説明

塗料組成物

【課題】意匠性に富んだ外観を呈し見る角度によって色調が変化する塗膜構造を提供する。
【解決手段】被塗物の表面側から下塗り層、中塗り層、上塗り層が形成された塗膜構造において、中塗り層、上塗り層では合成樹脂エマルジョンを主成分とするバインダー、透明性又は半透明性を有する着色ガラスビーズから構成されている。さらに、合成樹脂エマルジョンを主成分とするバインダーは成膜した塗膜が透明性のあるクリヤー樹脂によって構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる配色の透明性又は半透明性を有する着色ガラスビーズと合成樹脂エマルジョンとからなる塗材を、2層以上施工することで、見る角度により色調が変化する塗膜構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板などの被塗布物上に、反射屈折材としてのガラス製ビーズを多数並べたビーズ層と、ビーズ層を囲む2層の光吸収の異なるクリヤー層を形成して、ビーズによる光の再帰反射機能を有する塗膜構造が公開されている(特許文献1参照)。
また、建物の表面などの被塗布物上に、御影石調や大理石調などの石材調の塗膜を形成する方法として、例えば被塗布物上に、微細に粉砕した自然石や着色骨材を含んだ骨材含有塗料を塗布する方法が公開されている(特許文献2参照)。
さらに、平均粒子径の異なる2種類の着色ガラスビーズを配合し、塗工作業性に優れ、仕上り外観の良好な塗材についての施工方法が公開されている(特許文献3参照)。
しかし、これらの施工方法ではガラスもしくはプラスチック製ビーズによる光の反射、下塗り層表面の透視による意匠を求めたものである。
【特許文献1】特開平5−50030
【特許文献2】特開2001-293435
【特許文献3】特開2001-106979
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では、意匠性に富んだ外観を呈し見る角度によって色調が変化する塗膜構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、被塗物の表面側から下塗り層、中塗り層、上塗り層が形成された塗膜構造において、中塗り層、上塗り層では合成樹脂エマルジョンを主成分とするバインダー、透明性又は半透明性を有する着色ガラスビーズから構成されている。さらに、合成樹脂エマルジョンを主成分とするバインダーは成膜した塗膜が透明性のあるクリヤー樹脂によって構成される。
【0005】
シーラーにはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を各種有機溶剤に溶解してなる組成物やアクリル樹脂、アクリル・スチレン共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等の樹脂エマルジョンが使用される。該シーラーは被塗物に浸透して下塗りの浸透、吸い込み防止するとともに、被塗物の表面層の補強と塗材の密着性を確保することができる。
【0006】
下塗り層、中塗り層、上塗り層で使用する塗材は、合成樹脂エマルジョンを主成分とするものであり、このような合成樹脂エマルジョンとしては、アクリル酸エステル共重合樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂系、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合樹脂系、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂系、酢酸ビニル−ベオバ共重合樹脂系、エチレン−塩化ビニル共重合樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコン変性アクリル樹脂系、フッ素樹脂系の各エマルジョンが使用でき、造膜した塗膜が透明性のものであれば、適宜混合して使用することも可能である。
【0007】
また、上記合成樹脂エマルジョンは粘度調整のため水、増粘剤を配合することも可能であり、その他の添加剤として造膜助剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、防カビ、防藻剤等をを必要に応じて配合する。具体的には、増粘剤にはメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等を適量使用して調整することができる。造膜助剤にはテキサノール、ベンジルアルコール、ブチルセロソルブ等が使用され塗膜の形成を容易にすることが可能となる。分散剤には配合材料の分散確保のためノニオン系界面活性剤、ポリリン酸塩等が使用され、良好な分散効果が得られる。消泡剤にはシリコン系化合物、エーテル系化合物、脂肪酸エステル系化合物等が使用され、塗膜中の泡を効果的に解消することができる。防腐剤には含ハロゲン窒素硫黄系化合物が使用され、塗料の腐敗による劣化を防ぐことができる。防カビ、防藻剤には、有機窒素硫黄化合物、含窒素有機環状化合物、含窒素ハロゲン系化合物、特殊尿素系化合物などが使用されるが、中でも防カビ性、持続性、環境面から有機窒素硫黄化合物系が好ましい。配合の割合としては、目的の塗膜物性、塗工作業性を調整できる範囲内であれば特に制限されないが一例としては、上記合成樹脂エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対して、増粘剤0.2〜6.0重量部、その他の添加剤0.2〜6.0重量部を配合する。
【0008】
下塗り層には、下地を隠蔽するため、上記合成樹脂エマルジョンをベースとした塗料に充填材を加えることが好ましく、通常の顔料や隠蔽材として使用するものであれば特に限定はされない。具体的には、重質炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、ホワイトカーボン、タルク、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック、黄鉛、オーカー等があげられる、特に酸化チタンは隠蔽性が良いために好ましい。配合の割合としては、上記合成樹脂エマルジョンの樹脂固形分100重量部に対し、各種隠蔽材20〜100部を混練りしたものが好ましい。20重量部より少ないと、十分な下地の隠蔽性が得られない、また100重量部より多いと塗工作業性が劣り、付着性が低下する等の問題が発生する。
【0009】
また、下塗り層には、ガラスビーズを平滑に塗布させるため、上記の合成樹脂エマルジョンをベースとした塗料に骨材を加えることが好ましく、通常の骨材として使用するものであれば特に限定されない。具体的には、寒水石、珪砂、軽石、ゴムチップなどがあげられる。配合の割合としては、上記合成樹脂エマルジョンに増粘剤、各種添加剤、充填材、顔料、水を加えて粘度調整した塗料組成物100重量部に対し、骨材50〜150重量部を混練りしたものが好ましい。骨材が50部より少ないと、下地にコテ波が残りガラスビーズを平滑に塗布することができない等の問題が発生する。また150部より多いと塗工作業性が劣り、付着性が低下する等の問題が発生する。
【0010】
上記、配合の合成樹脂エマルジョン、増粘剤、添加剤、充填材、顔料、水を加えて調整した塗料組成物は下塗り層として、平滑になるよう金ゴテを用いて塗布する。その塗布量は隠蔽性、塗工作業性の面から0.5〜1.8kg/m2になるようにすることが好ましい。
【0011】
中塗り層、上塗り層には、塗膜の意匠性を高めるため着色ガラスビーズを配合する。配合する塗料組成物の配合の割合としては、目的の塗膜物性、塗工作業性を調整できる範囲内であれば特に制限されないが一例としては、上記合成樹脂エマルジョン(樹脂固形分50%)20〜30重量部、増粘剤1.0〜3.0重量部、添加剤1.0〜5.0重量部、水50〜70重量部を加えた樹脂組成物100重量部に対し、着色ガラスビーズ300〜500重量部を混練りしたものが好ましい。着色ガラスビーズが300重量部より少ないと、着色ガラスビーズ間に隙間が空くため、塗膜の意匠性が悪くなる、また500重量部より多いと塗工作業性が劣り、付着性が低下する等の問題が発生する。
【0012】
着色ガラスビーズは、透明性又は半透明性を有し、平均粒子径0.8 〜 2.0mmの範囲のものがコテ滑がよくなり、簡便な塗工作業性が得られるため好ましいが、塗布後の意匠性に支障が無い限り特に限定はされない。また、中塗り層、下塗り層の各々に配色の異なった着色ガラスビーズを混合して使用することも可能である。
【0013】
上記、配合の合成樹脂エマルジョン、増粘剤、各種添加剤、着色ガラスビーズ、水を加えて調整した塗料組成物は中塗り層、上塗り層として、平滑になるように金ゴテを用いて塗布する。その塗布量は、塗工作業性の面から1.0〜2.0kg/m2になるようにすることが好ましい。
【0014】
被塗物表面に不陸や亀裂があり下塗り層により完全に被覆できない場合は、予め被塗物表面の不陸や亀裂をサンドペーパーやブラスト等で荒らし、樹脂パテ等を埋め込むなど平滑面を形成することが必要である。さらに、中塗りと上塗りの施工間で、塗工作業性の向上と塗膜の付着性をより向上させるために、中塗りを塗布乾燥後、上記合成樹脂エマルジョンと各種添加剤等を加えた樹脂組成物を塗布した後、上塗り層を形成することも可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により得られた塗膜構造は互いに異なる色の着色ガラスビーズが2層に分かれているため、見る角度によって色調の変化する意匠性に優れた塗膜構造を得ることが出来た。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、実施例と比較例によって具体的に説明するが、本発明の実施はこれに限定されない。
【0017】
実施例1
下地としてプラスターボードを使用し、シーラーとして、アクリル樹脂系エマルジョン(アイカ工業製、JS−500)を塗布して乾燥させた。
下塗り材には、樹脂分50%のアクリル・スチレン系樹脂エマルジョンを主成分とする塗材、(アイカ工業製、JP−100)100部に対して、骨材として寒水石3里を50部配合した下塗り材を1.5Kg/mコテ塗りし乾燥させた。
中塗り材には、樹脂分50%のアクリル・スチレン系樹脂エマルジョン{BASF社製、YJ-6221D}25部、消泡剤(エーテル系化合物)0.1部、造膜助剤(テキサノール)3.1部、分散剤(ポリリン酸塩)0.2部、増粘剤(メチルセルロース)1.5部、水70部を加え混合したベース塗料100部に平均粒子径1.2mmの青色ガラスビーズ400部を配合して調整した中塗り材を1.8Kg/mコテ塗りし乾燥させた。
上塗り材には、中塗りと同一のベース塗料100部に平均粒子径1.2mmの赤色ガラスビーズ400部を配合して調整した上塗り塗料を1.8Kg/mコテ塗りをし、実施例1の塗装とした。
【0018】
比較例1
下地としてプラスターボードを使用し、シーラーとして、アクリル樹脂系エマルジョン(アイカ工業製、JS−500)を塗布して乾燥させた。
下塗り材には、実施例1と同一の配合、施工方法とした。
中塗り材、上塗り材には着色ガラスビーズの平均粒子径を0.1mmにした以外は実施例1と同一の配合、施工方法とし、比較例1の塗装とした。
【0019】
比較例2
下地としてプラスターボードを使用し、シーラーとして、アクリル樹脂系エマルジョン(アイカ工業製、JS−500)を塗布して乾燥させた。
下塗り材には、実施例1と同一の配合、施工方法とした。
中塗り材、上塗り材には着色ガラスビーズの平均粒子径を3.0mmにした以外は実施例1と同一の配合、施工方法とし、比較例2の塗装とした。
【0020】
実施例1の塗装では、コテは着色ガラスビーズの表面間を滑らかに同一レベルを容易に移動できるため、塗工作業が極めて容易であり、しかも均一な厚みの塗工が可能であった。また、2層に分かれた着色ガラスビーズがそれぞれ異なる色であるため、見る角度によって色調の異なる意匠が得られた。
【0021】
比較例1の塗装では、着色ガラスビーズの平均粒子径が小さいため均一な塗布面が得られず、ムラになり平滑な仕上がりが得られなかった。また塗膜が薄いため見る角度によって色調は変わらなかった。
比較例2の塗装では、着色ガラスビーズの平均粒子径が大きいため均一な塗布面が得られず、ムラになり平滑な仕上がりが得られなかった。またムラになった個所は見る角度による色調の変化が見られず、美観が損なわれた。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における塗膜構造の断面図
【符号の説明】
【0023】
1 被塗物の表面
2 下塗り層
3 中塗り層
4 上塗り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物の表面側から下塗り層、中塗り層、上塗り層から構成される塗膜構造において、下塗り層に合成樹脂エマルジョンを主成分とする塗料組成物から構成され、中塗り層、上塗り層に合成樹脂エマルジョンを主成分とするバインダー、着色ガラスビーズから構成されることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の着色ガラスビーズは透明性又は半透明性を有し、平均粒子径が0.8〜2.0mmであり、さらに、中塗り層、上塗り層に配合する、前記着色ガラスビーズが互いに異なる色の組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の合成樹脂エマルジョンを主成分とするバインダーはクリヤー樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗料組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2006−219622(P2006−219622A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35948(P2005−35948)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】