説明

塗料配合の調製方法及びそれを用いて塗工した紙

水中シリカスラリーの調製方法を開示する。提案するシリカスラリーは、沈降シリカ及び/又はシリカゲル、及び少なくとも1つのさらなる微粒子顔料を含む、紙特にオフセット紙用の塗料配合の成分として、有利に使用することができる。本発明の方法は、a)少なくとも1つのさらなる微粒子顔料の水分散液を作製する工程と、b)この分散液に乾燥粉末状のシリカを加える工程をこの順で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中シリカスラリーの調製方法に関する。具体的には、特にオフセット紙用の塗料配合のために使用される、シリカ、特にシリカゲルのスラリーを作製するという文脈において適用される方法に関する。さらに、そのようなシリカスラリーを用いて塗料配合を作製する方法に関し、そのような塗料配合で塗工した紙に関する。
【背景技術】
【0002】
枚葉給紙のオフセット印刷の分野では、印刷したてのシートにできるだけ素早くさらなる処理が施せ、一方、同時に、所望の印刷光沢や所望の解像度が達成できるよう、用紙の表面中及び上に印刷インクをなおも定着させることが望ましい。この点に関連するものとしては、一方で、物理的なインク乾燥工程があり、これは、例えば、孔隙又はその中に設けられた細孔の特別な系による、インクビヒクルの受像コーティングへの実際の吸収と関係する。他方、いわゆるインクの化学的乾燥があり、これは、通常、インクの架橋可能な成分の酸化架橋(酸素を含む)のために起こる、インク受容層の表面中及び表面上でのインクの凝固と関係する。この化学的乾燥工程は、一方で、赤外線照射により支援することもできるが、インクに、架橋過程を触媒的に支援する特定の化学物質を加えることにより促進することもできる。インクの塗布後最初の時期の物理的乾燥が効果的であればあるほど、化学的乾燥はより速くより効果的に起こる。
【0003】
今日、一般的に、再印刷までの時間及び変換時間は数時間の範囲であり(標準印刷レイアウトに対する再印刷までの一般値は約1〜2時間、標準印刷レイアウトに対する変換までの一般値は12〜14時間、これらの点に関し、マット紙は光沢紙より厳しい)、このことは、印刷工程の速度を落とし、中間蓄積を必要とするため、現在のインク及び/又は紙技術の深刻な不利点である。今日において、印刷段階の後、例えば電子ビーム硬化又は紫外線照射を用いれば、より短い時間が可能であるが、これらの利用に対しては、特別なインクと特別な装置が必要となり、コスト高や、印刷工程及びその後のさらなる困難を伴う。
【0004】
オフセット印刷工程における標準的印刷時間を低減する可能性の1つが、最近の印刷物である特許文献1に記載されている。この文献では、オフセット印刷工程での乾燥時間を減らすために、微粒子シリカを、塗料配合(トップコート及び/又はアンダーコート)の主成分としないで使用することを提案している。ここで取り上げられている微粒子シリカとは、一般にシリカゾル、コロイダルシリカ及びヒュームドシリカと称される化合物を含み、好ましくは非晶質シリカゲル及び沈降シリカを含む。乾燥時間と変換までの時間の大幅な短縮が可能で、達成することができる。
【0005】
顔料としてシリカを用いることに付随する1つの問題は、特にシリカゲルを使用する場合、塗料配合の一部を形成するさらなる顔料とともに、最初粉末状の原材料を水分散液にすることが必須なことである。そうするためには、粉末状の原材料(シリカゲル又は沈降シリカ)をまず水に分散させる(必要であれば分散剤を加えて)。シリカは非常に特有の粉末及び表面構造(高表面積で中程度の湿潤性、低いかさ密度、高い液体吸収力)を有する(これが実際に有益な印刷特性につながる)ため、この分散工程には時間がかかり、固形分のかなり低いシリカスラリーをもたらす。例えば、粉末は、混合槽の上部に浮遊する傾向があり、実際に粉末を表面下に持っていくことは難しい。さらに、湿った表面と乾いた中心部を有するクラスターを形成する。このようなクラスターを壊すには、長い時間をかけて、大量の機械的撹拌エネルギーを必要とする。そのため、通常、シリカゲルをこのようなスラリー状態にするためには、特別な分散プラントが必要である。さらに、このような工程で調製されたシリカスラリーはあまり安定しておらず、長時間貯蔵することができない。一定の時間限界を超えて貯蔵した後に適当な状態にすることは、不可能ではないにしろ非常に難しい。従って、この予め調製したシリカスラリーは、すぐにその後塗料配合に導入され、続いて、さらなる顔料(通常炭酸カルシウム、カオリン、クレー、場合により(中実又は中空の)プラスチック顔料)(これらさらなる顔料は、最終的に塗料配合の主成分を構成する)が、通常、バインダやさらなる添加物(漂白剤、レオロジー改良剤等)のような必要な付加的成分と一緒に、予め調製したスラリーとして加えられる。さらに、この方法を用いると、低い固形分しか達成されず、製紙工程での乾燥時間が長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP−A−1743976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、シリカ、特にシリカゲル又は沈降シリカを含む塗料配合を作製するための方法を提供することである。具体的には、沈降シリカ及び/又はシリカゲル、及び少なくとも1つのさらなる微粒子顔料を含む、紙、特にオフセット紙用の塗料配合の成分として使用される、水中シリカスラリーを調製するための改良された方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、a)少なくとも1つのさらなる微粒子顔料の水分散液を作製又は提供する工程と、b)この分散液に乾燥した粉末状のシリカを加える工程を、この順で含む方法を提案することにより、上記問題を解決する。
【0009】
出発材料として、工程a)で作製されるような分散液を使用し、一工程だけで、工程b)としての方法を実施する場合にも同じことが同等に可能である。
【0010】
従って、本発明の主要な特徴の1つは、驚いたことに意外にも、最初にシリカスラリーを作製して、その後、このスラリーをさらなる顔料を含むスラリーに加えるという従来の順番を逆にする又はむしろ変えることが可能であり、且つ非常に有益であることの発見である。
【0011】
実のところ、上で既に述べた理由により、シリカの分散液を作るには、系に高レベルの分散エネルギーを投入しなければならないと分かった(分散プラント内の混合エネルギー)。確かに、水中シリカスラリーを作るためには、たとえ、水中シリカスラリーを作るために分散剤を加えても、少なくとも4〜8時間の激しい撹拌が必要であり、このような分散工程で得たシリカスラリーを、その後、最終的な塗料配合を作製するために最後に使用する場合、固形分が非常に低い塗料配合になってしまう。このことは、常に、特に沈降シリカ又はシリカゲルを含む塗料配合を作製する障害の一つとして容認されていた。
【0012】
しかしながら、意外にも、最初の工程で、最終的な塗料配合に存在するさらなる顔料の分散液を作り(又は同等に、このような分散液を出発材料として使用し)、その後で、この分散液に粉末状のシリカを加えると、驚いたことに分散工程が極めてより効率的であることがわかった。
【0013】
一方で、より多くのシリカゲル又は沈降シリカを分散液に分散させることが可能であり、他方で、シリカゲル又は沈降シリカを分散させるために必要なエネルギー及び対応する分散工程に必要な時間を劇的に削減することができる。
【0014】
目下のところ、これについては、分散液中に既に存在するさらなる顔料が、多分、さらなる顔料の顔料粒子がほとんど力学的なレベルで撹拌助剤のように働くと言う意味において、分散助剤として機能するという説明がなされる。
【0015】
提案方法を用いると、シリカスラリーを作製する時間を1時間以下まで削減でき(約80%の削減!)、さらに、より高い固形分を達成できる。これは、シリカが、スラリー中の全顔料の少なくとも5重量%(乾燥重量)を構成する量でスラリー中に存在するという条件において(スラリー中の顔料の残り、例えば炭酸カルシウム顔料が95重量%を構成することを意味する)、好ましくはシリカがスラリー中の全顔料の8又は10重量%以上を構成する量、好ましくは8〜15重量%の範囲でスラリー中に存在するという条件において達成できる。これらの条件下では、工程から生じるシリカスラリーの、又は最終的な塗料配合の固形分を65%以上の値まで増やすことが可能であり、これは、従来の工程では絶対に不可能である。
【0016】
固形分がより高いと、塗料配合の塗布後にコーティングから取り除かなければならない水がより少ないため、機械での乾燥時間がより短くなる。同様に、これにより、抄紙機をより速く運転させ、紙生産速度をより速められる。さらに、固形分が高いことは、透水が少ないため、よりよい品質とよりよいコーティング・カバレッジをもたらし、その他の利点の中でもとりわけ、光沢紙の場合に特に光沢度が高くなる。
【0017】
さらに、例えば既にさらなる顔料を含むシリカスラリーのようなものは、意外にも、シリカだけを含むスラリー(最終的には分散剤を有する)より、長い時間、通常少なくとも20日間貯蔵が可能である。
【0018】
概して、本発明の方法は、上記特許文献1に記載及びクレームされている塗料配合の作製に好適な及び最適化されている。従って、対応して、特許文献1の内容は、配合の組成及びその成分の特徴に関して、本発明の開示に明確に包含される。
【0019】
提案方法は、後で塗料配合作製工程に導入することができるシリカスラリーを提供する。この場合、結果として生じるシリカ(ゲル)スラリーは、塗料配合作製工程用の出発材料として機能し、工程中、その後最終的には、さらなる顔料が導入され、漂白剤、バインダ等が導入される。
【0020】
他方で、提案方法を、塗料配合作製工程に組み込むこともできる。例えば、ここで提案するように、シリカを抄紙機の塗料配合作製ユニットの分散槽に直接投入することもでき、例えば、さらなる顔料を有する分散液も入っているこの分散槽に、空気圧で吹き込むことによってシリカ粉末を投入できる。
【0021】
本発明の第1の好ましい実施形態では、シリカは非晶質シリカゲルである。非晶質シリカゲルの分散液を作ることは特に難しく、とりわけ、このような状況に対し特に本発明の方法は最も適していることがわかった。このことは、分散させるべきシリカゲルが、0.5ml/gを超える、好ましくは1.0ml/gを超える、さらに好ましくは1.5又は2.0ml/g以上の内部細孔容積を有する場合特に当てはまる。同様に又は代わりに、使用するシリカゲルが、200〜1000m/gの範囲、好ましくは250〜800m/gの範囲、さらに好ましくは200〜400m/gの範囲の表面積を有する場合に当てはまる。同様に又は代わりに、シリカゲルが、0.1〜5μmの範囲、好ましくは0.3〜4μmの範囲、特に0.3〜1μmの範囲、又は3〜4μmの範囲の粒径を有する場合に当てはまる。
【0022】
上述のように、さらなる顔料は、粒子レベルで分散液中に運動エネルギーを与えるため、分散助剤として機能する。この効果を得るためには、さらなる顔料の分散液が、このような微粒子顔料でかなり重くなっていることが好ましい。従って、さらなる微粒子顔料は、工程a)の後、50%を超える、好ましくは60%を超える、さらに好ましくは70〜80%の範囲の固形分を含む分散液中に存在することが好ましい。
【0023】
本発明の方法のさらなる好ましい実施形態は、さらなる微粒子顔料が、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、プラスチック顔料又はこれらの混合物からなる群から選択される。炭酸カルシウムが好ましく、そのため、好ましくは、工程a)で使用される又は工程a)として提供されるさらなる微粒子顔料は、実質的に、好ましくは、粒子の50%が1μmより小さい粒径分布を有する、さらに好ましくは、粒子の50%が0.5μmより小さい粒径分布を有する、最も好ましくは、粒子の50%が0.4μmより小さい粒径分布を有する炭酸カルシウムからなる。また、最終的な塗料配合がさらなる顔料を含む場合は、完全に異なるタイプの顔料又は異なる粒径分布を有する炭酸カルシウムを、シリカスラリーの作製後に付加することができる。
【0024】
好ましくは、工程a)の前に、付加的に分散剤が使用され、好ましくはポリアクリル酸塩及び/又はポリリン酸塩分散剤、又は顔料を水に分散させるための現在入手可能な他の分散剤が使用される。
【0025】
好ましくは、シリカスラリーを作製するための提案方法は、最終的な塗料配合のためのバインダなしで実行される。そのため、工程a)では、実質的に、最終的な塗料配合のバインダはまだ存在しておらず、バインダはシリカスラリーの調製後に付加されるだけである。実際に、提案のシリカスラリーは最終的な塗料配合の予め調製された成分として使用することができ、比較的長時間貯蔵することが可能である。最終的な塗料配合は、その後、さらなる顔料、添加剤、バインダ等を、塗料配合を基板に塗布する直前に加えることにより作製することができ、例えば、コートした又はプレコートした(例えば、サイジング層付きの)基板の基層(standard)となることができる。
【0026】
さらなる好ましい実施形態によると、工程a)の前に、付加的にアルカリを加え、好ましくは工程a)の終わりにおけるpHが7を超えるように、さらに好ましくはpH=7.5〜8.7の範囲(目標値は通常pH〜8.2)に調整し、好ましくはこの目的のためにアルカリとして水酸化ナトリウム溶液を使用する。pHをこれらの値に調整することは、炭酸カルシウムを顔料として使用する場合、pHがあまりに低い値になると(prop)ガスが発生し始めるため、特に重要である。
【0027】
実のところ、非常に早い最初の段階で、分散剤とアルカリを含む水が供給され、その後さらなる顔料を含むスラリーが系に導入されるなら、クラスター形成を効果的に抑制できる。
【0028】
本発明の具体的な好ましい実施形態は、工程a)で、最終的な湿式塗料配合全体の重量の、通常20〜50又は20〜40重量%を構成する水を混合槽に導入し、必要であれば、その前、それと同時に又はその後に、分散剤及び/又はアルカリを導入し、続いて、最終的な塗料配合の炭酸カルシウム顔料部分(通常主要部分である)を加えることを特徴とする。工程a)では、好ましくは最終的な乾燥塗料配合全体における含有量が50〜95重量%の範囲、さらに好ましくは最終的な乾燥塗料配合全体の70〜90重量%の範囲となるような量の炭酸カルシウムを加え、その後、このスラリーを、実質的に均一な分散液が形成されるまでかき混ぜる。続いて工程b)が実施される
【0029】
好ましい実施形態によると、工程b)では、ほぼ連続的に又は断続的に続けて、シリカが分散液に加えられる。好ましくは、この付加は、工程a)で作製された顔料分散液に、実質的に乾燥した状態のシリカ粉末を吹き込むことにより、ほぼ連続的に行われる。従って、好ましくは、シリカ(ゲル)粉末を、空気圧を用いて系に導入する。このことは、例えば、分散液に導入するために、できるだけ均一にシリカ粒子を混合した空気流を提供するために、圧搾空気を使用することを意味する(「吹き入れ」)。これは、例えば、圧搾空気の入った管に粉末用の注入口を設け、粉末と空気を混合することによって可能であり、空気が粉末を分散プラントに運ぶ。分散プラント周辺の粉末に関する問題を回避するために、粉末/空気混合物用の対応する注入バルブを設けること、及び/又は、分散槽の上蓋を閉じることが有益である。シリカ粉末を加える速度は、分散プラントの撹拌機をモニターすることによって調整できる。付加速度を、混合槽の撹拌機が混合速度をゼロより大きく又はある最小値より大きく連続的に保つことができるように調整すれば、付加の効率的な制御が可能である。
【0030】
塗料配合を作るために続いて使用される、上記予め調製されたシリカスラリーの調製に対しては、最終的な固形分を調整するよう、工程b)で作られたシリカスリラーにいくらか付加的な水を補うことや、均一な系を達成するために系をいくらかかき混ぜることが可能である。一般に、シリカスラリーの最終的な固形分を、40〜70%の範囲、好ましくは50〜70%の範囲、さらに好ましくは60〜65%の範囲にすることができる。
【0031】
上述のように、提案方法は、予め調製されたシリカスラリーを作るための方法を提供する。最終的な塗料配合は通常、その後の工程、つまり好ましくは工程b)の後に初めて作られ、最終的には、通常、コーティングの最終的な乾燥重量の5〜20重量%を超えることのない付加的な顔料(例えば粗い炭酸カルシウム顔料、カオリン、クレーなど)及びさらなる添加物が加えられる。バインダは、既に上述したように、後、つまりシリカスラリーの作製後に、最終的な塗料配合を構成するために加えられるだけである。通常バインダは、最終的には、乾燥重量で5〜20部、好ましくは7〜12部の範囲で、最終的な乾燥塗料配合の乾燥重量になるように加えられる。
【0032】
既に上述したように、通常、特にオフセットコーティングに利用する場合には、スラリー中及び最終的な塗料配合中のシリカの含有量は、さらなる顔料の含有量より低い。従って、好ましくは、工程b)で、シリカゲルは、最終的な塗料配合において、乾燥重量で3〜20部、好ましくは8〜12部存在するような量で加えられる。
【0033】
さらに、本発明は、上記方法により作製されたシリカスラリー、及び、上記方法を用いて作製される予め調製されたシリカスラリーを使用することを特徴とする塗料配合の作製方法に関する。さらに、本発明は、このような方法を使用して作製される塗料配合に関する。最後に、本発明は、少なくとも片面に、このような塗料配合を用いて作製される少なくとも1つのコーティング層を含む塗工紙、好ましくはオフセット印刷用塗工紙に関する。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、従属項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明において使用するための、2つの混合槽を有した分散プラントの概略図である。
【図2】図2は、本発明において使用するための、1つの混合槽を有した分散プラントの概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
添付の図に、本発明の好ましい実施形態を示す。
図と具体的な実施例を参照するが、これらは、本発明の好ましい実施形態を図示する目的のためのものであって、本発明を制限する目的のためのものではない。図1は、第1の混合槽2と第2の混合槽3を含む分散プラント1を示す。両混合槽には、撹拌機4,5が設けられており、それらはそれぞれ、モータMで駆動される。撹拌機は好ましくは、水に顔料を分散させる(disburse)ことで知られているような、高い分散作用を有する撹拌機である。例えば、それらは、槽の底近くに配置することができる。第1の混合槽が実際の分散槽であり、第2の混合槽は通常、循環槽と呼ばれる。
【0037】
この2つの混合槽は、2つの導管6,7を介して相互に接続されており、この導管によって、一方では2つの撹拌機4,5の助けにより、しかし特にポンプ8を用いて、2つの容器2,3内の液体を循環させることができる(いわゆる環化タンク)。
【0038】
図1の配置では、水と場合により付加的な化学物質(特に分散剤)が、第1の段階で第1の混合槽に加えられる(マル1)。第2の段階で、炭酸カルシウムがスラリーとして第2の混合槽3に加えられ、これは、第1の段階に続いて又は同時に行うことができる(マル2)。上記詳述した実際の第2の工程で、続いて、シリカゲルが、第1の混合槽に、粉末状で吹き込むことにより加えられる。
【0039】
図2には異なる配置を図示した。この場合、撹拌機4を1つだけ設けた単独容器11が1つしかない。図から分かるように、上記三つの異なる成分の付加が、この単独容器にて行われる。
【0040】
従って、このような分散プラントで製造されるシリカスラリーは、シリカ粉末を、準備のできた顔料スラリー(通常は炭酸カルシウムスラリー)に導入するという本発明に従って作製され、その結果、塗料配合としては通常の固形分65%の塗料配合(これまで、シリカスラリー、特にシリカゲルスラリーでは達成できなかった)にシリカ顔料を有することが可能となる。
【0041】
上述のように、最初の段階で、分散剤、通常ポリアクリル酸塩又はポリリン酸塩分散剤、及びpHを調整し値を8.2にするのに適当な量のアルカリを、図1,2の上記段階1で、水とともに供給する。この水は、段階2で系に投入される炭酸カルシウムスラリー中の水分含量とともに、スラリー中の全水分量の約30%を構成する。次の段階では(図1,2中のマル2)、炭酸カルシウムが、通常スラリーの形で投入される。これにより、固形分が約70〜80%の分散液となる。この分散液は、クラスターが無くなるまでしばらくの間撹拌される。
【0042】
続いて(図1,2中の段階マル3)、シリカ粉末(実質的に乾燥状態)が導入される。これは、シリカ粉末、例えばグレース社(Grace)の製品シロイド(SYLOID) C803又はSylojet 701A又は703Aを、槽2又は11それぞれに吹き込むことによりなされる。この粉末の導入はかなりゆっくりと行われ、分散凝集体の力に応じて調整することができる。付加を制御する1つの簡単な方法は、撹拌機4,5の動き具合をモニターすることである。これらの撹拌機の動きが非常に遅くなったり停止するようになったら、シリカ粉末の付加又はむしろ吹き入れを減らす又は一時的に止めるべきであろう。
【0043】
次の工程では、所望する最終的な固形分を、例えば65%の値に調整するために、さらに水を加えることができる。通常この付加的な水の導入後、系をもう少しの間かき混ぜると有利である(例えば最大30分)。
【0044】
この方法を用いての全分散時間は、約1時間である。比較として、付加的なさらなる顔料がまだ存在していない水中にシリカスラリーを作製するための分散時間は、少なくとも4〜8時間かかる。従って、分散時間を約80%削減することができる。
【0045】
水(通常分散剤と一緒)中に提供される、従来技術によるシリカスラリーとは対照的に、本発明によって作製されるさらなる顔料を伴ったシリカスラリーは、長時間貯蔵できる。少なくとも20日間の貯蔵時間が簡単に可能である。通常従来の水中のシリカスラリーは、数日間しか貯蔵できない。
【0046】
従って、このようなシリカスラリーは、抄紙機のコーティング凝集体における実際の塗料配合を作るために使用することができる。この目的のために、さらなる顔料が付加され、例えば漂白剤、レオロジー改良剤等の添加物、及びバインダ(重要)が付加される。
【0047】
具体的には、例えば、シリカゲル(シロイドC803)と微粒子構造を持つ炭酸カルシウム(例えばCC90)を有するシリカスラリーを製造することが可能であり、シリカゲルは最終的な塗料配合中の乾燥含有量が10%になるように付加され、微粒子炭酸カルシウムは、最終的な塗料配合中の乾燥含有量が80%になるように付加される。そして、このスラリーは貯蔵することができる。その後、基板にコーティングを塗布する直前の、実際の塗料配合作製工程で、バインダ及びさらなる顔料(例えば、CC60タイプのより粗い炭酸カルシウム又はプラスチック顔料)が付加される。
【0048】
本発明の方法を用いて得られる固形分は、塗料配合の作製に対し、さらなる顔料のない水中シリカスラリーが使用される場合よりかなり高い。実のところ、最終的な塗料配合において、達成可能な固形分は、予め調製された従来の水中シリカスリラーが使用される場合より約5%高い。
【符号の説明】
【0049】
1. 分散プラント
2. 第1の混合槽
3. 第2の混合槽
4. 2内の撹拌機
5. 3内の撹拌機
6. 第1の循環導管
7. 第2の循環導管
8. ポンプ
9. さらなる顔料を第2の混合槽に導入するための開口部
10. シリカ顔料を第1の混合槽に導入するための開口部
11. 単独混合槽

M. 撹拌機用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈降シリカ及び/又はシリカゲル、及び少なくとも1つのさらなる微粒子顔料を含む、紙特にオフセット紙用の塗料配合の成分として使用される、水中のシリカスリラーの調製方法において、
a)前記少なくとも1つのさらなる微粒子顔料の水分散液を作製又は提供する工程と、
b)この分散液に乾燥粉末状のシリカを加える工程を、
この順で含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記シリカが非晶質シリカゲルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シリカゲルが、0.5ml/gを超える、好ましくは1.0ml/gを超える、さらに好ましくは1.5又は2.0ml/g以上の内部細孔容積を有し、及び/又は、200〜1000m/gの範囲の、好ましくは250〜800m/gの範囲の、さらに好ましくは200〜400m/gの範囲の表面積を有し、及び/又は、0.1〜5μmの範囲の、好ましくは0.3〜4μmの範囲の、特に0.3〜1μmの範囲の又は3〜4μmの範囲の粒径を有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記さらなる微粒子顔料が、工程a)の後、50%を超える、好ましくは60%を超える、さらに好ましくは70〜80%の範囲の固形分を含む分散液中に存在することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記さらなる微粒子顔料が、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、プラスチック顔料又はこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程a)で使用される前記さらなる微粒子顔料が、実質的に、好ましくは粒子の50%が1μmより小さくなる粒径分布を有する、さらに好ましくは粒子の50%が0.5μmより小さくなる粒径分布を有する、特に好ましくは粒子の50%が0.4μmより小さくなる粒径分布を有する炭酸カルシウムからなることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の前又は間に、付加的に、分散剤、好ましくはポリアクリル酸塩及び/又はポリリン酸塩分散剤が使用される又は導入されることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
工程a)において、実質的に、最終的な塗料配合のバインダが前記分散液にまだ存在せず、前記バインダは前記シリカスラリーの調製後、好ましくは最終的な塗料配合の調製に続く工程において付加されるだけであることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程a)の前に、アルカリを加えて、好ましくは工程a)の間及び/又は終わりにおけるpHを、7を超えるように、さらに好ましくはpH=7.5〜8.7の範囲に調整し、好ましくはこの目的のためにアルカリとして水酸化ナトリウム溶液が使用されることを特徴とする、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程a)において、最終的なシリカスラリー全体の、又は最終的な湿式塗料配合全体の重量の、20〜40重量%を構成する水を混合槽に導入し、その前、それと同時に又はその後に、分散剤及び/又はアルカリを導入し、続いて、好ましくは最終的な乾燥塗料配合全体で顔料部分が50〜95重量%の範囲、さらに好ましくは最終的な乾燥塗料配合全体で顔料部分が70〜90重量%の範囲の、最終的な塗料配合の炭酸カルシウム顔料部分の主要部分を加え、このスラリーを、実質的に均一な分散液が形成されるまでかき混ぜ、続いて、工程b)を実施することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)において、前記粉末状シリカが、好ましくは空気圧を用いて、及び/又は好ましくは前記粉末状のシリカを前記分散液の表面上に上から吹くことにより、前記顔料分散液に吹き込まれ、好ましくは付加速度が、前記混合槽の撹拌機が混合速度をゼロより大きく、連続的に保たれるように調整されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記シリカスラリーが、前記最終的な固形分を調整するために、最終的に、続けて、いくらか付加的な水により補われ、前記シリカスラリーの最終的な固形分が、40〜70%の範囲、好ましくは50〜70%の範囲、さらに好ましくは60〜65%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程a)及びb)での分散時間が1時間以下であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程b)の後、最終的に、付加的な顔料及びさらなる添加物が加えられ、前記最終的な塗料配合を構成するために、バインダが、前記最終的な乾燥塗料配合の乾燥重量で、好ましくは5〜20部の範囲、好ましくは7〜12部の範囲で加えられることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程b)において、シリカゲルは、前記最終的な塗料配合において、前記最終的な乾燥塗料配合の顔料部分の乾燥重量で5〜15部、好ましくは8〜12部存在するような量で加えられることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法を用いて作製される予め調製されたシリカスリラーが使用されることを特徴とする、塗料配合の作製方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法を用いて作製される塗料配合。
【請求項18】
少なくとも片面に、請求項1〜17のいずれか1項に記載の塗料配合を用いて作製される少なくとも1つのコーティング層を含む、塗工紙、好ましくはオフセット印刷用塗工紙。
【請求項19】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法を用いて作製される、さらなる顔料を含むシリカスラリー、好ましくはシリカゲルスラリー。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−518266(P2010−518266A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−548604(P2009−548604)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000713
【国際公開番号】WO2008/095633
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(505115005)エスエーピーピーアイ ネザーランズ サーヴィシーズ ビー.ヴイ (9)
【Fターム(参考)】