説明

基板表面をコーティングする方法および装置

コーティング溶液において金属または酸化物の層で基板表面をコーティングする方法であって、ここで、溶液が少なくとも1つの成分を含み、その密度がコーティング処理の過程で変化し、その結果、溶液の品質を維持するためにそれを補充または除去しなければならないものであって、前記成分の補充および/または除去が溶液の組成物の密度に応じて行われることを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング溶液において基板表面を金属または酸化物の層でコーティングする方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面技術の分野においては、別の方法が知られており、それらを用いて、特定の用途に適合させるために基板表面の特性を変更することができる。該方法は、例えば、基板表面上の金属層の析出、または酸化物層および保護層の形成である。
【0003】
基板層を金属コーティングで覆われなければならない場合、コーティングされる基板は、金属の陽イオンの形で析出される金属を含む処理溶液と接触する。還元により、溶解した陽イオンを基板表面上に金属層として析出させることができる。ここで、還元は、基板と対向電極の間に加えられる電圧を用いて行うことができ、また溶解した還元剤によって行うこともできる。このため、コーティング技術は、ガルバニック(電気化学的)または自己触媒的(無電解的)なコーティング技術に関する。
【0004】
これらの2つのコーティングの変形によって、多くの金属または金属合金を、導電性および非導電性の両方の基板表面上で、それに対応して適合した技術により析出させることができる。
【0005】
処理溶液に含まれる金属陽イオンおよび場合によっては還元剤に加えて、処理溶液(電解液と一般に呼ばれる)は、残留圧縮応力や硬度といった析出層の特性に特に影響する追加の添加物を含む。
【0006】
基板上で金属層を析出する方法に加えて、基板表面上で酸化物層を形成する方法が知られている。一例として、腐食保護の改良をもたらすアルミニウム材の陽極酸化を挙げることができる。
【0007】
上述の方法は、使用される電解液が処理工程の過程でその組成が変化する点で共通である。基板上に金属層を析出する方法では、電解液は、析出される金属のイオンを消耗する。金属イオン密度を金属の析出にとって充分となるよう維持するため、電解液には、対応する金属イオンを放出する成分を補充しなければならない。電解液の効率の基準は、いわゆる金属ターンオーバー(MTO)の数である。ここで、電解液に存在する当初の金属密度のターンオーバーが、1MTOに相当する。
【0008】
しかしながら、電解液中の金属イオン密度をトラッキングすることによっては、金属イオンだけでなく、対応する陰イオンまたは錯体試薬も電解液に供給される。その結果、当初の組成は極度に変更されたものとなり、この事実は、コーティング結果に悪影響をもたらす可能性がある。工程管理の過程においては、ある時点で、満足な析出結果が対応する電解液によってはもはや達成され得ない段階に達する。金属の自己触媒析出のための先行技術による電解液の耐用寿命は、コーティングの安定した品質が達成されることを条件とすると、通常約3MTOに達する。
【0009】
電解液の対応する新しい調製および消耗した電解液の処理は、表面技術の分野における決定的なコスト要因を構成する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明は、それを用いて電解液の耐用寿命を大幅に延長させることができる方法および装置を提供するという目的に基づいており、これにより経済と生態学の両面で、電解液の適用性の改善が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
方法に関しては、この目的は、コーティング溶液において金属または酸化物の層で基板表面をコーティングする方法によって解決され、ここで、溶液は少なくとも1つの成分を含み、その密度はコーティング処理の過程で変化し、溶液の品質を維持するためにそれを補充または除去しなければならず、電解液成分の補充および/または除去が溶液の組成物の密度に応じて行われることを特徴とする。
【0012】
電解液組成物の密度がその寿命を過ぎた電解液の状態についての適切な尺度を構成することが見出された。
【0013】
従って、例えばニッケルの自己触媒析出において、最良の析出結果は、1.05乃至1.3g/cmの密度範囲において達成されることが見出された。密度が1.3g/mの値を上回る場合には、満足な析出結果は、もはや得られない。コーティング処理および電解液成分のトラッキングの過程において、密度は、連続的に増加する。
【0014】
この理由により、本発明は、密度が処理の過程でそれ以上増加しないよう、適切な手段によって、平衡状態、すなわち最適のコーティング結果が得られる状態に電解液組成物の密度を維持するという着想に基づいている。
【0015】
本発明によれば、このことは、電解液の密度が測定され、測定された密度値が最適な電解液組成物、すなわち平衡状態にある電解液組成物に関する記憶された基準密度値と比較され、測定された密度値の基準密度値からの偏差に応じて、少なくとも1つの成分が、電解液から除去されかつ/または電解液に補充されるという事実によって達成される。
【0016】
実際には、このことは、電解液組成物の調整可能な量がコーティング溶液から連続的に回収されている電解液によって遂行することができ、それにより電解液は、人工的に伴出される。
【0017】
平衡状態にある電解液組成物のトラッキングによって、電解液の寿命は、もはや制限されず、これにより資源が節約される。
さらに本発明による方法によって、層は、安定したままの電解液により析出され、この事実は、安定したコーティング結果、また、例えば電解液の使用の全期間にわたる常に高い残留圧縮応力といった被膜の特性をもたらす。
【0018】
電解液組成物の密度の測定は、コーティング処理の間、連続的または非連続的に行うことができる。コーティング溶液の測定された密度値は、本発明に従い基準密度値と比較され、添加および/または除去は、測定された密度値の基準密度値からの偏差に応じて行われる。このために、基準密度値をデータ記憶ユニットに記憶することができる。基準密度値は次いで、コンピュータ・ユニットによって、コーティング溶液の測定された密度値と比較することができる。コンピュータ・ユニットは、コーティング溶液の現在の密度値の基準密度値からの偏差を検出し、除去および/または添加される電解液組成物の量または少なくともその成分の量を決定する。
【0019】
有利には、コンピュータ・ユニットは、コーティング溶液の密度が記憶された基準密度値に合致することを条件として、電解液組成物または少なくとも電解液組成物の成分を除去または補充するための電子的に制御可能な除去および/または添加のデバイスを制御する。
【0020】
有利には、電解液または電解液成分の除去された量を回収し、中央リサイクリングに供給することができる。さらに有利には、本発明による方法において、平衡状態の電解液を第一に使用することができ、また本発明の方法によって、該電解液をこの平衡状態に維持することができる。このため電解液は、直ちに、すなわち始動期間なしに、ユーザが容易に利用することができ、これにより安定したコーティング結果が生まれる。
【0021】
本発明による方法は、基板の表面で、金属層および金属合金層のガルバニック析出および自己触媒析出の両方に適用することができる。これに加えて、本発明による方法は、金属基板の表面上の酸化物層の形成のための処理溶液中でも使用することができる。これらの処理溶液も、処理溶液の密度を制御することによって最適化することができる。アルミニウム表面の陽極酸化を、一例として挙げることができる。
【0022】
装置に関しては、本発明の目的は、金属または酸化物の層で基板表面をコーティングするために電解液の少なくとも1つの電解液成分を連続的に除去および/または添加するための装置によって達成され、少なくとも1つの電解液成分を除去および/または添加するための前記装置は、電解液の密度を測定するためのデバイスおよびコンピュータ・ユニットを含み、少なくとも1つの電解液成分を除去および/または添加するための前記装置は、電解液の密度が、電解液の少なくとも1つの成分の添加および/または除去によって、データ記憶デバイスに記憶される予め定められた参照密度値と適合することを条件として、記憶された基準密度値と電解液の密度を測定するためのデバイスにより測定される密度値とを比較するコンピュータ・ユニットによって制御される。
【0023】
有利には、添加および/または除去のデバイスは、ポンプまたはバルブでもよい。
【0024】
密度の測定のためのデバイスは、密度の測定に適した比重瓶、屈折計、比重計、密度天秤、曲げ共振器またはその他のデバイスでもよい。代替的に、密度は、屈折計の屈折率により間接的に測定することができる。
【0025】
有利には、本発明による装置は、温度、導電率、pH、比吸収係数、白濁などの溶液の特性の測定のための追加のデバイスを含んでもよく、ここで、これらのデバイスが測定される値は、コンピュータ装置に送り、記憶デバイスに記憶された基準値と比較することもでき、コンピュータ装置は、溶液の特性が、記憶された基準値と適合することを条件として、溶液の検出された特性に影響する加熱冷却システムのような追加のデバイスを制御するために適合される。
【0026】
有利には、本発明による装置は、既存のコーティングシステムに組み込むことができる。装置によって除去される電解液または少なくとも電解液の成分の量は、適切な設備で回収し、中央リサイクリングに供給することができる。適切な設備は、例えば、析出容器、タンク・システム等である。
【0027】
本発明による方法および本発明による装置を使用して、電解液の寿命を増加させるだけでなく、コーティングシステムの必要な不動態化サイクル相互間の処理時間を倍化させることも可能である。先行技術から知られているコーティング方法および装置を使用する場合、不動態化は、例えば、プラスチック容器については毎日乃至1日おきに、またステンレス鋼タンクについては毎週乃至1週おきに必要となる。本発明による方法によって、この頻度は、わずかに、プラスチック・タンクについては1日おき乃至4日おき、ステンレス鋼タンクについては概ね1週おき乃至4週おきとなる。これによって、追加的な経済上および環境上の利点を、コーティングシステムの清掃中のむだ時間と洗浄損失を減らすことによって得ることができる。
【0028】
特に有利な方法においては、電解液組成物の作用時間を改善するために、本発明による方法および本発明による装置を追加の方法および装置と組み合わせることができる。従って、本発明の方法は、例えば、欧州特許出願EP1413646A2による金属の無電解析出の方法と組み合わせることができ、この方法においては、金属ベースの塩が使用され、その陰イオンは揮発性である。それにより、電解液の耐用寿命の過程で発生する密度の増加は、電解液組成物からの陰イオンの逃避により減少し、これはさらに、本発明による方法および本発明による装置との組合せによって最適化することができる。金属層、好ましくはニッケル、銅、銀または金の無電解析出のための該電解液は、金属ベースの塩、還元剤、錯体形成剤、触媒および安定化剤を含み、ここで電解液は、金属ベースの塩として金属塩を含み、その陰イオンは、好ましくは0.01乃至0.3モル/lの濃度で揮発性である。この金属塩(その陰イオンは揮発性である)は、好ましくは、少なくとも金属酢酸塩、金属ギ酸塩、金属硝酸塩、金属シュウ酸塩、金属プロピオン酸塩、金属クエン酸塩および金属アスコルビン酸塩、好ましくは金属酢酸塩からなる群からの塩である。
【0029】
電解液ベースの塩として、特に、金属塩(その陰イオンは揮発性である)、好ましくは金属酢酸塩を用いて、電解液の耐用寿命を延長し、一方で、層の品質が安定した状態で、高い析出速度および均一に析出された層を得ることができる。同時に、残留圧縮応力を有する層が析出される。
【0030】
基本的に、該電解液は、一または複数の金属ベースの塩、好ましくは金属酢酸塩、および還元剤、好ましくはナトリウム次亜リン酸塩から構成される。さらに、電解液には、好ましくはニッケルの無電解析出のための酸性電解液で用いられる、錯体形成剤、触媒および安定化剤といった各種の添加物が加えられる。析出速度が酸性の環境では明らかに高くなるため、好ましくは、酸が錯体形成剤として電解液に加えられる。カルボン酸および/またはポリカルボン酸の使用が特に有利と判明したが、これは、その使用が、一方で金属塩の有利な溶解性および遊離金属イオンの意図的な制御をもたらし、他方で、その酸性密度により、この方法のために要求されるpHを前もって決定し、またはその調整を容易にするためである。有利には、電解液のpHは、4.0乃至5.2の範囲内である。これに加えて、溶解した金属は、最も有利には、カルボン酸および/またはポリカルボン酸、その塩および/または誘導体、好ましくは水酸化物、(ポリ)カルボン酸、特に好ましくは、2−ヒドロキシ−プロパン酸および/またはプロパン二塩基酸の使用により、複合的に結合する。これらの化合物は同時に、活性剤として、またpH緩衝剤として機能し、その有利な特性により著しく溶液の安定性に寄与する。
有利には、硫黄を含む複素環が、触媒として電解液に添加される。硫黄を含む複素環として、好ましくはサッカリン、その塩および/または誘導体、最も好ましくはサッカリン・ナトリウムが使用される。先行技術から知られ、従来使用されているS2−ベースの触媒とは逆に、サッカリン塩の添加は、より高い濃度であっても、析出された金属層の腐食耐性にいかなる悪影響も及ぼさない。
【0031】
金属層の迅速かつ高品質の析出のためのさらに重要な前提条件は、電解液の安定化のための適切な化合物の使用である。この目的のために、多くの非常に異なる安定化剤が先行技術において知られている。しかしながら、本発明による電解液の安定性が、金属塩(その陰イオンは揮発性である)、好ましくは、金属の酢酸塩、ギ酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビン酸塩、最も好ましくは金属酢酸塩の使用により決定的に影響を受けることを考慮すると、好ましくは、ごく少量の安定化剤が使用される。このことは、一方ではより経済的であり、他方では、追加の物質の添加により発生する可能性があり、また電解液の寿命を著しく短縮する可能性がある沈殿などを回避する。このため、有利には、金属被覆溶液の自然発生的な分解を抑制するよう、ごく少量の安定化剤が電解液に加えられる。これらは、例えば金属、ハロゲン化合物および/またはチオ尿素のような硫黄化合物でもよい。ここで、安定化剤としての金属の使用が特に有利であると判明している。この場合、最も好ましくは塩(その陰イオンが少なくとも1つの炭素原子を含む)の形で存在する、鉛、ビスマス、亜鉛および/またはスズの使用が好ましい。塩は、好ましくは、酢酸塩、ギ酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビン酸塩、最も好ましくは酢酸塩からなる群からの一または複数の塩である。
【0032】
金属層が追加的な特性を有するべきかどうかによって、例えば、追加の金属、好ましくはコバルトなどの追加の成分、および/または微細分散粒子が、リンに加えて層に埋め込まれる。さらに電解液は、例えば塩、好ましくはヨウ化カリウムのような、より小量の追加成分を含む。
【0033】
本書に記載される方法によって、少なくとも14のターンオーバーで、均質な金属層を析出することができ、一方で、析出速度は常に高く、少なくとも7乃至12μm/hの範囲にある。
【0034】
驚くべきことに、本発明による方法を利用することによって、金属被覆溶液の品質が改善され、寿命が著しく延長し、金属被覆溶液の耐用寿命は無限にすらなる。この事実は、本発明による方法の使用によって高い析出速度が得られるだけでなく、その方法により析出された層が均質かつ高品質であり、非常に良好な接着力を示し、かつ全体的に孔および亀裂がないという利点をもたらす。さらに、特に複合基板の表面の金属コーティングが改善される。
【0035】
本発明で提案される方法は、好ましい実施例において、密度に応じた少なくとも1つの溶液成分の補充および/または除去と組み合わせた電解液の組成物によって特徴付けられる。有利には、特にこの実施形態における方法は、先行技術から知られている方法と比較して経済的であり、さらに環境にとってもより優しい。
【0036】
本発明による方法の好ましい実施のための上述の種類の電解液は、例えばニッケルめっきの場合、以下の組成物を実質的に有してもよい:
4乃至6g/l ニッケル・イオン
25乃至60g/l 還元剤
25−70g/l 錯体形成剤
1乃至25g/l 触媒
0.1乃至2mg/l 安定化剤
0乃至3g/l 追加の成分
当該ベース電解液のpH範囲は、4.0乃至5.0である。既に上述したように、金属受容体として、好ましくは金属塩が使用され、その陰イオンは揮発性である。金属塩(その陰イオンは揮発性である)として、好ましくは、金属酢酸塩、金属ギ酸塩、金属硝酸塩、金属シュウ酸塩、金属プロピオン酸塩、金属クエン酸塩および金属アスコルビン酸塩からなる群からの一または複数の塩、最も好ましくは金属酢酸塩のみが使用される。反応の間、pHはH−イオンの連続生成により減少し、水酸化物、炭酸塩などのアルカリ性媒質、または通常選択されるアンモニアによって複雑な方法でpHを目標範囲に維持しなければならないため、特別の利点は、陰イオンが揮発性であり、好ましくは酢酸塩、ギ酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビン酸塩の群に由来する金属塩の単独の使用に存在する。その理由は、金属−リン層の析出において、酢酸塩、ギ酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビン酸塩の陰イオンがナトリウム次亜リン酸塩からのナトリウムと反応して、酸ナトリウム塩を形成するからである。従って、析出処理の全体にわたって、電解液は、より多量のアルカリ性媒体を加える必要なしに、4.0乃至5.2、好ましくは4.3乃至4.8のpH範囲で作用する。この非常に有利なpH自己制御によって、処理の間、アルカリ性添加物はもちろん、連続pH制御も不要とすることができる。
【0037】
ニッケルに関して、金属ベースの塩の濃度は、0.04乃至0.16モル/l、好ましくは0.048乃至0.105モル/lに達し、金属含有量は、0.068乃至0.102モル/l、好ましくは0.085モル/lである。
【0038】
還元剤として、25乃至65g/lの濃度の次亜リン酸ナトリウムが、好ましくは使用される。
【0039】
既に上で説明したように、錯体形成剤として、カルボン酸および/またはポリカルボン酸、その塩および/または誘導体、好ましくはヒドロキシ(ポリ)カルボン酸、さらにより好ましくは、2−ヒドロキシ−プロパン酸および/またはプロパン二塩基酸が使用される。これらの化合物を使用することにより、溶解したニッケルが特に有利な方法で複合的に結合され、その結果、該錯体形成剤の連続的な添加により、析出速度を、7乃至14μm/h、好ましくは9乃至12μm/hの対応する間隔に維持することができる。ベース電解液中の錯体形成剤の濃度は、25乃至70g/l、好ましくは30乃至65g/lである。
【0040】
触媒の濃度(ここで、好ましくは、硫黄を含有する複素環、より好ましくはサッカリン、その塩および/または誘導体、またさらにより好ましくはサッカリン・ナトリウムが使用される)は、1乃至25g/l、好ましくは2.5乃至22g/lである。安定化剤として、ハロゲン化合物および/または硫黄化合物、好ましくはチオ尿素を使用することができる。しかし、特に有利なのは、好ましくは塩の形の金属(その陰イオンは揮発性である)、好ましくは鉛、ビスマス、亜鉛および/またはスズの使用である。これらの塩は、好ましくは、酢酸塩、ギ酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビン酸塩からなる群に由来する。さらにより好ましいのは、金属の硝酸塩の安定化剤としての使用である。安定化材の濃度は、有利には、0.2乃至2mg/l、好ましくは0.3乃至1mg/lである。
【0041】
任意選択で、例えば0乃至3g/lの濃度のヨウ化カリウムなど、追加の成分をベース電解液に添加することができる。
【0042】
最も異なる基板がこのベース電解液中に置かれ、電流を流される。電解液の寿命および安定性を維持するために、電解液を、析出処理の間、電気透析および/またはイオン交換樹脂によって再生することができる。補充溶液(その例を下で挙げる)を、析出処理の間、電解液に添加することができる。これらの補充溶液は、ベース成分の個々の含有量の調節のために特別に構成され、異なる量で電解液に添加される。
【0043】
例えば第1の補充溶液は、以下の組成である:
500乃至580g/l 還元剤
5乃至15g/l 錯体形成剤
50乃至150g/l アルカリ性緩衝剤
11乃至20g/l 触媒
0乃至3g/l 追加の成分
【0044】
有利には、補充溶液の調製および使用において、ベース電解液におけるのと同一の物質が用いられる。このことは、本発明による方法のさらに非常に重要な利点になる。同一の物質が継続して使用され、また汚染および沈殿がほとんど発生しないという事実のため、逆洗からの化合物も電解液に戻すことができる。このように、本発明による方法は、材料の閉じたサイクルを有し、これにより、その方法は、より経済的で環境により優しくなる。電解液中の錯体形成剤の総含有量が70乃至90g/lとなるよう、錯体形成剤の含有量およびアルカリ性緩衝剤の含有量が選択される。
【0045】
同時に、例えばニッケル電解液および触媒としてのナトリウム・サッカリナート(saccharinate)の使用の場合、0.100乃至0.200g、好ましくは0.150gの量が、析出されたニッケルの1グラムあたりで補充されるよう、電解液中の触媒の含有量が調整される。
【0046】
例えば第2の補充溶液は、以下の組成である:
10乃至50g/l 錯体形成剤
0.68乃至2.283mol/l 金属受容体
1乃至25g/l 触媒
40乃至80mg/l 安定化剤
【0047】
ここで、第2の補充溶液の錯体形成剤は、第1の補充溶液の錯体形成剤と同一でもよく、必要な場合は、異なってもよい。例えば、ヒドロキシカルボキシル酸の含有量として、例えばヒドロキシカルボキシル酸の1つである60g/lの2−ヒドロキシ−プロパン酸を、ヒドロキシジカルボン酸として、例えば0.5g/lの含有量のプロパン二塩基酸を、ベース電解液中の第2の錯体形成剤として使用してもよい。補充溶液の添加によって、プロパン二塩基酸の含有量は、このとき、析出されたニッケルの1グラムあたり、0.005乃至0.015g単位で増加する。
【0048】
該原料および適当な補充溶液を使用する場合、また硫酸金属が前述の金属ベース塩に加えて使用される場合、少なくとも14MTOのターンオーバーで、残留圧縮応力を有する密着性金属層の析出が保証される。その陰イオンが少なくとも1つの炭素原子を有し、また、好ましくは酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩およびアスコルビナート(ascorbinate)からなる群に由来するベース塩が使用される場合のみ、電解液の寿命は、増加し続ける。ここで、上述の残留圧縮応力は、非常に重要で極めて望ましい層特性である。それは、交互の曲げ応力に好影響を与え、延性を増強する。例えばニッケルの場合、>0.5%の延性を有する金属層が析出される。同様に、残留圧縮応力は、金属−リン層の腐食耐性に良い影響を及ぼす。
【0049】
さらに、追加の金属、好ましくは銅、および/または微分散粒子、例えばフッ素を含有する熱硬化性プラスチックの微細分散粒子などの追加の成分を電解液および補充溶液に添加してもよく、その成分によって、追加の硬度および乾式潤滑効果および/またはその他の特性が、析出された層で達成される。
【0050】
さらに、本発明による方法および本発明による装置は、有利には、電気透析の方法および装置ならびにコーティング組成物の再生のための他の手段と組み合わせることができる。例えば、本発明による電解液は、電気透析法によって再生させることができる。金属塩(その陰イオンは揮発性である)を使用すると、電気透析システムの分離効果は、大幅に向上する。正リン酸塩イオンを含むが硫酸塩イオンを含まない電解液の均等な塩の投入において、オルト亜燐酸塩イオンの分離のための電解セルの数を減らすことができ、その一方で、分離効率は、同一である。
【0051】
本発明による方法の追加の実施形態において、還元剤として次亜リン酸塩を含む電解液の場合、電解液の除去および回収された量は、中央リサイクリングにおけるリン酸塩回収に供給される。ここで、以下の一般式に従って自己触媒的分離反応によって生じた正リン酸塩をリン酸塩として回復させることができ、新しい電解液組成物の生成のための材料のサイクルに再び使用することができる。
【0052】
MSO+6NaHPO→M+2H+2P+4NaHPO+NaSO
【0053】
本発明による方法の特に好ましい実施形態において、コーティングされる基板は、コーティング溶液において金属層で基板表面をコーティングする方法でコーティングされ、ここでコーティング溶液は、少なくとも1つの成分から成り、その密度はコーティング処理の過程で変化し、その結果、溶液の品質を維持するためにそれを補充または除去されなければならず、ここで成分の補充および/または除去は、溶液の組成物の密度に応じて行われ、溶液の組成物は、金属ベースの塩、還元剤、錯体形成剤、触媒および安定化材を含み、ここで、溶液の組成物は、金属塩として金属ベースの塩を含み、その陰イオンは揮発性であり、該塩は0.01乃至0.30モル/lの当初密度で存在する。
【0054】
人工の飛沫同伴と密度に応じての消耗した溶液成分のトラッキングとの組合せ、揮発性の陰イオンを含む電解液の使用および第一に平衡状態にある電解液の使用によって、基板表面の無電解コーティングのためのコーティング処理は、初めて本発明による方法を提供され、そのコーティング処理は、理論的には無限の耐用寿命を有する。従って、金属コーティング溶液の新しい調製が回避され、それによって資源が節約され、その結果、これまで達成されたことのない生態学的なおよび経済的な利益が達成される。
【0055】
以下に、図の解説を示す。
図1においては、電解液の処理時間および電解液の除去された量に応じた、異なる電解液組成物の密度特徴が示される。グラフ1は、先行技術から知られているニッケル層の析出に関する電解液の密度特徴を示す。グラフ2は、3.3%の電解液除去の設定量におけるニッケル層の析出に関する先行技術の電解液の密度特徴を示す。グラフ3は、欧州特許出願EP1413646から知られている種類の電解液の密度特徴を示し、その電解液において、金属塩(その陰イオンは揮発性である)は、電解液組成物の金属ベースの塩として使用される。グラフ4は、3.3%の電解液除去の設定量でグラフ3に関連して記載された電解液を示す。グラフ5は、10%の電解液除去の設定量でグラフ3に関連して記載された電解液を示す。
【0056】
参照番号6によって特定される図2中の一部は、電解液のための最適の処理範囲を表す。EP1413646A2から知られている電解液組成物のための3.3%の設定された連続除去によって、最適の処理範囲を残すことなく、10MTOが既に達成されたことを、ここで見ることができる。10%の設定された連続除去によって、EP1413646A2から知られている電解液のための最適の作用範囲の密度上限は、もはや到達されず、理論的には、電解液組成物は、無限の耐用寿命を有する。
【0057】
図3は、平衡状態における電解液の経過時間と比較した、1MTOあたりの電解液における相対的な材料損失を示す。左の境界線は、従来の電解液システムを示す。右の境界は、EP1413646A2による電解液システムに相当する。
【0058】
図4は、本発明による装置のプロセス図を示す。成分容器1Aから1Fまで、電解液の調製のために必要な個々の成分は、適切な輸送手段、例えばポンプによって、電解槽2に供給される。電解槽2に存在する電解液組成物は、電解槽、または電解槽から部分的な流量で供給される外部制御モジュール3のいずれかにおいて直接、密度、pH、温度、導電率または金属含有量といったその化学物理的な特性について分析される。電解液の部分的な流量が電解槽2から取り出される場合、これを、熱回収5に最適な形で供給することができる。ここで、測定された値に応じて固定される除去量は、適切なポンプによって電解液から除去し、収容容器7に供給することができる。除去された電解液のための収容容器と同様に成分容器1A〜1Fおよび電解槽のいずれも、有利には、充填限度以下であるかまたはこれを上回る水準を記録する充填水準センサを含み、対応する信号を出力し、かつ/または、乱れのないコーティング処理を維持するために対応する工程管理処置を開始する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明の詳細な説明のため、本発明の方法に好ましくは使用し得る電解液の好ましい実施形態を以下に記載する。
【実施例1】
【0060】

【0061】
該電解液は、4.3乃至4.8の自動調整pH範囲を有し、8乃至12μm/hの析出速度を可能にする。そこから析出される層の内部応力は、−10乃至−40N/mmに達する。上述の電解液組成物を使用する場合、常に良好な特性を有する金属−リン層が生じる。
【0062】
4.6乃至5.2までpH範囲を増加させることによって、0乃至−15N/mmの残留圧縮応力を有する層が析出される。pH間隔の固定は、12乃至20μm/hまで析出速度を大幅に増大させる。これらの層のリン含有量は、8乃至10%Pに達する。さらに5.5乃至6.2までpH範囲を増加させることによって、−5乃至−30N/mmの残留圧縮応力を有する層が析出される。これらの層のリン含有量は、2乃至7%Pに達する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】処理時間に応じた電解液の密度特徴を示す。
【図2】従来の電解液および欧州特許出願EP1413646A2による電解液について、異なる除去の量に関する密度の増加を示す。
【図3】安定した処理における電解液の原料損失を示す。
【図4】本発明による装置のプロセス図を示す。
【符号の説明】
【0064】
1A 1B 1C 1D 1E 1F 成分容器
2 電解槽
3 制御モジュール
4 センサ
5 任意の熱回収
6 充填水準センサ
7 除去された電解液のための収容容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング溶液において金属または酸化物の層で基板表面をコーティングする方法であって、ここで、溶液が少なくとも1つの成分を含み、その濃度がコーティング処理の経過で変化し、その結果、溶液の品質を維持するためにそれを補充または除去されなければならないものであって、
成分の補充および/または除去が溶液の組成物の密度に応じて行われることを特徴とするもの。
【請求項2】
コーティング溶液の測定された密度値が基準密度値と比較され、変化する成分の補充および/または除去が、測定された密度値の基準密度値からの偏差に応じて行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コーティング溶液の密度が記憶された基準値に合致することを条件として、コンピュータ・ユニットが除去および/または補充のデバイスを制御することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
コーティング溶液の少なくとも1つの除去された成分が回収されリサイクリングに供給されることを特徴とする、請求項1乃至3の一に記載の方法。
【請求項5】
処理の開始から、コーティング溶液組成物が、目標密度値に一致する密度で使用されることを特徴とする、請求項1乃至4の一に記載の方法。
【請求項6】
処理において、基板上のニッケルまたはニッケル合金の層の析出のための電解液が使用されることを特徴とする、請求項1乃至5の一または複数に記載の方法。
【請求項7】
処理において、酸化物層がアルミニウム基板の表面上に形成されることを特徴とする、請求項1乃至5の一または複数に記載の方法。
【請求項8】
金属または酸化物の層で基板表面をコーティングするための電解液の少なくとも1つの電解液成分の連続的な除去および/または添加のための装置であって、前記装置が少なくとも1つの電解液成分の除去および/または添加のためのデバイス、電解液の密度を測定するためのデバイス、およびコンピュータ・ユニットを含み、ここで、少なくとも1つの電解液成分の除去および/または添加のためのデバイスが、密度を測定するためのデバイスによって測定される密度値に応じてコンピュータ・ユニットによって制御され、ここで、コンピュータ・ユニットが、記憶された基準密度値と電解液の密度を測定するためのデバイスによって測定された密度値とを比較するものであって、電解液の密度が、少なくとも1つの電解液成分の添加および/または除去によって、記憶された目標密度値に合致することを条件とするもの。
【請求項9】
密度を測定するためのデバイスが比重瓶、屈折計、比重計、密度天秤または曲げ共振器であることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
装置が溶液特性の測定のための追加のデバイスを含むことを特徴とする、請求項8または9の一または複数に記載の装置。
【請求項11】
装置を既存のコーティングシステムに組み込むことができることを特徴とする、請求項8乃至10の一または複数に記載の装置。
【請求項12】
請求項1乃至7の一または複数に記載の方法を実行するための請求項8乃至11の一または複数に記載の装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−525404(P2009−525404A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552727(P2008−552727)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/000658
【国際公開番号】WO2007/088008
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(501407311)エントン インコーポレイテッド (36)
【Fターム(参考)】