説明

塗膜、および着色材料含有被覆材とその製造方法

【課題】耐汚染性、耐候性、耐凍害性に優れる、着色材料を含む塗膜、及び耐汚染性、耐候性、耐凍害性に優れる塗膜を形成できる着色材料含有被覆材とその製造方法の提供。
【解決手段】重合体(A)、シリカ粒子(B)、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤及び着色材料(C)を含有し、重合体(A)が、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位(a)0.2〜20質量%、その他の単量体単位(b)80〜99.8質量%より構成され、着色材料(C)が重合体(A)100質量部に対して10〜100質量部である着色材料含有被覆材、及び重合体(A)、シリカ粒子(B)、及び着色材料(C)を含有し、塗膜表面における露出した前記シリカ粒子(B)の占有面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜、および着色材料含有被覆材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野においては、環境保全、安全衛生の面から有機溶剤系塗料から水性塗料(水性被覆材)への変換が図られている。しかし、水性被覆材からなる塗膜は、耐候性、耐水性、耐凍害性、耐汚染性等の塗膜性能、特に耐汚染性が溶剤系に比べて低位であり、解決すべき課題が多いのが現状である。
【0003】
これらの課題の解決を目的とした水性被覆材の開発および塗膜の積層方法の開発は種々行われている。例えば、水性被覆材用の樹脂としては、乳化重合によるアクリル樹脂のエマルションが、得られる塗膜の耐候性等が比較的良好であるという特長を有することから、注目されている。また、下塗り用水性エマルション、中塗り用水性エマルション、上塗り用水性エマルションのそれぞれに性能を付与し、これら水性エマルションを順次、積層塗装し、積層塗膜全体として耐汚染性等の塗膜性能を発揮するような工夫がなされている。
【0004】
塗膜の耐汚染性を向上させる方法としては、例えば、下記方法が知られている。
【0005】
(i)塗膜の硬度を高くする(樹脂のガラス転移温度(Tg)を高くする)方法。
【0006】
(ii)塗膜表面を親水化し、雨水で汚染物質を洗い流す自浄作用を付与する方法。
【0007】
(iii)塗膜の帯電性を制御して、静電気による汚れの付着を抑える方法。
【0008】
しかし、(i)の方法では、造膜性が低下し、冬場に塗膜にヒビ等が発生する問題があり、耐凍害性に問題がある。また、塗膜の耐汚染性の大幅な改善は困難である。
【0009】
(ii)の方法としては、例えば、親水性を有する単量体単位を含む樹脂を用いる、界面活性剤等を添加する等の方法が挙げられる。しかし、親水性を有する単量体単位を含む樹脂は、耐候性が低いという問題がある。また、界面活性剤等を添加した場合、塗膜の耐水性が低下し、耐汚染性の効果の持続に問題がある。
【0010】
(iii)の方法では、帯電防止剤の添加が塗膜の耐候性、耐水性に悪影響を及ぼし、効果の持続性にも問題がある。
【0011】
これら問題を解決する水性被覆材としては、無機物を含有する水性被覆材が知られている。該水性被覆材としては、例えば、下記水性被覆材が提案されている。
【0012】
(1)ビニルシランとアクリル系モノマーとの共重合体を含有する水性エマルションにコロイダルシリカを含有させた被覆組成物(特許文献1)。
【0013】
(1)の被覆組成物からなる塗膜は、耐熱性、耐水性、密着性に優れるとされている。しかし、(1)の被覆組成物は、水性エマルションの固形分100質量部に対して、固形分含量500〜20000質量部の多量のコロイダルシリカを必要としている。コロイダルシリカを多量に用いると、塗膜の透明性、耐候性、被覆組成物の貯蔵安定性、塗装作業性が劣るという問題点がある。
【0014】
これに対して、比較的少量のコロイダルシリカを用いた水性被覆材としては、例えば、下記水性被覆材が提案されている。
【0015】
(2)不飽和ビニルモノマーがポリオルガノシロキサンに対し10〜90質量部グラフト共重合されたポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体エマルション100質量部と、コロイダルシリカ1〜50質量部とを含有する難燃性塗材(特許文献2)。
【0016】
(3)ポリオルガノシロキサン系グラフト共重合体エマルション100質量部と、コロイダルシリカ1〜300質量部とを含有する水性被覆組成物(特許文献3)。
【0017】
(2)の難燃性塗材からなる塗膜は、難燃性、伸長性、接着性、感温特性、透湿性、および耐汚染性に優れるとされている。しかし、(2)の塗材は、ポリオルガノシロキサン系グラフトブロック共重合体エマルションの固形分100質量部中、ポリオルガノシロキサン成分が52質量部以上であり、多量の撥水性シリコーン成分を含有している。そのため、塗膜の親水性が不十分となり、耐汚染性が低位である。また、塗材の貯蔵安定性、塗膜の透明性、硬度の点でも問題がある。
【0018】
(3)の水性被覆組成物は、貯蔵安定性に優れ、その塗膜は、硬度、耐水性、および耐汚染性に優れるとされている。(3)の水性被覆組成物からなる塗膜は、(2)の塗材からなる塗膜と比較すると、耐汚染性が大幅に改善されているものの、さらなる塗膜の親水化による低汚染化が求められている。また、水性被覆組成物の貯蔵安定性においても不十分である。
【0019】
静電気による汚れの付着を抑える方法としては、例えば、下記方法が提案されている。
【0020】
(4)セメント系材料の表面塗装において、下塗り、中塗り、上塗りの多層構成にして、それらの全てにシリケートまたはシリカゾルを配合し、積層塗膜の静電気滞留を防ぐことにより、静電気による汚れ付着を防止し、塗膜に耐汚染性を付与する方法(特許文献4、5等)。
【0021】
しかし、(4)の方法では、下塗り、中塗り、上塗りのどれか一層が樹脂のみの塗膜であると、静電気滞留が起きて、塗膜に汚れが付着するという問題がある。
【0022】
耐汚染性に優れる塗膜としては、例えば、下記塗膜が提案されている。
【0023】
(5)重合体を含む被覆成分と、コロイダルシリカとを含有した塗膜(特許文献6等)。
【0024】
しかし、(5)の塗膜には、エナメル粒子等の着色材料が配合されたものに関する記載はなかった。
【特許文献1】特公平1−41180号公報
【特許文献2】特開平4−23857号公報
【特許文献3】特開平9−165554号公報
【特許文献4】特公昭53−34141号公報
【特許文献5】特開平5−96234号公報
【特許文献6】国際公開第05/075583号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的は、耐汚染性、耐候性、耐凍害性に優れる、着色材料を含む塗膜、および耐汚染性、耐候性、耐凍害性に優れる塗膜を形成できる着色材料含有被覆材とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の第1の要旨は、重合体(A)、シリカ粒子(B)、及び着色材料(C)を含有する塗膜であり、塗膜表面における露出した前記シリカ粒子(B)の占有面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜である。
【0027】
本発明の第2の要旨は、重合体(A)、シリカ粒子(B)、着色材料(C)、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤を含有する着色材料含有被覆材であって、前記重合体(A)が、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位(a)0.2〜20質量%、その他の単量体単位(b)80〜99.8質量%(ただし、単量体単位(a)および単量体単位(b)の合計を100質量%とする。)より構成され、前記着色材料(C)が重合体(A)100質量部に対して10〜100質量部である着色材料含有被覆材である。
【0028】
本発明の第3の要旨は、重合体(A)、シリカ粒子(B)、着色材料(C)、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、更に有機ヒドラジン化合物(D)を含有する着色材料含有被覆材であって、重合体(A)が、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位(a)0.2〜20質量%、その他の単量体単位(b)80〜99.8質量%(ただし、単量体単位(a)および単量体単位(b)の合計を100質量%とする。)より構成され、その他の単量体単位(b)として、カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するエチレン性不飽和単量体単位(b−1)を0.1〜10質量%(ただし、前記重合体(A)の質量を100質量%とする)含み、前記着色材料(C)が重合体(A)100質量部に対して10〜100質量部である着色材料含有被覆材である。
【0029】
本発明の第4の要旨は、前記シリカ粒子(B)が重合体(A)100質量部に対して0.5〜25質量部である着色材料含有被覆材である。
【0030】
本発明の第5の要旨は、前記着色材料含有被覆材の製造方法であって、前記シリカ粒子(B)の全量あるいは一部と、前記着色材料(C)の全量あるいは一部を混合して混合物を調製し、その後に前記混合物と前記重合体(A)を混合する工程を含む方法である。
【発明の効果】
【0031】
本発明の塗膜は、耐汚染性、耐候性、耐凍害性に優れる。また、本発明の塗膜は、着色材料を含有するので、意匠性にも優れる。
また、本発明の着色材料含有被覆材は、耐汚染性、耐候性、耐凍害性に優れる塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0033】
<着色材料含有被覆材>
本発明の着色材料含有被覆材は、重合体(A)と、シリカ粒子(B)と、着色材料(C)と、特定のアニオン系界面活性剤と、特定のノニオン系界面活性剤とを含有する着色材料含有被覆材である。
【0034】
着色材料含有被覆材の固形分濃度は、通常、10〜80質量%である。
【0035】
(重合体(A))
重合体(A)は、被膜形成成分であり、塗膜に成膜性、耐候性、耐水性等を与える成分である。
【0036】
重合体(A)としては、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。これらのうち、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐凍害性の点から、アクリル系樹脂およびアクリルシリコーン系樹脂が好ましく、アクリルシリコーン系樹脂がより好ましい。
【0037】
アクリル系樹脂およびアクリルシリコーン系樹脂を構成する単量体単位としては、例えば、下記単量体由来のもの(単量体単位(a)、(b))が挙げられる。なお、これらはラジカル重合可能なものであればよく、下記のものに限定はされない。
【0038】
重合体(A)は、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性の点から、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位(a)を0.2〜20質量%と、その他の単量体単位(b)80〜99.8質量%(ただし、単量体単位(a)および単量体単位(b)の合計を100質量%とする。)より構成されることが好ましい。
【0039】
単量体単位(a);
単量体単位(a)は、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位からなる。単量体単位(a)を用いることにより、重合体(A)とシリカ粒子(B)とが結着しやすくなり、また、形成される塗膜表面へのシリカ粒子(B)の露出量を向上させ、シリカ粒子層に厚みを持たせることができ、耐汚染性、耐候性、耐水性が得られる。
【0040】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体の具体例としては、例えば、ビニルシラン類、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類が特に好ましい。
【0041】
ビニルシラン類、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類等としては、以下に示すビニルシラン類、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類等の中から1種以上を選択して用いることができる。
【0042】
ビニルシラン類:ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン等。
【0043】
(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン類:γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン等。
【0044】
ラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体の具体例としては、以下に示す化合物の中から1種以上を選択して用いることができる。
【0045】
ラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ−3−メタクリロキシプロパン、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルにヒドロキシ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジオールと(メタ)アクリル酸のジエステル化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の1分子当たり3個以上の水酸基を有する化合物と(メタ)アクリル酸のポリエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチレン)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等。
【0046】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位、及びラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位は、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させる目的で使用するが、これらを含有すると耐凍害性が低下する場合がある。したがって、少ない含有量で塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させるのが好ましい。
単量体単位(a)の含有量は、重合体(A)中、0.2〜20質量%であり、0.5〜18質量%であることが好ましい。単量体単位(a)の含有量が0.2質量%以上であれば、耐汚染性、耐候性、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。また、単量体単位(a)が20質量%以下であれば、耐凍害性を低下させることなく耐汚染性、耐候性、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【0047】
単量体単位(b);
単量体単位(b)は、単量体単位(a)以外の単量体単位(その他の単量体単位)である。
その他の単量体単位(b)の含有量は、重合体(A)中、80〜99.8質量%であり、82〜99.5質量%であることが好ましい。単量体単位(b)の含有量が80質量%以上であれば、耐凍害性を低下させることなく耐汚染性、耐候性、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。また、単量体単位(b)が99.8質量%以下であれば、耐汚染性、耐候性、耐水性に優れた塗膜を形成することができる。
【0048】
その他の単量体単位(b)としては、特に限定されないが、カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するエチレン性不飽和単量体単位(b−1)、カルボキシル基含有単量体単位、ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体単位および/またはポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体単位、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位、自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体単位、耐紫外線ラジカル重合性単量体単位を使用することが好ましい。
【0049】
カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するエチレン性不飽和単量体単位(b−1)(以下、「単量体単位(b−1)」と略す。)を用いることにより、後述する有機ヒドラジン化合物(D)との間で架橋反応が進行し、低汚染維持性、耐候性、耐水性、耐凍害性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、及び各種下地に対する密着性に優れた塗膜を形成することができる。
単量体単位(b−1)を与える単量体としては、例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、ピバリンアルデヒド、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、ダイアセトンアクリルアミドが好ましい。
これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
単量体単位(b−1)の含有量は、重合体(A)中、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜8質量%であることがより好ましい。単量体単位(b−1)の含有量が0.1質量%以上であれば、低汚染維持性、耐候性、耐水性、耐凍害性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、各種下地に対する密着性に優れた塗膜を形成することができる。また、単量体単位(b−1)の含有量が10質量%以下であれば、初期の耐汚染性を低下させることなく、低汚染維持性、耐候性、耐水性、耐凍害性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、各種下地に対する密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【0051】
また、重合体(A)は、着色材料、粘性調整剤や溶剤などの添加物を入れ、着色材料含有被覆材を製造する際の配合安定性や着色材料含有被覆材の貯蔵安定性の点から、その他の単量体単位(b)として、カルボキシル基含有単量体に由来する単位を含有することが好ましい。
【0052】
カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、重合体(A)中、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が0.1質量%以上であれば、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性が向上し、着色材料含有被覆材を製造する際、凝集物が発生するような問題を回避できる。カルボキシル基含有単量体単位の含有量が10質量%以下であれば、塗膜の耐候性および耐水性を低下させることなく、着色材料含有被覆材製造時の配合安定性、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性をさらに向上させることができる。
【0053】
カルボキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、ビニル安息香酸、シュウ酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、5−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフタル酸モノヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
重合体(A)は、着色材料含有被覆材製造時の配合安定性、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種基材に対する密着性の点から、その他の単量体単位(b)として、ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体および/またはポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体に由来する単位を含有することが好ましい。
【0055】
ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体単位、およびポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体単位の含有量は、重合体(A)中、0.5〜20質量%が好ましく、1〜12質量%がより好ましい。これら単量体単位の含有量が0.5質量%以上であれば、着色材料含有被覆材製造時の配合安定性、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種基材に対する密着性が向上する。これら単量体単位の含有量が20質量%以下であれば、塗膜の耐候性および耐水性を低下させることなく、着色材料含有被覆材製造時の配合安定性、塗膜の耐汚染性および各種基材に対する密着性をさらに向上させることができる。
【0056】
ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、p−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
ポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体としては、例えば、末端ヒドロキシ型ポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体、アルキル基末端型ポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体が挙げられ、具体的には、ヒドロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリエチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−ポリテトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(ポリプロピレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、オクトキシ(ポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ(ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
重合体(A)は、塗膜の耐候性、耐水性の点から、その他の単量体単位(b)として、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類に由来する単位を含有することが好ましい。
【0060】
炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類に由来する単位の含有量は、重合体(A)中、50〜95質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、80〜95質量%が特に好ましい。これら単量体単位の含有量が50質量%以上であれば、塗膜の耐水性および耐候性が向上する。これら単量体単位の含有量が95質量%以下であれば、塗膜の耐凍害性を低下させることなく、耐候性および耐水性をさらに向上させることができる。
【0061】
炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類としては、以下に示す炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート類:メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等。
【0062】
重合体(A)は、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種基材に対する密着性の点から、その他の単量体単位(b)として、自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体に由来する単位を含有することが好ましい。自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体とは、重合体が水性分散液中に分散して室温で保管されている間は化学的に安定であって、塗装時の乾燥、加熱、その他の外的要因によって側鎖官能基同士の反応を生じ、該側鎖基間に化学結合を生じるような官能基を有するラジカル重合性単量体を意味する。
【0063】
自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体単位の含有量は、重合体(A)中、0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜12質量%がより好ましい。自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体単位の含有量が0.1質量%以上であれば、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性および各種基材に対する密着性が向上する。自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体単位の含有量が15質量%以下であれば、塗膜の耐水性および耐候性を低下させることなく、塗膜の耐汚染性および各種基材に対する密着性をさらに向上させることができる。
【0064】
自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体としては、以下に示す自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体(オキシラン基含有ラジカル重合性単量体、エチレン性不飽和アミドのアルキロールまたはアルコキシアルキル化合物)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
オキシラン基含有ラジカル重合性単量体:グリシジル(メタ)アクリレート等。
エチレン性不飽和アミドのアルキロールまたはアルコキシアルキル化合物:N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のエチレン性不飽和アミドのアルキロールまたはアルコキシアルキル化合物等。
【0065】
重合体(A)は、塗膜の耐候性の点から、その他の単量体単位(b)として、耐紫外線ラジカル重合性単量体に由来する単位を含有することが好ましい。
【0066】
耐紫外線ラジカル重合性単量体単位の含有量は、重合体(A)中、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。耐紫外線ラジカル重合性単量体単位の含有量が0.1質量%以上であれば、塗膜の耐候性が向上する。耐紫外線ラジカル重合性単量体単位の含有量が10質量%以下であれば、重合安定性を低下させることなく、塗膜の耐候性をさらに向上させることができる。
【0067】
耐紫外線ラジカル重合性単量体としては、光安定化作用を有する(メタ)アクリレート、紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
光安定化作用を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0069】
紫外線吸収性成分を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−ブチル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−t−アミル−5−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0070】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上述したその他の単量体単位(b)(カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するエチレン性不飽和単量体単位(b−1)、カルボキシル基含有単量体単位、ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体単位および/またはポリオキシアルキレン基含有ラジカル重合性単量体単位、炭素数1〜18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位、自己架橋性官能基含有ラジカル重合性単量体単位、耐紫外線ラジカル重合性単量体単位)は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
重合体(A)は、その他の単量体単位(b)として上記以外に、以下に示す単量体に由来する単位を含有してもよい。
アミド基含有重合性単量体:(メタ)アクリルアミド等。
【0073】
ラクトン変性ヒドロキシル基含有ラジカル重合性単量体類。
【0074】
アミノアルキル(メタ)アクリレート類:2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等。
【0075】
金属含有ラジカル重合性単量体:ジアクリル酸亜鉛、ジメタクリル酸亜鉛等。
【0076】
他の(メタ)アクリル系単量体:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメチルクロライド塩、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等。
【0077】
芳香族ビニル系単量体:スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、メトキシスチレン等。
【0078】
共役ジエン系単量体:1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエン等。
【0079】
ラジカル重合性単量体:酢酸ビニル、塩化ビニル、エチレン、プロピオン酸ビニル等。
【0080】
また、重合体(A)は、より高度な塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性、耐凍害性を発現させる点から、ジメチルシロキサンを繰り返し単位とする重合体ブロック(E)と、ラジカル重合性単量体を繰り返し単位とする重合体ブロック(F)と、重合体ブロック(E)および重合体ブロック(F)に共重合したケイ素含有グラフト交叉剤単位(G)とから構成されるグラフトブロック重合体であることが好ましい。
【0081】
重合体ブロック(E)は、下記原料を重合することによって得られる、いわゆるポリオルガノシロキサンである。
【0082】
ジメチルジアルコキシシラン類:ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等。
【0083】
ジメチルシロキサン環状オリゴマー類:ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン、ジメチルサイクリックス(ジメチルシロキサン環状オリゴマー3〜7量体混合物)等。
【0084】
その他:ジメチルジクロロシラン等。
【0085】
重合体ブロック(E)の原料としては、得られるグラフトブロック重合体の熱安定性等の性能およびコストの点から、ジメチルシロキサン環状オリゴマーが最も好ましい。
【0086】
重合体ブロック(E)の質量平均分子量は、10,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましい。質量平均分子量が10,000以上であれば、十分な耐久性を有する塗膜が得られる。
【0087】
重合体ブロック(F)の含有量は、グラフトブロック重合体(重合体(A))100質量部に対して、50〜99.7質量部が好ましく、60〜99.5質量部がより好ましい。重合体ブロック(F)の含有量が50質量部以上であれば、塗膜の硬度、強度および耐汚染性が向上する。重合体ブロック(F)の含有量が99.7質量部以下であれば、塗膜の耐候性、耐水性および耐凍害性の低下を抑制できる傾向にある。
【0088】
ケイ素含有グラフト交叉剤単位(G)は、得られる塗膜の透明性を確保する成分である。ケイ素含有グラフト交叉剤としては、前述した加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ケイ素含有グラフト交叉剤単位(G)の含有量(ケイ素原子換算)は、グラフトブロック重合体中のケイ素原子の合計100モル%のうち、0.5〜50モル%が好ましく、1〜15モル%がより好ましい。ケイ素含有グラフト交叉剤の含有量が0.5モル%以上であれば、塗膜の透明性が向上する。ケイ素含有グラフト交叉剤の含有量が50モル%以下であれば、塗膜性能が向上する。また、ケイ素含有グラフト交叉剤の含有量が1モル%以上であれば、得られる塗膜の透明性が極めて良好となる。また、ケイ素含有グラフト交叉剤の含有量が15モル%以下であれば、乳化重合の際のラテックス安定性が良好となる。
【0090】
本発明においては、まずジメチルジアルコキシシラン類またはジメチルシロキサン環状オリゴマー類、および加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体を重合することにより、重合体ブロック(E)およびケイ素含有グラフト交叉剤単位(G)からなるポリオルガノシロキサンを製造し、次いで重合体ブロック(F)を製造することが好ましい。
ポリオルガノシロキサンは、重合体(A)中、0.3〜50質量%が好ましく、0.5〜40質量%がより好ましい。
【0091】
重合体(A)中の各単量体単位の含有量は、種々の装置を用いて測定することができる。例えば、ガスクロマトグラフ、熱分解ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析計、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計、高速液体クロマトグラフ、液体クロマトグラフ、液体クロマトグラフ質量分析計、フーリエ変換赤外分光光度計、核磁気共鳴装置、蛍光X線装置、ICP発光分析装置等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、各装置を用いるうえで適切な前処理を行ってもよい。
【0092】
(シリカ粒子(B))
シリカ粒子(B)は、塗膜に親水性、制電性、硬さ、耐候性を与える成分である。また、塗膜に親水性、制電性を付与することにより、十分な耐汚染性を発揮させる成分である。さらに、シリカ粒子(B)として平均粒子径の異なる2種以上のシリカ粒子を用いることによって、塗膜の耐汚染持続性がより向上するので、好ましい。
【0093】
なお、シリカ粒子の平均粒子径は、BET法により測定した値を採用することができる。
【0094】
平均粒子径の異なるシリカ粒子としては、平均粒子径が1nm以上20nm未満のシリカ粒子A群と、平均粒子径が20nm以上100nm以下のシリカ粒子B群が挙げられ、これら各群から各々選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0095】
シリカ粒子A群の平均粒子径は、1nm以上18nm以下がより好ましく、1nm以上16nm以下がさらに好ましい。一方、シリカ粒子B群の平均粒子径は20nm以上80nm以下がより好ましく、20nm以上60nm以下がさらに好ましい。
【0096】
本発明に用いるシリカ粒子(B)の平均粒子径が100nm以下であれば、塗膜の形成時にシリカ粒子(B)が塗膜の表層に浮上しやすくなり、塗膜の表層においてシリカ粒子(B)が重合体の粒子間隙を密に埋め、かつ厚みを持ってシリカ粒子層を形成し、重合体(A)とシリカ粒子(B)、およびシリカ粒子(B)同士が化学結合または物理吸着して塗膜の最表層に存在するようになり、耐汚染性が十分に発揮される。
【0097】
さらに、シリカ粒子(B)として、平均粒子径が1nm以上20nm未満のシリカ粒子A群と、20nm以上100nm以下のシリカ粒子B群から各々選ばれる少なくとも1種のシリカ粒子を用いれば、塗膜最表層に形成されるナノオーダーの凹凸を持つ粗構造ができ、経時変化による樹脂の動きに対し、粗構造も変化するが、シリカ粒子(B)の平均粒子径が異なることにより新たな粗構造が形成され、耐汚染持続性がより発揮される。
【0098】
シリカ粒子(B)の配合量(平均粒子径が異なる2種以上のシリカ粒子を用いる場合は、その総量)は、重合体(A)100質量部に対して、0.5〜25質量部が好ましく、1〜23質量部がより好ましく、1〜20質量部がさらに好ましい。シリカ粒子(B)の配合量が0.5質量部以上であれば、塗膜の耐汚染性(親水性、制電性)が向上する。シリカ粒子(B)の配合量が25質量部以下であれば、塗膜の耐候性、耐水性、耐凍害性を低下させることなく、塗膜の耐汚染性(親水性、制電性)が向上する。また、シリカ粒子(B)の配合量が25質量部未満であれば、塗膜の白化が抑えられる。
【0099】
シリカ粒子(B)として平均粒子径の異なる2種以上のシリカ粒子を用いる場合は、シリカ粒子A群から選ばれるシリカ粒子の割合が、全シリカ粒子(B)の総量のうち90質量%〜10質量%となるように用いるのが好ましく、より好ましくは85質量%〜20質量%であり、さらに好ましは80質量%〜30質量%である。一方、シリカ粒子B群から選ばれるシリカ粒子の割合が、全シリカ粒子(B)の総量のうち10質量%〜90質量%となるように用いるのが好ましく、より好ましくは15質量%〜80質量%であり、さらに好ましは20質量%〜70質量%である。
【0100】
また、シリカ粒子(B)は、下記一般式(1)で示されるシラン化合物で表面処理されたものであってもよい。
【0101】
SiRn+1(OR3−n ・・・(1)
(式中、Rは、水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基を示し、Rは、水素原子またはエーテル結合を含んでいてもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、nは0〜2の整数を示す。)
前記一般式(1)で示されるシラン化合物としては、トリメトキシシラン、ジメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、トリエトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、ジメチルエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメトキシフェニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエトキシフェニルシラン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、トリメトキシメチルシランが特に好ましい。
【0102】
シリカ粒子(B)をシラン化合物で表面処理する方法としては、例えば、下記方法が挙げられる。
【0103】
(i)重合体の水性分散液に、コロイダルシリカおよびシラン化合物を添加し、室温から100℃の温度範囲で任意の時間攪拌する方法。
【0104】
(ii)あらかじめコロイダルシリカおよびシラン化合物を室温から100℃の温度範囲で任意の時間攪拌することによって得られた、シラン化合物で表面処理されたシリカ粒子を、重合体の水性分散液中に添加する方法。
【0105】
(iii)塗膜を作製した後、塗膜最表層に偏在したシリカ粒子にシラン化合物を塗布し、室温から100℃の温度範囲で任意の時間加熱処理する方法。
【0106】
シラン化合物の含有量は、シリカ粒子100質量部に対して、1〜60質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましい。シラン化合物の含有量が1質量部以上であれば、塗膜の耐候性が向上する。シラン化合物の含有量が60質量部以下であれば、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性、塗膜の耐汚染性および耐水性を低下させることなく、塗膜の耐候性をさらに向上させることができる。
【0107】
コロイダルシリカ;
コロイダルシリカは、分散媒中に上述したシリカ粒子が分散したコロイド状の液体である。シリカ粒子(B)にコロイダルシリカを用いることにより、着色材料含有被覆材中においてはシリカ粒子(B)と重合体(A)、着色材料(C)の粒子とが分散安定性を保ち続け、塗膜の形成時には、重合体(A)や着色材料(C)の粒子間をシリカ粒子(B)がすり抜けるように塗膜表面に浮上し、塗膜表面を覆うように厚みをもってシリカ粒子膜を形成すると考えられる。
【0108】
分散媒としては、水であってもよく、有機溶剤であってもよい。
【0109】
コロイダルシリカとしては、1種類のシリカ粒子、あるいは上述したシリカ粒子A群、およびシリカ粒子B群から、各々選ばれる少なくとも1種を分散媒中に分散させたものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。市販品を用いる場合は、1種類のコロイダルシリカ、あるいは平均粒子径の異なるコロイダルシリカを2種以上併用することが好ましい。平均粒子径の異なるコロイダルシリカとしては、平均粒子径が1nm以上20nm未満のコロイダルシリカA群、および粒子径が20nm以上100nm以下のコロイダルシリカB群から、各々選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。また、コロイダルシリカは、水を分散媒にしたものでもあってもよく、有機溶剤を分散媒にしたものであってもよい。
【0110】
平均粒子径が1nm以上20nm未満の水性コロイダルシリカとしては、例えば、下記市販品が挙げられる。
【0111】
日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスOXS(SiO固形分10質量%)、スノーテックスOS(SiO固形分20質量%)、スノーテックスO(SiO固形分20質量%)、スノーテックスXS(SiO固形分20質量%)、スノーテックスS(SiO固形分30質量%)、スノーテックス20(SiO固形分20質量%)、スノーテックス30(SiO固形分30質量%)、スノーテックス40(SiO固形分40質量%)、スノーテックスNXS(SiO固形分10質量%)、スノーテックスNS(SiO固形分20質量%)、スノーテックスN(SiO固形分20質量%)、スノーテックスN−30G(SiO固形分30質量%)、スノーテックスC(SiO固形分20質量%)、スノーテックスAK(SiO固形分19質量%)等。
【0112】
粒子径が20nm以上100nm以下の水性コロイダルシリカとしては、例えば、下記市販品が挙げられる。
【0113】
日産化学工業(株)製、商品名:スノーテックスO−40(SiO固形分40質量%)、スノーテックスOL(SiO固形分20質量%)、スノーテックスN−40(SiO固形分40質量%)、スノーテックス50(SiO固形分50質量%)、スノーテックスCM(SiO固形分30質量%)、スノーテックス20L(SiO固形分20質量%)、スノーテックスXL(SiO固形分40質量%)、スノーテックスZL(SiO固形分40質量%)、スノーテックスOUP(SiO固形分15質量%)、スノーテックスUP(SiO固形分20質量%)、スノーテックスPS−S(SiO固形分19質量%)等。
【0114】
なお、本発明に用いるコロイダルシリカは、これらに限定されるものではない。
【0115】
(着色材料(C))
着色材料(C)は、塗膜に多彩模様意匠感を与える成分であり、一般的に塗料に配合するものを使用することができる。着色材料(C)は、予め水系分散媒中に、親水性コロイド形成物質のゲル化膜で被覆し分散させる方法や重合体(A)、シリカ粒子(B)が含有される水系分散媒中で親水性コロイド形成物質のゲル化膜で被覆し分散させる方法、重合体(A)が含有する水系分散媒中で親水性コロイド形成物質のゲル化膜で被覆し分散させる方法、シリカ粒子(B)が含有する水系分散媒中で親水性コロイド形成物質のゲル化膜で被覆し分散させる方法などが好ましいが、これらの方法に限定されるものではない。また、特定のアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤は上記方法における任意の段階で添加してもよい。
【0116】
上記ゲル化膜は、セルロース誘導体、ポリビニルアルコールなどのような親水性コロイド形成物質と前記コロイド形成物質を不溶化することのできるホウ素、マグネシウムモンモリロナイトのような不溶化剤(ゲル化剤)とが作用し合い、一種の三次元網状組織が形成された状態である。
【0117】
着色材料(C)としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、アルミナ、シリカ、カオリン、カーボンブラック、ランプブラック、ボーンブラック、黒鉛、鉄黒、銅クロムブラック、コバルトブラック、銅マンガン鉄ブラック、べんがら、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレットなどが挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を使用することができる。これら着色材料(C)の粒子径は通常50μm未満である。
【0118】
着色材料(C)の配合量は、重合体(A)100質量部に対して、10〜100質量部が好ましい。着色材料(C)の配合量が10質量部以上であれば、塗膜の意匠性が向上する。着色材料(C)の配合量が100質量部以下であれば、塗膜の耐候性を低下させることなく、塗膜の意匠性をさらに向上させることができる。
【0119】
(有機ヒドラジン化合物(D))
本発明の着色材料含有被覆材は、有機ヒドラジン化合物(D)を含有してもよい。有機ヒドラジン化合物(D)は、分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する化合物である。塗膜の乾燥時に、単量体単位(b−1)のカルボニル基及び/又はアルデヒド基と、配合された有機ヒドラジン化合物(D)のヒドラジノ基との間で架橋反応が進行する。塗膜を形成する着色材料含有被覆材が有機ヒドラジン化合物(D)を含有することにより、低汚染維持性、耐候性、耐水性、耐凍害性、耐ブロッキング性、耐溶剤性、各種下地に対する密着性に優れた塗膜が得られる。
【0120】
分子中に少なくとも2個のヒドラジノ基を有する有機ヒドラジン化合物(D)としては、例えば、エチレン−1,2−ジヒドラジン、プロピレン−1,3−ジヒドラジン、ブチレン−1,4−ジヒドラジン、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の炭素原子数2〜15のジカルボン酸のジヒドラジド及び1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル)−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン、1−ヒドラジノカルボエチル−3−ヒドラジノカルボイソプロピル−5−(2−メチルメルカプトエチル)ヒダントイン等のヒダントイン骨格を有する有機ヒドラジン化合物が挙げられる。
これらは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
塗膜を形成する着色材料含有被覆材中の有機ヒドラジン化合物(D)の含有量は、通常、重合体(A)の合計質量を100質量部としたとき、0.1〜10質量部である。また、着色材料含有被覆材中の有機ヒドラジン化合物(D)の含有量は、単量体単位(b−1)のカルボニル基とアルデヒド基のモル数の合計をP、配合される有機ヒドラジン化合物(D)のヒドラジノ基のモル数をQとしたとき、その比率(P/Q)が0.1〜10であることが好ましく、0.8〜2であることがより好ましい。比率(P/Q)が0.1以上であれば、カルボニル基又はアルデヒド基と架橋反応を起こさない有機ヒドラジン化合物(D)が過剰になって耐水性が低下することを抑制しやすい。また、比率(P/Q)が10以下であれば、充分な架橋度となり架橋による効果が得られやすい。
【0122】
(界面活性剤)
特定のアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤は、塗膜に耐汚染性を与える成分である。着色材料含有被覆材が、特定のアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤を含有することにより、塗膜の最表層のシリカ粒子層を厚くすることができ、効率的かつ効果的に著しい親水性および制電性を有する塗膜を得ることができる。
【0123】
アニオン系界面活性剤;
特定のアニオン系界面活性剤とは、下記(I)に示される群から選ばれる少なくとも1種のアニオン系界面活性剤のことである。
【0124】
(I):ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩のホルマリン縮合物。
【0125】
アニオン系界面活性剤の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜8質量部がより好ましい。アニオン系界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であれば、塗膜の耐汚染性、着色材料含有被覆材の調製時の安定性、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。アニオン系界面活性剤の含有量が10質量部以下であれば、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗膜の耐汚染性、着色材料含有被覆材の調製時の安定性、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。
【0126】
アニオン系界面活性剤のポリオキシアルキレン部は、塗膜の最表層のシリカ粒子層を厚くし、効率的かつ効果的に著しい親水性および制電性を有する塗膜を得るためには、ポリオキシエチレンが好ましく、その繰り返し単位数は30以下が好ましく、20以下がより好ましい。
【0127】
アニオン系界面活性剤のアリール部としては、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、クミルフェニル、スチリルフェニル、(モノ〜ペンタ)ベンジルフェニル、(モノ〜ペンタ)スチリルフェニル、(モノ〜ペンタ)スチリルシクロヘキシルフェニル、(モノ〜ペンタ)ベンジルビフェニル、スチリルクミルフェニル等が挙げられる。
【0128】
アニオン系界面活性剤の硫酸エステル塩としては、例えば、硫酸エステルナトリウム塩、硫酸エステルカリウム塩、硫酸エステルカルシウム塩、硫酸エステルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0129】
ノニオン系界面活性剤;
特定のノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0130】
ノニオン系界面活性剤の含有量は、重合体(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、0.1〜9質量部がより好ましく、0.1〜8質量部がさらに好ましい。ノニオン系界面活性剤の含有量が0.1質量部以上であれば、塗膜の耐汚染性、着色材料含有被覆材の調製時の安定性、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。ノニオン系界面活性剤の含有量が10質量部以下であれば、塗膜の耐水性を損なうことなく、塗膜の耐汚染性、着色材料含有被覆材の調製時の安定性、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性が向上し、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合には重合時の安定性も向上する。
【0131】
ノニオン系界面活性剤のポリオキシアルキレン部は、塗膜の最表層のシリカ粒子層を厚くし、効率的かつ効果的に著しい親水性および制電性を有する塗膜を得るためには、ポリオキシエチレンが好ましく、その繰り返し単位は10以上が好ましく、20以上がより好ましい。ポリオキシエチレンの繰り返し単位数が大きいほどこの効果が高くなる。
【0132】
ノニオン系界面活性剤のアルキル部としては、例えば、炭素数が4〜18の直鎖状または分岐状のアルキル基、ナフチル、ビフェニル、クミルフェニル、スチリルフェニル、(モノ〜ペンタ)ベンジルフェニル、(モノ〜ペンタ)スチリルフェニル、(モノ〜ペンタ)スチリルシクロヘキシルフェニル、(モノ〜ペンタ)ベンジルビフェニル、スチリルクミルフェニル等が挙げられる。
【0133】
その他界面活性剤;
着色材料含有被覆材の調製時の安定性、着色材料含有被覆材の貯蔵安定性、界面活性剤の存在下に乳化重合する場合の重合安定性を向上するために、上述のアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤を除く、公知のアニオン系、カチオン系、ノニオン系界面活性剤、高分子乳化剤、界面活性剤成分中にラジカル重合性不飽和結合を持つ反応性乳化剤等の界面活性剤を併用してもよい。ただし、塗膜の最表層のシリカ粒子層を厚くし、効率的かつ効果的に著しい親水性および制電性を有する塗膜を得るためには、上述のアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0134】
(他の成分)
本発明の着色材料含有被覆材には、コーティング材料として高度な性能をより発現させるために、消泡剤、顔料分散剤、レベリング剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱性向上剤、スリップ剤、防腐剤、可塑剤、造膜助剤等の各種添加剤;他のエマルション樹脂、水溶性樹脂、粘性制御剤、メラミン類等の硬化剤を添加してもよい。
【0135】
また、着色材料含有被覆材には、粘性調整剤を加えて特定の粘性に調整することが好適である。粘性調整剤としてはベントナイト、セリサイト、超微粉シリカ、表面処理炭酸カルシウム等の無機系、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、ベンリジデンソルビトール、金属石鹸、酸化ポリエチレン、硫酸エステル系アニオン活性剤等の有機系のものが挙げられる。
【0136】
好ましい粘性は、20℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)が、0.2〜15Pa・s、TI値が1.0〜8.0の範囲である。このような値を満たす場合には、着色粒子が塗装時のずり応力によっても破壊されず、被塗面においては大柄の円形模様を形成することが可能となる。特に、粘度が0.3〜10Pa・s、TI値が2.0〜6.0である場合は、上述のような効果が安定して発揮されるため、好ましい。
【0137】
ここで、20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)が、0.2Pa・sより低い場合は、ずり応力によって粒子が大きく変形させられてしまい円形模様を形成することが不可能となったり、被塗面において形成される模様が流れてしまったりして意匠性を損ねる結果となる傾向がある。逆に粘度(4回転目の指針値)が15Pa・sより高い場合には、流動性が悪く、着色材料含有被覆材をポリビニルアルコールが含有する水溶液に分散する際に球状の着色粒子が形成しにくく、また、被塗面においては円形模様を形成し難くなる傾向がある。一方、TI値が1.0より小さいと、粘度が0.2〜15Pa・sであっても被塗面において形成された模様が流れてしまう傾向となり、8.0より大きいと塗装時のずり応力によって、着色粒子が潰れ散らばって塗装されてしまうおそれがある。
【0138】
粘性調整剤を加える場合には、重合体(A)100質量部に対して、粘性調整剤を1〜10質量部程度の比率となるように添加するのが好適である。
【0139】
さらに、着色材料含有被覆材には繊維物質や体質顔料、骨材を配合してもよい。このような繊維物質としては、パルプ繊維、セルロース繊維、セピオライト、ウオラストナイトなど、体質顔料としては、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、陶土、チャイナクレー、硫酸バリウム、炭酸バリウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪石粉、珪藻土、酸化アルミニウム、樹脂ビーズなどが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。これら体質顔料の粒子径は通常50μm未満である。
【0140】
骨材としては、自然石、自然石の粉砕物などの天然骨材、及び着色骨材などの人工骨材から選ばれる少なくとも1種類以上を用いることができる。例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、石灰石、珪石、珪砂、砕石、雲母、珪質貢岩、及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、ゴム粒、貝殻片、木片、プラスチック片などが挙げられる。これらに着色処理を施したものも使用できる。このような骨材の2種以上を適宜組み合わせて使用することにより、種々の多色模様を表出することができる。骨材の粒子径は通常0.05〜5mm程度である。
【0141】
造膜助剤としては、通常の水性塗料で用いられているものが挙げられ、例えば、下記のものが挙げられる。
【0142】
炭素数5〜10の直鎖状、分岐状または環状の脂肪族アルコール類。
【0143】
芳香族基を含有するアルコール類。
【0144】
モノエーテル類:下記一般式(2)で示される(ポリ)エチレングリコールモノエーテルまたは(ポリ)プロピレングリコールモノエーテル等。
【0145】
HO−(CHCHXO)−R ・・・(2)。
【0146】
(式中、Rは、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基を示し、Xは、水素原子またはメチル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
エーテルエステル類:下記一般式(3)で示される(ポリ)エチレングリコールエーテルエステルまたは(ポリ)プロピレングリコールエーテルエステル等。
【0147】
COO−(CH CHXO)−R ・・・(3)。
【0148】
(式中、R、Rは、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基を示し、Xは、水素原子またはメチル基を示し、nは、1〜5の整数を示す。)
芳香族系有機溶剤:トルエン、キシレン等。
【0149】
その他:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールのモノまたはジイソブチレート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブタノールアセテート、3−メチル−3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノールアセテート等。
【0150】
<着色材料含有被覆材の製造方法>
着色材料含有被覆材は、重合体(A)と、シリカ粒子(B)と、着色材料(C)を混合することにより製造される。
【0151】
重合体(A)は水性分散液として調製して用いるのが好ましい。
【0152】
特定のアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤は、重合体(A)の水性分散液の製造工程中に添加してもよく、重合体(A)の水性分散液の製造後、着色材料含有被覆材を調製する際に添加してもよい。着色材料含有被覆材を調整する際に添加する場合は、前記混合方法における任意の段階で添加することができる。
【0153】
(重合体(A)の水性分散液)
重合体(A)の水性分散液としては、乳化重合法により得られたエマルション、該エマルションを水で希釈したもの、溶液重合法により得られた重合体(A)の溶液を水で希釈し脱溶剤したもの等が挙げられる。これらのうち、乳化重合により得られたエマルション、またはそれを水で希釈したものが好ましい。
【0154】
エマルションは、例えば、界面活性剤の存在下、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位(a)0.2〜20質量%、その他の単量体単位(b)80〜99.8質量%(ただし、単量体単位(a)および単量体単位(b)の合計を100質量%とする。)より構成されるラジカル重合性単量体混合物を、ラジカル重合開始剤により重合させる方法により調製することが好ましい。
【0155】
エマルションの調製に用いる界面活性剤としては、公知のアニオン系界面活性剤(前記特定のアニオン系界面活性剤を含む。)、カチオン系活性剤、ノニオン系界面活性剤(前記特定のノニオン系界面活性剤を含む。)、高分子乳化剤が挙げられる。また、界面活性剤成分中にラジカル重合性不飽和結合を持つ、いわゆる反応性乳化剤を用いてもよい。
【0156】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、下記化合物が挙げられる。
【0157】
過硫酸塩類:過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等。
【0158】
油溶性アゾ化合物類:アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル等。
【0159】
水溶性アゾ化合物類:2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシエチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]およびその塩類、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピンアミジン)およびその塩類、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]およびその塩類等。
【0160】
有機過酸化物類:過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等。
【0161】
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0162】
重合速度の促進、または70℃以下での低温の重合が望まれるときには、例えば、重亜硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いると有利である。
【0163】
ラジカル重合開始剤の配合量は、通常、ラジカル重合性単量体の全量100質量部に対して、0.01〜10質量部であり、重合の進行、反応の制御を考慮に入れると、0.05〜5質量部が好ましい。
【0164】
重合体(A)の分子量を調整する場合には、分子量調整剤として、公知の連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、下記化合物が挙げられる。
【0165】
メルカプタン類:n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等。
【0166】
ハロゲン化合物:四塩化炭素、臭化エチレン等。
【0167】
その他:α−メチルスチレンダイマー等。
【0168】
連鎖移動剤の配合量は、通常、ラジカル重合性単量体の全量100質量部に対して、1質量部以下である。
【0169】
乳化重合法により得られたエマルションは、塩基性化合物の添加によりそのpHを中性から弱アルカリ性、すなわちpH6.5〜10.0程度の範囲に調整することで安定性を高めることができる。塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジブチルアミン、アミルアミン、1−アミノオクタン、2−ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、2−アミノ−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、3−アミノ−1−プロパノール、1−ジメチルアミノ−2−プロパノール、3−ジメチルアミノ−1−プロパノール、2−プロピルアミノエタノール、エトキシプロピルアミン、アミノベンジルアルコール、モルホリン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0170】
エマルション中の重合体(A)の粒子構造としては、単層構造、多層構造等が挙げられる。
【0171】
加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位、及びラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位は、塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させる目的で使用するが、その量が多い場合、塗膜の耐凍害性を低下させる。したがって、少ない含有量で塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させることが好ましい。
より少ない含有量で塗膜の耐汚染性、耐候性、耐水性を向上させるためには、例えば重合体(A)が高Tgコア/低Tgシェル型エマルション粒子の場合、最外層に、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体からなる単量体単位を共重合させた単量体(a)を導入することが好ましい。
【0172】
シリカ粒子(B)としては、1種、あるいは平均粒子径の異なる2種以上のシリカ粒子を用いるのが好ましい。また、シリカ粒子(B)を分散媒中に分散させたコロイド状の液体(コロイダルシリカ)を用いてもよい。
【0173】
重合体(A)、シリカ粒子(B)、着色材料(C)の3成分の混合順序としては、特に制限されるものでは無いが、3成分のうち最初に2成分の全量を混合し、混合物の全量と残りの成分(以下、第3成分)とを混合する方法や、2成分を任意の割合で混合し(以下、混合物I)、混合物Iと第3成分とを混合した後(以下、混合物II)、別途2成分の残りを任意の割合で混合し(以下、混合物III)、混合物IIIと混合物IIとを混合する(以下、混合物IV)方法などが挙げられる。混合物IIIは任意の割合で混合できるので、さらに混合物IVに残りの2成分の任意の割合の混合物、あるいは単一成分を複数回に分けて混合することもできる。
【0174】
上記の混合方法においては、任意の割合の2成分から成る混合物を、第3成分あるいは第3成分が含まれる混合物に混合してもよく、第3成分あるいは第3成分が含まれる混合物を、任意の割合の2成分から成る混合物に混合してもよい。
【0175】
着色材料含有被覆材の製造方法において、塗膜の耐汚染性や着色材料含有被覆材の貯蔵安定性の点から、
(1)予めシリカ粒子(B)と着色材料(C)を全量混合し、その後重合体(A)を混合する方法が好ましく、
(2)予めシリカ粒子(B)と着色材料(C)を任意の割合で混合し、その後重合体(A)を混合し、さらに残りのシリカ粒子(B)を添加する方法がより好ましく、
(3)予めシリカ粒子(B)と着色材料(C)を任意の割合で混合し(混合物V)、別途重合体(A)とシリカ粒子(B)を任意の割合で混合し(混合物VI)、その後混合物Vと混合物VIを混合(混合物VII)する方法、あるいはそこからさらに残りのシリカ粒子(B)を混合物VIIに混合する方法が特に好ましい。
上記(1)〜(3)の混合方法においてシリカ粒子(B)に小粒子径のシリカ粒子を使用してもよい。また、(2)、(3)の方法においては、着色材料(C)と混合するシリカ粒子(B)に、重合体(A)と混合するシリカ粒子(B)より小粒子径のシリカ粒子を用いてもよい。
上記(1)〜(3)の混合方法により製造される着色材料含有被覆材は、塗工した際にシリカ粒子(B)が塗膜表面に偏在しやすくなるため、塗膜表面における露出したシリカ粒子(B)の占有面積が、塗膜表面の35%以上となる塗膜を容易に形成できる。
【0176】
<塗膜>
本発明の塗膜は、重合体(A)と、シリカ粒子(B)、着色材料(C)とを少なくとも含有し、塗膜表面における露出したシリカ粒子(B)の占有面積が、塗膜表面の35%以上を占める。
【0177】
塗膜表面における露出したシリカ粒子(B)の占有面積が35%未満であると十分な耐汚染性、水接触角が得られない。占有面積は、好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは60%以上であり、最も好ましいのは70%以上である。
【0178】
なお、本発明でいうシリカ粒子(B)の占有面積とは、塗膜表面を垂直方向から見たときの、塗膜表面において露出したシリカ粒子(B)が存在し占有している面積のことであり、具体的には、図1に示すように、塗膜表面(F)に露出したシリカ粒子(B)の平面的な占有面積Sの合計(すなわちS+S+・・・)のことである。
シリカ粒子(B)の占有面積は、塗膜表面の走査型電子顕微鏡写真の二次電子像を画像処理することにより求めることができる。また、シリカ粒子(B)に覆われていない被覆成分の分布状態や大きさは、走査型電子顕微鏡写真の二次電子像を用いて目視で判断することができる。具体的な電子顕微鏡写真撮影条件と画像処理に用いたソフトウェアの一例を以下に挙げる。
【0179】
(電子顕微鏡写真)
日本電子(株)製「JSM−6340F型」電界放射形走査型電子顕微鏡、
加速電圧:2.5kV、倍率:50,000倍・画像処理解析、
Planetron Inc.Image−Pro Plus、
解析対象最小面積 1e−5μm2。
【0180】
電子顕微鏡写真において、重合体粒子由来の部位とシリカ粒子のコントラストが不十分であると実態に即した画像処理結果が得られにくい。従って電子顕微鏡写真のデジタル画像にコントラストを付ける為にPhoto Shopなどのソフトウェアで処理してから画像処理することも有効である。
【0181】
シリカ粒子(B)に覆われずに露出している重合体部分が過剰に大き過ぎたり、露出している重合体部分が塗膜の一部に偏っていたりすると、塗膜全体の耐汚染性が低下する傾向にある。
【0182】
上記塗膜を形成するためには、例えば本発明の着色材料含有被覆材を基材等に塗布し、乾燥することによって容易に得ることができる。
【0183】
基材としては、例えば、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押出成形板、発泡性コンクリート、金属、ガラス、磁器タイル、アスファルト、木材、防水ゴム材、プラスチック、珪酸カルシウム基材等が挙げられる。本発明の着色材料含有被覆材は、これらの各種基材の表面仕上げ材等として位置付けることができる。
【0184】
着色材料含有被覆材を各種基材の表面に塗布する方法としては、例えば、スプレーコート法、ローラーコート法、バーコート法、エアナイフコート法、刷毛塗り法、ディッピング法等の各種塗装方法が挙げられる。
【0185】
基材表面に塗布された着色材料含有被覆材を、常温(5〜35℃)で、または40〜200℃に加熱して乾燥することによって塗膜が得られる。また、常温〜50℃程度の低温で乾燥して塗膜を形成させた後、重合体(A)のガラス転移温度以上に塗膜を加熱して、重合体(A)の粒子同士の結着を強固にして、耐候性がより高い塗膜とすることもできる。さらに、常温のみで塗膜を形成させることも可能である。
【0186】
以上説明した本発明の塗膜にあっては、重合体(A)とシリカ粒子(B)、着色材料(C)を少なくとも含有し、塗膜表面における露出したシリカ粒子(B)の占有面積が、塗膜表面の35%以上を占めるため、耐汚染性に優れる。さらに、シリカ粒子(B)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して0.5〜25質量部であれば、より耐汚染性に優れる塗膜となる。
また、本発明の塗膜は着色材料(C)を含有するので、光沢を有するなど意匠性にも優れる。
【0187】
このような塗膜は、上述した単量体単位(a)と単量体単位(b)より構成される重合体(A)と、シリカ粒子(B)と、着色材料(C)と、特定のアニオン系界面活性剤と、特定のノニオン系界面活性剤とを少なくとも含有し、着色材料(C)が重合体(A)100質量部に対して10〜100質量部である本発明の着色材料含有被覆材、好ましくは、シリカ粒子(B)の含有量が、重合体(A)100質量部に対して0.5〜25質量部である本発明の着色材料含有被覆材から、容易に形成することができる。
【0188】
本発明の塗膜を有する塗装物にあっては、塗膜の耐候性、耐汚染性(耐カーボン汚染除去性)に優れる。すなわち、本発明の塗膜を用いることにより、塗膜の最表層に一定以上の厚さで、かつ塗膜の表面に広がるシリカ粒子層が形成されるため、塗膜に著しい親水性が付与され、雨水による自浄作用を発揮させるようになる。さらに、シリカ粒子同士が塗膜表面で接触するようになるため、塗膜表面が導電性を持ち、静電気による汚れの付着が抑制される。これらの結果、本発明の塗膜は優れた耐汚染性を発揮する。さらに、平均粒子径が異なるシリカ粒子を併用した場合には、塗膜最表層にナノオーダーの凹凸を持つ粗構造がより形成され、径時変化による樹脂の動きに対し、該粗構造も変化するが、シリカ粒子の平均粒子径が異なることにより、新たな粗構造が形成され、長期間に渡り耐汚染性を発揮する。
【0189】
なお、塗装物は、本発明の塗膜のみで十分な耐汚染性を発揮するため、必ずしも、従来のような上塗り、中塗り、下塗りからなる多層構成としなくてもよい。
【実施例】
【0190】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は本実施例によって何ら限定されるものではない。
【0191】
塗膜の評価等は、下記方法に従って実施した。
【0192】
<単量体単位の含有量>
重合体(A)中の単量体単位の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフ(ガスクロマトグラフ:Agilent Technologies社製、熱分解装置:日本分析工業(株)製)、熱分解ガスクロマトグラフ質量分析計(ガスクロマトグラフ質量分析計:Agilent Technologies製、熱分解装置:日本分析工業(株)製)、フーリエ変換赤外分光光度計(ニコレージャパン(株)製)などを用いて測定した。
【0193】
<シリカ粒子(B)の占有面積測定用試験板の作製>
PETフィルムに、40℃の雰囲気下で着色材料含有被覆材をバーコーダー#48にて塗布し、40℃で12時間乾燥した。その後、室温で1日間乾燥したものを、占有面積測定用試験板とした。
【0194】
<水接触角、カーボン汚染除去性、耐凍害性、耐候性の評価用試験板の作製>
リン酸亜鉛処理鋼鈑(ボンデライト#100処理鋼鈑、板厚0.8mm、縦150mm×横70mm)に、40℃の雰囲気下で着色材料含有被覆材をバーコーター#48にて塗布し、40℃で12時間乾燥した。その後、室温で1日間乾燥したものを、水接触角カーボン汚染除去性、耐凍害性、耐候性の評価用試験板とした。
【0195】
<シリカ粒子(B)の占有面積の測定>
塗膜表面における露出したシリカ粒子(B)の占有面積は、占有面積測定用試験板の塗膜表面を電界放射形走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、「JSM−6340F型」)を用いて観察し、得られた二次電子像を画像処理することで求めた。観察条件等は以下の通りである。
・加速電圧:2.5kV、倍率:50,000倍・画像処理解析、
・Planetron Inc.Image−Pro Plus、
・解析対象最小面積 1e−5μm2。
【0196】
<水接触角の測定>
CA−X150型FACE接触角計(協和界面科学(株)製)を用い、評価用試験板の塗膜に0.4μL(画面上目盛りで3目盛り)の水滴を滴下し、30秒経過後の水接触角を測定した。
【0197】
<カーボン汚染除去性の評価:塗膜作製初期の耐汚染性>
評価用試験板の塗膜に霧吹きにて水を噴霧した直後に、スポイトを用いて、石油ベンジン中にカーボンMA100(三菱化学(株)製)を10質量%含むカーボン溶液を垂らし、5秒後に水道水にて洗い流した。カーボン溶液を垂らした部分について、カーボンの塗膜への付着程度を目視にて観測し、下記基準で判定した。
【0198】
「◎」:全く付着無し。
【0199】
「○」:部分的にわずかに付着。
【0200】
「×」:全面に濃く付着。
【0201】
<耐凍害性の評価>
ASTM−C666A法によって測定(200サイクル)し、下記基準で判定した。
【0202】
「◎」:クラック、光沢変化なし。
【0203】
「○」:クラックないが、光沢やや低下。
【0204】
<耐候性の評価>
評価用試験板から70mm×50mmの大きさの試験板を切り取り、該試験板をダイプラ・メタルウエザーKU−R4−W型(ダイプラ・ウィンテス(株)製)に入れ、試験サイクル:照射4時間(噴霧5秒/15分)/結露4時間、UV強度:85mW/cm、ブラックパネル温度:照射時63℃/結露時30℃、湿度:照射時50%RH/結露時96%RHの条件で耐候性試験を行った。600時間経過後の塗膜の60゜グロスの保持率を耐候性の指標とし、下記基準で判定した。
【0205】
「◎」:80%以上。
【0206】
「○」:70%以上、80%未満。
【0207】
〔製造例1〕
ポリオルガノシロキサンの水分散液の調製:
環状ジメチルシロキサンオリゴマー3〜7量体混合物95質量部と、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン5質量部、脱イオン水250質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4質量部、およびドデシルベンゼンスルホン酸0.4質量部からなる組成物を、ホモミキサーで予備混合し、圧力式ホモジナイザーを用いて200kg/cmの圧力で強制乳化して、原料プレエマルションを得た。
【0208】
ついで、水55質量部およびドデシルベンゼンスルホン酸5質量部を、攪拌機、還流冷却管、温度制御装置および滴下ポンプを備えたフラスコに仕込み、攪拌下に、フラスコの内温を85℃に保ちながら、前記原料プレエマルションを4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間重合を進行させ、冷却して、ドデシルベンゼンスルホン酸と当モル量のアンモニアを加えてポリオルガノシロキサンの水分散液(SiEm)を調製した。固形分は22.7質量部であった。
【0209】
〔実施例1〕
攪拌機、還流冷却管、温度制御装置、滴下ポンプを備えたフラスコに、脱イオン水87質量部、ニューコール707SF(商品名、日本乳化剤(株)製、アニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルの硫酸エステル塩(化審法官報公示名称:ポリオキシアルキレン(C=2〜3)アルキル(C=1,8,9)(モノ〜ペンタ)スチリル−フェニルエーテルの硫酸エステル))2.5質量部(固形分0.75質量部)、SiEmの4質量部(固形分0.9質量部)および表1の「1段目(内層)」に示す重合体の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物を仕込んだ。フラスコの内温を50℃に昇温した後、過硫酸アンモニウム0.15質量部/脱イオン水1質量部の開始剤水溶液を添加し、さらに亜硫酸水素ナトリウム0.05質量部/脱イオン水1質量部の還元剤水溶液を添加した。重合発熱によるピークトップ温度を確認した後、フラスコの内温を65℃に保持し、前記還元剤水溶液の添加1時間後にエマルゲン1150S−60(商品名、花王(株)製、ノニオン系界面活性剤(固形分60質量%):次式で表されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル、R−(CO)−H(R:炭素数主に11のアルキル基、n=50))1.17質量部(固形分0.7質量部)/脱イオン水1.17質量部の界面活性剤水溶液を添加した。
【0210】
前記界面活性剤水溶液の添加0.5時間後に、表1の「2段目(外層)」に示すラジカル重合性単量体の混合物、脱イオン水19質量部、ニューコール707SFの10質量部(固形分3質量部、アニオン系界面活性剤)、およびAMP−90(商品名、ダウ・ケミカル日本(株)製、塩基性化合物)0.115部をあらかじめ乳化分散させたプレエマルション液と、VA−061(商品名、和光純薬工業(株)製、ラジカル重合開始剤)0.1質量部/メタノール2質量部/脱イオン水3質量部の開始剤溶液とを、1.5時間かけて2系列滴下した。この滴下中はフラスコの内温を65℃に保持し、滴下が終了してから65℃で1時間保持した。さらに最終中和剤として、28%アンモニア水1.33質量部を添加した後、さらに65℃で0.5時間保持した。その後、室温まで冷却し、重合体(A)の水性分散液を得た。加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体に由来する単位の含有量は、重合体(固形分)100質量部に対して2.05質量部であった。
【0211】
重合体(A)の水性分散液に、シリカ粒子(B)として、スノーテックスNS(商品名、日産化学工業(株)製、コロイダルシリカ、シリカ粒子の平均粒子径10nm)50質量部(固形分10質量部)を添加し、さらに、造膜助剤としてブチルセロソルブを5質量部添加して被覆材用混合物を得た。シリカ粒子(固形分)の量は、重合体(固形分)100質量部に対して10質量部であった。
【0212】
次に、タイペークR−930(石原産業株式会社製 硫酸法酸化チタン 着色材料)196.3質量部、OROTAN SG(ローム&ハース社製 顔料分散剤)2.1質量部、サーフィノール DF−58(エアプロダクツ社製、消泡剤)0.08質量部、プロピレングリコール29.4質量部、脱イオン水34.3質量部、28%アンモニア水溶液1.8質量部を十分に混合した後、ガラスビーズを加えて高速分散機で30分間顔料分散を行い、次いでガラスビーズ等を300メッシュナイロン紗で濾別したものを評価用のミルベースとした。
【0213】
前記被覆材用混合物120質量部(固形分40.4質量部)に対し、上記の評価用ミルベース55質量部、RHEOLATE350(RHEOX社製 増粘剤)1.5質量部を順に加え、十分に攪拌した後にフォードカップ #4で100秒〜140秒程度になるように脱イオン水を加えて粘度を調整した。
【0214】
その後、再度300メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0215】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカ(シリカ粒子(B))の占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0216】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0217】
〔実施例2〕
コロイダルシリカの種類および量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0218】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0219】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0220】
〔実施例3〕
重合体(A)の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物、およびコロイダルシリカの量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0221】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0222】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0223】
〔実施例4〕
重合体(A)の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0224】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0225】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0226】
〔実施例5〕
最終中和剤(28%アンモニア水1.33質量部)投入15分前に、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.93質量部/脱イオン水2質量部の有機ヒドラジン化合物(D)水分散液を添加した以外は、実施例2と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0227】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0228】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0229】
〔実施例6〕
最終中和剤(28%アンモニア水1.33質量部)投入15分前にアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.93質量部/脱イオン水2質量部の有機ヒドラジン化合物(D)水分散液を添加した以外は、実施例4と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0230】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0231】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0232】
〔実施例7〕
コロイダルシリカ量を表1に示したように変更した以外は実施例1と同様に被覆材用混合物を作製した。また、ミルベースも実施例1と同様に作製した。
次に、コロイダルシリカ(スノーテックスNXS)をミルベース100質量部に対し、8質量部添加、混合し、その55質量部を、前記被覆材用混合物120質量部(固形分42.5質量部)に対し加え、次いでRHEOLATE350(RHEOX社製 増粘剤)1.5質量部を加え、十分に攪拌した後にフォードカップ #4で100秒〜140秒程度になるように脱イオン水を加えて粘度を調整した。シリカ粒子(固形分)の量は、重合体(固形分)100質量部に対して9質量部であった。
その後、再度300メッシュナイロン紗を用いて濾過を行い、試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0233】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0234】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0235】
〔比較例1〕
重合体(A)の構成成分であるラジカル重合性単量体の混合物を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして被覆材用混合物、および試験用の白色系の着色材料含有被覆材を作製した。
【0236】
得られた白色系の着色材料含有被覆材を用いて塗膜を形成し、塗膜表面における露出したコロイダルシリカの占有面積、および塗膜の水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0237】
さらに、形成した塗膜のカーボン汚染性除去性、耐凍害性、耐候性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0238】
【表1】

【0239】
表1中の(*1)、(*2)は以下の通りであり、表1中の略号は下記化合物を示す。
【0240】
(*1):数値は質量部、括弧内の数値は質量%。
(*2):数値は重合体(A)を100質量部としたときの質量部。
【0241】
「MMA」:メチルメタクリレート、
「2−HEMA」:2−ヒドロキシエチルメタクリレート、
「EDMA」:エチレングリコールジメタクリレート、
「SZ−6030」:加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体(a)、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、
「TAC」:トリアリルシアヌレート
「MAA」:メタクリル酸、
「n−BA」:n−ブチルアクリレート、
「DAAm」:ダイアセトンアクリルアミド、
「ADH」:アジピン酸ジヒドラジド。
【0242】
【表2】

【0243】
表2から明らかなように、実施例の白色系の着色材料含有被覆材からなる塗膜は、塗膜の水接触角が低いことから塗膜の耐汚染性(カーボン汚染除去性)に優れ、耐凍害性、耐候性を兼ね備えていた。
【0244】
これに対して、比較例の白色系の着色材料含有被覆材からなる塗膜は、塗膜の耐汚染性耐凍害性、耐候性をバランスよく発揮することは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0245】
本発明の塗膜、および着色材料含有被覆材からなる塗膜は、耐汚染性に優れ、耐凍害性、耐候性が良好となる。このような着色材料含有被覆材、またその塗膜は、構造物等の躯体保護を目的とする様々な被覆用途に用いることができ、工業上極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0246】
【図1】塗膜表面における露出したシリカ粒子(B)の占有面積を説明する断面模式図である。
【符号の説明】
【0247】
F:塗膜表面、
B:シリカ粒子、
S:占有面積。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)、シリカ粒子(B)、及び着色材料(C)を含有する塗膜であり、塗膜表面における露出した前記シリカ粒子(B)の占有面積が、塗膜表面の35%以上を占める塗膜。
【請求項2】
重合体(A)、シリカ粒子(B)、着色材料(C)、アニオン系界面活性剤、及びノニオン系界面活性剤を含有する着色材料含有被覆材であって、
前記重合体(A)が、加水分解性シリル基含有ラジカル重合性単量体単位及び/又はラジカル重合性基を2つ以上有する多官能単量体単位(a)0.2〜20質量%、その他の単量体単位(b)80〜99.8質量%(ただし、単量体単位(a)および単量体単位(b)の合計を100質量%とする。)より構成され、
前記着色材料(C)が重合体(A)100質量部に対して10〜100質量部である着色材料含有被覆材。
【請求項3】
有機ヒドラジン化合物(D)を更に含有し、かつ、前記その他の単量体単位(b)として、カルボニル基及び/又はアルデヒド基を含有するエチレン性不飽和単量体単位(b−1)を0.1〜10質量%(ただし、前記重合体(A)の質量を100質量%とする)含む請求項2に記載の着色材料含有被覆材。
【請求項4】
前記シリカ粒子(B)が重合体(A)100質量部に対して0.5〜25質量部である請求項2または3に記載の着色材料含有被覆材。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかに記載の着色材料含有被覆材の製造方法であって、
前記シリカ粒子(B)の全量あるいは一部と、前記着色材料(C)の全量あるいは一部を混合して混合物を調製し、その後に前記混合物と前記重合体(A)を混合する工程を含む方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−256569(P2009−256569A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209046(P2008−209046)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】