説明

塗工紙

【課題】
本発明は、坪量が45g/m以下と軽量な塗工紙にも関わらず、坪量が48g/m程度の塗工紙と同等の白紙不透明度および印刷不透明度、剛度を有する塗工紙に関する。
【解決手段】
基紙および基紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けた塗工紙であって、
前記基紙中には異なる3種類の無機粒子を含有し、前記無機粒子が次の(A)〜(C)である。
(A)ホワイトカーボン
(B)前記ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子
(C)前記ホワイトカーボンまたは前記シリカ含有無機粒子以外の無機粒子

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坪量が45g/m以下と軽量な塗工紙にも関わらず、坪量が48g/m程度の塗工紙と同等の白紙不透明度および印刷不透明度、剛度を有する軽量塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源化による環境負荷の低減、二酸化炭素排出量の削減の取り組みから、紙分野においては、従来と同程度の品質でありながら、より軽量である紙が求められている。塗工紙分野においては、高精細な印刷物を得るために、不透明度、印刷適性、印刷後の見栄え、剛度、白紙光沢度、印刷光沢度などの品質を満足する必要がある。
【0003】
塗工紙は、塗工液の塗工量や塗工層表面の平坦化処理の度合い、要求品質に応じて、アート紙(A1グレード)、塗工紙(A2グレード)、軽量塗工紙(A3グレード)、微塗工紙に分類され、A1グレードの塗工紙は、高級美術書や、雑誌の表紙、口絵、カレンダー、ポスター、ラベル、煙草包装用などの、高精細な印刷を要求されるものに使用され、A2グレードの塗工紙はカタログ、パンフレット等の見栄えが必要とされる商業印刷等に使用され、A3グレードの塗工紙および微塗工紙は、チラシ等の商業印刷等に利用されている。
【0004】
近年の不況下において、より安価な塗工紙に対する要求が高くなっている。より安価な紙とは、単位面積あたりの重量(坪量)が少ない紙である。A3グレードおよび微塗工紙においては、現在51.2g/m〜79.1g/mの坪量が一般的であり、チラシやダイレクトメール用途においては、更に軽量な48g/m〜51.2g/m程度の微塗工紙が使用されている。しかしながらこれら坪量が50g/m未満の微塗工紙は、紙厚が低いため印刷図柄が透けて見えやすく、裏面の印刷図柄が表から透けて見える裏抜け(プリントスルー)が発生する問題があった。また、紙厚が薄いと裏面の印刷インキが紙層に吸収しきれず表面にまで達し、裏面の図柄が見える裏抜け(ストライクスルー)も発生する問題があった。
【0005】
坪量が30g/m以上50g/m未満の塗工紙において不透明度を向上させるために、塗工紙の内添填料として高不透明度を有する無機粒子を含有する技術が開示されている。例えば二酸化チタンを含有する技術(特許文献1を参照)、コールドオフセット印刷用紙にてホワイトカーボンを含有する技術(特許文献2を参照)、製紙スラッジや脱墨フロスを脱水、乾燥、焼成および粉砕して製造される再生粒子やシリカ複合再生粒子凝集体を含有する技術(特許文献3を参照)があるが、いずれも十分な不透明度は得られていなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−003083号公報
【特許文献2】特開2008−231612号公報
【特許文献3】特開2007−146354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、坪量が45g/m以下と軽量な塗工紙にも関わらず、坪量が48g/m程度の塗工紙と同等の白紙不透明度および印刷不透明度、剛度を有する軽量塗工紙に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基紙および基紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けた塗工紙であって、
前記基紙中には異なる3種類の無機粒子を含有し、前記無機粒子が次の(A)〜(C)であることを特徴とする塗工紙である。
(A)ホワイトカーボン
(B)前記ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子
(C)前記ホワイトカーボンまたは前記シリカ含有無機粒子以外の無機粒子
【発明の効果】
【0009】
坪量が45g/m以下と軽量な塗工紙にも関わらず、坪量が48g/m程度の塗工紙と同等の白紙不透明度および印刷不透明度、剛度を有する軽量塗工紙が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明で好適に用いる、再生粒子または再生粒子凝集体の製造設備の概要図である。
【図2】第2燃焼炉の概要図で、(a)は縦断面図、(b)は内面の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、基紙中にホワイトカーボン、ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子、および前記ホワイトカーボンまたはシリカ含有無機粒子とは異なる無機粒子を含有するものである。
【0012】
(ホワイトカーボン)
本発明で用いるホワイトカーボンとしては、従来一般に製紙用途で使用されているものを用いることができるが、この中でも平均粒子径が10μm以上25μm以下、好ましくは12μm以上23μm以下のホワイトカーボンを用いると、より不透明度が向上しやすいため好ましい。なお、ホワイトカーボンの一次粒子径は上記平均粒子径よりも小さい(例えば0.01μm以上0.05μm以下程度)ものであるが、通常高次に凝集して二次粒子を形成している。本発明におけるホワイトカーボンの平均粒子径も、この凝集した二次粒子の平均粒子径を指す。
【0013】
ホワイトカーボンの平均粒子径が10μm未満では、パルプ繊維の間にできる大きな空隙を埋めることができないため、塗工紙の不透明度、特に上記ストライクスルーが発生して印刷不透明度が低下しやすいため好ましくない。平均粒子径が25μmを超過すると、パルプ繊維の間に抄き込みにくく粒子が脱落しやすくなるため、表面強度が低下するともに、印刷不透明度も低下しやすいため好ましくない。
【0014】
ホワイトカーボンの添加量としては、絶乾の原料パルプに対して0.01〜1.4質量%が好ましく、0.04〜1.0質量%がより好ましい。0.01質量%を下回ると、白紙不透明度および印刷不透明度が低下しやすいため好ましくない。1.4質量%を超過すると、不透明度は向上しやすいが粒子が脱落しやすく、表面強度が低下しやすいため好ましくない。
【0015】
(シリカ含有無機粒子)
シリカ含有無機粒子としては、ホワイトカーボン以外で元素としてケイ素を含有するものであれば特に限定されず、例えば合成非晶質シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。また、特許第3907688号公報や、特許第3935496号公報にて開示した、製紙スラッジや脱墨フロスを主原料に脱水・乾燥・焼成・粉砕して得られたカルシウム・シリカ・アルミナを主成分とする再生粒子や再生粒子凝集体を用いることができる。シリカと他の無機粒子とを複合させて得られた複合粒子、例えばシリカ−炭酸カルシウム複合粒子、シリカ−二酸化チタン複合粒子や、上述の特許にて開示した、シリカと前述の再生粒子とを複合させたシリカ複合再生粒子を用いてもよい。
【0016】
シリカ含有無機粒子は、平均粒子径が3μm以上10μm未満、好ましくは5μm以上8μm以下のものを用いると、より不透明度に優れた塗工紙が得られるため好ましい。平均粒子径が3μmを下回ると、粒子が小さすぎてパルプ繊維の網目から脱落しやすく歩留りが低下し、十分な不透明度向上効果がえられにくいため好ましくない。10μm以上では、パルプ繊維とホワイトカーボンとの間の間隙にシリカ含有無機粒子が吸着されにくくなり、十分な不透明度が得られにくいため好ましくない。
【0017】
シリカ含有無機粒子の添加量としては、絶乾の原料パルプに対して0.1〜3.0質量%が好ましく、0.2〜0.9質量%がより好ましい。0.1質量%を下回ると、白紙不透明度および印刷不透明度が低下しやすいため好ましくない。1.4質量%を超過すると、不透明度は向上しやすいが粒子が脱落しやすくなり、表面強度が低下しやすいため好ましくない。
【0018】
シリカ含有無機粒子として前述のシリカ複合再生粒子を用いる場合は、上述した特許文献に記載の方法で製造してもよいが、より好ましくは次のとおり、鉱酸の添加を2段階で行って製造されたシリカ複合再生粒子を用いると、より不透明度に優れた塗工紙が得られやすいため好ましい。
【0019】
<シリカ複合粒子>
次に本発明のシリカ複合粒子について、シリカ複合再生粒子を例に取り、製造方法も示しながらさらに詳説する。
【0020】
(シリカ複合処理工程)
上述のようにして得られた、製紙スラッジや脱墨フロスを主原料とする再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加・分散しスラリーとするとともに、撹拌しながら50℃〜100℃の温度範囲で、鉱酸を添加する。より望ましくは少なくとも2段階に分けて添加し、シリカ複合の反応を行う。
【0021】
本形態の再生粒子の填料用途等への好適な粒子径は、粒子径3.0μm以上10μm未満、好適には5.0μm以上8.0μm以下である。再生粒子の粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により測定した体積平均粒子径である。
【0022】
再生粒子の粒子径が3.0μmより小さいと、シリカ複合時に十分な粒度がえられないおそれがあるほか、シリカを複合させる際にガラス状に目詰まりさせるおそれがある。本発明の範囲内であると、シリカ複合反応を十分に促進できる。他方、過度に大きい粒子径では過大なシリカ複合再生粒子が生じやすく、不透明性が低下する恐れがある。
【0023】
シリカ複合は、再生粒子表面に粒子径10〜20nm(走査型電子顕微鏡による実測の粒子径)のシリカゾル粒子を生成させる反応操作である。シリカゾル粒子の粒子径は、反応時の撹拌条件、鉱酸の添加条件などによりコントロール可能である。
【0024】
本発明者等は、従来は内添する微細粒子の全細孔による細孔容積が吸油量や不透明度の指標とされていた知見を越えて、実質の吸油性は無機微粒子の細孔容積だけでなく、無機微粒子の粒子間に油を保持する能力の寄与が高いことを知見し、鋭意検討を重ね、本発明にて好適に用いることができるシリカ複合再生粒子においては、細孔半径が10,000オングストローム以下の細孔が前記の実質の吸油性に大きく寄与していることを見出している。
【0025】
本発明においてえられるシリカ複合再生粒子の細孔容積は、水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用いた測定値で、10,000Å以下の領域の細孔容積が0.30〜1.10cc/gであり、好適には0.43〜1.03cc/g、より好ましくは0.47〜1.00cc/gである。
【0026】
10,000Å以下の領域の細孔容積が0.30cc/g未満では、十分な吸油量の発現がえられず、1.10cc/gを超えると吸油量の向上が見られるものの、不透明度の低下が生じやすい。
【0027】
本発明における好適な態様においては、えられるシリカ複合再生粒子の粒子径を3.0μm以上10.0μm未満の範囲とすること、さらにはシリカ複合再生粒子に含まれる酸化物換算でのシリカの比率を6.0〜42.0質量%とすることで、高い吸油量と不透明度向上効果をえることができる。
【0028】
珪酸アルカリ水溶液に関しては特に限定されないが、珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が入手に容易である点で望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO換算)で3〜10質量%が好適である。10質量%を超えると再生粒子とシリカとが複合された複合体ではなく、再生粒子がホワイトカーボンで複合されてしまい、芯部の再生粒子の多孔性、光学的特性が発揮されなくなってしまう危険性がある。また、3質量%未満では複合粒子中のシリカ成分が低下するため、シリカ複合再生粒子が形成しにくくなってしまう。
【0029】
再生粒子または再生粒子凝集体を珪酸アルカリ水溶液に添加、分散しスラリーを調製する場合におけるスラリー濃度は、8〜14質量%が望ましい。スラリー濃度を調整することにより、形成される再生粒子のシリカ複合再生粒子の粒径がコントロールされると同時に再生粒子とシリカの組成比率が決まる。本発明で使用される鉱酸としては希硫酸、希塩酸、希硝酸などの鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格、ハンドリングの点で希硫酸が最も望ましい。さらに、希硫酸を使用する場合の添加時の濃度は、生産効率向上と複合シリカの均質性の面から4〜10N程度の濃度で鉱酸を添加することが好ましい。4N未満では反応が遅く、10Nを超えると局部的な反応が生じ、不定形や偏在するシリカ複合粒子が発生しやすい問題が生じる場合がある。また、鉱酸添加量が多いほど短時間内にシリカが析出するので、それらの条件に併せて添加速度を調整することが望ましい。5分以内の添加は、均一な反応系の構成が不十分になる。
【0030】
本発明で好適に用いる再生粒子または再生粒子凝集体は、カルシウム、アルミニウム、シリカを構成元素として含有しているために、過度の濃度の鉱酸添加は、再生粒子の変質を生じる恐れがある。
【0031】
前述のように、本発明は、再生粒子または再生粒子凝集体に対して珪酸アルカリ水溶液を固形分比で、100:5から100:15の割合で添加・分散しスラリーとするとともに、撹拌しながら50〜100℃の温度範囲で、鉱酸を少なくとも2段階に分けて添加し、シリカ複合の反応を行うものである。
【0032】
再生粒子または再生粒子凝集体に対する珪酸アルカリ水溶液の割合が、固形分比で100:5より少ないと、えられるシリカ複合再生粒子のシリカ複合効果が低く不透明性の向上効果がえられにくく、100:15を超える割合では、吸油量が増加する傾向が顕著になるため、本件発明において好適に用いられる塗工紙の基紙として用いた場合に塗工液の基紙への浸透が過度になり、塗工面の平坦性や基紙表面の複合性が損なわれ、印刷時の湿し水の吸収性にムラが発生して断紙しやすくなる可能性がある。
【0033】
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加する段階において、珪酸アルカリ水溶液の温度を50℃以上の温度に加温することもできるし、その後に加熱することもできる。予め、珪酸アルカリ水溶液の温度を50℃以上の温度に加温した状態で、多孔性の再生粒子を添加すると、加熱による流動性が向上するため、スラリーを均質化させることが容易になり、より均質な珪酸アルカリおよび再生粒子の混合スラリーをえることができる。
【0034】
他方で、均質化した珪酸アルカリと再生粒子のスラリーを調製した後に、加熱撹拌することもできる。この場合の熱源としては、公知の熱源が利用できるが、例えば工場内の生蒸気(例として13kg/m、120℃)を吹き込むことにより、昇温時間の短縮が図れるとともに、再生粒子スラリーを添加した際の温度低下を防ぎ、迅速に昇温と反応を進めることが可能になり、生産効率向上が図れる。
【0035】
本発明でシリカ複合再生粒子を製造する反応温度に関しては、50〜100℃のスラリー温度範囲、特に50〜98℃のスラリー温度範囲が望ましい。本発明者らの鋭意検討の結果から、本発明に使用する再生粒子との反応温度はシリカの生成、結晶成長速度および形成されたシリカ複合再生粒子の力学的強度に影響を及ぼす。反応温度が50℃未満ではシリカの生成・成長速度が生じないかまたは遅く、シリカ複合再生粒子のシリカ複合性に劣り、充分に複合しにくく、填料内添紙の抄造時にかかる剪断力で複合が壊れやすい。100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならないため反応工程が複雑になってしまう。しかも、過度に反応が進み、緻密なシリカ複合再生粒子形態となり、えられるシリカ複合再生粒子の不透明度が低下し目的のものが行われにくい。
【0036】
本発明では、鉱酸の少なくとも2段の添加と、その際の温度管理を行うのが望ましい。すなわち、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー温度が50〜75℃であり、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー温度が少なくとも第1段階目よりも10℃以上昇温することが望ましい。具体的に望ましい温度条件としては、第1段階の液温を50〜75℃、第2段階を70以上〜100℃と鉱酸の添加段数に併せて昇温させること、反応の最終段階で90℃以上98℃以下の温度状態にすることであり、これらの温度条件によって、より均質なシリカ複合再生粒子をえることができる。
【0037】
最終反応液のpHは8.0〜11.0が好ましく、8.3〜10.0がより好ましく、8.5〜9.0が最も好ましい。
【0038】
従来の珪酸アルカリと鉱酸を反応させてえられるホワイトカーボンの製造においては、珪酸アルカリと鉱酸の反応を完了させるため、pH5.5〜7.0になるまで硅酸アルカリ中に鉱酸を添加する方法が採用されているが、pHが7.0以下と酸性領域になるまで鉱酸を添加すると、再生粒子に含まれるカルシウム成分が水酸化カルシウムに変化しやすくなり、えられるシリカ複合再生粒子の粒子径が過度に低下したり、形状が不均質になり、紙への歩留り低下や紙粉の発生、十分な不透明性がえられにくくなるため好ましくない。pHが11.0を超えると、硅酸アルカリと鉱酸の反応が鈍り、再生粒子表面にシリカが複合しにくくなるため、十分な不透明性がえられにくい問題が生じやすい。
【0039】
鉱酸の添加を1段階で行う場合、鉱酸の添加時間を、pHが1低下するのに40分以上添加時間がかかるように添加量を設定することが好ましい。
【0040】
本発明において前述のように鉱酸は2段階以上で添加するのが望ましい。この場合、各段階における鉱酸の添加量を均等に添加することが均質なシリカ複合をえるうえで好ましい。また、1段階の添加(硅酸アルカリ水溶液に対して鉱酸が20〜50%の中和率となるまでの添加)後に、5分〜20分程度の保留時間を作ることで、シリカ複合反応に保留状態を設け、再生粒子表面に均質にシリカを複合させ、第2段階目の鉱酸添加により、さらにシリカの積層複合化を促進させることが可能になり、再生粒子の表面に、より均一にシリカを複合することができる。
【0041】
1段階の鉱酸添加時間は、10分〜45分の時間がかかるように添加量を設定することが、再生粒子表面にシリカを均等に複合させるにおいて好ましい。2段階以上で鉱酸を添加する場合も、鉱酸の添加時間をpHの変動においてpHが1低下するのに10〜120分程度の時間がかかるように添加量を設定することが、均質なシリカ複合に好ましい。
【0042】
本反応工程における撹拌は、例えば未反応ゾーンを作らないため、撹拌羽根を逆転させるなどして乱流を生じさせ、あるいは邪魔板を撹拌槽内に設けるなどの撹拌手段を採用することが好ましい。
【0043】
えられるシリカ複合再生粒子の粒子径は3.0μm以上10.0μm未満、好ましくは5.0〜8.0μmである。シリカ複合再生粒子は、好ましくは、カルシウム、ケイ素およびアルミニウムを、酸化物換算で40〜83:6〜42:7〜18の質量%割合とする。この成分分析は、堀場製作所製のX線マイクロアナライザーを用い、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い、構成成分より酸化物換算した値である。
【0044】
シリカ複合再生粒子の粒子径が3.0μm未満では、シリカ複合の効果が十分に発現できず、吸油量及び不透明度の向上効果が得にくい。シリカ複合再生粒子の粒子径が10.0μm以上では、塗工紙用の基紙に用いる填料としては、塗工液の吸収能力が過大となり、塗工層表面の平坦性を阻害するだけでなく、引張り、引裂き等の所謂紙質強度の低下や紙粉、抄紙設備の汚損をまねく問題が発現しやすい。
【0045】
シリカ成分を複合させた後における、酸化物換算でのシリカ(珪素)の比率を6.0〜42.0質量%とすることで、えられるシリカ複合再生粒子を用いた塗工紙の印刷不透明度の向上効果をえることができる。
【0046】
好適にはシリカ成分の割合を38.0〜42.0質量%、さらに好適には39.0〜42.0質量%とすることが好ましい。シリカ成分の比率が6.0質量%未満では、十分にシリカ複合が行なえていないため、吸油量、不透明度の向上がえられにくく、シリカ成分の比率が42.0質量%を超えると微細なシリカ粒子の充填が過度となり吸油量、不透明度の低下をまねく問題が生じる場合がある。不透明度が低下すると、塗工紙においては填料含有量を増加させる必要があり、より繊維同士の結合を阻害しやすくなり、印刷時の断紙を防止する効果が得られにくいため好ましくない。
【0047】
シリカ複合による付随効果として、シリカ複合により、白色度が向上する。白色度向上により白紙不透明度は低下する傾向が生じるものの、高い吸油量を有するシリカ複合再生粒子を用いることで、塗工紙に用いられるオフセットインクを用紙内部で吸収できるため、印刷不透明度をさらに向上させることができる。
【0048】
シリカを再生粒子に複合させることで、再生粒子のもつカチオン性とシリカのアニオン性により繊維間結合を適度に阻害し、嵩高性を発揮する。
【0049】
(用途または適用)
本発明のシリカ複合再生粒子は、元来ポーラスな再生粒子の表面をシリカで複合したものであることから比表面積が大きく、これを内添用の填料として使用すると、紙厚、白色度および不透明度が高い塗工紙をえることができる。
【0050】
さらに、シリカ複合再生粒子の吸油量は、50〜180ml/100gの範囲が好ましい。これは、この範囲のシリカ複合再生粒子を内添填料として使用する場合、紙層中において、シリカ複合再生粒子が紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収し、用紙の印刷不透明度が低下するのを抑制し、また、インクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収することで、インク乾燥性やニジミの防止効果が顕著になるためである。一方、吸油量が50ml/100g未満の場合には上記の効果が十分でなく、シリカ複合再生粒子がインクの吸収・乾燥性を阻害する傾向が生じる場合がある。また吸油量が180ml/100gを超えると、インクの吸収性が高いためインクの沈みこみ、いわゆる発色性が劣る問題が生じる場合があるだけでなく、印刷時に湿し水を吸収しやすくなり、断紙を防止しにくいため好ましくない。
【0051】
シリカ複合粒子の吸油量は、シリカ複合反応工程における反応温度、添加時間、保留時間、pH、粘度調整や、用いる再生粒子の燃焼手段、粒子径などにより調整可能であるが、シリカ複合反応において10,000Å以下の細孔容積が0.30〜1.10cc/gとなるように調整すると、高い吸油量を示し、紙の不透明度を向上できるシリカ複合再生粒子を得ることができ、このシリカ複合再生粒子を含有したシリカ複合再生粒子内添紙においては、高い不透明度を得ることができる。
【0052】
以上、シリカ含有粒子として好適に用いるシリカ複合粒子の製造方法を詳述した。前述のとおり、シリカと複合させる粒子としては、好ましくは再生粒子または再生粒子凝集体であるが、他にも従来一般に製紙用途で使用する填料を用いることができる。すなわち、炭酸カルシウム(重質および軽質)、クレー、タルクなどを用いても良い。本発明においては、これら無機粒子を上述の方法でシリカ複合して得られたシリカ複合粒子をシリカ含有無機粒子として用いることができる。
このようにシリカを複合した粒子は、粒子表面がシリカで複合されているためワイヤー磨耗度が低くでき、填料として好適に使用することができる。紙に内添する無機粒子においては、粒子が硬いと抄紙機のワイヤー(網部)を傷つけやすくなり、ワイヤー寿命を縮めるため好ましくない。しかしながら本発明のごとく、ワイヤーを傷つけにくい柔らかい無機粒子である、シリカで複合した無機粒子、好ましくはシリカ複合再生粒子やシリカ複合再生粒子凝集体を用いることで、ワイヤー寿命を延長させることができる。
【0053】
ワイヤー磨耗度は、フィルコン式ワイヤー磨耗度試験で評価することができる。シリカと複合させる無機粒子として、磨耗度が約80mgの再生粒子凝集体を用いると、シリカ複合により磨耗度を約20mgにまで低下させることができ、無機粒子として充分に使用可能な粒子を得ることができる。尚、重質炭酸カルシウムのワイヤー磨耗度は100mg以上、軽質炭酸カルシウムは約50mg、ホワイトカーボンは約15mgであり、おおむね50mg以下であれば、無機粒子として使用できる。
【0054】
上述のとおり、シリカ含有無機粒子として、シリカおよびシリカ以外の無機粒子からなる複合粒子、好ましくはシリカ複合再生粒子またはシリカ複合再生粒子凝集体を用いると、高い不透明度を得ることができるため、坪量が42g/mと軽量な塗工紙であっても、坪量が48g/m程度の塗工紙と同程度の白紙不透明度、印刷不透明度および剛度を有する塗工紙を得ることができる。
【0055】
(ホワイトカーボンまたはシリカ被覆再生粒子とは異なる無機粒子)
本発明においては、前記ホワイトカーボン、ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子に加えて、前記ホワイトカーボン、ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子とは異なる第三の無機粒子を含有する必要がある。
【0056】
前記第三の無機粒子としては、従来一般に製紙用途で使用されている無機粒子を用いることができる。無機粒子としては例えば、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー、焼成クレー、合成ゼオライト等の無機粒子が挙げられる。
【0057】
前記第三の無機粒子としては、粒子径が0.1μm以上3.0μm未満であることが好ましく、0.3μm以上2.5μm未満であることがさらに好ましい。平均粒子径が0.1μmを下回ると、パルプ繊維間の隙間や、パルプ繊維と前記ホワイトカーボンまたはシリカ含有無機粒子との間の隙間に第三の無機粒子がが保持されにくく歩留まりが低下し、不透明度が低下しやすいため好ましくない。3μm以上では不透明度が十分に向上しにくいだけでなく、前記シリカ含有無機粒子と粒子径が重複し、粒子径3μm以上の粒子の数が多くなりすぎて無機粒子が十分に基紙に固着されにくくなるため、表面強度が低下する傾向がある。
【0058】
前記第三の無機粒子の添加量としては特に限定されないが、前記ホワイトカーボンおよびホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子とあわせて、基紙中の灰分で9〜14質量%、好ましくは10〜13質量%となるよう調整することが好ましい。灰分が9質量%を下回ると、十分な不透明度が得られにくいため好ましくない。14質量%を超過すると、不透明度は向上しやすいが粒子が脱落しやすくなり、表面強度が低下しやすいだけでなく、剛度も低下する傾向があり好ましくない。
【0059】
上述のごとく、基紙中に無機粒子として、ホワイトカーボン、ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子、ホワイトカーボンまたはシリカ含有無機粒子以外の無機粒子の3種類を併用することで、坪量が42g/mと低くても、坪量48g/mと同程度の白紙不透明度および印刷不透明度を有する塗工紙が得られる。
【0060】
特に、平均粒子径が10μm以上25μm以下、好ましくは12μm以上23μm以下のホワイトカーボンと、平均粒子径が3μm以上10μm未満、好ましくは5μm以上8μm以下のシリカ含有無機粒子と、平均粒子径が0.1μm以上3.0μm未満、好ましくは0.3μm以上2.5μm未満である、前記ホワイトカーボン、ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子とは異なる無機粒子を基紙中に含有させることで、これら3種類の無機粒子が基紙中に留まりやすくなり、白紙不透明度および印刷不透明度に優れた塗工紙が得られやすい。これは、パルプ繊維間の大きな空隙に、粒子径が比較的大きいホワイトカーボンがまず歩留まり、繊維およびホワイトカーボンとの比較的中程度の隙間に、中程度の粒子径を有するシリカ含有無機粒子が留まり、繊維、ホワイトカーボンおよびシリカ含有無機粒子との間の比較的小さな隙間に、比較的粒子径が小さいホワイトカーボンまたはシリカ含有無機粒子以外の無機粒子が留まることで、特に不透明度に優れた塗工紙が得られるものと考えられる。そのため、これら3種類の粒子は、それぞれ平均粒子径が異なっていることが好ましく、さらにはそれぞれ上述の範囲内とすることが好ましい。
【0061】
また、絶乾の原料パルプに対してホワイトカーボンの含有量を0.01〜1.4質量%、好ましくは0.04〜1.0質量%とし、シリカ含有無機粒子の含有量を0.1〜3.0質量%、好ましくは0.2〜0.9質量%とし、前記ホワイトカーボンまたはシリカ含有無機粒子とは異なる無機粒子の含有量を、前記ホワイトカーボンおよびホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子とあわせて、基紙中の灰分で9〜14質量%、好ましくは10〜13質量%となるよう含有させることで、より白紙不透明度および印刷不透明度に優れた塗工紙が得られやすい。
【0062】
(パルプ)
本発明においては、上述のごとく、異なる3種類の無機粒子、好ましくは平均粒子径が異なる3種類の無機粒子を基紙中に含有させる技術であり、このような異なる3種類の無機粒子を基紙中に効率的に含有させるためには、基紙に用いるパルプ繊維として、柔軟性が高く繊維長が短いパルプ繊維を用いることが望ましい。すなわち、粒子径の大きい無機粒子はパルプ繊維に引っ掛かって基紙中に抄き込まれ易い一方で、容易に脱落して表面強度の低下に繋がりやすい。このため、粒子径の大きい無機粒子に絡みやすく柔軟性の高いパルプ繊維を用いることが好ましい。また、粒子径が小さい無機粒子はパルプ繊維の網目を通過して基紙中に残留しにくい。このため、粒子径の小さい無機粒子が留まりやすいよう繊維の網目を小さくできる、より短繊維のパルプ繊維を用いることが好ましい。
【0063】
本発明における短繊維のパルプとは、繊維長が0.2〜1.2mm程度のものを言い、この範囲の繊維が、パルプ繊維のうち75〜90%含まれていることが好ましい。
【0064】
0.2mm未満の繊維長を有する繊維が多く、0.2〜1.2mmの範囲に含まれる繊維が75%未満である場合は、前述した異なる3種類の無機粒子がパルプ繊維間の網目に残留しにくく、不透明度に劣る可能性があるため好ましくない。
1.2mmを超える繊維長を有する繊維が多く、0.2〜1.2mmの範囲に含まれる繊維が75%未満である場合においても、上述のとおり無機粒子が残留しにくく不透明度に劣る可能性があるだけでなく、パルプ繊維が目立ち見栄えに劣る塗工紙となりやすいため好ましくない。
また、パルプ繊維に占める0.2mm未満の繊維の割合が25%を超過する場合は、充分な剛度が得られにくいため好ましくない。
【0065】
ここで繊維長とは、塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、FiberLab.(Kajaani社)を用いて測定した中心線繊維長を繊維長とし、このパルプ繊維について、重さ加重の繊維長分布を求め、繊維長0.05mmごとに集計したものである。
【0066】
上述のとおり、無機粒子を3種類含有する基紙において用いるパルプは、繊維長が0.2〜1.2μmと短いものが、パルプ全体の75〜90%であることが好ましい。上記の短繊維長パルプとしては、パルプを機械的に叩解してフィブリル化して調製しても良いが、好ましくは市中で一旦使用され、古紙として回収後に再生処理して得られた再生古紙パルプを用いることが好ましい。古紙パルプに含まれる繊維は、市中での使用や再生処理によりパルプ繊維が切れて短くなるだけでなく、使用時や再生処理においてパルプ繊維が傷つきフィブリル化し、高い柔軟性を有する。柔軟でありかつ繊維長が短い古紙パルプを用いることで、上述した、粒子径が異なる3種類の無機粒子を基紙に留めやすく、かつ無機粒子が脱落しにくく表面強度に優れた塗工紙が得られるため好ましい。繊維の柔軟性は繊維のフィブリル化が進むことで向上し、繊維のフィブリル化は、例えばFiberLab.(Kajaani社)を用いて測定したフィブリル化率(Fibrillation)により評価することができる。このフィブリル化率は4.3〜5.8%であることが好ましく、4.5〜5.1%であることがさらに好ましい。フィブリル化率が4.3%を下回ると、無機粒子が繊維に保持されにくく表面強度が低下しやすくなる。5.8%を超過すると、繊維が柔らかくなりすぎて剛度に劣りやすくなる。
【0067】
古紙パルプのなかでも、新聞古紙から再生して得られた新聞古紙パルプが、特にパルプ繊維の柔軟性が高く繊維長が短いため好ましい。新聞古紙はリサイクル率が高いため、新聞古紙に含まれるパルプは市中での使用と古紙パルプへの再生処理を数回にわたって経ており、特に柔軟でありかつ繊維長が短いパルプ繊維となっている。
【0068】
上記古紙パルプ以外で本発明で用いるパルプには特に限定はないが、好ましくは、填料としてホワイトカーボン含む新聞用紙を離解・脱墨・漂白して得られた新聞古紙パルプを用いると、本発明で用いるホワイトカーボンとして、新聞古紙パルプから持ち込んだホワイトカーボンを使用できるため好ましい。
【0069】
但しこの場合、上述のとおり基紙中のホワイトカーボン含有量が基紙に対して0.01〜1.4質量%となるよう、新聞古紙パルプの含有量や新聞古紙パルプ中に含まれるホワイトカーボンの割合を調整することが好ましい。
【0070】
全パルプに対する新聞古紙パルプの含有量は、質量換算で絶乾パルプのうち5〜70質量%が好ましく、20〜40質量%がより好ましい。5質量%を下回ると無機粒子が脱落しやすく表面強度に劣るため好ましくない。70質量%を超過すると基紙が柔軟になりすぎて紙腰のない塗工紙となり、例えば印刷後に印刷物が揃わずに梱包しにくいなど、印刷作業性が低下しやすいため好ましくない。
【0071】
上記新聞古紙パルプ以外も、一般に製紙用途で使用されている、化学パルプや機械パルプを使用した古紙から再生される古紙パルプも使用することができる。すなわち、雑誌古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、上白古紙等から製造される離解・脱墨古紙パルプ、離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0072】
上述のとおり、古紙パルプは柔軟性が高い一方で、剛度が低く、紙腰に劣りやすい。このため、上記古紙パルプに加えて、繊維長が長く強度が高い針葉樹からなるパルプを併用することが好ましい。針葉樹パルプの中でも、より繊維が長く強度に優れた針葉樹晒クラフトパルプを用いると、より紙腰に優れた塗工紙が得られやすい。加えて、針葉樹パルプ、特に針葉樹晒クラフトパルプは繊維長が長いため、繊維長の短いパルプ繊維の歩留まりを向上させやすく、ひいては繊維長の短いパルプ繊維による無機粒子の歩留まり向上をも図ることでがきやすいため好ましい。
【0073】
このような針葉樹パルプは、上述の繊維長において1.2〜3.2mmと長いものが、パルプ全体の50〜70%であることが好ましい。
1.2mm未満の繊維長を有する繊維が多く、1.2〜3.2mmの範囲に含まれる繊維が50%未満である場合は、前述した短繊維長のパルプが多いため充分な剛度が得られにくいため好ましくない。
3.2mmを超える繊維長を有する繊維が多く、1.2〜3.2mmの範囲に含まれる繊維が50%未満である場合においても、上述のとおり繊維の網目に無機粒子が残留しにくく不透明度に劣る可能性があるだけでなく、パルプ繊維が目立ち見栄えに劣る塗工紙となりやすいため好ましくない。
また、パルプ繊維に占める1.2mm未満の繊維の割合が50%を超過する場合は、充分な剛度が得られにくいため好ましくない。
【0074】
このような繊維長1.2〜3.2mmの針葉樹パルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)の含有量としては、絶乾質量換算で、基紙中のパルプ100質量%に対して5〜25質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましい。5質量%を下回ると繊維長が短いパルプ繊維の歩留まりが低下しやすく、無機粒子による不透明度向上効果が低下しやすいため好ましくない。25質量%を超過すると、長い繊維を有するパルプが塗工紙上に目立ちやすく、見栄えが低下しやすい傾向がある。
【0075】
上記古紙パルプおよび針葉樹パルプ(針葉樹晒クラフトパルプ)以外にも、一般に製紙用途で使用できるパルプを用いることができる。
【0076】
上述のとおり、絶乾の原料パルプに対してホワイトカーボンの含有量を0.01〜1.4質量%、好ましくは0.04〜1.0質量%とし、シリカ含有無機粒子の含有量を0.1〜3.0質量%、好ましくは0.2〜0.9質量%とし、前記ホワイトカーボンまたはシリカ含有無機粒子以外の無機粒子の含有量を、前記ホワイトカーボンおよびシリカ含有無機粒子とあわせて、基紙中の灰分で9〜14質量%、好ましくは10〜13質量%となるよう含有させることに加えて、塗工紙を離解して得られたパルプ繊維のフィブリル化率を4.3〜5.8%、好ましくは4.5〜5.1%とすることで、特に高い不透明度と剛度が得られるため好ましい。さらに加えて、繊維長が0.2〜1.2μmと短いパルプ繊維が、パルプ全体の75〜90%であると、さらに高い不透明度を有する塗工紙が得られやすいため好ましく、さらには繊維長が1.2〜3.2mmと長いパルプ繊維が、パルプ全体の50〜70%であると、特に高い不透明度と剛度が得られるため好ましい。
【0077】
(下塗り塗工)
基紙上に顔料塗工層を設ける前に、澱粉やポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子からなる下塗り塗工液を塗布して下塗り塗工層を設けても良い。しかしながら本発明においては、これら水溶性高分子を塗工することで不透明度が低下しやすいため、下塗り塗工層は設けないことが好ましい。
【0078】
(上塗り塗工)
本発明においては、前記基紙上に、顔料および接着剤を主成分とする顔料塗工層を設ける。
【0079】
(顔料)
顔料としては、一般に製紙用途で用いる塗工顔料を使用することができる。例えば軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、クレー、焼成クレー、合成ゼオライト、シリカ等の無機填料や、ポリスチレンラテックス、尿素ホルマリン樹脂等、またはこれらの粒子を複合させた複合粒子として、シリカ複合炭酸カルシウムやシリカ複合再生粒子等を用いることができる。これら顔料は1種類、または2種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0080】
この中でも、より不透明度の高い塗工顔料である、シリカを含有する無機粒子を用いることが好ましい。基紙中に無機粒子としてホワイトカーボンおよびシリカ含有無機粒子を併用し、かつ顔料としてシリカ含有無機粒子を使用することで、基紙および塗工層ともに不透明度が高くなることに加えて、基紙および塗工層のいずれも印刷インキの吸収性に優れるため、不透明度、特に45g/m以下と低米坪であってもストライクスルーを防止できる印刷不透明度に優れた塗工紙が得られるため好ましい。
【0081】
シリカ含有無機粒子としては、上述の填料と同様に、元素としてケイ素を含有するものであれば特に限定されず、例えばホワイトカーボン、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカなどが挙げられる。また、特許第3907688号公報や、特許第3935496号にて開示した、製紙スラッジや脱墨フロスを主原料に脱水・乾燥・焼成・粉砕して得られたカルシウム・シリカ・アルミナを主成分とする再生粒子や再生粒子凝集体や、シリカと他の無機粒子とを複合させて得られた複合粒子、例えばシリカ−炭酸カルシウム複合粒子、シリカ−二酸化チタン複合粒子、シリカ−再生粒子複合粒子、シリカ−再生粒子凝集体複合粒子などを用いてもよい。
【0082】
(塗工量)
本発明においては、坪量45g/m以下であっても48g/mと同程度の不透明度を得るために、塗工量を片面あたり2.5〜4.5g/m、好ましくは2.5〜4.0g/mと低塗工量にすることが好ましい。塗工量が片面あたり2.5g/mを下回ると白紙光沢度が低下しやすく、見栄えに劣る塗工紙となり易いため好ましくない。塗工量が4.5g/mを超過すると白紙光沢度は向上しやすいが、一方で緊度が高くなり剛度が低下しやすいため好ましくない。
【0083】
(塗工設備)
上述のごとく、塗工量が片面あたり2.5〜4.5g/mと低い塗工紙においては、塗工ムラが発生すると印刷インキの吸収性にムラが発生し、特にインキを多く吸収した部分でインキが塗工紙の裏にまで浸透してストライクスルーが発生し、印刷不透明度が低下しやすい傾向がある。
【0084】
このため本発明においては、低塗工量でかつ均一に塗工を行うために、フィルム転写型のロールコーターを用いることが好ましい。フィルム転写型のロールコーターとしては、例えば2ロールサイズプレスコーターやゲートロールコーター、ブレードメタリングサイズプレスコーター、ロッドメタリングサイズプレスコーター、シムサイザーやJFサイザー等が挙げられる。従来一般に用いるブレードコーターやエアーナイフコーターなどは、塗工面の平滑性が高い一方で塗工厚みにムラが発生しやすいため、本発明のごとく低塗工量の塗工紙に用いることは好ましくない。
【0085】
(塗料物性)
上述のごとく、均一に低塗工量で塗工するには、フィルム転写型ロールコーターを用いることが好ましいが、フィルム転写型ロールコーターを用いて塗工量を片面あたり2.5〜4.5g/m塗工するためには、塗料の保水度を30〜135g/mとすることが好ましい。保水度が30g/mを下回ると、均一な塗工層が得られやすい一方で、基紙への接着剤の浸透が発生しにくく表面強度が低下しやすくなる。135g/mを超過すると、塗料が基紙に転写しにくくなり均一な塗工層が得られず、白紙光沢度が低下しやすいため好ましくない。
【0086】
なお、本発明で言う保水度とは、株式会社マツボー社製の保水度計(型番:AA−GWR)にて測定した保水度を言う。
【0087】
(接着剤)
上述の保水度30〜135g/mの塗料を調製するためには、従来一般の保水剤を用いて保水性を調製することができるが、本発明においては接着剤として澱粉および/または澱粉誘導体からなる接着剤を多く用いることで、上記保水性の調整と、基紙に塗料中の澱粉が沈み込んで表面強度向上効果を得やすいため好ましい。
【0088】
(澱粉および/または澱粉誘導体)
澱粉および/または澱粉誘導体としては、従来一般に製紙用途で用いるものを使用することができる。すなわち、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉、生澱粉などの澱粉またはその誘導体等、一般に製紙用途で用いる澱粉又はその誘導体等を用いることができる。
【0089】
澱粉および/または澱粉誘導体の含有量は、顔料100質量部に対して質量換算で、10〜40質量部が好ましく、20〜30質量部がより好ましい。10質量部を下回ると保水度が低下して基紙に対する接着性に劣りやすく、表面強度が低下しやすいため好ましくない。40質量部を超過すると、保水度が高くなりすぎ塗料が基紙に転写しにくいため、白紙光沢度が低下しやすい傾向がある。
【0090】
また、上記澱粉および/または澱粉誘導体に、スチレン成分が25〜35質量%およびブタジエン成分が40〜50質量部であるスチレン−ブタジエンラテックスを併用することが好ましい。上記組成のスチレン−ブタジエンラテックスを含有させることで、より白紙不透明度および印刷不透明度を維持したまま表面強度を向上させやすいための好ましい。
【0091】
スチレン成分が35質量部を超過したり、ブタジエン成分が40質量部を下回ると、基紙に対する接着性が低下するため、基紙中の無機粒子が脱落しやすくなり、表面強度に劣りやすいため好ましくない。スチレン成分が25質量部を下回ったり、ブタジエン成分が50質量部を超過すると、基紙への沈み込みが発生しやすくなるため塗工層の表面の脱落が発生しやすくなり、表面強度が低下しやすい。
【0092】
特に本発明のごとく、3種類の異なる粒子径を有する無機粒子を基紙に含有させる場合、より大きな無機粒子とパルプ繊維との間に、より粒子径の小さい無機粒子が補足されて無機粒子の歩留まりが向上するが、一方で粒子径の大きな無機粒子が脱落した場合、その周辺に保持されている粒子径がが小さい無機粒子も脱落しやすくなり、部分的に不透明度が低下する可能性がある。このため、塗工層の接着剤には、基紙中の無機粒子をパルプ繊維に保持する機能も必要とされる。このため、塗料中の澱粉含有量を上述のごとく10〜40質量部と多く含有させることが好ましい。
【0093】
上述のごとく、本発明においては接着剤として、澱粉および/または澱粉誘導体を顔料に対して質量換算で10〜40質量部、好ましくは20〜30質量部と、スチレン成分が25〜35質量%、好ましくは30〜35質量%、およびブタジエン成分が40〜50質量%、好ましくは40〜45質量%であるスチレン−ブタジエンラテックスを顔料に含有することで、基紙中の無機粒子の脱落を防止しやすい、表面強度に優れた塗工紙が得られやすいため好ましい。
【0094】
上記澱粉および/または澱粉誘導体以外にも、接着剤として一般に製紙用途で用いる接着剤を使用することができる。すなわち、カゼイン、大豆蛋白等の蛋白質類;メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、スチレン−メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス等の共役ジエン系ラテックス、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルの重合体ラテックス若しくは共重合体ラテックス等のアクリル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル重合体ラテックス等のビニル系ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体ラテックスをカルボキシル基等の官能基含有単量体で変性したアルカリ部分溶解性又は非溶解性のラテックス等のラテックス類;ポリビニルアルコール、オレフィン−無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂系接着剤;酸化澱粉、陽性化澱粉、エステル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体等の、通常製紙用途に用いられる接着剤が挙げられ、これらの中から一種又は二種以上を適宜選択して併用することができる。
【0095】
上述のとおり、絶乾の原料パルプに対してホワイトカーボンの含有量を0.01〜1.4質量%、好ましくは0.04〜1.0質量%とし、シリカ含有無機粒子の含有量を0.1〜3.0質量%、好ましくは0.2〜0.9質量%とし、前記第三の無機粒子の含有量を、前記ホワイトカーボンおよびホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子とあわせて、基紙中の灰分で9〜14質量%、好ましくは10〜13質量%となるよう含有させることに加えて、塗工紙を離解して得られたパルプ繊維のフィブリル化率を4.3〜5.8%、好ましくは4.5〜5.1%とすることおよび、繊維長が0.2〜1.2μmと短いパルプ繊維が、パルプ全体の75〜90%であり、繊維長が1.2〜3.2mmと長いパルプ繊維が、パルプ全体の50〜70%であり、さらに接着剤としてスチレン成分が25〜35質量%およびブタジエン成分が40〜50質量部であるスチレン−ブタジエンラテックスを用いると、さらに高い不透明度を有する塗工紙が得られやすいため好ましく、加えて澱粉および/または澱粉誘導体を顔料に対して質量換算で10〜40質量部、好ましくは20〜30質量部を用いると、さらに高い不透明度を有する塗工紙が得られやすいため好ましい。特に塗工量が片面あたり2.5〜4.5g/mと少ない塗工紙においては、上述のとおり澱粉および/または澱粉誘導体を10〜40質量部含有させることで塗料の保水度を30〜135g/mとすることができ、フィルム転写型ロールコーターを用いて塗工しても、表面強度および白紙光沢度に優れた塗工紙が得られやすいため好ましい。
【実施例】
【0096】
次に、本発明の塗工紙を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
まず、原料パルプとして、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、新聞古紙パルプ(NDIP)を表4に記載の割合(質量比)で混合し、このパルプ100質量部(絶乾量)に対して、表4に記載の種類と量となるようホワイトカーボン、再生粒子およびシリカ複合再生粒子と、表に記載の灰分となるよう炭酸カルシウムを含有させ、各々固形分で、内添サイズ剤(品番:AK−720H、ハリマ化成(株)製)0.02質量部、カチオン化澱粉(品番:アミロファックスT−2600、アベベジャパン(株)製)1.0質量部、及び歩留向上剤(品番:NP442、日産エカケミカルス(株)製)0.02質量部を添加してパルプスラリーを得た。なお、比較例1ではホワイトカーボンを含有せず、比較例2ではシリカ含有無機粒子を含有せず、比較例3ではホワイトカーボンおよびシリカ含有無機粒子以外の無機粒子を含有しなかった。
【0098】
(無機粒子)
表4に記載した無機粒子は次のとおりであり、表中の「再生粒子」は再生粒子を指し、「シリカ複合」はシリカ複合再生粒子を指す。なお、シリカ複合再生粒子は、次の製造方法で得られた再生粒子を、次のとおりシリカ複合して得た。
【0099】
[再生粒子の製造]
被処理物(原料)として、製紙スラッジまたは脱墨フロスを予め分別して用い、脱水工程を経て、図1および図2の製造設備により、表1に示す条件にて、有機成分の熱処理工程、第1燃焼工程および第2燃焼工程を適宜用い順次経て、湿式粉砕処理を施し、再生粒子をえた。製造例2、3および製造例6、7の有機成分の熱処理工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、この内熱キルン炉一端の原料供給口から、製紙スラッジを供給するとともに熱風を吹き込む並流方式を採用した。
【0100】
また、第1燃焼工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉である。さらに、第2燃焼工程において用いた外熱キルン炉は、本体が横置きで中心軸周りに回転する外熱キルン炉であり、この外熱キルン炉としては、特に内部に平行リフターを有する外熱電気方式のキルン炉を採用した。湿式粉砕処理は、セラミックボールミルを用いて行った。製造例4における脱墨フロスは、上級古紙脱墨フロスを製紙スラッジに混在する前に予め分別して用いた。
【0101】
1次燃焼温度は、1次燃焼炉出口温度を測定した。2次燃焼温度は、2次燃焼炉出口温度を測定した。酸素濃度は、1次燃焼炉出口酸素濃度、2次燃焼炉出口酸素濃度を測定した。
【0102】
[シリカ複合再生粒子の製造]
表2に示す条件で、珪酸アルカリ水溶液として珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)38%濃度、再生粒子スラリー20%濃度を混合し、希釈水を加え表2に示すとおり珪酸アルカリと再生粒子からなるスラリーを所定の反応開始濃度、反応開始pHに調整したのち、鉱酸として所定規定度の硫酸を添加、撹拌しシリカ複合再生粒子を製造した。スラリーの撹拌は公知のミキサーを使用し。スラリーのpHは、堀場製作所製のpH計にて、反応温度は公知の温度計にて測定した。1次反応工程では、珪酸アルカリ水溶液と鉱酸の中和率が表2に示す割合になるように鉱酸を添加した。
【0103】
保留時間は、1次反応工程で行なう鉱酸の添加を終え、2次反応工程で鉱酸を再び添加するまでの時間をいう。
【0104】
2次反応工程においては、反応終了pHになるように、所定の時間をかけて1次反応工程と同じ鉱酸を添加した。表2に示す、完成原料の10%濃度スラリー粘度は、2次反応工程を経て反応を終えたシリカ複合再生粒子スラリーを脱水濾過し、固形分濃度を10%に調整したスラリーをB型粘度計により測定した値(測定温度25℃)である。
【0105】
[再生粒子およびシリカ複合再生粒子の測定]
再生粒子およびシリカ複合再生粒子の成分分析結果を表1および表3に示す。各工程の無機構成成分は堀場製作所製のX線マイクロアナライザーを用い、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い、構成成分より酸化物換算した。
【0106】
比表面積および細孔容積は、水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用い、試料を濾過した後、真空乾燥して測定した。
【0107】
吸油量はJIS K 5101−13−2記載の練り合わせ法によるものである。すなわち105℃〜110℃で2時間乾燥した試料2g〜5gをガラス板に取り、精製アマニ油(酸化4以下のもの)をビュレットから少量ずつ試料の中央に滴下しその都度ヘラで練り合わせる。滴下練り合わせの操作を繰り返し、全体が初めて1本の棒状にまとまったときを終点として、精製アマニ油の滴下量を求め、次の式によって吸油量を算出する。
吸油量=[アマニ油量(ml)×100]/試料(g)
【0108】
硬質物質の測定には、X線回析装置(理学電気製、RAD2X)を用いた。測定条件:Cu−Kα−湾曲モノクロメーター 40KV−40mA、発散スリット・1mm SS・1mm RS・0.3mm、走査速度・0.8度/分、走査範囲・2シータ=7〜85度、サンプリング・0.02度である。
【0109】
表3に示す生産性は、えられたシリカ複合再生粒子の濾液中に含まれる未反応薬品量から換算したシリカ複合反応の歩留りから、歩留り95%以上を◎、80%以上95%未満を○、70%以上80%未満を△、70%未満を×とした。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】

【0112】
【表3】

【0113】
表4に無機粒子として記載した無機粒子は次を用い、粒子径は表4に記載の値となるよう調整した。
・ホワイトカーボン
吸油量:203ml/100g、エリエールペーパーケミカル社製。
・再生粒子
表1記載の製造例1−1。
・シリカ複合(シリカ複合再生粒子)
表3記載の製造例1−1。
・炭酸カルシウム
軽質炭酸カルシウム、品番:TP121―6S、奥多摩工業社製。
【0114】
なお、粒子径は、レーザー粒度分布測定装置(レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製)にて粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になるときの粒子径(d50)として求められる。
【0115】
次に、ギャップフォーマからなるワイヤーパート、オープンドローのないストレートスルー型のプレスパート、シングルデッキドライヤーからなるプレドライヤーパートを経て基紙を製造した。
【0116】
塗料として、表5に記載の種類の顔料と、表5に記載の種類の接着剤を、それぞれ質量換算で表5に記載の量で混合した上塗り塗工液を調製し、基紙に片面あたりそれぞれ表5に記載の塗工量(固形分量)となるようフィルム転写型ロールコーターを用いて塗工した。塗料物性(濃度および保水度)は表5に記載のとおりであった。乾燥後にスーパーカレンダーを用い、ニップ圧250kN/m、ロール温度80℃で平坦化処理を行い、塗工紙を得た。なお、塗工紙の坪量は42g/mであった。顔料および接着剤の詳細は、次の通りである。
【0117】
(顔料)
・再生粒子
表1記載の製造例1−1。
・シリカ(合成非晶質シリカ)
品番:サイロイドAL−1B 100、グレース社製。
・炭カル(重質炭酸カルシウム)
品番:ハイドロカーブ90、備北粉化工業(株)製。
【0118】
(接着剤)
・澱粉
品番:コートマスターK96F、三晶社製。
・ラテックス
品番:XY4、日本A&L社製、Tg:−11℃、ブタジエン:45質量%、スチレン:30質量%、メタクリル酸メチル:2質量%、アクリロニトリル:21質量%。
なお、表5に記載の実施例26および27は、ブタジエンおよびスチレンの割合を表5に記載のとおり変更した以外は、実施例1と同じ成分(メタクリル酸メチル:2質量%、アクリロニトリル:23質量%)のラテックスを用いた。
【0119】
フィブリル化率(Fibrillation)は、塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維について、FiberLab.(Kajaani社)を用いて測定して求めた。結果を表4に示す。
【0120】
得られた塗工紙について、各物性を以下の方法にて調べた。結果は、表6に示す。
【0121】
(a)白色度
JIS P 8148:2001「紙,板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。白色度が70%以上であれば従来の坪量48g/mの塗工紙と同等であり、68%以上であれば白色度に若干劣るものの実使用可能であり、68%未満であれば白色度に劣り、坪量48g/mの塗工紙と同等とはいえない。
【0122】
(b)剛度
JIS P 8143:1996「紙−こわさ試験方法−クラークこわさ試験機法」に記載の方法に準拠して、紙の縦方向について測定した。縦方向の剛度が17.5以上であれば従来の坪量48g/mの塗工紙と同等であり、17.0以上であれば剛度に若干劣るものの実使用可能であり、17.0未満であれば剛度に劣り、坪量48g/mの塗工紙と同等とはいえない。
【0123】
(c)白紙光沢度
JIS P 8142:2005「紙及び板紙−75度鏡面光沢度の測定方法」に記載の方法に準拠して測定した。白紙光沢度が12%以上であれば従来の坪量48g/mの塗工紙と同等であり、10%以上であれば白紙光沢度に若干劣るものの実使用可能であり、10%未満であれば白紙光沢度に劣り、坪量48g/mの塗工紙と同等とはいえない。
【0124】
(d)不透明度(白紙)
JIS P 8149:2000「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に記載の方法に準拠して測定した。不透明度が80%以上であれば従来の坪量48g/mの塗工紙と同等であり、78%以上であれば不透明度に若干劣るものの実使用可能であり、78%未満であれば不透明度に劣り、坪量48g/mの塗工紙と同等とはいえない。
【0125】
(e)不透明度(印刷)
オフセット輪転印刷機(型番:LR−435/546SII、小森コーポレーション社製)を使用し、カラーインク(品番:WEB ACTUS MAJOR、東京インキ社製)にてカラー4色オフセット印刷を1万7千メートル行った。オフセット印刷物の印刷面について、目視にて印刷の裏抜け(裏面の印刷図柄が透けて見える)程度を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
◎:裏抜けがなく、印刷品質に特に優れる。
○:裏抜けが僅かに発生したが、印刷品質に優れる。
×:裏抜けの発生が多く、印刷品質に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎、○を実使用可能と判断する。
【0126】
(f)表面強度
上記不透明度(印刷)評価において調製した印刷サンプルについて、目視にて白抜け(塗工層または基紙の一部が脱落し、印刷が載っていない部分)の程度を観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:白抜けがなく、印刷品質に特に優れる。
○:白抜けの発生が僅かであり、印刷品質に優れる。
×:白抜けの発生が多く、印刷品質に劣る。
なお、前記評価基準のうち、◎、○を実使用可能と判断する。
【0127】
【表4】

【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
実施例の塗工紙はいずれも、白色度、剛度、白紙光沢度、不透明度、表面強度に優れた塗工紙であり、坪量が45g/m以下と軽量でありながら、坪量48g/mと同等の品質を有する塗工紙である。
【0131】
これに対して、比較例の塗工紙は、白色度、剛度、白紙光沢度、不透明度、表面強度のいずれかまたは複数の項目に劣り、坪量が45g/m以下であり坪量48g/mと同等の品質を持たない、本発明の目的を満足しない塗工紙である。なお、参考例1は市販の塗工紙(48g/m)である。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明によれば、坪量が45g/m以下と軽量な塗工紙にも関わらず、坪量が48g/m程度の塗工紙と同等の白紙不透明度および印刷不透明度、剛度を有する軽量塗工紙を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙および基紙上に顔料と接着剤を主成分とする塗工層を設けた塗工紙であって、
前記基紙に少なくとも異なる3種類の無機粒子を含有し、前記無機粒子が次の(A)〜(C)であることを特徴とする塗工紙。
(A)ホワイトカーボン
(B)前記ホワイトカーボン以外のシリカ含有無機粒子
(C)前記ホワイトカーボンまたは前記シリカ含有無機粒子以外の無機粒子
【請求項2】
前記塗工紙の坪量が45g/m以下であり、前記塗工量が片面あたり1.5〜4.5g/mであることを特徴とする、請求項1に記載の塗工紙。
【請求項3】
前記(B)がシリカ複合無機粒子であり、前記(C)が炭酸カルシウムであることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗工紙。
【請求項4】
前記接着剤がスチレンーブタジエンラテックスであり、前記スチレン−ブタジエンラテックス中のスチレンの割合が35質量%以下、かつブタジエンの割合が40%以上であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の塗工紙。
【請求項5】
前記塗工紙をJIS P 8220:1998「パルプ−離解方法」で離解して得られたパルプ繊維のフィブリル化率が4.3〜5.8%であることを特徴とする、請求項1〜4いずれか1項に記載の塗工紙。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−102442(P2011−102442A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256641(P2009−256641)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】