説明

基板取付け方法及び基板収納体

【課題】基板に電子部品を実装したのち筐体に基板を収納する際、基板の小型化を図り基板と筐体のデッドスペースを無くし携帯機器の小型化を実現する。
【解決手段】基板である配線付きフィルムに電子部品を実装したのち筐体に基板を収納する際、電子部品を実装した基板である配線付きフィルムを折り曲げ対向させ、間に樹脂等の絶縁部材を挿入して収納することにより、フィルム又は電子部品の電極が短絡しないようにすることができ、基板の小型化を図ることができ携帯機器の小型化を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を回路基板に実装した後の回路基板の取付け方法及び基板収納体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯機器はより軽量化・小型化が盛んに行われている。そこで、携帯機器の基板は電子部品を高密度に実装したり、より小型の電子部品を用いることにより基板の小型化を実現している。
【0003】
また、携帯機器の筐体も軽量化に伴い薄肉化しているが、持ち運びされる為、外部から振動を受けたり落下により衝撃を受けたりする為、十分な強度確保が必要になっている。その為に、材料の検討はもとより構造的に筐体内部にリブを設けたり筐体を曲面にして筐体の強度確保を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の基板取り付け方法では、基板12が1つの平面体を成しており、筐体1の内部のリブ1aを有するリブ構造や表示部2や操作部3等に対して隙間Yを有してしまい、携帯機器の小型化の妨げになることはもちろん、筐体1のデザイン設計の面でも制約を付けてしまっている。
【0005】
筐体1の自由度を確保するために基板12を分割することもあるが、この場合基板12間をコネクタ等で接続しなければならなく、コネクタ自身の実装面積や実装コストが必要になるため得策ではない。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、基板に電子部品を実装したのち筐体に基板を収納する際、基板の小型化を図り、基板と筐体のデッドスペースを無くし、携帯機器の小型化を実現する基板取付け方法及び基板収納体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0008】
本発明の第1態様によれば、配線付きフィルムに複数の電子部品を実装したのち、筐体に上記配線付きフィルムを収納する際、上記配線付きフィルムを折り曲げて互に上記電子部品を対向させた上記配線付きフィルムの間に絶縁性樹脂を形成して、上記配線付きフィルムを折り曲げ状態に上記樹脂で保持して一体化した後に、上記配線付きフィルムを上記筐体に収納することを特徴とする基板取付け方法を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、上記絶縁性樹脂は、シリコンである第1の態様に記載の基板取付け方法を提供する。
【0010】
本発明の第3態様によれば、上記絶縁性樹脂内に、シールド板を設ける第1又は2の態様に記載の基板取付け方法を提供する。
【0011】
本発明の第4態様によれば、上記絶縁性樹脂の形成は、射出成形で形成する第1〜3のいずれか1つの態様に記載の基板取付け方法を提供する。
【0012】
本発明の第5態様によれば、上記射出成形は、金型内にシールド部材を予め挿入した状態で行うことを特徴とする第4の態様に記載の基板取付け方法を提供する。
【0013】
本発明の第6態様によれば、電子部品が実装された配線付きフィルムと、
上記配線付きフィルムを折り曲げて上記配線付きフィルム同士を互に対向させた状態で上記配線付きフィルムを収納する筐体と、
上記配線付きフィルムを折り曲げて対向させた状態で上記配線付きフィルムの間に射出成形されかつ上記配線付きフィルムを折り曲げ状態に保持する絶縁性樹脂と、
を備えることを特徴とする基板収納体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、配線付きフィルムに電子部品を実装したのち、筐体に上記配線付きフィルムを収納する際、電子部品を実装した配線付きフィルムの基板を折り曲げて対向させることにより、空間を有効に利用することができ、基板が筐体内部全体を占有することがないので筐体内部にリブ構造を自由に設けることができ、しかも基板と筐体間での隙間を最小限にすることができ、携帯機器の小型化を図りつつ筐体設計の自由度を増すことができる。また、これにより、携帯機器に不可欠なバッテリーに対しても、形状や容積について設計を容易にすることとなる。
【0015】
上記発明において、上記配線付きフィルムを折り曲げ対向させた対向面間に絶縁性樹脂を形成する場合には、フィルム又は電子部品の電極が短絡しないように電気的絶縁性を確保することができる。
【0016】
また、上記発明において、上記絶縁性樹脂にシールド板を設ける場合には、通信を目的とする携帯機器に対してはシールド機能を付加することができて有効である。
【0017】
また、上記発明において、上記配線付きフィルムを折り曲げ対向させフィルムの間を射出成形により一体化した後に収納する場合には、筐体への基板の収納作業を容易にし、上記同様電極の短絡や衝撃に対しても有効な手段とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1参考形態にかかる基板取付け方法において基板を折り曲げて絶縁シート又はフィルムなどの絶縁部材を挿入した状態の携帯機器の断面図である。
【図2】(a),(b)は、それぞれ、本発明の第2参考形態にかかる基板取付け方法において基板を折り曲げて弾性体を挿入した状態の回路収納体の説明図、及び、本発明の第3参考形態にかかる基板取付け方法において基板を折り曲げてシールド機能を有する弾性体を挿入した状態の回路収納体の説明図である。
【図3】(a),(b),(c)は、それぞれ、本発明の第4参考形態にかかる基板取付け方法において射出成形で基板の折り曲げ状態を保持するとき、射出成形前の金型に基板をセットする状態の説明図、上記射出成形前の電子部品が実装された基板の側面図、上記射出成形後の電子部品が実装された基板の側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる基板取付け方法において板部材を基板間に挿入し折り曲げ状態を示す説明図である。
【図5】(a),(b)は、それぞれ、本発明の第5参考形態にかかる基板取付け方法において基板の一部を用いて基板間の絶縁を行うことを示す説明図である。
【図6】本発明の第6参考形態にかかる基板取付け方法において複数回基板を折り曲げることを示す説明図である。
【図7】従来の携帯機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
(第1参考形態)
まず、本発明の第1参考形態にかかる基板取り付け方法について図1を参照して説明する。図1は上記基板取り付け方法により基板が取り付けられた携帯機器の断面図を示している。携帯機器は筐体1を外装として表示部2や操作部3を有している。また、これらを駆動するためや通信等を行うために電子部品10,…,10を実装した基板4が内蔵されている。
【0021】
基板4は配線付きフィルムであり、予め電子部品10,…,10が実装されており、表示部2の裏面で折り曲げて筐体1に収納される。基板4に実装されている電子部品10,…,10は基板4を折り曲げることにより対向するため、電子部品10,…,10又は基板4の電極が短絡してしまう恐れがあるので、絶縁部材の一例として絶縁性を有するシート又はフィルム5をその間すなわち対向面4e,4eに挿入している。
【0022】
これにより、実装時は同一平面で基板4に対する電子部品10,…,10の実装作業が行えるため、実装が容易になり、しかも筐体1に収納する際は基板4を折り曲げて立体的に回路を作ることができるため、筐体1内での基板4の占める容積が少なくなり、かつ、筐体1の補強用のリブ1a等の制約も受けず筐体設計の自由度を増すことができ、筐体1と基板4との隙間のデッドスペースも最小限にすることができる。結果として、携帯機器の大きさを小さくすることが可能となる。
【0023】
なお、上記及び以下の各参考形態又は実施形態の基板取付け方法により上記配線付きフィルム4の基板が収納された筺体1を回路収納体とする。図1に示す(携帯電話若しくはPDA(Personal Digital Assistant:個人用情報機器)などの)携帯機器は上記回路収納体を有するものの一例である。
【0024】
(第2参考形態)
次に、本発明の第2参考形態にかかる基板取り付け方法について図2を参照して説明する。図1の第1参考形態では折り曲げた基板4間に絶縁性シート又はフィルム5を挿入したが、図2(a)に示すように、絶縁部材の一例として、絶縁性を有するシリコンゴム等の弾性体6を挿入することにより、外部から基板4に作用した衝撃を弾性体6により吸収することができ、携帯機器の信頼性を向上することができる。また、基板4の容積をより小さくするためには、図2(a)のように予め電子部品10,…,10の形状に合せて弾性体6を成形しておくとよい。
【0025】
(第3参考形態)
次に、本発明の第3参考形態にかかる基板取り付け方法について図2(b)を参照して説明する。第2参考形態において、対向する基板4間の電磁波をシールドするために弾性体6内にシールド板7をさらに設けると、特に通信を目的とする携帯機器に対してはシールド機能を付加することができて有効である。シールド板7は、電極間の短絡の問題がなければ弾性体6の内部ではなく表面に形成しても良い。また、弾性体6に配置する代わりに、弾性体6の代わりに上記基板4間に挿入した絶縁性フィルム5にシールド機能を持たせても良い。例えば、2枚の絶縁性フィルム5間にシールド板7を挟み込んだり、絶縁性フィルム5自体にシールド機能を持たせても良い。また、これらのシールド板7が金属である場合には、基板4間にこもる熱を逃すためにも有効な手段となる。
【0026】
(第4参考形態)
次に、本発明の第4参考形態にかかる基板取り付け方法について図3を参照して説明する。図3は、基板4を収納する前に予め折り曲げておくことを示している。図示しない射出成形装置に図3(a)の上型8と下型9を取り付けておき、図3(b)の基板4を折り曲げて下型9にセットして、上型8で下型9を閉じて、閉じられた上型8と下型9との間のキャビティ内に溶融樹脂を射出して射出成形し、基板4の対向する間に絶縁性の樹脂20を流し込んで冷却して図3(c)のように成形する。
【0027】
これにより、予め基板4を折り曲げた構造に形成することができ、筐体1に収納する際、基板4を折り曲げる作業を省略することができて、作業性を向上させることができる。もし、上記樹脂20を弾性力のあるものにすれば、第2参考形態の作用効果を奏することができる。また、上記樹脂20を弾性力のあるものに加えてシールド部材も予め金型内に挿入しておけば、第3参考形態の作用効果を奏することができる。
【0028】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態にかかる基板取り付け方法について図4を参照して説明する。図3に対して、耐熱性の劣る電子部品10a,…,10aがある場合は、図4に示すように、予めスリット11aを有する大略直方体形状の基板折り曲げ補助部11cと、と平面状板部11bとを有する絶縁性の板部材11を基板4間に挿入すると良い。これは基板4である配線付きフィルムの折り曲げ部分を板部材11のスリット11aにスリット長手方向から挿入することにより、基板4が折り曲がった状態を保持できて筐体1への収納作業が容易になるとともに、上記配線付きフィルム4の折り曲げられて対向する対向面間に上記絶縁性の平面状板部11bを介在させることができるので、対向面間の絶縁性を確実に確保できる。平面状板部11bの材質としては、絶縁性以外に、シールド効果を持たせるようにしてもよい。
【0029】
(第5参考形態)
次に、本発明の第5参考形態にかかる基板取り付け方法について図5を参照して説明する。第1〜第4参考形態及び第1実施形態では、折り曲げた基板4間に他の部材を入れるようにしていたが、図5(a)に示すように、配線付きフィルムである基板4の両面の一方の面4fにのみ電子部品10,…,10を実装し、他方の面4gには電子部品10を実装しないようにし、かつ、基板4の上記一方の面4fにおいて、一部に電子部品10を実装しない、実装されない領域、言い換えれば、実装不可領域Xで区切られた例えば3つの第1領域4−1、第2領域4−2、第3領域4−3を形成する。第1領域4−1は、一方の面4f及び他方の面4gともに全面絶縁状態とし、回路を形成しないか若しくは回路を形成しても電極部分など電気的導通部分が露出しないように絶縁性確保領域Yとする。第2領域4−2及び第3領域4−3には所望の電子部品10,…,10を予め実装する。次いで、基板4の第1領域4−1が最も内側になるように、上記基板4を実装不可領域X,Xで折り曲げる。すなわち、図5(b)に示すように、第2領域4−2に実装された電子部品10,…,10が第1領域4−1の一方の面4fに対向するように、第1領域4−1と第2領域4−2との間の実装不可領域Xで基板4を折り曲げる。次いで、第3領域4−3に実装された電子部品10,…,10が第1領域4−1の他方の面4gに対向するように、第2領域4−2と第3領域4−3との間の実装不可領域Xで基板4を折り曲げる。なお、絶縁性確保領域としての第1領域4−1は、基板4の端部に限られるものではなく、基板4の中間部に第1領域4−1を設けて、2つ折りにして電子部品10,…,10が実装された対向面間に挿入して電気的絶縁性を確保するようにてもよい。
【0030】
このように、複数の実装不可領域X,Xで基板4の一方の面4fが谷側となり他方の面4gが山側となるように折り曲げることにより、第1領域4−1、第2領域4−2、第3領域4−3の順に内側から外側になるように巻き込むことにより、電子部品10,…,10が実装されていない第1領域4−1の表裏両面4f,4gを絶縁シートのように機能させて、電子部品10,…,10がそれぞれ実装された第2領域4−2と第3領域4−3との対向面間に挿入することができる。
【0031】
この場合、基板4の対向面間の絶縁性を確保するために基板4以外の他の部材を使用しないので、コスト的にメリットがある。また、通常、基板4に電子部品10,…,10を実装する際は、基板全面にわたって高密度に実装されるが、図5(a)のように、電子部品10を実装しない実装不可領域Xを設けるようにすれば、図5(b)に示すように基板4を折り曲げるときに折り曲げやすくなる。
【0032】
(第6参考形態)
次に、本発明の第6参考形態にかかる基板取り付け方法について図6を参照して説明する。図6に示すように、基板4の折り曲げは複数回行っても良く、その際は電子部品10が対向する面に絶縁性シート又はフィルム5を挿入することにより、よりコンパクトに基板4を収納することができる。第6参考形態では、基板4の第1面4aと第2面4b、及び、第3面4cと第4面4dとで電子部品10,…,10がそれぞれ実装されて対向しているので、第1面4aと第2面4bの間に絶縁材料の絶縁シート5を入れ、第3面4cと第4面4dの間に絶縁材料の絶縁シート5を入れている。また、第2面4bの裏面及び第3面4cの裏面は、それぞれ、全面絶縁状態とし、回路を形成しないか若しくは回路を形成しても電極部分など電気的導通部分が露出しないように絶縁性確保領域Yとする。この結果、第2面4bの裏面と第3面4cの裏面とが対向して接触しても、何ら不都合はなくなる。もし、第2面4bの裏面と第3面4cの裏面との対向面において電極等が露出してそのままでは絶縁性が確保できない場合には、適宜、上記いずれかの参考形態又は実施形態を適用して絶縁性を確保できるようにする。
【0033】
なお、上記様々な参考形態及び実施形態のうちの任意の参考形態及び実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…筐体、1a…リブ、2…表示部、3…操作部、4…基板、4−1,4−2,4−3,4−4…領域、4a…第1面、4b…第2面、4c…第3面、4d…第4面、4e…対向面、5…絶縁性シート又はフィルム、6…弾性体、7…シールド板、8…上型、9…下型、10…電子部品、10a…耐熱性の劣る電子部品、11…板部材、11a…スリット、11b…平面状板部、11c…基板折り曲げ補助部、20…樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線付きフィルムに複数の電子部品を実装したのち、筐体に上記配線付きフィルムを収納する際、上記配線付きフィルムを折り曲げて互に上記電子部品を対向させた上記配線付きフィルムの間に絶縁性樹脂を形成して、上記配線付きフィルムを折り曲げ状態に上記樹脂で保持して一体化した後に、上記配線付きフィルムを上記筐体に収納することを特徴とする基板取付け方法。
【請求項2】
上記絶縁性樹脂は、シリコンである請求項1に記載の基板取り付け方法。
【請求項3】
上記絶縁性樹脂内に、シールド板を設ける請求項1又は2に記載の基板取り付け方法。
【請求項4】
上記絶縁性樹脂の形成は、射出成形で形成する請求項1〜3のいずれか1項に記載の基板取り付け方法。
【請求項5】
上記射出成形は、金型内にシールド部材を予め挿入した状態で行うことを特徴とする請求項4に記載の基板取付け方法。
【請求項6】
電子部品が実装された配線付きフィルムと、
上記配線付きフィルムを折り曲げて上記配線付きフィルム同士を互に対向させた状態で上記配線付きフィルムを収納する筐体と、
上記配線付きフィルムを折り曲げて対向させた状態で上記配線付きフィルムの間に射出成形されかつ上記配線付きフィルムを折り曲げ状態に保持する絶縁性樹脂と、
を備えることを特徴とする基板収納体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−251812(P2010−251812A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181266(P2010−181266)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【分割の表示】特願2008−287844(P2008−287844)の分割
【原出願日】平成13年1月22日(2001.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】