説明

塗料組成物、及びそれを用いた反射防止部材の製造方法

【課題】煩雑な工程を行わずに、優れた反射防止性を有する反射防止部材を形成する塗料組成物であり、さらには優れた反射防止性、優れた耐擦傷性を有する反射防止部材の製造方法および画像表示装置を提供することにある。
【解決手段】 2種類以上の無機粒子、及び膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分Aを含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子である塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止部材に好適な塗料組成物、及び当該塗料組成物を用いた反射防止部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止部材は一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止部材として、支持基材上に(1)ハードコート層、(2)屈折率の高い物質からなる高屈折率層、(3)屈折率の低い物質からなる低屈折率層、を順に設けた3層構成が知られている。(特許文献1)
また、支持基材上に(1)ハードコート層と高屈折率層の2つの機能を兼ねた高屈折率ハードコート層、(2)低屈折率層、を順に設けた2層構成も提案されている。(特許文献2)
これらの構成とすることにより、支持基材に反射防止性と耐擦傷性の機能付加が可能である。また特許文献1は、支持基材上に計3回の塗布で機能付加しているのに対し、特許文献2は支持基材上に計2回の塗布で同等の機能を発現し、製造工程の簡略化を図っている。
【0004】
また製造工程を簡略化する別の方法として、ハードコート層を設けた支持基材上に、1回の塗布により高屈折率層と低屈折率層を同時に形成する製造方法が提案されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−254324号公報
【特許文献2】特開平9−226062号公報
【特許文献3】特開2008−70415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の特許文献2、3のいずれにおいても、反射防止性と接着性を両立させる場合、支持基材上にプライマー層、そして反射防止層の合計2回以上の塗布が必要であり、また製造工程が煩雑となるため更なる製造工程の簡略化が望まれていた。このような点から、製造工程の簡略化に加え、支持基材上に1回の塗布で反射防止性を付与することが強く望まれている。しかしながら、従来技術では反射防止性は得られるものの、高温高湿下に晒された場合に、支持基材と積層体との界面における接着性不良の問題、更に支持基材と積層体との屈折率差に起因する虹彩模様が観察され易く視認性不良となる問題、があった。
【0007】
そこで本発明の目的は、支持基材上に1回のみ塗布することにより、優れた反射防止性、耐湿熱接着性を有し、さらに、虹彩模様が抑制された反射防止部材を簡単な工程で製造可能な塗料組成物を提供することにあり、より好ましくは、優れた反射防止性、耐擦傷性、高温高湿下における良好な接着性、虹彩模様の低減、画像視認性を同時に付与した反射防止部材を簡単な工程で製造可能な塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
1) 2種類以上の無機粒子、及び膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分Aを含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子である塗料組成物。
2) 前記バインダー成分Aの質量平均分子量Mwが100以上500以下であることを特徴とする、1)に記載の塗料組成物。
3) 前記バインダー成分Aが、1つの反応性部位を有することを特徴とする1)または2)に記載の塗料組成物。
4) 前記塗料組成物の全成分の合計を100質量%とした際に、前記バインダー成分Aを3質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする、1)〜3)のいずれかに記載の塗料組成物。
5) 水酸基当量が0.1%以上0.5%以下であるバインダー成分Bを含むことを特徴とする、1)〜4)のいずれかに記載の塗料組成物。
6) 前記バインダー成分Bが、3つ以上の反応性部位を有することを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載の塗料組成物。
7) 1)〜6)のいずれかに記載の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする、反射防止部材の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高温高湿下における接着性、虹彩模様の低減に優れた反射防止層を、簡易な製造条件で製造することが可能な塗料組成物を得ることができる。そのため本発明の塗料組成物によれば、優れた特性の反射防止部材の製造工程が簡略化可能となるため、生産性を向上することができる。また本発明のより好ましい態様によれば、前述の効果に加えてさらに耐擦傷性を付与することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
本発明は、2種類以上の無機粒子、及び膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分(以後、膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分を、バインダー成分Aとよぶ)を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子(以後、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子を、フッ素処理無機粒子とよぶ)である。
【0012】
本発明の塗料組成物は、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することが可能であり、それにより反射防止性、耐湿熱接着性が良好で虹彩模様が低減された反射防止部材を形成することができる。そして本発明のより好ましい態様によれば、さらに耐擦傷性の良好な反射防止部材を形成することができる。(ハードコート層の塗布乾燥、)高屈折率層の塗布乾燥、および低屈折率層の塗布乾燥といったプロセスが必要な通常の反射防止部材の製造方法と比べて、本発明の塗料組成物を用いた反射防止部材の製造方法は、コストを大幅に低減することができる。以下に本発明の各要件について説明する。
〔塗料組成物中に含まれるバインダー成分〕
本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子、及び膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分を含む塗料組成物であって、該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子である。
【0013】
ここで、本発明におけるバインダー成分とは、反応性部位を有する化合物を表す。そしてバインダー成分の有する反応性部位の数は特に限定されないが、バインダー成分が後述するバインダー成分Aに該当する場合とバインダー成分Bに該当する場合とで、好ましい反応性部位の数は異なり、詳細は後述する。
【0014】
バインダー成分の膨潤度指数が5%より小さい場合(つまりバインダー成分Aを含有しない場合)には、そのようなバインダー成分を含む塗料組成物を用いて得た反射防止部材は、屈折率差の大きい2層となるために優れた反射防止性が得られるものの、高温高湿の環境下では、反射防止層と支持基材との相互作用が弱いために湿熱接着性が低下する問題を生じたり、虹彩模様が生じ外観不良となる問題がある。
【0015】
一方、バインダー成分の膨潤度指数が60%より大きい場合(つまりバインダー成分Aを含有しない場合)には、そのようなバインダー成分を含む塗料組成物を用いて得た反射防止部材は、屈折率差の大きい2層となるために優れた反射防止性、接着性が得られるものの、支持基材への浸透力が大きすぎるため、結果透明性が低下し外観不良となる問題が生じる。
【0016】
これらの点から、本発明の塗料組成物は膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分(バインダー成分A)を含有することが重要である。そしてバインダー成分Aの膨潤度指数は、好ましくは10%以上55%以下、さらに好ましくは20%以上50%以下、最も好ましくは30%以上45%以下である。
【0017】
バインダー成分Aは、膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分であれば、特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー成分であることが好ましい。
【0018】
なお、本発明でいう膨潤度指数の測定法は後述する。ここで、本発明において、塗料組成物中に含まれるバインダーを「バインダー成分」、反射防止部材中に含まれるバインダーを単に「バインダー」と表す。つまり、本発明の塗料組成物を支持基材上に塗布後、加熱乾燥などによりバインダー成分を硬化させることで(反応性部位を有する化合物の反応性部位を反応させることで)、バインダー成分はバインダーとなる(バインダー成分の反応性部位が他のバインダー成分の反応性部位と結合し、重合することで、バインダーとなる)。
【0019】
バインダー成分Aの質量平均分子量Mwは、好ましくは100以上500以下、より好ましくは100以上400以下、さらに好ましくは100以上300以下である。
【0020】
バインダー成分Aの質量平均分子量Mwを100以上500以下とすることで、膨潤度指数が5%以上60%以下と制御しやくすくなり、良好な透明性を保った状態で、耐湿熱接着性が向上し、虹彩模様の低減を図ることができるため好ましい。
【0021】
バインダー成分の質量平均分子量の測定法は、後述する。
【0022】
バインダー成分Aは、1つの反応性部位を有することが好ましい。バインダー成分Aが1つのみの反応性部位を有することで、膨潤度指数が5%以上60%以下と制御しやすくなり、少量の添加により耐湿熱接着性の向上、虹彩模様の低減を図ることができるため好ましい。
【0023】
本発明における反応性部位とは、熱及び/または光などの外部エネルギーにより反応する部位をさす。このような反応性部位として、反応性の観点からアルコキシシリル基及びアルコキシシリル基が加水分解されたシラノール基や、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。特にバインダー成分Aが、無機粒子を膜(層)中に保持する観点より、アルコキシリリル基あるいはシラノール基や、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
質量平均分子量Mwが100以上500以下であり、1つのみの反応性部位を有するバインダー成分Aとしては、特にアクリレート化合物を用いるのが好ましく、代表的なものを以下に例示する。市販されているアクリレート化合物としては、株式会社興人;(商品名“ACMO”など)、東亜合成株式会社;(商品名“アロニックスM−102,M−111、M−113”など)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
【0024】
本発明の塗料組成物中には、前記2種類以上の無機粒子、前記バインダー成分Aに加えて、さらに水酸基当量が0.1%以上0.5以下であるバインダー成分(以下、このようなバインダー成分をバインダー成分Bという)を有することが好ましい。水酸基当量が0.1%以上0.5%以下であるバインダー成分(バインダー成分B)をさらに有することにより、耐擦傷性、透明性がさらに向上した反射防止部材を得ることが可能となるため好ましい。
【0025】
これらの点から本発明の塗料組成物は、バインダー成分Aとは別に、さらに水酸基当量が0.1%以上0.5以下であるバインダー成分(バインダー成分B)を含有することが好ましい。バインダー成分Bの水酸基当量としては、より好ましくは0.2%以上0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以上0.5%以下である。
【0026】
ここで、本発明におけるバインダー成分の水酸基当量とは、バインダー分子中に存在する水酸基の数の割合であり、その測定方法は後述する。
【0027】
バインダー成分Bは、水酸基当量が0.1%以上0.5%以下であるバインダー成分であれば、特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱及び/または活性エネルギー線などにより、硬化可能なバインダー成分であることが好ましい。
【0028】
バインダー成分Bは、3つ以上8つ以下の反応性部位を有することが好ましく、より好ましくは4つ以上7つ以下、さらに好ましくは5つ以上6つ以下の反応性部位を有することが好ましい。3つ以上8つ以下の反応性部位を有する化合物では、形成する架橋密度が大きく耐擦傷性の向上を図ることができ傷付き難い表面となるため好ましい。
【0029】
なお反応性部位については前述のとおりである。
【0030】
この様な3つ以上の反応性部位を有するバインダー成分Bの代表的なものを以下に例示する。市販されている多官能アクリル系組成物としては、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD DPHA”“KAYARAD PET−30”など)、ナガセケミカル株式会社;(商品名“DA212”など)、新中村化学工業株式会社;(商品名“NKエステル A−TMM−3,A−TMM−3L,A−TMM−3LM−N”など)を挙げることができ、これらの製品を利用することができる。
〔塗料組成物中に含まれる無機粒子〕
本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含む。そして無機粒子の種類数としては2種類以上20種類以下が好ましく、より好ましくは2種類以上10種類以下、さらに好ましくは2種類以上3種類以下であり、最も好ましくは2種類である。
【0031】
ここで無機粒子の種類とは、無機粒子を構成する元素の種類によって決まる(後述するフッ素処理無機粒子においては、表面処理される前の無機粒子を構成する元素の種類によって決まる。)。例えば、酸化チタン(TiO)と酸化チタンの酸素の一部をアニオンである窒素で置換した窒素ドープ酸化チタン(TiO2−x)とでは、無機粒子を構成する元素が異なるために、異なる種類の粒子である。また、同一の元素、例えばZn、Oのみからなる無機粒子(ZnO)であれば、その粒径が異なる無機粒子が複数存在しても、またZnとOとの組成比が異なっていても、これらは同一種類の無機粒子である。また酸化数の異なるZn粒子が複数存在しても、無機粒子を構成する元素が同一である限りは(この例ではZn以外の元素が全て同一である限りは)、これらは同一種類の無機粒子である。
【0032】
そして本発明の塗料組成物は、高屈折率層構成成分と、低屈折層構成成分とが混合されていることが好ましく、これにより本発明の塗料組成物を支持基材に1回のみ塗布することによって、高屈折率層、低屈折率層といった、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を有する反射防止部材を得ることができる。
【0033】
本発明の塗料組成物における低屈折率層構成成分及び高屈折率層構成成分は、異なる種類の無機粒子で各々構成されることが好ましい。そのため、本発明の塗料組成物は、2種類以上の無機粒子を含むことが好ましい。以下、低屈折率層構成成分として好適な無機粒子及び高屈折率層構成成分として好適な無機粒子について述べる。
【0034】
初めに低屈折率層構成成分として好適に使用される無機粒子に関して説明する。本発明の塗料組成物の、2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子は、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子(フッ素処理無機粒子)であることが重要であり、このフッ素処理無機粒子が低屈折率層構成成分として好適である。(フッ素化合物Aについては後述。)
このフッ素処理無機粒子の構成材料として好適な無機粒子としては、Si,Na,K,Ca,およびMgから選択される元素を含む無機粒子が好ましく挙げられ、さらに好ましくは、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物(NaF,KFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)から選ばれる化合物を含む無機粒子であり、耐久性、屈折率などの点からシリカ粒子が特に好ましい。なお、フッ素化合物Aにより表面処理されたシリカ粒子は、以後フッ素処理シリカ粒子とよぶ。
【0035】
フッ素処理無機粒子の構成材料の無機粒子として好ましく用いられるシリカ粒子とは、ケイ素化合物又は有機珪素化合物の重合(縮合)体のいずれかからなる組成物を含み成る粒子を指し、一般例として、SiOなどのケイ素化合物から導出される粒子の総称である。
【0036】
フッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子の、表面処理される前の形状は特に限定されるものではないが、フッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子がシリカ粒子であり、該シリカ粒子が中空及び/又は多孔質の形状であることが好ましい(中空シリカ粒子とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ粒子であり、多孔質シリカ粒子とは、粒子の表面及び内部に細孔を有するシリカ粒子である。)。なお、中空及び/又は多孔質を有するシリカ粒子のことを、以下中空粒子と記載する。
【0037】
続いて、低屈折率層に好適な、フッ素処理無機粒子の構成材料である無機粒子の数平均粒子径について説明する。このような無機粒子の数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が1nmよりも小さくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止部材における支持基材上の低屈折率層中の空隙密度が低下することによる屈折率の上昇や透明度の低下が起こることがあるため好ましくなく、無機粒子の数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が200nmよりも大きくなると、該粒子を含む塗料組成物より得られる反射防止部材の低屈折率層の厚さが厚くなり良好な反射防止性能が得られなくなり好ましくないため、本発明の塗料組成物中の、フッ素化合物により表面処理される無機粒子は、数平均粒子径(表面処理される前の数平均粒子径)が、好ましくは1nmから200nm、より好ましくは5nmから180nm、更に好ましくは5nmから100nmである。
【0038】
フッ素処理無機粒子は、好適に空気側(最表面層)へ移動して、好適に低屈折率層を形成することができるため、塗料組成物に用いられる2種類以上の無機粒子の少なくとも1種類の無機粒子には、フッ素化合物Aによる表面処理がされていることが重要である。なお、2種類以上の無機粒子の全ての無機粒子がフッ素処理無機粒子であるよりも、フッ素処理無機粒子と、該表面処理をされていない他の無機粒子(以後、フッ素処理無機粒子を除いた無機粒子を、他の無機粒子という)の両方を含む塗料組成物を用いる方が、屈折率差の大きい2層を得ることができるために、反射防止性の点で好ましい。つまり、本発明の塗料組成物においては、フッ素処理無機粒子と他の無機粒子の両方を各々少なくとも1種類含むことが好ましい。なお、他の無機粒子は高屈折率層構成成分として好適に使用されるので、後ほど説明する。
【0039】
また、フッ素化合物Aによる表面処理を施した無機粒子としては、シリカ粒子などのシリカ粒子であることが、つまりフッ素処理無機粒子としては、フッ素処理中空シリカ粒子であることが特に好ましい。
【0040】
また本発明でいうフッ素化合物Aとは、フルオロアルキル基及び反応性部位を有する化合物を意味する。なお、フルオロアルキル基とは、後述の通りアルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基である。そして反応性部位とは、前述の通り熱及び/または光などの外部エネルギーにより反応する部位である。またフッ素化合物Aは、後述するフッ素化合物Bと同様の化合物が選択される場合もある。
【0041】
シリカなどの無機粒子に対するフッ素化合物Aによる表面処理工程は、一段階で行われても良いし、多段階で行われても良い。また、複数の段階でフッ素化合物Aを用いても良いし、一つの段階のみでフッ素化合物Aを用いても良い。
【0042】
またシリカなどの無機粒子の表面処理工程にて好ましく用いられるフッ素化合物Aは、単一化合物でも良いし複数の異なる化合物を用いても良い。
【0043】
フッ素化合物Aによる表面処理とは、中空シリカ粒子などの無機粒子を化学的に修飾し、シリカ粒子などの無機粒子にフッ素化合物Aを導入する工程をさす。
【0044】
シリカ粒子などの無機粒子に直接フッ素化合物Aを導入する方法としては、1分子中にフッ素セグメントとシリルエーテル基(シリルエーテル基が加水分解されたシラノール基を含む)との両方を持つフルオロアルコキシシラン化合物を少なくとも1種類以上と開始剤とを共に撹拌することにより成される方法がある。しかしシリカ粒子などの無機粒子に直接フッ素化合物Aを導入する場合、反応性の制御が困難になったり、塗料化後塗布時に塗布斑等が発生しやすくなったりする場合がある。
【0045】
また中空シリカ粒子などの無機粒子を化学的に修飾して、中空シリカ粒子などの無機粒子にフルオロアルキル基を導入する更なる方法としては、中空シリカ粒子などの無機粒子を架橋成分にて処理し、フッ素化合物Aとつなぎ合わせる方法がある。官能基を有したフッ素化合物Aとしては、フルオロアルキルアルコール、フルオロアルキルエポキシド、フルオロアルキルハライド、フルオロアルキルアクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、フルオロアルキルカルボキシレート(酸無水物及びエステル類を含む)、などを用いることができる。
【0046】
架橋成分としては、分子内にフッ素は無いが、フッ素化合物Aと反応可能な部位と、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位を少なくとも一カ所ずつ持っている化合物を指し、中空シリカ粒子などの無機粒子と反応可能な部位としては反応性の観点からシリルエーテル及びシリルエーテルの加水分解物であることが好ましい。これら化合物は一般的にシランカップリング剤と呼ばれ、例としては、グリシドキシアルコキシシラン類、アミノアルコキシシラン類、アクリロイルシラン類、メタクリロイルシラン類、ビニルシラン類、メルカプトシラン類、などを用いることができる。
【0047】
本発明の塗料組成物に好適なフッ素処理無機粒子のより好ましい形態は、シリカ粒子(特に中空シリカ粒子)を下記一般式(I)で示される化合物で処理し、更に下記一般式(II)で示されるフッ素化合物Aで処理した粒子である。
B−R−SiR(OR3−n 一般式(I)
D−R−Rf2 一般式(II)
(上記一般式中のB、Dは反応性部位を示し、R、Rは炭素数1から3のアルキレン基及びそれらから導出されるエステル構造を示し、R、Rは水素又は炭素数が1から4のアルキル基を示し、Rf2はフルオロアルキル基を示し、nは0から2の整数を示し、それぞれ側鎖を構造中に持っても良い。)
一般式(I)の具体例としては、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシブチルトリメトキシシラン、アクリロキシペンチルトリメトキシシラン、アクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、アクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘキシルトリメトキシシラン、メタクリロキシヘプチルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン及びこれら化合物中のメトキシ基が他のアルコキシル基及び水酸基に置換された化合物を含むものなどが挙げられる。
【0048】
フッ素化合物Aである一般式(II)の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0049】
分子中にフルオロアルキル基Rf2を有さない一般式(I)で表される化合物を用いることにより、簡便な反応条件で、中空シリカなどのシリカ粒子表面を修飾することが可能となるばかりではなく、シリカ粒子表面に反応性を制御しやすい官能基を導入することが可能となり、その結果、反応性部位及びフルオロアルキル基Rf2を有するフッ素化合物A(一般式(II))を、一般式(I)で示される化合物を介して、シリカ粒子表面で反応させることが可能になる。
【0050】
なお、低屈折率層とは支持基材上に積層される屈折率の異なる2層からなる反射防止層中のうちの1層であり、隣接する1層(反射防止フィルム構成層であり空気層を除く)よりも相対的な屈折率が低い層である。なお上述のように本発明の製造方法により得られる反射防止部材は、支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順に形成されることが好ましい。屈折率を低下させる方法としてフッ素系高分子を用いる方法(特開2002−36457号公報)や密度を低下させる方法(特開平8−83581号公報)が知られている。そのため本発明の塗料組成物にはフッ素処理無機粒子を含むことが重要である。塗料組成物中にフッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子を含むことで、これらの粒子が低屈折率層を好適に形成可能であるためである。ここで、前述したシリカ粒子及び一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表されるフッ素化合物Aは、本発明で用いられる塗料組成物中では、シリカ粒子を一般式(I)で表される化合物と一般式(II)で表される化合物により表面処理して縮合体および/または重合体として存在していることが低屈折率層を好適に形成可能であるため好ましい。
【0051】
続いて前記フッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子に関して説明する。フッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子は、高屈折率層構成成分として好適に用いられる。
【0052】
前記フッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子は、特に限定されないが、金属や半金属の酸化物であることが好ましく、Zr,Ti,Al,In,Zn,Sb,Sn,およびCeよりなる群から選ばれる少なくとも一つの金属や半金属の酸化物粒子であることがさらに好ましい。また高屈折率層構成成分として好適に用いられる無機粒子は、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子が好ましく、具体的には酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化アンチモン(Sb)、およびインジウムスズ酸化物(In)から選ばれる少なくとも一つの金属酸化物、や半金属酸化物であり、特に好ましくはアンチモン含有酸化スズ(ATO)や酸化チタン(TiO)である。
【0053】
本発明の塗料組成物は、これらフッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子(金属酸化物や半金属酸化物からなる粒子など)を少なくとも1種類含むことが好ましい。より好ましくはフッ素処理無機粒子を除いた他の無機粒子を1種類以上5種類以下含む態様であり、特に好ましくは1種類含む態様である。
【0054】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として好適な他の無機粒子の数平均粒子径、特に低屈折率層構成成分として好適なシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物や半金属酸化物からなる無機粒子の平均粒子径としては、好ましくは、1nmから150nm、より好ましくは2nmから100nmである。他の無機粒子の数平均粒子径が1nmよりも小さくなると、他の無機粒子を主として含むこととなる層中の空隙密度が低下することによる透明度の低下が起こるため好ましくなく、他の無機粒子の数平均粒子径が150nmよりも大きくなると、高屈折率層の厚さが大きくなりすぎて良好な反射防止性能が得られにくくなり好ましくない。
【0055】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として好適な他の無機粒子の屈折率、特にシリカ粒子よりも屈折率が高い金属酸化物や半金属酸化物からなる無機粒子の屈折率としては、好ましくは1.58以上2.80以下、より好ましくは1.60以上2.50以下である。無機粒子の屈折率が1.58よりも小さくなると、高屈折率層の屈折率が低下することがあり、無機粒子の屈折率が2.80よりも大きくなると、高屈折率ハードコート層と支持基材との屈折率差が上昇し、良好な反射防止性能が得られなくなり、また干渉模様が発生し外観が悪化することがある。
【0056】
塗料組成物中の高屈折率層構成成分として用いられる他の無機粒子については前述した通りだが、フッ素化合物Aによる表面処理がされた無機粒子がシリカ粒子の場合は、該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましく、このような該シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子としては、数平均粒子径が1nmから150nmであり、かつ屈折率が1.60から2.80の金属酸化物や半金属酸化物が好ましく用いられる。そのような金属酸化物や半金属酸化物の具体例としては、アンチモン含有酸化スズ(ATO)及び/または酸化チタン(TiO)が挙げられ、特に反射防止性の点から屈折率が高い酸化チタンがより好ましい。
【0057】
本発明の塗料組成物において、フッ素処理無機粒子がフッ素処理シリカ粒子であり、他の無機粒子がシリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子である場合、支持基材の少なくとも片面上に該塗料組成物を1回のみ塗布して続いて乾燥することで、フッ素処理シリカ粒子を含有した低屈折率層と、シリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子を含有する高屈折率層からなる反射防止層を、支持基材、高屈折率層、低屈折率層の順に好適に形成できるため好ましい態様である。
〔フッ素化合物B〕
本発明の塗料組成物は、前述の2種類以上の無機粒子及びバインダー成分Aに加えて、フルオロアルキル基及び反応性部位を有するフッ素化合物Bを含むことが好ましい。塗料組成物が、フッ素化合物Bを含有することにより、該塗料組成物を用いて得られる反射防止部材の反射防止層には、フッ素化合物Bに由来する成分を含有することができる。
【0058】
なお、本発明でいうフルオロアルキル基とは、アルキル基が持つ全ての水素がフッ素に置き換わった置換基であり、フッ素原子と炭素原子のみから構成される置換基である。
【0059】
フッ素化合物B中のフルオロアルキル基の数は必ずしも一つである必要はなく、フッ素化合物Bは複数のフルオロアルキル基を有してもよい。
【0060】
またフッ素化合物Bが有するフルオロアルキル基は、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1であることが好ましい。フルオロアルキル基Rf1は、塗料組成物の乾燥時のフッ素処理粒子同士の粒子間相互作用の抑制の点から炭素数5以上7以下が好ましく、さらに好ましくは炭素数6以上である。また分岐状に比べ直鎖状が立体障害が小さく、フッ素処理無機粒子に吸着し易い点から直鎖状が好ましい。フルオロアルキル基を、炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基Rf1とすることにより、粒子の分離性が良化し、屈折率の異なる2層の自発的な層形成が容易になり、反射防止性が良化するため好ましい。
【0061】
フッ素化合物B中の反応性部位とは、一般式(B)においてはA、一般式(A)においてはアクリル基(HC=C(R)−)である。フッ素化合物B中の反応性部位の数は、一つである必要はなく、複数の反応性部位を有してもよい。特に反応性、ハンドリング性の観点から、アルコキシシリル基あるいはシラノール基や、アクリロイル(メタクリロイル)基が好ましい。
【0062】
本発明でいうフッ素化合物Bは、1種類であっても良いし、2種類以上を混合して用いてもよい。またフッ素化合物Bは、フッ素化合物Aと同一化合物となる場合があってもよい。また、塗料組成物中に紫外線などにより硬化するフッ素化合物Bを含有する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから、紫外線による硬化工程での酸素濃度はできるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。
【0063】
また本発明におけるフッ素化合物Bは、以下の一般式(A)のモノマー、一般式(B)のモノマー、一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマー、及び一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることがより好ましい。
C=C(R)−COO−R−Rf1 ・・・一般式(A)
A−R−Rf1 ・・・一般式(B)
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rf1は炭素数4〜7の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Rは炭素数1〜10のアルキル基、Aは反応性部位である。)
なおフッ素化合物Bは、フルオロアルキル基および反応性部位を有するが、一般式(A)のモノマーや一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーについては、Rf1がフルオロアルキル基であり、HC=C(R)−が反応性部位である。また、一般式(B)のモノマーや一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーについては、Rf1がフルオロアルキル基であり、Aが反応性部位である。
【0064】
一般式(A)のモノマーの化合物の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフロオロプロピルアクリレート、2−パーフルオロブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロデシルエチルアクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−3−メトキシブチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルアクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラフルオロプロピルアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ドデカフルオロヘプチルアクリレート、ヘキサデカフルオロノニルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2−パーフルオロブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロデシルエチルメタクリレート、2−パーフルオロ−3−メチルブチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−3−メチルブチル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−5−メチルヘキシルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−5−メチルヘキシル−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、3−パーフルオロ−7−メチルオクチルエチルメタクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、オクタフルオロペンチルメタクリレート、ドデカフルオロヘプチルメタクリレート、ヘキサデカフルオロノニルメタクリレート、1−トリフルオロメチルトリフルオロエチルメタクリレート、ヘキサフルオロブチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0065】
また一般式(A)のモノマーに由来するオリゴマーの化合物としては、上記一般式(A)のモノマーを用いて、ラジカル重合などの反応により得られる、平均重合度2〜10程度の化合物が例示される。
【0066】
一般式(B)のモノマーの化合物としては、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(TSL8233、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン(TSL8257、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)などをはじめとしたフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシランが例示される。
【0067】
また一般式(B)のモノマーに由来するオリゴマーの化合物は、上述のフルオロアルキルシランに所定量の水を加え酸触媒の存在下にて副生するアルコールを留去しながら反応させることにより得られる化合物である。この反応により、フルオロアルキルシランの一部が加水分解し、更にこれらが縮合反応を起こしオリゴマーが得られる。加水分解率は使用する水の量によって調節することができる。加水分解に用いる水の量は、通常シランカップリング剤に対して1.5モル倍以上である。さらに得られるオリゴマーの平均重合度は2〜10の化合物であることが好ましい。
上記のような好ましいフッ素化合物Bとして、2−パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、2−パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシランなどが例示される。
【0068】
本発明の塗料組成物としては、前述の2種類以上の無機粒子や、バインダー成分A、バインダー成分B,フッ素化合物Bに加えて、さらに有機溶媒を含むことが好ましい。有機溶媒を含むと、フッ素処理無機粒子の粒子間相互作用を抑制し、またフッ素処理無機粒子同士の凝集体が抑制しやすくなる。また、塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止することが可能となるため、屈折率の異なる2層からなる反射防止層の自発的な層形成が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるため特に好ましい。
【0069】
有機溶媒は、特に限定されるものではないが、通常、常圧での沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、フッ素類等が用いられる。これらは、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、特に無機粒子の安定性の点からイソプロピルアルコール、プロピレングリコールなどが特に好ましい。
【0070】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニチルアルコール等を挙げることができる。ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等を挙げることができる。エーテル類としては、例えば、ジブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどを挙げることができる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等を挙げることができる。芳香族類としては、例えば、トルエン、キシレン等を挙げることができる。アミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
【0071】
また本発明の塗料組成物は、全成分の合計を100質量%とした際に、前記フッ素化合物Bを1質量%以上30質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは2質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは3質量%以上20質量%以下である。ここで、本発明の全成分とは、塗料組成物中に含まれる全成分を表し、有機溶媒、前述のバインダー成分、その他各種添加剤も含む全ての成分を表す。
【0072】
本発明の塗料組成物が、全成分の合計100質量%において、前記フッ素化合物Bを1質量%以上30質量%以下含むことにより、フッ素化合物Bがフッ素処理無機粒子表面に吸着し、フッ素処理無機粒子同士の凝集体の形成を抑制し、その結果塗料組成物の乾燥時の流動性の低下を防止し、屈折率差の大きな2層の厚み制御が容易となり、良好な反射防止性を発現することが可能となるためフッ素化合物Bを上記範囲とすることが好ましい。またフッ素化合物Bは、塗料組成物を塗布し、乾燥させる過程における無機粒子の分散安定化に寄与するため、溶媒も含んだ全成分に対する割合が重要であり、無機粒子に対する割合ではなく、全成分に対する比率でフッ素化合物Bを上記範囲含有することが好ましい。
〔塗料組成物のその他の成分〕
本発明の塗料組成物としては、更に開始剤や硬化剤や触媒を含むことが好ましい。開始剤及び触媒は、フッ素処理無機粒子であるフッ素処理シリカ粒子とバインダー成分との反応を促進したり、バインダー成分間の反応を促進するために用いられる。該開始剤としては、塗料組成物をアニオン、カチオン、ラジカル反応等による重合および/または縮合および/または架橋反応を開始あるいは促進できるものが好ましい。
【0073】
該開始剤、該硬化剤、及び触媒は、種々のものを使用できる。また、複数の開始剤を同時に用いても良いし、単独で用いても良い。さらに、酸性触媒や、熱重合開始剤や光重合開始剤を併用しても良い。酸性触媒の例としては、塩酸水溶液、蟻酸、酢酸などが挙げられる。熱重合開始剤の例としては、過酸化物、アゾ化合物が挙げられる。また、光重合開始剤の例としては、アルキルフェノン系化合物、含硫黄系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アミン系化合物などが挙げられるがこれらに限定されるものではないが、硬化性の点から、アルキルフェノン系化合物が好ましく、具体例としては、2.2−ジメトキシ−1.2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−フェニル)−1−ブタン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタン、1−シクロヒキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−エトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、などが挙げられる。
【0074】
なお、該開始剤及び該硬化剤の含有割合は、塗料組成物中のバインダー成分量100質量部に対して0.001質量部から30質量部が好ましく、より好ましくは0.05質量部から20質量部であり更に好ましくは0.1質量部から10質量部である。
【0075】
その他として、本発明の塗料組成物には更に、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させても良い。
[塗料組成物中の各成分の含有量]
本発明の塗料組成物は、塗料組成物の全成分の合計を100質量%とした際に、前記バインダー成分Aを3質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。
【0076】
バインダー成分Aの含有比率(質量比率)を、3質量%以上20質量%以下とすることで、塗料組成物中において支持基材との相互作用が有効に作用するため接着性が向上し、さらに支持基材にバインダー成分Aが浸透することで支持基材を可視光の波長以下のレベルで粗面化するため透明性は維持しつつ、虹彩模様の抑制が可能となるため好ましい。
【0077】
また塗料組成物の全成分の合計を100質量%とした際に、バインダー成分Bの含有比率(質量比率)を、10質量%以上20質量%以下とすることで、塗料組成物中においてフッ素処理無機粒子が凝集することなく安定に存在し、また得られる反射防止フィルムにおいて、良好な反射防止性、耐擦傷性が十分に得られるため好ましい。
【0078】
また無機粒子に関して、好ましくは、フッ素処理無機粒子/他の無機粒子の含有比率(質量比率)が、フッ素処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1であることが好ましい。
【0079】
フッ素処理無機粒子/他の無機粒子=1/30〜1/1とすることで、得られる反射防止フィルムの低屈折率層の厚みと高屈折率層の厚みの比を一定にすることができる。このため1回の塗布で、低屈折率層と高屈折率層の厚みを同時に、反射防止機能を有する厚みとすることが容易であるため好ましい。また高屈折率層の厚みを厚くし、ハードコート機能を付与しようとする場合にも、反射防止機能を損なうことなく、1回の塗布で必要な厚みとすることができるため、反射防止機能とハードコート機能の両立の点からフッ素処理無機粒子と他の無機粒子の割合を上記範囲とすることが可能となるため好ましい。フッ素処理無機粒子/他の無機粒子の含有比率(質量比率)として、より好ましくはフッ素処理無機粒子/他の無機粒子=1/29〜1/5、さらに好ましくは1/26〜1/10、特に好ましくは1/23〜1/15である。
【0080】
また好ましくは、本発明の塗料組成物100質量%において、(フッ素処理無機粒子を含む)全ての無機粒子(ここでいう全ての無機粒子には、フッ素化合物Aによる表面処理によって、フッ素処理無機粒子中の無機粒子と結合したフッ素化合物Aなど有機化合物も含めたフッ素処理無機粒子全体の質量も含める。)の合計が0.2質量%以上40質量%以下、有機溶媒を40質量%以上98質量%以下、フッ素化合物Bを1質量%以上30質量%以下、バインダー成分、開始剤、硬化剤、及び触媒などのその他の成分を0.1質量%以上40質量%以下を含む態様であり、より好ましくは、(フッ素処理無機粒子を含む)全ての無機粒子の合計が1質量%以上35質量%以下、有機溶媒を50質量%以上97質量%以下、フッ素化合物Bを2質量%以上25質量%以下、その他の成分を1質量%以上15質量%以下含む態様である。
【0081】
さらに好ましい態様としては、2種類以上の無機粒子が金属酸化物粒子とフッ素処理シリカ粒子であり、これらの合計が本発明の塗料組成物100質量%において2質量%以上30質量%以下、有機溶媒が60質量%以上95質量%以下、フッ素化合物Bを3質量%以上20質量%以下、その他の成分が2質量%以上10質量%以下の態様である。
【0082】
[反射防止部材]
反射防止部材は、その必要性や要求される性能などは特開昭59−50401号公報に記載されている様に、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上の屈折率差を有する2層からなる反射防止層を支持基材上に積層させることで構成された様態である。また支持基材上の反射防止層を構成する2層の屈折率差は5.0以下であることが好ましい。また反射防止フィルムにおいては、支持基材から計測し最も離れた層が低屈折率層であることが更に好ましい。つまり支持基材、高屈折率層、低屈折率層がこの順になるように支持基材上に反射防止層が積層された様態が好ましい。
【0083】
屈折率差とは隣接する層間の屈折率を相対的に比較した値であり、相対的に屈折率が低い層を低屈折率層と呼び、相対的に屈折率が高い層を高屈折率層と呼ぶ。
【0084】
上述した塗料組成物を支持基材の少なくとも片面に、1回のみ塗布する工程を設けることによって、反射防止性が優れた、屈折率の異なる2層を有する反射防止フィルムを製造することができる。なお、支持基材の少なくとも片面上に、塗料組成物を1回のみ塗布するとは、支持基材に対して1種類の塗料組成物を1回だけ塗布することによって、1層の液膜を形成することを指すものとする。
【0085】
本発明において上記1種類の塗料組成物から2層を構成する原理としては、塗料組成物中の2種類以上の無機粒子の表面自由エネルギー差をドライビングフォースとして、相分離構造を形成するものと考えられる。フッ素処理無機粒子は表面自由エネルギーが低いため、空気側(つまり最表面層)へ移動しやすいと考えられ上層側(空気側、つまり最表面層)へ移動しやすいと考えられる。
【0086】
しかし、該塗料組成物中にバインダー成分Aが含まれていない場合、支持基材へのバインダー成分の浸透が阻害されるため、透明性は得られるものの、高温高湿下での接着性が得られなかったり、虹彩模様の抑制ができなくなり外観が悪化する問題が生じる。
【0087】
本発明における屈折率の異なる2層とは、反射分光膜厚計(FE−3000、大塚電子株式会社製)によって、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用いて得られる屈折率が異なる2つの層をさす。
【0088】
なお、このような本発明の塗料組成物によって得られる反射防止部材には、屈折率の異なる2層からなる反射防止層中の高屈折率層と低屈折率層との間には、明確な界面があることが好ましい。
【0089】
反射防止部材として良好な性能を示すには、分光測定に置いて最低反射率が好ましくは0%以上1.0%以下、より好ましくは0%以上0.7%以下、さらに好ましくは0%以上0.6%以下であり、特に好ましくは0%以上0.5%以下であることが望ましい。
【0090】
また、反射防止部材として良好な性質を示すには更に、透明性が高いことが望ましい。透明性が低い反射防止部材を画像表示装置の一部に用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じるために好ましくない。本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材の透明性の評価にはヘイズ値を用いることができる。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。反射防止部材のヘイズ値としては好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%未満、更に好ましくは1.0%未満であり、値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、現実的な下限値は0.01%程度と思われる。ヘイズ値が2.0%より大きいと、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。
【0091】
反射防止部材として良好な性質を示すには、高屈折率層、及び低屈折率層の厚みが特定の厚みであることが望ましく、低屈折率層の厚みが好ましくは50nm以上200nm以下、さらに好ましくは70nm以上150nm以下であり、特に好ましくは90nm以上130nm以下であることが望ましい。低屈折率層の厚みが50nm未満であると光の干渉効果が得られず反射防止効果が得られず画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。また200nmを超える場合も光の干渉効果が得られなくなるため画像の映り込みが大きくなるために好ましくない。
【0092】
一方、高屈折率層の厚みは、好ましくは100nm以上6000nm以下、さらに好ましくは300nm以上5500nm以下、特に好ましくは400nm以上5000nm以下であることが望ましい。高屈折率層の厚みが100nm未満であると反射防止効果は得られるものの、耐擦傷性が得られず傷つきやすくなり外観欠点などの問題を引き起こしやすくなる。また6000nmを超える場合は、耐擦傷性が得られるものの、塗膜の硬化収縮が大きくなり反射防止部材が湾曲し、ハンドリング性が悪くなるばかりとなるだけではなく、塗膜表面にクラックなどの外観欠点を生じ易くなるなどの問題を発生しやすくなる。
【0093】
また高屈折率層の厚みを400nm以上6000nm以下とすると、反射防止機能に加えて、高屈折率層にハードコート機能を付与することができる。このような層を高屈折率ハードコート層といい、これは、支持基材に耐傷性と高屈折率の両方の機能を付与できるため好ましい。
【0094】
高屈折率ハードコート層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。本発明の塗料組成物により得られる反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[支持基材]
反射防止部材をCRT画像表示面やレンズ表面に直接設ける場合を除き、反射防止部材は支持基材を有することが重要である。支持基材としては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート及びポリエーテルケトンなどの材料から構成されるフィルムが挙げられるが、これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレートフィルムである。ポリエチレンテレフタレートを支持基材とすることにより、バインダー成分A(膨潤度指数が5%以上60%以下のバインダー成分)の支持基材への浸透力を適切に制御しやすくなり、基材の透明性を損なうことなく、バインダーの少量の添加により耐湿熱接着性の向上、虹彩模様の低減を図ることができるため好ましい。
【0095】
本発明の好ましい態様においては、上述のような耐擦傷性に欠けるプラスチックフィルム上に、該塗料組成物を1回塗布する工程を設けることにより、反射防止性に加え耐擦傷性も付与できるため、従来技術のように、支持基材上にハードコート層を設ける必要はなく(若しくは支持基材としてハードコート層を有するフィルムを使用する必要はなく)、支持基材自体の耐擦傷性が劣る材料でも適用可能である。また上述のように、支持基材は接着層、シールド層、滑り層などの各種機能層を有するフィルムとすることもできる。
【0096】
支持基材の光透過率は、80%以上100%以下であることが好ましく、86%以上100%以下であることがさらに好ましい。ここで光透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる透明材料の透明性の指標である。反射防止部材の光透過率としては値が大きいほど良好であり、値が小さいとヘイズ値が上昇、画像劣化が生じる可能性が高くなるため好ましくない。ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
【0097】
支持基材のヘイズは、0.01%以上2.0%以下であることが好ましく、0.05%以上1.0%以下であることがさらに好ましい。
【0098】
支持基材の屈折率は、1.4〜1.7であることが好ましい。なお、ここでいう屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
【0099】
支持基材は、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を含有してもよい。赤外線吸収剤の含有量は、支持基材の全成分100質量%において0.01質量%以上20質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上10質量%以上であることがさらに好ましい。滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を透明支持体に含有してもよい。不活性無機化合物の例には、SiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。更に、支持基材に、表面処理を実施してもよい。
〔本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法〕
本発明の塗料組成物を用いた反射防止フィルムの製造方法では、前述の本発明の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法などの塗布方法によって少なくとも1回塗布する工程(塗布工程)を有することが重要である。そして、続いて塗布した塗料組成物を加熱などにより乾燥を行う工程(乾燥工程)により、反射防止フィルムを得ることができる。
【0100】
本発明の製造方法によれば、前記本発明の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布する工程により、支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができる。
【0101】
この屈折率の異なる二層からなる反射防止層を同時に形成するメカニズムとして以下のモデルを考えている。本発明における塗料組成物の態様は、低屈折率層構成成分であるフッ素処理無機粒子と、高屈折率層構成成分である無機粒子を含む構成であり、該塗料組成物に膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分Aとを含有する。そして屈折率の異なる二層からなる反射防止層を形成しやすくする一つの方法として、バインダー成分B、およびフッ素化合物Bを含むことが好ましい。以下では本発明の好ましい態様であるフッ素化合物Bを含む態様についてのメカニズムを例に取り説明する。
【0102】
まず塗料組成物中では、フッ素処理無機粒子と親和性の高いフッ素化合物Bが、フッ素処理無機粒子表面に選択的に吸着し、フッ素処理無機粒子とその他無機粒子が均一に分散した状態を保っている。
また膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分Bも均一に分散した状態を保っている。
この塗料組成物を支持基材上に塗布した後においても、塗布された塗料組成物は同様にフッ素処理無機粒子とその他無機粒子、更にバインダー成分Aも均一に分散した状態を保っている。そして乾燥する工程において、低屈折率構成成分であるフッ素処理無機粒子は、エネルギー的に安定な空気側(最表面)に移行しようとする。同時に乾燥過程のため溶媒の揮発に伴い、フッ素処理無機粒子と、バインダー成分Aとの距離が近づく結果、該粒子とバインダー成分Aとの相互作用が大きくなってくる。
【0103】
疎水的であるフッ素処理無機粒子と、フッ素処理無機粒子と比較し、親水的なバインダー成分Aとの距離が近づくと相互の親和性は乏しいため、2種の材料は最も離れた位置に存在しようとする。空気側は表面エネルギーが低い界面であることから、フッ素処理無機粒子が空気側に存在する方が安定であり、バインダー成分Aはフッ素処理無機粒子と最も離れた支持基材に近い場所に位置するのが安定である。乾燥過程において、溶媒の蒸発とともに流動性がなくなり、フッ素処理無機粒子とバインダーの流動性が悪くなるが、フッ素化合物Bが存在すると溶媒が揮発する過程においても十分な流動性を得ることができるため、フッ素処理無機粒子の移動が容易となる。この様な乾燥過程を経る結果、空気側である最表層にはフッ素処理無機粒子が再配列し均一な低屈折率層を形成することができ、下層にはバインダー成分A及びフッ素処理されていない無機粒子からなる高屈折率層を形成するものと考えている。なお、バインダー成分Aは、支持基材に近い位置に配置するため支持基材へ一部浸透し、支持基材の表面を可視光の波長以下のオーダーで粗面化することになり、虹彩模様の低減およびアンカー効果として作用し、支持基材との接着性を強固にするものと考えられる。
【0104】
またフッ素化合物Bを含まない場合においてもバインダー成分Aを含む場合は、フッ素処理無機粒子同士の凝集が抑制でき、フッ素化合物Bを含有する場合と同様の現象が起こり、1回のみ塗布する工程により支持基材上に屈折率の異なる二層を同時に形成することができるものと考えている。
【0105】
上記のような反射防止部材を得るためには、得られる反射防止部材中から完全に溶媒を除去する事に加え、欠陥なく二層に分離させるという観点からも、乾燥工程では加熱することが好ましい。乾燥工程は、(A)材料余熱期間、(B)恒率乾燥期間、(C)減率乾燥期間に分けられるが、材料予熱期間(材料全体が乾燥する温度まで昇温する期間)から、恒率乾燥期間(塗液が動かなくなるまでの期間)にかけて、溶媒の蒸発に伴い屈折率の異なる二層を形成するが、二層を形成する無機粒子の移動に十分な時間を確保するため、風速が低く、できるだけ低温で乾燥することが好ましい。
【0106】
この乾燥工程における、加熱方式としては、熱風噴射、赤外線、マイクロ波、誘導加熱などが挙げられる。この中でも、乾燥初期である(A)材料余熱期間や(B)恒率乾燥期間においては、風速、温度の点から、塗工面に対し、平行に送風する熱風乾燥が好ましいが、特に限定されるものではない。また乾燥後期である(C)減率乾燥期間においては、汎用性、乾燥速度の点から塗工面に対し、垂直に送風する熱風乾燥であるのが好ましい。
【0107】
さらに、乾燥工程後に形成された支持基材上の2層に対して、熱またはエネルギー線を照射する事によるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化を熱により行う場合、乾燥工程と硬化工程とを同時におこなってもよい。
【0108】
また本発明の製法により得られた反射防止部材は、PDPなどの各種画像表示装置の視認側表面に設けることで、反射防止性に優れた画像表示装置を提供することができる。なおこの際は、反射防止部材における支持基材側を画像表示装置側として、反射防止部材などを設けることが重要である。
【実施例】
【0109】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0110】
[製造例]
[高屈折率層構成成分(a)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるアロニックスM111(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、4つの反応性部位を有するバインダー成分BであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(a)を得た。
【0111】
[高屈折率層構成成分(b)の調整]
高屈折率のアンチモン含有酸化スズ粒子を含有するオプスターTU4005(JSR社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるアロニックスM102(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、4つの反応性部位を有するバインダー成分BであるカヤラッドDPHA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(b)を得た。
【0112】
[高屈折率層構成成分(c)の調整]
高屈折率の酸化ジルコニウム粒子を含有するTYZ67−H01(東洋インキ株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるアロニックスM117(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、4つの反応性部位を有するバインダー成分BであるカヤラッドPET−30(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分40%の高屈折率層構成成分(c)を得た。
【0113】
[高屈折率層構成成分(d)、(e)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(d)、(e)を得た。
【0114】
[高屈折率層構成成分(f)、(g)、(h)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分AであるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(f)、(g)、(h)を得た。
【0115】
[高屈折率層構成成分(i)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分AであるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA212(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(i)を得た。
【0116】
[高屈折率層構成成分(j)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分AであるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)、4つの反応性部位を有するバインダー成分であるカヤラッドDPCA(日本化薬株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度40%の高屈率層構成成分(j)を得た。
【0117】
[高屈折率層構成成分(k)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度60%の高屈率層構成成分(k)を得た。
[高屈折率層構成成分(l)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(l)を得た。
[高屈折率層構成成分(m)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と1つの反応性部位を有するバインダー成分A(アクリレート)であるACMO(株式会社興人製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(m)を得た。
[高屈折率層構成成分(n)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と3つの反応性部位を有するバインダー成分であるアロニックスM−360(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(n)を得た。
[高屈折率層構成成分(o)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と3つの反応性部位を有するバインダー成分であるM−350(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(o)を得た。
[高屈折率層構成成分(p)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(p)を得た。
[高屈折率層構成成分(q)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と3つの反応性部位を有するバインダー成分であるM305(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(q)を得た。
[高屈折率層構成成分(r)の調整]
高屈折率の酸化チタン粒子を含有するELCOM TO1019TIC(日揮触媒化成株式会社製:固形分30質量%)と4つの反応性部位を有するバインダー成分であるM−408(東亜合成株式会社製:固形分100質量%)、3つの反応性部位を有するバインダー成分BであるDA722(ナガセ・ケムテックス株式会社製:固形分100質量%)を表2に記載の割合で混合し、固形分濃度3.5%の高屈率層構成成分(r)を得た。
【0118】
[低屈折率層構成成分の調整]
[低屈折率層構成成分(a)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。ついで、フッ素化合物AであるHC=CH−COO−CH−(CFF 1.38g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.057gを加えた後、60分間90℃にて加熱撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分14質量%の低屈折率層構成成分(a)とした。
【0119】
[低屈折率層構成成分(b)の調整]
中空シリカであるスルーリア4110(日揮触媒化成株式会社製:固形分濃度20質量%)15gに、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.37gと10質量%蟻酸水溶液0.17gを混合し、70℃にて1時間撹拌した。その後、イソプロピルアルコールを加え希釈し、固形分14質量%の低屈折率層構成成分(b)とした。
〔塗料組成物1〜26〕
以下の方法により塗料組成物1〜26を調整した。
【0120】
[塗料組成物1]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(a)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0121】
[塗料組成物2]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(b)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0122】
[塗料組成物3]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(c)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0123】
[塗料組成物4]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0124】
[塗料組成物5〜10]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0125】
[塗料組成物11〜17]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(d)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0126】
[塗料組成物18]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(k)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0127】
[塗料組成物19]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(l)をそれぞれ質量比にて1:1となるように混合し、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0128】
[塗料組成物20]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(m)をそれぞれ質量比にて10:1となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
[塗料組成物21]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(n)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
[塗料組成物22]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(o)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
[塗料組成物23]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(p)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
[塗料組成物24]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(q)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
[塗料組成物25]
低屈折率層構成成分(a)と高屈折率層構成成分(r)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物BであるHC=CH−COO−CH−(CFFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0129】
[塗料組成物26]
低屈折率層構成成分(b)と高屈折率層構成成分(r)をそれぞれ質量比にて1:7となるように混合した溶液100質量部に、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オンを3質量部添加し、さらにフッ素化合物であるHC=CH−COO−CHCFCFを表2に記載の(表面処理に使用していない)フッ素化合物の含有量(質量%)となるように添加し、塗料組成物とした。
【0130】
[反射防止部材の作製]
支持基材としてPETフィルム上に易接着性層が形成されているU46(東レフィルム株式会社製)をもちいた。この支持基材の易接着層面上に、実施例・比較例として表に記載の塗料組成物をバーコーター(#10)を用いて塗布後、100℃にて2分間乾燥し、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射し、反射防止部材を作製した。
【0131】
[反射防止部材の評価]
作製した反射防止部材について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表1に示した。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・比較例において、1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[最低反射率(%)]
反射防止性能の評価は島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて400nmから800nmの波長範囲にて行い、最低反射率(ボトム反射率)を測定し、1%以下を合格とした。測定は、反射防止部材中の屈折率の異なる2層の側(支持基材とは反対側)から行った。
[耐擦傷性]
反射防止部材に250g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載した。測定は、反射防止フィルム中の屈折率の異なる2層の側(支持基材とは反対側)から行った。
【0132】
傷の本数 0本以上〜5本未満 ◎
5本以上〜15本未満 ○
15本以上 ×
傷の本数が15本未満を合格とした。
[透明性]
透明性はヘイズ値(%)を測定することにより判定した。測定はJIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(屈折率の異なる2層の側)から光を透過するよう、装置に置いて測定を行った。
[耐湿熱接着性]
恒温恒湿槽中に高温高湿下(70℃、相対湿度90%)で反射防止部材サンプルを250時間放置し、耐湿熱接着試験用サンプルを得た。反射防止部材サンプルの支持基材とは反対側(屈折率の異なる2層の側)から1mm のクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製セロハンテープ(登録商標)をその上に貼り付け、ゴムローラーを用いて、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し評価を行った。ハードコート層の残存した個数より、下記基準で評価を実施する。残存した格子の個数により5段階評価を行い、○以上を耐湿熱接着性良好、×以下を耐湿熱接着性が不良とした。
【0133】
◎ :100/100(残存個数/測定個数)
○ :80/100以上、100/100未満
× :80/100未満
[2層の界面の有無]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の界面の有無を判断した。界面の有無の判断は以下の方法に従い判断した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像を、スキャナーを用いてプレゼンテーションソフトウェア(Microsoft Power Point2003)に貼付した。次いで貼付した写真のイメージコントロール処理(コントラストを90%とする)を行い、コントラストを強調した。この際に、1つの層と他の層との界面に明確な境界を引くことができる場合を、明確な界面があるとみなした(明確な境界を引くことができる場合を界面有りとして「○」で示し、明確な境界を引くことができない場合を界面無しとして「×」で示した。)。
〔2層の層厚み〕
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の2層の各層の厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。TEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から各層の厚みを読み取った。合計で10点の層厚みを測定して平均値とした。
[2層個々の屈折率]
本発明における2層個々の屈折率は、反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名[FE−3000])により、300〜800nmの範囲での反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用い、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、550nmにおける屈折率を求めた。
【0134】
屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(数式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算し、550nmにおける屈折率を測定した。
【0135】
【数1】

【0136】
[粒子の数平均粒子径]
粒子の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡によりARフィルムの断面構造を観察することにより求めた。倍率を50万倍とし、その画面内に存在する10個の粒子の外径を測定し、その平均値とした。画面内に10個の粒子が存在しない場合は、同じ条件で別の箇所を観察し、その画面内に存在する粒子の外径を測定して、合計で10個の粒子の外径を測定して平均値とした。
【0137】
ここで外径とは、粒子の最大の径(つまり粒子の長径であり、粒子中の最も長い径を示す)を表し、内部に空洞を有する粒子の場合も同様に、粒子の最大の径を表す。
[質量平均分子量]
本発明におけるフッ素化合物及びバインダー成分の質量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒にし、分子量既知の単分散ポリスチレンを標準物質として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GC−2010 株式会社島津製作所)により、温度35℃、カラム(Shodex社製:K−804+K−805L)を用いて求めた。
[膨潤度指数]
バインダー成分の膨潤度指数は、非結晶ポリエチレンテレフタレートフィルム(A−PETシート)商品名“PET−MAX”A565GE2R(東洋紡績株式会社製)の帯電防止コートを設けていない側の面上に、バインダー成分を、バーコーター(#10)を用いた塗布から3分間経過後、ガーゼを用いて荷重50gにて拭取り作業を行い、拭取り後のフィルムのヘイズを測定した値(%)を表す。
【0138】
なおヘイズ測定は、JIS K 7136(2000)に基づき、日本電色工業(株)製 ヘイズメーターを用いて、前述のフィルムのバインダー成分Aを滴下した側から光を透過するよう、装置に置いて測定する。
[バインダー成分の水酸基当量の算出]
水酸基当量は、JIS K 1557−1:2007の方法により水酸基数Xを求める。ここで得られる値Xは、試料1gの中和に必要なKOH量(mg)であるため、KOHのモル数(X/51(KOHの分子量))と、試料のモル数(1/試料の質量平均分子量)から、KOHのモル数/試料のモル数、を算出し、水酸基当量を求めた。
【0139】
[虹彩模様の視認]
裏面反射の影響をなくすために、測定面(反射防止層側表面)の裏面(反射防止層の支持基材側)を240番のサンドペーパーで粗面化した後、黒色マジックインキにて着色して調整したサンプルを、暗室にて、3波長蛍光灯(ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))の直下30cmに置き、視点を変えながらサンプルを目視したときに、虹彩模様が視認できるか否かで評価した。
【0140】
虹彩模様がみえない : ◎
非常に弱い虹彩模様が見える : ○
強い虹色模様がはっきり見える: ×
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
【表3】

【0144】
表1において、「フッ素処理無機粒子」と記載された欄の数平均粒子径は、フッ素処理無機粒子とする前の(表面処理する前の)無機粒子の数平均粒子径である。
【0145】
表1から明らかなように、塗料組成物中にバインダー成分Aが含まれる場合(実施例1〜20)では、2層界面が明確な屈折率の異なる2層を形成し、反射防止性、耐擦傷性、耐湿熱接着性に優れ、虹彩模様が低減されたバランスのよいフィルムであった。
【0146】
また塗料組成物中にバインダー成分Aが含まれない場合(膨潤度指数が5%未満の場合)(比較例1、2)では、2層の明確な界面が見られ、反射防止性、耐擦傷性が良好なものの、耐湿熱接着性、虹彩模様が不良なものであった。
【0147】
塗料組成物中にバインダー成分Aを含まない場合(比較例3)では、2層の明確な界面が見られ、反射防止性が良好であるものの、耐湿熱接着性、虹彩模様が不良なものであった。
【0148】
一方、塗料組成物中にバインダー成分Aを含まない場合(膨潤度指数が60%を超える場合)(比較例4,5)では、2層の明確な界面が見られ、反射防止性、耐湿熱接着性、虹彩模様が良好なものの、透明性が不良なものであった。
【0149】
塗料組成物が、フッ素処理無機粒子を含有しない場合(比較例6)では、耐擦傷性、耐湿熱接着性、虹彩模様が良好であるものの、透明性、反射防止性に劣り、2層の明確な界面が見られないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の無機粒子、及び膨潤度指数が5%以上60%以下であるバインダー成分Aを含む塗料組成物であって、
該2種類以上の無機粒子における少なくとも1種類の無機粒子が、フッ素化合物Aにより表面処理された無機粒子である塗料組成物。
【請求項2】
前記バインダー成分Aの質量平均分子量Mwが100以上500以下であることを特徴とする、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記バインダー成分Aが、1つの反応性部位を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記塗料組成物の全成分の合計を100質量%とした際に、前記バインダー成分Aを3質量%以上20質量%以下含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
水酸基当量が0.1%以上0.5%以下であるバインダー成分Bを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記バインダー成分Bが、3つ以上の反応性部位を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の塗料組成物を、支持基材の少なくとも片面上に1回のみ塗布することにより、支持基材上に屈折率の異なる2層からなる反射防止層を形成することを特徴とする、反射防止部材の製造方法。

【公開番号】特開2012−31325(P2012−31325A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173312(P2010−173312)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】