触媒前駆体を含む1つの層及び還元剤を含む1つの層を包含できる。例えば、熱転写層は、Sn2+を含むある層及びPd2+又はAg2+を含む別の層を包含できる。したがって、Pd2+又はAg2+からPd0又はAg0それぞれへの還元は、この2つの層を水にさらし、成分を移動させて反応させることにより達成できる。同様にして、2つの別個の工程にて、2つの層をレセプター表面へと転写できる。次に、一旦2つの層が転写されると、反応が生じて触媒が生成される。例えば、反応種が溶解及びマイグレーションすることによって、あるいは熱誘起マイグレーションによって、あるいは溶媒誘起移動度によって、反応が開始される。
【0023】
したがって、Pd2+又はAg2+からPd0又はAg0それぞれへの還元は、この2つの層を水にさらし、成分を移動させて反応させることにより達成できる。同様にして、2つの別個の工程にて、2つの層をレセプター表面へと転写できる。次に、一旦2つの層が転写されると、反応が生じて触媒が生成される。例えば、反応種が溶解及びマイグレーションすることによって、あるいは熱誘起マイグレーションによって、あるいは溶媒誘起移動度によって、反応が開始される。
【0024】
場合によっては、2つの化学的反応性層を多孔質又は膨潤性不活性層によって物理的に分離(反応に必要な時間まで)することが望ましい場合がある。発明者らは、化学的及び/又は物理的バリアとして機能することによって隣接層内での反応種の不完全反応を防止する、「分離層」(例えば、酸化剤及び還元剤、酸及び塩基、など)の使用を考える。分離層の特定の非限定例は、例えば酸官能性アクリル樹脂(例えば、エルバサイト(Elvacite)2776、ルーサイト・インターナショナル社(Lucite International, Inc.)製)、アミノ官能性アクリル樹脂(エルバサイト(Elvacite)4115、ルーサイト・インターナショナル社(Lucite International, Inc.)製)、又はセルロースアセテート又はセルロースアセテートブチレート(両方とも、シグマ・アルドリッチ社(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))から入手可能)などの水膨潤性ポリマーを含む溶剤溶性ポリマー又はポリマーブレンドである。レーザー熱パターニング工程の前後において、3層転写積層体(例えば、酸化層/分離層/還元剤)をpHがコントロールされた水溶液(分離層を溶解させることなく膨潤させる)にさらすことによって、分離層をまたいだ分子又はイオン輸送が開始される。この輸送によって、2つの予め分離させた層の間で反応が生じる。分離層の多孔性(したがって、分離された層間での反応速度)はまた、その厚さ、架橋密度、又は相形態を変化させることによりコントロールできる。
【0025】
分離層として使用可能な更に別のクラスの物質は、比較的低温にて速やかに昇華又はきれいに分解する小分子(例えば、米国特許第5,756,689号「レーザー誘起物質移動イメージング材料のためのジアゾ化合物(Diazo compounds for laser-induced mass transfer imaging materials)」、同第5,747,217号「無色昇華性化合物を利用するレーザー誘起物質移動イメージング材料及び方法(Laser-induced mass transfer imaging materials and methods utilizing colorless sublimable compounds)」、又は同第5,691,098号「ジアゾ化合物を利用するレーザー誘起物質移動イメージング材料(Laser-Induced mass transfer imaging materials utilizing diazo compounds)」にて記載されているようなもの)である。これらの物質の1種以上を含む分離層をまたいだ分子又はイオン輸送は、レーザー熱パターニング工程の前後において層を段階的に加熱することにより、開始される。この輸送によって、2つの予め分離させた層の間で反応が生じる。分離層の多孔性(したがって、分離された層間での反応速度)はまた、その厚さ又は相形態を変化させることによりコントロールできる。
【0026】
エネルギー供給源にさらすことで触媒前駆体を活性化する一実施形態では、熱転写層104は触媒前駆体を含むことができ、かつ少なくともその一部がレセプターへ転写される前又は後のいずれかにて、エネルギー供給源にさらすことができる。一実施形態では、例えば、一旦エネルギー供給源にさらし、金属材料の成長を触媒することができる物質は、触媒前駆体として利用できる。例えば、酢酸パラジウムは、エキシマレーザからの強烈な紫外線にさらすことで分解し、無電解メッキのための触媒を形成することができる(J.Y.ザン(Zhang)、H.エスロム(Esrom)、I.W.ボイド(Boyd)著、応用表面科学(Applied Surface Science)、96〜98ページ、399巻、1996年)。別の実施例では、アルミナ表面は、エキシマレーザからの強烈な紫外線にさらして無電解触媒として活性化することができる(J.Y.ザン(Zhang)、I.W.ボイド(Boyd)、H.エスロム(Esrom)著、応用表面科学(Applied Surface Science)、109〜110ページ、253巻、1997年)。更に別の実施例では、アセチルアセトン銅は、エキシマレーザからの強烈な紫外線にさらすことで分解し、無電解メッキのための触媒を形成することができる(J.Y.ザン(Zhang)、H.エスロム(Esrom)著、応用表面科学(Applied Surface Science)、54ページ、465巻、1992年)。
【0027】
本明細書にて開示する熱転写層104は、触媒物質を含み、かつその他の物質を任意に含み得る。熱転写層104に含まれてよいその他の物質は、一般に最終物品に含まれるようなもの又は本明細書にて開示された方法を使用して作製されるデバイスである。一実施形態では、熱転写層104は、所望により、熱転写層をレセプター表面に接着させる能力に寄与する及び/又は触媒物質を無電解堆積槽へさらす能力に寄与する別の物質を含む。
【0028】
一実施形態では、熱転写層104は、ポリマーを含むことができる。一実施形態では、多孔質、膨潤性、又はヒドロゲル高分子材料を利用して、触媒物質表面が少なくとも部分的にさらされるのを容易にすることができる。触媒物質表面の曝露は、無電解めっき中にて有用であり得る。一実施形態では、熱転写層104に含まれている任意の他の物質としては、エッチング除去可能あるいは溶解除去可能な物質を挙げることができる。このような材料を利用する場合、金属材料を堆積させる前に、追加のエッチング又は溶解工程を利用できる。
【0029】
一実施形態では、熱転写層104は、レセプター表面への熱転写層104の接着性を向上させる物質を含むことができる。一実施形態では、熱転写層104の接着性に寄与するその他の代替物質は、熱転写層104の別個の層(ドナー基材から最も離れて配置されているので、ドナー要素からレセプターへの転写後に、レセプターと接触する)中に存在できる。例えば、ポリマー結合剤物質が、熱転写層104中に含まれることができる。ポリマー結合剤物質は、紫外線又は熱に対して架橋性であってよく、次に架橋可能であり、熱転写層104がドナー要素からレセプター表面へと転写された後で、接着性を向上してよい。熱転写層中に含まれ得る高分子結合剤の例としては、熱又は放射線にさらすことで、及び/又は適切な化学的硬化剤(例えば、H2O、O2など)を添加することによって架橋可能なものなどの紫外線架橋性物質又は熱架橋性物質が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、放射線硬化性物質を利用できる。好適な物質としては、高分子工業科学百科辞典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、第4巻、350〜390ページ及び418〜449ページ(ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1986年)及び第11巻、186〜212ページ(ジョンワイリー&サンズ(John Wiley & Sons)、1988年)に列挙されているようなものが挙げられる。
【0030】
一般に、絶縁性及び導電性架橋性ポリマー結合剤物質の両方を、本明細書で利用できる。当業者に一般的に知られているような絶縁性架橋性ポリマーを利用できる。利用可能な絶縁架橋性(crossslinkable)ポリマーの一例としては、アクリレートが挙げられる。当業者に一般的に知られているような導電性架橋性ポリマーを利用できる。導電性架橋性ポリマーの例としては、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフルオレン、及びポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
利用可能な架橋性材料の具体例としては、シラン官能化トリアリールアミン、ベルマン(Bellmann)ら、「材料化学(Chem Mater)」(第10巻、1668〜1678ページ、1998年)に開示されているようなペンダントトリアリールアミンを備えたポリ(ノルボルネン)、バイヤール(Bayerl)ら、「高分子・速報(Macromol. Rapid Commun.)」(第20巻、224〜228ページ、1999年)に開示されているようなビス官能化ホール輸送トリアリールアミン、米国特許第6,030,550号に開示されているような各種架橋型導電性ポリアニリン及びその他のポリマー、PCT国際公開特許第97/33193号に開示されている架橋性ポリアリールポリアミン、及び特開平9−255774に開示されているような架橋性トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(その開示は、本明細書に参考として組み込まれる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
熱転写層のこのような一実施形態としては更に、キレート剤(例えば、EDTA)、カップリング剤、金属接着促進剤(例えば、イミダゾール)、コーティング補助剤(例えば、界面活性剤、分散剤など)、又はその他のコーティング添加剤を含む任意の添加剤も挙げられるが、これらに限定するものではない。他の構成成分を添加して、所望の特性又は所望の処理上の利点を提供できる。
【0033】
熱転写層104は、複数の層を任意に含み得る。複数の層を含む熱転写層は、多成分系転写ユニットと称される場合もある。(米国特許第6,194,119号は、多成分系転写ユニットの特定の定義を含まない。)これらの複数層は、有機、無機、有機金属、及び他の材料を用いて形成してよい。転写層は、複数の別個の層を有するものとして記載されかつ図示されるが、複数層が使用される少なくとも幾つかの場合によっては、それぞれの層の少なくとも一部を含む界面領域が存在し得ることが理解されるであろう。これは、例えば、層の混合又は層間での材料の拡散がある場合、転写層への転写前、転写中、又は転写後に生じる可能性がある。その他の場合、個々の層は、転写層への転写前、転写中、又は転写後に、完全に又は部分的に混合されてよい。これは、上述したように分離層の使用によって実施できる。いかなる場合でもこれらの構造は、複数の独立層を含むものとされるが、特に、最終物品の異なった機能が異なる領域にて実施される場合には、複数の独立層を含む。
【0034】
特に層が混合しない場合に多成分系転写ユニットを使用する1つの利点は、熱転写ユニットが作製される際に多成分系転写ユニット内の層の重要な界面特性が生成され、一実施形態では、それが転写中に保持されるということである。
【0035】
熱転写層の一例としては、レセプター上に多層構造の少なくとも一部を形成するために使用される単一又は多成分系転写ユニットが挙げられる。場合によっては、熱転写層は、所望の構造を形成するために必要な全ての層を含んでよい。他の場合、熱転写層は、所望の構造を形成するために必要な全ての層より少なく含んでよく、他の層は1つ以上の他のドナー要素からの転写又は幾つかの他の好適な転写若しくはパターニング方法によって、熱転写層からの転写の前、後、あるいはその両方で、形成される。更に他の場合には、構造物の1つ以上の層は、レセプター表面に設けられてもよく、残りの層(単一又は複数)は、1つ以上のドナー要素の熱転写層に包含される。あるいは、構造物の1つ以上の追加の層は、熱転写層がパターン化された後、レセプター上に転写されてよい。場合によっては、熱転写層を使用して、単一層のみの構造物を形成する。
【0036】
一実施形態では、代表的な熱転写層は、多層構造からなる少なくとも2つの層を形成可能な多成分系転写ユニットを含む。多層構造からなるこれら2つの層は、多くの場合、熱転写層の2つの層に相当する。
【0037】
熱転写層は、熱転写層の外側表面上に配置され、レセプターに対する接着性を促進する任意の接着剤層を含んでよい。接着剤層は、更にその他の機能を提供し得るが、例えば、接着剤層は、レセプターと転写層のその他の層との間で電気を伝導してよく、あるいは転写層をレセプターへ接着するだけであってよい。接着剤層は、例えば、導電性及び非導電性ポリマー、導電性及び非導電性充填ポリマー、並びに/又は導電性及び非導電性分散体を含む熱可塑性ポリマーを使用して形成できる。好適なポリマーの例としては、アクリルポリマー、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリアセチレン、及び本明細書を読んだ当業者に既知のその他の導電性有機材料が挙げられるが、これらに限定されない。好適な導電性分散体の例としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、超微粒粉体酸化インジウムスズ、超微細アンチモン酸化スズを含有するインク(ナノフェーズ・テクノロジーズ社(Nanophase Technologies Corporation)(イリノイ州バーリッジ(Burr Ridge))及びメテック(Metech)(ペンシルベニア州エルバーソン(Elverson))などの会社から市販されている材料)が挙げられる。導電性接着剤層は更に、N,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPBとしても知られている)などの蒸着又は真空蒸着した有機導電体蒸気を含むことができる。
【0038】
多成分系転写層を含む実施形態は、熱転写層がレセプターへ転写された後、所望の特性を物品に提供する最上部にある層(ドナー基材から最も離れた層であり、転写後にレセプター表面の直上にある)を任意に含み得る。例えば、一実施形態では、触媒含有層以前のレセプター上に導電層を持つことが有利であり得る。このような構造物は、基材から金属材料への電気的接続が望まれる物品の加工において有利であり得る。このような層に含まれ得る物質の例としては、導電性粒子及び導電性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。触媒含有層以前のレセプター上の絶縁層を有することもまた利点であり得る。このような構造物は、基材と金属材料との間の電気絶縁が望まれる物品の加工において有利であり得る。このような層に含まれ得る物質の例としては、絶縁ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
熱転写層が別個の層によって形成される場合もあるが、少なくとも幾つかの実施形態においては、熱転写層が構造内に複数の構成成分及び/又は複数の用途を有する層を含んでもよいことが理解されよう。少なくとも幾つかの実施形態においては、2層以上の別個の層が転写中にともに混合され得る、あるいは一体化されたり反応したりすることもまた理解されよう。いかなる場合でも、これらの層は、混合あるいは一体化されていても、個々の層と称される。例えば、上述したように接着剤層を含む一実施形態では、接着剤層の物質は、別個の層に、幾分混合した2つの個々の層に、あるいは接着剤並びに触媒物質(及び存在するかもしれない他の任意物質)を含む1つの層に、存在してよい。
【0040】
図1bは、ドナー要素120の別の実施形態を示す。この代表的ドナー要素120は、ドナー基材122、熱転写層124を含み、かつ供与基材122と熱転写層124との間に配置された光熱変換(LTHC)層126をも含む。LTHC層126は、光エネルギーを熱エネルギーへと変換する放射線吸収体を含有する。光エネルギーの熱エネルギーへの転換によって、熱転写層124の少なくとも一部がレセプター(図示せず)に転写される。
【0041】
放射線誘導熱転写において、LTHC層126は、発光源からドナー要素中へと放射される光のエネルギーと組み合わされる。一実施形態では、LTHC層は、入射光(例えば、レーザー光線)を吸収して、入射光の少なくとも一部を熱に変換し、ドナー要素からレセプターへと熱転写層を転写することができる放射線吸収体を含む。幾つかの実施形態では、別個のLTHC層は存在しないが、代わりに、ドナー基材又は熱転写層などのドナー要素の別の層中に放射線吸収体が配置される。その他の実施形態では、ドナー要素は、LTHC層を含み、かつ例えばドナー基材又は熱転写層などのドナー要素のその他の層の1つ以上の中に配置される追加の放射線吸収体(単一又は複数)をも含む。更に他の実施形態では、ドナー要素は、LTHC層又は放射線吸収体を含まず、かつドナー要素と接触する発熱体を使用して熱転写層が転写される。
【0042】
典型的には、LTHC層(又はその他の層)中の放射線吸収体は、電磁スペクトルの赤外線、可視線、及び/又は紫外線領域内の光を吸収する。放射線吸収体は通常、選択された結像用放射線を極めて吸収しやすく、0.2〜3の範囲の、そして一実施形態では、0.5〜2の範囲の、結像用放射線波長における光学密度を提供する。好適な放射線吸収性材料には、例えば、染料(例えば、可視染料、紫外線染料、赤外線染料、螢光染料、及び放射線偏光染料)、色素、金属、金属化合物、金属フィルム、及び他の好適な吸収材料などが挙げられる。好適な放射線吸収体の例には、カーボンブラック、金属酸化物、及び金属硫化物を挙げることができる。
【0043】
好適なLTHC層の一例としては、カーボンブラックなどの色素、有機ポリマーなどの結合剤を挙げることができる。別の好適なLTHC層としては、薄膜として形成された金属又は金属/金属酸化物、例えば黒色アルミニウム(即ち、黒い外観を有する部分酸化アルミニウム)を挙げることができる。金属及び金属化合物フィルムが、例えば、スパッタリング及び蒸着などの技術によって形成されてよい。微粒子コーティングは、結合剤及び任意の好適な乾式又は湿式コーティング技術を用いて形成されてよい。
【0044】
放射線吸収体材料を、LTHC層の全体にわたって均一に配置することができ、又は不均一に分散させることができる。例えば、米国特許第6,228,555号に記載されているように(その開示は本発明において参考として含まれる)、非均一LTHC層を使用して、ドナー要素の温度特性をコントロールできる。これにより、より高い転写感度(例えば、意図した転写パターンと実際の転写パターンとの間のより良好な忠実度)を有するドナー要素を得ることができる。
【0045】
LTHC層中にて放射線吸収剤として使用するのに好適な染料は、粒子状形態で存在してもよく、結合剤物質中に溶解されていてもよく、又は少なくとも部分的に結合剤物質中に分散されていてもよい。
【0046】
分散微粒子放射線吸収剤を用いる場合、粒径は、少なくとも幾つかの場合には、約10μm以下であってよく、約1μm以下であってよい。好適な染料としては、スペクトルの赤外線領域を吸収する染料が挙げられる。このような染料類の例は、M.マツオカ(Matsuoka, M.)著、「赤外線吸収材料(Infrared Absorbing Materials)」(プレナム出版社(Plenum Press)、ニューヨーク、1990年)、M.マツオカ(Matsuoka, M.)、「ダイオード・レーザー用染料の吸収スペクトル(Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers)」(ぶんしん出版社(Bunshin Publishing Co.)、東京、1990年)、米国特許第4,722,583号、同第4,833,124号、同第4,912,083号、同第4,942,141号、同第4,948,776号、同第4,948,778号、同第4,950,639号、同第4,940,640号、同第4,952,552号、同第5,023,229号、同第5,024,990号、同第5,156,938号、同5,286,604号;同第5,340,699号、同第5,351,617号、同第5,360,694号、及び同第5,401,607号、欧州特許第321,923号及び同第568,993号、並びにK.A.ベイロ(Beilo, K. A.)ら著、「化学協会雑誌・化学通信(J. Chem. Soc., Chem. Commun.)」(第1993号、452〜454ページ、1993年)(それらの全てを参考として引用し、本明細書に組み込む)に見い出すことができる。グレンダール・プロテクティブ・テクノロジーズ社(Glendale Protective Technologies, Inc.)(フロリダ州レイクランド(Lakeland))から、CYASORB IR−99、IR−126、及びIR−165の表記にて販売されている赤外線吸収剤を使用してもよい。具体的な染料は、具体的な結合剤及び/又はコーティング溶媒中での溶解度及びそれとの相溶性、並びに吸収の波長範囲などの要因に基づき選択されてよい。
【0047】
色素材料もまた、放射線吸収材としてLTHC層中で用いられてもよい。好適な色素の例としては、フタロシアニン、ニッケルジチオレンに加え、カーボンブラック及びグラファイト、並びに参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,166,024号及び同第5,351,617号に記載されるその他の色素が挙げられる。更に、例えば、ピラゾロンイエロー、ジアニシジンレッド、及びニッケルアゾイエローの銅又はクロム錯体に基づく黒色アゾ色素が有用であり得る。例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、亜鉛、チタン、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、イリジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、金、ジルコニウム、鉄、鉛、及びテルル等の金属酸化物及び硫化物などの無機色素もまた、用いることができる。金属ホウ化物、炭化物、窒化物、炭窒化物、青銅構造酸化物、及び青銅族(例えば、WO2.9)に構造的に関連する酸化物もまた使用されてよい。
【0048】
金属性放射線吸収剤は、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,252,671号に記載されるような粒子形態にて、又は参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,256,506号に開示されるようなフィルム形態のいずれかにて使用されてよい。好適な金属としては、例えば、アルミニウム、ビスマス、スズ、インジウム、テルル及び亜鉛が挙げられる。
【0049】
示したように、結合剤中に粒子状放射線吸収体を配置してよい。コーティング中の放射線吸収体の重量%は、重量%の計算において溶剤を除き、一般に、1重量%〜30重量%であり、一実施形態では、3重量%〜20重量%であり、かつ別の実施形態では、5重量%〜15重量%であるが、LTHC中で使用する特定の放射線吸収体(単一又は複数)及び結合剤(単一又は複数)に依存する。
【0050】
LTHC層中にて使用するのに好適な結合剤としては、例えば、フェノール樹脂(例えば、ノボラック及びレゾール樹脂)、ポリビニルブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、セルロースエーテル及びエステル、ニトロセルロース、及びポリカーボネートなどのフィルム形成ポリマーが挙げられる。好適な結合剤には、重合又は架橋した、又は重合又は架橋可能であるモノマー、オリゴマー、又はポリマーが挙げられてよい。幾つかの実施形態では、結合剤は主として、任意のポリマーと架橋可能なモノマー及び/又はオリゴマーからなるコーティング材を使用して形成される。結合剤中にポリマーを使用する場合、結合剤は、1〜50重量%を、一実施形態では、10〜45重量%のポリマー(重量%を計算する場合、溶剤は除く)を含む。
【0051】
ドナー基材上にコーティングする際に、モノマー、オリゴマー、及びポリマーを架橋して、LTHCを形成してよい。場合によっては、LTHC層の架橋が低すぎる場合、LTHC層は、熱によって損傷される、及び/又は転写層によりLTHC層の一部分がレセプターに転写される場合がある。
【0052】
少なくとも場合によって、熱可塑性樹脂(例えば、ポリマー)を含有することにより、LTHC層の性能(例えば、転写特性及び/又はコーティング性)が改善される可能性がある。熱可塑性樹脂が、ドナー基材へのLTHC層の接着性を改善する場合があると考えられる。一実施形態では、結合剤は、25〜50重量%(重量パーセントを計算するとき、溶剤を除外する)の熱可塑性樹脂、かつ一実施形態では、30〜45重量%の熱可塑性樹脂を含むが、より低量の熱可塑性樹脂(例えば、1〜15重量%)を使用してよい。典型的に、熱可塑性樹脂は、結合剤のその他の材料と相溶する(即ち、単一相混合の形成)ように選択される。当業者には知られているように、溶解度パラメータを使用して、相溶性を示すことができる。少なくとも幾つかの実施形態では、9〜13(cal/cm3)1/2、一実施形態では、9.5〜12(cal/cm3)1/2の範囲の溶解度パラメータを有する熱可塑性樹脂が結合剤のために選択される。好適な熱可塑性樹脂の例としては、ポリアクリル酸、スチレン−アクリルポリマー及び樹脂、並びにポリビニルブチラールなどがある。
【0053】
コーティングプロセスを促進するために、界面活性剤及び分散剤などの従来のコーティング補助剤が添加されてよい。当該技術分野において既知の種々のコーティング方法を使用して、LTHC層をドナー基材上にコーティングしてよい。少なくとも場合によっては、高分子又は有機LTHC層を0.05μm〜20μmの厚みで、一実施形態では、0.5μmから10μmの厚みで、かつ一実施形態では、1μm〜7μmの厚みでコーティングされる。少なくとも場合によっては、無機LTHC層を0.001〜10μmの範囲の厚みで、かつ一実施形態では、0.002〜1μmの範囲の厚みまでコーティングされる。
【0054】
ドナー要素130の別の例が図1cに示され、かつドナー基材132、LTHC層136、中間層138、熱転写層134を含む。中間層138は一般に、熱転写層の転写部分の損傷及び汚染を最小化するために、かつ更に熱転写層の転写部分の変形を低減するために、ドナー要素中のLTHC層136と熱転写層134の間に配置される。中間層138はまた、ドナー要素残部への熱転写層の接着性に影響を与える場合がある。典型的には、中間層138は、高い耐熱性を有する。一実施形態では、中間層138は、特に、転写されたイメージを非機能的にする程度にまで、画像形成条件下で変形又は化学分解しない。中間層138は典型的には、転写プロセスの間、LTHC層136に接触したままであり、実質的に熱転写層134とともに転写されない。
【0055】
好適な中間層138としては、ポリマーフィルム、金属層(例えば、蒸着金属層)、無機層(例えば、ゾル/ゲル堆積層及び無機酸化物(例えば、シリカ、チタニア、及びその他の金属酸化物)の蒸着層)、並びに有機/無機複合層が挙げられるが、これらに限定されない。中間層材料として好適な有機材料としては、熱硬化性及び熱可塑性材料の両方が挙げられるが、これらに限定されない。好適な熱硬化性材料には、架橋された又は架橋可能なポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ、及びポリウレタンが挙げられるがこれらに限定されない、熱、放射線、又は化学処理によって架橋され得る樹脂が挙げられる。熱硬化性材料は、例えば、熱可塑性前駆体としてLTHC層136上にコーティングされ、続いて架橋された中間層を形成するよう架橋されてよい。
【0056】
適した熱可塑性材料には、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエステル、及びポリイミドなどが挙げられる。これらの熱可塑性有機材料を、従来のコーティング技術(例えば、溶剤コーティング、噴霧コーティング、又は押出しコーティング)によって適用してよい。通常は、中間層に用いるのに好適な熱可塑性材料のガラス転移温度(Tg)は、約25℃以上であり、一実施形態では、50℃以上であり、一実施形態では、100℃以上であり、かつ、別の実施形態では、150℃以上である。中間層は、画像形成放射線波長において、透過性、吸収性、反射性であるか、又はそれらの特定の組み合わせのどちらであってもよい。
【0057】
中間層材料として好適な無機材料には、画像形成光波長において非常に透過性又は反射性である材料を含む、例えば、金属、金属酸化物、金属硫化物、及び無機炭素コーティングが挙げられる。これらの材料は、従来技術(例えば、真空スパッタリング、真空蒸着又はプラズマジェット蒸着)により、光熱変換層に適用されてよい。
【0058】
中間層は、多くの利益をもたらし得る。中間層は、光熱変換層からの材料の転写に対してのバリアであり得る。それはまた、熱的に不安定な材料を転写することができるように、転写層において達する温度を調節できる。中間層の存在はまた、転写された材料の塑性復原を改善し得る。
【0059】
中間層は、例えば、光開始剤、界面活性剤、色素、可塑剤、及びコーティング補助剤を含む添加剤を含んでよい。中間層の厚さは、例えば、中間層の材料、LTHC層の材料、転写層の材料、画像形成放射線の波長、及び熱転写要素が画像形成放射線に暴露される持続時間等の要因に依存してよい。ポリマー中間層の場合、中間層の厚さは、通常、0.05μm〜10μmの範囲であり、一実施形態では、約0.1μm〜4μmであり、一実施形態では、0.5μm〜3μmであり、一実施形態では、0.8μm〜2μmである。無機中間層(例えば、金属又は金属化合物中間層)の場合、中間層の厚さは通常、0.005μm〜10μmの範囲であり、一実施形態では、約0.01μm〜3μmであり、一実施形態では、約0.02μm〜1μmである。
【0060】
図1dに示される、別の好適なドナー要素140は、ドナー基材142、LTHC層146、熱転写層144、中間層148、任意のプライマー層143、及び任意の剥離層145を含む。
【0061】
ドナー要素は、任意の剥離層145を含むことができる。任意の剥離層145は通常、例えば、発光源又は発熱体によってドナー要素を加熱した際の、ドナー要素(例えば、中間層及び/又はLTHC層)の残部からの熱転写層144の剥離を促進する。少なくとも幾つかの場合においては、剥離層は、加熱前にドナー要素残部への熱転写層の接着性を幾分提供する。好適な剥離層としては、導電性及び非導電性熱可塑性ポリマー、導電性及び非導電性充填ポリマー、並びに/又は導電性及び非導電性分散体が挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリマーの例としては、アクリルポリマー、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリアセチレン、及び当業者に既知のその他の導電性有機材料が挙げられる。好適な導電性分散液の例には、カーボンブラック、グラファイト、超微細微粒子インジウムスズ酸化物、超微細アンチモンスズ酸化物、並びにナノフェーズ・テクノロジーズ・コーポレーション(Nanophase Technologies Corporation)(イリノイ州バーリッジ(Burr Ridge))及びメテック(Metech)(ペンシルバニア州エルバーソン(Elverson))等の会社から市販される材料を含有するインクが挙げられる。剥離層のために好適なその他の材料としては、例えば、米国特許第5,747,217号(参考として本明細書に組み込まれている)に記載される材料を含む、昇華性絶縁材料及び昇華性半導体材料(フタロシアニンなど)が挙げられる。
【0062】
任意の剥離層145は、熱転写層の一部であってよく、あるいは別個の層であってよい。剥離層の全部又は一部は、熱転写層とともに転写されてよい。あるいは、ほとんどの又はほぼ全ての剥離層は、熱転写層が転写された際に、ドナー基材とともにとどまることができる。例えば昇華性材料を含む剥離層を用いる幾つかの場合には、転写工程中に剥離層の一部が消失することがある。
【0063】
典型的には、ドナー基材142とLTHC層146を形成するために使用される材料は、LTHC層146とドナー基材142との間の接着性を向上させるように選択する。任意の下塗層143を使用して、後続層コーティング中の均一性を増大させることができ、更には、LTHC層146とドナー基材142との間の層間結合強度を増大させることができる。任意のプライマー層を備えた好適な基材の一例は、テイジン(Teijin Ltd.)(製品番号HPE100、大阪、日本)から入手可能である。
【0064】
材料は、ドナー基材上にコーティングして、ドナー要素の熱転写層を形成できる。次に、ドナーからレセプターへの選択的熱転写によって、熱転写層材料をパターニングできる。ドナー上へのコーティング、続いて選択的転写によるパターニングは、層コーティング工程を層パターニング工程から分離することを意味する。コーティング工程とパターニング工程を分離する利点は、パターニング困難な(可能な限り、従来のパターニング工程を使用する)その他の材料の上部へ又はそれに隣接して、材料をパターニングできることである。例えば、本明細書で記載する方法では、溶解され、攻撃され、浸透され、かつ/又は溶剤の存在下にてその使用目的に対して使用不可能にし、溶剤感受性材料上に直接コーティングされる溶剤コーティング層である、溶剤感受性材料の最上部に溶剤コーティング層をパターニングできる。
【0065】
ドナー要素の熱転写層は、第一材料をドナー上に溶剤コーティングし、コーティングを適切に乾燥させ、次に第1材料をコーティングするために使用した溶剤の影響を受けやすい材料を含む第2の層を堆積させることによって製造できる。第2層への損傷は、第2層のコーティング前に、溶剤の多く又はほとんどを蒸発、さもなければ除去することによって、最小化又は排除できる。ドナー要素からレセプターへ、この多成分系熱転写層を熱転写することによって、第2層は、レセプターと溶剤コーティング第一材料との間に配置される。複数層ユニットの熱転写によって、レセプター上の転写層は、ドナー要素上の順番に対して、逆順となる。これによって、溶剤コーティング層下にて、溶剤感受性層をパターニングできる。加えて、層を複数層ユニットとしてともに転写する必要がない。溶剤感受性材料(単一又は複数)は、ドナー要素から熱転写し、続いて別のドナーを使用した別の熱転写工程によって溶剤コーティング材料(単一又は複数)を転写することを含む任意の好適な方法によってパターニングできる。溶剤と不相溶性のレセプター上の材料又は層に隣接してはいるが、必ずしもそれと接触していない溶剤コーティング材料のパターニングされた熱転写についても同様である。
【0066】
代表的方法を図2a〜図2cにて例示する。図2aは、上記ドナー要素230をレセプター200の表面に隣接して配置する工程を示す。この例示的ドナー要素230は、ドナー基材232、並びに熱転写層234(剥離層235、触媒層237(触媒物質を含む層)、及びポリマー層233(ポリマー結合剤物質を含む層)から構成されている)を含む。幾つかの実施形態では、触媒層237及びポリマー層233は、1つの均質層であり得る。一実施形態において、ドナー要素はレセプター表面と接触させられる。ドナー要素及びレセプターは、ドナー要素の熱転写層がレセプター表面に隣接して配置されるように構成される。少なくとも幾つかの実施形態においては、圧力又は真空を使用して、レセプター表面とぴったりと接触するようにドナー要素を保持できる。
【0067】
ドナー要素をそこへ転写可能なレセプターは、そこへ熱転写層が接着可能な、あるいはそこへ接着可能にすることができる、任意の材料を含むことができる。利用される特定のレセプターは、本明細書にて開示した方法を使用して加工される物品に少なくともある程度は依存し得る。レセプターの例としては、ポリマーフィルム、ガラス、又は金属などの任意の有用材料が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーフィルムの1つの好適な種類は、ポリエステルフィルム、例えば、PET又はPENフィルムである。一実施形態では、ガラスがレセプターである。別の実施形態では、レセプターは、フラットパネルディスプレイ裏面又はその機素などの電気又は電子回路のための支持体としての、ガラス又はポリマーを含む。利用可能な代表的レセプターは、熱転写層の熱転写に先立ってコンディショニング、又は処理できる。コンディショニングは、プラズマ又はオゾン若しくは有機過酸化物などの反応性化学物質へさらすなどの洗浄処理を含み得る。処理は更に、所望により、例えば、シランカップリング剤又は界面活性剤を用いた化学的表面改質を含み得る。
【0068】
本明細書に開示される方法において、ドナー要素がレセプターに隣接して配置された後、ドナー要素の熱転写層の少なくとも一部は、レセプターへと熱転写される。図2aの矢印250は、ドナー要素230の少なくとも一部をレセプター200へと転写する、熱エネルギーの適用を概略的に示す。ドナー要素230の少なくとも一部へと適用されるエネルギーは、エネルギーにさらされる熱転写層234の一部を転写するように機能する。
【0069】
放射線(例えば、光)を使用した熱転写の場合、開示された方法にて種々の放射線放出源が使用可能である。一実施形態では、転写はレーザーにて実施される。アナログ技術(例えば、マスクを通しての露光)には、高出力光源(例えば、キセノンフラッシュ・ランプ及びレーザー)が有用である。デジタルイメージング技術のためには、赤外線、可視光線、及び紫外線レーザーが特に有用であり得る。好適なレーザーには、例えば、高出力(例えば、≧100mW)単一モードレーザーダイオード、ファイバー連結レーザー・ダイオード、及びダイオード励起固体レーザー(例えば、Nd:YAG及びNd:YLF)が挙げられる。レーザー露光のドウェル時間は、例えば、約0.1マイクロ秒〜100マイクロ秒の範囲であることができ、レーザーフラックス(laser fluxes)は、例えば約0.01〜約1J/cm2の範囲であることができる。
【0070】
広領域にわたって、高いスポット配置精度が開示される場合(例えば、大量情報フルカラーディスプレイ用途)、レーザーは放射線源として特に有用であり得る。レーザー源は、大きな剛性基材(例えば、1m×1m×1mmのガラス)、及び連続的又はシート状フィルム基材(例えば、厚さ100μmのポリイミドシート)の両方に適合する。
【0071】
抵抗サーマルプリントヘッド又はアレイは、例えば、LTHC層及び放射線吸収体を含まない簡略化したドナー要素構造物とともに使用してもよい。これは、基材サイズがより小さい場合(例えば、任意の方向で約30cm未満)、あるいは英数字でセグメント化されたディスプレイに要求されるようなより大きいパターンの場合に特に有用であり得る。
【0072】
一般に、放射線源を使用して、LTHC層(及び/又は放射線吸収体を含有するその他の層(単一又は複数))をイメージ形成の形態で(例えば、デジタル的にあるいはアナログ的にマスクを介した露光によって)加熱し、ドナー要素からレセプターへとパターンに従って熱転写層をイメージで転写する。
【0073】
あるいは、抵抗発熱体などの発熱体を使用して、熱転写層を転写してよい。ドナー要素は、選択的に発熱体と接触させて、パターンに従って熱転写層の一部を熱転写できる。別の実施形態では、ドナー要素は、層に適用された電流を熱に変換できる層を含んでよい。
【0074】
通常、熱転写層は、任意の中間層及びLTHC層などのドナー要素のいかなるその他の層も転写することなく、レセプターへと転写される。任意の中間層が存在することにより、LTHC層からレセプターへの転写が排除又は低減され、又は熱転写層の転写部分の変形が低減される。一実施形態では、イメージング条件下にて、LTHC層への中間層の接着性は、熱転写層への中間層の接着性より大きい。場合によっては、反射性又は吸収性中間層を使用して、中間層を貫通するイメージング放射線レベルを減衰し、かつ放射された放射線と熱転写層及び/又はレセプターとの相互作用に起因し得る、熱転写層の転写部分へのあらゆる損傷を低減できる。レセプターがイメージング放射線を極めて吸収しやすい場合に生じうる熱損傷の低減において、これは特に有益であり得る。
【0075】
1メートル以上の長さ及び幅寸法を有するドナー要素を包含する、大きなドナー要素を使用することが可能である。操作においては、大きなドナー要素にわたってレーザーをラスターするか又は他の方法で移動させることができ、レーザーが所望のパターンに従ってドナー要素の部分を照らすように選択的に作動される。あるいは、レーザーが固定され、ドナー要素がレーザーの真下に移動されてもよい。
【0076】
1つ以上のドナー要素からの材料の選択的熱転写によって、材料をレセプター上にパターニングできる。ドナー要素は、ドナー要素の選択部分に指向性の熱を適用することによって加熱できる。発熱体を使用して(例えば、抵抗発熱体)、放射線(例えば、光線)を熱に変換して、及び/又は熱を発生させるよう電流をドナー要素の層へ適用することによって、熱を発生させることができる。多くの場合、例えば、ランプ又はレーザーからの光を使用する熱転写は、多くの場合に達成可能な正確性及び精度ゆえに有利であり得る。転写パターン(例えば、線、円形、正方形、又は他の形状)の寸法及び形状は、例えば、光線の大きさ、光線の露光パターン、ドナー要素と接触する向けられた光線の持続時間、並びに/又はドナー要素の材料を選択することにより制御できる。
【0077】
光を使用した熱転写は多くの場合、非常に小さなデバイス、例えば、小さな光学及び電子デバイス(例えば、トランジスタ及び集積回路のその他の部品を含む)、並びにエレクトロルミネセンスランプなどのディスプレイ及び制御回路に使用される部品に、より高い精度及び品質管理を提供する。更に、光を使用した熱転写は、少なくとも場合によっては、デバイス寸法よりも大きな領域にわたって複数のデバイスを形成する際に、より良い位置決めを提供し得る。一例として、多くの画素を持つディスプレイの部品は、この方法を使用して形成できる。
【0078】
場合によっては、複数のドナー要素を使用して、デバイス又はその他の対象体を形成し、あるいは隣接したデバイス、その他の対象物、又はその部分を形成してよい。複数のドナー要素としては、多成分系熱転写ユニットを備えたドナー要素及び単一熱転写層を転写するドナー要素が挙げられる。例えば、デバイス又はその他の対象体は、1つ以上の多成分系熱転写ユニットを備えたドナー要素及び/又はそれぞれが単一層若しくは多層ユニットを転写するために使用可能な1つ以上のドナー要素を用いて形成してよい。
【0079】
デバイス又はデバイスアレイを形成するために1種以上の層を熱転写して、例えば、多くの電子デバイス及び光学デバイスを形成するために使用されるフォトリソグラフィー・パターニングなどのプロセスの湿式処理工程を低減又は排除することもまた有用であり得る。ドナー要素から層をパターニングするための熱転写もまた、パターニング工程から層コーティング工程を分離する(例えば、このような組み合わせは、層状構造体のタイプが制限されたり、パターニング可能な隣接構造体のタイプが制限されたりする)ために有用であり得る。フォトリソグラフィ、インクジェット、スクリーン印刷及び各種マスクベース技術などの従来のパターニングプロセスにおいては、層は通常、基材上に直接コーティングされ、そこでパターニングされる。パターニングはコーティングと同時に生じ得る(インクジェット、スクリーン印刷、及び幾つかのマスクベースプロセス)か、コーティングの後で、エッチング又は別の除去技術によって生じ得る。このような従来のアプローチにおける問題は、材料をコーティングするために溶剤が使用されること、かつ/又は材料をパターニングするためにエッチングプロセスが使用されるために、予めコーティングした又はパターニングした層若しくは材料を損傷したり、溶解したり、浸透したり、かつ/若しくは操作不能にしたりすることである。
【0080】
図2bは、ドナー要素230がエネルギーにさらされた後のドナー要素230及びレセプター200を示す。図2bに示すように、熱エネルギーにさらされたドナー要素230の一部がレセプター(即ち、熱転写層の転写部分234b)へ転写される。熱エネルギーにさらされなかったドナー要素230の一部は、ドナー基材232上の熱転写層(即ち、熱転写層の残部234a)を保持する。
【0081】
触媒前駆体を含む一実施形態では、熱転写層の少なくとも一部がレセプターへと転写される前、その間、あるいはその後に、触媒前駆体を活性触媒へと変換できる。触媒前駆体のタイプに応じて、熱転写工程の前、その間、あるいはその後にて、活性化条件を実施できる。触媒前駆体が熱的に活性触媒へと変換される一実施形態において、熱転写層の熱転写中に活性化条件が生じ得る。あるいは、熱的に活性化可能な触媒前駆体を含む一実施形態では、触媒前駆体は熱転写層の熱転写の前後において活性化可能である。例えば、触媒前駆体は熱処理されて熱転写層が転写される前後において、ナノ粒子を形成できる。
【0082】
触媒前駆体の熱活性化の詳細は、少なくともある程度は使用された特定の前駆体に依存する。本明細書の開示を考えれば、当業者は、利用可能な特定の触媒前駆体をいかに活性化するかを知るであろう。例えば、利用される特定の触媒前駆体によっては、当業者は利用すべき特定タイプ及び特性の活性化エネルギーを知るであろう。例えば、幾つかの触媒前駆体は、多数の供給源(アルゴンイオンレーザー、Nd:YAGレーザー、及びシンクロトロンシステムを含むがこれらに限定するものではない)からのエネルギーによって活性化できる。当業者は、特定の触媒前駆体を選択した場合、エネルギー供給源のタイプ及びそのエネルギー供給源を使用する特定機能の詳細を知るであろう。
【0083】
熱転写層の少なくとも一部がレセプターへと熱転写された後、本明細書に開示される方法の次の段階は、触媒物質の上に金属材料を成長させることによって、金属材料をレセプター上へ無電解的に堆積することである。図2cは、金属材料242が熱転写層の転写部分234bの上に堆積された後の本代表的物品を示す。触媒材料が触媒前駆体である実施形態では、無電解メッキ工程の前又はその最中に、触媒前駆体を活性触媒へと変換できる。例えば、パターニングされたレセプター表面は、還元剤を含む無電解メッキ恒温槽内に置くことができる。
【0084】
用語「無電解メッキ」とは、金属の無電解めっきメッキプロセスを意味する。これは、典型的には、可溶性形態の堆積金属を還元剤とともに含有する無電解めっき溶液の使用を伴う。可溶性形態の堆積金属は、通常は、イオン種又は無機錯体(即ち、1つ以上の配位子に配位した金属種)である。一般に、無電解メッキは、コーティングされる被加工物への電流印加を含まない。ドナー要素からレセプター表面へと、触媒物質を含む熱転写層が一旦熱転写すると、レセプターを適切なメッキ浴内に浸漬させることができる。触媒物質、又は活性化された触媒物質(触媒前駆体の場合)は、めっき溶液からの堆積金属の堆積を触媒する。一旦開始されると、溶液金属供給源の連続的還元によってめっきは進行し、それ自体の金属表面によって触媒され、したがって、用語「自己触媒」と呼ばれる。別の実施形態では、無電解メッキは変位反応を伴い得る。このような実施形態では、第1金属を第2金属の金属塩の溶液中に浸漬させ、第1金属表面の一部を攻撃して、その表面に第2金属を同時に自然に堆積する。第1金属は、還元剤として機能し、用語「触媒物質」が利用される場合には、更に本明細書において参照される。
【0085】
無電解メッキを使用して形成できる金属材料としては、銅、ニッケル、金、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、コバルト、並びにこれらの金属の相互の又はリン若しくはホウ素との合金、並びにこれらの金属の相互の又はリン若しくはホウ素との化合物が挙げられる。別の実施形態では、自己触媒の代わりに変位メカニズムを介する化学メッキを使用して、亜鉛を形成できる。一例において、金属堆積金属としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、又は幾つかのこれらの組み合わせが挙げられる。堆積金属及び触媒物質は、同一であるか又は異なることができる。
【0086】
無電解メッキを触媒するために触媒物質が還元されなければならない触媒前駆体である一実施形態では、このような還元は、堆積金属の触媒成長とは別に又は金属堆積の触媒成長と同期して生じ得る。触媒物質が触媒成長とは別個に還元されるプロセスによって、より高速でそれが生じ、処理上の利点を可能にするという利点を提供してよい。触媒物質は、光還元、化学還元、熱還元、又は電子線還元によって還元できる。化学還元が利用される実施例では、好適な還元剤類としては、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、ホウ化水素、アミノボラン、及び次亜リン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
金属堆積を無電解的に堆積させる工程の前後において任意のすすぎ洗い工程を含む方法もまた、本明細書で利用できる。本明細書を読んだ当業者はまた、本明細書にて開示した方法の工程と組み合わせて利用可能な他の工程もまた意識するであろう。
【0088】
図3a〜図3cは、ドナー要素300及びレセプター310からなる別の代表的実施形態を示す。この代表的ドナー要素300は、少なくともドナー基材302及び熱転写層304を含む。この代表的熱転写層304は、通常、触媒物質を含む。図3a中の矢印350は、熱転写層304の少なくとも一部をレセプター310へ転写するエネルギーを概略的に示す。図3bで明らかなように、ドナー要素300をエネルギーにさらした後、レセプター310上の熱転写層の転写部分304b及びドナー基材302上の熱転写層304の残部304aとがある。図3cは、金属材料322が熱転写層の転写部分304bの上に堆積された後の物品を示す。
【0089】
本明細書にて開示する方法に伴う各種工程は通常、任意の順序で実施される。図4は、一般的に本明細書にて開示した工程を利用する1つの代表的な方法を示す。そこに見られるように、触媒物質(より具体的には、活性触媒)を有する熱転写層を含むドナー要素の少なくとも一部が、レセプターへと転写される(工程405)。次に、熱転写層の転写部分を化学メッキにさらして(工程420)、熱転写層の転写部分の上に金属材料を堆積し、それによってパターニングされた金属材料を有する物品を形成する。図4は更に、熱転写層に含まれている担体ポリマーを硬化する任意の工程430を示す。任意の硬化が、硬化した熱転写層をレセプター上に生成する。
【0090】
図5は、一般に本明細書にて開示した工程を利用する、別の代表的な方法を示す。この代表的な方法は、ドナーストックフィルムを触媒前駆体でコーティングすることによって(工程400)ドナー要素を製造し、触媒前駆体を備えたドナー要素を生成することを示す。一実施形態では、ドナーストックフィルムは、ドナー基材、LTHC層、及び中間層を含むことができる。次に、触媒前駆体を含むドナー要素は、触媒前駆体が触媒に変換される工程(工程410)か、あるいは熱転写層の少なくとも一部がレセプターへ転写される工程(工程405)のいずれかを有し得る。触媒前駆体が最初に変換される場合、次に熱転写がレセプターへ転写し(工程405)、あるいは、熱転写層が最初に転写される場合、次に触媒前駆体が活性触媒へ転換され得る(工程410)。どちらにしても、次の工程は金属材料を無電解的にメッキし(工程420)、パターニングされた金属材料を有する物品を生成するためのものである。
【0091】
図6は、触媒物質をより完全に無電解めっき溶液へとさらすためのエッチング440の任意の工程を含む方法の別の代表的実施形態を示す。当業者は、少なくとも部分的には、特定の高分子結合剤に基づいて、いかに触媒物質をさらすことができるかを容易に決定できる。
【0092】
本明細書を読んだ当業者は、図4〜図6で議論した任意の工程、及び本明細書のその他の部分を任意の適用可能な順序で組み合わせて、本明細書にて開示する方法を実施できることを理解するであろう。
【0093】
本明細書記載の方法を使用して形成された物品もまた、本明細書で開示される。開示された方法を使用して作製可能な物品は通常、金属材料で被われた熱転写層のパターニング部分を有する。一実施形態では、金属材料、即ち、金属コーティングで被われた熱転写層のパターニング部分は、全体的特徴と称される。一般に、熱転写層及び金属材料の部分、即ち、全体的特徴は、任意の寸法であり得る。一実施形態では、全体的特徴の寸法は、パターニングされた熱転写層の高さと金属材料の高さの両方を含む。これにより、全体的特徴の寸法は、幅が約1マイクロメートル(μm)以上で、高さが約20ナノメートル(nm)以上であり得る。このような物品の場合、熱転写層のパターニング部分の寸法は、幅が約1μmかつ高さが約20ナノメートル以上であり得る。一般に、熱転写層のパターニング部分上での金属材料の深さは、約1オングストローム(Å)以上である。当業者は、金属めっきをより長時間行うほど、金属材料層が厚くなることを理解するであろう。
【0094】
本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料のグリッドを有し、かつこのような物品を、例えば、電磁界干渉(EMI)遮蔽のために使用することができる。本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料を微量に有することができ、かつこのような物品は、例えば、タッチスクリーン、センサー応用、回路に使用して、反射性表示を作製したり、又は流量デバイス(パターニングされた金属様付着物は、親水性であり得、かつ非パターニング部分は疎水性であり得る)を作製したりできる。本明細書に開示される方法を使用して形成可能な代表的物品は、複数ディスプレイ・バックプレーンをマザーガラス(銅又はその他導電性金属のバスラインを備える)上に備えたフラットパネル・ディスプレイ・バックプレーンである。本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料の繰り返しドット又はアイランドを有し、かつこのような物品を、例えば、遮蔽効果を生成するために使用できる。物品は、電流を伝導するために使用可能な金属堆積物パターンを含む。
【0095】
本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、金属材料の反射性又は半透明層を有することができ、かつこのような物品は、例えば、微小電気機械(MEMs)又は微小電気光学デバイスのために使用できる。本明細書に開示される方法を使用して形成可能な代表的物品としては、マイクロミラー・アレイが挙げられる。
【0096】
本明細書で記載されかつ形成される代表的物品は、有利には、レセプター、熱転写層の一部、金属材料、又は幾つかのこれらの組み合わせ(全体的な物品の熱膨張特性が類似するようにされた)を有することができる。当業者は更に、本明細書にて開示する方法を使用して物品が一旦形成されると、本開示の範囲から逸脱することなく、更なる処理工程をその物品上で実施できるということを理解するであろう。
【実施例】
【0097】
本開示のこれらの一般概念を念頭に置いて、代表的ドナー要素、熱転写法、及び熱転写法によって作製されたデバイスについて、説明する。
【0098】
ドナーストックフィルム(ドナー基材、LTHC層、及び中間層)は、以下の方法で作製した。LTHC溶液(表1)をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(M7Q、2.88ミル、デュポン・テイジン・フィルムズ(DuPont Teijin Films)(バージニア州ホープウェル(Hopewell)))上にコーティングした。LTHC溶液を実験室用マイクログルーヴコーター(型式CAG−150、康井精機(Yasui Seiki)(日本、神奈川)にて適用し、約2.7マイクロメートルの乾燥厚みを得た。コーティングは、紫外線(UV)照射下、インラインにて乾燥及び硬化させた。硬化させたコーティングは、1064nmの波長を有する入射光線を使用して測定した際、約1.18の光学密度を有した。中間層溶液(表2)は、LTHCと同一の方法を用いてコーティングし、約1.8マイクロメートルの乾燥厚みを得た。コーティングは、紫外線(UV)照射下、インラインにて乾燥及び硬化させた。
【0099】
【表1】
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
サンプル1ドナー要素は、以下の方法で作製した。上述の如くLTHCとILの両方を含むドナーストックフィルムを、標準熱蒸着手順を使用し、バルザーズ(Balzers)真空槽内、バックグラウンド圧力1.3Pa(10−7トール)にて、100Åの銅フタロシアニン(CuPC)で真空コーティングした。次に、電子線堆積システムを使用して、2Å/秒の速度で、ドナーに10Åのパラジウム金属をコーティングした。次に、ポリスチレン(MW50K、ポリサイエンス社(Polysciences Inc.)(ペンシルベニア州ウォリントン(Warrington)))/ポリ(スチレン−コーメチルメタクリレート)(アルドリッチ(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)))の5重量%トルエン溶液を用い、3番メイヤーロッドを使用してCuPCにオーバーコーティングし、約200nmの乾燥厚みを得た。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0103】
サンプル2ドナー要素は、以下の方法で作製した。上述の如くLTHCとILの両方を含むドナーストックフィルムを、標準熱蒸着手順を使用し、バルザーズ(Balzers)真空槽内、バックグラウンド圧力1.3Pa(10−7トール)にて、100の銅フタロシアニン(CuPC)で真空コーティングした。次に、2Å/秒の速度で、ドナーに10Åのパラジウム金属をコーティングした。特注電子線堆積システムは、カート・レスカー社(Kurt Lesker, Inc.)によって製造された。次に、約200nmの乾燥厚みを得るために、3番メイヤーロッドを使用して、UV硬化性溶液(表5)とともに溶液にて、CuPCをオーバーコーティングした。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0104】
【表4】
【0105】
後述するようにサンプルをイメージングした後、イメージングしたサンプルを100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼き、次に、ライト・ハマー(Light Hammer)紫外線硬化システム(フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems Inc.)製)を使用して硬化させた。サンプルは、100%出力のD(電球色)バルブに6メートル/分(20フィート/分)で通過させることによって、紫外線照射に4回さらした。
【0106】
サンプル3ドナー要素は、以下の方法で作製した。上記のようにLTHCと中間層の両方を含むドナーストックフィルムに、パラジウムナノ粒子を含有するUV硬化性高分子結合剤(表6)をコーティングした。
【0107】
【表5】
【0108】
3番メイヤーロッドを使用して、溶液をコーティングし、約200nmの乾燥厚みを得た。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0109】
後述するようにサンプルをイメージングした後、イメージングしたサンプルを200℃で20分間窒素パージしたオーブン内で焼き、次に、ライト・ハマー(Light Hammer)紫外線硬化システム(フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems Inc.)製)を使用して硬化させた。サンプルは、100%出力のD(電球色)バルブに6メートル/分(20フィート/分)で通過させることによって、紫外線照射に4回さらした。次に、イメージングしたサンプルを100W出力で1分間アルゴンプラズマ処理して、Pdナノ粒子を露出させた。
【0110】
サンプル4ドナー要素は、以下の方法で作製した。上記のようにLTHCと中間層の両方を含むドナーストックフィルムに、酢酸パラジウムを含有するUV硬化性高分子結合剤(表7)をコーティングした。3番メイヤーロッドを使用して、溶液をコーティングし、約200nmの乾燥厚みを得た。次に、ドナーは100℃で10分間窒素パージしたオーブン内で焼いた。
【0111】
【表6】
【0112】
後述するようにサンプルをイメージングした後、イメージングしたサンプルを200℃で20分間窒素パージしたオーブン内で焼き、次に、ライト・ハマー(Light Hammer)紫外線硬化システム(フュージョンUVシステムズ(Fusion UV Systems Inc.)製)を使用して硬化させた。サンプルは、100%出力のD(電球色)バルブに3メートル/分(10フィート/分)で通過させることによって、紫外線照射に4回さらした。
【0113】
プラズマ・サイエンス(Plasma Science)からのアルゴンプラズマで表面処理した0.7mm厚ガラスピース基板上にサンプル番号1をラミネート加工した。アルゴンプラズマ処理は、100W出力で1分間行った。ドナーフィルムを単一モードNd:YAGレーザーレーザーをベースにしたイメージングシステム内に、フィルム平面にて1ワットの出力でさらすことによって、レーザーイメージングを実施した。リニアガルバノメーターシステムを使用して、基材をまたがるようにレーザービームを走査したが、この際、近似テレセントリック構成の一部としてのf−θスキャンレンズを使用して、像平面上に焦点を当てたレーザービームを用いた。1/e2強度で測定したレーザースポットサイズは、18×250マイクロメートルであった。ビームは、周波数400kHzで振動する三角形ディザパターンにて一定方向に走査した。公称線幅は、165マイクロメートルのピッチで、110マイクロメートルに設定した。
【0114】
サンプル番号2、3、及び4は、0.7mm厚ガラス基板ピース上にラミネート加工するが、サンプル2の場合、プラズマ・サイエンス(Plasma Science)からのアルゴンプラズマで表面処理したPETフィルムピース上にラミネート加工してもよい。アルゴンプラズマ処理は、100W出力で1分間行った。ドナーフィルムをマスクベースのイメージングシステムに、808nmの連続波モードで稼働するレーザーを用いてさらすことによって、レーザーイメージングを実施した。レーザーのスポットサイズは、100×100マイクロメートルであった。公称線幅は、165マイクロメートルのピッチで、100マイクロメートルに設定した。
【0115】
サンプルをイメージングした後、それらを無電解メッキ浴(表8)内にそれぞれ別個に浸した。メッキ浴溶液は、以下の方法で調製した。銅、タルトラート及び水酸化ナトリウムを1Lの蒸留水中に溶解させた。ホルムアルデヒドを最後に添加し、めっき溶液を55℃まで加熱した。サンプルを、20分まで浸し、銅めっきがイメージング領域に観察された。
【0116】
【表7】
【0117】
サンプル4を無電解メッキ浴にさらした後で、サンプルの顕微鏡写真を撮った。顕微鏡写真は、図7に見ることができる。
【0118】
本開示について、それらの様々な実施形態に関連して示し説明してきたが、当業者であれば、形状及び細部における様々な他の変更が、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、その分野においてなされ得ることが理解されよう。
【0119】
このため、基材パターニング方法の実施形態が開示されている。本開示が、本開示されたもの以外の実施形態で実施され得ることは、当業者には理解されよう。開示された実施形態は、図示の目的のために示され、制限のために示されてはおらず、本開示は以下の特許請求の範囲によってのみ制限される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料をレセプター上に形成する方法であって、
レセプター近傍にドナー要素を置く工程であって、該ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、該熱転写層は、触媒物質を備え、かつ該ドナー要素の該熱転写層は、該レセプターの表面近傍に置かれる工程、
該ドナー要素から該レセプターへと該熱転写層の少なくとも一部を転写する工程であって、該転写は、レーザーを使用して実施される工程、及び
該触媒物質上で金属材料を成長させることによって、該金属材料をレセプター上に無電解的に堆積させる工程、からなる方法。
【請求項2】
前記触媒物質が、触媒前駆体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒前駆体を活性な触媒物質へと変換させる工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱転写層が転写されるのと同時に、前記触媒前駆体が、変換される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱転写層が熱転写される前に、前記触媒前駆体が、変換される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記熱転写層が、高分子結合剤を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ドナー要素が、前記ドナー基材と前記熱転写層との間に配置された光熱変換層、及び該光熱変換層と前記熱転写層との間に配置された中間層を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ドナー要素が、前記中間層と前記熱転写層との間に配置された剥離層を更に備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子結合剤を架橋する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記熱転写層が前記ドナー要素から前記レセプターへと選択的に転写された後に架橋工程が完了する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ドナー基材、
光熱変換層、及び
触媒物質を含む熱転写層をこの順番で備える、熱転写ドナー要素。
【請求項12】
前記光熱変換層と前記熱転写層との間に配置された中間層を更に備える、請求項11に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項13】
前記熱転写層が、高分子結合剤を更に備える、請求項11に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項14】
前記高分子結合剤層が、架橋性高分子材料を備える、請求項13に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項15】
前記熱転写層と前記光熱変換層との間に配置された剥離層を更に備える、請求項13に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項16】
前記剥離層が、銅フタロシアニンを備える、請求項15に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項17】
レセプター基材、
レセプター基材に付着可能である、パターニングされた第1層、
触媒物質を含むパターニングされた第2層、及び
該パターニングされた第1層及び該パターニングされた第2層と同一パターンを有する、無電解的に堆積した金属材料、
をこの順番で備え、ここで、該パターニングされた第1層及び該パターニングされた第2層は、ドナー要素から前記レセプター基材へと熱転写され、かつ該レセプター基材上で見出されるそれらの順番にて該レセプター基材上に始めから形成されている場合、該第1層及び該第2層は不相溶性である、物品。
【請求項18】
前記第1層が、高分子結合剤を備える、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記高分子結合剤が、架橋されることができるか又は架橋している高分子を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記第1層及び前記第2層の不相溶性が、溶解度によるものである、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
前記第1層及び前記第2層の不相溶性が、前記第1層及び前記第2層中の1種以上の化合物によるものである、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記レセプター基材と前記第1層との間に配置された剥離層を更に備える、請求項17に記載の物品。
【請求項23】
前記金属材料が、反射性又は半透明である、請求項17に記載の物品。
【請求項24】
前記物品をマイクロミラー・アレイとして利用することができる、請求項23に記載の物品。
【請求項1】
金属材料をレセプター上に形成する方法であって、
レセプター近傍にドナー要素を置く工程であって、該ドナー要素は、ドナー基材及び熱転写層を備え、該熱転写層は、触媒物質を備え、かつ該ドナー要素の該熱転写層は、該レセプターの表面近傍に置かれる工程、
該ドナー要素から該レセプターへと該熱転写層の少なくとも一部を転写する工程であって、該転写は、レーザーを使用して実施される工程、及び
該触媒物質上で金属材料を成長させることによって、該金属材料をレセプター上に無電解的に堆積させる工程、からなる方法。
【請求項2】
前記触媒物質が、触媒前駆体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒前駆体を活性な触媒物質へと変換させる工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱転写層が転写されるのと同時に、前記触媒前駆体が、変換される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記熱転写層が熱転写される前に、前記触媒前駆体が、変換される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記熱転写層が、高分子結合剤を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ドナー要素が、前記ドナー基材と前記熱転写層との間に配置された光熱変換層、及び該光熱変換層と前記熱転写層との間に配置された中間層を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ドナー要素が、前記中間層と前記熱転写層との間に配置された剥離層を更に備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記高分子結合剤を架橋する工程を更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記熱転写層が前記ドナー要素から前記レセプターへと選択的に転写された後に架橋工程が完了する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ドナー基材、
光熱変換層、及び
触媒物質を含む熱転写層をこの順番で備える、熱転写ドナー要素。
【請求項12】
前記光熱変換層と前記熱転写層との間に配置された中間層を更に備える、請求項11に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項13】
前記熱転写層が、高分子結合剤を更に備える、請求項11に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項14】
前記高分子結合剤層が、架橋性高分子材料を備える、請求項13に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項15】
前記熱転写層と前記光熱変換層との間に配置された剥離層を更に備える、請求項13に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項16】
前記剥離層が、銅フタロシアニンを備える、請求項15に記載の熱転写ドナー要素。
【請求項17】
レセプター基材、
レセプター基材に付着可能である、パターニングされた第1層、
触媒物質を含むパターニングされた第2層、及び
該パターニングされた第1層及び該パターニングされた第2層と同一パターンを有する、無電解的に堆積した金属材料、
をこの順番で備え、ここで、該パターニングされた第1層及び該パターニングされた第2層は、ドナー要素から前記レセプター基材へと熱転写され、かつ該レセプター基材上で見出されるそれらの順番にて該レセプター基材上に始めから形成されている場合、該第1層及び該第2層は不相溶性である、物品。
【請求項18】
前記第1層が、高分子結合剤を備える、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記高分子結合剤が、架橋されることができるか又は架橋している高分子を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記第1層及び前記第2層の不相溶性が、溶解度によるものである、請求項17に記載の物品。
【請求項21】
前記第1層及び前記第2層の不相溶性が、前記第1層及び前記第2層中の1種以上の化合物によるものである、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記レセプター基材と前記第1層との間に配置された剥離層を更に備える、請求項17に記載の物品。
【請求項23】
前記金属材料が、反射性又は半透明である、請求項17に記載の物品。
【請求項24】
前記物品をマイクロミラー・アレイとして利用することができる、請求項23に記載の物品。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2010−533977(P2010−533977A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517054(P2010−517054)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068082
【国際公開番号】WO2009/012026
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/068082
【国際公開番号】WO2009/012026
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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