説明

堆肥製造装置および堆肥の製造方法

【課題】嫌気性微生物を含有する堆肥原料を収容する嫌気性槽内から好気性微生物を含有する堆肥原料を収容する好気性槽に簡易的に酸素を供給することによって、嫌気性槽内の雰囲気を調整すると同時に、好気性槽内の雰囲気を調整することができる堆肥製造装置を提供することを課題とする。
【解決手段】好気性微生物を含有する堆肥原料(w)を気密的に収容する第1の槽(1)と、嫌気性微生物を含有する堆肥原料を気密的に収容する第2の槽(2)とを有し、かつ上記第1の槽と第2の槽との間には、上記第2の槽内の空気から酸素を分離して上記第1の槽に供給する酸素富化器(6)を備えた酸素流通部(4)が設けた堆肥製造装置とした。また、第1の槽に、上記酸素流通部の酸素富化器が作動する際に発生する熱によって当該第1の槽内を昇温させる加熱装置(12)を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好気性雰囲気下や嫌気性雰囲気下において、有機廃棄物等の堆肥原料を発酵させることにより、堆肥を製造する堆肥製造装置および堆肥の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より、堆肥は、堆肥原料中に炭素分が多く、乳酸菌や酵母などの嫌気性微生物が含まれている場合には、堆肥原料を嫌気性槽に収容し、嫌気性微生物によって分解、発酵させることにより、製造されている。また、堆肥原料中に好気性微生物が含まれている場合には、堆肥原料を好気性槽に収容し、好気性微生物によって分解、発酵させることにより、製造されている。
【0003】
このため、堆肥製造装置は、嫌気性槽を有するものと、好気性槽を有するものとがあり、堆肥原料によって使い分ける必要がある。それ故、嫌気性槽からは酸素が排出され、好気性槽には酸素を供給するにも拘わらず、嫌気性槽を嫌気性雰囲気に保つとともに、好気性槽を好気性雰囲気に保つように、嫌気性槽と好気性槽との内部雰囲気を個々に制御しなければならず、エネルギー的にも作業効率的にも非効率的であるという問題がある。
【0004】
さらに、堆肥は、特許文献1に示すように、嫌気性槽において糖発酵等を行う嫌気性微生物を繁殖させ、次いで、好気性槽に収容し、生成した糖分を用いて好気性微生物を繁殖させることにより、製造されることがある。
【0005】
この場合には、堆肥原料を嫌気性槽に収容し、嫌気性槽において嫌気性微生物を繁殖させ、次いで、好気性槽に移して、好気性微生物を繁殖させるようになっており、堆肥原料を移し替える作業が非効率的であるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2000−109386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、嫌気性微生物を含有する堆肥原料を収容する嫌気性槽内から好気性微生物を含有する堆肥原料を収容する好気性槽に簡易的に酸素を供給することによって、嫌気性槽内の雰囲気を調整すると同時に、好気性槽内の雰囲気を調整することができる堆肥製造装置およびこの装置を用いた堆肥の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記酸素富化器を上記好気性槽と嫌気性槽との間に設け、この嫌気性槽内の空気から酸素を選択的に好気性槽に供給することによって、嫌気性槽内の酸素含有量を減少させると同時に好気性槽の酸素含有量を増加させることができることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち、請求項1に記載の発明は、好気性微生物を含有する堆肥原料を気密的に収容する第1の槽と、嫌気性微生物を含有する堆肥原料を気密的に収容する第2の槽とを有し、かつ上記第1の槽と第2の槽との間には、上記第2の槽内の空気から酸素を分離して上記第1の槽に供給する酸素富化器を備えた酸素流通部が設けられていることを特徴とする堆肥製造装置である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の堆肥製造装置において、上記第1の槽には、上記酸素流通部の酸素富化器が作動する際に発生する熱によって当該第1の槽内を昇温させる加熱装置が備えられていることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の堆肥製造装置において、上記酸素富化器は、板状の固体電解質の両面に電極が形成されてなり、かつ、当該第1の槽内の酸素濃度に応じ、上記電極に供給する電流量を増減させる電流量調整手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の堆肥製造装置において、上記第1の槽と第2の槽との間には、上記酸素流通部と並列的に、上記第1の槽内の酸素を分離して上記第2の槽に供給する酸素富化器を備えた第2の酸素流通部が設けられており、かつ上記酸素流通部又は上記第2の酸素流通部のいずれか一方に上記酸素を流通させる制御手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
さらには、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、上記第1の槽と上記第2の槽とに堆肥原料を収容して、上記酸素流通部における上記酸素富化器によって上記第2の槽から酸素を分離して上記第1の槽に供給することにより、上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、上記第1の槽と上記第2の槽とに堆肥原料を収容して、上記酸素流通部における上記酸素富化器によって上記第2の槽から酸素を分離して上記第1の槽に供給し、かつ上記加熱装置によって上記第2の槽を加熱することにより、上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とするものである。
【0015】
さらに、請求項7に記載の発明は、請求項3に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、上記第1の槽と上記第2の槽とに堆肥原料を収容した後に、上記第1槽内の酸素濃度に応じて、上記電流量調整手段によって上記電極に供給する電流量を増減させることにより、上記第2の槽内の空気から分離して上記第1の槽に供給される酸素量を調整しつつ上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項4に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、上記制御手段によって、上記酸素流通部と上記第2の酸素流通部とを切り換えて、上記酸素を上記第2の槽から上記第1の槽又は上記第1の槽から上記第2の槽に供給することにより、上記第1の槽及び上記第2の槽の内部雰囲気をそれぞれ調整しつつ、上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の発明によれば、第1の槽と第2の槽との間に設けられた酸素富化器によって、第2の槽内の空気から酸素を選択的に分離して、第1の槽に供給し、第1の槽内の酸素量を増加させるとともに、第2の槽内の酸素量を減少させることができる。したがって、第2の槽内において、嫌気性微生物を繁殖させることにより、堆肥原料を分解・発酵させ、堆肥を製造することができるとともに、第1の槽内において、好気性微生物を繁殖させることにより、堆肥原料を分解・発酵させ、堆肥を製造することができる。
この結果、第1の槽と第2の槽との間に設けられた酸素富化器のみによって、第1の槽と第2の槽に収容された堆肥原料を同時に分解・発酵させ、それぞれの槽内において同時に好適な条件下で堆肥の製造を行うことができる。
【0018】
特に、請求項2又は6に記載の発明によれば、酸素富化器によって第2の槽内の空気から酸素を分離し、第1の槽内に供給するとともに、この酸素富化器の作動に伴って発生した熱により第1の槽を昇温させることにより、好気性細菌の繁殖を促し、堆肥原料の分解・発酵を促進させることができる。このため、別途、加熱装置を設ける必要がなく、堆肥製造装置の制御を簡易化することができる。
【0019】
請求項3又は7に記載の発明によれば、第1の槽内の酸素濃度が低い場合には、電流量調整手段によって電極に供給される電流量を増加させることにより、酸素富化器によって第2の槽内の空気から分離される酸素量を増加させ、その結果、第1の槽に供給される酸素量を増加させることができる。逆に、第1の槽内の酸素濃度が高い場合には、上記電流量調整手段によって電極に供給される電流量を減少させることにより、酸素富化器によって第2の槽内の空気から分離される酸素量を減少させ、その結果、第1の槽に供給される酸素量を減少させることができる。このため、電流量調整手段によって、第1の槽内の酸素濃度に応じて電流量を増減させることにより、第1の槽内の酸素供給量を簡易に微調整することができ、より好適な条件下で堆肥原料を分解・発酵させることができる。
【0020】
請求項4又は8に記載の発明によれば、第2の酸素流通部によって、第1の槽内の空気から酸素を選択的に第2の槽内に供給することにより、第1の槽を嫌気性雰囲気にするとともに、第2の槽を好気性雰囲気にすることができる。このため、制御手段によって、酸素流通部又は第2の酸素流通部のいずれか一方に酸素を流通させることにより、第1の槽内の雰囲気と第2の槽内の雰囲気とを必要に応じて変更することができ、例えば、好気性微生物及び嫌気性微生物の両方を含有する堆肥原料等を効率的に分解・発酵させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る堆肥製造装置について、図1および図2を用いて説明する。
【0022】
本実施形態の堆肥製造装置は、図1に示すように、堆肥原料wを気密的に収容する2槽の発酵槽1、2(第1の槽、第2の槽)と、各発酵槽1、2内の内部雰囲気をそれぞれ調整する酸素流通部4、5とから概略構成されている。
【0023】
そして、一方の発酵槽2には、嫌気性微生物を含有する堆肥原料wが収容可能であるとともに、他方の発酵槽1には、好気性微生物を含有する堆肥原料wが収容可能になっている。
ここで、嫌気性微生物とは、例えば、麹カビ、クモノスカビ、乳酸菌、酵母等の嫌気性条件下において繁殖する微生物であり、好気性微生物とは、例えば、上記嫌気性微生物が生成した糖類を養分として繁殖する他種類の微生物等、好気性条件下において繁殖する微生物である。
【0024】
この発酵槽1、2は、伝熱部材3によって上部空間11、21と下部空間12、22(加熱装置)とが仕切られており、上記上部空間11、21であって、かつ上記伝熱部材3の近傍に、堆肥原料wを載置する載置台13、23が設けられている。この載置台13、23は、内部に空洞が形成されており、上記堆肥原料wの載置面に、この空洞に連通する上記堆肥原料wよりも小さい径の孔13a、23aが全面に渡って複数形成されている。
【0025】
上記酸素流通部4、5は、上記上部空間11、21に接続され、上部空間11、21内の空気を吸引する吸気管41、51と、上記下部空間12、22に配設され、この吸気管41、51によって供給された空気から酸素のみを選択的に透過する酸素富化器6が内蔵された容器からなる酸素分離器40、50とを有している。また、この酸素分離器40、50には、上記酸素富化器6を選択的に透過した空気を他の上部空間11、21に供給する酸素供給管42、52と、上記酸素富化器6を透過しない酸素以外の成分を元の上部空間11、12に循環供給する戻り配管43、53とが接続されている。そして、上記酸素供給管42、52は、それぞれ上記伝熱部材3の中央部を貫通し、上記載置台13、23の空洞に連通するように載置台13、23に接続されている。
【0026】
また、上記酸素分離器40、50は、上記酸素富化器6によって、上記吸気管41、51および上記戻り配管43、53が接続された一端部側の空間と、上記酸素供給管42、52が接続された他端部側の空間とが仕切られている。
【0027】
この酸素富化器6は、図2に示すように、酸素イオン伝導性を有する板状の固体電解質60の上記吸気管41、51側の面にカソード電極61が形成されるとともに、上記酸素供給管42、52側の面にアノード電極62が形成されている。そして、カソード電極61、アノード電極62間に直流電圧Vを印加することにより、およそ400℃〜800℃の温度下において、カソード電極61側からアノード電極62側に空気から酸素のみを選択的に透過するようになっている。
【0028】
ここで、固体電解質60としては、例えば、イットリア添加ジルコニア(YSZ)が用いられるとともに、電極61、62としては、LSC:La0.6Sr0.4CoO3が用いられている。或いは、固体電解質60として、コバルト添加ランタンガレート(LSGMC)が用いられるとともに、電極61、62として、SSC:Sm0.5Sr0.5CoO3が用いられている。
【0029】
また、上記酸素分離器40、50は、それぞれ外周部に上記固体電解質60を上記400℃以上に加熱する起動用ヒータ44、54が設けられており、起動用ヒータ44、54によって加熱されることにより、上記固体電解質60が起動し、カソード電極61からアノード電極62に酸素が透過するようになっている。そして、この酸素透過に伴って固体電解質60が放熱し、この自らの放熱によって400℃〜800℃に加熱されるとともに、下部空間12、22が除々に加熱され、この加熱された下部空間12、22の空気により上記伝熱部材3を介して、上記上部空間11、21が除々に加熱されるようになっている。
【0030】
また、上記上部空間11、21には、上記堆肥原料wの温度を計測する温度調節器7が設けられている。
他方、上記下部空間12、22には、堆肥原料wの温度に応じ、当該下部空間12、22に外気を供給する外気供給管71、72が接続されているとともに、この外気供給管71、72の供給口の対向面に排出口を有し、かつ下部空間12、22の空気を排出する排気管73、74が接続されている。加えて、上記外気供給管71、72には、流量調整弁71a、72aとファン71b、72bとが介装されており、上記排気管73、74には、開閉弁73a、74aが介装されている。
【0031】
そして、上記温度調節器7は、堆肥原料wの温度が設定値よりも高い場合には、ファン71bを作動させ、流量調整弁71aによって、外気を必要量だけ外気供給管71から下部空間12に供給するとともに、開閉弁73aを開き、下部空間12の空気を排出するようになっている。
これにより、特に分解・発酵に60℃〜70℃の適温が必要とされる好気性微生物を含有する堆肥原料wが一定の温度に保たれ、当該堆肥原料wの分解発酵が促進する。
【0032】
ところで、上記酸素流通部4、5は、上記吸気管41、51に開閉弁41a、51aと、ファン41b、51bとが介装されており、この開閉弁41a、51aとファン41b、51bとを制御する制御装置8が設けられ、この制御装置8によって好気性微生物を含有する堆肥原料wが載置されている載置台13に酸素が供給されるようになっている。また、上記上部空間21内の酸素濃度を計測する酸素濃度調節器(電流量調整手段)9が設けられており、この酸素濃度調節器9は、上記計測した上部空間21内の酸素濃度に応じ、上記電極61、62に供給される電流量を調整するようになっている。
【0033】
次いで、上述の堆肥製造装置を用いて、嫌気性微生物を含有する堆肥原料wと好気性微生物を含有する堆肥原料wとを同時に分解・発酵させることにより、堆肥を製造する方法について、説明する。
【0034】
まず、嫌気性微生物を含有する堆肥原料wを一方の載置台23上に載置するとともに、好気性微生物を含有する堆肥原料wを他方の載置台13上に載置する。これと並行して、起動用ヒータ44を作動させ、上記固体電解質60を400℃以上に加熱するとともに、電極61、62間に直流電圧vを印加し、かつ制御装置8によって、開閉弁41aを開くとともに、ファン41bを作動させる。
【0035】
すると、上部空間21の空気が、徐々に吸気管41を介して酸素分離器40に供給され、空気から酸素のみが選択的に酸素富化器6を透過し、この酸素富化器6を透過した酸素が、酸素供給管42から載置台13内の空洞に供給され、孔13aから放出される。
他方、酸素富化器6を透過しない酸素以外の成分が戻り配管43から上部空間21内に循環供給される。
これにより、上部空間11が徐々に好気性雰囲気になるとともに、上部空間21が徐々に嫌気性雰囲気になる。
【0036】
そして、載置台13上の堆肥原料wの温度が上昇すると、温度調節器7によって、ファン71bが作動し、かつ流量調整弁71aが開くことにより、外気が必要量だけ外気供給管71から下部空間12に供給されるとともに、開閉弁73aが開くことにより、下部空間12の空気が排出され、下部空間12の空気が冷却されることにより、好気性微生物を含有している堆肥原料wの温度が適温に保たれる。
【0037】
他方、上部空間11の酸素濃度が設定値より低い場合には、酸素濃度調節器9によって、上記酸素分離器40の酸素富化器6の電極61、62電流供給量が増加することにより、酸素富化器6の酸素透過量が増加し、上部空間11の酸素濃度が高くなる。また同様に、上部空間21の酸素濃度が設定値より高い場合には、酸素濃度調節器9によって、電極61、62の電流供給量が増加することにより、酸素富化器6の酸素透過量が増加し、上部空間21の酸素濃度が低下するようになっている。
【0038】
逆に、上部空間11の酸素濃度が設定値より高い場合には、酸素濃度調節器9によって、上記酸素分離器40の酸素富化器6の電極61、62の電流供給量が減少することにより、酸素富化器6の酸素透過量が減少し、上部空間11の酸素濃度が低下するようになっている。
これにより、上部空間11が好気性雰囲気に保たれ、載置台13上の堆肥原料wが分解・発酵して、堆肥となると同時に、上部空間21が嫌気性雰囲気に保たれ、載置台23上の堆肥原料wが分解・発酵して、堆肥となる。
【0039】
次いで、上述の堆肥製造装置を用いて、嫌気性微生物及び好気性微生物を含有する堆肥原料wを分解・発酵させることにより、堆肥を製造する方法について、説明する。
まず、上述のように、上部空間21において、嫌気性雰囲気にて分解・発酵した堆肥原料wを収容したままの状態にし、上部空間11の載置台13上に、新たに堆肥原料wを載置する。
【0040】
次に、起動用ヒータ54を作動させ、上記固体電解質60を400℃以上に加熱するとともに、電極61、62間に直流電圧vを印加する。これと併行して、制御装置8によって、開閉弁41aを閉じるとともに、開閉弁51aを開き、かつファン41bを停止させるとともに、ファン51bを作動させる。
【0041】
すると、上部空間11の空気が、徐々に吸気管51を介して酸素分離器50に供給され、空気から酸素のみが選択的に酸素富化器6を透過し、この酸素富化器6を透過した酸素が、酸素供給管52から載置台23内の空洞に供給され、孔23aから放出される。
他方、酸素富化器6を透過しない空気中の酸素以外の成分が戻り配管53から上部空間11に循環供給される。
これにより、上部空間21内が徐々に好気性雰囲気になるとともに、上部空間11が徐々に嫌気性雰囲気になる。
【0042】
そして、載置台23上の堆肥原料wの温度が上昇すると、温度調節器7によって、ファン72bが作動し、外気が流量調整弁72aによって必要量だけ外気供給管72から下部空間22に供給され、かつ開閉弁74aが開き、下部空間22の空気が排出され、好気性微生物を含有している堆肥原料wの温度が適温に保たれる。
【0043】
また、上部空間21の酸素濃度が設定値より低い場合には、酸素濃度調節器9によって、上記酸素分離器50の酸素富化器6の電極61、62に供給される電流量が増加することにより、酸素富化器6の酸素透過量が増加し、上部空間21の酸素濃度が高くなるようになっている。
【0044】
これにより、上部空間21が好気性雰囲気に保たれ、載置台23上の堆肥原料wが分解・発酵して、堆肥となると同時に、上部空間21が嫌気性雰囲気に保たれ、新たに収容された載置台13上の堆肥原料wが分解・発酵する。
【0045】
そして、完全に堆肥化された載置台23上の上記堆肥を取り出し、発酵槽2内に新たに堆肥原料wを収容するとともに、載置台13上の堆肥を収容したままの状態にする。
次に、起動用ヒータ44を作動させ、上記固体電解質60を400℃以上に加熱し、かつ制御装置8によって、開閉弁51aを閉じるとともに、開閉弁41aを開き、かつファン51bを停止させるとともに、ファン41bを作動させる。これにより、上部空間11が好気性雰囲気に保たれ、載置台23上の堆肥原料wが分解・発酵して、完全に堆肥化されるのと同時に、上部空間21が嫌気性雰囲気に保たれ、新たに収容された載置台23上の堆肥原料wが分解・発酵する。
【0046】
上述のように、嫌気性微生物及び好気性微生物を含有する堆肥原料wを、上部空間11又は上部空間21に収容し、嫌気性雰囲気から好気性雰囲気に変化させつつ、堆肥原料wを分解・発酵させ、繰り返し堆肥を製造することができる。
【0047】
上述の実施形態によれば、酸素分離器40、50が下部空間12、22に配設されているため、酸素が酸素富化器6を透過するのに伴い放出される熱が伝熱部材3を介して上部空間11、21を加熱し、上部空間11、21を適温に保つことができる。このため、特に、好気性微生物を含有する堆肥原料wは、伝熱部材近傍の載置台13上に載置され、下部から徐々に加熱されるため、分解・発酵に必要とされる適温を保持することができる。また、別途、加熱器を設ける必要がなく、堆肥製造装置の制御を容易にすることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述の実施形態により何ら限定されるものではない。例えば、酸素流通部4、5は、上部空間21から上部空間11に酸素を供給する酸素流通部4のみであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る堆肥製造装置を示す断面模式図である。
【図2】図1の酸素富化器6の詳細説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・第1の槽
2・・・第2の槽
4・・・酸素流通部
6・・・酸素富化器
12・・・加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好気性微生物を含有する堆肥原料を気密的に収容する第1の槽と、嫌気性微生物を含有する堆肥原料を気密的に収容する第2の槽とを有し、かつ上記第1の槽と第2の槽との間には、上記第2の槽内の空気から酸素を分離して上記第1の槽に供給する酸素富化器を備えた酸素流通部が設けられていることを特徴とする堆肥製造装置。
【請求項2】
上記第1の槽は、上記酸素流通部の酸素富化器が作動する際に発生する熱によって当該第1の槽内を昇温させる加熱装置が備えられていることを特徴とする請求項1に記載の堆肥製造装置。
【請求項3】
上記酸素富化器は、板状の固体電解質の両面に電極が形成されてなり、かつ、当該第1の槽内の酸素濃度に応じ、上記電極に供給する電流量を増減させる電流量調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の堆肥製造装置。
【請求項4】
上記第1槽と第2の槽との間には、上記酸素流通部と並列的に、上記第1の槽内の酸素を分離して上記第2の槽に供給する酸素富化器を備えた第2の酸素流通部が設けられており、かつ上記酸素流通部又は上記第2の酸素流通部のいずれか一方に上記酸素を流通させる制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の堆肥製造装置。
【請求項5】
請求項1に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、
上記第1の槽と上記第2の槽とに堆肥原料を収容して、上記酸素流通部における上記酸素富化器によって上記第2の槽から酸素を分離して上記第1の槽に供給することにより、上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とする堆肥の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、
上記第1の槽と上記第2の槽とに堆肥原料を収容して、上記酸素流通部における上記酸素富化器によって上記第2の槽から酸素を分離して上記第1の槽に供給し、かつ上記加熱装置によって上記第2の槽を加熱することにより、上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とする堆肥の製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、
上記第1の槽と上記第2の槽とに堆肥原料を収容した後に、上記第1槽内の酸素濃度に応じて、上記電流量調整手段によって上記電極に供給する電流量を増減させることにより、上記第2の槽内の空気から分離して上記第1の槽に供給される酸素量を調整しつつ上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とする堆肥の製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載の堆肥製造装置を用いて、堆肥原料から堆肥を製造する堆肥の製造方法であって、
上記制御手段によって、上記酸素流通部と上記第2の酸素流通部とを切り換えて、上記酸素を上記第2の槽から上記第1の槽又は上記第1の槽から上記第2の槽に供給することにより、上記第1の槽及び上記第2の槽の内部雰囲気をそれぞれ調整しつつ、上記第1の槽の堆肥原料及び上記第2の槽の堆肥原料をそれぞれ分解・発酵させることを特徴とする堆肥の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−217270(P2007−217270A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5899(P2007−5899)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】