説明

塗布ヘッド清掃方法

【課題】本発明は塗布ヘッドの吐出孔及び吐出面に付着した蛍光体ペーストを拭き取り部材を用いて効率よく除去し、拭き取りにより塗布ヘッドに発生する傷を軽減させる塗布ヘッド清掃方法を提供することを目的とする。
【解決手段】複数の吐出孔が列状に配置された塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に付着した塗液を清掃する塗布ヘッド清掃方法であって、該塗布ヘッドの吐出孔周辺を弾性体からなる押し当て部材で支持した拭き取り部材に当接した状態で所定時間保持し、該塗布ヘッドと該拭き取り部材を離間して該拭き取り部材に塗液を転写させた後に、該塗布ヘッドの吐出孔周辺に押し当て部材で支持した拭き取り部材を当接した状態で該塗布ヘッドと該拭き取り部材を一方向に相対移動させて摺動拭きすることを特徴とする塗布ヘッド清掃方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に付着したペーストの清掃方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、電界放出デスレイ等の大型フラットディスプレイパネルの開発が進み、大きな市場を形成しつつある。
これらの中で、プラズマディスプレイは、前面基板と背面基板との間に形成された放電空間で対向するアノード及びカソード電極間にプラズマ放電を生じさせ、放電空間内に注入されているXe−Ne混合ガスなどの放電ガスから発生した147nm,172nmといった紫外線を、R(赤)、G(緑)、B(青)各色の放電空間内に設けた蛍光体層に当て、発光させることによりカラー表示を行うものである。一般に、プラズマディスプレイの背面板には、放電の広がりを一定領域に抑え、表示を規定のセル内で行わせると同時に、均一な放電空間を確保するために隔壁(障壁、リブともいう)が設けられている。隔壁の形状は、一般にはおよそ幅20〜120μm、高さ50〜250μmのストライプ状や格子状のものなどがある。そして、蛍光体層は蛍光体粉末、有機バインダーおよび有機溶媒を主成分とする蛍光体ペーストを所定の隔壁間に塗布、乾燥し、さらに必要に応じ焼成して形成される。この蛍光体ペーストは蛍光体粉末を高濃度で含むため10000mPa・s以上の高粘度であることが多い。
【0003】
蛍光体ペーストを所定の隔壁間に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ディスペンサー法等があり、材料ロスの少ないディスペンサー法が注目されている。
【0004】
ディスペンサー法とは、ペーストが吐出される吐出孔を有する塗布ヘッドを備えた装置を使用し、塗布ヘッドと基板を対向させて相対移動させながら蛍光体ペーストを隔壁間に塗布するものである。プラズマディスプレイの場合は蛍光体ペーストを隔壁間に塗布する。この場合、基板1枚ごとに塗布を行う枚葉方式であることが多く、基板1枚毎に塗布開始、終了があり、それに前後して蛍光体ペーストの吐出孔からの吐出開始、吐出停止を行う。一枚の基板への塗布が終了し、蛍光体ペーストの吐出を停止した後は、蛍光体ペーストが塗布ヘッドの吐出孔や吐出孔周辺に付着しており、この状態で次の基板に塗布を行うと、吐出孔から吐出される蛍光体ペーストの吐出流が乱れ、所定の隔壁間に正確な塗布ができない。そのため、正確な塗布精度を維持するためには、塗布終了後に塗布ヘッドの吐出孔及び吐出面を毎回清浄する必要がある。
【0005】
そのような塗布ヘッド清掃方法として、従来は図6に示すように、吐出孔および吐出面に付着した蛍光体ペーストなどの塗液をゴム等の弾性体で作成したスクレパーで掻き取って清浄する方法(特許文献1参照)や図7に示す、押当手段に支持した柔らかい布等の拭き取り材と塗布ヘッドを相対移動させて摺動拭きする方法(特許文献2参照)などが知られている。しかしながらこれらの方法では、例えば、プラズマディスプレイ用の蛍光体ペーストの場合は、蛍光体ペースト中に含まれる硬い無機微粒子である蛍光体粉末が吐出孔周辺に押し当てられた状態で相対移動するため、塗布ヘッドの吐出孔周辺が削られる。その結果、図1の模式図に示すように吐出孔1周辺に拭き取り傷2が発生する。また、拭き取り回数が増すと拭き取り傷がより深くなる。拭き取り傷の深さがある限界を超えると塗布欠点が発生し高品質な塗布ができなくなる。この拭き取り傷により塗布ヘッドが使用できなくなると、新規に塗布ヘッドを製作しなければならず、コスト高や塗布ヘッド交換に時間が掛かるため生産効率が悪くなる。
【0006】
一方、他の清掃方法として、低粘度塗布液のインクジェット用塗布ヘッドに柔らかいシート状の布やフィルム等の拭き取り部材を弾性変形する押し付け手段で支持して押し付けて、拭き取り部材に吸収させる方法(特許文献3)が知られている。しかしながら、プラズマディスプレイの蛍光体ペーストのように高粘度で蛍光体粉末を大量に含む塗液の場合は、拭き取り部材に吸収させるだけでは塗布ヘッドの吐出孔1周辺に付着した蛍光体ペーストを除去することが困難である。
【特許文献1】特開2004−14393号公報
【特許文献2】特開2002−126599号公報
【特許文献3】特開2007−30482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は拭き取り部材を用いた摺動拭きにより塗布ヘッドの吐出孔周辺を損傷させることなく、低コストかつ簡便に塗布ヘッドに付着したペーストを清掃し、塗布ヘッドの吐出孔周辺の傷の発生を軽減させることで、塗布ヘッドの寿命を伸ばし、生産性の高い塗布を実現するための、塗布ヘッド清掃方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、複数の吐出孔が列状に配置された塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に付着した塗液を清掃する塗布ヘッド清掃方法であって、該塗布ヘッドの吐出孔周辺を押し当て手段支持した拭き取り部材に当接した状態で所定時間保持し、該塗布ヘッドと該拭き取り部材を離間して該拭き取り部材に塗液を転写させた後に、該塗布ヘッドの吐出孔周辺に押し当て手段で支持した拭き取り部材を当接した状態で該塗布ヘッドと該拭き取り部材を一方向に相対移動させて摺動拭きすることを特徴とする塗布ヘッド清掃方法を提供する。
【0009】
本発明においては、円筒面を有する押し当て手段で拭き取り部材を支持して摺動拭きを行い、前記相対移動の間に、該押し当て部材の円筒面最上位で支持された該拭き取り部材が前記塗布ヘッドの吐出孔を通過することが好ましい。
【0010】
本発明においては、前記塗布ヘッドの吐出孔の配列方向と中心軸が平行な円筒面を有する押し当て手段で拭き取り部材を支持し、該円筒面の最上位以外の位置で支持された拭き取り部材に該塗布ヘッドの吐出孔周辺を当接した状態で所定時間保持し、該塗布ヘッドと該拭き取り部材を離間して該拭き取り部材に塗液を転写させた後に、同じ押し当て部材の同じ円筒面で支持された拭き取り部材の塗液を転写した部分以外の拭き取り部材を用いて摺動拭きすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗布ヘッド清浄方法を用いると、塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に発生する傷を軽減するとこができ、塗布ヘッドの寿命を延ばすことができる。また、低コストかつ簡便な塗布ヘッド清掃方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に付着した塗液を拭き取り部材に当接させて、離間することで塗液を拭き取り部材に転写させた後に、拭き取り部材で塗液を拭き取る工程を有する塗布ヘッド清掃方法に関する。
【0013】
本発明において塗布ヘッドとは、塗布装置を構成する塗布ノズルや口金などの部材であって、塗液を吐出するための吐出孔が列状に配置された部材を指す。また吐出孔とは塗布ヘッドに供給された塗液が被塗布物に向かって吐出される開口を指す。また、吐出孔周辺とは吐出孔外縁の近傍領域であり、この領域に塗液が残留したままで塗布を行うと塗布品位が著しく損なわれる。吐出孔はスリット状、円形、楕円形、または多角形等、どのような形状であっても良いが、塗布ヘッドがプラズマディスプレイ用蛍光体塗布ヘッドである場合は、プラズマディスプレイにおいて1画面に必要な蛍光体層をR、G、Bの各色につき1回の吐出で塗布できるように走査方向の画素数に応じた数以上の数(約1000〜4000個程度)で、塗布ヘッドの長手方向に配列したものが好ましい。また、吐出孔が円形の場合は、その直径は50〜200μm程度のものであることが好ましい。
【0014】
本発明において離間とは、塗布ヘッドを拭き取り部材に当接させた後に、両者を引き離す工程を指す。また、拭き取り部材は布やフィルム等の柔軟な素材がよく、本発明においては0.1デシテックス以下の極細繊維で、発塵性の低い編物や織物または不織服からなり、単位体積辺りの吸収量が多く、厚さが0.25〜0.4mmの物が好ましい。
【0015】
前記拭き取り部材を支持する押し当て部材は弾性体からなり、塗布ヘッドとの当接や摺動拭きの際に、塗布ヘッドの吐出面に均一な押圧が得られるように、少なくとも一部が円筒面を有していることが好ましく、さらには製作が容易な円筒ロール状であることが好ましい。円筒面の直径は30〜100mmが好ましく、直径が100mmより大きくなると、塗布ヘッドの吐出面に対して円筒面最上部での押圧が得にくなり、摺動拭き時に拭き取り不良を起こす可能性があり好ましくない。30mm未満の場合は塗布ヘッドと弾性体の接触面が小さくなるため、転写や摺動拭きの際に塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に付着した塗液を拭き取りきれない場合がある。
【0016】
また、円筒面の長手方向のある直線のうねりを表す真直度は、その公差域が円筒面の長手方向1mあたり1000μm以下が好ましく、さらには100μm以下であればなお好ましい。長手方向1mあたりの真直度が1000μmより大きくなると、摺動拭きの時に拭き取れない箇所が発生し易くなり好ましくない。円筒面はその軸が塗布ヘッドの吐出孔の配列方向と平行であることが好ましい。円筒面と塗布ヘッドの吐出孔の配列方向が平行でないと、拭き取り部材に塗布ヘッドを転写させる際に塗布ヘッドに均一な押圧が得られないので転写のムラが発生し易くなる。また、摺動拭きの際にも均一な押圧が得られないので、塗液の拭き残り箇所が発生するので好ましくない。円筒面と塗布ヘッドの吐出孔の配列方向の平行の度合を示す平行度は長さ1あたり0.2mm以下が好ましい。平行度が長さ1mあたり0.2mmより大きいと、円筒面が塗布ヘッドにたいして均一な当接ができないので好ましくない。弾性体の硬さは繰り返し当接しても残留ひずみなどのダメージを受けず、適度な柔らかさと共に、当接した相手の形状にならい、塗布ヘッドが離間したときには元の円筒形状への回復が早いものが好ましい。ゴム硬度としてはA10〜A30度(JIS K 6253(2006))が好ましい。A30度より大きいと弾性が損なわれ、当接した時に弾性体が塗布ヘッドの形状にならわず、塗布ヘッドにダメージが発生しやすくなるので好ましくない。ゴム硬度がA10度よりも小さい場合は押し圧が得られないので好ましくない。
【0017】
弾性体の材質としては、発砲性スポンジや合成ゴム等を使用することが好ましい。具体的には、シリコーン系樹脂スポンジ、ポリエチレンスポンジ、フッ素系樹脂スポンジ、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、ブタエチレンゴムが好ましい。
弾性体の厚みとしては、3〜30mmが好ましく、5〜15mmがさらに好ましい。厚みが3mmより薄い場合は弾性が損なわれ、30mmより厚い場合は不要な材料が多くなる上、装置が大きくなり不経済であるため好ましくない。硬度を調整するために表面に樹脂フィルムなどのカバーを設けても良い。こうすると、洗浄溶剤に耐性が無い弾性体の場合に、拭き取り材から染み出す溶剤成分から弾性体を守ることができる。
【0018】
本発明は塗布ヘッドを拭き取り部材に当接後に離間し、塗布ヘッドの吐出孔周辺に付着した塗液を拭き取り部材に転写させて塗布ヘッドに付着した塗液を減らした後に摺動拭きを行うことで、塗布ヘッドの吐出孔周辺の傷を軽減し、確実に塗液を除去することができる。
【0019】
本発明の塗布ヘッド清掃方法は塗布ヘッドとしてプラズマディスプレイ製造用蛍光体塗布ノズルを用い、塗液として蛍光体ペーストを用いることが好ましい。以下、プラズマディスプレイ製造用蛍光体塗布ノズルを用いて蛍光体ペーストを塗布する場合の塗布ヘッド清掃方法の例を説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
本発明の装置構成を図2の清掃装置断面の概略図で説明する。
塗布ヘッド6の内部には蛍光体ペースト15が充填されており、気体圧流入口14から圧縮空気などの気体を流入させて、蛍光体ペースト15を吐出孔1から吐出し塗布を行う。蛍光体ペーストの吐出停止後には吐出孔1周辺には付着ペースト13が付着している。
【0021】
フレーム5には拭き取り部材7、押し当て部材16、押し当て部材17、巻き取り装置10、巻き出し装置11が設置されている。フレーム5は装置から移載できるようになっており、外段取りで拭き取り部材7を準備することができる。拭き取り部材7は連続したウェブであり、ロール状に巻かれている。また、拭き取り部材7は押し当て部材16、押し当て部材17に設けた弾性体9、弾性体12で支持されて、巻き出し装置11から巻き出し、巻き取り装置10で巻き取られる。
【0022】
また、図2に示した実施形態では押し当て部材は2個だが、押し当て部材は1つでも複数個でもよい。巻き取り装置10および巻き出し装置11は図示しないモータで駆動しており、弾性体16、弾性体17の上で常にシワなく、拭き取り部材7に張力が付加されるように、巻き出し装置11のトルクモータでトルクをかけながら巻き取り装置10のモータで巻き取ることが好ましい。
【0023】
塗布ヘッド6の吐出面3を弾性体9に当接し、付着ペースト13を拭き取り部材に転写させる際の押し込み量は、塗布ヘッド6の吐出面3と弾性体9の円筒面最上位との接触位置から0.2〜3.0mm押し込んだ量である。押し込み量が0.2mm以下の場合は摺動拭きの際に拭き取りに必要な押圧が得られず、塗布ヘッドに付着した付着ペースト13を拭き取り部材7に転写することができないため、塗布ヘッド6の吐出面にペーストの拭き残しが発生する。また、塗布ヘッド6と弾性体12を摺動拭き摺る際の押し込み量も0.2〜2.0mmであり、好ましくは0.2〜1.5mmである。押し込み量が1.5mm以上の場合は、摺動拭きの際に円筒面最上位を塗布ヘッドが通過するときに、塗布ヘッドに対する押圧が大きくなりすぎ吐出孔1を損傷する可能性があるため好ましくない。
【0024】
図3は本発明の第1の実施形態を示した清掃装置断面の概略図であり、塗布ヘッドを押し当て部材で支持した拭き取り部材に転写させた後に、塗布ヘッドを拭き取り部材から離間して、再び塗布ヘッドを別の押し当て部材で支持した同じ拭き取り部材に当接させて摺動拭きを行う方法を示した一例である。以下、順を追って本発明の清掃工程を説明する。
【0025】
図3(a)は塗布ヘッド6に付着した付着ペースト13を押し当て部材16で支持した拭き取り部材7に当接する工程である。
【0026】
当接位置は、適切な接圧が得られたらよいので、押し当て部材16に設けた弾性体9の円筒部最上位が好ましいが、多少外れても転写に必要な接圧が得られれば良い。
【0027】
当接の際には蛍光体ペーストを拭き取り部材7に転写させるために、ある程度の当接保持時間を設けることが好ましい。保持時間は蛍光体ペーストの特性や拭き取り部材7の特性により設定されるが、0.5〜10秒程度が好ましく、さらに好ましくは2〜5秒である。保持時間が0.5秒未満の場合は蛍光体ペーストが拭き取り部材7に転写される量が少なくなる。その結果、次の摺動拭き工程において、拭き取る蛍光体ペーストが多くなり蛍光体ペーストの拭き残しが発生し易くなる上、蛍光体粉末で吐出面3に傷が発生し易くなるため好ましくない。
【0028】
一方、保持時間が10秒より長い場合は、拭き取り部材7に蛍光体ペーストが多く転写されるが、保持時間が長くなると生産タクトが長くなり、生産性を損なうため好ましくない。
【0029】
次いで図3(b)に示すのは付着ペースト13を拭き取り部材7に当接させた後に、塗布ヘッドを垂直方向に移動し、拭き取り部材7から塗布ヘッド6を離間させる工程動作の一例である。離間させることで付着ペースト13が拭き取り部材7に転写され、吐出孔1周辺に付着した蛍光体ペースト量が減るため好ましい。
【0030】
次いで、再び塗布ヘッド6を図3(c)に示す押し当て部材17の上に移動し、図3(d)に示すように、塗布ヘッド6を押し当て部材17で支持した拭き取り部材7に当接させる。次いで、図3(e)に示すように、塗布ヘッド6が押し当て部材17に設けた弾性体12の円筒面最上位を通過するように塗布ヘッドを相対移動させて摺動拭きを行う。本形態においては塗布ヘッド6を上下、水平方向に移動させているが、フレーム5を移動させることにより、拭き取り部材7を相対移動させてもよい。また、押し当て部材16,拭き取り部材17は製作が容易な芯金に弾性体を巻きつけた直径80mmの円筒ロール状であるが、これに限るものではなく、各々ロール直径を異ならせてもよい。また、塗布ヘッド6の吐出孔の配列方向と押し当て部材に設置された円筒面の中心軸は平行であることが好ましい。押し当て部材16,押し当て部材17で支持した拭き取り部材7は同じものを用いているが、異なる種類の拭き取り部材でもよい。この場合、各々の拭き取り部材に巻き取り装置と巻き出し装置を設置することが好ましい。
【0031】
図4は本発明の第2の実施形態を示した清掃装置断面の概略図で、1つの押し当て部材の円筒面で転写と摺動拭きを行う方法を示した一例である。以下、順を追って本発明の清掃工程を説明する。
【0032】
図4(a)は付着ペースト13を押し当て部材16で支持した拭き取り部材7に転写する工程であり、蛍光体ペーストを拭き取り部材7に転写させるために当接保持時間を設けることが好ましい。前記保持時間は図3の実施形態と同様である。
【0033】
当接位置は、弾性体9の円筒面最上位19を境界として巻き取り装置10側に2.0〜4.0mmずらした当接位置18である。4.0mm以上の場合は吐出面3との当接が少なくなり、2.0mm以下の場合は、次工程で利用する円筒面最上位で支持された拭き取り部材に蛍光体ペーストが付着しやすくなるので好ましくない。次いで図4(b)に示すのは付着ペースト13を拭き取り部材7に転写させた後に、塗布ヘッド6を垂直方向に移動し、拭き取り部材7から塗布ヘッド6を離間させる工程である。離間させることで吐出孔1周辺の蛍光体ペースト量が減るため好ましい。
【0034】
次いで、再び塗布ヘッド6を図4(c)に示す2回目当接位置20に当接させる。2回目当接位置20は、図4(a)の1回目の当接位置18と押し当て部材16に設置された弾性体9の円筒面最上位19との間であり、1回目の当接により、拭き取り部材7に転写された転写ペースト22が塗布ヘッド6の吐出孔1付近に再付着せず、拭き取り部材7がペーストで汚染されていない清浄な部分であることが好ましい。なお、1回目の当接後に塗布ヘッドを離間する方向は、2回目当接位置20の真上になるように斜め上方向に離間してもよい。
【0035】
次いで、塗布ヘッド6と拭き取り部材7を相対移動させて摺動拭きをする工程の一例を図4(d)に示す。この摺動拭き工程においては、塗布ヘッド6の吐出面3を押し当て部材16に設置した弾性体9の円筒面最上位19を通過させることで、塗布ヘッド6の吐出面3に付着した蛍光体ペーストを確実に拭き取ることができるため好ましい。また、塗布ヘッド6に付着した付着ペースト13を拭き取り部材7に転写させる(図4(a)、図4(b)の工程)ことにより、摺動拭き工程で拭き取る蛍光体ペーストの量が減り、蛍光体ペースト中の蛍光体粉末と塗布ヘッド6の吐出面との接触が減るため、塗布ヘッド6の吐出孔1周辺に発生する拭き取り傷を軽減することができ好ましい。
【0036】
ここで、巻き取り装置10は、押し当て部材16の円筒面最上位19を境界として、塗布ヘッド6を当接させる側に配置し、一方向に巻き取ることが好ましい。これにより拭き取り部材7に転写された転写ペースト22が押し当て部材の円筒面最上位19を通過することがなくなり、円筒面最上位19には常に蛍光体ペーストで汚染されていない拭き取り部材7がくるように巻き取ることができるため好ましい。また、このように転写工程と摺動工程の間に拭き取り部材7を巻き取り装置10で巻き取らず、巻き取りに必要な時間を削減できるのでタクトを増大させない上、拭き取り布の使用を効率化できるので好ましいが、両工程間に拭き取り部材を巻き取っても良い。
【0037】
また、図4(e)に示すように、拭き取り部材7を用いた摺動拭きにより、拭き取り部材7上の拭き取り後ペースト23が付着した領域はまだ十分に蛍光体ペーストを転写することができるので、次に塗布ヘッドを清掃するまでの間に転写工程における当接位置18に送ることにより、拭き取り部材7を次の転写に再利用すると共に使用量を減らすことができ好ましい。さらには、拭き取り部材7の交換頻度も減らすことができ生産性を向上することができる。
【0038】
本実施形態によれば、一つの押し当て部材で塗布ヘッドの吐出面3に発生する拭き取り傷を軽減し確実に清掃することができ、押し当て部材が1つあれば良いので装置構成を簡素化できるため好ましい。
【0039】
また、上記した各摺動拭き工程においては、摺動拭き工程前に拭き取り部材7に洗浄液を塗布して拭き取ってもよい。洗浄液の湿潤効果でさらに傷を軽減することができるため好ましい。洗浄液の塗布には例えば、噴霧、滴下など公知の手段が使用できる。
【0040】
この洗浄液は、弾性体の円筒面が1つの場合は、摺動拭き後に洗浄液が塗布ヘッド6の吐出面3周辺に残らないように、沸点が80℃以下の洗浄液を用いることが好ましい。具体的にはアセトン、エタノールが好ましい。
【0041】
一方押当手段が複数個の場合は、より湿潤させるために沸点が90〜300℃の揮発性の低い洗浄液を用いてもよく、その場合、図5(a)に示す転写工程で塗布ヘッドを当接させる押し当て部材16の当接位置18の拭き取り部材7に洗浄液を塗布することが好ましく、摺動拭き工程の押し当て部材17で支持した拭き取り部材7は洗浄液で湿っていない状態であることが好ましい。これにより、図5(c)に示す転写後に塗布ヘッド6の吐出孔1付近に残留している、残留洗浄液25と付着ペースト13を図5(e),図5(f)に示す摺動拭き工程で押し当て部材B17で支持した拭き取り部材7で拭き取ることができる。
【0042】
使用する洗浄液は、具体的には、4−メチル−2−ペンタノ−ル、2−プロパノール、ダイアセトンアルコール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、イソノニルアルコール、イソデカノール、テルピネオール、ベンジンアルコール、酢酸ブチル、酢酸−3メチルブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどが好ましい。
【実施例】
【0043】
実施例
以下にプラズマディスプレイ用の蛍光体ペースト塗布ヘッドの清掃に図4の実施形態を適用した実施例を説明するが、本発明は本実施例のみに限定されるものではない。
【0044】
使用した蛍光体ペーストは以下の方法で作成した。無機蛍光体粉末の重量比率を19として重量比率20のエチルセルロースの16重量%テルピネオール/ベンジルアルコール(3/1)溶液の中に分散・混合して蛍光体ペーストを作成した。用いた蛍光体粉末は赤色発光には(Y,Gd)BO3:Eu、緑色発光にはZnSiO4:Mn、青色発光にはBaMgAl10O17:Euである。これらの各色蛍光体粉末の累積平均粒子径、および最大粒子径はR蛍光体:2.7μm、27μm、B蛍光体:3.7μm、27μm、G蛍光体:3.6μm、25μmである。また、それぞれの粘度はR蛍光体:52000mPa・s、B蛍光体:39000mPa・s、G蛍光体:40000mPa・sである。
【0045】
蛍光体ペーストを塗布する塗布ヘッドは孔数1922孔、孔径100μmの吐出孔を有する塗布ヘッドで、内部に空気によって200〜700kPaの圧力をかけて吐出孔からペーストを吐出させることにより、所定の隔壁間に蛍光体ペーストを塗布するものである。塗布ヘッドを用いて塗布する塗布装置として、XYZθ4軸を有するステージと、XYZθ4軸を制御駆動させる制御部、塗布装置と清浄装置の動作をあらかじめ定めたプログラムにて制御動作させる記憶制御部などから構成される塗布装置を用いた。拭き取り部材7には超極細繊維の編物(東レ株式会社製「トレシー」)を用い、弾性体9上でシワが発生しないように4kg/mの張力を付与している。押し当て部材16はゴム硬度がA15(JIS K 6253(2006))で厚さが15mmのシリコーン系樹脂スポンジの円筒ロールを用いた。押し当て部材16のシリコーン系樹脂スポンジを含めた直径は80mmである。拭き取り部材7に蛍光体ペーストが付着した塗布ヘッド6に付着した蛍光体ペーストを転写・吸収させるために、塗布ヘッド6を拭き取り部材7に当接させる当接位置18は、円筒面最上位19から2.0mmずらした位置とし、塗布ヘッド6の弾性体A9への押し込み量は、塗布ヘッド6と弾性体の円筒面最上位19で支持した拭き取り部材7との接触位置から1.0mm押し込んだ量とした。また、転写・吸収させる保持時間は5秒とした。
【0046】
摺動拭き工程の2回目当接位置は弾性体9の円筒面最上位19から0.5mmずらした位置であり、押し込み量は塗布ヘッド6と円筒面最上位19で支持した拭き取り部材7との接触位置から0.5mm押し込んだ量である。摺動拭きの際の塗布ヘッドが押し当て手段を通過する速度は速度20mm/sとした。
【0047】
この条件で基板に塗布を行い、30000枚塗布、清掃を繰り返した後の塗布ヘッド6の吐出孔について、無作為の20個の吐出孔を選びその周辺に発生した傷の最大深さをレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-9700)で測定した平均は1.9μmであった。プラズマディスプレイの蛍光体ペーストの塗布の場合、一般に吐出孔周辺に平均深さが3μm以上の傷が発生すると塗布不良が多発するが、本実施例では傷は浅いため、継続して塗布を行うことができた。
比較例
転写拭きを行わず摺動拭きのみを行うこと以外は、実施例と同じ条件で拭き取りを用い、実施例と同様に、塗布、清掃繰り返した。塗布を約10000枚越えたあたりから、かなりの頻度で基板の一部分にスジ状の欠点や塗布されず蛍光体ペーストが抜けている箇所が広がった塗布不良が発生しており製品にならないレベルであった。この時の塗布ヘッドの吐出孔1周辺の傷の深さをレーザー顕微鏡で無作為に20孔測定したところ、傷の深さの平均は3.6μmであり、使用限界の3μmを超えていた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
プラズマディスプレイあるいは液晶ディスプレイなどの薄型ディスプレイの製造方法に最適である。本発明は固体粒子を高濃度で含む高粘度ペーストへの適用が好適であるが、インクジェットなどの低粘度液に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】塗布ヘッドの吐出孔周辺の傷発生の様子を示す模式図である。
【図2】本発明における清掃装置の断面を示す概略図である。
【図3】本発明の塗布ヘッド清掃方法の第1の実施形態を示した模式図である。
【図4】本発明の塗布ヘッド清掃方法の第2の実施形態を示した模式図である。
【図5】洗浄液を用いる本発明の塗布ヘッド清掃方法の第3の実施形態である。
【図6】従来の塗布ヘッド清掃方法の例を示した模式図である。
【図7】従来の方法塗布ヘッド清掃方法の他の例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1 吐出孔
2 拭き取り傷
3 吐出面
4 清掃装置断面
5 フレーム
6 塗布ヘッド
7 拭き取り部材
8 塗布ヘッド進行方向(摺動拭き)
9 弾性体
10 巻き取り装置
11 巻き出し装置
12 弾性体
13 付着ペースト
14 気体流入口
15 蛍光体ペースト
16 押し当て部材
17 押し当て部材
18 当接位置
19 円筒面最上位
20 2回目当接位置
21 洗浄液
22 転写ペースト
23 拭き取り後ペースト
24 スクレパー
25 残留洗浄液
26 スクレパー進行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出孔が列状に配置された塗布ヘッドの吐出孔および吐出孔周辺に付着した塗液を清掃する塗布ヘッド清掃方法であって、該塗布ヘッドの吐出孔周辺を押し当て部材で支持した拭き取り部材に当接した状態で所定時間保持し、該塗布ヘッドと該拭き取り部材を離間して該拭き取り部材に塗液を転写させた後に、該塗布ヘッドの吐出孔周辺に押し当て部材で支持した拭き取り部材を当接した状態で該塗布ヘッドと該拭き取り部材を一方向に相対移動させて摺動拭きすることを特徴とする塗布ヘッド清掃方法。
【請求項2】
円筒面を有する押し当て部材で拭き取り部材を支持して前記摺動拭きを行い、前記相対移動の間に、該押し当て部材の円筒面最上位で支持された該拭き取り部材が前記塗布ヘッドの吐出孔を通過することを特徴とする請求項1に記載の塗布ヘッド清掃方法。
【請求項3】
前記塗布ヘッドの吐出孔の配列方向と中心軸が平行な円筒面を有する押し当て部材で拭き取り部材を支持し、該円筒面の最上位以外の位置で支持された拭き取り部材に該塗布ヘッドの吐出孔周辺を当接した状態で所定時間保持し、該塗布ヘッドと該拭き取り部材を離間して該拭き取り部材に塗液を転写させた後に、同じ円筒面で支持された拭き取り部材の塗液を転写した部分以外の拭き取り部材を用いて摺動拭きすることを特徴とする、請求項1または2に記載の塗布ヘッド清掃方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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