説明

塗料自動供給式刷毛装置

【課題】ノズルの目詰まりを防止する共に、塗装する対象物への塗料の膜圧を十分に確保でき、特に、ボルトの周辺等の狭隘部においても塗料を細部にまで確実に浸透させることができる塗料自動供給式刷毛装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、長尺の筒状に形成された刷毛の内側に、加圧された状態の塗料を吐出するエアレスチップを配置したことを特徴とする。また、刷毛は、エアレスチップの周囲に空洞部を形成している。さらに、刷毛は、先端部近傍を軟らかく形成し、基端部近傍を硬く形成している。また、刷毛の基端部近傍を、樹脂を用いて硬化させている。一方、エアレスチップは、塗装する対象物に塗料を直接吹き付けるものである。また、エアレスチップは、塗料を吹き付ける際の拡散角度を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として鉄塔を塗装する際に使用する刷毛装置であり、筒状に形成された刷毛の内側に、加圧された状態の塗料を吐出するエアレスチップを配置し、エアレスチップの周囲に形成された刷毛内の空洞部において、塗料を拡散状態に吹き付ける塗料自動供給式刷毛装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における刷毛装置としては、例えば、特許文献1に示すように、本件の出願人自身により出願された塗料自動供給式刷毛装置が存在する。
【0003】
この刷毛装置は、図7に示すように、塗料供給体100の先端部に、ノズル101を内蔵している刷毛104を取り付け、ノズル101と手元バルブ102との間に設けた握力式レバー103の握り操作により手元バルブ102を開弁させ、加圧された状態の塗料を刷毛104内に吐出させるものである。このとき、ノズル101は、束ねた状態になっている刷毛の内部に位置している。
【0004】
そして、握力式レバー103を、指1本引き、若しくは、指2本引きの引金式構造とし、握力式レバー103を引き込み状態に保持するための短尺なグリップ部105を設け、このグリップ部105内に分岐バルブ106の各分岐接続口と各ノズル101とを接続するホース107を導入させている。
【0005】
この刷毛装置は、図7に示すように、塗料タンク108内の高粘度の塗料を加圧器109により加圧してから、エアレス装置110により高所作業場まで塗料を揚上する。そして、高所作業場に設置している分岐バルブ106を介して、複数の作業者が所持している塗料供給体100のそれぞれの刷毛104の内側に臨ませたノズル101に塗料を圧送するものである。このとき、ノズル101の孔は、粘性が異なる塗料にも十分対応できるような形状に形成されている。
【0006】
また、従来における刷毛装置の他の例としては、特許文献2に開示されている。この刷毛装置は、図8・図9に示すように、塗装ガンGの本体部200の先端部に、先端開口形状が略長円形となっているラッパ状のガイド管201が接続され、このガイド管201の先端部開口周縁に沿って刷毛部202が植設されたものである。
【0007】
すなわち、ガイド管201は、図9に示すように、本体部200の先端部中央に配置されているチップ状のノズル206を囲繞している。また、ガイド管201は、図8に示すように、刷毛固定部207を介して本体部200に接続されている。そして、ガイド管201の先端縁部に沿って、短めの刷毛部202が植設されている。
【0008】
さらに、握力式レバー203を、指1本引き、若しくは、指2本引きの引金式構造とし、握力式レバー203を引き込み状態に保持するための短尺なグリップ部204を設けている。このグリップ部204の下端には、塗料供給用のホース205が接続される。
【特許文献1】特開2002−331264号公報
【特許文献2】特開平5−309299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の特許文献1による刷毛装置では、専用のトップガンの先に専用のノズルを装着し、このノズルから刷毛部の全体に塗料を加圧して供給する構造であるため、ノズルの太さやノズルの先端の孔形状からして、刷毛部に付着したゴミ等の異物が塗料の中に混入する虞れがあり、これによってノズル自体が目詰まりし、そのたびにノズルを分解して清掃を行わなければならないという煩わしさがあった。
【0010】
しかも、市販のエアレス塗装機の特性からして、塗料に一定の圧力がかからず、ノズルからの塗料の流出量が不安定になっていた。特に、ノズルから吐出した塗料が、束の状態となっている刷毛部の全体に供給されるため、塗装する対象物への塗料の膜圧確保が不十分となっていた。
【0011】
さらに、従来の刷毛装置では、束の状態となっている刷毛部の全体に塗料を供給し、この幅広の刷毛部の全体をなぞるようにして対象物に塗装を行うため、複数のボルトが並んでいるような細かい場所においては、きれいに塗装できない弊害が生じていた。
【0012】
一方、特許文献2による刷毛装置において、塗装ガンGの本体部200の先端部に接続されたラッパ状のガイド管201は、金属製による管材によって形成され、且つガイド管201の先端部開口周縁に沿って植設された刷毛部202自体がかなり短めに形成されているため、凹凸のある狭い場所においては、きれいに塗装できない弊害が生じていた。
【0013】
また、刷毛部202自体がかなり短めに形成されていることから、刷毛の全体にしなやかさがなく、対象物へ塗料を均一に塗布することが困難であった。
【0014】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、ノズルの目詰まりを防止する共に、塗装する対象物への塗料の膜圧を十分に確保でき、特に、ボルトの周辺等の狭隘部においても塗料を細部にまで確実に浸透させることができる塗料自動供給式刷毛装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、長尺の筒状に形成された刷毛の内側に、加圧された状態の塗料を吐出するエアレスチップを配置したことで、上述した課題を解決した。
【0016】
また、刷毛は、エアレスチップの周囲に空洞部を形成していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0017】
さらに、刷毛は、先端部近傍を軟らかく形成し、基端部近傍を硬く形成していることで、同じく上述した課題を解決した。
【0018】
また、刷毛の基端部近傍を、樹脂を用いて硬化させていることで、同じく上述した課題を解決した。
【0019】
加えて、刷毛の基端部近傍に、刷毛潰れ防止用のガイドを配置したことで、同じく上述した課題を解決した。
【0020】
また、エアレスチップは、塗装する対象物に塗料を直接吹き付けることで、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
この他、エアレスチップは、塗料を吹き付ける際の拡散角度を調整できることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、長尺の筒状に形成された刷毛の内側に、加圧された状態の塗料を吐出するエアレスチップを配置したことから、塗装する対象物に塗料を直接吹き付けることが可能となる。このため、吹き付け塗装と刷毛塗り塗装の双方の良さを兼ね備えることができ、これによって広い範囲での塗装作業を、1本の刷毛装置で確実に行うことができる。
【0023】
また、刷毛は、エアレスチップの周囲に空洞部を形成しているので、エアレスチップにおける塗料の詰まりを防止できる。
【0024】
さらに、刷毛は、長尺の筒状に形成されていることから、刷毛の全体が極めてしなやかであり、塗装する対象物へ刷毛を柔らかく接触させて滑らせることができる。そのため、塗装する対象物への塗料の膜圧を十分に確保すると共に、ボルトの周辺等の狭隘部においても塗料を細部にまで確実に浸透させることができる
【0025】
また、刷毛は、先端部近傍を軟らかく形成し、基端部近傍を硬く形成しているので、刷毛の根元部分に撓み力と弾力を付与すると同時に、刷毛の根元部分における腰の強さを十分に確保している。
【0026】
そして、刷毛の基端部近傍を、樹脂を用いて硬化させているので、刷毛の根元部分における腰の強さを簡単に確保できる。
【0027】
また、刷毛の基端部近傍に、刷毛潰れ防止用のガイドを配置したときには、刷毛の根元部分における腰の強さを確実に確保できる。
【0028】
この他、エアレスチップは、塗装する対象物に塗料を直接吹き付けるので、この吹き付けた塗料を刷毛により満遍なく塗り延ばして、ボルトの周辺等の狭隘部においても塗料を細部にまで確実に浸透させることができる。
【0029】
しかも、塗料のダレが生じた場合でも、刷毛で容易にならすことができる。このため、吹き付け塗装と刷毛塗り塗装の双方の良さを兼ね備えることができるのである。
【0030】
また、エアレスチップは、塗料を吹き付ける際の拡散角度を調整できるので、塗装する対象物の状況に応じて、好ましい塗料の吹き付け状態を随時選択することができる。
【0031】
さらに、従来の刷毛装置における専用ノズルでは、塗料を噴射した際に、ノズルの吐出口径が大きいため、エアレス装置の圧力の低下幅が大きくなっていたが、本発明においてはエアレスチップを使用し、このエアレスチップを介して塗料を噴射することで、エアレス装置の圧力の低下幅をより小さくすることが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
【0033】
本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、例えば、塗料タンク内の高粘度の塗料を加圧器により加圧してから、エアレス装置により高所作業場まで塗料を揚上し、高所作業場に設置している分岐バルブを介して、複数の作業者が所持しているそれぞれの塗料供給体1の先端部に取り付けた刷毛2の内側に配置したエアレスチップ3に塗料を送り込むものである。
【0034】
具体的には、図1に示すように、塗料供給体1と、この塗料供給体1に取り付けた刷毛2により概ね構成されている。
【0035】
この刷毛2は、図2乃至図4に示すように、長尺の筒状に形成され、この筒状の刷毛2の内側に、加圧された状態の塗料を吐出するエアレスチップ3が配置されているのである。
【0036】
刷毛2は、図1に示すように、塗料供給体1の先端部に、約5°乃至45°の角度で、このうち好ましくは、約30°の角度で取り付けられている。この塗料供給体1に対する刷毛2の取付角度は、調節可能である。
【0037】
刷毛2を取り付けている塗料供給体1は、図1に示すように、エアレスチップ3に塗料を送り込む供給管部4を備え、この供給管部4に、2個のホース接続管5A・5Bを設けている。このとき、一方のホース接続管5Aは、供給管部4の後方において、供給管部4に対して直線状に配置されている。また、他方のホース接続管5Bは、供給管部4の後方において、供給管部4の下側に設けられて供給管部4に対して交差状に配置されている。
【0038】
そして、一方のホース接続管5Aには、塗料供給ホース6(溶剤供給ホース7)が、例えば、ブッシュと六角ニップルを介して接続される。同様に、他方のホース接続管5Bにも、塗料供給ホース6(溶剤供給ホース7)が、ブッシュと六角ニップルを介して接続される。
【0039】
塗料供給体1は、一端部が軸支されて塗料供給体1に対して揺動可能に配置された押下式レバー8の押圧操作により、エアレスチップ3に塗料を送り込む塗料噴出機構9を備えている。この塗料噴出機構9は、押下式レバー8の押圧の程度により、エアレスチップ3に送り込む塗料の量を調整できるものである。
【0040】
塗料噴出機構9の具体的な構成は、供給管部4の上方において、塗料供給体1の略中央に押下式レバー8を配置するための開放部10を凹設し、この開放部10を介して前側シリンダーと後側シリンダーとを配置している。そして、前側シリンダーの開放部10側に面する後端開口側は、ニードル弁をスライド可能に嵌挿させた状態としたパッキンネジにより封止されている。
【0041】
また、供給管部4の先端開口部を前側シリンダーに連通させ、この前側シリンダー内で前後方向にスライド可能に配置したニードル弁が、後側シリンダーに配置したニードルバネを介して、エアレスチップ3に通じる前側シリンダーの先端に設けた開口状の弁座15を常時閉塞するように付勢配置されている。
【0042】
このニードル弁の後端側には、プランジャー16を嵌挿すると共に、プランジャー16を後側シリンダー内に開放部10側から挿入し、後側シリンダーの後端部に付設した塗料調整ネジ部17とプランジャー16との間に配したニードルバネの拡圧弾性力により、当該プランジャー16をニードル弁と共に常時前方側に付勢している。
【0043】
そして、開放部10内には、押下式レバー8が、前方のエアレスチップ3側を向いた状態となるように支持ピン18を介して揺動可能に枢着され、支持ピン18の位置から下側に延設された押圧操作部19が、ニードルバネを嵌挿している前記プランジャー16に当接している。
【0044】
従って、押下式レバー8を人差指で下方に押圧操作することにより、押圧操作部19によってプランジャー16がニードルバネに抗して後側シリンダーの基端寄りに押し込まれる。その結果、前側シリンダーの先端に設けた弁座15が開放されて、加圧された状態の塗料が前側シリンダー内を通ってエアレスチップ3から吐出される。
【0045】
このとき、塗料調整ネジ部17を回転させることで、押下式レバー8の押圧力を調整できる。例えば、塗料調整ネジ部17を回転させて押下式レバー8の押圧操作部19に当接しているプランジャー16をエアレスチップ3寄りに移動させたときには、押下式レバー8を強い力で押圧しないとエアレスチップ3から塗料が吐出しないものとなる。
【0046】
また、塗料調整ネジ部17を回転させて押下式レバー8の押圧操作部19に当接しているプランジャー16をエアレスチップ3から離れる方向に移動させたときには、押下式レバー8を僅かな力で押圧してエアレスチップ3から塗料を吐出できるものとなる。
【0047】
一方、供給管部4には、塗料供給ホース6を装着しているホース接続管5A側とは分岐した状態となるように、下側面に開口部を設けている。この開口部に、アダプター21を介して六角ニップルを取り付け、この六角ニップルに塗料供給ホース6を取り付けてある。
【0048】
こうして、塗料供給体1に接続した2本の塗料供給ホース6により、例えば、赤・白等の異なる色の塗料を、個別にエアレスチップ3に送り込むことができる。また、塗装作業終了後において、ホース接続管5Aに溶剤供給ホース7を接続し、塗料供給体1とノズル3に洗浄用の溶剤を送り込むこともできる。
【0049】
塗料供給体1に取り付けた刷毛2は、図2乃至図4に示すように、長尺の筒状に形成され、この筒状の刷毛2の内側に、エアレスチップ3が配置され、エアレスチップ3の周囲に空洞部Pを形成している。そして、筒状に形成した刷毛2の内側において、エアレスチップ3を介して塗料を噴射するのである。
【0050】
具体的には、図1・図2に示すように、塗料供給体1の先端部に位置する連結部材20に、アダプター21を介して円筒金巻状の刷毛固定部22が装着されている。エアレスチップ3は、刷毛固定部22の前側の中央に突設されている。また、このエアレスチップ3を囲繞するように、刷毛固定部22の先端周縁部に沿って円筒状に、長尺の刷毛2が植設されている。
【0051】
このような構成により、エアレスチップ3が、刷毛2の内側における根元部分に配置されるのである。そして、図2・図4に示すように、刷毛2の内側でエアレスチップ3を介して塗料を噴射するに際し、刷毛2の先端部における円状の枠内に収まる範囲の拡散角度で塗料を対象物に吹き付けることができる。すなわち、刷毛2の先端部が塗装する対象物に当接している状態において、塗料が刷毛2の外側へ飛び散ることがないのである。
【0052】
また、エアレスチップ3自体は、図2に示すように、刷毛2の先端部に向けて拡がる略円錐状となるように塗料を噴射するものである。このエアレスチップ3は、略円錐状に拡散する塗料の拡散角度を、例えば、ダイヤルやレバーの操作で任意に調整できる拡散角度調整機構24を備えている。
【0053】
そして、例えば、ボルトの周辺等の狭隘部においては、略円錐状に拡散する塗料の拡散角度を小さくすることにより、塗料を細部にまで確実に浸透させることができる。
【0054】
エアレスチップ3を備えている刷毛2は、先端部近傍を軟らかく形成し、基端部近傍を硬く形成している。すなわち、刷毛2の根元部分に撓み力と弾力を付与すると同時に、刷毛2の根元部分における腰の強さを十分に確保しているのである。
【0055】
刷毛2の基端部近傍を硬くする措置として、所定の樹脂を用いることができる。例えば、図5に示すように、刷毛2の根元部分の全体(刷毛2の内側と外側を含む)に熱硬化性樹脂材を塗布し、所定の温度で熱し、その後、冷却して固めるのである。
【0056】
尚、刷毛2の根元部分における内側のみ、または、外側のみを樹脂で固めても差し支えない。
【0057】
刷毛2の基端部近傍を硬くする他の措置として、図4に示すように、刷毛2の根元部分における内側に所定のガイド23を設けても良い。
【0058】
尚、刷毛2の根元部分における外側のみにガイド23を設けても差し支えない。また、刷毛2の根元部分における内側と外側の両方にガイド23を設けても差し支えない。
【0059】
また、刷毛2の輪郭は、円形、楕円形、三角形、四角形、その他の多角形等、どのような形状であっても差し支えない。
【0060】
次に、以上のように構成された本発明の最良の形態について、使用・動作の一例を説明する。
【0061】
例えば、鉄塔を塗装する場合には、まず鉄塔の周囲に塗料飛散防護用のメッシュシートを張り、鉄塔の約10m間隔毎に区画棒を設け、そこに取り付けた中継用の加圧切換弁(図示せず)等を介して約10m程度の長さの塗料供給ホース6を接続し、塗料供給ホース6の先端に塗料供給体1を取り付ける。
【0062】
そして、作業前に加圧器とエアレス装置に設置された分岐バルブの絞り具合により、塗料供給体1の塗料吐出量を調節しておき、作業中においてはその状態のまま押下式レバー8を操作し、塗装作業を行う(図1参照)。
【0063】
この塗料は、高所作業場に揚上させるエアレス装置により、各高所に設置された8個の分岐接続口を備えた分岐バルブを介して、例えば、8人の作業者が所持する各刷毛2の内側に配置したエアレスチップ3に圧送される。
【0064】
塗料は、エアレスチップ3の頭部から細かい噴霧状となって吐出し、刷毛2の内側で略円錐状となって拡散する。そして、塗装する対象物に塗料が直接吹き付けられる。その後、刷毛2を対象物に沿って滑らせるように移動させ、塗装が完了する。
【0065】
この塗装作業は、作業者において、手首の返しにより刷毛2の向きを自在に変えられるよう、基端部が手の甲側に位置するように塗料供給体1を親指・中指・人差指で握み、人差指により押下式レバー8の押圧操作を行う。
【0066】
また、エアレスチップ3を介して塗料を噴射させる際に、拡散角度調整機構24を操作して、略円錐状に拡散する塗料の拡散角度を調整する。例えば、ボルトの周辺等の狭隘部においては、略円錐状に拡散する塗料の拡散角度を小さくすることにより、塗料を細部にまで確実に浸透させることができる。また、平坦な部分においては、略円錐状に拡散する塗料の拡散角度を大きくするのである。
【0067】
塗料は、図6(a)に示すように、塗装する対象物に刷毛2の先端が当接している状態において、エアレスチップ3から細かい噴霧状となって吐出し、刷毛2の内側において略円錐状に拡散する。そして、塗装する対象物に塗料が直接吹き付けられる。その後、刷毛2を対象物に沿って滑らせるように移動させる。すると、図6(b)に示すように、刷毛2の先端部近傍は、刷毛2の進行方向と逆の方向に撓った状態となる。この状態で、対象物に吹き付けられた塗料が、刷毛2の先端部分により塗り伸ばされるのである。このとき、図6(b)に示すように、刷毛2の基端部近傍は、僅かに撓った状態となっている。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る塗料自動供給式刷毛装置は、鉄塔を塗装する際に使用することに限定されず、あらゆる建造物を効率良く塗装できるものとして、広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】塗料供給体の先端に刷毛を取り付けた状態を示す全体斜視図である。
【図2】刷毛内において、エアレスチップから塗料を拡散状に噴出している状態を示す断面図である。
【図3】刷毛の構成を示すもので、(a)は空洞部を備えている刷毛の全体斜視図、(b)はエアレスチップが配置されている刷毛の全体斜視図である。
【図4】ガイド部を備えた刷毛の内部において、エアレスチップから塗料を拡散状に噴出している状態を示す断面図である。
【図5】刷毛の基端部を樹脂により硬化させた状態を示す斜視図である。
【図6】刷毛の塗装状態を示すもので、(a)は塗装する対象物に刷毛の先端が当接し、塗料が直接吹き付けられている状態を示す側面図、(b)は刷毛を対象物に沿って滑らせるように移動させ、刷毛の先端部近傍が刷毛の進行方向と逆の方向に撓った状態を示す側面図である。
【図7】従来例における刷毛装置の使用状態を示す概略の斜視図である。
【図8】従来例における他の刷毛装置の構成を示す斜視図である。
【図9】従来例における他の刷毛装置におけるガイド管の正面図である。
【符号の説明】
【0070】
P…空洞部
1…塗料供給体
2…刷毛
3…エアレスチップ
4…供給管部
5A…ホース接続管
5B…ホース接続管
6…塗料供給ホース
7…溶剤供給ホース
8…押下式レバー
9…塗料噴出機構
10…開放部
15…弁座
16…プランジャー
17…塗料調整ネジ部
18…支持ピン
19…押圧操作部
20…連結部材
21…アダプター
22…刷毛固定部
23…ガイド
24…拡散角度調整機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の筒状に形成された刷毛の内側に、加圧された状態の塗料を吐出するエアレスチップを配置したことを特徴とする塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項2】
刷毛は、エアレスチップの周囲に空洞部を形成している請求項1に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項3】
刷毛は、先端部近傍を軟らかく形成し、基端部近傍を硬く形成している請求項1または2に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項4】
刷毛の基端部近傍を、樹脂を用いて硬化させている請求項1乃至3のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項5】
刷毛の基端部近傍に、刷毛潰れ防止用のガイドを配置した請求項1乃至4のいずれかに記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項6】
エアレスチップは、塗装する対象物に塗料を直接吹き付ける請求項1に記載の塗料自動供給式刷毛装置。
【請求項7】
エアレスチップは、塗料を吹き付ける際の拡散角度を調整できる請求項1または6に記載の塗料自動供給式刷毛装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−93621(P2008−93621A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−281155(P2006−281155)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(505176682)ヨシハタ工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】