説明

塔状構造物

【課題】製造コストを低減させることができ、かつ、設計風速以下での頂部変位を低減させることができる塔状構造物を提供すること。
【解決手段】煙突や橋脚として利用される塔状構造物1に、設計風速における渦励振の共振により発生する応力が、所定値以内になるように、当該塔状構造物1の見つけ幅Bを増大させるフィン4を設けるようにした。これにより、製造コストを低減させることができ、かつ、設計風速以下での頂部変位を低減させることができることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突や橋脚等として利用される塔状構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塔状構造物としては、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−71217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塔状構造物には様々な原因により振動が生じうるが、中でも渦励振(空力振動)による影響は大きく、振動抑制の観点からはこの渦励振をいかに抑制するかが重要である。
上記特許文献1に開示された発明では、塔柱1の上端部に駆動板4を設けて、渦励振の発生を抑制し、片振幅(頂部変位)を減少させるようにしている。
また、図12に示すような塔状構造物100、すなわち、3本の筒身102と、隣り合う筒身102の側面102aと側面102aとを連結する化粧板103とを備えた塔状構造物100では、その頂部にTMD(Tuned Mass Damper)を設置して、渦励振を制御し、図13に示すように頂部変位(片振幅)を減少させるようにしている。
【0005】
しかしながら、前者の手法では風速計6が検出した風速に基づいて駆動板4を制御する駆動装置7が必要となり、後者の手法ではTMDが必要となるため、製造コストが嵩んでしまうといった問題点があった。
また、これら駆動装置7やTMDは、設置後に動作確認をして、不具合がある場合には現場で再調整を行う必要がある。そのため、これらの手法では、現場での作業が煩雑化したり、建築工期が遅延してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、製造コストを低減させることができ、かつ、設計風速以下での頂部変位を低減させることができる塔状構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る塔状構造物は、煙突や橋脚として利用される塔状構造物であって、設計風速以下で渦励振の共振により発生する応力が、所定値(予め設定された許容値)以内になるように、当該塔状構造物の見つけ幅を増大させるフィンが設けられている。
なお、本発明でいう「設計風速」とは、塔状構造物を建設する際に満足すべき法規や指針上で定められた安全性に関する指標を意味しており、この「設計風速」以下での安全性を確保する必要がある。具体的には、塔状構造物が煙突やビルである場合には、建築基準法に定められた「設計風速」、すなわち、建築基準法施行令第87条記載の「V0:その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他の風の性状に応じて30メートル毎秒から46メートル毎秒までの範囲内において国土交通省大臣が定める風速」に「E:当該建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物その他工作物、樹木その他の風速に影響を与えるものの状況に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値」を乗じた風速のことであり、塔状構造物が橋脚である場合には、道路橋耐風設計便覧(平成19年改訂版 第4.3章第66頁)に記載されている「設計基準風速Ud」のことである。
【0008】
本発明に係る塔状構造物によれば、例えば、図2に示すようなフィン4が筒身2の側面2aに設置され、その見つけ幅(見かけの幅)が増大させられ、これにより、下流側に発生する渦(図2中に実線矢印で示す渦)が、フィン4を備えていないものよりも大きくなって、図3に示すように、渦励振による共振が最大となる風速U0を風速が大きくなる方向へシフトさせることが可能となる。特に、前述した設計風速以下で渦励振による共振が所定値以下となる程度の見つけ幅に設定されたフィンを設けることにより、簡便に塔状構造物の安全性を確保できる。
これにより、従来使用していた駆動装置やTMDを不要とすることができ、製造コストを低減させることができるとともに、現場での作業を簡略化することができて、建築工期の遅延を回避することができる。
【0009】
上記塔状構造物において、前記フィンが、当該塔状構造物の上端から下端にわたって連続して設けられているとさらに好適である。
【0010】
このような塔状構造物によれば、渦励振による共振発生風速を完全にシフトすることができ、実開平5−71217に図示されているようにフィン設置前の渦励振による共振発生風速における渦励振による共振の残存を無くす事ができる。これにより、設計風速以下で渦励振による共振を確実に避けるよう設計することが容易となる。
【0011】
上記塔状構造物において、前記フィンの見つけ幅が、渦励振による共振が発生し始める風速を設計風速よりも大きくするように設定されているとさらに好適である。
【0012】
このような塔状構造物によれば、渦励振による共振が発生し始める風速を設計風速よりも大きくするフィン、すなわち、図3における渦励振による共振ピークの立ち上がりが設計風速の右側に位置するように見つけ幅を設定されたフィンが、例えば、図2に示す筒身2の側面2aに設置されていることになる。
これにより、従来使用していた駆動装置やTMDを不要とすることができ、製造コストを低減させることができるとともに、現場での作業を簡略化することができて、建築工期の遅延を回避することができる。
また、渦励振による共振が発生し始める風速が設計風速よりも大きくなるので、設計風速以下における頂部変位をなくすことができる。
【0013】
上記塔状構造物において、前記フィンが、当該塔状構造物の長手方向に沿う中心軸線から放射状に延びているとさらに好適である。
このような塔状構造物によれば、何れの方位からも構造物の見つけ幅を増加させることになり,全ての風向の風に対して、設計風速以下で渦励振による共振を確実に避けるよう設計することが容易になる。
【0014】
本発明に係る塔状構造物の設計方法は、煙突や橋脚として利用され、その見つけ幅を増大させるフィンを備えた塔状構造物の設計方法であって、前記設計風速以下で渦励振の共振により発生する応力が、所定値以内になるように、前記フィンの見つけ幅を設定する。
【0015】
本発明に係る塔状構造物の設計方法によれば、例えば、図2に示すようなフィン4が筒身2の側面2aに設置され、その見つけ幅(見かけの幅)が増大させられ、これにより、下流側に発生する渦(図2中に実線矢印で示す渦)が、フィン4を備えていないものよりも大きくなって、図3に示すように、渦励振による共振が最大となる風速Uが設計風速よりも大きくなる。
これにより、従来使用していた駆動装置やTMDを不要とすることができ、製造コストを低減させることができるとともに、現場での作業を簡略化することができて、建築工期の遅延を回避することができる。
また、渦励振による共振が最大となる風速が設計風速よりも大きくなるので、設計風速以下における頂部変位を低減させることができる。
なお、本発明でいう「設計風速」とは、塔状構造物が煙突やビルである場合には、建築基準法に定められた「設計風速」、すなわち、建築基準法施行令第87条記載の「V0:その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他の風の性状に応じて30メートル毎秒から46メートル毎秒までの範囲内において国土交通省大臣が定める風速」に「E:当該建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物その他工作物、樹木その他の風速に影響を与えるものの状況に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値」を乗じた風速のことであり、塔状構造物が橋脚である場合には、道路橋耐風設計便覧(平成19年改訂版 第4.3章第66頁)に記載されている「設計基準風速Ud」のことである。
【0016】
上記塔状構造物設計方法において、渦励振による共振が発生し始める風速を設計風速よりも大きくするように、前記フィンの見つけ幅を設定するとさらに好適である。
【0017】
このような塔状構造物の設計方法によれば、渦励振による共振が発生し始める風速が設計風速よりも大きくするフィン、すなわち、図3における立ち上がりが設計風速の右側に位置する見つけ幅の大きいフィンが、例えば、図2に示す筒身2の側面2aに設置されていることになる。
これにより、渦励振による共振が発生し始める風速が設計風速よりも大きくなるので、設計風速以下における渦励振による共振に起因する頂部変位をなくすことができる。その結果、設計風速以下における頂部変位を小さくすることが出来る。
これにより、従来使用していた駆動装置やTMDを不要とすることができ、製造コストを低減させることができるとともに、現場での作業を簡略化することができて、建築工期の遅延を回避することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る塔状構造物によれば、製造コストを低減させることができ、かつ、設計風速以下での頂部変位を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る塔状構造物を側方から見た側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図3】本発明に係る塔状構造物の作用効果を説明するための図表である。
【図4】本発明に係る塔状構造物の作用効果を説明するための図表である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図7】本発明に係る塔状構造物の作用効果を説明するための図表である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明するための図であって、当該塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図9】本発明の別の実施形態を説明するための図であって、当該塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図10】本発明のさらに別の実施形態を説明するための図であって、当該塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図11】本発明のさらに別の実施形態を説明するための図であって、当該塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図12】従来の塔状構造物を上方から見た平面図である。
【図13】従来の塔状構造物の作用効果を説明するための図表である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る塔状構造物の第1実施形態について、図1から図3を参照しながら説明する。
図1は本実施形態に係る塔状構造物を側方から見た側面図、図2は本実施形態に係る塔状構造物を上方から見た平面図、図3は本発明に係る塔状構造物の作用効果を説明するための図表である。
【0021】
塔状構造物1は、煙突や橋脚等として利用されるものであり、例えば、図1または図2のいずれかに示すように、少なくとも3本(本実施形態では3本)の筒身2と、隣り合う筒身2の側面2aと側面2aとを連結する化粧板3と、各筒身2の側面2aから塔状構造物1の外方に向かって延びるフィン4とを備えている。
【0022】
筒身2はそれぞれ、基礎5の上に立設されている。
化粧板3は、筒身2と筒身2との間に形成される隙間を覆い隠して、美観性を向上させる板状の部材であり、筒身2の長手方向に沿って筒身2の上端から下端まで連続して設けられている。
【0023】
フィン4は、各筒身2の長手方向に沿う中心軸線を結んでできた正三角形の重心(中心)との距離が最大となる筒身2の側面2aから、法線方向に延びる板状の部材であり、筒身2の長手方向に沿って筒身2の上端から下端まで連続して設けられている。また、フィン4の見つけ幅(化粧板3の表面3aに下ろした垂線に沿って塔状構造物1を外側から見たときのフィン4の幅:見かけの幅)Lは、2L/B+1≧Ud/Uの式を満たすように、すなわち、図3に示すように、渦励振による共振が最大となる風速Uが設計風速Udを越えるように(例えば、図3において1.2Uまたは1.4Uとなるように)設定され、かつ、図4に示すように、設計風速における渦励振の共振により発生する応力が許容値(所定値)以下となるように設定されている。
ここで、Bは塔状構造物1の見つけ幅(化粧板3の表面3aに下ろした垂線に沿って塔状構造物1を外側から見たときの筒身2の側面2aと側面2aとの間の最大幅:見かけの幅)、Udは塔状構造物が煙突やビルである場合には、建築基準法に定められた「設計風速」、すなわち、建築基準法施行令第87条記載の「V0:その地方における過去の台風の記録に基づく風害の程度その他の風の性状に応じて30メートル毎秒から46メートル毎秒までの範囲内において国土交通省大臣が定める風速」に「E:当該建築物の屋根の高さ及び周辺の地域に存する建築物その他工作物、樹木その他の風速に影響を与えるものの状況に応じて国土交通大臣が定める方法により算出した数値」を乗じた風速のことであり、塔状構造物が橋脚である場合には、道路橋耐風設計便覧(平成19年改訂版 第4.3章第66頁)に記載されている「設計基準風速Ud」のことである。
なお、渦励振による共振が最大となる風速Uは、U=αfBの式1を用いて求めることができる。
ここで、αは塔状構造物1の形状によって決まる係数であり、fは塔状構造物1の固有振動数、Bは塔状構造物1の見つけ幅である。
【0024】
つぎに、上記式:2L/B+1≧Ud/Uの導出過程について説明する。
まず、フィン4を全く設けないときの渦励振による共振が最大となる風速Uは、上述した式1から求めることができる。すなわち、式1’:U=αfBとなる。
また、フィン4を設けたときの渦励振による共振が最大となる風速U1も、上述した式1から求めることができる。すなわち、式2:U1=αf(B+2L)となる。
渦励振による共振が最大となる風速U1が設計風速Ud以上となるためには、式3:Ud≦U1を満たす必要がある。
式3の両辺をUでそれぞれ除すると、式4:Ud/U≦U1/Uとなる。そして、式4の右辺に式1’および式2を代入すると式:2L/B+1≧Ud/Uとなる。Ud、U、Bは既知の値なので、Lを求めることができる。
【0025】
本実施形態に係る塔状構造物1によれば、その見つけ幅(見かけの幅)を増大させるフィン4が筒身2の側面2aに設置されると、下流側に発生する渦(図2中に実線矢印で示す渦)がフィン4を備えていないものよりも大きくなり、渦励振による共振が最大になる風速Uも風速が大きくなる側へシフトする。このフィンの見つけ幅を、渦励振による共振が最大となる風速Uが設計風速Udよりも大きくなるように設定し、かつ、設計風速における渦励振の共振により発生する応力が所定値以下となるように設定すれば、設計風速以下での渦励振による共振の影響を大幅に低減でき、塔状構造物の頂部変位を低減させることができる。
これにより、従来使用していた駆動装置やTMDを不要とすることができ、製造コストを低減させることができるとともに、現場での作業を簡略化することができて、建築工期の遅延を回避することができる。
なお、図3において設計風速の左側に頂部変位が残っているが、図4に示すように、この大きさが許容値以下であれば問題ない。本実施形態に係る塔状構造物1は、図3において設計風速の左側に残る頂部変位を、許容値以下にしようとするものである。
【0026】
本発明に係る塔状構造物の第2実施形態について、図5を参照しながら説明する。図5は本実施形態に係る塔状構造物を上方から見た平面図である。
本実施形態に係る塔状構造物21は、フィン4の代わりにフィン22を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0027】
図5に示すように、フィン22は、平面視二等辺三角形状を呈するとともに、各筒身2の長手方向に沿う中心軸線を結んでできた正三角形の重心(中心)との距離が最大となる筒身2の側面2aから、法線方向に延びる部材であり、筒身2の長手方向に沿って筒身2の上端から下端まで連続して設けられている。また、フィン22の見つけ幅L1は、2L1/B+1≧Ud/Uの式を満たすように、すなわち、図3に示すように、渦励振による共振が最大となる風速Uが設計風速Udを越えるように(例えば、図3において1.2Uまたは1.4Uとなるように)設定され、かつ、図4に示すように、設計風速における渦励振の共振により発生する応力が所定値以下となるように設定されている。
なお、B、Ud、Uは、第1実施形態のところで詳しく説明したので、ここではその説明を省略する。
【0028】
本実施形態に係る塔状構造物21の作用効果は、第1実施形態に係る塔状構造物1によるものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0029】
本発明に係る塔状構造物の第3実施形態について、図6を参照しながら説明する。図6は本実施形態に係る塔状構造物を上方から見た平面図である。
本実施形態に係る塔状構造物31は、フィン4の代わりにフィン32を備えているという点で上述した第1実施形態のものと異なる。その他の構成要素については上述した第1実施形態のものと同じであるので、ここではそれら構成要素についての説明は省略する。
なお、上述した第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付している。
【0030】
図6に示すように、フィン32は、平面視半楕円形状を呈するとともに、各筒身2の長手方向に沿う中心軸線を結んでできた正三角形の重心(中心)との距離が最大となる筒身2の側面2aの大部分を覆うようにして、法線方向に延びる部材であり、筒身2の長手方向に沿って筒身2の上端から下端まで連続して設けられている。また、フィン32の見つけ幅L2は、2L2/B+1≧Ud/Uの式を満たすように、すなわち、図3に示すように、渦励振による共振が最大となる風速Uが設計風速Udを越えるように設定され、かつ、図4に示すように、設計風速における渦励振の共振により発生する応力が所定値以下となるように設定されている。ている。
なお、B、Ud、Uは、第1実施形態のところで詳しく説明したので、ここではその説明を省略する。
【0031】
本実施形態に係る塔状構造物31の作用効果は、第1実施形態に係る塔状構造物1によるものと同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0032】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で適宜必要に応じて変形実施および変更実施することができる。
例えば、上述した実施形態では、フィンの見つけ幅を、渦励振による共振が最大となる風速Uが設計風速Udを越えるように設定しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、フィンの見つけ幅を、図7に示すように、渦励振による共振が発生し始める風速Unが設計風速Ud以上となるように設定することもできる。
これにより、渦励振による共振が発生し始める風速Un、すなわち、図3における立ち上がりが、設計風速Udの右側に位置することになるので、従来使用していた駆動装置やTMDを不要とすることができ、製造コストを低減させることができるとともに、現場での作業を簡略化することができて、建築工期の遅延を回避することができる。
また、渦励振による共振が発生し始める風速Unが設計風速Ud以上となるので、設計風速Ud以下における頂部変位を更に小さくすることが出来る。
【0033】
ここで、渦励振による共振が発生し始める風速Unを設計風速Ud以上とした場合の式:2L/B+1≧Ud/Unの導出過程について説明する。
まず、フィン4を全く設けないときの渦励振による共振が発生し始める風速Unは、上述した式1から求めることができる。すなわち、式1”:Un=βfBとなる。
また、フィン4を設けたときの渦励振による共振が発生し始める風速Un1も、上述した式1から求めることができる。すなわち、式5:Un1=βf(B+2L)となる。
渦励振による共振が発生し始める風速Un1が設計風速Ud以上となるためには、式6:Ud≦Un1を満たす必要がある。
式3の両辺をUnでそれぞれ除すると、式4:Ud/Un≦Un1/Unとなる。そして、式4の右辺に式1”および式5を代入すると式:2L/B+1≧Ud/Unとなる。Ud、Un、Bは既知の値なので、Lを求めることができる。
【0034】
また、上述した実施形態では、フィンが筒身2の長手方向に沿って筒身2または化粧板の上端から下端まで連続して設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、設計風速Ud以下における渦励振の共振により発生する応力を許容値以下とすることができるものであれば、必ずしも上端から下端まで連続して設けられている必要はない。
【0035】
さらに、上述したフィンは、例えば、図8から図11に示す塔状構造物に適用することもできる。図8に示す塔状構造物61は、側面の凹凸ができるだけ小さくなるように化粧板3が配置されており、図9に示す塔状構造物71は、4本の筒身2と、これら筒身2の外側全体を覆う(取り囲む)、平面視略十字形状を呈する化粧板72とを備えている。また、図10に示す塔状構造物81は、3本の筒身2と、これら筒身2の外側全体を覆う(取り囲む)、平面視略正三角形状を呈する化粧板82とを備えており、図11に示す塔状構造物91は、4本の筒身2と、これら筒身2の外側全体を覆う(取り囲む)、平面視正八角形状を呈する化粧板92とを備えている。
【0036】
なお、フィン4,22,32は、図8に示す塔状構造物61の場合、図2、図5、図6と同様、各筒身2の長手方向に沿う中心軸線を結んでできた正三角形の重心(中心)との距離が最大となる筒身2の側面に取り付けられ、図9に示す塔状構造物71の場合、各筒身2の長手方向に沿う中心軸線を結んでできた正四角形の重心(中心)との距離が最大となる化粧板72の側面に取り付けられることになる。また、フィン4,22,32は、図10に示す塔状構造物81の場合、各筒身2の長手方向に沿う中心軸線を結んでできた正三角形の重心(中心)との距離が最大となる化粧板82の側面に取り付けられ、図11に示す塔状構造物91の場合、化粧板92の側面に一つおきに取り付けられることになる。
【0037】
また、上述した実施形態では、各化粧板の側面それぞれにフィン4,22,32を設けるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、年間を通じての風向き等を考慮して、必要な箇所のみに設けるようにすることもできる。
さらに、上述した実施形態では、3本または4本の筒身2を備えた煙突を一具体例として挙げ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1本または2本、もしくは5本以上の筒身2を備えた煙突や、橋脚として利用される塔状構造物等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 塔状構造物
2 筒身
2a 側面
3 化粧板
4 フィン
21 塔状構造物
22 フィン
31 塔状構造物
32 フィン
61 塔状構造物
71 塔状構造物
72 化粧板
81 塔状構造物
82 化粧板
91 塔状構造物
92 化粧板
100 塔状構造物
102 筒身
102a 側面
103 化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突や橋脚として利用される塔状構造物であって、
設計風速以下で渦励振の共振により発生する応力が所定値以内になるように、当該塔状構造物の見つけ幅を増大させるフィンが設けられていることを特徴とする塔状構造物。
【請求項2】
前記フィンが、当該塔状構造物の上端から下端にわたって連続して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の塔状構造物。
【請求項3】
前記フィンの見つけ幅が、渦励振による共振が発生し始める風速を設計風速よりも大きくするように設定されていることを特徴とする請求項2に記載の塔状構造物。
【請求項4】
前記フィンが、当該塔状構造物の長手方向に沿う中心軸線から放射状に延びていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の塔状構造物。
【請求項5】
煙突や橋脚として利用され、その見つけ幅を増大させるフィンを備えた塔状構造物の設計方法であって、
前記設計風速における渦励振の共振により発生する応力が、所定値以内になるように、前記フィンの見つけ幅を設定することを特徴とする塔状構造物の設計方法。
【請求項6】
渦励振による共振が発生し始める風速を設計風速よりも大きくするように、前記フィンの見つけ幅を設定することを特徴とする請求項5に記載の塔状構造物の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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