説明

基板上にCoNiPを形成する方法および物品

【課題】良好な磁気特性を有する厚いCoNiPの膜の製造方法を提供する。
【解決手段】基板110上にCoNiPを形成する方法であって、基板を電気めっき槽115に入れるステップを含み、電気めっき槽には電気めっき組成物120が入っており、電気めっき組成物は、ニッケル源と、コバルト源と、少なくとも約0.1Mのリン源とを含み、方法はさらに、基板に堆積電流を印加するステップを含み、基板に堆積電流を印加することによって、少なくとも約500ナノメートルの厚みを有するCoNiP層が基板上に電着される方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
CoNiPは、比較的高い垂直保磁力およびBH積を有するコバルト系硬質磁性材料である。このためCoNiPは、たとえばメムス(microelectromechanical systems:MEMS)用途を含む多数の用途に有用である。良好な磁気特性を有する薄い(〜10ナノメートル)CoNiP膜が文献で報告されているが、より厚い膜(〜50マイクロメートル)は磁気特性が悪いことが報告されている。したがって、良好な磁気特性を有するより厚いCoNiP膜の製造方法が依然として必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
簡単な要約
基板上にCoNiPを形成する方法であって、基板を電気めっき槽に入れるステップを含み、電気めっき槽には電気めっき組成物が入っており、電気めっき組成物は、ニッケル源と、コバルト源と、少なくとも約0.1Mのリン源とを含み、方法はさらに、基板に堆積電流を印加するステップを含み、基板に堆積電流を印加することによって、少なくとも約500ナノメートルの厚みを有するCoNiP層が基板上に電着される、方法。
【0003】
基板上にCoNiPを形成する方法であって、基板を電気めっき槽に入れるステップを含み、電気めっき槽には電気めっき組成物が入っており、電気めっき組成物は約3〜4pHを有し、ニッケル塩と、コバルト塩と、少なくとも約0.15MのNaH2PO2、KH2PO2、Ca(H2PO22、Mg(H2PO22、リン酸、またはそれらの組合せとを含み、方法はさらに、基板に少なくとも約8mA/cm2の堆積電流を印加するステップを含み、基板に堆積電流を印加することによって、CoNiPが少なくとも約5マイクロメートルの厚みで基板上に電着される、方法。
【0004】
基板と、基板上の電着CoNiP層とを含む物品であって、CoNiPは約25μm〜約65μmの厚みを有し、CoNiPは少なくとも約0.2テスラの残留磁束を有する、物品。
【0005】
これらおよびさまざまな他の特徴および利点が、以下の詳細な説明を読むことによって明らかになるであろう。
【0006】
本開示内容は、添付の図面と関連して本開示内容のさまざまな実施形態の以下の詳細な説明を考慮すると、より完全に理解され得る。
【0007】
図面は一定の縮尺で描かれているとは限らない。図中で用いられる同様の番号は同様の部品を指す。しかし、ある図面における部品を言及するための数字の使用は、同じ番号を付された別の図面における当該部品を限定することを意図していないことが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明において利用され得る例示的な電着システムの概略図である。
【図2】実施例3で得られたM−Hヒステリシスを示すグラフである。
【図3A】倍率100倍の、実施例4で形成された物品の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【図3B】倍率1500倍の、実施例4で形成された物品の走査型電子顕微鏡(SEM)画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下の説明では、この一部を形成し、かつ一例としていくつかの具体的な実施形態が示される添付の一連の図面を参照する。他の実施形態も考えられ、本開示内容の範囲または思想から逸脱することなく可能であることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味に解釈されるべきではない。
【0010】
特に断りのない限り、明細書および請求項中に用いられる特徴のサイズ、量、および物理的特性を表わすすべての数は、「約」という用語によってすべての場合において修正されることを理解すべきである。したがって、特に断りのない限り、上記明細書および添付の請求項中に記載の数値パラメータは、本発明に開示される教示内容を利用する当業者が得ようとする所望の特性に依存して変化し得る概算である。
【0011】
端点による数値範囲の記載は、当該範囲内に包含されるすべての数(たとえば1〜5は1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)ならびに当該範囲内のいずれの範囲も含む。
【0012】
本明細書および添付の請求項中に用いられるように、内容上明らかに他の意味を示す場合を除き、単数形″a″、″an″、および″the″は、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書および添付の請求項中に用いられるように、内容上明らかに他の意味を示す場合を除き、「または」という用語は一般に、「および/または」を含む意味で用いられる。
【0013】
「含む」、「含んで」、または同様の用語は、包含するが限定されないこと、すなわち包むが排他的でないことを意味する。
【0014】
本発明では、基板上にCoNiPを形成する方法、および特定の特性を有するCoNiPを含む基板が開示される。CoNiPは、層、膜、堆積物、または他の同様の構造として特徴付けられ得る。開示される方法は、電着法である。電着法は、電気エネルギーおよび電位勾配を用いて、基板の導電性部分上にカチオンを堆積する。方法は、基板を電気めっき槽に入れるステップと、基板に堆積電流を印加するステップとを含み得る。
【0015】
図1は、本発明において利用され得る例示的なシステムの概略図である。このシステムは、任意の基板ホルダ105内の基板110を示す。基板110は電源130に電気的に接続され得、電源130は対電極125に電気的に接続され得る。基板110は(対電極125とともに)、電気めっき組成物120で充填され得るめっき槽115内に取出し可能に配置され得る。図1に示されるようなシステムは、電気めっきに利用され得るより大きなシステムに任意に含まれ得る。そのようなより大きなシステムの例は、SEMITOOL(登録商標)CFD(登録商標)めっき工具(アプライド マテリアルズ、カリフォルニア州サンタクララ市)を含む。電源130から基板110に電流を印加することによって、電気めっき組成物120から基板110上に材料を堆積させることができる。
【0016】
本発明において利用され得る基板は、その上にCoNiP層を形成することが望まれるすべてのものを含み得る。基板は導電性であってもよし、導電性部分を有してもよいし、または導電性構造(材料の層またはその他)が形成されていてもよい。実施形態では、基板は非導電性であってもよく、導電性層が形成されていてもよい。導電性層は、基板のある部分に印加された電流を、CoNiP層を電着すべき場所に通すように機能し得る。導電性層は、シード層とも称され得る。シード層は、たとえばスパッタ堆積を含むさまざまな堆積技術を用いて堆積され得る。実施形態では、シード層は、たとえば銅(Cu)、金(Au)、ルテニウム(Ru)、ニッケル鉄(NiFe)合金、コバルト鉄(CoFe)合金、またはコバルトニッケル鉄(CoNiFe)合金を含み得る。実施形態では、シード層は、たとえばNiFe(80:20)、NiFe(45:55)、およびCoFe(65:35)を含む合金を含み得る。実施形態では、シード層はCuを含み得る。基板はさらに、任意の接着層を含み得る。接着層は、CoNiP材料の基板への接着を促進するように機能し得る。接着層は、シード層上に(またはシード層が存在しない場合は基板上に)形成され得る。接着層は、たとえばスパッタ堆積を含むさまざまな堆積技術を用いて堆積され得る。実施形態では、接着層は、たとえばタンタル(Ta)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル化合物、およびチタン化合物を含み得る。実施形態では、接着層は、たとえば窒化タンタル(TaN)および窒化チタン(TiN)を含み得る。実施形態では、接着層はTaを含み得る。
【0017】
基板はさらに、任意にパターニングされ得る。パターニング基板によって、CoNiPが基板のいくつかの部分にのみ堆積される。パターニング基板は、導電性材料を基板上のどこに配置するかに基づいて形成され得る。パターニング基板は、基板の導電性表面のある部分を被覆することによっても形成され得る。導電性表面は、非導電性材料を用いて被覆され得る。実施形態では、導電性表面は、たとえば非導電性テープを用いて被覆され得る。
【0018】
本発明において開示される方法は、電気めっき組成物が収容されるか入っている電気めっき槽に基板を入れるステップを含み得る。電気めっき組成物は、ニッケル源、コバルト源、およびリン源を含み得る。なお、電気めっき組成物は他の任意の成分も含み得る。電気めっき組成物は、たとえば脱イオン水などの水も含み得る。電気めっき組成物は、たとえばさまざまな成分を水(たとえば脱イオン水)に溶解することによって作ることができる。
【0019】
実施形態では、電気めっき組成物はニッケル源を含み得る。ニッケル源は、水に溶解可能な1つ以上の無機またはニッケル化合物を含み得る。実施形態では、ニッケル源は、水に溶解可能な1つ以上の無機ニッケル化合物(たとえばニッケル塩)を含み得る。例示的なニッケル源は、たとえば塩化ニッケル(NiCl2またはNiCl2・6H2O)、臭化ニッケル(NiBr2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、スルファミン酸ニッケル(Ni(SO3NH2)・4H2O)、テトラフルオロホウ酸ニッケル(Ni(BF42)、およびそれらの組合せを含み得る。実施形態では、NiCl2が利用され得る。なお、無水物または水和物の形態の任意の無機化合物が利用され得る。電気めっき組成物は、さまざまな濃度のニッケル源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.0.05モル(M)〜0.4Mのニッケル源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.1M〜0.3Mのニッケル源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.15M〜0.25Mのニッケル源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.18M〜0.22Mのニッケル源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.2Mのニッケル源を含み得る。
【0020】
実施形態では、電気めっき組成物はコバルト源を含み得る。コバルト源は、水に溶解可能な1つ以上の無機またはコバルト化合物を含み得る。実施形態では、コバルト源は、水に溶解可能な1つ以上の無機コバルト化合物(たとえばコバルト塩)を含み得る。例示的なコバルト源は、塩化コバルト(CoCl2またはCoCl2・6H2O)、臭化コバルト(CoBr2)、硫酸コバルト(CoSO4)、およびそれらの組合せを含み得る。実施形態では、CoCl2が利用され得る。なお、無水物または水和物の形態の任意の無機化合物が利用され得る。電気めっき組成物は、さまざまな濃度のコバルト源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.05M〜0.4Mのコバルト源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.1M〜0.3Mのコバルト源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.15M〜0.25Mのコバルト源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.18M〜0.22Mのコバルト源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.2Mのコバルト源を含み得る。
【0021】
実施形態では、電気めっき組成物は、同量のニッケル源およびコバルト源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.3M以内のニッケル源およびコバルト源の量を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.2M以内のニッケル源およびコバルト源の量を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.1M以内のニッケル源およびコバルト源の量を含み得る。
【0022】
電気めっき組成物は、リン源も含む。リン源は、水に溶解可能な1つ以上の無機またはリン化合物を含み得る。実施形態では、リン源は、水に溶解可能な1つ以上の無機リン化合物を含み得る。例示的なリン源は、たとえばリン含有酸:リン含有酸(H3PO3)、リン酸(H3PO4)、次亜リン酸(H3PO2);リン含有酸の塩:リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸ナトリウム(Na3PO4)、リン酸二水素カルシウム(Ca(H2PO4)、リン酸水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO42)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、リン酸水素二カリウム(K2HPO4)、リン酸カリウム(K3PO4)、リン酸二水素マグネシウム(Mg(H2PO4)、リン酸水素マグネシウム(MgHPO4)、リン酸三マグネシウム(Mg3(PO42)、リン酸ナトリウム(HNa23P)、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、次亜リン酸カリウム(KH2PO2)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)、次亜リン酸マグネシウム(Mg(H2PO22);およびそれらの組合せを含み得る。実施形態では、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、次亜リン酸カリウム(KH2PO2)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)、次亜リン酸マグネシウム(Mg(H2PO22)が利用され得る。なお、無水物または水和物の形態の任意の無機化合物が利用され得る。
【0023】
電気めっき組成物は、さまざまな濃度のリン源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも0.1Mのリン源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも0.15Mのリン源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも0.2Mのリン源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも0.25Mのリン源を含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも0.27Mのリン源を含み得る。
【0024】
本発明において利用される電気めっき組成物は、他の任意の成分も含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、塩化ナトリウム(NaCl)または塩化カリウム(KCl)を含み得る。塩化ナトリウム、および塩化カリウムなどの他の同様の化合物は、電気めっき槽の導電率を増加させるように機能し得る。電気めっき組成物にNaCl(またはKCl)を含む実施形態では、それは少なくとも1つ0.3Mの濃度を有し得る。実施形態では、電気めっき組成物は、少なくとも0.5MのNaClまたはKClを含み得る。実施形態では、電気めっき組成物は、0.7MのNaClまたはKClを含み得る。電気めっき組成物はさらに、たとえばサッカリン、サッカリン塩、クマリン、チオ尿素、および硫酸ラウリルなどの添加物も含み得る。実施形態では、サッカリンが利用され得る。サッカリンは、電気めっき組成物中に用いられると、電機めっきシステム内の応力を緩和するように機能し得る。サッカリンを利用する実施形態では、それは少なくとも1mMの濃度を有し得る。サッカリンを利用する実施形態では、それは少なくとも2mMの濃度を有し得る。サッカリンを利用する実施形態では、それは50mM未満の濃度を有し得る。サッカリンを利用する実施形態では、それは20mM未満の濃度を有し得る。サッカリンを利用する実施形態では、それは10mM未満の濃度を有し得る。サッカリンを利用する実施形態では、それは2mM〜8mMの濃度を有し得る。本発明において利用される電気めっき組成物には、他の任意の化合物も含まれ得る。たとえば、CoNiP層内に堆積されるリンの原子百分率を増加させるために他の添加物が添加され得る。
【0025】
電気めっき組成物は、そのpHによっても特徴付けられ得る。実施形態では、電気めっき組成物は、2.5〜4pHを有し得る。実施形態では、電気めっき組成物は、3〜4pHを有し得る。実施形態では、電気めっき組成物は、3pHを有し得る。
【0026】
基板が電気めっき槽に入れられると、基板に堆積電流が印加され得る。図1に示されるように、基板は電源130に電気的に接続され得る。基板が電源および対電極にどのように接続されるかについての具体的な詳細は、利用する特定のシステムに少なくとも部分的に依存し得る。電源は、対電極に直流またはパルス電流を供給し得、電気めっき組成物中に溶解する金属イオンが基板上で減少し、基板上にめっきされ得る。堆積電流は、1平方センチメートル当たり少なくとも6ミリアンペア(mA/cm2)であり得る。実施形態では、堆積電流は少なくとも8mA/cm2であり得る。実施形態では、堆積電流は10mA/cm2であり得る。
【0027】
堆積電流の印加時間は、製造中のCoNiP層の所望の厚み、およびそれが堆積される基板の種類に少なくとも部分的に依存し得る。基板の一面を覆う(CoNiPで覆われない基板の導電性部分の部分がない)実施形態では、50マイクロメートル(μm)のCoNiP層がたとえば約5時間で堆積され得る。基板の一面を覆う実施形態では、25μmのCoNiP層が約2.5時間で堆積され得る。基板の一面を覆う実施形態では、10μmのCoNiP層が約1時間で堆積され得る。基板をパターニングする(CoNiPで覆われない基板の導電性部分の部分があり、これは、導電性部分の部分をたとえば非導電性テープなどの非導電性材料で被覆することによって達成され得る)実施形態では、50μmのCoNiP層がたとえば約7時間で堆積され得る。基板をパターニングする実施形態では、25μmのCoNiP層が約3.5時間で堆積され得る。基板をパターニングする実施形態では、10μmのCoNiP層が約1.4時間で堆積され得る。
【0028】
基板に堆積電流を印加することによって、基板上にCoNiP層を形成することができる。CoNiP層はさまざまな厚みを有し得る。そのような膜は、所望の磁気特性を維持しつつ、以前に製造されたCoNiP層よりも厚い場合がある。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも500ナノメートル(nm)の厚みを有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも1マイクロメートル(μm)の厚みを有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも5μmの厚みを有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも25μmの厚みを有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも35μmの厚みを有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも50μmの厚みを有し得る。実施形態では、CoNiP層は、25μm〜65μmの厚みを有し得る。
【0029】
電着されたCoNiPは磁性を有し得る。CoNiP層の磁気特性は、残留磁束(Br)によって定量化され得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも0.2テスラ(T)の残留磁束を有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも0.23Tの残留磁束を有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも0.25Tの残留磁束を有し得る。CoNiP層の磁気特性は、磁気保磁力(Hc)によっても定量化され得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも1.5キロエルステッド(KOe)の磁気保磁力を有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも2KOeの磁気保磁力を有し得る。実施形態では、CoNiP層は、少なくとも2.2KOeの磁気保磁力を有し得る。実施形態では、CoNiP層は、2.4KOeの磁気保磁力を有し得る。
【0030】
方法は、本発明に記載されない工程も含み得る。実施形態では、電着層を有する基板にはさらなる処理が施され得る。実施形態では、電着CoNiP層には、CoNiP表面を平坦化するために設計されたさらなる処理が施されなくてもよい。たとえば、電着CoNiP層には、比較的平坦なCoNiP層を得るための化学機械平坦化(CMP)が施されなくてもよい。これは、基板上にCoNiP層を形成するのに必要な処理工程が減るために有利であり得る。
【0031】
本発明では、電着CoNiP層が形成された上述のような基板を含む物品も開示される。CoNiP層は、上述のような厚みを有し得る。CoNiP層は、上述のような磁気特性を有し得る。本発明に開示される物品は、より大きな物品または装置の一部であり得る。実施形態では、上述のようなCoNiP層を含む物品は、MEMS装置において利用され得る。実施形態では、上述のようなCoNiP層を含む物品は、磁気スイッチとして利用され得る。
【0032】
実施例
材料および方法
特に断りのない限り、すべての化学物質をアルドリッチ社から購入し、さらなる精製をせずに使用した。実施例におけるすべての部分、百分率、割合などは、特に断りのない限り重量による。
【0033】
実施例1
一連の5μmのCoNiP層を、異なる濃度のリン源を用いて堆積した。水性電気めっき組成物を、47.5g/LのNiCl2・6H2O(0.2M)、49.03g/LのCoCl2・6H2O(0.2M)、24.7g/LのH3BO3(0.4M)、40.9g/LのNaCl(0.7M)および0.8g/L(3.9mM)のサッカリンナトリウムを用いて調製した。3つの異なる電気めっき組成物を、12g/L(0.11M)、20g/L(0.19M)および31g/L(0.29M)のNaH2PO2・H2Oを用いて製造した。
【0034】
CoNiP層を、2000Åの銅シード層および500Åのタンタル接着層を有する150mmのシリコン(Si)ウェハ上に堆積した。基板は、SEMITOOL(登録商標)CFDめっき工具(アプライド マテリアルズ、カリフォルニア州サンタクララ市)の内部で構成した。1.65Aの堆積電流を約30分間印加した。結果として得られた堆積物を、JEOL JSM−6460LV(日本電子株式会社、東京)を用いたエネルギー分散形X線(EDX)分析を用いて分析し、MicroMag 3900(Princeton Measurement Corporation社、ニュージャージー州プリンストン市)を用いてCo、Ni、およびPおよび振動試料型磁力計(VSM)分析の組成物を求め、残留磁束(Br)を求めた。この分析の結果を以下の表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
実施例2
一連のCoNiP層を、異なる電着電流を用いて堆積した。47.5g/LのNiCl2・6H2O(0.2M)、49.03g/LのCoCl2・6H2O(0.2M)、24.7g/LのH3BO3(0.4M)、40.9g/LのNaCl(0.7M)、0.8g/L(3.9mM)のサッカリンナトリウム、および30g/L(0.28M)のNaH2PO2・H2Oを含む電気めっき組成物を調製した。基板および電気めっきシステムは、上述の実施例1で説明した。堆積電流は、8、10、16、および20mA/cm2に設定した。EDXおよびVSM分析を上述のように行なった。この分析の結果を以下の表2に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例3
一連のCoNiP層を、異なるpHを有する電気めっき組成物を用いて堆積した。47.5g/LのNiCl2・6H2O(0.2M)、49.03g/LのCoCl2・6H2O(0.2M)、24.7g/LのH3BO3(0.4M)、40.9g/LのNaCl(0.7M)、0.8g/L(3.9mM)のサッカリンナトリウム、および30g/L(0.28M)のNaH2PO2・H2Oを含む電気めっき組成物を調製した。3つの異なる量のこの電気めっき組成物のpHは、10%のHCl溶液で2.5、3、および4pHに調節した。基板および電気めっきシステムは、上述の実施例1で説明した。堆積電流は10mA/cm2に設定した。EDXおよびVSM分析を上述のように行なった。この分析の結果を以下の表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
3pHで形成された実施例3における特定のCoNiP層についてのVSM分析からの面外測定のグラフが、図2に示される。この分析の結果、膜の保磁力は2376エルステッド(Oe)であることがわかった。
【0041】
実施例4
3pHの電気めっき組成物について実施例3で与えられた条件を用いて、50μmの厚みを有するMEMS構造を形成し、実施例3で説明したようなパターニングめっきを約7時間行なった。当該構造の走査型電子顕微鏡(SEM)画像が、図3A(100倍)および図3B(1500倍)に示される。原子間力顕微鏡法(AFM)を用いてRMS粗さを求め、これは約8nmであることがわかった。
【0042】
このように、CoNiP膜の電着の実施形態が開示される。上述の実現例および他の実現例は、以下の請求項の範囲内にある。当業者であれば、本開示内容は開示されている以外の実施形態でも実践可能であることを認識するであろう。開示された実施形態は限定するためではなく例示のために提示され、本開示内容は以下の請求項によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0043】
110 基板、105 基板ホルダ、115 めっき槽、120 電気めっき組成物、125 対電極、130 電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にCoNiPを形成する方法であって、
基板を電気めっき槽に入れるステップを備え、前記電気めっき槽には電気めっき組成物が入っており、前記電気めっき組成物は、
ニッケル源と、
コバルト源と、
少なくとも約0.1Mのリン源とを含み、前記方法はさらに、
前記基板に堆積電流を印加するステップを備え、
前記基板に前記堆積電流を印加することによって、少なくとも約500ナノメートルの厚みを有するCoNiP層が前記基板上に電着される、方法。
【請求項2】
前記リン源は、リン含有酸から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン源は、次亜リン酸ナトリウム(NaH2PO2)、次亜リン酸カリウム(KH2PO2)、次亜リン酸カルシウム(Ca(H2PO22)、次亜リン酸マグネシウム(Mg(H2PO22)、またはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リン源は、少なくとも約0.25Mの濃度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニッケル源は、NiCl2、NiBr2、NiSO4、Ni(SO3NH2)・4H2O、Ni(BF42、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コバルト源は、CoCl2、CoBr2、CoSO4、およびそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電気めっき槽は、少なくとも約0.5MのNaClをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記電気めっき槽は、少なくとも約1mMのサッカリンをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電気めっき槽は、約20mM未満のサッカリン濃度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記電気めっき槽は、約3pHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記堆積電流は、少なくとも約8mA/cm2である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記堆積電流は、約10mA/cm2である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記CoNiP膜は、少なくとも約1マイクロメートルの厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記CoNiP膜は、約5マイクロメートルの厚みを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
基板上にCoNiPを形成する方法であって、
基板を電気めっき槽に入れるステップを備え、前記電気めっき槽には電気めっき組成物が入っており、前記電気めっき組成物は約3〜4pHを有し、
ニッケル塩と、
コバルト塩と、
少なくとも約0.15MのNaH2PO2、KH2PO2、Ca(H2PO22、Mg(H2PO22、リン酸、またはそれらの組合せとを含み、前記方法はさらに、
前記基板に少なくとも約8mA/cm2の堆積電流を印加するステップを備え、
前記基板に前記堆積電流を印加することによって、CoNiPが少なくとも約5マイクロメートルの厚みで前記基板上に電着される、方法。
【請求項16】
前記ニッケル塩は、約0.1〜0.3MのNiCl2、NiBr2、およびそれらの組合せから選択され、前記コバルト塩は、約0.1M〜0.3MのCoCl2、CoBr2、およびそれらの組合せから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
NaH2PO2、KH2PO2、Ca(H2PO22、Mg(H2PO22、またはリン酸は、少なくとも約0.25Mで存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記CoNiP層は少なくとも約25μmの厚みを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
基板と、
前記基板上の電着CoNiP層とを備える物品であって、前記CoNiPは約25μm〜約65μmの厚みを有し、前記CoNiPは少なくとも約0.2テスラの残留磁束を有する、物品。
【請求項20】
前記CoNiPは、少なくとも約35μmの厚みと、少なくとも約0.25テスラの残留磁束とを有する、請求項19に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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