説明

基材の染色方法

【課題】基材あるいはハードコート層の性質を損なわず、簡易に染色濃度を変えることが可能な染色方法を提供する。
【解決手段】染色方法は、基材の表面に紫外線照射を施す紫外線照射工程と、その後に、基材を染色する染色工程とを備え、上述の紫外線照射により染色工程における基材の染色濃度を制御する。基材表面がハードコート層の場合、ハードコート層の染色濃度を容易に制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学物品としてのプラスチックレンズ、特に眼鏡用プラスチックレンズは、ファッション性の付与および目の保護のために着色して用いられることが少なくない。着色の方法としては、染料を溶媒に分散させた染色液にプラスチックレンズを浸漬して染色する方法が、簡便性、色の選択幅の広さ、ハーフおよびグラデーション染色を行なうことができる等の理由で広く使用されている。
一方、近年では眼鏡レンズの薄型化、軽量化のさらなる要求に応えるべく、チオウレタン系樹脂やエピスルフィド系樹脂等の高屈折率素材が開発されている。
しかし、このような高屈折率素材は染色性に劣るため、素材自身からなるレンズ基材を染色することは困難である。
そこで、プラスチックレンズの基材表面に設けられたハードコート層に対して染色を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。特許文献1に開示された方法によれば、ハードコート層中に、多官能エポキシ化合物のような分子鎖が長く反応性基が少ない化合物を含有させることにより、分子間の隙間を広げて染料を浸透しやすくして染色性を向上させることができる。また、特許文献2に開示された方法によれば、ハードコート層がビアリールスルフィドを含有するコーティング組成物から形成されているので、ハードコート層の硬さや耐久性を阻害せずに高い染色効果を発揮できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−096886号公報
【特許文献2】特開2008−233676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示された方法は、いずれもハードコート層の染色性を高めるものではあるが、染色の程度を制御することは困難である。例えば、ハードコート層を染色する際の染色濃度を変化させようとした場合には、染色剤の濃度を変えた多種類の染色液を準備したり、あるいは、コーティング組成物の組成を変えて種々の染色性を有するハードコート層を形成する必要がある。このような準備作業は煩雑であり、染色コストが高くなるだけでなく、ハードコート層の耐擦傷性や耐久性を低下させてしまうおそれもある。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、基材あるいはハードコート層の性質を損なわず、簡易に染色濃度を変えることが可能な染色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を重ねた結果、基材表面に紫外線照射あるいはプラズマ処理等の高エネルギー処理を施したり、オゾン処理を行うことで、染色性を制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、基材の染色方法であって、前記基材の表面に高エネルギ−処理を施す高エネルギー処理工程と、その後に、前記基材を染色する染色工程とを備え、前記高エネルギー処理により前記染色工程における前記基材の染色濃度を制御することを特徴とする。
ここで、基材への高エネルギー処理とは、紫外線等の高エネルギー電磁波の照射や電子線等の高エネルギー粒子線の照射あるいはプラズマ処理等をいう。
本発明の基材の染色方法によれば、基材の表面に高エネルギ−処理を施す高エネルギー処理工程を備えているので、その処理条件により、後工程における染色濃度を変化させることが可能となる。具体的には、高エネルギー処理により染色濃度を低下させることが可能となる。従って、高エネルギー処理工程におけるエネルギー自体の高低や処理時間を制御するという簡便な操作だけで後工程における染色濃度を制御できる。
なお、本発明では、基材表面にハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層も含めて基材と呼ぶことがある。
【0007】
本発明では、前記染色工程は、前記高エネルギー処理のエネルギーを変化させることで、前記基材の染色濃度を変化させることが好ましい。
この発明によれば、染色工程では、その前工程である高エネルギー処理工程におけるエネルギーを変化させることで基材の染色濃度を変化させるので、染色濃度の制御が簡便である。
【0008】
本発明では、前記高エネルギ−処理が紫外線照射およびプラズマ処理の少なくともいずれかであることが好ましい。
この発明によれば、前記高エネルギ−処理が紫外線照射およびプラズマ処理の少なくともいずれかであるので、処理条件の制御が容易であり、染色工程における染色濃度をよりいっそう簡便に制御することが可能となる。
ここで、紫外線照射に用いられるランプとしては、低圧水銀ランプやエキシマランプが好適である。
【0009】
本発明では、紫外線吸収能を有するマスク材を通して紫外線照射を行うことが好ましい。 このようなマスク材は、半導体分野で用いられているフォトマスクと同様な方法で製造することができる。例えば、マスク基材(石英ガラス等)の表面に、クロム(Cr)やチタン(Ti)からなる遮光膜を厚みを変えて形成すればよい。
この発明によれば、紫外線吸収能を有するマスク材を通して紫外線照射を行うので、紫外線照射される基材に対してマスク材がいわゆるフォトマスクとして機能する。すなわち、マスク材に描かれたマスクパターンによって基材の各位置に照射される紫外線の量を自由に制御できる。従って、染色工程における染色濃度を簡便に制御することが可能となる。
【0010】
本発明では、前記マスク材は、紫外線吸収剤を配合してなる組成物をマスク基材の上に液滴吐出法により形成することにより製造されたものであることが好ましい。例えば、基材の染色方法が、前記紫外線吸収剤を配合してなる組成物を前記マスク基材の上に液滴吐出法により形成するマスク材製造工程と、前記マスク材を通して紫外線照射を行う紫外線照射工程とを含んでいる場合が挙げられる。
この発明によれば、液滴吐出法(インクジェット法)によりマスク材を製造するので、マスクパターンを変化させることにより、基材表面の染色性を自由に制御できる。特に、インクジェット法によれば、マスク材のマスクパターンを極めて容易に形成することができるので好ましい。
【0011】
また、本発明は、基材の染色方法であって、前記基材の表面にオゾン処理を施すオゾン処理工程と、その後に、前記基材を染色する染色工程とを備え、前記オゾン処理により前記染色工程における前記基材の染色濃度を制御することを特徴とする。
本発明の基材の染色方法によれば、基材の表面にオゾン処理を施すオゾン処理工程を備えているので、その処理条件により、後工程における染色濃度を変化させることが可能となる。具体的には、オゾン処理により染色濃度を低下させることが可能となる。従って、オゾン処理工程におけるオゾン種やその濃度、あるいは処理時間を制御するという簡便な操作だけで後工程における染色濃度を制御できる。
【0012】
本発明は、前記染色工程では、前記オゾン処理のエネルギーを変化させることで、前記基材の染色濃度を変化させることが好ましい。
この発明によれば、染色工程では、その前工程であるオゾン処理工程におけるエネルギーを変化させることで基材の染色濃度を変化させるので、染色濃度の制御が簡便である。
【0013】
本発明では、前記基材の表面がハードコート層であり、前記染色工程では、前記ハードコート層を染色することが好ましい。
この発明によれば、染色の対象である基材の表面がハードコート層であるので基材本体の材質によらず染色濃度の制御が可能となる。特に、ハードコート層が、シランカップリング剤をベースとした処理剤により形成されたものである場合には、染色濃度の制御がより一層容易となるので好適である。
【0014】
本発明では、前記染色工程による染色に分散染料または油溶染料を用いることが好ましい。
この発明によれば、染色に分散染料または油溶染料を用いるので、基材への染色濃度をより容易に制御できる。また、染色方法としては、簡便であり浸漬条件を制御することが容易な浸漬法が好適である。さらに、染色の際に染料と樹脂の混合物を用い、浸漬および乾燥後にアニール処理を行って染料を基材層に転写させるいわゆるアニール転写法も好ましい。
【0015】
本発明では、前記基材の材質がプラスチックおよび無機ガラスのいずれかであることが好ましい。
この発明によれば、基材の材質がプラスチックおよび無機ガラスのいずれかであるので、所定の染色濃度を有するプラスチックあるいは無機ガラスを簡易な方法で提供できる。
【0016】
本発明では、前記基材が眼鏡用レンズであることが好ましい。
この発明によれば、所定の染色濃度を有する眼鏡用レンズを簡易な方法で提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る紫外線照射を示す図。
【図2】本実施形態において、紫外線照射用フォトマスクを示す図。
【図3】本実施形態において、フォトマスクを通した際のレンズ基材への紫外線照射を示す図。
【図4】本実施形態において、インクジェット染色装置を示す概略図。
【図5】本実施形態において、インクジェット染色装置によるフォトマスクの製造工程を示す概略図。
【図6】本実施例において、紫外線照射時間と各波長における吸光度との関係を示す図。
【図7】本実施例において、紫外線照射時間と600nmにおける吸光度との関係を示す図。
【図8】本実施例においてマスク材による染色濃度の違いを示す図。
【図9】本実施例において紫外線照射とオゾン処理の効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施形態では、基材として眼鏡レンズ用のプラスチックを用いる。本実施形態の基材の染色方法では、プラスチックレンズ基材表面にプライマー層とハードコート層を形成し、その上に紫外線処理を施した後、所定の染色を施す。以下、本発明の基材の染色方法について実施形態を詳細に説明する。
【0019】
〔1.プラスチックレンズ基材〕
プラスチックレンズ基材(以後、「レンズ基材」ともいう)の材質としては、透明なプラスチックであれば特に限定されないが、レンズの薄型化の観点からは、屈折率が1.6以上のプラスチックが好ましい。屈折率が1.6以上のプラスチックとして、イソシアナート基またはイソチオシアナート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるチオウレタン系プラスチック、あるいはエピスルフィド基を有する化合物を含む原料モノマーを重合硬化して製造されるエピスルフィド系プラスチック等が挙げられる。
【0020】
チオウレタン系プラスチックの主成分となるイソシアネート基またはイソチオシアネート基を持つ化合物としては、公知の化合物を用いることができる。イソシアナート基を持つ化合物の具体例としては、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、m−キシリレンジイソシアナート等が挙げられる。
【0021】
また、メルカプト基を持つ化合物としては、公知の化合物を用いることができる。例えば、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール等の脂肪族ポリチオール、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン等の芳香族ポリチオールが挙げられる。
【0022】
また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、メルカプト基以外に、硫黄原子を含むポリチオールをより好ましく用いることができる。具体例としては、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス((2−メルカプトエチル)チオ)−3−メルカプトプロパン等が挙げられる。
【0023】
エピスルフィド系プラスチックの原料モノマーとして用いられる、エピスルフィド基を持つ化合物の具体例としては、公知のエピスルフィド基を持つ化合物が何ら制限なく使用できる。例えば、既存のエポキシ化合物のエポキシ基の一部あるいは全部の酸素を硫黄で置き換えることによって得られるエピスルフィド化合物が挙げられる。
【0024】
また、プラスチックレンズの高屈折率化のためには、エピスルフィド基以外にも、硫黄原子を含有する化合物がより好ましく用いることができる。具体例としては、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィド、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、ビス−(β−エピチオプロピル)ジスルフィド等が挙げられる。
【0025】
本発明におけるレンズ基材の重合方法としては、特に限定されることなく、一般にレンズ基材の製造に用いられている重合方法を用いることができる。
例えば、素材としてビニル系モノマーを用いる場合には、有機過酸化物等の熱重合開始剤を用いて熱硬化を行い、レンズ基材を製造することができる。また、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を用いて、紫外線を照射することによってモノマーを硬化させ、レンズ基材を製造することもできる。
【0026】
また、イソシアナート基またはイソチオシアナート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を反応させることによって製造されるチオウレタン系プラスチックを用いる場合には、イソシアナート基またはイソチオシアナート基を持つ化合物と、メルカプト基を持つ化合物を混合した後、ウレタン樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって製造できる。硬化触媒の具体例としては、エチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン化合物、ジブチル錫ジクロライド、ジメチル錫ジクロライド等が挙げられる。
【0027】
さらに、レンズ素材としてエピスルフィド基を有する化合物を含む原料モノマーを重合硬化して得られるエピスルフィド系のプラスチックを用いる場合には、エピスルフィド基を持つ化合物を単独で、またはエピスルフィド基と共重合可能な他のモノマーと混合した後、エポキシ樹脂用の硬化触媒を添加、混合し、加熱により重合硬化を行うことによって製造できる。
【0028】
エポキシ樹脂用の硬化触媒は特に制限なく用いることができる。具体例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、トリジメチルアミノメチルフェノール等の3級アミン、エチルメチルイミダゾール等のイミダゾール類、などが挙げられる。
また、エピスルフィド基を持つ化合物と共重合可能な他のモノマーとしては、水酸基を持つ化合物、メルカプト基を持つ化合物、1級または2級アミン、カルボキシル基を持つ化合物などが挙げられる。
【0029】
水酸基を持つ化合物の具体例としては、イソプロピルアルコール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート等の多価アルコール類が挙げられる。メルカプト基を持つ化合物の具体例としては、チオフェノール、エチルチオグリコレート、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。
【0030】
〔2.プライマー層〕
プライマー層は、レンズ基材表面に形成される。プライマー層は、前記プラスチックレンズ基材と後述するハードコート層の双方の界面に存在して、レンズ基材上に形成される表面処理膜の耐久性を向上させる役割を担う。加えて外部からの衝撃吸収層としての性質も併せ持ち、耐衝撃性を向上させる性質も有する。また、プライマー層は、バインダー成分としての樹脂と、フィラー成分としての金属酸化物微粒子を含有したコーティング組成物を用いて形成される。バインダー成分としての樹脂は、レンズ基材とハードコート層の双方に密着性を発現する。フィラー成分としての金属酸化物微粒子は、プライマーの屈折率を発現すると共に、プライマー層の架橋密度向上に作用して、耐水性、耐候性、耐光性の向上を図ることができる。
【0031】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂等を用いることができる。これらの樹脂の内、耐久性、耐衝撃性、液ポットライフ、吸湿安定性、染色安定性、低温硬化性などの観点から、ポリエステル樹脂を好ましく用いることができる。ポリエステル樹脂は、樹脂中に密着性に作用する官能基が多数存在しており、レンズ基材およびハードコート層に対して、優れた密着性が得られるため、耐久性が向上する。
【0032】
ポリエステル樹脂としては、「特開2000−144048号公報」に記載されているポリエステル系熱可塑性エラストマーを例示することができる。ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント(H)構成成分にポリエステル、ソフトセグメント(S)構成成分にポリエーテルまたはポリエステルを用いたマルチブロック共重合体である。ハードセグメントとソフトセグメントとの重量比率[H/S]は、[30/70]〜[90/10]の範囲、望ましくは[40/60]〜[80/20]の範囲である。
【0033】
ハードセグメント構成成分としてのポリエステルは、基本的には、ジカルボン酸類と低分子グリコールよりなる。ジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、デカメチレンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸等の炭素数4〜20の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、ε−オキシカプロン酸等の脂肪族オキソカルボン酸、ダイマー酸(二重結合を有する脂肪族モノカルボン酸を二量重合させた二塩基酸)等、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらのうち、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を好ましく用いることができる。
【0034】
低分子グリコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、1,6−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族グリコール等、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられる。これらのうち、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールを好ましく用いることができる。
【0035】
一方、ソフトセグメント構成成分としてのポリエステルは、ジカルボン酸類と長鎖グリコールよりなる。
ジカルボン酸類としては、前記ハードセグメント構成成分としてのポリエステルと同様なものが挙げられる。長鎖グリコールとしては、ポリ(1,2−ブタジエングリコール)、ポリ(1,4−ブタジエングリコール)及びその水素添加物等が挙げられる。また、ε−カプロラクトン(C6)、エナントラクトン(C7)及びカプロリロラクトン(C8)もポリエステル成分として有用である。これらのうち、ε−カプロラクトンを好ましく用いることができる。
【0036】
また、ソフトセグメント構成成分のポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(1,2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1,3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等のポリ(アルキレンオキシド)グリコール類が挙げられる。これらの内、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを好ましく用いることができる。
【0037】
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの製造方法としては、例えばジカルボン酸の低級アルキルエステルを、脂肪族長鎖グリコール及び過剰の低分子グリコールをテトラブチルチタネート等の触媒の存在下で、150〜200℃の温度で加熱することにより、エステル交換反応を行い、低重合体を形成する。そして、形成された低重合体を、高真空下で、220〜280℃の温度で加熱攪拌することにより重縮合を行い、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを得る。なお、低重合体は、ジカルボン酸と長鎖グリコール及び低分子グリコールとの直接エステル化反応によっても得ることができる。
【0038】
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、他のポリマーと混合して使用することができる。例えば、通常のエステル系樹脂(PBT、PET等)、アミド系樹脂、あるいはアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのポリマーを混合して用いる場合のポリマー全体に占める割合は、50%未満、望ましくは30%未満である。
【0039】
また、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、溶液タイプのプライマー組成物に調製することができる。しかし、加工性及び環境保護の観点より水性エマルジョンのプライマー組成物として使用することが望ましい。この水性エマルジョン化は慣用の方法により行うことができるが、具体的には、ポリマーを界面活性剤(外部乳化剤)の存在下、高い機械的剪断をかけて強制的に乳化させる強制乳化法が望ましい。
【0040】
一方、フィラー成分としての金属酸化物微粒子としては、Si、Al、Ti、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等金属酸化物を用いることができる。このうち、屈折率、透明性、耐光性、安定性などの観点から酸化チタンを主成分とする金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。また、酸化チタンと他の無機酸化物との複合粒子であってもよく、Si、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In等の金属の酸化物と、酸化チタンとが複合したものを使用することができる。この複合酸化物微粒子の平均粒径は1〜200nmで好ましく、5〜30nmがより好ましい。
【0041】
また、金属酸化物微粒子は分散媒、例えば水、アルコール、もしくはその他の有機溶媒に分散させたものを用いるのが好ましい。この場合には、金属酸化物微粒子の分散安定性を高めるために、無機酸化物粒子の表面を有機ケイ素化合物、アミン系化合物で処理してもよい。
この処理の際に使用される有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等が例示できる。
【0042】
アミン系化合物としては、アンモニウム、エチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが例示できる。なお、これらの有機ケイ素化合物、アミン化合物の添加量は、無機酸化物粒子の重量に対して1〜15重量%程度の範囲であることが好ましい。このうち、エポキシ基を有する有機ケイ素化合物で処理することが好ましい。エポキシ基を有する有機ケイ素化合物で処理された金属酸化物微粒子を用いることにより、ポリエステル樹脂との結合点を増やすことができ、プライマー膜の架橋密度をさらに向上させ、耐久性が向上する。
【0043】
そして、金属酸化物微粒子として酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子を用いる場合には、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する複合酸化物核粒子を含むことが好ましい。但し、後述するハードコート層にルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子を使用する場合には、ハードコート層が紫外線吸収性能を有するため、プライマー層にはルチル型よりも光活性作用が高いアナターゼ型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する複合酸化物微粒子を用いることも可能である。
【0044】
さらに、酸化チタン以外の無機酸化物微粒子として、酸化スズを使用することも可能である。例えば、酸化スズもしくは酸化スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子、または酸化スズ粒子と酸化ジルコニウム粒子と酸化ケイ素粒子等の複合微粒子を核として、その表面を酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、五酸化アンチモン、酸化アルミニウム等の1種もしくは2種以上からなる複合コロイド粒子で被覆された無機酸化物微粒子を用いることも可能である。酸化スズは酸化チタンに比べて屈折率は低く、高屈折率のプライマー層を得るためには使用量を多くする必要があるものの、酸化チタンのような光活性作用は少ないと考えられ、プライマー層およびハードコート層自体の耐久性が要求される場合において好ましい組合せである。
【0045】
しかしながら、耐光性および屈折率の点から、プライマー層についてもルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する複合酸化物微粒子を用いることがより好ましい。ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する複合酸化物微粒子は、耐光性に優れている上、アナターゼ型に比べて屈折率が高いために、プライマー膜中での使用量を減らせることができ、密着性に寄与する樹脂成分を増量することができる。
【0046】
このようにして得られるプライマー層形成用のコーティング組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。
また、コーティング組成物は、必要に応じて、少量の金属キレート化合物、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤等を添加し、コーティング液の塗布性、硬化速度および硬化後の被膜性能を改良することもできる。
【0047】
さらに、コーティング用組成物(コーティング液)の塗布にあたっては、レンズ基材とプライマー層の密着性の向上を目的として、レンズ基材の表面を予め前処理するのが好ましい。前処理は、アルカリ処理、酸処理、界面活性剤処理、無機あるいは有機の微粒子による剥離/研磨処理、プラズマ処理等を用いることができる。
【0048】
また、コーティング用組成物の塗布/硬化方法としては、ディッピング法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコート法、フローコート法等を用いてコ−ティング用組成物を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱/乾燥することにより、プライマー層を形成できる。プライマー層の膜厚は、0.01〜30μm、特に0.05〜30μmの範囲が好ましい。プライマー層が薄すぎると耐久性や耐衝撃性の性能が発現できず、逆に厚すぎると表面の平滑性が損なわれたり、光学的歪や白濁、曇りなどの外観欠点を発生する場合がある。
【0049】
〔3.ハードコート層〕
ハードコート層は、レンズ基材表面に形成される。また、ハードコート層は、干渉縞を抑制する目的で、高屈折率のプラスチックレンズ基材と同程度の、高い屈折率が要求される。ハードコート層の高屈折率化への対応は、高屈折率を有する無機酸化物微粒子を用いる方法が一般的であり、具体的には、Al、Sn、Sb、Ta、Ce、La、Fe、Zn、W、Zr、In、Tiから選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物(これらの混合物を含む)、および/または2種以上の金属を含む複合酸化物からなる無色透明の無機酸化物微粒子が用いられる。このうち、屈折率、透明性、分散安定性等の点から酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子が一般的に用いられる。
【0050】
しかしながら、酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子をハードコート層用の金属酸化物として用いた場合には次のような問題がある。酸化チタンは、光(紫外線)エネルギーを受けると活性を帯び、強い酸化分解力により、有機物を分解するという特性を有する(以後、光活性と表す)。その結果、酸化チタンがハードコート膜の構成成分として含有されている場合、光活性によりもう一つの主構成成分であるシランカップリング剤等の有機物を分解して、ハードコート膜のクラックや膜剥がれを発生させ、耐久品質が低下する傾向にある。
【0051】
このような問題に対処するためには、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物を用いることが好ましい。即ち、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する金属酸化物微粒子を使用することで、酸化チタンの光活性に起因する種々の不具合点を改善することができる。それは、酸化チタンを含有する金属酸化物の結晶構造をアナターゼ型に代えてルチル型にすることによって耐候性や耐光性がより向上し、かつ屈折率はアナターゼ型の結晶よりもルチル型の結晶の方が高いので、比較的屈折率の高い無機酸化物微粒子が得られるからである。
【0052】
ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンは、アナタ−ゼ型の酸化チタンが光(紫外線)エネルギーを受けると活性を帯び、強い酸化分解力により、有機物を分解するという特性を有するのと異なり、このような光活性が低い。これは、光(紫外線)を照射すると酸化チタンの価電子帯の電子が励起されて、OHフリーラジカルとHOフリーラジカルができ、この強力な酸化力により有機物を分解するが、アナターゼ型酸化チタンよりルチル型酸化チタンの方が熱エネルギー的に安定であるため、フリーラジカルの生成量が極めて少ないためである。よって、ルチル型の結晶構造の酸化チタンを配合したハードコート層が耐候性や耐光性に優れているため、有機薄膜で構成される反射防止層がハードコート層によって変質されるおそれが無く、耐候性や耐光性に優れたプラスチックレンズが得られる。
【0053】
そして、本実施形態のプラスチックレンズにおけるハードコート層は、下記に示す「A成分」、「B成分」、「C成分」を含有するコ−ティング組成物から好ましく形成される。
「A成分」;金属酸化物微粒子。「B成分」;一般式、「RSiX」で表される有機ケイ素化合物(式中、Rは重合可能な反応基を有する炭素数が2以上の有機基、Xは加水分解性基を表す)。「C成分」;下記一般式(1)で表されるビフェニルスルフィド構造を有する化合物(式中、RおよびR´は炭化水素基もしくはヒドロキシル基、nは0〜5を表す)。
【0054】
【化1】

先ず、「A成分」としての金属酸化物微粒子について説明する。
「A成分」は、酸化チタンおよび酸化スズ、または酸化チタン、酸化スズおよび酸化ケイ素からなるルチル型の結晶構造を有する複合酸化物の核粒子の表面を、酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムからなる複合酸化物の被覆層で被覆したものを含む平均粒径1〜200nmの金属酸化物微粒子を用いることが好ましい。
【0055】
先に述べたように、酸化チタンに光(紫外線)を照射すると酸化チタンの価電子帯の電子が励起されて、OHフリーラジカルとHOフリーラジカルができ、この強力な酸化力により有機物を分解するが、アナターゼ型酸化チタンよりルチル型酸化チタンの方が熱エネルギー的に安定であるため、フリーラジカルの生成量が極めて少ない。しかし、このルチル型酸化チタンにおいてもフリーラジカルは生成されるため、複合酸化物からなる核粒子の表面を、酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムからなる複合酸化物の被覆層で被覆したものを使用することが好ましい。これは、核粒子で生成されたフリーラジカルは、同様に強力な酸化力を有しているものの不安定であるため、被覆層を通過する間に被覆層の触媒作用により消滅するからである。
【0056】
ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを得る手法はいくつか考えられるが、酸化スズとの複合酸化物、さらに酸化ケイ素を加えた複合酸化物とすることが好ましい。酸化スズとの複合酸化物を加えた場合、無機酸化物微粒子中に含まれる酸化チタンおよび酸化スズの量は、酸化チタンをTiOに換算し、酸化スズをSnOに換算したとき、[TiO/SnO]の質量比が[1/3]〜[20/1]、好ましくは[1.5/1]〜[13/1]の範囲にあることが望ましい。
【0057】
SnOの量を上記質量比の範囲よりも少なくしていくと、結晶構造がルチル型からアナターゼ型にシフトしていき、ルチル型の結晶とアナターゼ型の結晶を含む混晶になる、あるいはアナターゼ型の結晶となる。また、SnOの量を上記質量比の範囲よりも多くしていくと、酸化チタンのルチル型結晶と酸化スズのルチル型結晶の中間にあるルチル型の結晶構造となり、いわゆる酸化チタンのルチル型結晶とは異なる結晶構造を示すようになり、しかも得られる無機酸化物微粒子の屈折率も低下する。
【0058】
また、酸化スズとの複合酸化物、さらに酸化ケイ素を加えた複合酸化物を加えた場合、無機酸化物微粒子中に含まれる酸化チタン、酸化スズ、および酸化ケイ素の量は、酸化チタンをTiOに換算し、酸化スズをSnOに換算し、酸化ケイ素をSiOに換算したとき、[TiO/SnO]の質量比が[1/3]〜[20/1]、好ましくは[1.5/1]〜[13/1]の範囲にあり、かつ[(TiO+SnO)/SiO]の質量比が[50/45]〜[99/1]、好ましくは[70/30]〜[98/2]の範囲にあることが望ましい。
【0059】
SnOの含有量については、酸化スズとの複合酸化物を加えた場合と同様であるが、これに酸化ケイ素を含ませることにより、得られる無機酸化物微粒子の安定性と分散性を向上させることができる。ここで、SiOの量を上記質量比の範囲よりも少なくしていくと、安定性と分散性が低下する。また、SiOの量を上記質量比の範囲よりも多くしていくと、この安定性と分散性はより向上するが、得られる無機酸化物微粒子の屈折率が低下するので好ましくない。しかし、このルチル型酸化チタンにおいてもフリーラジカルは生成される。これについては、酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子として、酸化チタンを含有する2種以上の複合酸化物を含む無機酸化物微粒子を使用した場合も同様である。
【0060】
そして、ルチル型の結晶構造を有する複合酸化物からなる核粒子の表面を、酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムからなる複合酸化物の被覆層で被覆する。被覆層に含まれる酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムの含有量は、用いる複合酸化物の組み合わせにより、以下の(a)〜(c)に示す3項のうちから選択することが好ましい。
【0061】
(a)被覆層が酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの複合酸化物で形成される場合
被覆層に含まれる酸化ケイ素と酸化ジルコニウムの量は、酸化ケイ素をSiOに換算し、酸化ジルコニウムをZrOに換算したとき、[SiO/ZrO]の質量比が[50/50]〜[99/1]、好ましくは[65/35]〜[90/10]の範囲にあることが望ましい。
【0062】
ZrOの量が上記[SiO/ZrO]の質量比の範囲より多くなると、フリーラジカルを捕捉することのできるZr原子は増加するが、被覆層にひずみが生じて緻密な被覆層が形成されない。それ故、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に移行して、有機物の酸化を招くおそれがある。また、ZrOの量が上記[SiO/ZrO]の質量比の範囲より少なくなると、緻密な被覆層はでき易くなるが、フリーラジカルを捕捉するためのZr原子が少ないため、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に移行して、有機物の酸化を招くおそれがある。
【0063】
(b)被覆層が酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物で形成される場合
被覆層に含まれる酸化ケイ素と酸化アルミニウムの量は、酸化ケイ素をSiOに換算し、酸化アルミニウムをAlに換算したとき、[SiO/Al]の質量比が[60/40]〜[99/1]、好ましくは[68/32]〜[95/5]の範囲にあることが望ましい。
【0064】
ここで、Alの量が上記[SiO/Al]の質量比の範囲より多くなると、フリーラジカルを捕捉することのできるAl原子は増加するが、緻密な被覆層ができないため、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に出てきて、有機物の酸化を招くことになる。また、Alの量が上記[SiO/Al]の質量比の範囲より少なくなると、緻密な被覆層はでき易くなるが、フリーラジカルを捕捉するためのAl原子が少ないため、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に出てきて、有機物の酸化を招くことになる。
【0065】
(c)被覆層が酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムの複合酸化物で形成される場合
被覆層に含まれる酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび酸化アルミニウムの量は、酸化ケイ素をSiOに換算し、酸化ジルコニウムをZrOに換算し、酸化アルミニウムをAlに換算したとき、[SiO/(ZrO+Al)]の質量比が[98/2]〜[6/4]、好ましくは[95/5]〜[7/3]の範囲にあることが望ましい。
【0066】
ZrOとAlの合計量が上記質量比の範囲より多くなると、フリーラジカルを捕捉することのできるZr原子とAl原子の合計量は増加するが、緻密な被覆層ができないため、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に出てきて、有機物の酸化を招くことになる。また、ZrOとAlの合計量が上記質量比の範囲より少なくなると、緻密な被覆層はでき易くなるが、フリーラジカルを捕捉するためのZr原子とAl原子の合計量が少ないため、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に移行して、有機物の酸化を招くことになる。
また、被覆層の厚さは、核粒子で生成したフリーラジカルが無機酸化物微粒子の表面に移行して、有機物の酸化を招くことを防ぐ観点から、0.02〜2.27nm、好ましくは0.16〜1.14nmの範囲にあることが望ましい。
【0067】
なお、ここでいう核粒子を構成する複合酸化物は、酸化チタンおよび酸化スズからなる複合固溶体酸化物(ドープされた複合酸化物を含む)および/または複合酸化物クラスター、或いは酸化チタン、酸化スズおよび酸化ケイ素からなる複合固溶体酸化物(ドープされた複合酸化物を含む)および/または複合酸化物クラスターを意味する。また、核粒子および/または被覆層を構成する複合酸化物は、末端にOH基を有する複合含水酸化物であってもよく、さらに複合含水酸化物を一部含むものであってもよい。
【0068】
酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子の平均粒径は、1〜200nm、好ましくは5〜30nmの径の範囲が望ましい。平均粒径が1nm未満であると、プラスチックレンズ基材上にハードコート層を形成するための乾燥過程で、粒子同士がブリッジ化して均一に収縮しなくなり、さらにはその収縮率も低下して、充分な膜硬度を有するハードコート層が得られなくなる。一方、平均粒径が200nmを超えると、ハードコート層が白色化し、光学部品の用途には適さなくなる。
【0069】
また、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子は単独で用いても良く、あるいは他の無機酸化物粒子と併用してもよい。他の無機酸化物粒子としては、Si,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,Inから選ばれる1種または2種以上の金属の酸化物(これらの混合物を含む)、および/または2種以上の金属を含む複合酸化物からなる無機酸化物微粒子を例示することができる。
【0070】
無機酸化物微粒子の具体的な例としては、平均粒径1〜200nmのルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを含有する無機酸化物微粒子が、例えば水、アルコ−ル系もしくはその他の有機溶媒にコロイド状に分散した分散媒である。市販品の分散媒としては、酸化チタンおよび酸化スズ、または酸化チタン、酸化スズおよび酸化ケイ素からなるルチル型の結晶構造を有する複合酸化物の核粒子の表面を、酸化ケイ素と酸化ジルコニウムおよび/または酸化アルミニウムからなる複合酸化物の被覆層で被覆した平均粒径8〜10nmの無機酸化物微粒子を含むコーティング用の分散ゾル(触媒化成工業(株)製、オプトレイク)等を挙げることができる。
【0071】
さらにコーティング用組成物での分散安定性を高めるために、これらの無機酸化物微粒子表面を有機ケイ素化合物またはアミン系化合物、さらには酒石酸、リンゴ酸等のカルボン酸で処理したものを使用することも可能である。この際に用いられる有機ケイ素化合物としては、単官能性シラン、二官能性シラン、三官能性シラン、四官能性シラン等が挙げられる。また、処理に際しては加水分解性基を未処理で行う、あるいは加水分解して行ってもよい。さらに加水分解処理後は、加水分解性基が微粒子の−OH基と反応した状態が好ましいが、一部残存した状態でも安定性には何ら問題がない。
【0072】
また、アミン系化合物としてはアンモニウムまたはエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−プロピルアミン等のアルキルアミン、ベンジルアミン等のアラルキルアミン、ピペリジン等の脂環式アミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。なお、これらの有機ケイ素化合物、アミン化合物等の添加量は、無機酸化物粒子の質量に対して1〜15質量%程度の範囲であることが好ましい。
【0073】
無機酸化物微粒子の種類や配合量は、目的とする硬度や屈折率等により決定されるものであるが、配合量はハードコート組成物中の固形分の5〜80質量%、特に10〜50重量%の範囲であることが望ましい。配合量が少なすぎると、塗膜の耐摩耗性が不十分となる場合がある。一方、配合量が多すぎると、塗膜にクラックが生じ、染色性も不十分となる場合がある。
【0074】
次に「B成分」(一般式:「RSiX」で表される有機ケイ素化合物)について説明する。「B成分」は、ハードコート層のバインダー剤としての役割を果たす。一般式:「RSiX」中、Rは、重合可能な反応基を有する有機基であり、炭素数は2以上である。Rはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、1−メチルビニル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、イソシアノ基、アミノ基等の重合可能な反応基を有する。また、Xは、加水分解可能な官能基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。
【0075】
「B成分」の有機ケイ素化合物としては、例えば、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン等があげられる。この「B成分」の有機ケイ素化合物は、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0076】
そして、「A成分」を「B成分」と混合して、ハードコート層を形成するためのハードコート液を製造する。製造の際には、「A成分」が分散したゾルと、「B成分」とを混合することが好ましい。
「A成分」の配合量は、ハードコート層の硬度や、屈折率等により決定されるものであるが、ハードコート液中の固形分の5〜80質量%、特に10〜50質量%であることが好ましい。配合量が少なすぎると、ハードコート層の耐磨耗性が不十分となり、配合量が多すぎると、ハードコート層にクラックが生じることがある。また、ハードコート層を染色する場合には、染色性が低下する場合もある。
【0077】
次いで、「C成分」であるビフェニルスルフィド構造を有する化合物について説明する。「C成分」はプライマー層およびハードコート層双方の層間で密着成分として作用することにより、耐久性を向上させることができる。また、ビフェニルスルフィド構造は剛直なベンゼン環が硫黄原子に結合した柔軟性を有する性質があり、プライマー層およびハードコート層の双方に接着しつつフレキシビリティーを発現すると考えられ、耐衝撃性を向上させることができる。さらに、ビフェニルスルフィド構造を有する化合物は、ハードコート層に使用するものの、プライマー層およびハードコート層双方の層間に局在化していると考えられ、ハードコート層自体の架橋反応にはほとんど寄与しないため、耐擦傷性を低下させない効果を有する。
【0078】
ビフェニルスルフィド構造を有する化合物としては、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−メタ−クレゾール、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)などが挙げられる。添加量としては、コーティング組成物の固形分質量に対して、0.01〜5.0質量%が好ましく、0.03〜1.0質量%がより好ましい。ここで、コーティング組成物の固形分とは、コーティング組成物を乾燥硬化して得られる塗膜中に含まれる主要成分のことである。また、固形分質量とは、コーティング組成物における金属酸化物ゾル、有機ケイ素化合物、多官能エポキシ化合物、触媒など主要成分を総じた質量である。ビフェニルスルフィド構造を有する化合物が0.01質量%より少ないと上記の効果が不足して耐久性および耐衝撃性が低下し、逆に5.0質量%より多すぎるとハードコート層自体の架橋反応に悪影響を与え、耐擦傷性が低下する。
【0079】
更に、ハードコート層に多官能性エポキシ化合物を含有することが非常に有用である。多官能性エポキシ化合物は、前記ビフェニルスルフィド構造を有する化合物により耐久性、耐衝撃性を向上できるが、これに併用することでハードコートの耐水性を向上させ、かつ下地にプライマー層を設ける場合に、プライマー層との密着性を更に安定化することができる。特に多官能エポキシ化合物の分子中にヒドロキシル基が存在すると、プライマー層との密着性が向上することが認められる。従って、一分子中に一個以上のヒドロキシル基を含む多官能エポキシ化合物を用いることによって、この多官能エポキシ化合物全体の配合量を減らすことが可能であるため、耐擦傷性の低下を招くことなく、耐久性を向上させることが可能である。加えて、ハードコート層の上面に反射防止層を有機薄膜で形成するような場合には、反射防止層の膜厚が非常に薄くなることが多く、特に、反射防止層に内部空洞を有するシリカ系粒子を使用する場合には、水分を通すために、ハードコート層に耐水性が必要となる。よって多官能エポキシ化合物は非常に有用である。
【0080】
多官能性エポキシ化合物としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ノナプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールヒドロキシヒバリン酸エステルのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールジグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールテトラグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのジグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのトリグリシジルエーテル、等の脂肪族エポキシ化合物、イソホロンジオールジグリシジルエーテル、ビス−2,2−ヒドロキシシクロヘキシルプロパンジグリシジルエーテル等の脂環族エポキシ化合物、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエーテル、フェノールノボラックポリグリシジルエーテル、クレゾールノボラックポリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0081】
このうち、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネートのトリグリシジルエーテル等の脂肪族エポキシ化合物を好ましく用いることができる。
【0082】
さらに、ハードコート層に硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒としては、例えば、過塩素酸、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸マグネシウム等の過塩素酸類、Cu(II)、Zn(II)、Co(II)、Ni(II)、Be(II)、Ce(III)、Ta(III)、Ti(III)、Mn(III)、La(III)、Cr(III)、V(III)、Co(III)、Fe(III)、Al(III)、Ce(IV)、Zr(IV)、V(IV)等を中心金属原子とするアセチルアセトナート、アミン、グリシン等のアミノ酸、ルイス酸、有機酸金属塩等が挙げられる。
【0083】
このうち好ましい硬化触媒としては、過塩素酸マグネシウム、Al(III),Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナートが挙げられる。特に、Fe(III)を中心金属原子とするアセチルアセトナートを使用することが最も好ましい。硬化触媒の添加量は、ハードコート液の固形分の0.01〜5.0質量%の範囲内が望ましい。
【0084】
このようにして得られるハードコート層形成用のコーティング用組成物は、必要に応じ、溶剤に希釈して用いることができる。溶剤としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、芳香族類等の溶剤が用いられる。また、ハードコート層形成用のコーティング用組成物は、必要に応じて、少量の金属キレート化合物、界面活性剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散染料、油溶染料、顔料、フォトクロミック化合物、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール系等の耐光耐熱安定剤等を添加し、コーティング液の塗布性、硬化速度および硬化後の被膜性能を改良することもできる。
【0085】
また、コーティング用組成物の塗布、および硬化方法としては、ディッピング法、スプレーコート法、ロールコート法、あるいは、フローコート法によりコーティング用組成物を塗布した後、40〜200℃の温度で数時間加熱乾燥することにより、ハードコート被膜を形成することができる。なお、ハードコート層の膜厚は、0.05〜30μmであることが好ましい。膜厚が0.05μm未満では、耐擦傷性等の基本性能が実現できない。また、膜厚が30μmを越えると表面の平滑性が損われたり、光学歪みが発生してしまう場合がある。
【0086】
〔4.染色方法〕
以下に、前記した実施形態により得られたハードコート層付きレンズ基材に対する染色方法について説明する。はじめに紫外線照射工程について説明し、その後、染色工程について説明する。
【0087】
(紫外線照射工程)
図1は、本実施形態による紫外線照射を表す図である。図1において、ハードコート層付きのレンズ基材1は、図示しない台座に固定されている。レンズ基材1の上には、低圧水銀ランプ2が配置されている。低圧水銀ランプ2は、主に185nmと254nmの紫外線を放射する構造となっている。また、レンズ基材1の片面に紫外線を照射した後、レンズ基材1を反転させ、もう片面に紫外線を照射する構造としても良い。照射距離は、レンズ基材1の被照射面(ハードコート面)と低圧水銀ランプ2との最短距離であり、照射効率を考慮すると、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましい。
【0088】
また、図2、図3に示すようなフォトマスク4を介してレンズ基材1に紫外線を照射してもよい。ここで、フォトマスク4は、紫外線を全く通さない遮蔽部5から、紫外線をよく通す透過部6に至るまで、紫外線の透過率が0%から100%まで連続的に変化している。このようなフォトマスクを用いると、後述するようにレンズ基材1の染色性を連続的に変化させることが可能となる。
【0089】
このようなフォトマスクは、半導体分野で用いられているフォトマスクと同様な方法で製造することができる。例えば、フォトマスク基材(石英ガラス等)の表面に、クロム(Cr)やチタン(Ti)からなる遮光膜を厚みを変えて形成すればよい。このような遮光膜は、スパッタリング法、CVD法、あるいは真空蒸着法などで容易に形成できる。
【0090】
さらに、フォトマスクを製造する方法としては、液滴吐出法(インクジェット法)も好適である。インクジェット法とは、一般に10〜100μm径の微小なノズル開口部と圧力発生素子とが設けられた圧力室にインク(紫外線吸収能を有する組成物)を充填し、圧力発生素子を電子的に制御することによって圧力室内のインクを加圧し、その圧力で、ノズル開口部からインクを微小な液滴として吐出するものである。
【0091】
ここで、紫外線吸収能を有する組成物は、紫外線吸収剤を適当な溶媒に配合して調製することができる。
紫外線吸収剤としては用いる溶媒中に溶解あるいは分散すればよく、特に制限はない。例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、およびニッケル錯塩系などが挙げられる。具体的には、ケミプロ化成製のケミソーブシリーズなどがある。
また、フォトマスク基材表面に紫外線吸収用の膜を形成する際は、成膜性の観点より樹脂を配合することが好ましい。樹脂としては、上述した溶媒に可溶であって、膜形成能があればよく、例えばポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂およびポリ塩化ビニル樹脂等が好ましく挙げられる、
【0092】
該組成物の基材表面への濡れ性の観点より、フォトマスク4を製造するためのフォトマスク基材の表面エネルギー(臨界表面張力)は、該組成物の表面張力と同じか、それよりも大きいことが好ましい。逆に言えば、該組成物の表面張力は低い方がよい。しかし、該組成物中の固形分を溶解させるためには、表面張力は高い方がよい。それ故、該組成物の25℃における表面張力が20mN/m以上45mN/m以下となるような溶媒を選定することが好ましい。このような溶媒は単一のものでもよいが、混合溶媒でもよい。例えば、25℃における表面張力が35mN/m以上の溶媒Aと、25℃における表面張力が32mN/m以下の溶媒Bとを混合して得られる混合溶媒が好ましく適用できる。溶媒Aの例としてはγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N’−ジメチル−2−イミダゾリジノン、および炭酸プロピレンなどが挙げられる。溶媒Bの例としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルやエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)などが挙げられる。例えば、γ−ブチロラクトンとブチルセロソルブを質量比で1:1で混合した溶媒が固形分の溶解性とフォトマスク基材への濡れ性の観点より好適である。
【0093】
次に、インクジェット法によるフォトマスク4の製造方法を説明する。
図4に、インクジェット染色装置10(以下、単に「染色装置10」ともいう)の概略図を示す。
染色装置10は、紫外線を吸収する染料組成物が封入されるインクタンク11と、染料組成物を輸送するチューブ12と、液滴を吐出するための吐出ヘッド13と、吐出ヘッド13を保持する保持部材14と、染色用のフォトマスク基材4’を回転可能に保持するアーム15とを含んで構成される。
吐出ヘッド13は、保持部材14に連結されて上下左右に移動でき、さらに回転も可能になっている。また、吐出ヘッド13と、フォトマスク基材4’を保持するアーム15は制御PCにより制御される。
【0094】
具体的な塗布方法としては、図5(A)に示すように、染料組成物が充填された吐出ヘッド13を、フォトマスク基材4’の表面と略等間隔を保つように制御しつつ走査させる。そして、吐出ヘッド13のノズルからの吐出を制御することによって、フォトマスク基材4’の必要な部分に染料組成物を均一に塗布し、塗布膜L’を形成する。この場合、吐出ヘッド13だけを動かしてもよく、あるいは吐出ヘッド13を特定の方向に移動させ、タイミングをとってフォトマスク基材4’を前記方向と直交する方向に移動させる方法でもよい。
塗布膜L’は、乾燥されて、紫外線吸収膜Lとなる。なお、インクジェット法による1回の塗布で十分な紫外線吸収膜Lの厚みが得られないおそれのある場合は、複数回の重ね塗りを行う。
【0095】
上述のようにして得られたフォトマスク4を介してレンズ基材1に紫外線照射を行ってもよく、単に図1(A)のように紫外線をレンズ基材1の全面に照射してもよい。
また、紫外線照射条件は、後述する染色濃度との兼ね合いで適宜実験により決定すればよい。具体的には、光量を上げるか、照射時間を長くすれば、分散染料や油溶染料による染色濃度を下げることができる。ただし、光量は、照射効率の点から1〜3000mJ/cmが好ましく2〜1500mJ/cmであることがより好ましい。なお、紫外線照射を行うには、エキシマランプを用いてもよい。
【0096】
なお、紫外線照射を空気中で行うと、同時にオゾンを生じ、このオゾンも紫外線と同様の効果を生ずる。すなわち、分散染料や油溶染料による染色濃度を低下させる。それ故、オゾンの影響を除きたい場合は、窒素ガスのような不活性ガス雰囲気下で紫外線を照射するか、あるいは紫外線を通す適当な材料(高分子フィルム等)を基材表面に貼ってもよい。
【0097】
(染色工程)
前記した紫外線照射工程を経たレンズ基材は、分散染料による通常の浸漬染色法(ディッピング法)により好ましく着色される。具体的には、次のようにして行われる。
所定の温度にした染色浴を準備し、分散染料を染色浴中に添加して拡販する。分散染料としては、染着性および耐光性が良好なことが好ましく、アンスラキノン誘導体、キノフタロン誘導体、ニトロジフェニルアミン系誘導体、およびアゾ系分散染料などが挙げられる。分散染料は単独、または2種以上を配合して使用することができ、染色浴への添加量は、希望の染色スピードとなるように、1g〜30g/リットルの範囲で使用することができる。染色浴の温度は、通常40〜100℃の範囲であり、より好ましくは、70℃〜99℃である。40℃未満では、染色スピードが極端に遅くなり、希望の染色濃度に達するまでの時間が極端に長くなり実使用に耐えない。また、100℃を超える場合は、加圧を行う必要があるため、装置が大型化し、作業性が低下する。
【0098】
また、染色浴中には、必要に応じて分散染料の分散を助けるための、界面活性剤や、染色スピードを早くするための、染色促進剤を添加することも可能である。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ラウリル硫酸塩等の陰イオン活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン活性剤などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用量は、分散染料の添加量に対して、10〜200質量%の範囲で適宜決めることが可能であり、通常は、染色浴中に、1g〜10g/リットル程度の添加量が好ましく用いられる。染色促進剤としては、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール等の芳香環を有するアルコール類や、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、トリクロルベンゼン、ジクロルベンゼン、メチルナフタレンなどが挙げられる。これらの染色促進剤は、単独または2種以上を混合して用いてもよい。染色促進剤の添加量は、分散染料の添加量に対して、20〜1000質量%の範囲で適宜決めることが可能であり、通常は、染色浴中に、1g〜30g/リットル程度の添加量が好ましく用いられる。
【0099】
染色浴は通常の場合、水を用いて調整するが、必要に応じて水とメタノール、エタノール、イソプロパノール等の有機溶剤との混合物を用いて調整してもよい。有機溶剤を用いる場合は分散染料に加えて油溶染料も用いることが出来る。
染色浴の温度とレンズを染色浴中に浸ける時間は、希望の色調、濃度により変わるが、通常は40℃〜100℃で、10秒〜180分程度、レンズを染色浴中に浸けることによって、希望の濃度、色調のレンズが得られる。
【0100】
また、分散染料や油溶染料による染色は、いわゆるアニール転写による方法により行ってもよい。具体的には、有機溶媒に樹脂と染料を溶解した染色浴を用いて、前記した方法によりレンズ基材表面に染料と樹脂の混合物をコーティングし、その後アニール処理を行ってレンズ基材へ染料を転写する。アニール転写終了後、樹脂膜をレンズ基材表面より除去する。ここで、有機溶媒としては、THF(テトラヒドロフラン)、トルエン、MEK(メチルエチルケトン)、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルおよび酢酸エチル等の単一溶媒やこれらの混合溶媒が使用できる。樹脂としてはアクリル樹脂やウレタン樹脂等が好適に使用できる。また、アニール温度の範囲としては、基材へのダメージが生じない程度が好ましく、具体的には、50〜200℃の範囲、より好ましくは100〜150℃程度が好ましい。
【0101】
上述の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
本実施形態におけるレンズ基材の染色方法では、レンズ基材1のハードコート面に紫外線処理を施す紫外線照射工程と、その後に、レンズ基材1を分散染料または油溶染料により染色する染色工程とを備えており、紫外線処理により前記した染色工程におけるレンズ基材1の染色濃度を制御するので、種々の染色濃度を有するハードコート層付き眼鏡用レンズを容易に得ることができる。
【0102】
また、前記した紫外線照射を空気中で行うと、オゾンを生じ、このオゾンが分散染料または油溶染料による染色濃度を低下させる。すなわち、オゾン処理により染色濃度の制御が可能となる。従って、前記した紫外線と同時に、あるいは紫外線を遮断して、オゾン種やその濃度、あるいは処理時間を制御するという簡便な操作だけで後工程における染色濃度を制御できる。
【0103】
本実施形態では、レンズ基材1の表面がハードコート層であるので、レンズ基材1本体の材質(プラスチックの種類)によらず染色濃度の制御が可能となる。特に、ハードコート層が、シランカップリング剤をベースとした処理剤により形成されたものである場合には、染色濃度の制御がより一層容易となる。
【0104】
本実施形態では、染色工程による染色に分散染料または油溶染料を用いているので、レンズ基材1への染色濃度をより容易に制御できる。また、染色方法として、浸漬法(ディッピング法)を用いているので簡便に染色を行うことができる。
また、紫外線を遮断するような適当な物質を基材表面にコーティングすればその部分だけ紫外線照射やオゾン処理の効果を排除できるので、所定の文字や図形等を染料にてレンズ基材に描くこともできる。
【0105】
また、レンズ基材1への紫外線照射を行う際に、図2に示すようなマスク材4を用いると、マスクパターンを変化させることにより、レンズ基材1表面の染色性を自由に制御できる。特に、インクジェット染色装置10を用いると、マスク材4のマスクパターンを極めて容易に形成できる。
【0106】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
本実施形態では、高エネルギー処理として紫外線照射を採用したがプラズマ処理であっても同様な効果を奏する。また、染色はハードコート層ではなく基材に直接行ってもよく、基材としてはプラスチックに限らず、無機ガラスでもよい。さらに、ハードコート層の染色後に、有機系または無機系の反射防止層を設けたりさらに防汚層を設けてもよい。
【実施例】
【0107】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。具体的には、ハードコート層を形成したレンズ基材に種々の条件で紫外線を照射して染色を行い、染色濃度を確認した。
【0108】
〔試験例1〕
(紫外線照射用レンズ基材の作製)
(1)プライマー組成物の調製
ステンレス製容器内に、メチルアルコール3700重量部、水250重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1000重量部を投入し、十分に攪拌したのち、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(アナターゼ型結晶構造、メタノール分散、触媒化成工業(株)、商品名オプトレイク1120Z U―25・A8)2800重量部を加え撹拌混合した。次いでポリエステル樹脂2200重量部を加えて攪拌混合した後、さらにシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7604)2重量部を加えて一昼夜撹拌を続けた後、2μmのフィルターでろ過を行い、プライマー組成物を得た。
【0109】
(2)ハードコート組成物の調製
ステンレス製容器内にブチルセロソルブ1000重量部を取り、「B成分」としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1200重量部を加えて十分攪拌した後、0.1モル/リットル塩酸300重量部を添加して一昼夜攪拌を続け、シラン加水分解物を得た。このシラン加水分解物中にシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、商品名L−7001)30重量部を加えて1時間撹拌した後、「A成分」として酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(ルチル型結晶構造、メタノール分散、触媒化成工業(株)製、商品名オプトレイク1120Z 8RU―25・A17)7300重量部を加え2時間撹拌混合した。次いでエポキシ樹脂(ナガセ化成(株)製、商品名デナコールEX−313)250重量部を加えて2時間攪拌した後、鉄(III)アセチルアセトナート20重量部、および「C成分」として4,4´−チオビス(6−t−ブチル−メタ−クレゾール10重量部(コーティング組成物の固形分に対して0.5重量%)を加えて3時間攪拌し、2μmのフィルターでろ過を行い、ハードコート組成物を得た。
【0110】
(3)プライマー層およびハードコート層の形成
チオウレタン系プラスチックレンズ基材(セイコーエプソン(株)製、商品名セイコースーパーソブリン生地、屈折率1.67)を準備した。そして、(1)において調製したプライマー組成物中に浸漬し、引き上げ速度30cm/min.で引き上げて80℃で20分焼成し、レンズ基材表面にプライマー層を形成した。そして、プライマー層が形成されたレンズ基材を、(2)において調製したハードコート組成物中に浸漬し、引き上げ速度30cm/min.で引き上げて、80℃で30分焼成し、プライマー層上にハードコート層を形成した。その後、125℃に設定したオーブン内で3時間加熱して、プライマー層とハードコート層が形成されたプラスチックレンズを得た。形成されたプライマー層の膜厚は0.5μm、ハードコート層の膜厚は2.5μmであった。
なお、上述した方法で紫外線照射用レンズ基材(試料)を9点作製した。
【0111】
(紫外線照射工程)
<照射装置>
機種:岩崎電気製低圧水銀ランプ「アイ UV-オゾン洗浄装置 OC-250615-D+A」
25W×6灯 バッチ式(卓上型) ダンパー付
照射距離:ランプ下部からサンプル台までが約42mm
<照射方法・条件>
図1(A)に示すように各試料(レンズ基材1)を載置し、ハードコート面に対し以下のように照射時間を変えて紫外線照射を行った。
紫外線照射時間:0、15、30、45、60、75、90、105sec
(0secは、紫外線を照射していないことを意味する。)
【0112】
(染色工程)
有機溶媒に染料と樹脂を溶解して染色液を調製し、上述した各試料の染色を行った。具体的には、以下の通りである。
<染色用溶液>
以下のような構成の溶液(質量%は全量基準)を調製し、孔径6μmフィルターにて濾過して染色液とした。
有機溶媒:THF(51.2質量%)、トルエン(18.2質量%)、MEK(22.0質量%)およびシクロヘキサノン(6.8質量%)からなる混合溶媒
樹脂:アクリル樹脂(三菱レイヨン製 BR−108)1.8質量%
染料:青色用分散染料(双葉産業製 BlueTN)6.0質量%
<染色方法>
各試料を前記で得られた溶液に浸漬後、転写アニールによりハードコート層への染色を行った。なお、試料の反対面は染色液が触れないように粘着テープでマスクした。
転写アニール条件:130℃、30分間
転写アニール後、洗浄およびマスクの除去を行い、染色された試料を得た。
【0113】
(評価方法)
染色後の各試料について、分光光度計により各波長における吸光度を測定した。その結果を図6に示す。
(結 果)
図6に示すように、0sec(紫外線照射なし)では、非常に高い吸光度(染色濃度)を示していたものが、紫外線照射時間が長くなるに従って、顕著に染色濃度が減少していることがわかる。ここで、波長600nmにおける吸光度をプロットすると、図7のように紫外線照射時間とともに吸光度がほぼ直線的に低下していることがわかる。それ故、紫外線照射時間により、吸光度すなわち染色濃度を容易に制御できることが理解できる。
【0114】
〔試験例2〕
試験例1で作製した試料の一つについて、市販の油性フェルトペンにてアルファベット文字をハードコート面に描いた。そして、試験例1と同様にして紫外線を照射し(105sec)、さらに染色を行った。その後、アセトンにてフェルトペンにより文字を除去したところ、図8に示すように、フェルトペンにて記載された部分が強く染色されていることが認められた。このように、適当なマスク材でレンズ基材表面を覆うことで紫外線の影響を抑制することが可能であり、レンズ基材に対して各種模様を容易に付与することができる。
なお、このようなマスク材は、適当なマスク基材を用いて、図4に示したインクジェット染色装置10により製造してもよい。
【0115】
〔試験例3〕
上述した試験例では、紫外線を大気中で照射しているため、オゾンが発生しているものと推測できる。そこで紫外線照射の効果とオゾン処理の効果とを分離して評価するための実験を行った。具体的には、厚さ2mmの平滑な白板ガラスを用い、試験例1と同様の方法でプライマー層およびハードコート層を形成した試料を4点作製した。そして、以下の4通りの方法で紫外線処理を行った後、試験例1と同様にして染色を行った。
(1)紫外線照射処理を行わなかった。
(2)図1(A)に示す方法で紫外線照射を行った(120sec)。
(3)図1(B)に示すように、試料(基材1)表面に厚さ1mmの石英ガラス3を密着させた後、紫外線照射を行った(120sec)。
【0116】
(評価方法)
染色後の各試料について、分光光度計により各波長における吸光度を測定した。その結果を図9に示す。
(結 果)
図9より、試料表面に石英ガラス3を密着させて紫外線照射を行った場合(図1(B))には、紫外線照射処理を行わなかった場合に比べて吸光度が低下している。すなわち、この低下分が紫外線のみによる吸光度の低下に対応すると考えられる。また、試料表面に石英ガラス3を密着させて紫外線照射を行った場合(図1(B))の吸光度曲線から、図1(A)に対応する吸光度曲線との差がオゾンの効果に対応すると考えられる。いずれにしても、吸光度(染色濃度)は紫外線およびオゾンのいずれによっても制御できることがわかる。
【符号の説明】
【0117】
1…(レンズ)基材、2…低圧水銀ランプ、3…石英ガラス、4…フォトマスク、4’…フォトマスク基材、10…染色装置、11…インクタンク、12…チューブ、13…吐出ヘッド、14…保持部材、15…アーム、L…紫外線吸収膜、L’…塗布膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の染色方法であって、
前記基材の表面に高エネルギ−処理を施す高エネルギー処理工程と、
その後に、前記基材を染色する染色工程とを備え、
前記高エネルギー処理により前記染色工程における前記基材の染色濃度を制御する
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項2】
請求項1に記載の基材の染色方法であって、
前記染色工程は、前記高エネルギー処理のエネルギーを変化させることで、前記基材の染色濃度を変化させる
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基材の染色方法において
前記高エネルギ−処理が紫外線照射およびプラズマ処理の少なくともいずれかである
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項4】
請求項3に記載の基材の染色方法において、
紫外線吸収能を有するマスク材を通して紫外線照射を行う
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項5】
請求項4に記載の基材の染色方法において、
前記マスク材は、紫外線吸収剤を配合してなる組成物をマスク基材の上に液滴吐出法により形成することにより製造されたものである
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項6】
請求項4に記載の基材の染色方法において、
前記紫外線吸収剤を配合してなる組成物を前記マスク基材の上に液滴吐出法により形成するマスク材製造工程と、
前記マスク材を通して紫外線照射を行う紫外線照射工程とを含む
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項7】
基材の染色方法であって、
前記基材の表面にオゾン処理を施すオゾン処理工程と、
その後に、前記基材を染色する染色工程とを備え、
前記オゾン処理により前記染色工程における前記基材の染色濃度を制御する
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項8】
請求項7に記載の基材の染色方法であって、
前記染色工程では、前記オゾン処理のエネルギーを変化させることで、前記基材の染色濃度を変化させる
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の基材の染色方法において、
前記基材の表面がハードコート層であり、
前記染色工程では、前記ハードコート層を染色する
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の基材の染色方法において、
前記染色工程による染色に分散染料または油溶染料を用いる
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の基材の染色方法において、
前記基材の材質がプラスチックおよび無機ガラスのいずれかである
ことを特徴とする基材の染色方法。
【請求項12】
請求項11に記載の基材の染色方法において、
前記基材が眼鏡用レンズである
ことを特徴とする基材の染色方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−224504(P2010−224504A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75904(P2009−75904)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】