説明

塗料組成物および塗膜

【課題】
プラスチック成形品の表面に塗膜を形成した場合に、高光沢で外観良好な塗膜を与えることができ、かつ擦り傷をつけた場合に塗膜が元の状態に戻る復元性を有する塗料組成物を提供すること。
【解決手段】
5000〜30000の重量平均分子量を有するアクリルポリオールと、300〜1500の数平均分子量を有するポリカーボネートジオールと、アクリルポリオールおよびポリカーボネートジオールにおける水酸基の合計に対して、0.6〜1.5モル当量のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを含有する塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物および塗膜に関し、より詳細には、トップコートやプラスチック成形品などの表面の耐擦傷性改善のために有用な塗料組成物、およびこれを用いて形成される塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック素材は優れた加工性を有するため、様々な形状に成形され、プラスチック成形品として多くの産業分野で広く使用されている。しかし、プラスチック素材は、ガラス、金属に比べて一般的に硬度が低く、その表面に擦り傷がつき易い欠点がある。擦り傷がつくと、見た目が悪くなり商品価値が低下する。このような欠点を改善するための方法としては、プラスチック成形品表面に耐擦傷性に優れた塗膜を形成する方法がある。
【0003】
従来、プラスチック成形品の表面に形成する塗膜としては、架橋密度を高くして表面硬度を大きくした、いわゆるハードコートと呼ばれる塗膜が一般的であった。ハードコートは、塗膜の架橋密度が高く、塗膜の表面硬度が大きいため、耐擦傷性を大きく改善する。しかし、ハードコートは、塗膜が硬くかつ脆くなる傾向にあるため、一度傷がつくとその部分から塗膜にクラックが起こり、場合によってそのクラックが成形品そのものに及ぶ問題がある。また、塗膜表面に微細な傷や凹みなどの傷がついた場合に、このような傷をハードコートで防ぐことは困難である。
【0004】
これに対して、引用文献1および2では、ポリジメチルシロキサン系共重合体と、ポリカプロラクトンと、ポリシロキサンとを含有する塗料組成物、またはシロキサン成分が骨格中に導入されたポリジメチルシロキサン系共重合体と、カプロラクトン成分とを含有する塗料組成物を用いて形成される塗膜が耐擦傷性に優れることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−228905号公報
【特許文献2】特開2007−9219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1および2に記載の塗料組成物は、塗膜に擦り傷がつかないようにするためのものであるが、たとえ一度傷がついてしまったとしても、塗膜が元の状態に戻る復元性(以下、「外観復元性」という。)を有していれば、結果として傷がつくことによる商品価値の低下を防止することができる。
【0007】
そこで本発明は、プラスチック成形品の表面に塗膜を形成した場合に、高光沢で外観良好な塗膜を与えることができ、かつ外観復元性を有する塗料組成物、およびこれを用いた塗膜を提供することを目的とする。
【0008】
なお、「外観復元性」とは一時的に擦り傷が存在したとしても、時間の経過とともに目立たなくなり、肉眼では確認できない程度にまで消すことができる性能を指す。この定義における復元性は、塗膜が傷つき破壊される程の負荷による傷、例えば鋭利な物で完全に切断してしまった傷が復元されることを意味するわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、5000〜30000の重量平均分子量を有するアクリルポリオールと、300〜1500の数平均分子量を有するポリカーボネートジオールと、アクリルポリオールおよびポリカーボネートジオールにおける水酸基の合計に対して、0.6〜1.5モル当量のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとを含有する塗料組成物を提供する。
【0010】
上記アクリルポリオールの水酸基価は30〜300mgKOH/gであってもよい。
【0011】
上記アクリルポリオールはカプロラクトン変性されたアクリルポリオールであってもよい。
【0012】
上記ポリカーボネートジオールの水酸基価は30〜300mgKOH/gであってもよい。
【0013】
上述の塗料組成物はトップコートのために使用することができる。
【0014】
本発明はまた、上述の塗料組成物を硬化してなる塗膜を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の塗料組成物によれば、柔軟かつ強靭性に優れた塗膜を形成することができる。このため擦り傷を形成する塗膜表層部の微細な塗膜の破れに対して充分な抵抗性を示すとともに、塗膜表面に擦り傷、ツメ傷、凹み傷等の傷がついた場合でも、その外観復元性に優れる。さらに、本発明の塗料組成物により形成される塗膜は、高光沢で外観が良好であり、かつ密着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を詳述するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、明細書中、「部」は質量基準である。
【0017】
本発明の塗料組成物は、アクリルポリオール、ポリカーボネートジオール、およびポリイソシアネートを含有する。
【0018】
アクリルポリオールとは、分子中に2以上水酸基を有するアクリル樹脂であり、例えば、アクリル系単量体と、水酸基含有重合性不飽和単量体とを重合することにより得られるものである。
【0019】
アクリル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルおよびシクロアルキルエステル類が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
水酸基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの各種の多価カルボン酸類のジヒドロキシアルキルエステル類のような、種々の不飽和結合含有ポリヒドロキシアルキルエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレートや(ポリ)プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル;アリルアルコールやメタクリルアルコールなどのアルコール類;上述の各種単量体とラクトン類、例えば、プラクセルFM(ダイセル化学社製カプロラクトン付加モノマー)、プラクセルFA(ダイセル化学社製カプロラクトン付加モノマー)などの水酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、アクリルポリオールは、アクリル系単量体および水酸基含有重合性不飽和単量体に加えて、他の重合性不飽和単量体を重合させた共重合体であってもよい。他の重合性不飽和単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、プロピルスチレン、イソプロピルスチレンまたはp−tert−ブチルスチレンなどのような種々のスチレン系モノマー類が挙げられる。
【0022】
アクリルポリオールは、例えばAS−5550、AS−5551、AS−5552という商品名で三菱レイヨン社より市販されている。アクリルポリオールは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
アクリルポリオールの重量平均分子量は、5000〜30000であり、好ましくは6000〜20000であり、より好ましくは7000〜17000であり、さらに好ましくは8000〜16000である。重量平均分子量が5000未満であると、形成される塗膜の強度が一般的に低くなる。また、重量平均分子量が30000を越えると、レベリング性やNCO相溶性が低下して外観に劣る。
【0024】
なお、アクリルポリオールの重量平均分子量は、テトラヒドロフランにて溶液濃度が0.4%になるよう調整した後、TOSO社製カラム(GE4000HXLおよびG2000HXL)を用い、TOSO社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィ装置に注入し(注入量:100μL)、流量;1mL/分(溶離液:テトラヒドロフラン)、カラム温度40℃の条件で、ゲルパーミエーションクロマトグラム法によりポリスチレンを基準とし測定できるものである。
【0025】
アクリルポリオールの水酸基価(OH価)は、好ましくは30〜300mgKOH/g、より好ましくは50〜250mgKOH/gである。
【0026】
なお、水酸基価は、例えば次のようにして測定できるものである。
無水酢酸12.5gをピリジン50mlでメスアップし、アセチル化試薬を調製する。100mlナスフラスコに、測定するサンプルを2.5〜5.0g精秤する。アセチル化試薬5mlとトルエン10mlをホールピペットで添加後、冷却管を取り付けて、100℃で1時間撹拌加熱する。蒸留水2.5mlをホールピペットで添加、さらに10分間加熱撹拌する。2〜3min冷却後、エタノールを12.5ml添加し、指示薬としてフェノールフタレインを2〜3滴入れた後に、0.5mol/lエタノール性水酸化カリウムで滴定する。アセチル化試薬5ml、トルエン10ml、蒸留水2.5mlを100mlナスフラスコに入れ、10分間加熱撹拌した後、同様に滴定を行う(空試験)。この結果に基づいて、下記数式(i)によりOH価を計算することができる。
OH価(mgKOH/g)={(b−a)×28.05×f}/e …(i)
a:サンプルの滴定量(ml)
b:空試験の滴定量(ml)
e:サンプル重量(g)
f:滴定液のファクター
【0027】
アクリルポリオールは塗料組成物の固形分を基準として、好ましくは10部〜80部、より好ましくは30部〜70部の割合で含有されていてもよい。
【0028】
ポリカーボネートジオールは、複数のカーボネート基を有するジオールであり、例えば低分子量ジオールとエチレンカーボネートとを重合することにより得られるものである。
【0029】
低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,3−ブタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが挙げられる。低分子量ジオールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
ポリカーボネートジオールは、例えばデュラノールG3450J、G3452、T4671、T4672、T5650J、T5651、T5652という商品名で旭化成ケミカルズ社より市販されている。ポリカーボネートジオールは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
ポリカーボネートジオールの数平均分子量は300〜1500であり、好ましくは500〜1500であり、より好ましくは700〜1300、さらに好ましくは800〜1000である。数平均分子量が300未満である場合、または1500より大きい場合には、形成される塗膜の外観復元性が充分に発揮されない。
【0032】
なお、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は下記式(ii)により求められるものである。
数平均分子量=2/(OH価×10−3/56.11) …(ii)
【0033】
ポリカーボネートジオールの水酸基価(OH価)は、好ましくは30〜300mgKOH/g、より好ましくは50〜250mgKOH/gである。
【0034】
ポリカーボネートジオールは塗料組成物の固形分を基準として、好ましくは20部〜90部、より好ましくは30部〜70部の割合で含有されていてもよい。
【0035】
ポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物である。1分子中にイソシアネート基を2個有するポリイソシアネートとしては、例えばトリレジンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシナネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートヘキサノエート、ノルボルナンジイソシアネート等のジイソシアネートモノマーが挙げられる。1分子中に3個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートモノマーをイソシアヌレート変性させた化合物、ジイソシアネートモノマーをアダクト変性させた化合物、ジイソシアネートモノマーをビューレット変性させた化合物、2−イソシアネートエチル−2,6−ジイソシアネートカプロエート、トリアミノノナントリイソシアネート等のイソシアネートプレポリマーが挙げられる。
【0036】
ポリイソシアネートは例えば、デュラネートTKA−100という商品名で旭化成ケミカルズ社より市販されている。ポリイソシアネートは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
ポリイソシアネートのNCO価は、例えば6〜23.5とすることができる。
【0038】
塗料組成物におけるポリイソシアネートの含有量は、アクリルポリオールおよびポリカーボネートジオールにおける水酸基の合計に対して、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基が0.6〜1.5モル当量となるように決定され、好ましくは0.8〜1.5モル当量となるように決定される。ポリイソシアネートの含有量が上記範囲外であると、加熱硬化した際に残る単量体の量が増えるため、形成される塗膜の性能が低下する。
【0039】
上述の塗料組成物には作業性を向上させるために、溶剤を添加することができる。溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ100、ソルベントナフサ150等の芳香族系炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、プロピオン酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル等のエステル類;メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール、メトキシプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上述の塗料組成物には、必要に応じてさらに硬化促進剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤等が配合されてもよい。これらレベリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化促進剤等のような塗料業界で慣用されている塗料用添加剤を混合して使用できるということはいうまでもない。
【0041】
上述の塗料組成物におけるアクリルポリオール、ポリカーボネージオール、およびポリイソシアネートは、必要に応じて使用される上記溶剤および/または添加剤とともに、公知の混合手段を用いて、混合して使用することができる。
【0042】
次に、上述の塗料組成物を用いた塗膜の形成方法の具体例について説明する。
【0043】
塗膜は、基材に対し当業者に周知の手段を用いて、上述の塗料組成物をスプレー塗装した後に加熱(乾燥)して硬化させることにより形成することができる。
【0044】
塗膜形成に使用できる基材としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などの樹脂で構成されている基材、予め当業者に公知の手法でプライマー層が形成されたポリプロピレン(PP)樹脂やポリエチレン(PE)樹脂などの樹脂で構成されている基材、予め当業者に公知の手法でカラー層が形成された金属板(例えば、鋼板)が挙げられる。
【0045】
硬化させる際の加熱温度は特に限定されないが、例えば60〜120℃とすることができる。ただし、この加熱温度は、塗装される基材の耐熱温度を考慮して設定されることが好ましい。
【0046】
上述の塗膜は、硬化後の膜厚が8μmから40μmとなるように塗布されることが好ましい。当該膜厚が8μmを下回ると、塗膜の外観復元性が低下する。当該膜厚が40μmを上回っても、外観復元性自体に変化はない一方で生産性に劣るおそれがある。
【実施例】
【0047】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、塗膜の膜厚はいずれも硬化膜厚に基づくものである。
【0048】
<塗料組成物の製造>
実施例1〜12および比較例1〜12
下記の原料を表1,2に示す配合比で混合し、各塗料組成物を得た。表に示す塗料組成物の配合は各成分の固形分重量比である。
【0049】
(*1)AS−5550:三菱レイヨン社製アクリルポリオール、(固形分50%)、水酸基価100mgKOH/g(固形分)、酸価3.8、ガラス転移点14℃、重量平均分子量8600
【0050】
(*2)AS−5551:三菱レイヨン社製アクリルポリオール、固形分60%、水酸基価140mgKOH/g(固形分)、酸価4.5、ガラス転移点12℃、重量平均分子量12000
【0051】
(*3)AS−5552:三菱レイヨン社製アクリルポリオール、固形分60%、水酸基価100mgKOH/g(固形分)、酸価3.8、ガラス転移点40℃、重量平均分子量8000
【0052】
(*4)Duranol G3450J:旭化成ケミカルズ社製1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価140mgKOH/g、ガラス転移点−32℃、数平均分子量800
【0053】
(*5)Duranol G3452:旭化成ケミカルズ社製1,4−ブタンジオールおよび1,3−プロパンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価56mgKOH/g、数平均分子量2000
【0054】
(*6)Duranol T4671:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−ブタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価110mgKOH/g、ガラス転移点−60℃、数平均分子量1000
【0055】
(*7)Duranol T4672:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオールおよび1,4−ブタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価51mgKOH/g、ガラス転移点−50℃、数平均分子量2000
【0056】
(*8)Duranol T5650J:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価145mgKOH/g、ガラス転移点−65℃、数平均分子量800
【0057】
(*9)Duranol T5651:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価111mgKOH/g、ガラス転移点−62℃、数平均分子量1000
【0058】
(*10)Duranol T5652:旭化成ケミカルズ社製1,6−ヘキサンジオールおよび1,5−ペンタンジオールをジオール成分とするポリカーボネートジオール、固形分100%、水酸基価57mgKOH/g、ガラス転移点−54℃、数平均分子量2000
【0059】
(*11)TKA−100:旭化成ケミカルズ社製ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、NCO価21.7
【0060】
(*12)BYK−337:ビックケミージャパン社製シリコン系レベリング剤
(*13)BYK−355:ビックケミージャパン社製アクリル系レベリング剤
(*14)チヌビン400:BASFジャパン社製紫外線吸収剤
(*15)チヌビン152:BASFジャパン社製光安定剤
(*16)ネオスタンU−100:日東化成社製錫系硬化促進剤
【0061】
(塗料の準備)
スプレー塗装用の塗料として、実施例および比較例で得られた各塗料組成物を、キシレン/酢酸ブチル/ソルベッソ100/MIBK=4/3/2/1の割合で混合したものを希釈溶剤とし、23℃における粘度が、フォードカップNo.4で10〜12秒になるように調整したものを準備した。
【0062】
(試験板の作製)
黒色ABSに上述の塗料を、乾燥膜厚が20〜40μmになるようにスプレー塗装した。スプレー塗装後、5〜10分室温で放置し、さらに70℃で30分間加熱して硬化させた。以上のようにして形成した硬化塗膜を24時間放置したものを、塗膜性能試験用の試験板とした。
【0063】
相溶性:上述の塗料について、溶液状態での外観を目視にて判定した。判定基準は以下のとおりである。
○:透明性良好
△:塗膜が少し曇っている
×:塗膜の曇りが顕著である
【0064】
仕上がり性:黒色ABSに上述の塗料をスプレー塗装したときの塗膜外観を目視にて判定した。判定基準は以下のとおりである。
○:平滑性、ツヤ、鮮明性が良好で異常が認められない
△:平滑性、ツヤ、鮮明性のいずれかがやや劣る
×:平滑性、ツヤ、鮮明性のいずれかが顕著に劣る
また、試験板の60度鏡面反射率(60°光沢値)を測定して評価した。光沢値はBYKガードナー社製Micro−Tri−Glossで測定した。
【0065】
密着性:上述の試験板の乾燥塗膜に対して1mm間隔で碁盤目にカッターを25マス入れた。これについて、ニチバン社製セロハンテープにて剥離試験を行い、密着性を評価した。剥離が全くない場合は25/25となる。
【0066】
復元性:上述の試験板の乾燥塗膜に対して市販のワイヤーブラシで1往復傷をつけたときの復元状態を目視で評価した(室温・23℃)。また元の状態に戻るまでの時間(秒)を計測した。
○:ワイヤーブラシ跡が復元により回復して全く残らない
△:ワイヤーブラシ跡が完全には復元しておらず、若干の傷跡が認められる
×:明らかな傷跡が認められる
【0067】
上記で得られた結果を表1および表2に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
表1および表2に示されるように、実施例の塗料は、相溶性に優れるとともに、スプレー塗装した場合の外観が良好で高光沢であり、さらには形成される塗膜の密着性および復元性が高い。
【0071】
一方、本発明の要件を満たしていない比較例の塗料については、いずれも形成される乾燥塗膜について復元性を有しない。また、比較例2,4,6,7,8の配合では樹脂が相溶しない。さらに、比較例2,3,4,6,10,11,12の配合では、スプレー塗装した場合の光沢が低く、比較例7,8の配合では高光沢であるものの外観が悪い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の塗料組成物は、耐擦傷性が非常に優れているため、トップコートや種々のプラスチック成形品などの表面特性の改善を所望する分野、例えば携帯電話、家電、自動車などの分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5000〜30000の重量平均分子量を有するアクリルポリオールと、
300〜1500の数平均分子量を有するポリカーボネートジオールと、
前記アクリルポリオールおよび前記ポリカーボネートジオールにおける水酸基の合計に対して、0.6〜1.5モル当量のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、
を含有する塗料組成物。
【請求項2】
前記アクリルポリオールの水酸基価が30〜300mgKOH/gである、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記アクリルポリオールが、カプロラクトン変性されたアクリルポリオールである、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記ポリカーボネートジオールの水酸基価が30〜300mgKOH/gである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
トップコートのために使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の塗料組成物を硬化してなる塗膜。

【公開番号】特開2011−207953(P2011−207953A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75070(P2010−75070)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】