説明

塗布具

【課題】一の使用では回転体を櫛歯を介して塗布面から離間させて塗布材を塗布すると共に、他の使用では回転体から塗布面に直接塗布材を塗布する。
【解決手段】塗布材を保持し塗布面に塗布する回転体3dと、回転体3dを間に挟む一方の位置に、回転体3dの軸線に沿って複数並設される櫛歯を有する櫛歯部3eと、回転体3dを間に挟む他方の位置に、回転体3dの軸線に沿って延在する、櫛歯部3eより低い凸部3fと、を備え、回転体3dの軸線方向視において、櫛歯部3e及び凸部3fの先端を結ぶ線分Aより外側に、回転体3dの一部が突出している。櫛歯部3e側が塗布面に当たるように塗布具3を傾けて動かすと、回転体3dが櫛歯部3eを間に介して塗布面から離間した状態で塗布材を塗布できる。また、凸部3f側が塗布面に当たるように塗布具3を傾けて動かすと、回転体3dから塗布材を塗布面に直接塗布できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口から吐出された塗布材を回転可能な回転体で塗布面に塗布するための塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗布材の塗布具としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この特許文献1に記載の染毛剤塗布ブラシ(塗布具)は、染毛剤(塗布材)を髪の根元も含めて髪全体に塗布するために用いられる。この染毛剤塗布ブラシは、染毛剤の吐出口の列の両側に沿って対向するように設けられた外側櫛歯部(櫛歯部)と、これらの外側櫛歯部の間で吐出口の前側に配置されて、回転可能に保持された回転櫛歯ブロック(回転体)と、を備え、染毛剤塗布ブラシを用いて染毛する場合に、回転櫛歯ブロックの端部が頭部に最も近づいたときでも、その端部が外側櫛歯部の端部より頭部側に出ないように構成されている。
【0003】
このような構成により、染毛剤を吐出口を通して回転櫛歯ブロックに押し出した状態で染毛剤塗布ブラシが頭皮に沿わせて動かされると、外側櫛歯部の間に毛髪が導かれ、毛髪との摩擦力により回転櫛歯ブロックが回転し、回転櫛歯ブロックに保持された染毛剤が毛髪に塗布される。
【特許文献1】特開2002−345543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の染毛剤塗布ブラシにあっては、回転櫛歯ブロックの端部が、外側櫛歯部の端部より外側に出ないように形成されているため、回転櫛歯ブロックの頭皮等の塗布面に対する接触が妨げられ、回転櫛歯ブロックに保持された染毛剤を頭皮等の塗布面に直接塗布することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、従来と同様に一の使用では回転体を櫛歯を介して塗布面から離間させて塗布材を塗布することが可能であると共に、他の使用では回転体から塗布面に直接塗布材を塗布することが可能となる塗布具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による塗布具は、容器内部に収容された塗布材を吐出するための吐出口と、吐出口の近傍に回転可能に設けられ、吐出口より吐出された塗布材を保持し塗布面に塗布するための回転体と、を備える塗布具であって、回転体を間に挟む一方の位置に、回転体の軸線に沿って複数並設される櫛歯を有する櫛歯部と、回転体を間に挟む他方の位置に、回転体の軸線に沿って延在するように設けられ、櫛歯部の高さより低い凸部と、を備え、回転体の軸線方向視において、櫛歯部の先端と、凸部の先端とを結ぶ線分より外側に、回転体の一部が突出することを特徴としている。
【0007】
このような塗布具によれば、吐出口から塗布材を吐出して回転体に保持させた状態で、一の使用として櫛歯部側が塗布面に当たるように塗布具を傾けて動かすと、回転体は、櫛歯部の裏側に位置し、櫛歯部を間に介して塗布面に直接当たることなく離間した状態で、塗布材を塗布面に塗布することが可能である。また、他の使用として凸部側が塗布面に当たるように塗布具を傾けて動かすと、回転体の一部が塗布面に直接接触し、回転体から塗布材を塗布面に直接塗布することが可能となる。
【0008】
ここで、上記作用を好適に奏する具体的な構成としては、凸部は、回転体の軸線に沿って複数並設される櫛歯を有することが好適である。
【0009】
また、吐出口は、回転体の周面の周囲で当該回転体より凸部側に設けられることが好適である。これにより、吐出口から吐出される塗布材を、下側から上側へ回転する回転体の部分ですくいあげる(水車でくみ上げるようにする)ことができるので、従来のように回転体の軸心の真下から塗布材が吐出される場合に比べて、より効率良く塗布材を回転体に保持させることが可能になると共に、回転体及び低い凸部が邪魔にならずに吐出口から吐出された塗布材の量を視認することが可能となり、塗布具の使用性が向上する。また、当該凸部により、凸部側に設けられた吐出口から吐出する塗布材が、これより外側へ流出するのを防止できるので、塗布具の使用性がさらに向上する。
【0010】
ここで、上記作用を好適に奏する具体的な構成としては、回転体は、容器によって両端部を軸支された軸体と、この軸体の両軸支に係る部分の間である外周部から外側に突出するように設けられたブラシ毛とを有する構成が挙げられる。
【0011】
同様に、上記作用を好適に奏する具体的な構成としては、回転体は、容器によって両端部を軸支された軸体と、この軸体の両軸支に係る部分の間である外周部から外側に突出すると共に螺旋を描くように設けられた突条とを有する構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗布具によれば、従来と同様に一の使用では回転体を櫛歯を介して塗布面から離間させて塗布材を塗布することが可能であると共に、他の使用では回転体から塗布面に直接塗布材を塗布することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明による塗布具の好適な実施形態について図1〜図7を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の記号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1〜図5は、本発明の第一実施形態を、図6及び図7は、本発明の第二実施形態を各々示すものである。図1は、本発明の第一実施形態に係る塗布具をその先端に備えた塗布材押出容器を示す一部破断側面図、図2は、塗布材押出容器の先端側正面図、図3は、塗布材押出容器の側面図、図4は、塗布具の断面図、図5は、塗布材押出容器の塗布具を含む先端部の斜視図であり、本実施形態の塗布具は、塗布材を容器内部に収容すると共に適宜使用者の操作により押し出して使用するための塗布材押出容器に対して適用されている。
【0015】
本実施形態では、塗布材として、特に好適であるとしてヘアーカラー(染毛剤)が用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、アイライナー、アイブロウ、リップライナーや、さらには、リップグロス、リップ、アイカラー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、マスカラリムーバー、アンチエイジング、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状や、ゼリー状、ゲル状、ペースト状を含む練り状等の半固体や軟固形状等の塗布材を用いることが可能である。
【0016】
図1に示すように、塗布材押出容器100は、上記塗布材が充填される充填領域を内部に備える本体筒1と、この本体筒1の後端部に回転可能に装着された操作筒2とを使用者が相対回転すると、容器100内に構成された押出機構としての螺合機構及び回り止め機構に従い、移動体が前進又は後進し、移動体先端のピストンが本体筒1の先端側に向かって繰り出されることで、充填領域の塗布材が先端側に向かって押し出される構成とされている。なお、押出機構は、ラチェット機構を有し移動体及びピストンの前進のみを許容する構成であっても良い。
【0017】
本体筒1の先端には、本実施形態の特徴を成す塗布具3が装着されている。この塗布具3は、本体筒1内部の充填領域から先端側に押し出された塗布材を塗布するためのものであり、図2及び図5に示すように、その先端面3aが、塗布材押出容器100の軸線に対して直交する垂直面とされると共に長円形に構成されている。
【0018】
塗布具3は、図1及び図4に示すように、その内部に塗布材を先端面3aに導く吐出孔3bを有する。この吐出孔3bは、図2に示すように、先端面3aの長円形の長軸Xから短軸Y方向側(第二の櫛歯部3f側;詳しくは後述)に離間すると共に長軸X方向に延在するように開口されている。さらに、この吐出孔3bには、図2及び図4に示すように、先端に直線状の吐出口3cを有する例えばゴム等の筒状の弾性体3gが装着されている。この弾性体3gの吐出口3cは、先端面3aの長軸Xと平行に延在する。そして、弾性体3gは、後方から塗布材による圧力がかかると、直線状の吐出口3cの開口が開くようにして広がって塗布材を吐出口3cから外部に吐出し、それ以外のときで例えば落下時などにあっては、吐出口3cの開口が狭まって吐出しない弁機構を構成する。
【0019】
また塗布具3は、図2、図4及び図5に示すように、吐出口3cの近傍、詳しくは吐出口3cより長軸X側の上方に、当該吐出口3cより吐出された塗布材を保持し塗布面に塗布するためのブラシ(回転体)3dを有している。このブラシ3dは、容器によって両端部を軸支された軸体3hと、軸体3hの両軸支に係る部分の間である外周部から外側に突出するように設けられた例えば樹脂製の突起群(ブラシ毛)3iとを有する。ブラシ3dは、軸体3hの軸線が先端面3aの長軸X上方に位置するように配置されて当該軸線回りに回転可能とされている。そして、このブラシ3dは、吐出口3cから吐出される塗布材を、ブラシ3dの回転による突起群3iの回転により下側から上側へすくいあげる(水車でくみ上げるようにする)ことができるように配置されている。
【0020】
また、塗布具3は、吐出口3cのブラシ3dを挟んだ反対側の位置の先端面3aの縁部に、ブラシ3dの軸線に沿って複数並設される櫛歯を有する第一の櫛歯部(櫛歯部)3eを備えると共に、第一の櫛歯部3eのブラシ3dを挟んだ反対側の位置の先端面3aの縁部に、ブラシ3dの軸線に沿って複数並設される櫛歯を有する第二の櫛歯部(凸部)3fを備えている。すなわち、第一の櫛歯部3e及び第二の櫛歯部3fは、先端面3aにおいてブラシ3d及び吐出口3cを挟むように配置されている。
【0021】
ここで、第二の櫛歯部3fの櫛歯の高さは、図1、図4、図5に示すように、第一の櫛歯部3eより低くなるように構成されている。
【0022】
また、図4に示すように、ブラシ3dの軸線方向視において、第一の櫛歯部3eの先端と、第二の櫛歯部3fの先端とを結ぶ線分Aより外側に、ブラシ3dの一部が突出するように構成されている。
【0023】
そして、このような構成を有する塗布具3は、図3に示すように、本体筒1の先端部に着脱可能に装着されるキャップ4により覆われ保護される。
【0024】
このような塗布具3を備える塗布材押出容器100によれば、使用者の操作により吐出口3cから塗布材を吐出してブラシ3dに保持させた状態で、使用者が第一の櫛歯部3e側が塗布面に当たるように塗布具3を傾けて動かすと、図4の線分Bに示すように、ブラシ3dは、第一の櫛歯部3eの裏側に位置し、第一の櫛歯部3eを間に介して塗布面に直接当たることなく離間した状態で、塗布材を塗布面に塗布することができる。
【0025】
また、使用者が第二の櫛歯部3f側が塗布面に当たるように塗布具3を傾けて動かすと、図4の線分Aに示すように、ブラシ3dの一部が塗布面に直接接触し、ブラシ3dから塗布材を塗布面に直接塗布することができる。
【0026】
従って、本実施形態の塗布具3によれば、従来と同様に一の使用ではブラシ3dを塗布面から所定の距離だけ離間させて塗布材を塗布することが可能であると共に、他の使用ではブラシ3dから塗布材を塗布面に直接塗布することが可能となる。
【0027】
また、本実施形態の塗布材押出容器100によれば、吐出口3cは、ブラシ3dの周面の周囲でこのブラシ3dより第二の櫛歯部3f側に設けられているため、吐出口3cから吐出される塗布材を、下側から上側へ回転するブラシ3dの突起群3iですくいあげる(水車でくみ上げるようにする)ことができるので、従来のようにブラシ3dの軸心の真下から塗布材が吐出される場合に比べて、より効率良く塗布材をブラシ3dに保持させることが可能になると共に、ブラシ3d及び低い第二の櫛歯部3fが邪魔にならずに吐出口3cから吐出された塗布材の量を視認することが可能となり、塗布具3の使用性が向上する。また、第二の櫛歯部3fにより、吐出口3cから吐出する塗布材が、これより外側へ流出するのを防止できる(塞ぎ止めることができる)ので、塗布具3の使用性がさらに向上する。
【0028】
図6は、本発明の第二実施形態に係る塗布具をその先端に備えた塗布材押出容器の先端側正面図、図7は、図6に示す塗布材押出容器の先端部の斜視図であり、それぞれ第一実施形態の図2及び図5に対応する図である。
【0029】
この第二実施形態の塗布材繰出容器200が第一実施形態の塗布材繰出容器100と違う点は、ブラシ3dに代えて、容器によって両端部を軸支された軸体3jと、この軸体3jの両軸支に係る部分の間である外周部から外側に突出すると共に螺旋を描くように設けられた突条3kとを有するブラシ3mを用いた点である。
【0030】
このような第二実施形態の塗布材押出容器200にあっても、第一実施形態の塗布材押出容器100と同様な効果を得ることができ、加えて、突起群3iに比して、螺旋の突条3kの方が、例えば髪の毛が絡まり難いという利点がある。
【0031】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第二の櫛歯部3fは、ブラシ3dの軸線に沿って延在するように設けられ、その高さが第一の櫛歯部3eのものより低ければ、櫛歯をもたない凸形状としてもよい。
【0032】
また、吐出口3cは、ブラシ3dの軸線の真下になるように設けてもよい。
【0033】
また、ブラシは、鋼線の2つの分枝間に毛材の層を配置してこれらを捩ることによって作られた、所謂スクリューブラシでもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、塗布材押出容器100,200の押出機構を本体筒1と操作筒2との回転式としたが、例えば、ノック式の押出機構等でもよく、さらには、チューブやソフトボトル等の単純なスクイーズ式の塗布材押出容器であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第一実施形態に係る塗布具をその先端に備えた塗布材押出容器を示す一部破断側面図である。
【図2】塗布材押出容器の先端側正面図である。
【図3】塗布材押出容器の側面図である。
【図4】塗布具の断面図である。
【図5】塗布材押出容器の塗布具を含む先端部の斜視図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る塗布具をその先端に備えた塗布材押出容器の先端側正面図である。
【図7】図6に示す塗布材押出容器の先端部の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
3…塗布具、3c…吐出口、3d,3m…ブラシ(回転体)、3e…第一の櫛歯部(櫛歯部)、3f…第二の櫛歯部(凸部)、3h,3j…軸体、3i…突起群(ブラシ毛)、3k…突条、100,200…塗布材押出容器。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部に収容された塗布材を吐出するための吐出口と、
前記吐出口の近傍に回転可能に設けられ、前記吐出口より吐出された塗布材を保持し塗布面に塗布するための回転体と、を備える塗布具であって、
前記回転体を間に挟む一方の位置に、前記回転体の軸線に沿って複数並設される櫛歯を有する櫛歯部と、
前記回転体を間に挟む他方の位置に、前記回転体の軸線に沿って延在するように設けられ、前記櫛歯部の高さより低い凸部と、を備え、
前記回転体の軸線方向視において、前記櫛歯部の先端と、前記凸部の先端とを結ぶ線分より外側に、前記回転体の一部が突出することを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記凸部は、前記回転体の軸線に沿って複数並設される櫛歯を有することを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記吐出口は、前記回転体の周面の周囲で当該回転体より前記凸部側に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記回転体は、容器によって両端部を軸支された軸体と、該軸体の両軸支に係る部分の間である外周部から外側に突出するように設けられたブラシ毛とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布具。
【請求項5】
前記回転体は、容器によって両端部を軸支された軸体と、該軸体の両軸支に係る部分の間である外周部から外側に突出すると共に螺旋を描くように設けられた突条とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗布具。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−240618(P2009−240618A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92192(P2008−92192)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(591147339)株式会社トキワ (141)
【Fターム(参考)】