説明

塗料の湿潤を促進する方法

(A) 成分(A)として、成分a1として少なくとも1種の界面活性剤を含有し、かつ成分a2として少なくとも1種の一般式(I)R1−O−(CH2−CHR2−O)n−(CH2−CH2−O)m−R3 (I)[式中、R1は、置換又は非置換のフェニル、C4−C14−アルキルであり、R2は、C1−C8−アルキルであり、R3は、水素、C1−C6−アルキル、ベンゾイル、アセチル、アクリル又はメタクリルであり、nは、平均値0〜10であり、mは、平均値1〜10であり、その際、n+m≦10であり、かつm>nであり、その際、場合により種々のアルキレンオキシド構造単位がランダム分布しているか又はブロックで配されていてよい]に相当する化合物を含有する混合物0.001〜15質量%、好ましくは0.10〜10質量%、特に好ましくは2〜10質量%、(B) 成分(B)として、皮膜形成性バインダー及び樹脂1〜95質量%、好ましくは5〜80質量%、(C) 成分(C)として、充填剤0〜80質量%、好ましくは0〜60質量%、特に0〜40質量%、(D) 成分(D)として、顔料0〜40質量%、好ましくは0〜35質量%、特に好ましくは5〜30質量%、(E) 成分(E)として、更なる添加剤0〜20質量%、特に0〜10質量%、及び(F) 成分(F)として、場合により有機溶剤及び/又は水の混合物0〜90質量%、好ましくは0〜70質量%、特に好ましくは15〜50質量%を含有し、その際、これらの成分(A)〜(F)の質量%の合計は100質量%である被覆剤組成物、並びに、本発明にかかる混合物を、被覆剤への添加によりこの被覆剤中の界面張力を減少させるために用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
表面の迅速な湿潤化は、広範な日常生活及び工業プロセス、例えば基材の洗浄又は被覆において中心的役割を担うものである。従って、多くの配合物においては、例えば界面張力又は表面張力を減少させ、これによりこの配合物の湿潤化性を改善するために、種々の広範な量のアルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールが使用されている。この場合、水性配合物に、しばしば、より大量のアルコールを添加することが一般的である。これらのアルコールの生理学的作用は一般的に懸念されるものであり、かつかかる配合物の使用者の暴露は、このアルコールの高い蒸気圧により大きくなる。更に、これらのアルコールは揮発性有機化合物(VOC)をなすものであり、これらは基材(例えばプラスチック)の膨脹をもたらすことがあり、かつ蒸発の際に場合により空気との爆発性混合物を形成する(爆発保護(Ex−Schutz))。従って今日では、例えば、使用者により直接扱われる配合物中には、アルコールが少量でのみ存在するか又は存在しないことが望ましい。しかしながら、極めて迅速な湿潤性を示す配合物、例えば印刷工業における湿潤剤又は被覆配合物用の添加剤、例えば噴霧塗料のために、このアルコールは依然として常に必須の構成成分である。
【0002】
近年、アセチレンとアルデヒドとから製造することができる極めて疎水性のコンパクトなアルコールの極めて良好な湿潤作用は公知である。このアルコールは、特にジヒドロキシアルキンである。しかしながら、これらの生成物は、全種の配合物と相溶性を示すわけではなく、かつしばしば可溶化剤、例えばクメンスルホネート、エチレングリコール等を用いなければ使用することができない。この場合、しばしば、湿潤助剤と比べて大量の可溶化剤を使用しなければならなく、この結果ジヒドロキシアルキンの使用によりコストが跳ね上がる。更に、この湿潤助剤の作用は、これをより大量の可溶化剤と混合すると悪化する。
【0003】
水性配合物の湿潤化速度を高める慣用の手段は、界面に蓄積し、かつその際にその界面張力を減少させる界面活性剤を使用することである。アルコール、例えばエタノール又はイソプロパノールを水性配合物に混合することにより得られる水/溶剤−混合物は水と比較して表面張力が小さく、ひいては湿潤挙動の改善を示す一方で、界面活性剤系の使用の際の湿潤化又は表面被覆は時間依存性である。これらの界面活性剤分子は、最初にこの表面上に拡散し、かつそこで界面皮膜を形成するはずであり、それにより、水及び空気の接触の場合に界面張力もしくは表面張力が低下する。
【0004】
極めて迅速な工程、例えば噴霧工程又は湿潤工程、及び例えばカーテン塗工工程の場合、及び塗料の場合には、表面張力又は界面張力が界面活性剤系により平衡値に低下する時間が重要である。この場合、界面活性剤系の動力学はこの湿潤化速度にとって極めて重要である。
【0005】
目下のところ、低級アルコールのアルコールエトキシレートは好適な湿潤剤として使用される。しかしながら、かかる製品は、その製造方法に起因して、しばしば、迅速な湿潤化に再度決定的に寄与し、かつ場合により極めて短い湿潤時間で唯一の湿潤成分であるアルコール量を含有する。
【0006】
4-8−アルキルグリコール又は−ジグリコールに対して、1〜8の平均アルコキシル化度までの、C2-5−アルコキシドでのC4-8−アルキルグリコール又は−ジグリコールのアルコキシ化により得られるアルキルグリコールアルコキシレート又はアルキルジグリコールアルコキシレートを水性配合物中に用いる使用は、WO03/60049号から公知である。
【0007】
DE10202007号A1は、C4-8−アルキルグリコール又は−ジグリコールをC2-5−アルコキシドで、C4-8−アルキルグリコール又は−ジグリコールに対して平均アルコキシ化度1〜8までアルコキシ化することにより得られるアルキルグリコールアルコキシレート及び、それと、水に5g/lの量で溶解し20℃での界面張力が46mN/m未満である界面活性剤、及び/又はジヒドロキシアルキン又はこれらの誘導体との混合物を開示している。
【0008】
常に迅速化が進む塗料の製造工程及び適用の場合、その間に、一般的な湿潤剤の有効性だけでなく、望ましい効果(この場合、湿潤化もしくは界面張力の減少)が達せられる速度が重要な役割を担う。この場合、湿潤工程は一般的にミリ秒の範囲内で行われる。
【0009】
更に、環境保護の見地から、溶剤として水を基礎とする被覆剤、例えば塗料がますます頻繁に使用されている。この水の表面張力は、約72mN/mであり、これは有機溶剤と比べて顕著に大きい。従って、炭化水素の表面張力は、約25〜35mN/mであり、ブチルグリコールの表面張力は27mN/mであり、かつブチルアセテートの表面張力は26mN/mである。しばしば使用される水溶性有機溶剤(例えば、ブチルグリコール)と水との混合物は、相応して同様に、純粋な有機溶剤と比べて高められた表面張力をもたらす(例えば、水中の5%のブチルグリコールは37mN/mである)。
【0010】
この界面張力の減少の必要性及びミリ秒範囲内で実現する困難性は、すなわち水系塗料への移行に伴い更に高まり、そして市販の界面活性剤の性能は改善されなければならない。別の側面からは、効率的な系のために、使用量の増大を伴わず性能が改善されることが望ましい。
【0011】
この界面張力が減少すると、例えば、顔料の湿潤の改善、下地の湿潤の改善及びの流れの改善がもたらされる。この流れの改善により、平滑な表面が得られ、これにより、オレンジピール作用、テクスチャ形成、クレーター、フィッシュアイ、刷毛痕跡、だれの形成、ピンホール又は針穴と称される妨害が回避される。
【0012】
本発明の課題は、界面活性剤と更なる化合物、いわゆる増強剤との混合物を含有する被覆剤配合物を提供して、被覆物質の水性配合物の湿潤挙動を改善することである。前記課題は、一般的に界面張力を減少させることにより、特に短時間後でも界面張力を顕著に低下させることにより解決される。
【0013】
また、被覆剤配合物中に溶解させて使用する本発明にかかる界面活性剤と増強剤との混合物を、界面活性剤単独の場合ほど大きい濃度で使用する必要をなくすということも課題である。本発明の効果は、混合物を水に溶解させる場合でも、水と有機溶剤とからの混合物に溶解させる場合でももたらされることが望ましい。界面活性剤と増強剤とからの混合物は低発泡性であることが望ましく、かつ使用される界面活性剤は良好な湿潤性を示す界面活性剤であることが望ましい。
【0014】
これらの課題は、本発明により、
(A) 成分(A)として、成分a1として少なくとも1種の界面活性剤を含有し、かつ成分a2として少なくとも1種の、一般式(I)
1−O−(CH2−CHR2−O)n−(CH2−CH2−O)m−R3 (I)
[式中、R1は、置換又は非置換のフェニル、C4−C14−アルキルであり、
2は、C1−C8−アルキルであり、
3は、水素、C1−C6−アルキル、ベンゾイル、アセチル、アクリル又はメタクリルであり、
nは、平均値0〜10であり、
mは、平均値1〜10であり、その際、n+m≦10であり、かつm>nであり、
その際、場合により種々のアルキレンオキシド構造単位がランダム分布しているか又はブロックで配されていてよい]に相当する化合物を含有する混合物0.001〜15質量%、好ましくは0.10〜10質量%、特に好ましくは2〜10質量%、
(B) 成分(B)として、皮膜形成性バインダー及び樹脂1〜95質量%、好ましくは5〜80質量%、
(C) 成分(C)として、充填剤0〜80質量%、好ましくは0〜60質量%、特に0〜40質量%、
(D) 成分(D)として、顔料0〜40質量%、好ましくは0〜35質量%、特に好ましくは5〜30質量%、
(E) 成分(E)として、更なる添加剤0〜20質量%、特に0〜10質量%、及び
(F) 成分(F)として、場合により有機溶剤及び/又は水の混合物0〜90質量%、好ましくは0〜70質量%、特に好ましくは15〜50質量%を含有し、その際、
これらの成分(A)〜(F)の質量%の合計は100質量%である被覆剤配合物であって、
かつ、混合物(A)の23℃の水中0.2g/lの濃度での鋼上における1秒後の接触角は純水と比較して少なくとも15゜だけ、好ましくは少なくとも20゜だけ減少し、かつこの混合物はCNOMO(prEN14371:2004、0.1g/l、25℃、水中で測定)においてそのポンプ輸送過程に際して1200ml未満の発泡性を示す被覆剤配合物により解決される。好ましくは、ブチルグリコール5%溶液(水中の5%ブチルグリコール)中の混合物は、300ml未満の発泡性を達することが望ましい。特に好ましくは、上述の水溶液の試験の際の循環終了5分後の泡量は300ml未満であり、ブチルグリコールの5%溶液の試験の際には50ml未満である。それぞれの溶液は、1リットル溶液中0.1gの混合物の濃度で測定する。測定温度:25℃。CNOMO(prEN14731:2004、0.1g/l、25℃、水中で測定)においてそのポンプ輸送過程に際して300ml未満の発泡性を示す混合物を製造することが特に好ましい。
【0015】
1は、直鎖状か又は分枝鎖状であってよいC4−C14−アルキル基か又は、置換又は非置換のフェニル基である。好ましくは、R1は、C4−C10−アルキル基か又は置換されたフェニル基であり、特に好ましくは直鎖状C4−C10−アルキル基か又は、置換又は非置換のフェニル基であり、殊に好ましくは直鎖状C4−C8−、C10−アルキル基か又はフェニル基である。
【0016】
このフェニル基の置換基として、直鎖状又は分枝鎖状のC1−C14−アルキル基が、場合により、アミド−、イミド−、カルボン酸エステル−、ハロゲン化物−及びエーテル基からなる群から選択された1個以上の官能基で置換されて存在してよい。場合により存在するC1−C14−アルキル基、好ましくはC1−C9−アルキル基は、置換されていないことが好ましい。
【0017】
特に好ましい基R1は、以下のアルコールから誘導された基である;ヘキサノール、フェノール、ブタノール、これらのうち特にn−ブタノール及びイソブタノール、ペンタノール、t−アミルアルコール、ヘプタノール、オクタノール、特にn−オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノナノール、デカノール、イソデカノール、2−プロピル−ヘプタノール。更に、混合物、例えばC4−C8−アルコール留分か又はC5−C9−アルコール留分も使用可能である。
【0018】
基R2は、一般式(I)においてはC1−C8−アルキルである。好ましくは、R2は、C1−C3−アルキル、特に好ましくはR2はメチルである。
【0019】
基R3は、一般式(I)においては、水素、C1−C6−アルキル、ベンゾイル、アセチル、アクリル又はメタクリルであり、好ましくは水素、メチル又はブチルであり、特に水素又はメチルである。この基R3は、それが水素でない場合、生成物を安定化させるためのいわゆる末端基キャップとして利用され、これは例えばアルカリ性溶液中で使用する場合である。好ましい実施態様においては、R3は水素である。
【0020】
アルキレンオキシドブロック(CH2−CHR2−O)及び(CH2−CH2−O)は、相応のアルコールR1−OHを、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ペンチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、ヘプチレンオキシド、オクチレンオキシド、ノニレンオキシド、デシレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物、好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド及びこれらの混合物からなる群から選択された化合物、特に好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシド及びこれらの混合物から選択された化合物との反応によりアルコキシ化することによって生じた構造単位である。種々のアルキレンオキシドを使用するのであれば、これらの種々のアルキレンオキシドとの反応をブロック(連続にもしくは交互に)でか又は同時(ランダムか又は混合式に)に実施してよい。
【0021】
nは、一般式(I)で示される化合物中の単位(CH2−CHR2−O)の数であり、mは、単位(CH2−CH2−O)の数である。一般式(I)で示される化合物中のnは、平均値0〜10である。一般式(I)の化合物中のmは、平均値0〜10である。n及びmの合計は≦10であり、かつm>nである。
【0022】
好ましい実施態様においては、nの平均値は≦2であり、かつmの平均値は3〜10である。
【0023】
更なる好ましい実施態様においては、一般式(I)で示される化合物中では、R1がフェニルの場合、nは0であり、かつmは3〜9である。
【0024】
更なる好ましい実施態様においては、一般式(I)で示される化合物中では、R1がC4−C14−アルキルの場合、nは≦2であり、かつmは3〜6である。
【0025】
この値n及びmは、平均値である。それというのも、アルコールのアルコキシ化の際に一般的にアルコキシ化度の分布が得られるからである。従って、n及びmは整数でなくてよい。このアルコキシ化度の分布は、種々のアルコキシ化触媒の使用により所定の範囲内で調節することができる。エチレンオキシドの他に、1種以上の長鎖アルキレンオキシドをも使用するのであれば、種々のアルキレンオキシド構造単位は交互にランダム分布しているか又は2つ以上のブロックの形で任意の順序で存在してよい。この均一な分布の平均値は、上述の数n及びmにより示される。
【0026】
このアルキレンオキシドブロックは、エチレンオキシド単位のみからなることが好ましい。
【0027】
一般式(I)で示される化合物としては、以下のものを使用することが殊に好ましい:
ブタノール+3EO、ブタノール+4EO、ブタノール+5EO、ブタノール+6EO、ヘキサノール+3EO、ヘキサノール+4EO、ヘキサノール+5EO、ヘキサノール+6EO、フェノール+3EO、フェノール+4EO、フェノール+5EO、フェノール+6EO。
【0028】
上述のEOの量の値は、丸められたものである。特に、ヘキサノール及びフェノールを基礎とする上述の化合物が好ましい。
【0029】
本発明にかかる一般式(I)で示される化合物は、例えば、一般式R1−OHのアルコールを、Aの単位(CH2−CHR2−O)及び(CH2−CH2−O)に相応するアルキレンオキシドでアルコキシ化することにより得られる。
【0030】
この場合、基R3が水素でないのであれば、このアルコキシ化に続いて例えば硫酸ジメチルでのエーテル化、又はエステル化を行ってよい。
【0031】
このアルコキシ化は、例えばアルカリ性触媒、例えばアルカリ水酸化物又はアルカリアルコラートの使用下で実施することができる。これらの触媒を使用することにより、特定の特性、特にアルコキシ化度の分布が得られる。
【0032】
更にこのアルコキシ化は、それから生ずる特定の特性を有するルイス酸触媒の使用下で実施してよく、例えばBF3×H3PO4、BF3、ジエーテル化合物、BF3、SbCl5、SnCl4×2H2O、ヒドロタルシト存在下で実施してよい。触媒としては、複合金属シアン化物(DMC)化合物も好適である。
【0033】
この場合、過剰なアルコールを留去するか又はアルコキシレートを2段階工程により得てよい。エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)とからの混合されたアルコキシレートの製造も可能であり、この場合、アルコール基に、最初にプロピレンオキシドブロックを、次いでエチレンオキシドを付加するか又は最初にエチレンオキシドブロックを、次いでプロピレンオキシドブロックを付加してよい。機会/ランダム分布も可能である。好ましい反応条件は、以下に示す。
【0034】
このアルコキシ化は強塩基により触媒することが好ましく、該塩基は、適切にはアルカリ水酸化物か又はアルカリ土類水酸化物の形で、一般的に、アルコールR1−OHの量に対して0.1〜1質量%の量で添加する(Vergl. G.Gee et al., J. Chem. Soc. (1961), 1345頁; B. Wojtech, Makromol. Chem. 66, (1966), 180頁)。
【0035】
付加反応の酸触媒も可能である。ブレンステッド酸の他に、ルイス酸、例えばAlCl3又はBF3も好適である(Vergl. P.H.PIesch, The Chemistry of Cationic Polymerization, Pergamon Press, New York (1963))。
【0036】
このアルコキシ化は、当業者に公知の方法による複合金属シアン化物触媒によって実施してもよい。複合金属シアン化物(DMC)化合物としては、原則的に当業者に知られた全種の化合物を使用してよい。触媒として好適なDMC化合物は、例えばWO99/16775号及びDE−A−10117173号に記載されている。
【0037】
付加反応は、約90℃〜約240℃、好ましくは120〜180℃の温度で、閉じられた容器内で実施する。アルキレンオキシド又は種々のアルキレンオキシドの混合物は、本発明にかかるアルコール又はアルコール混合物とアルカリとの混合物に、選択された反応温度で生ずるこのアルキレンオキシド混合物の蒸気圧下で供給する。このアルキレンオキシドは、不活性ガスで約30〜60%まで希釈することができることが望ましい。これにより、爆発性の重付加に対する付加的な安全性又はアルキレンオキシドの分解がもたらされる。
【0038】
アルキレンオキシド混合物を使用するのであれば、種々のアルキレンオキシド構造単位が実質的にランダム分布しているポリエーテル鎖が形成される。このポリエーテル鎖に沿うこの構成単位の分布の変形例は、これらの成分の種々の反応速度に基づいて生じ、かつ組成がプログラム制御されたアルキレンオキシド混合物の連続的な供給により任意に達してよい。これらの種々のアルキレンオキシドを連続的に反応させれば、ブロックで分布したアルキレンオキシド構成単位を有するポリエーテル鎖が得られる。
【0039】
このポリエーテル鎖の長さは、反応生成物の範囲内で、添加量から得られた化学量論的値に実質的に相応する平均値付近でランダムに変動する。
【0040】
一般式(I)で示される化合物を製造するために、置換又は非置換の相応のフェニル−又はC4-14−アルキルグリコール又は−ジグリコールを、C2-9−アルコキシドで、好ましくは上述の一般式(I)で示される化合物に相応する平均アルコキシ化度でアルコキシ化することにより得られるアルキルグリコールアルコキシレート又は−ジグリコールアルコキシレートを使用してもよい。これらを、場合により次いでエーテル化又はエステル化し、その際、末端のヒドロキシル基の水素はR3に置き換えられる。
【0041】
この場合、この製造は、相応のアルコール不含の、好ましくは純粋なアルキルグリコール及びアルキルジグリコールから出発させ、かつ上述のように、アルコキシ化により、アルカノールから出発させずに実施する。従って、生成混合物は、残留するアルカノールを含有するのではなく、せいぜいアルキルグリコールを含有するにすぎない。アルキルグリコールについて、このアルコキシ化度の特定の分布が得られる。この製造方法により、アルキルグリコールアルコキシレートはアルコールを有さなくなる。
【0042】
アルコキシレートは、アルコキシドとのオリゴマー又はポリマー反応生成物である。当業者に公知の重合の運動性により、必然的に同族体のランダム分布になり、その平均値は慣用的に示される。この同族体の度数分布は、特にアルコキシ化度が小さい場合、この出発物質を有する。触媒の選択によりこの分布にある程度作用させることができるが、原則的にこの分布曲線は何ら変化しない。純粋なアルキルオリゴグリコールは、蒸留又はクロマトグラフィーによる後処理によってしか製造することができず、従って高価である。更に、この同族体の分布は、その凝集挙動により影響を受けることが示されている。
【0043】
この実施態様において記載されたアルコキシレートは、凝集挙動及び他の本発明の特性にとって重要な同族体の分布を有し、但しアルコールは含有しない。
【0044】
他の方法により得られる生成物には、残留するアルコールを遊離させる。「アルコール不含」という語は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定可能な量のアルコール、特にR1−OHを有しないアルコキシレートである。アルコキシ化度の分布の測定は、クロマトグラフィー法により実施することができる。記載された実施態様により得られる生成混合物中にはアルコールは存在しないので、広い範囲で無臭である。
【0045】
アルコールアルコキシレートとアルキルグリコールアルコキシレートとの比較については、WO03/60049号から示されている。
【0046】
本発明により被覆剤配合物中に使用される混合物(A)は、上述した成分a2の他に、成分a1として少なくとも1種の界面活性剤を含有する。
【0047】
この界面活性剤は、一般的には、アルコキシ化されたアルコール、アミド、酸、ベタイン、アミンオキシド又はアミンであってよいが、ジヒドロキシアルキン並びにこれらの誘導体及び混合物であってもよい。この場合、界面張力の最終レベルの調節の速度は、分子構造、例えばアルコールの鎖長及び分枝度、アルコキシレートの長さ及び溶媒和、界面活性剤の濃度及び界面活性剤の凝集に依存することがある。一般的には、小さい凝集物は大きい凝集物と比べて分散が早い。
【0048】
好ましい実施態様においては、成分a1は、厳密に1種の界面活性剤を含有する。更なる好ましい実施態様においては、成分a1は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤を有する。
【0049】
界面活性剤は、界面活性を示す物質の集合的表示であり、界面活性剤は、その溶液から界面上に高度に蓄積し、かつこれにより界面張力を減少させる。この界面張力の減少により、混合できない液体が混合可能になり、液体不純物及び固体の汚れ粒子が乳化もしくは分散し、かつ固体表面上での液体の湿潤性が改善される。
【0050】
本出願における意味の界面活性剤は、疎水性分子尾部と、親水性頭部の基とから構成される。この親水性頭部の基の種類及び電荷に応じて、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性及び両性界面活性剤が区別される。陰イオン性及び陽イオン性界面活性剤は水溶液中でイオンを形成し、両性界面活性剤からは双性イオンが生ずる。これに対して、非イオン性界面活性剤の場合には、水溶液中で電離は生じない。
【0051】
一般的には、界面活性剤の水溶液(濃度5g/l)は、20℃で、45mN/m未満の界面張力を有する。界面活性剤の例は、K. Robert Lange著の"Surfactants - A Practical Handbook"に記載されている。
【0052】
非イオン性界面活性剤の例は:
アルコール−アルコキシレート、アルコール−エトキシレート、EO/PO−ブロックコポリマー(プルロニック)、脂肪酸エステル、アルカノールアミド、アミン−エトキシレート、アミン−オキシド、ソルビトールの脂肪酸エステル、アルキルグリコシド及び−ポリグリコシド、アルキルグルタミド、アルキンジオール及びエトキシ化アルキンジオールである。
【0053】
陰イオン性界面活性剤の例は:
カルボン酸、カルボキシ化エトキシレート、アリールスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホン化脂肪酸エステル、スルホコハク酸塩、リン酸エステル、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩である。
【0054】
陽イオン性界面活性剤の例は:
第4級アミン、アルキルアンモニウムハロゲン化物、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、アミンオキシド、N−アルキルピリジニウムハロゲン化物である。
【0055】
両性界面活性剤の例は:
アミノ酸、アルキルベタイン、アミドアルキルベタイン、ココアミドプロピルベタイン、複素環ベタインである。
【0056】
ケイ素系界面活性剤の例は:ポリエーテルシロキサンである。更に、フッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0057】
好ましい実施態様においては、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。更なる好ましい実施態様においては、厳密に1種の非イオン性界面活性剤を使用する。アルコキシ化度が平均して3〜30、好ましくは4〜15、特に好ましくは5〜12であるC9−C20−、好ましくはC9−C15−、特に好ましくはC9−C13−アルコールのC2−C5−、好ましくはC2−C4−アルコキシレート又はこれらの混合物から選択された使用可能な1種又は複数種の非イオン性界面活性剤が特に好ましい。特に、C9−C11−アルコールをこの界面活性剤の合成に使用する。
【0058】
この場合、直鎖状又は分枝鎖状のアルコールであってよい。分枝鎖状のアルコールの場合、分枝度(アルコール中のメチル基の数マイナス1に相応)は、好ましくは1.1〜1.5の範囲内である。このアルコキシ化は、任意のC2−C4−アルコキシド及びこれらの混合物を用いて実施することができる。従って、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はブチレンオキシドを用いてアルコキシ化することができる。エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はこれらの混合物を使用することが特に好ましく、エチレンオキシドが殊に好ましい。このアルコキシ化度は、平均して4〜15、好ましくは5〜12である。かかる非イオン性界面活性剤は公知であり、例えばEP−A0616026号及びEP−A0616028号に記載されている。
【0059】
固体表面上での水性配合物の良好な湿潤性をもたらす界面活性剤が、本明細書に記載された被覆剤配合物における適用に好適である。それ自体十分に良好な湿潤性を示す界面活性剤の場合でも、この湿潤能は、成分a2の添加により更に高められる。このことは、例えばステンレス鋼上での接触角によって説明することができる。良好な湿潤性を示す界面活性剤の水溶液(0.2g/l、23℃、更なる添加剤を有しない)のステンレス鋼上での接触角は、10秒後に、同じ表面上での純水の接触角と比べて少なくとも15゜だけ小さいことが望ましい。好ましくは少なくとも25゜だけ、特に好ましくは少なくとも35゜だけ低下する。幾つかの(ごくわずかな)界面活性剤は、50゜だけより大きい低下が達せられる。
【0060】
同時に低発泡性をも示すとされ、従ってこの界面活性剤それ自体は泡の安定化によって不所望な作用、例えば塗料の光沢の損失をもたらさない界面活性剤が好適である。本発明の意味における低発泡性とは、CNOMO(prEN14371:2004による循環式発泡試験)において水溶液中で1200ml未満の発泡性が達せられる全種の界面活性剤を示す。好ましくは、この界面活性剤はブチルグリコール5%溶液(水中の5%ブチルグリコール)中で300ml未満の発泡性を達することが望ましい。特に好ましくは、上述の水溶液の試験の際の循環終了5分後の泡量は、300ml未満であり、ブチルグリコールの5%溶液の試験の際には50ml未満である。それぞれの溶液は、0.1gの試験物質を1リットルの溶液に溶かした濃度で25℃の測定温度で測定する。
【0061】
好まし実施態様においては、混合物(A)中では、成分a1と成分a2との比は、1:4〜20:1であり、特に好ましくは混合物(A)中では成分a1が成分a2と比べて多く、殊に好ましくはa1とa2との比が6:4〜8:2である。
【0062】
本発明にかかる被覆剤配合物中には、皮膜形成性バインダー及び樹脂を使用する。塗料の場合、DIN55945(12/1988)によるバインダーは、部分的に溶融物(粉末被覆物の場合)からも塗布されるか又は放射により反応される1種又は複数種の不揮発性成分(顔料及び充填剤を含めないが、可塑剤、乾燥剤及びその他の不揮発性助剤を含める)である;かかるバインダーについての名称は、DIN55950(04/1978)において規格化されている。このバインダーの課題は、顔料粒子の互いの結合及び下地への付着である。
【0063】
好適なバインダーは、ニトロセルロース、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、水性アクリレート分散液及び水性アクリレート−スチレン分散液のような分散液、水溶性アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル又はビニルエーテルからのポリマー、エポキシドアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、アルデヒド−及びケトン樹脂、アミノ樹脂、カルバミド樹脂、カゼイン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0064】
本発明にかかる被覆剤配合物中には、場合により充填剤も含まれる。特に、被覆剤中においては、DIN55943:1993−11及びDIN EN971−1:1996−09による充填剤は、適用媒体に不溶性であり、かつ被覆剤中に使用され、所定の物理特性を実現するか又はそれに作用する粒状又は粉末状の物質である。
【0065】
本発明により好適な充填剤は、例えばケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム(例えば、カオリン)、重晶石(硫酸バリウム)、白亜、タルク、石英粉、炭酸カルシウム、ドロマイト、Ca−ベントナイト及び有機充填剤である。
【0066】
場合により、本発明にかかる被覆剤配合物は、顔料を含有してよい。一般的な顔料は、H. Kittel, Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen, Band 2, Verlag W. A. Colomb, ISBN 3-87903-044-8に記載されている。これらの顔料には、例えば、二酸化チタン、酸化物混合相顔料、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化鉄、鉛丹、酸化アンチモン、硫化物顔料、カドミウム顔料、ウルトラマリン顔料、硫化アンチモン、クロム酸塩顔料、リン酸塩顔料、亜リン酸塩顔料、ケイ酸塩顔料、シアン化物顔料、鉛−及び鉛酸塩顔料、アンチモン酸鉛、鉛酸カルシウム、マンガン顔料、コバルト顔料、金属粉末、磁性顔料、パール光沢顔料、表面処理顔料、コア顔料(Kernpigment)、カーボンブラック顔料及び有機顔料が含まれる。
【0067】
場合により、本発明にかかる被覆剤配合物は、添加剤を含有してよい。慣用の添加剤(Johan Bielemann "Lackadditive"を参照のこと)は、以下のクラスに属する:
− 配合物のレオロジーに作用する添加剤、例えば増粘剤、例えばオルガノ層状ケイ酸塩、セルロース誘導体、ポリウレタン増粘剤、水素化ヒマシ油、ポリアミド、スルホン酸塩、ケイ酸;
− 界面活性を示す化合物、例えば湿潤剤及び分散剤(例えば、界面活性剤、アクリルポリマー、ポリウレタン)、消泡剤(例えば、シリコーン油、アルコキシレート、疎水性ケイ酸、尿素誘導体、鉱油、植物性/動物性油、エマルジョン/分散液)、付着剤(例えば、オルガノ官能シラン、金属有機化合物、例えばチタン酸塩、ジルコン酸塩及びジルコン−アルミン酸塩、塩素化オレフィン、ポリエステルのような縮合物、リン酸エステル、ポリエチレンイミン、シリコーン、シリコーン変性ポリマー、タルク)及び湿潤化剤(例えば、シリコーン添加剤、アルコキシレート);
− 表面変性用の添加剤(例えば、シリコーン添加剤、ワックス、合成ケイ酸、天然ケイ酸、タルク、尿素−ホルムアルデヒド樹脂);
− 流動助剤及び皮膜形成助剤(ポリアクリレートのようなポリマー、又はセルロースアセトブチレート、シリコーン、フッ素系界面活性剤、溶剤、ベンジン、エステル、ケトン、エーテルアルコール、グリコール);
− 触媒活性を示す化合物(乾燥剤、金属石鹸、酸性及び塩基性の重合触媒);
− 皮張り防止剤(例えば、フェノール、オキシム、メチルエチルオキシム、溶剤、歩留向上剤);
− 光保護剤(例えば、UV吸収剤、例えば(2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニル−s−トリアジン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、オキサラニリド;消光剤、例えば有機ニッケル化合物;ラジカルスカベンジャー、例えば立体障害アミン(HALS)、ペルオキシド分解剤、例えばチオエーテル、ホスファイト、HALS);
− 腐蝕防止剤;
− 殺虫剤;
− 難燃剤;
− 光開始剤(UV硬化性塗料において)。
【0068】
この有機バインダーの種類に応じて、被覆剤配合物は場合により溶剤及び/又は水を含有してよい。本発明にかかる被覆剤配合物は、有機溶剤及び水を含有することが好ましい。特に好ましく使用可能な、有機溶剤と水とからの溶剤混合物は、それぞれ水と有機溶剤とからの全量に対して少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも90%の水で組成される。
【0069】
一般的な有機溶剤は、ブチルアセテート、ブチルグリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、n−ブタノール、イソプロパノール、キシロール、ベンジン及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0070】
粉末塗料は、溶剤を実質的に有さない。
【0071】
塗料は、塗装剤である。DIN EN971−1:1996−09によれば、塗料は、液体か又はペースト形もしくは粉末形の着色された被覆剤であり、これは下地上に施与され、保護、装飾又は特定の技術的特性を有する不透明被覆物をもたらす。用語「塗料」は、「塗装剤」も同様であるが、着色された被覆剤及び着色されていない被覆剤について使用する。着色されていない塗料は、一般的には透明塗料と称される。
【0072】
DIN EN971−1:1996−09によれば、被覆剤は、液体か又はペースト形もしくは粉末形の製品であり、これは下地上に施与され、保護、装飾及び/又はその他の特定の特性を有する被覆物をもたらす。DIN規格の意味のドイツ語の用語「被覆剤」は、塗料、塗装剤及びその類似製品の上位概念である。DIN EN971−1:1996−09によれば、被覆剤は、合成樹脂、サーフェイサー、増量剤、床用被覆材料並びに類似の材料を製造するための被覆剤でもある。
【0073】
「下地」は、塗料層もしくは被覆層の基材についての一般的な名称である。建材塗料及び透明塗料用の下地としては、建築物の内部及び外部のそれぞれの材料が挙げられる。この例は、ファサード、壁、窓、家具、しっくい、コンクリート、石膏、床、寄木張りの床、合成樹脂のたたき床、タンク設備、金属構造物及びプラスチック部品である。
【0074】
界面張力についての明瞭な定義:界面張力は、混合できない2種の物質間の界面上で生じる張力である。界面活性剤は、界面上に蓄積することができ、これにより界面張力を減少させることができる。
【0075】
液体と固体との間の界面張力からは、いわゆる接触角が生じる。これに関する湿潤剤は、溶解状態で水か又はその他の液体の界面張力を減少させ、その結果これらが固体表面に達する物質である。液体がこの表面に達しないのであれば、この湿潤剤は、この液体を良好に表面上に分布させ、これによりこの接触角は減少する。
【0076】
この湿潤剤の発泡挙動は、被覆剤配合物への適用にとって重要である。この発泡挙動を特性決定するために、循環式発泡試験(CNOMO)を選択した。規格prEN14371による循環式発泡試験においては、500mlの界面活性剤溶液を、200l/hの速度で連続的にポンプ輸送させる。そして泡が形成される。それというのも、この溶液は、ノズルから液体表面上に降下するからである。このポンプ輸送(循環)過程は、10分にわたって実施し、その際、30秒ごとに、直立円筒体中に存在する泡量を測定する。10分後に、このポンプ輸送(循環)を中断し、そして更に5分にわたって30秒ごとに、泡量を測定する。発泡性の界面活性剤は、≧1.5l(過剰の発泡)までの泡量を達成することができる一方で、低発泡性の界面活性剤は、300ml未満の泡量を達成することができる。
【0077】
本発明は、本発明にかかる混合物(A)を、被覆剤への添加によりこの被覆剤中の界面張力を減少させるために用いる使用にも関する。
【0078】
特定の実施態様においては、この被覆剤は塗料配合物である。この場合、当業者に公知の全種の被覆剤を使用することができる。例として、以下のものが挙げられる:アルキド樹脂塗料、分散着色塗料、エポキシド樹脂塗料、ポリウレタン塗料、アクリル樹脂塗料、硝酸セルロース塗料、揮発性塗料、水性塗料、粉末塗料、「ハイソリッド塗料」、チキソトロープ塗料、液体塗料、スプレー塗料、浸漬塗料、流し塗用塗料、注型塗料、焼付け塗料、2成分反応塗料、高光沢塗料、絹糸光沢塗料、つや消し塗料、プライマー、上塗り塗料、単層塗料、木材質用塗料、金属薄板塗料、紙用塗料、革用塗料、窓用塗料、船用塗料、家具用塗料、自動車塗料、コイル被覆用塗料。
【0079】
特に好ましい実施態様においては、この塗料配合物は水を含有し、特に好ましくは、この塗料配合物は、有機溶剤及び水の全量に対して、高くても10質量%の有機溶剤を含有する。
【0080】
本発明は、成分a1として少なくとも1種の界面活性剤を含有し、かつ成分a2として少なくとも1種の一般式(I)
1−O−(CH2−CHR2−O)n−(CH2−CH2−O)m−R3 (I)
[式中、R1は、置換又は非置換のフェニル、C4−C14−アルキルであり、
2は、C1−C8−アルキルであり、
3は、水素、C1−C6−アルキル、ベンゾイル、アセチル、アクリル、メタクリルであり、
nは、平均値0〜10であり、
mは、平均値1〜10であり、その際、n+m≦10であり、かつm>nであり、場合により種々のアルキレンオキシド構造単位はランダム分布しているか又はブロックで配されていてよい]に相当する化合物を含有する混合物であって、この混合物の23℃の水中0.2g/lの濃度での鋼上における1秒後の接触角が純水と比較して少なくとも15゜だけ減少し、かつこの混合物はCNOMO(prEN14371:2004、0.1g/l、25℃、水中で測定)においてそのポンプ輸送過程に際して1200ml未満の発泡性を示す混合物に関する。
【0081】
1、R2、R3、n及びmについては、前記したことを適用する。
【実施例】
【0082】
実施例1:
フェニルジグリコールからのフェノール+5EOの製造
2lのオートクレーブ中に696gのフェニルジグリコール及び3gのKOHフレークを装入した。窒素で不活性化した後に、1.5時間にわたって20ミリバール及び100℃で脱水した。この減圧は、窒素添加により完了し、そしてこの反応混合物を150℃に加熱した。この温度で、撹拌しつつ504gのエチレンオキシドを添加して、反応完了後に更に1時間にわたって150℃で撹拌し、次いで80℃に冷却し、そしてオートクレーブを空にした。次いで、この反応混合物を、酢酸の添加によりpH7.0(5%水溶液として測定)に調節した。
【0083】
第1表:水溶液と固体表面との接触角
【0084】
【表1】

【0085】
この接触角を、時間分解測定する。第1表において、3種の材料のガラス、ステンレス鋼及びポリエチレン上での接触角を、それぞれ0.03秒、0.08秒及び1秒の測定時間後で示す。これらの界面活性剤を、水中0.2gの製品の溶液として分析した。Plurafac、Lutensol及びEmulanの商標は、BASF株式会社の商標である。記載された製品は、市販されている。Surfynol(R)S104及びDynolTM604は、Fa.AirProducts社から市販されている。LF431は、Plurafac LF431の略語として使用し、LF400及びLF305は同様にPlurafac LF400及びPlurafac LF305の略語として、HE50はEmulan HE50の略語として、XP40はLutensol XP40の略語として使用する。
【0086】
上述の製品は、以下の組成を有する:
− Plurafac LFタイプは、アルコキシ化された脂肪アルコールからなる低発泡性の非イオン性界面活性剤である。このタイプは、エチレンオキシドの他に、更に高級なアルキレンオキシドをそのポリエーテル鎖中に含有する。
【0087】
− Emulan HE50は、5つのエチレンオキシド単位と反応させたC4−C8−アルコールである。
【0088】
− Lutensol XP40は、C10−ゲルベアルコールを基礎とする非イオン性界面活性剤である。このアルコールは、4つのエチレンオキシド単位と反応させたものである。
【0089】
この表から、以下の結果を読み取ることができる:
− 成分a2として使用された性能増強剤Emulan HE50、Lutensol XP40及び両方のフェノールエトキシレートによれば、それ単独では、純水と比較した場合の種々の表面上での接触角の減少は極めてわずかになるものにすぎない。
【0090】
− この増強剤、すなわち成分a2と、界面活性剤Plurafac LF400、LF431及びLF305との混合物は、特に、1秒未満の短い接触時間の場合、純粋な界面活性剤と比べて接触角の顕著な減少をもたらす。
【0091】
− Surfynol及びDynolのような化合物の特性は、これらの性能増強剤を市販の非イオン性界面活性剤と組み合わせて使用により更に高めることができる。
【0092】
これらの接触角の測定のために、Firma dataphysics社のビデオ支援式高速度接触角測定装置「OCAH200」を使用した。この高速度カメラは1秒当たり360の像を撮影するものであり、測定には静滴法を使用した。観察される表面は、ポリエチレン、ステンレス鋼及びガラスからなる。これらの表面は、それぞれの測定前に不純物を除いた。必要であれば、このためにアセトンを溶剤として使用し、次いでこれらの表面を乾燥させた。それぞれの一連の測定の際、接触角の基準として、純水を比較のために測定した。試験物質を添加することにより、その接触角が純水と比べて減少することが重要である。
【0093】
第2表:ブチルグリコール/水混合物5%溶液と固体表面との間の接触角
【表2】

【0094】
第2表中の全ての測定は、23℃で実施した。これらの製品は、ブチルグリコール5%水溶液中0.2g/lの濃度で測定した。
【0095】
更に、増強剤の成分a2を添加すると、単一の溶剤、例えばブチルグリコールの添加により達することができる効果にならないという上述の効果が認識される。上述の実験においてはEmulan HE50と比べてブチルグリコールの濃度が比較的大きいにもかかわらず、この成分a2の作用は顕著に認識することができる。
【0096】
第3表:水の表面張力(OFS)
【表3】

【0097】
これらの測定は、挙げられた溶剤1l中の界面活性剤もしくは界面活性剤混合物1.0gの濃度で実施した。この溶液の表面張力を、泡圧張力計(Blasendrucktensiometer)を用いて時間分解測定した。この場合でも、これらの増強剤の成分a2(この場合はEmulan HE50)が、更なる界面活性剤への添加物として使用した際、特に短時間の場合に一般的にこの表面張力を減少させることができることが認識される。この短時間の場合の表面張力は、使用された界面活性剤の表面張力と比べて常に小さく、かつ同時にこの増強剤(この場合、Emulan HE50)の溶液の表面張力と比べて顕著に小さい。
【0098】
この場合でも、他方では、この作用が溶剤(例えば、ブチルグリコール)存在下でも認識可能であることが認識される。
【0099】
これらの表面張力は、Firma Lauda社製の泡圧張力計(MPT2型)を用いて測定した。
【0100】
第4表:循環式発泡試験(prEN14371:2004に準拠)における発泡挙動
【表4】

【0101】
第5表:
【表5】

【0102】
第4表及び第5表中のデータは、それぞれ25℃で、かつそれぞれの溶剤(水か又は5%ブチルグリコール)中で0.1g/lの試験物質の濃度で測定したものである。
【0103】
これらの表のデータから、増強剤(この場合、Emulan HE50)との配合物が発泡挙動について極めて良好であるか、市販の公知の消泡剤、例えばPluronic PE6100又はSurfynol S104と比べて顕著に良好であることは明白である。
【0104】
このことは、更なる溶剤(例えば、ブチルグリコール)存在下で実施する測定に特に当てはまる。
【0105】
従って、本発明にかかる成分a2の増強剤を有する配合物は、すなわち、それらの発泡挙動に関して被覆用途、すなわち被覆剤配合物に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 成分(A)として、成分a1として少なくとも1種の界面活性剤を含有し、かつ成分a2として少なくとも1種の一般式(I)
1−O−(CH2−CHR2−O)n−(CH2−CH2−O)m−R3 (I)
[式中、R1は、置換又は非置換のフェニル、C4−C14−アルキルであり、
2は、C1-C8−アルキルであり、
3は、水素、C1-C6−アルキル、ベンゾイル、アセチル、アクリル、メタクリルであり、
nは、平均値0〜10であり、
mは、平均値1〜10であり、その際、n+m≦10であり、かつm>nであり、かつ場合により異なるアルキレンオキシド構造単位がランダム分布しているか又はブロックで配されていてよい]に相当する化合物を含有する混合物0.001〜15質量%、
(B) 成分(B)として、皮膜形成性バインダー及び樹脂1〜95質量%、
(C) 成分(C)として、充填剤0〜80質量%、
(D) 成分(D)として、顔料0〜40質量%、
(E) 成分(E)として、添加剤0〜20質量%、及び
(F) 成分(F)として、有機溶剤及び/又は水0〜90質量%を含有し、その際、
これらの成分(A)〜(F)の質量%の合計は100質量%である被覆剤配合物であって、
混合物(A)の23℃の水中0.2g/lの濃度での鋼上における1秒後の接触角は純水と比較して少なくとも15゜だけ減少し、かつこの混合物はCNOMO(prEN14371:2004、0.1g/l、25℃、水中で測定)においてそのポンプ輸送過程に際して1200ml未満の発泡性を示すことを特徴とする被覆剤配合物。
【請求項2】
混合物(A)中に、成分a1として厳密に1種の界面活性剤が使用されていることを特徴とする、請求項1に記載の配合物。
【請求項3】
混合物(A)中に、成分a1として少なくとも1種の非イオン性界面活性剤が使用されていることを特徴とする、請求項1に記載の配合物。
【請求項4】
混合物(A)中に、成分a1として厳密に1種の非イオン性界面活性剤が使用されていることを特徴とする、請求項3に記載の配合物。
【請求項5】
混合物(A)中の成分a1と成分a2との比が、1:4〜20:1であることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項に記載の配合物。
【請求項6】
成分a2においてR3が水素であることを特徴とする、請求項1から5までの何れか1項に記載の配合物。
【請求項7】
成分a2においてR1がフェニルである場合に、nが0であり、かつmが3〜9であることを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項に記載の配合物。
【請求項8】
成分a2においてR1がC4−C14−アルキルである場合に、nが≦2であり、かつmが3〜6であることを特徴とする、請求項1から6までの何れか1項に記載の配合物。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか1項に記載の混合物を、被覆剤への添加によりこの被覆剤中の界面張力を減少させるために用いる使用。
【請求項10】
被覆剤が塗料配合物であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
塗料配合物が水を含有することを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
塗料配合物が、有機溶剤及び水の全量に対して高くても10質量%の有機溶剤を含有することを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
成分a1として少なくとも1種の界面活性剤を含有し、かつ成分a2として少なくとも1種の一般式(I)
1−O−(CH2−CHR2−O)n−(CH2−CH2−O)m−R3 (I)
[式中、R1は、置換又は非置換のフェニル、C4−C14−アルキルであり、
2は、C1−C8−アルキルであり、
3は、水素、C1−C6−アルキル、ベンゾイル、アセチル、アクリル、メタクリルであり、
nは、平均値0〜10であり、
mは、平均値1〜10であり、その際、n+m≦10であり、かつm>nであり、かつ場合により異なるアルキレンオキシド構造単位がランダム分布しているか又はブロックで配されていてよい]に相当する化合物を含有する混合物であって、この混合物の23℃の水中0.2g/lの濃度での鋼上での1秒後の接触角を純水と比較して少なくとも15゜だけ減少し、かつこの混合物はCNOMO(prEN14371:2004、0.1g/l、25℃、水中で測定)においてそのポンプ輸送過程に際して1200ml未満の発泡性を示すことを特徴とする混合物。

【公表番号】特表2008−506799(P2008−506799A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520776(P2007−520776)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007742
【国際公開番号】WO2006/008094
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】