説明

基板上の触媒およびその提供方法

触媒を基板上に提供する方法であって、可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含む第1のウォッシュコートを提供し、前記第1のウォッシュコートを基板と接触させてコーティング基板を形成し、その後、前記コーティング基板を、酸化物または酸化物を担持した触媒を含む第2のウォッシュコートと接触させて、前記酸化物または前記酸化物を担持した触媒を、コーティング基板に物理的に吸着、化学的に吸着、結合、または別の方法で付着させる、各工程を有してなる方法について開示する。基板;可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含むアンカー層;および酸化物または酸化物を担持した触媒を含む第2の層を備えた、基板上の触媒についても開示する。基板上の触媒は、未焼成の形態または焼成形態のいずれかでありうる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年4月30日に出願の米国特許出願第12/112,609号の優先権の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、基板上の触媒およびその提供方法に関し、さらに具体的には、酸化物または酸化物を担持した基板上の触媒およびその提供方法に関する。
【背景技術】
【0003】
極めて活性に富んだ担持触媒の開発は継続されており、関心が高まっている。担持触媒系は、多くの他の産業上の利用に有用であることに加えて、発電所、精製所、および他の化学処理プラントから排出される大気汚染の軽減に役立ちうる。担持触媒系はまた、例えば、印刷、ドライクリーニング、塗装工場、およびプラスチック用金型工場などの操業からの揮発性有機化合物(VOC)の排出を低減するように設計されうる。
【0004】
担持触媒材料は、例えば、水素化脱硫、水素化、メタン生成、メタノール合成、アンモニア合成、一酸化炭素酸化、およびさまざまな石油化学プロセスなどのさまざまな化学変換に使用することができる。さらには、PdまたはPt系の触媒のような高価な触媒は、触媒を再利用できるように担持させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
触媒を基板に塗布し、担持触媒の分散を増進することが望ましいであろう。基板は、例えば、取り扱いの際の触媒の形状因子として機能しうる。しかしながら、担体および基板の上に触媒を塗布する現行の方法は、触媒材料と基板の不適合(例えば結合能力の欠如)によって制限される場合がある。担持触媒を製造するためのこれらの方法は、最終的には、触媒の分散の損失および/または触媒活性の喪失を生じうる。
【0006】
従来の触媒材料および方法に関する前述の問題および他の欠点に対処することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、多層化触媒担体およびそれらの製造および使用方法に関する。本開示は、多層化触媒担体の使用、および開示する多層化触媒担体の製造および使用方法を通じて、上述の問題に少なくともある程度対処するものである。
【0008】
1つの実施の形態では、触媒を基板上に提供する方法であって、
可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含む第1のウォッシュコートを提供し、
前記第1のウォッシュコートを基板と接触させてコーティングされた基板を形成し、その後、
前記コーティング基板を、酸化物または酸化物を担持した触媒を含む第2のウォッシュコートと接触させて、前記酸化物または前記酸化物を担持した触媒を、前記コーティング基板に物理的に吸着、化学的に吸着、結合、または別の方法で付着させる、
各工程を有してなる方法が開示される。
【0009】
別の実施の形態では、基板上の触媒であって、
a)少なくとも1つの表面を有する基板;
b)可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含む、前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部と接するアンカー層;および
c)前記基板の向かい側に配置される前記アンカー層の少なくとも一部に配置された第2の層
を含み、
前記第2の層が、酸化物または酸化物を担持した触媒を含むことを特徴とする、基板上の触媒が開示される。
【0010】
さらに別の実施の形態では、基板上の触媒であって、
少なくとも1つの表面を有する基板、
前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部と接するアンカー層、および
前記基板の向かい側に配置される前記アンカー層の少なくとも一部に配置された第2の層、
を含み、
前記アンカー層が第1の酸化物を含み、ここで、前記前記第2の層が第2の酸化物または酸化物を担持した触媒を含み、かつ、前記アンカー層と前記第2の層の両方が実質的に結合剤を含まないことを特徴とする、基板上の触媒が開示される。
【0011】
本開示の追加の態様および利点は、一部には、詳細な説明および添付の特許請求の範囲に記載され、一部には、詳細な説明から導かれるか、または本開示のさまざまな態様の実践によって理解することができよう。後述する利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘する要素および組合せによって、実現および達成されるであろう。前述の概要および後述する詳細な説明は、典型例および単に説明の目的であって、本開示のように限定されないものと理解されるべきである。
【0012】
本明細書に取り込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本開示のある特定の例を例証しており、記述と共に、限定されることなく、本開示の原理を説明する役割をする。同様の数字は、図面全体を通して同一の要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の典型的な実施の形態。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の説明は、最良の現在知られている実施の形態における本開示の可能な教示として提供される。この目的のため、当業者は、本明細書に記載される開示のさまざまな実施の形態には、本開示の有益な結果を得つつ、多くの変更がなされうることを認識し、理解するであろう。本開示の所望の利益の一部は、他の特徴を使用することなく、本開示の特徴の一部を選択することによって得ることができることもまた明らかであろう。したがって、当業者は、本開示への多くの変更および適合が可能であり、特定の環境においてはそれが望ましくさえあり、本開示の一部であることも認識するであろう。よって、以下の説明は、本開示の原理の実例として提供されるのであって、それらに限定されない。
【0015】
本明細書および添付の特許請求の範囲で言及される多くの用語については、次の意味を有すると定義されるべきである。
【0016】
「随意的な」または「随意的に」とは、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよく、その記載が前記事象または状況が生じる場合と生じない場合の両方を含むことを意味する。
【0017】
開示する組成物の調製に使用される成分、ならびに、本明細書に開示される方法で使用されるそれらの組成物について開示する。これらおよび他の材料が本明細書で開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互関係、群などが開示され、これらの化合物のさまざまな個別的および集合的な組合せおよび順列のそれぞれの特定の言及が明白に開示されていない場合、それぞれが具体的に予定されており、本明細書に開示されているものと理解されたい。よって、実施されうるさまざまな追加の工程が存在する場合、これら追加の工程のそれぞれが、開示される方法の任意の特定の実施の形態または実施の形態の組合せを用いて実施されうるものと理解されたい。
【0018】
本明細書では、ある成分の「重量%」または「重量パーセント」または「重量基づいたパーセント」は、そうでないことが特記されない限り、パーセンテージで表した、成分の重量の、その成分を含む組成物の合計重量に対する比のことをいう。
【0019】
本明細書では、「コーティング」という用語は、基板に塗布する際に、1つ以上の酸化物または酸化物を担持した触媒の粒子を安定化させるのに適した、高表面積の表面を提供することが可能な成分懸濁液のことを称することが意図されている。
【0020】
本明細書では、「ウォッシュコート」という用語は、基板またはコーティング基板に塗布することができる組成物を称することが意図されている。
【0021】
本明細書では、「基板」という用語は、コーティングおよび/またはウォッシュコートを堆積させることができる本体を称することが意図されている。モノリスを含めた基板は、例えば、ハニカム状、積層状、コイル状、織物状、発泡状、またはそれらの組合せなどの任意の形態および/または形状を有していて差し支えなく、対象とする用途にとって任意の適切な物質で構成されうる。
【0022】
本明細書では、「ナノ」および「ナノ粒子」という用語は、さまざまな態様において、約100nm未満、約10nm未満、または約5nm未満の平均粒径を有する少なくとも1つの態様を有する粒子を称することが意図されている。
【0023】
本明細書で開示される基板上の触媒は、ある特定の機能を有することが理解されよう。開示される機能を実施するためのある特定の構造的な要件が開示され、開示される構造に関連する同一の機能を行うことができるさまざまな構造が存在し、これらの構造が典型的には同一の結果を達成するであろうことも理解されよう。
【0024】
基板上の触媒および、触媒または担持された基板上の触媒の製造方法が開示される。本開示のさまざまな態様では、コーティングは固体基板に結合および/または付着させることができ、前記コーティングは酸化物または酸化物を担持した触媒に結合および/または付着するための組成物および手段を有する。本開示は、一般に、酸化物または酸化物を担持した触媒を、基板および/またはコーティング基板とは別に処理することができるようにし、それによって、基板、コーティング基板、酸化物、および/または酸化物を担持した触媒をすべて一緒に処理する際に生じうる悪影響を少なくともある程度克服する。
【0025】
1つの実施の形態では、触媒を基板上に提供する方法であって、
可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含む第1のウォッシュコートを提供し、
前記第1のウォッシュコートを基板と接触させてコーティングされた基板を形成し、その後、
前記コーティング基板を、酸化物または酸化物を担持した触媒を含む第2のウォッシュコートと接触させて、前記酸化物または前記酸化物を担持した触媒を、前記コーティング基板に物理的に吸着、化学的に吸着、結合、または別の方法で付着させる、
各工程を有してなる方法が開示される。
【0026】
別の実施の形態では、基板;可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含むアンカー層;および酸化物を含む第2の層を含む、基板上の触媒が開示される。
【0027】
本発明によれば、基板上の触媒は、未焼成の形態または焼成形態のいずれかでありうる。
【0028】
基板
本開示において使用するための基板は、任意の適切な材料を含みうる。基板自体が、さまざまな態様において少なくとも一部の基板材料に悪影響を与えうる触媒または担持触媒処理条件に晒される必要がないことから、本開示は、任意または実質的に任意の基板の使用を可能にする。基板は、無機材料、有機材料、またはそれらの組合せを含みうる。
【0029】
1つの態様では、基板は、多孔質の壁によって画成された表面を有し、基板を通じて第1の表面から第2の表面まで延在する、複数の内部チャネルを含む。基板は、例えば、ハニカム構造などのモノリスでありうる。他のモノリス基板は、任意の形状の孔隙を含んでもよく、ハニカム型の六角形構造は本開示の制限的特性ではない。モノリスなどの基板は、コーティングに適した任意の材料を含みうる。1つの態様では、基板は耐熱性の無機材料を含む。他の態様では、基板は、ガラス、セラミック、ガラス・セラミック、またはそれらの組合せを含む。さまざまな特定の態様では、基板は、コージエライト、チタン酸アルミニウム、チタニア、例えばα−アルミナ、γ−アルミナなどのアルミナ、または他のセラミック材料、および/またはそれらの組合せを含む。さらに他の態様では、基板は、例えばガラス状炭素などの炭素材料を含む。さらに他の態様では、基板は、例えばアルミニウムなどの金属を含む。さらに他の態様では、基板は、例えば熱可塑性物質などの高分子材料を含む。本開示は、本明細書に列挙される特定の基板材料には限定されず、例えば列挙される材料の任意の2つ以上の組合せを含む、任意の適切な材料を含みうることに留意すべきである。さまざまな態様では、基板は、固体材料、例えば、金属またはプラスチックスポンジなどのスポンジ(発泡体)、焼結材料、またはそれらの組合せを含みうる。このように、基板は、さまざまな態様において、多孔質の材料、孔隙のない材料、半多孔質の材料、またはそれらの組合せを含みうる。
【0030】
1つの態様では、基板は多孔質表面を有してもよく、多孔質表面にコーティングを塗布する際に、コーティングの少なくとも一部は多孔質表面に浸透しうる。特定の態様では、コーティングの少なくとも一部は、基板の孔隙の少なくとも一部に浸透しうる。別の態様では、コーティングは、コーティング・スラリーのすべてまたは実質的にすべてが多孔質表面に浸透するように、基板の多孔質表面に塗布することができ、ここで、連続的ではないコーティングが基板表面に形成される。「コーティング」という用語は、これらの状況のすべてに適用される。
【0031】
基板が、空隙、チャネル、および/または他の開口部を含む場合に、過剰のコーティング材料が存在するときには、塗布後に、例えば圧縮空気の吹き付けなどの任意の適切な技術を使用して、随意的に除去することができる。
【0032】
1つの態様では、モノリスなどの基板は、例えばウォッシュコートでコーティングした後、乾燥することができ、乾燥および/または焼結を可能にする。特定の乾燥および/または焼結工程のパラメータは変化して差し支えなく、当業者は、特定の基板およびコーティング材料のための適切な乾燥および/または焼結工程を容易に選択することができよう。基板、例えば、コーティングしていない基板またはウォッシュコートでコーティング基板は、さまざまな態様において、触媒または担持触媒とは別に処理することができる。ある特定の用途では、これは本開示の利点でありうる。
【0033】
本開示の基板は、本開示の方法、製品、および用途と組み合わせて使用することができることが理解されよう。
【0034】
第1のウォッシュコート
さまざまな態様では、本開示のウォッシュコートは、例えば、1種類以上の極性有機溶媒、水、またはそれらの組合せに少なくともある程度可溶性の任意の塩種を含みうる。1つの態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、水に少なくともある程度可溶性である。1つの態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、極性有機溶媒に少なくともある程度可溶性である。別の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、極性有機溶媒に実質的に可溶性である。さまざまな態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、水、極性有機溶媒、またはそれらの組合せに、例えば、約1.5、2、5、10、50、100、200、400、500、800、1,000、1,500、2,000、3,000、または10,000ppmなど、約1ppmを超える溶解度;または、例えば、約1,000、1,500、2,000、3,000、5,000、10,000、15,000、20,000、30,000、50,000ppm以上など約1,000ppmを超える溶解度を有する。任意の特定の可溶性のウォッシュコート塩種の溶解度は、pH、温度、存在する塩種の特定の対イオン、および/または用いる溶媒の性質および極性などの因子に応じて変化して差し支えなく、本開示は任意の特定のレベルの溶解度に限定されることは意図されていないことが理解されるべきである。本開示の溶媒は、極性溶媒、水を含んで差し支えなく、可溶性のウォッシュコート塩種は特定の溶媒および/または用いられる溶媒の組合せに少なくともある程度可溶性であるべきであることに留意すべきである。
【0035】
他の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、可溶性のウォッシュコート塩種の少なくとも一部が少なくともある程度イオン化されることを条件に、特定の溶媒および/または用いられる溶媒の組合せ中で、コロイド懸濁液および/またはゾルを形成しうる。
【0036】
1つの態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、少なくとも1つの可溶性の陽イオン種および少なくとも1つの可溶性の陰イオン種を含む。さまざまな態様では、可溶性の陽イオン種は、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、またはそれらの組合せを含む。さまざまな態様では、可溶性の陰イオン種は、硝酸、ハロゲン、硫酸、亜硫酸、亜硝酸、リン酸、炭酸、シュウ酸、カルボン酸(例えば、ギ酸または酢酸)、またはそれらの組合せを含む。他の態様では、可溶性の陰イオン種は、ポリオキソメタレート(例えば[PMo12403-)を含み、ここで遷移金属種は陰イオンであり、対イオン(例えば[NH41+)は陽イオンである。例えば[PMo12403-などのポリオキソメタレートを含むこれらの態様では、例えば酸化モリブデンなどの金属酸化物は、結合剤として作用しうる。
【0037】
さまざまな態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、鉄化合物、亜鉛化合物、銅化合物、アルミニウム化合物、またはそれらの組合せを含む。特定の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、例えば、硝酸鉄、硫酸鉄、塩化鉄、またはそれらの組合せなどの鉄化合物を含む。理論に縛られることは望まないが、酸化鉄は、分散される特定の金属触媒粒子と共に使用する場合に触媒を促進することができ、鉄の存在が、小さい、高表面積の、金属触媒粒子の維持を補助すると考えられる。他の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、例えば、水酸化鉄、オキシ水素化物、またはそれらの組合せなどの水酸化物を含みうる。これらの酸化物は、水、極性有機溶媒、またはそれらの組合せにおいて制限された溶解度を有する場合があり、少なくともある程度可溶性の酸化物および/またはある程度イオン化される酸化物の懸濁液は、単独で、または他の可溶性のウォッシュコート塩種と組み合わせて使用することができることに留意されたい。
【0038】
可溶性のウォッシュコート塩種の濃度は、特定の塩種、極性有機溶媒、および、例えば、温度および/またはpHなどの条件に応じて変化しうる。さまざまな態様では、可溶性のウォッシュコート塩種の濃度は、約0.01Mからその塩の最大溶解限度までの範囲;または、約0.01Mより大きく約10Mまで、例えば、約0.01、0.02、0.05、0.08、0.1、0.2、0.25、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.8、2、2.5、3、3.5、4、5、6、7、8、9または10Mの範囲でありうる。他の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種の濃度は、約0.01M未満または約10.0Mより大きくてもよく、本開示は、特定の濃度範囲に限定されることは意図していない。1つの特定の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は硝酸鉄を含み、約1.6Mの濃度で存在する。他の態様では、可溶性のウォッシュコート塩種は、同一または異なる陽イオンを有する複数の塩種を含みうる。
【0039】
本開示の極性有機溶媒は、可溶性のウォッシュコート塩種を少なくともある程度溶媒和および/または溶解するのに適した任意の極性有機溶媒を含みうる。さまざまな態様では、極性有機溶媒は、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、セルソルブ(cellusolve)化合物、またはそれらの組合せを含みうる。他の態様では、極性有機溶媒は、本明細書に記載されるように機能しうる、任意のエチレングリコール誘導体を含みうる。
【0040】
本開示の不溶性の微粒子材料は、対象とする用途における使用に適した任意の材料を含みうる。1つの態様では、不溶性の微粒子材料は、ウォッシュコート組成物の実体部分および/または最大体積画分を含みうる。さまざまな態様では、不溶性の微粒子材料は結合剤として作用することができ、コーティング組成物は、追加の結合剤および/または結合剤材を必要としない。1つの態様では、不溶性の微粒子材料は、例えば酸化鉄、酸化亜鉛、酸化スズ、セリア、チタニア、アルミナ、シリカ、スピネル、ペロブスカイト、またはそれらの組合せなどの酸化物を含む。さらに別の態様では、不溶性の微粒子材料は、炭化物、窒化物、微粒子炭素質材料(例えば、活性炭および/またはカーボンブラック)、またはそれらの組合せを含みうる。不溶性の微粒子材料は、同一または異なる組成を有する複数の個別の不溶性の微粒子材料を含みうる。1つの態様では、不溶性の微粒子材料は酸化物を含み、ここで、前記酸化物は、複数の塩種が存在する場合に、可溶性のウォッシュコート塩種と同一、または可溶性のウォッシュコート塩種の少なくとも1つ塩種と同一の陽イオン(例えば金属)を含む。特定の態様では、不溶性の微粒子材料は、酸化鉄を含む。
【0041】
1つの態様では、ウォッシュコートおよび/または不溶性の微粒子材料は、それ自体が少なくともある程度触媒活性でありうる。特定の態様では、不溶性の微粒子材料は、触媒活性を示す酸化物である。別の態様では、ウォッシュコートおよび/または不溶性の微粒子材料は、実質的な触媒活性を示さない。
【0042】
不溶性の微粒子材料の特定の組成および/または相は変化しうる。さまざまな態様では、不溶性の微粒子材料は、α、γ、δ、η、θ、κ、ρ、および/またはχ−アルミナ、シリカ、シリカ−アルミネート、ゼオライト、シリカ−マグネシア、酸化チタン、酸化ジルコニウム、またはそれらの組合せを含む。
【0043】
目的とする基板コーティングは、特定の用途にとっての所望の厚さでありうる。典型的には、基板コーティングは触媒を固定する働きをすることができることから、コーティングは、最適な触媒の分散および曝露が達成されるような厚さを有しうる。一般に、本開示は、非常に薄いコーティングを可能にしうる。コーティングの厚さは、さまざまな態様において、コーティング材料の粒径に応じて決定されうる。この場合も、コーティング材料の所望の粒径は、良好な付着が達成されるように、触媒および触媒担体粒子の所望の厚さに基づいて選択または加工されるべきである。コーティングのための目的の厚さとしては、限定されることなく、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.3、1.4、1.5、1.6、1,8、2、2.3、2.5、2.7、3、3.5、4、5、6、8、9、または10μmが挙げられる。コーティングの厚さは、約0.1、0.2、0.5、0.8、1、2、3、4、または5mmでありうる。1つの態様では、コーティングの厚さは約5mm未満でありうる。薄いコーティングとしては、約6、7、8、9、12、20、30、40、50、60、70、80、90、および95nmの厚さが挙げられるが、本開示は特定のコーティング厚さに限定することは意図されていない。
【0044】
基板コーティングは、例えば、非共有結合および/または共有結合、物理吸着、化学吸着、および/または任意の他の付着メカニズムなどの任意の適切な手段を通じて、触媒または担持触媒に結合することができる。本開示のさまざまな態様では、触媒担体は、基板コーティングと水素結合することができる物質を含みうる。これらの例では、触媒担体は、少なくとも1つの水素結合供与体、および/または、少なくとも1つの水素結合受容体を含みうる。水素結合受容体が存在する場合、水素結合受容体は電気陰性原子を含みうる。水素結合することができる典型的な電気陰性原子としては、限定されることなく、フッ素、酸素、および窒素が挙げられる。前述の水素結合受容体のいずれかが存在する場合、それらは金属原子と結合することができる。酸素が存在する場合、例えば、酸素は金属と結合して金属酸化物を形成しうる。少なくとも一部の基板コーティングに使用することが意図されている金属酸化物の例としては、限定されることなく、酸化セリウム、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および/またはそれらの任意の組合せが挙げられる。他の特定の例としては、限定されることなく、TiO2、Al23、γ−Al23、SiO2、MgO、ZnO、Fe23、および/またはそれらの任意の組合せが挙げられる。さらなる例として、例えば、イットリア安定化ジルコニアなどのイットリアおよびジルコニアが挙げられる。
【0045】
理論に縛られることは望まないが、触媒担体と基板コーティングの間に水素結合が存在する場合、結合は常に同一タイプの結合でなくてもよく、常に存在する必要もない。1つの態様では、粉末の触媒担体材料は金属酸化物を含み、ここで、粉末は、水素結合を介して、金属酸化物を含む基板コーティングに結合する。粉末および基板コーティングの焼成後、水素結合は脱水と共に金属酸素結合を形成することができる。
【0046】
第2のウォッシュコート
本開示は、さまざまな態様において、第2のウォッシュコートを含む。さまざまな態様では、第2のウォッシュコートは酸化物を含みうる。1つの態様では、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートと同一または実質的に同一の組成を含む。別の態様では、第2のウォッシュコートは、第1のウォッシュコートで用いたものと異なる酸化物材料、および/または同一の酸化物材料を含む。さらに別の態様では、第2のウォッシュコートは、酸化物を担持した触媒を含む。第2のウォッシュコートは、触媒の固定化に適した任意の材料を含みうる。第2のウォッシュコートは、さまざまな態様において、基板コーティングに結合可能でありうる。一般に、ある特定の用途では、第2のウォッシュコートおよび、例えば、良好な付着が得られるように同様の大きさの粒子からなる、第1のウォッシュコートを有することが有利でありうる。
【0047】
第2のウォッシュコートは、任意の適切な手段を通じて、コーティング基板および/または触媒に結合しうる。ある特定の態様では、第2のウォッシュコートおよびコーティングおよび/または触媒は、イオン結合、金属結合、共有結合、非共有結合、静電結合、物理的結合、および/または任意の他の化学的または物理化学的結合手段を通じて結合して差し支えない。例えば、対象とする用途の間に安定した状態を保つように基板に付着するのに十分な第2のウォッシュコートおよび/または触媒であれば、必ずしも化学結合または任意の特定のタイプの結合が形成される必要はない。本開示は、コーティング基板および/または触媒と触媒担体との付着の正確な性質によって限定されることは意図していない。1つの態様では、触媒と第2のウォッシュコート組成物との間に存在する結合手段は、触媒材料の施用の間に触媒の実質的な重量パーセント損失が生じないような性質のものである。
【0048】
1つの態様では、例えば酸化物を担持した触媒などの第2のウォッシュコートは、例えば、非共有結合および/または共有結合、物理吸着、化学吸着、および/または任意の他の付着メカニズムなどの任意の適切な手段を通じて、コーティング基板に結合されうる。本開示のさまざまな態様では、酸化物または酸化物を担持した触媒は、コーティング基板のコーティングと水素結合することができる物質を含みうる。これらの態様では、酸化物を担持した触媒粉末は、少なくとも1つの水素結合供与体、および/または少なくとも1つの水素結合受容体を含みうる。水素結合受容体が存在する場合、水素結合受容体は電気陰性原子を含みうる。水素結合することができる典型的な電気陰性原子としては、限定されることなく、フッ素、酸素、および窒素が挙げられる。前述の水素結合受容体のいずれかが存在する場合、それらは随意的に金属原子と結合しうる。酸素が存在する場合、例えば、酸素は金属と結合して金属酸化物を形成しうる。少なくとも一部の触媒または担持触媒に使用することが意図された金属酸化物の例としては、限定されることなく、セリウム酸化物、酸化銅、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、および/またはそれらの任意の組合せが挙げられる。他の特定の例としては、限定されることなく、TiO2、Al23、γ−Al23、SiO2、MgO、ZnO、Fe23、および/またはそれらの任意の組合せが挙げられる。さらなる例としては、例えば、イットリア安定化ジルコニアなどのイットリアおよびジルコニアが挙げられる。
【0049】
理論に縛られることは望まないが、例えば酸化物を担持した触媒を含む第2のウォッシュコートとコーティング基板との間の水素結合は、断続的でありうる、および/または変化しうる。1つの態様では、第2のウォッシュコートは、金属酸化物を含み、ここで、前記酸化物を担持した触媒は、水素結合を介して、金属酸化物を含むコーティング基板のコーティングと結合する。第2のウォッシュコートおよび基板コーティングの焼成後、水素結合は金属酸素結合を形成しうる。
【0050】
1つの態様では、第1の層またはアンカー層を形成する第1のウォッシュコート、および酸化物を担持した触媒を含む第2のウォッシュコートは、ウォッシュコート組成物のいずれかに結合剤材料を添加、および/または、基板またはコーティング基板に塗布する必要なしに、互いに十分に付着して、動作の間に耐久性を保持しうる。
【0051】
1つの態様では、第2のウォッシュコートから形成される層の厚さは、対象とする用途にとって任意の適切な厚さでありうる。さまざまな態様では、第2の層の厚さは、約1nm〜約5mm、約1μm〜約1mm、約5μm〜約3mmの範囲、またはそれらの範囲の任意の組合せでありうる。他の態様では、第2の層の厚さは、約1μmより厚い、または約5mmより厚くてもよく、本開示は、特定の厚さに限定されることは意図していない。別の態様では、第1のウォッシュコートから形成されるアンカー層の厚さと、第2のウォッシュコートから形成される第2の層の厚さの組合せは、約5mm未満である。
【0052】
第2のウォッシュコートは、さまざまな態様において、任意の所望の形状および大きさの粒子または種を含む。当面の用途は、しばしば、所望の担持触媒粉末の大きさおよび形状の決定に有用である。一般に、第2のウォッシュコートの成分の大きさおよび形状は、少なくともある程度、調製方法に応じて決定されうる。さまざまな態様では、第2のウォッシュコートは、例えば約1nm〜約1μmのコロイド粒子の大きさを含みうる。これらの態様では、担持触媒粉末の大きさと基板コーティング材料の大きさとを適合させ、それによって、例えば付着特性を強化するために、細かいコロイド粒径が望ましいであろう。典型的なコロイド粒径としては、限定されることなく、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、22、30、33、37、50、60、70、80、90、100、150、150、300、500、600、700、900、950nm、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。他のより大きい粒子も本開示における使用に適する場合があり、限定されることなく、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15μmの大きさを有する粒子、およびそれらの任意の組合せが挙げられる。より大きい粒子は、必要に応じて、ボールミル粉砕などの当技術分野で周知の方法によって大きさを縮小することができる。触媒は、第2のウォッシュコートの内側および/または外側に位置しうる。本開示のさまざまな態様に有用な微粒子材料のそれぞれは、分布特性を有していてよく、このように、粒子の大きさはさまざまな個別の粒径を含みうることに留意されたい。このように、任意の個々の大きさ、大きさの範囲、および/または大きさの分布は適切であり、本開示の範囲に含まれることが意図されている。
【0053】
触媒
本開示は、さまざまな態様において、1つ以上の触媒を含みうる。本明細書に記載のウォッシュコート、基板、コーティング基板、および/または方法に適合する任意の触媒種は適切である。一部の態様では、所望の触媒は、固定化の恩恵(例えば分散の改善)を受けうるものであり、例えば、水素化脱硫、水素化、メタン生成、メタノール合成、アンモニア合成、一酸化炭素酸化、炭素−炭素結合形成反応、およびさまざまな石油化学プロセスに用いられる触媒が挙げられる。
【0054】
1つの態様では、本開示のさまざまな実施の形態に使用することが意図された触媒は、例えば、レドックス触媒(触媒サイクルの間に酸化および/または還元する触媒)でありうる。別の態様では、これらのレドックス触媒は、少なくとも1つの無機元素を含みうる。遷移金属元素が、特に、多様な酸化状態を有することを考慮すると、触媒は、さまざまな態様において、1つ以上の個別の遷移金属元素を含みうる。典型的な触媒は、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Cd、Ru、Pd、Pt、Rh、V、Mo、Co、Os、Ir、またはそれらの組合せを含みうる。他の適切な触媒は、例えば、限定されることなく、Al、Si、Ga、In、またはそれらの組合せを含む卑金属群に由来する元素を含みうる。複数の触媒および/または多金属触媒もまた、本開示のさまざまな態様に有用でありうる。
【0055】
本開示において使用することが意図された他の触媒としては、限定されることなく、金属酸化物触媒が挙げられる。特定の例としては、金属イオン成分がCu、Ce、Zn、Pd、およびRhを含む触媒が挙げられる。前述の金属イオン成分を含む金属酸化物触媒は、CuO−CeO2、CuO−ZnO、Pd/Cu/ZnO、Pd/CuO/ZnO、Al23またはそれらの組合せを含みうる。他の態様としては、RhおよびAl23を含む触媒が挙げられる。1つの態様では、RhおよびAl23を含む触媒は、Rhが、バルク触媒組成物中に例えば約1重量%存在する組成物を含む。触媒組成物、ウォッシュコート組成物、またはコーティング基板中の特定の触媒種の特定の濃度は、対象とする用途または触媒の分散レベルなどの因子に応じて変化して差し支えなく、例えば、約0.1重量%〜約99重量%、約1重量%〜約80重量%、または1重量%〜約60重量%であり、本開示は触媒の特定の濃度のいずれかに限定されることは意図されていない。他の態様では、有機金属触媒を利用することができる。ある特定の態様では、焼成温度が、存在しうるいずれかまたはすべての有機材料を分解するのに十分に高くない場合、有機金属触媒が使用されうる。
【0056】
本明細書に開示される方法および基板上の担持触媒に適した触媒を製造する任意の方法を使用することができる。前述の触媒は、当技術分野で周知の方法を使用して製造することができる。このような方法の1つは、本開示に限定されるわけではないが、2つの金属塩と接触させて、後に活性化されうる触媒活性種および/または触媒前駆体を形成する工程を含みうる。他の態様では、基板上の担持触媒を処理した後、活性化および/または安定化の手順を行うことができる。触媒前駆体は、例えば、活性触媒が生じるように処理されうる。このような方法の1つは、活性触媒を形成するための触媒前駆体の還元を含む。さまざまな態様では、還元は、ガス流の下で行われうる。別の態様では、ハロゲン、典型的にはClを含む粉末化した金属塩をか焼して金属酸化物を形成し、その後、還元し、H2ガス流で活性化する。この態様では、H2ガスは、例えばヘリウムガスなどの別の不活性ガスに担持されうる。
【0057】
第2のウォッシュコート内および/または上に負荷される触媒は、任意の適切な重量%のバルク粉末組成でありうる。1つの態様では、第2のウォッシュコート内および/または上に負荷される触媒は、例えば、バルク粉末組成の0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、14.5、16、20、21、23、24、または25重量%でありうる。
【0058】
触媒、担持触媒、および/または第2のウォッシュコートは、必要に応じて、当技術分野で周知の方法を使用して、特徴付けることができる。例えば、触媒の表面積は、N2吸着法によって評価されうる。担持触媒の表面積の評価は、構造・物性関係を特定するのに有用でありうるが、本開示は、担持触媒組成物の表面積によって限定されることは意図されていない。さらなる特性評価は、例えば、X線粉末回折を使用して行うことができる。赤外分光法もまた、触媒活性の決定に有用でありうる。例えば、本開示の特定の触媒がCOを酸化することができる場合、赤外分光法を使用して、COのsp混成結合に起因する伸縮振動数の消失をモニタすることができる。これらの技術は担持触媒の活性の評価に有用でありうるが、本開示は担持触媒組成物の特定の触媒活性に限定されることは意図されていない。
【0059】
本開示の担持触媒を製造する適切な方法のいずれかを使用することができる。1つの態様では、担持触媒の物理化学的特性は、調製方法に関連しうる。このように、本開示がさまざまな用途において使用されることが意図されていることから、調製方法は本開示の限定特性ではない。
【0060】
触媒担体上および/または内に触媒を担体するために用いられうる従来の方法として、沈着沈殿、共沈殿、蒸着、ゼオライト形成、化学吸着、物理吸着、化学/物理吸着、含浸法、湿式含浸、乾式含浸技術、およびそれらの組合せが挙げられる。本開示の利点の1つは、基板コーティングおよび基板自体を触媒および触媒担体とは別に処理することができることを条件として、任意の触媒調製方法を使用することができることである。例えば共沈殿法などのある特定の方法は、ある特定の基板および基板コーティングの処理方法とは適合しない場合がある。本開示は、このような制限を少なくともある程度克服することができる。
【0061】
基板上の触媒は、動作温度に曝露される際に、そこで用いられる材料が固定またはか焼されるように、未焼成またはまだ窯焼きされていない状態で使用することができることが認識されるべきである。別の態様では、コーティング基板および/または基板上の担持触媒は、使用前または使用中の任意の時点において、加熱、乾燥、焼成、および/またはか焼することができる。
【0062】
本開示の基板上の触媒を提供するための方法は、本開示の方法、製品、および用途と組み合わせて使用することができることが理解されるべきである。
【0063】
さまざまな態様では、コーティング基板は、コーティング基板を加熱、乾燥、焼成、および/またはか焼する前または後に、触媒の溶液に接触させることができる。他の態様では、本明細書に記載のウォッシュコートの1つ以上は、触媒活性でありうる、および/または、ウォッシュコート化基板が触媒活性を示すように、触媒をさらに含みうる。
【0064】
1つの態様では、第2のウォッシュコートは、コーティング基板に塗布する場合に、第2の層コーティングを形成しうる。このような第2のコーティングは、さまざまな態様において、任意の適切な厚さであり、基板表面全体の任意の部分において連続または不連続でありうる。特定の態様では、第2のウォッシュコート組成物は、連続したコーティングを形成する。別の態様では、第2のウォッシュコート組成物は、コーティング基板上に実質的に均一な連続したコーティングを形成する。さらに別の態様では、第2のウォッシュコート組成物は、コーティング基板上に1つ以上の分離したコーティング領域を形成する。
【0065】
本開示の触媒は、本開示の組成物、方法、製品、および用途と組み合わせて使用することができることが理解されるべきである。
【0066】
図1を参照すると、本開示のさまざまな態様にしたがって調製された基板上の担持触媒100が例証されている。第1のウォッシュコートに由来するアンカー層130でコーティングされた基板140が図示されている。コーティングはまた、第2のウォッシュコートから形成された第2の層に、複数の担持触媒粒子110を含む。図1には、典型的な担持触媒粒子110の分解図が示され、ここで、円形ドットが一列に配置された典型的な担持触媒粒子の分解図が基板の上に図示されている。複数の担持触媒粒子110のそれぞれは、それらの表面に配置された複数の個々の触媒粒子120を含む。複数の担持触媒粒子110のそれぞれは、用いられる特定の材料に応じて、例えば水素結合などの1つ以上の結合力150を示しうる。これらの結合力は、存在する場合には、担持触媒粒子、アンカー層、および/または基板の結合を促進することができる。
【0067】
同様に、基板コーティングは、任意の適切な手段を通じて基板に結合することができる。例として、物理的手段および化学的手段が挙げられる。特定の例としては、基板に化学的に吸着する基板コーティングが挙げられるが、他の例として、基板に物理的に吸着する基板コーティングが挙げられ、さらに他の例として、基板に化学的かつ物理的に吸着する基板コーティングが挙げられる。
【実施例】
【0068】
本開示の原理をさらに例証することを目的として、当業者に、特許請求の範囲に記載される組成物、物品、および方法がいかにしてなされ、評価されるかについての完全な開示および説明を提供するため、以下の実施例を記載する。それらは、単に本開示の典型であることが意図されており、出願人が彼らの開示と見なすものの範囲を限定することは意図されていない。数値(例えば、量、温度など)に関しては正確性を確保するために努力しているが、いくらかの誤差および偏差が考慮されるべきである。他に示さない限り、温度は℃または周囲温度であり、圧力は大気圧であるかそれに近い。工程条件には、製品の品質および性能を最適化するのに使用することができる多くの変更および組合せが存在する。これらの工程条件の最適化には、合理的および日常的な実験しか必要ではないであろう。
【0069】
実施例1−CO酸化のための担持触媒の製造方法(予測)
第1の実施例では、活性なCuO−CeO2触媒粉末が調製されうる。選択的CO酸化では、CuO−CeO2は活性触媒でありうる。CuO−CeO2触媒は、典型的には、約600℃よりも高温でか焼されうる。特に、基板がこのような焼成温度において悪影響を受けうる場合、基板の不存在下で担持触媒をか焼することは有利でありうる。本開示は、例えば、担持触媒粉末を処理し、か焼した後に、基板またはコーティング基板に塗布することを可能にしうる。
【0070】
担持触媒粉末は、焼成後にCuOが粉末全体の約5重量%で存在するような量で、水中にCu(NO32およびCe(NO33を溶解することによって調製されうる。塩溶液およびNH4OHは、攪拌下、約75℃よりも高温、好ましくは約90℃未満の温度で水に同時に加えることができる。得られた沈殿物は、約1〜2時間放置した後、遠心分離および洗浄して差し支えない。次に、沈殿粉末は、約700℃で少なくとも約3時間、空気中で乾燥およびか焼されうる。次いで、粉末を、適切な粒径、好ましくは約5μm未満まで粉砕して差し支えない。
【0071】
前述の粉末担持触媒に適合したコーティングを生成することができるウォッシュコートは、別に調製することができる。例えば、細かく粉砕したCeO2のスラリーを、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、セルソルブ(cellusolve)、またはそれらの組合せなどの極性有機溶媒に溶解したCe(NO33の溶液に加えることができる。
【0072】
モノリスなどの基板は、基板をスラリー溶液に曝露することによって、スラリーでコーティングすることができる。次に、得られたコーティング基板には、前述の粉末担持触媒が層に結合できるような特性を有する層を含めることができる。
【0073】
その後、コーティング基板を、触媒コーティングが生成するように、粉末担持触媒のスラリーに曝露してもよい。得られた基板は、例えば約400℃の温度で乾燥およびか焼されうる。特定の触媒の負荷は、触媒粉末スラリーの粘度の影響を受ける場合がある。触媒粉末スラリーの粘度は、必要に応じて、極性有機溶媒をスラリーに加えることにより、および/または、界面活性剤を添加することによって、低下させることができる。
【0074】
実施例2−Pd/Zn/Cuの担持触媒の製造方法(予測)
第2の実施例では、Pd/Zn/Cu系の触媒を調製することができる。実施例1とは対照的に、CeO2の代わりにZnOを使用することができる。さらには、Pd(NO32を添加することもできる。担持触媒粉末は、Ce(NO32、Zn(NO33、およびPd(NO33を水に溶解することによって調製することができ、得られた溶液は約60℃よりも高温に加熱されうる。この溶液のため、塩の沈殿が始まるように、Na2CO3水溶液をゆっくりと加えて、pHを約9よりも大きい値まで上昇させてもよい。次に、沈殿した塩を約1〜3時間放置して構わない。沈殿は、その後、遠心分離、洗浄、乾燥、および約350〜500℃の温度でか焼されうる。
【0075】
前述の粉末担持触媒に適合するコーティングを生成することができるコーティング溶液は、別に調製することができる。例えば、約5μm未満のメジアン粒径を有する細かく粉砕したCuO−ZnOのスラリーは、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル、セルソルブ(cellusolve)、またはそれらの組合せなどの極性有機溶媒にCu(NO33およびZn(NO33を溶かした溶液に加えることができる。溶液の濃度は、溶液中のCu:Znの比が約1になるようにすべきであり、ここで、得られた処理粉末は、焼成後に、全組成物の約5〜25重量%のCuO−ZnOを生じる。次に、Pd/Cu/ZnO触媒粉末の水性スラリーが調製されうる。
【0076】
モノリスなどの基板は、基板をスラリー溶液に曝露することによって、スラリーでコーティングすることができる。得られたコーティング基板は、粉末担持触媒が層に結合することができるような特性を有する層を含みうる。得られたコーティング基板は、次に、乾燥されうる。
【0077】
実施例3−高表面積基板上のPd/Zn/CU担持触媒の製造方法(予測)
第3の実施例では、実施例2に記載した手順を用いて、高表面積基板にコーティングすることができる。この実施例では、基板コーティングはγ−Al23を含みうる。γ−Al23のスラリーは、ジエチレングリコールモノエチルエーテル溶液中で調製することができ、存在するベーマイトの量が、焼成後に、スラリー中、約20重量%のAl23にほぼ匹敵するように、ベーマイト(AlOOH)と組み合わせることができる。基板は、スラリーでコーティングされ、乾燥され、約500℃でか焼されうる。触媒コーティングは、例えば実施例2の触媒であるPd/Cu/ZnOなどの任意の適切な触媒から調製することができる。次に、得られた2層基板はか焼されうる。
【0078】
実施例4−Rh担持触媒の製造方法(予測)
第4の実施例では、Rh担持触媒は、実施例1〜3に開示される方法と類似した方法を用いて調製することができる。RhCl3を水溶液に溶解し、得られた溶液を、乾燥および焼成後に、担持触媒が約1重量%のRh/γ−Al23を含むように、γ−Al23と混合することができる。Rhが沈殿してアルミナ懸濁液を誘発するように、攪拌下、混合物に約0.1MのNa2CO3を含む水溶液を加えて、pHを、約9を超える値までゆっくりと上昇させて差し支えない。得られた沈殿を約1〜3時間放置した後、遠心分離、洗浄、および乾燥して、触媒粉末を生成することができる。得られた触媒粉末は、その後、約450℃で約3時間、か焼されうる。
【0079】
ジエチレングリコールモノエチルエーテル中のγ−Al23のスラリーは、AlOOHが、焼成後に、スラリー中、約20重量%のAl23にほぼ匹敵する量で存在するように、ベーマイトすなわちAlOOHと混合されうる。例えばモノリスなどの基板は、コーティング層が約2μm未満の厚さ、好ましくは約1μm未満の厚さになるように、得られたスラリーでコーティングされうる。次いで、コーティング基板は乾燥され、約500℃でか焼されうる。次に、Rh/γ−Al23のスラリーをコーティング基板に加えて、得られた2層基板を乾燥およびか焼して差し支えない。この実施例では、コーティングしたAl23の薄層は、(1)高表面積、および(2)触媒と分散および/または固定するための複数の表面ヒドロキシル官能基を提供する役割をすることができる。コーティング層と触媒層の間に形成される水素結合は、ある特定の態様では、高温において、金属酸素結合を形成しうる。
【0080】
最後に、本開示は、そのある特定の実例となる、特定の実施例に関して詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲に定義される本開示の精神および範囲を逸脱することなく、多くの変更が可能であることから、そのように限定されるとみなされるべきではないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を基板上に提供する方法であって、
a)可溶性のウォッシュコート塩種、極性有機溶媒、および不溶性の微粒子材料を含む第1のウォッシュコートを提供し;
b)前記第1のウォッシュコートを基板と接触させてコーティング基板を形成し;
c)前記コーティング基板を、酸化物または酸化物を担持した触媒を含む第2のウォッシュコートと接触させて、前記酸化物または前記酸化物を担持した触媒を、前記コーティング基板に物理的に吸着、化学的に吸着、結合、または別の方法で付着させる、
各工程を有してなる方法。
【請求項2】
前記不溶性の微粒子材料が酸化物であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記可溶性のウォッシュコート塩種と前記不溶性の微粒子材料が同一の陽イオンを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
基板上の触媒であって、
a)少なくとも1つの表面を有する基板;
b)前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部と接するアンカー層であって:
i)可溶性のウォッシュコート塩種;
ii)極性有機溶媒;および
iii)不溶性の微粒子材料;
を含むアンカー層;および
c)前記基板の向かい側に配置される前記アンカー層の少なくとも一部に配置された第2の層;
を備え、
前記第2の層が酸化物または酸化物を担持した触媒を含むことを特徴とする、基板上の触媒。
【請求項5】
基板上の触媒であって:
a)少なくとも1つの表面を有する基板;
b)前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部と接するアンカー層;および
c)前記基板の向かい側に配置される前記アンカー層の少なくとも一部に配置された第2の層
を含み、
前記アンカー層が第1の酸化物を含み、ここで、前記第2の層が第2の酸化物または酸化物担持触媒を含み、かつ、前記アンカー層と前記第2の層の両方が実質的に結合剤を含まないことを特徴とする、基板上の触媒。

【図1】
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【公表番号】特表2011−519311(P2011−519311A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507434(P2011−507434)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/002607
【国際公開番号】WO2009/134369
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】