説明

塗膜形成方法および圧電素子の製造方法

【課題】被塗布物への液滴塗布工程を簡易化するとともに、被塗布物上に所望の塗膜を形成することのできる塗膜形成方法、およびこの塗膜形成方法を用いることにより、信頼性の高い圧電素子を簡単に製造することのできる圧電素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】上面27、側面28およびこれらが交差する角部Aを有する圧電素子片2に対して、吐出法によりレジスト液Qをインクジェットヘッド500から吐出し、圧電素子片2に塗付膜(レジスト膜)を形成する塗膜形成方法であって、レジスト液Qを上面27の法線方向から角部A付近に、圧電素子片2の平面視にて角部Aの延在方向に直交する方向にレジスト液Qの直径よりも短い距離ずらして複数滴吐出し、複数のレジスト液Qのうちの角部Aでせん断されたレジスト液が側面28を流下することにより、側面28にレジスト膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜形成方法および圧電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶等の圧電体材料で構成された圧電基板(圧電素子片)の表面に電極を形成する方法として次のような方法が知られている。すなわち、まず、圧電基板上に電極を形成するための金属膜をスパッタリング法により形成する。次いで、金属膜上にレジスト(フォトレジスト)を塗布し、電極の形状にパターニング(露光・現像)することによりレジストマスクを形成する。そして、レジストマスクを介して金属膜をエッチングした後、レジストマスクを除去することにより圧電基板上に電極を形成する。
【0003】
また、金属膜上にレジストを塗布する方法(塗膜を形成する方法)として、インクジェットを用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のレジスト塗布方法では、レジスト液の吐出方向が圧電基板の上面に垂直な方向から所定側面側に傾いた方向に設定されており、これにより、圧電基板の上面にレジスト液を塗布するともに、前記所定側面にもレジスト液を塗布することができる。
【0004】
しかしながら、このような特許文献1のレジスト塗布方法では、前記所定側面以外の側面(所定側面とは、法線方向が異なる側面)にもレジスト液を塗布する場合には、圧電基板を回転させて配置を変更するか、ヘッドの傾き方向を変更することによりレジストの吐出方向を変更しなければならず、レジスト塗布工程の多工程化および煩雑化を招いてしまう。
【0005】
また、インクジェットヘッドは、通常、複数のノズル列を有するため、特許文献1のレジスト塗布方法では、圧電基板の上面に垂直な方向に対するレジスト液の吐出方向の傾きによって、ノズル列ごとの圧電基板の上面に着弾したレジスト液同士の離間距離が変化したり、レジスト液の吐出距離(ヘッドから上面までの軌道距離)が変化したりする。そのため、不本意に、圧電基板上にレジスト液が塗布されない部分が発生したり、レジスト液が塗布されていてもその膜厚が少ない部分が発生したりする。その結果、ピンホール等が発生し、ピンホールが発生した個所において不本意な金属膜の除去が行われ、短絡や断線が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−177364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、被塗布物への液滴塗布工程を簡易化するとともに、被塗布物上に所望の塗膜を形成することのできる塗膜形成方法、およびこの塗膜形成方法を用いることにより、信頼性の高い圧電素子を簡単に製造することのできる圧電素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の塗膜形成方法は、上面、側面およびこれらが交差する角部を有する基板に対して、吐出法により液滴をノズルから吐出し、前記被塗布物に塗膜を形成する塗膜形成方法であって、
複数の前記液滴を、前記上面の法線方向から前記角部付近に、前記被塗布物の平面視にて前記角部の延在方向に直交する方向に前記液滴の直径よりも短い距離ずらして吐出し、前記複数の液滴のうちの前記角部でせん断された液滴が前記側面を流下することにより、前記側面に前記塗膜を形成することを特徴とする。
【0009】
これにより、簡単かつ確実に、被塗布物の側面に適当な厚さの塗膜を形成することができきる。また、液滴の吐出方向を一定に保ったままで、全ての側面に対して液滴を塗布することができるため、液滴塗布工程の簡易化を図ることができる。また、ノズルと被塗布物との位置合わせをそれほど高精度に行わなくても、側面に液滴を塗布することができるため、短時間で、簡単かつ確実に、側面に液滴を塗布することができる。
【0010】
本発明の塗膜形成方法では、前記被塗布物の平面視にて、前記液滴を前記角部の延在方向に直交する方向に前記液滴の半径よりも短い距離ずらして複数滴吐出することが好ましい。
これにより、より多くの液滴を角部に衝突させることができ、側面に、不本意な、液滴が塗布されない領域が発生するのを防止することができる。
【0011】
本発明の塗膜形成方法では、前記ノズルから吐出された複数の前記液滴のうち、最も離間する一対の前記液滴の中心間距離は、20μm〜100μmであることが好ましい。
これにより、ノズルと被塗布物との位置合わせをそれほど高精度に行わなくても、被塗布物の側面に液滴を塗布することができ、高精度な位置決めが必要ない分、側面への液滴の塗布工程の迅速化を図ることができる。また、この効果に加え、液滴の吐出数を抑えることができ、液滴の使用量を低減することができる。
【0012】
本発明の塗膜形成方法では、前記被塗布物の平面視にて、前記ノズルから吐出された複数の前記液滴のうち、最も離間する一対の前記液滴の中心間の中間点付近に、前記角部が位置することが好ましい。
これにより、ノズルと被塗布物との位置決めを行う際に、これらの相対的位置関係が所定の関係からずれた場合にも、そのずれを許容し、確実に、側面に液滴を塗布することができる。
【0013】
本発明の塗膜形成方法では、前記角部でせん断された液滴を、前記側面の前記被塗布物の厚さ方向の中間点よりも下側まで流下させることが好ましい。
これにより、より確実に、側面の厚さ方向の全域に液滴を塗布することができる。
本発明の塗膜形成方法では、前記液滴の径は、10μm〜50μmであることが好ましい。
これにより、被塗布物の角部に液滴を衝突させやすくなるとともに、衝突後に被塗布物の側面を流下するレジスト液の量が適当となる。そのため、被塗布物の側面に適当な(薄すぎず、厚すぎない)膜厚の塗膜を形成することができる。
【0014】
本発明の塗膜形成方法では、前記液滴の粘度は、1cP〜20cPであることが好ましい。
これにより、被塗布物の側面に液滴を留めておくことができ(被塗布物側面から液滴の大半が流れ落ちるのを防止することができ)、被塗布物の側面に適当な膜厚の塗膜を形成することができる。
【0015】
本発明の塗膜形成方法では、前記被塗布物は、圧電体材料で構成された圧電素子片であることが好ましい。
これにより、例えば、圧電素子片上に所望の形状の電極を形成する際に用いるレジストマスクを形成するためのレジスト膜を簡単に形成することができる。そのため、圧電素子片上に電極が形成されてなる圧電素子を簡単に製造することができる。
本発明の塗膜形成方法では、前記液滴は、レジスト液であることが好ましい。
これにより、例えば、圧電素子片上に所望の形状の電極を形成する際に用いるレジストマスクを形成するためのレジスト膜を簡単に形成することができる。そのため、圧電素子片上に電極が形成されてなる圧電素子を簡単に製造することができる。
【0016】
本発明の圧電素子の製造方法は、上面、側面およびこれらが交差する角部を有する圧電素子片の表面に電極を形成することにより圧電素子を形成する圧電素子の製造方法であって、
前記圧電素子片の表面に前記電極形成用の金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の表面にレジストマスクを形成するレジストマスク形成工程と、
前記レジストマスクを用いて前記金属膜をパターニングし、前記電極を形成する電極形成工程とを有し、
前記レジストマスク形成工程では、複数の前記レジスト液を、前記上面の法線方向から前記角部付近に、前記圧電素子片の平面視にて前記角部の延在方向に直交する方向に前記レジスト液の直径よりも短い距離ずらして吐出し、前記複数のレジスト液のうちの前記角部でせん断されたレジスト液が前記側面を流下することにより、前記側面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、その後、前記レジスト膜に露光および現像を行うことにより前記レジストマスクを形成することを特徴とする。
【0017】
これにより、レジスト液の吐出方向を一定に保ったままで、レジスト液を塗布する必要のある全ての領域(上面、下面および側面)に対してレジスト液を塗布することができるため、レジストマスク形成工程の簡易化を図ることができる。また、ノズルと圧電素子片との位置合わせをそれほど高精度に行わなくても、圧電素子片の側面にレジスト液を塗布することができる。そのため、圧電素子の製造方法の簡易化および迅速化を図ることができる。
【0018】
本発明の圧電素子の製造方法は、前記圧電素子片は、基部と、基部から互いに平行に突出した少なくとも一対の腕部を有し、前記レジストマスク形成工程では、前記圧電素子片の側面のうち前記一対の腕部の付け根部分の又部には、前記レジスト液を塗布しないことが好ましい。
これにより、レジスト液の使用量を低減することができる。また、又部にレジスト液を塗布しないため、又部に対する露光・現像等の工程を省略することができ、圧電素子の製造工程を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の圧電素子の製造方法により製造される圧電素子を示す斜視図である。
【図2】図1に示す圧電素子の断面図(A−A線断面図)である。
【図3】図1に示す圧電素子の製造方法(本発明の圧電素子の製造方法)を示す断面図である。
【図4】図1に示す圧電素子の製造方法(本発明の圧電素子の製造方法)を示す断面図である。
【図5】図1に示す圧電素子の製造方法(本発明の圧電素子の製造方法)を示す断面図である。
【図6】レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。
【図7】レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。
【図8】レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。
【図9】レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。
【図10】レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。
【図11】レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の塗膜形成方法および圧電素子の製造方法を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の圧電素子の製造方法により製造される圧電素子を示す斜視図、図2は、図1に示す圧電素子の断面図(A−A線断面図)、図3ないし図5は、それぞれ、図1に示す圧電素子の製造方法(本発明の圧電素子の製造方法)を示す断面図、図6ないし図11は、それぞれ、レジストマスク形成工程中のレジスト液を圧電素子片に塗布する方法(本発明の塗膜形成方法)を説明する断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1〜図11の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」と言う。
【0021】
図1に示す圧電素子(振動子)1は、圧電素子片(振動片)2と、圧電素子片2上に形成された電極3とで構成されている。
圧電素子片2は、音叉型の平面視形状を有する薄板である。すなわち、圧電素子片2は、上面と、下面と、側面と、上面および側面が交差する上側角部と、下面および側面が交差する下側角部とを有している。
【0022】
具体的には、圧電素子片2は、基部21と、基部21から突出し同一方向に延在する一対の腕部22、23を有している。また、図2に示すように、腕部22には、上面に開放する上側凹部221と、下面に開放する下側凹部222とが形成されている。同様に、腕部23にも、上面に開放する上側凹部231と、下面に開放する下側凹部232とが形成されている。これら凹部221〜232は、それぞれ、腕部22、23の延在方向に沿って延在している。また、凹部221〜232は、互いにほぼ等しい形状(長さ、幅、深さ、開口形状、横断面形状、縦断面形状等)を有している。
【0023】
このような圧電素子片2の構成材料としては、例えば、水晶、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、四硼酸リチウム等が挙げられる。これら材料の中でも特に水晶を用いることにより、振動特性および温度特性等の優れる圧電素子1が得られる。
図1に示すように、電極3は、互いに絶縁された第1の電極31および第2の電極32を有している。第1の電極31は、基部21の上面に形成された端子311と、腕部22の側面にその側面を囲むように形成された側面電極312と、腕部23の上側凹部231に形成された上側凹部電極313と、腕部23の下側凹部232に形成された下側凹部電極314とを有している。側面電極312は、基部21の側面に形成された配線を介して端子311に接続されており、上側凹部電極313は、基部21の上面に形成された配線を介して側面電極312に接続されており、下側凹部電極314は、基部21の下面に形成された配線を介して側面電極312に接続されている。
【0024】
このような第1の電極31とは対称的に、第2の電極32は、基部21の上面に形成された端子321と、腕部23の側面にその側面を囲むように形成された側面電極322と、腕部22の上側凹部221に設けられた上側凹部電極323と、腕部22の下側凹部222に設けられた下側凹部電極324とを有している。また、側面電極322、上側凹部電極323および下側凹部電極324は、それぞれ、配線を介して端子321に接続されている。
【0025】
このような構成の圧電素子1は、基部21を固定した状態にて、第1の電極31および第2の電極32にそれぞれ交流電圧を印加することにより、腕部22、23を所定の周波数で振動させたり、反対に、腕部22、23の振動により発生する起電力を第1の電極31および第2の電極32により検知したりするのに使用される。
次いで、圧電素子1の製造方法(本発明の圧電素子の製造方法)について図3ないし図5に基づいて説明する。なお、図3〜図5は、それぞれ、図1のA−A線断面図を示している。
【0026】
圧電素子1の製造方法は、圧電素子片(被塗布物)2を用意する圧電素子片用意工程と、圧電素子片2の表面に電極3形成用の金属膜を形成する金属膜形成工程と、金属膜の表面にレジストマスクを形成するレジストマスク形成工程と、レジストマスクを用いて金属膜をパターニングし、電極3を形成する電極形成工程とを有している。以下、これら各工程について詳細に説明する。
【0027】
[圧電素子片用意工程]
まず、図3(a)に示すように、ソーワイヤ等により切り出した後、研磨加工および洗浄を行った薄板状(例えば、厚さが50μm〜200μm程度)の水晶ウエハ100を用意し、この水晶ウエハ100の上面に、クロム層Crおよび金層Auをこの順で例えばスパッタ法により形成する。次いで、金層Au表面にレジストを塗布した後、このレジストを音叉形状のパターンに露光・現像し、音叉形状のレジストマスクM1を形成する。
【0028】
次いで、図3(b)に示すように、レジストマスクM1を介して金層Auおよびクロム層Crをエッチング(ウェットエッチング、ドライエッチング等の各種エッチング。以下同様である)し、これら層をレジストマスクM1同様、音叉形状にパターニングする。次いで、図3(c)に示すように、金層Auおよびクロム層Crをマスクとして、水晶ウエハ100をエッチングする。これにより、音叉型の平面視形状を有する、すなわち基部21および一対の腕部22、23を有する水晶ウエハ100が得られる。
【0029】
次いで、図3(d)に示すように、レジストマスクM1を除去した後、再度、金層Auの表面にレジストを塗布し、このレジストを、上側凹部221、231の開口パターンに露光・現像し、上側凹部221、231の形状に対応するレジストマスクM2を形成する。
次いで、図4(a)に示すように、レジストマスクM2を介して金層Auおよびクロム層Crをエッチングし、さらに、金層Auおよびクロム層Crをマスクとして、水晶ウエハ100をハーフエッチングする。これにより、水晶ウエハ100の上面に開放する上側凹部221、231が形成される。
【0030】
次いで、図4(b)に示すように、上側凹部221、231の形成と同様の方法で、下側凹部222、232を形成する。すなわち、水晶ウエハ100の下面にクロム層Crおよび金層Auを形成した後、金層Auの表面に下側凹部222、232に対応するパターンを有するレジストマスクを形成し、そのレジストマスクを介して水晶ウエハ100をハーフエッチングする。これにより、水晶ウエハ100の下面に開放する下側凹部222、232が形成される。なお、下側凹部222、232の形成は、上側凹部221、231の形成と同時に行ってもよいし、上側凹部221、231の形成に先立って行ってもよい。
次いで、図4(c)に示すように、水晶ウエハ100上に形成された全ての膜(レジストマスクM2、クロム層Crおよび金層Au)を除去する。以上の工程により、基部21、腕部22、23、上側凹部221、231および下側凹部222、232を有する圧電素子片2が得られる。
【0031】
[金属膜形成工程]
図5(a)に示すように、圧電素子片2の表面(上面、下面および側面)に、電極3(第1の電極31および第2の電極32)を形成するためのクロム層Crおよび金層Auをスパッタ法により形成する。
[レジストマスク形成工程]
図5(b)に示すように、後述するインクジェット法(吐出法)により金層Auの表面にレジスト液を塗布し、これを乾燥することによりレジスト膜を形成する。その後、このレジスト膜を第1電極31および第2電極32のパターン形状に露光・現像することにより、第1の電極31および第2の電極32の外形パターンをしたレジストマスクM3を形成する。
【0032】
なお、図5(b)に示すように、本工程では、腕部22、23のつけ根部分に挟まれた又部24にはレジスト液を塗布しない。ここで、図1に示すように、圧電素子1では、第1の電極31の側面電極312と第2の電極32の側面電極322とを絶縁(分離)するために、又部24には電極が形成されていない。すなわち、又部24に形成されたクロム層Crおよび金層Auを除去する必要がある。そのため、クロム層Crおよび金層Auを除去する必要がある又部24へのレジスト液の塗布を省略することにより、レジスト液の使用量を低減することができる。また、又部24にレジスト液を塗布しないのであるから、又部24に対する露光・現像等の工程を省略することができ、圧電素子1の製造工程を簡易化することができる。
【0033】
[電極形成工程]
図5(c)に示すように、レジストマスクM3を介して金層Auおよびクロム層Crをエッチングし、これら層を第1、第2の電極31、32の形状にパターニングする。エッチング終了後、レジストマスクM3を除去する。これにより、クロム層Crと金層Auが積層して構成された第1の電極31および第2の電極32が得られる。なお、第1の電極31と第2の電極32との短絡を防止するために、第1の電極31および第2の電極32を覆うように圧電素子片2の表面に表面保護膜を形成してもよい。
以上の工程により、圧電素子1が製造される。
【0034】
なお、このようにして、圧電素子1が製造された後、圧電素子1の周波数調整を行ってもよい。この調整方法としては、例えば、金属膜形成工程にて圧電素子片2の表面に形成したクロム層Crおよび金層Auを用いて、腕部22、23の先端部分(第1、第2の電極31、32のパターン形状に重ならない領域)に形成した錘部材を、レーザートリミングにより除去して、腕部22、23の質量を減少させることにより(質量削減方式により)、圧電素子1の周波数調整を行う方法が挙げられる。
【0035】
[レジスト液の塗布方法(レジスト膜の形成方法)]
次いで、前述したレジストマスク形成工程における、金層Au表面へのレジスト塗布方法(本発明の塗膜形成方法)を図6ないし図11に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、図6ないし図11に示すように、互いに直交する3つの軸をx軸、y軸およびz軸とし、圧電素子片2の上面に平行な平面をxy平面とする。また、図6ないし図11では、説明の便宜上、クロム層Crおよび金層Auの積層構造を、単に一層構造の「電極膜4」として図示する。また、以下では、説明の便宜上、圧電素子片2の表面に電極膜4が形成されているものを単に「圧電素子片2」とも言う。
【0036】
圧電素子片2の表面へのレジストの塗布は、インクジェットヘッド500からレジスト液(液滴)Qを吐出し、圧電素子片2の表面に着弾させることにより行う。インクジェットヘッド500としては、インクジェットプリンター等で使用されるものとほぼ同様の構成のものを用いることができる。インクジェットヘッド500の構成について簡単に説明すれば、インクジェットヘッド500は、例えば、複数のノズル孔(例えば、2列50行)が形成されたノズルプレートと、各ノズル孔に1対1の関係で連通する複数のインク室と、各インク室を収縮・膨張させる複数のピエゾ素子とを有している。このようなインクジェットヘッド500は、ピエゾ素子の駆動によりインク室が収縮・膨張すると、その内容量の変化に基づいて、そのインク室に充填されたレジストがノズル孔から液滴として前記ノズルプレートの法線方向へ吐出するように構成されている。
【0037】
まず、圧電素子片2を、上側凹部221、231が開放する側の面(以下「第1面27」とも言う)が上側に位置するように、図示しない載置台に載置する。この図示しない載置台は、例えばヒーター等の加熱手段を備えており、載置された圧電素子片2を加熱することが可能である。このような載置台によって圧電素子片2を加熱しながら(所定温度に保ちながら)レジスト液Qを圧電素子片2表面に着弾させることにより、圧電素子片2に着弾したレジスト液Qを迅速に乾燥することができる。例えば、圧電素子片2の温度を適宜調節することにより、レジスト液Qが圧電素子片2に着弾してから乾燥するまでの時間を制御することもできる。
【0038】
次いで、圧電素子2の第1面27(上面)とインクジェットヘッド500とを対向させるとともに、インクジェットヘッド500の姿勢をノズルプレートと第1面27とが略平行となるように設定する。これにより、インクジェットヘッド500から吐出されるレジスト液Qの吐出方向は、圧電素子片2の第1面27の法線方向、すなわちz軸方向と一致する。
【0039】
このときのインクジェットヘッド500のノズルプレート(ノズル孔)と第1面27との離間距離は、特に限定されないが、0.5mm〜2mm程度であるのが好ましい。このような範囲とすることにより、インクジェットヘッド500と圧電素子片2との接触を防止しつつ、ノズル孔から吐出したレジスト液Qを圧電素子片2表面の所望位置に高精度に着弾させることができる。
【0040】
[側面28へのレジスト膜形成工程]
次いで、圧電素子片2の側面28にレジスト液Qを塗布し、これを乾燥してレジスト膜L1を形成する。詳しくは、まず、インクジェットヘッド500を、所定のノズル孔501が圧電素子片2の第1面27と側面28が交差する角部Aの上方付近にくるように位置させる。
【0041】
次いで、インクジェットヘッド500をx軸方向に移動させながら、ノズル孔501からほぼ同じ径の複数のレジスト液Qを連続的に吐出する。以下、このことについて、具体的に説明するが、説明の便宜上、複数のレジスト液Qとして、それぞれ径のほぼ等しい5滴のレジスト液Q1〜Q5を吐出した場合について代表して説明する。
まず、図6(a)に示すように、第1滴目のレジスト液Q1をノズル孔501から吐出する。レジスト液Q1は、その中心O1が角部Aより左側にある線分S1上を通過して圧電素子片2の表面に着弾する。図6(b)に示すように、圧電素子片2の表面に着弾したレジスト液Q1は、その全てが第1面27に濡れ広がり側面28を流下しない。
【0042】
次いで、図7(a)に示すように、第2滴目のレジスト液Q2をノズル孔501から吐出する。レジスト液Q2は、その中心O2が線分S2上を通過して圧電素子片2の表面に着弾する。線分S2は、線分S1に対して右側に所定距離d離間した線分である。また、距離dは、レジスト液Q1の直径未満となるように設定する。図7(b)に示すように、圧電素子片2の表面に着弾したレジスト液Q2は、その大半が第1面27に濡れ広がり、その他の僅かな部分が側面28を伝って流下する。なお、レジスト液Q2の圧電素子片2への着弾は、先に圧電素子片2に着弾したレジスト液Q1を乾燥させた後に行ってもよいし、レジスト液Q1が乾燥しないうちに行ってもよい。このことは、後述するレジスト液Q3〜Q5についても同様である。
【0043】
次いで、図8(a)に示すように、第3滴目のレジスト液Q3をノズル孔501から吐出する。レジスト液Q3は、その中心O3が線分S3上を通過して圧電素子片2の表面に着弾する。線分S3は、線分S2に対して右側に所定距離d離間するとともに角部Aからz軸方向に引いた線分と一致する線分である。図8(b)に示すように、圧電素子片2の表面に着弾したレジスト液Q3は、その半分以上が先に側面28に塗布されたレジスト液Q2と重なり合いながら(または混ざり合いながら)側面28を伝って流下する。
【0044】
次いで、図9(a)に示すように、第4滴目のレジスト液Q4をノズル孔501から吐出する。レジスト液Q4は、その中心O4が線分S4上を通過して圧電素子片2の表面に着弾する。線分S4は、線分S3に対して右側に所定距離d離間した線分である。図9(b)に示すように、圧電素子片2の表面に着弾したレジスト液Q4は、その大半が先に側面28に塗布されたレジスト液Q2、Q3と重なり合いながら(または混ざり合いながら)側面28を伝って流下する。
【0045】
次いで、図10(a)に示すように、第5滴目のレジスト液Q5をノズル孔501から吐出する。レジスト液Q5は、その中心O5が線分S4に対して右側に所定距離d離間する線分S5上を通過するため、図10(b)に示すように、圧電素子片2の表面に着弾しない。
このようにして、側面28にレジスト液Q(レジスト液Q2〜Q4)が塗布される。そして、上記側面28へのレジスト液Qの塗布を、角部Aの延在方向(y軸方向)の全域に対して行うことにより、側面28の幅方向(y軸方向)の全域にレジスト液Qを塗布することができ、これを乾燥することにより側面28にレジスト膜L1を形成することができる。この場合、圧電素子片2への着弾状態でy軸方向に隣り合うレジスト液Q同士が重なり合うことが好ましい。これにより、不本意な、レジスト液Qが塗布されない領域(レジスト膜L1が形成されない領域)の発生を防止することができる。
【0046】
このようなレジスト膜形成方法(レジスト塗布方法)によれば、インクジェットヘッド500の姿勢を一定に保ったまま、簡単かつ確実に、レジスト液Qを塗布すべき全ての側面28(例えば、腕部22の図6中左側面、右側面、腕部23の図6中左側面、右側面)に塗布することができる。すなわち、インクジェットヘッド500の姿勢を一定に保ったまま、法線方向が異なる複数の側面全てに対して簡単かつ確実にレジスト液Qを塗布することができる。そのため、レジスト塗布工程の簡易化を図ることができる。
【0047】
また、上記レジスト膜形成方法によれば、角部Aにレジスト液Qを衝突させるため、当該角部Aに、レジストマスクM3として十分な膜厚を有するレジスト膜L1を形成することもできる。従来のレジスト塗布方法では、角部AにレジストマスクM3として十分な膜厚を有するレジスト膜を形成するのが困難であったため、レジストマスクM3を介して電極膜4をエッチングする際に、角部A付近にて電極膜4が不本意に除去されてしまい、これが断線や短絡の原因となっていたが、上記レジスト膜形成方法(本発明の塗膜形成方法)によれば、前述の理由から、このような問題点を確実に解消することができる。
【0048】
また、上記レジスト膜形成方法によれば、インクジェットヘッド500と角部Aとの位置合わせをそれほど高精度に行わなくても、複数のレジスト液Qのうちの少なくとも1つのレジスト液Qを確実に角部Aに衝突させ、その一部を側面28を伝って流下させることができるため、短時間(前記位置決めを高精度に行う必要がないため)で、簡単かつ確実に、側面28にレジスト膜L1を形成(レジスト液Qを塗布)することができる。そのため、上記レジスト膜形成方法によれば、側面28へのレジスト液Qの塗布工程の簡易化および円滑化を図りつつ、その確実性を向上させることができる。
【0049】
また、上記レジスト膜形成方法によれば、例えばレジスト液Q1、Q2を圧電素子片2に着弾させた状態では、側面28に塗布されたレジスト液Qの量(流下距離、膜厚等。以下同様)がレジストマスクM3を形成するのに不十分である場合であるが、レジスト液Q3、Q4を圧電素子片2に着弾させることにより、側面28に塗布されるレジスト液Qが補充され、結果として、側面28に塗布されるレジスト液Qの量が、レジストマスクM3を形成するのに十分な量となる。このようなことからも、上記レジスト膜形成方法によれば、より確実に、レジストマスクM3を形成するのに十分な量のレジスト液Qを側面28に塗布することができる。
【0050】
ここで、側面28へのレジスト液Q(レジスト液Q1〜Q5)の塗布では、側面28の厚さ方向(z軸方向)の中間(図10(b)中の点線I)よりも下側までレジスト液Qが流下するのが好ましい。これは、後述するように、圧電素子片2の第1面27側へのレジスト液Qの塗布が終わると、圧電素子片2を上下引っくり返し、第2面29側から側面28にレジスト液Qを塗布するため、側面28のうち少なくとも第1面27側の半分にレジスト液Qを塗布しておけば、これと同じように第2面29側からレジスト液Qを塗布することにより、最終的に、側面28の厚さ方向の全域にレジスト液Qを塗布することができるためである。すなわち、側面28の厚さ方向の中間よりも下側までレジスト液Qを流下させれば、より確実に、側面28の厚さ方向の全域にレジスト液Qを塗布することができる。
【0051】
なお、レジスト液Qの側面28の流下距離は、後述するようにレジスト液Qの大きさ(径)や粘度によって制御可能であるが、その他、側面28の表面粗さや、レジスト液Qの圧電素子片2上での塗れ性によっても制御可能である。すなわち、前述したような載置台が有するヒーターによって、圧電素子片2の温度を適宜調節することによっても、レジスト液Qが点線Iよりも下側まで流下し、かつ必要以上に流下しないように、その流下距離を制御することができる。
【0052】
また、側面28へのレジスト液Q(レジスト液Q1〜Q5)の塗布では、レジスト液Qの直径としては、特に限定されないが、10μm〜50μm程度であるのが好ましく、15μm〜25μm程度であるのがより好ましい。レジスト液Qの径をこのような大きさとすることにより、圧電素子片2の角部Aにレジスト液Qを衝突させやすくなるとともに、衝突後に側面28を流下するレジスト液Qの量が適当となる。そのため、圧電素子片2の側面28にレジストマスクM3として適した膜厚のレジスト膜L1を形成することができる。
【0053】
また、側面28へのレジスト液Q(レジスト液Q1〜Q5)の塗布では、レジスト液Qの粘度としては、特に限定されないが、1cP〜20cP(0.001Pa・s〜0.02Pa・s)程度であるのが好ましい。これにより、側面28を流下するレジスト液Qを、当該側面28に留めておくことができ(レジスト液Qが流下し過ぎるのを抑制することができ)、圧電素子片2の側面28にレジストマスクM3として適した膜厚のレジスト膜L1を形成することができる。
【0054】
また、側面28へのレジスト液Q(レジスト液Q1〜Q5)の塗布では、インクジェットヘッド500からの吐出位置が隣り合う一対のレジスト液Q(例えばレジスト液Q1、Q2)の中心間距離(距離d)としては、レジスト液Qの直径未満であればよいが、半径未満であるのが好ましい。すなわち、側面28へのレジスト液Qの塗布では、レジスト液Qをx軸方向にレジスト液Qの半径よりも短い距離ずらして複数滴吐出するのが好ましい。これにより、より多くのレジスト液Qを角部Aに衝突させることができ、不本意な、レジスト液Qが塗布されない領域の発生を防止することができる。
【0055】
また、側面28へのレジスト液Q(レジスト液Q1〜Q5)の塗布では、最も離間する一対のレジスト液Q1、Q5の吐出位置の中心間距離(中心O1、O5のx軸方向における離間距離)Dとしては、特に限定されないが、20μm〜100μm程度であるのが好ましく、30μm〜50μm程度であるのがより好ましい。ここで、xy平面視にて、角部Aがレジスト液Q1の中心O1とレジスト液Q5の中心O5との間に位置していれば、角部Aの位置に関係なくレジスト液Q1〜Q5の少なくとも1つのレジスト液が角部Aと衝突し、その半分以上が側面28を流下する。言い換えれば、角部Aが、レジスト液Q1の中心O1とレジスト液Q5の中心O5との間に位置するようにさえ、圧電素子2とインクジェットヘッド500との位置合わせを行えば、側面28にレジスト液Qを塗布することができる。そのため、中心間距離Dを上記数値範囲とすることにより、インクジェットヘッド500と圧電素子2との位置合わせをそれほど高精度に行わなくても、側面28にレジスト液Qを塗布することができ、高精度な位置決めが必要ない分、側面28へのレジスト液Qの塗布工程の迅速化を図ることができる。この効果に加え、中心間距離Dを上記数値範囲とすることにより、レジスト液Qの液滴数を抑えることができ、レジスト液Qの使用量を低減することができる。
【0056】
また、側面28へのレジスト液Q(レジスト液Q1〜Q5)の塗布では、xy平面視において、最も離間する一対のレジスト液Q1、Q5の中心O1、O5間の中間点付近に、角部Aが位置することが好ましい。なお、本実施形態では、xy平面視にて、中心O1、O5間の中間点である中心O3上に角部Aが位置している。角部Aをこのように位置することにより、インクジェットヘッド500と圧電素子2との位置決めを行う際に、これらが相対的に所定位置関係から若干x軸方向のプラス側にずれた場合またはマイナス側にずれた場合のいずれの場合にも、そのずれを許容し、側面28にレジスト液Qを塗布することができる。
なお、本実施形態では、5滴のレジスト液Q1〜Q5をx軸方向にずらしながら吐出する場合について説明したが、レジスト液Qの滴数としては、これに限定されず、2〜4滴であってもよいし、6滴以上であってもよい。
【0057】
[第1面27へのレジスト膜形成工程]
以上の工程により、圧電素子片2の第1面27側の側面28へのレジスト膜L1の形成を終えると、次いで、圧電素子片2の第1面27にレジスト液Qを塗布し、これを乾燥してレジスト膜L2を形成する。具体的には、図11(a)に示すように、各ノズル孔からレジスト液Qを吐出させながら、インクジェットヘッド500を圧電素子片2の第1面27の上方にてx軸方向およびy軸方向に移動することにより、圧電素子片2の第1面27の全域にレジスト液Qを着弾させる。このとき、インクジェットヘッド500のノズルプレートが第1面27と平行であるため、各ノズル孔と第1面27との離間距離がそれぞれ等しく、その結果、レジスト液Qを圧電素子片2の第1面27に粗密なく均一に塗布することができる。そして、着弾した各レジスト液Qを乾燥することにより、第1面27上にレジスト膜L2を形成することができる。
【0058】
なお、レジスト液Qを吐出するノズル孔の数としては、特に限定されず、全てのノズル孔のうちの一部だけでもよいし、さらには、1つだけでもよい。
また、第1面27への着弾状態で重なり合う複数のレジスト液Qを塗布する場合には、1滴目のレジスト液Qを第1面27へ着弾させ当該レジスト液Qを乾燥させた後に、2滴目のレジスト液Qを乾燥した1滴目のレジスト液Qと重なるように第1面27へ着弾させてもよいし、1滴目のレジスト液Qが第1面27上で乾燥しないうちに、2滴目のレジスト液Qを1滴目のレジスト液Qと重なるように第1面27へ着弾させてもよい。また、複数のレジスト液Qを同時に第1面27に着弾させてもよい。
【0059】
ここで、当該工程(第1面27にレジスト液Qを塗布する工程)では、第1面27とともに、上側凹部221、231の内面にもレジスト液Qを塗布する必要があるが、この上側凹部221、231の内面へのレジスト液Qの塗布は、例えば、上側凹部221、231内をレジスト液Qで満たすことにより行ってもよいし、前述した圧電素子片2の側面28へのレジスト液Qの塗布と同様の方法により行ってもよい。なお、図11(a)では、前者の方法によるものが図示されている。
【0060】
[側面28へのレジスト膜形成工程]
以上の工程により、圧電素子片2の第1面27側へのレジスト膜L2の形成を終えると、次いで、圧電素子片2の第2面29および側面28の第2面29側にレジスト液Qを塗布し、これを乾燥してレジスト膜L3、L4を形成する。具体的には、まず、圧電素子片2の上下を引っくり返す。次いで、図11(b)に示すように、側面28にレジスト液Qを塗布し、乾燥することで側面28にレジスト膜L3を形成する。これにより、当該レジスト膜L3が、本工程に先立って側面28の第1面27側に形成されたレジスト膜L1と一体化し(一部が重なり合い)、側面28の厚さ方向(z軸方向)全域にレジスト膜が形成される。当該工程は、前述の側面28の第1面27側にレジスト膜L1を形成する工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0061】
[第2面29へのレジスト膜形成工程]
次いで、図11(c)に示すように、圧電素子片2の第2面29にレジスト液Qを塗布し、乾燥することでレジスト膜L4を形成する。当該工程は、前述した第1面27にレジスト膜L2を形成する工程と同様であるため、その説明省略する。
以上の工程により、圧電素子片2の表面のうち、レジスト膜を形成する必要のある領域の全域(すなわち、圧電素子片2の又部24を除く全域)に、レジスト膜を形成することができる。そして、このレジスト膜を前述したように第1の電極31および第2の電極32のパターン形状に露光・現像することにより、第1、第2の電極31、32の外形パターンをしたレジストマスクM3を形成することができる。
【0062】
以上、本発明の塗膜形成方法および圧電素子の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や、工程が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、第1面側からレジスト液を塗布する際に、側面にレジスト液を塗布してから、第1面にレジスト液を塗布する方法について説明したが、これに限定されず、例えば、反対に、第1面にレジスト液を塗布してから、側面にレジスト液を塗布してもよい。
また、前述した実施形態では、液滴としてレジスト膜を形成するためのレジスト液を用いた構成について説明したが、液滴としてはこれに限定されず、例えば、絶縁膜を形成するための絶縁性の液滴や、電極膜や配線膜を形成する導電性の液滴であってもよい。
【0063】
また、前述した実施形態では、被塗布物として、圧電材料で構成された圧電体基板を用いた構成について説明したが、被塗布物としては、これに限定されず、例えば、各種樹脂材料で構成された樹脂基板(合成樹脂基板)や、Au、Ag、Cu、Fe等の各種金属材料で構成された金属基板や、各種セラミックスで構成されたセラミックス基板や、シリコン基板等の半導体基板や、石英ガラス等の各種ガラス材料で構成されたガラス基板、サファイア基板、ダイヤモンド基板等であってもよい。
また、圧電素子片の形状としては、2本の腕部を有する音叉型のものについて説明したが、これに限定されず、例えば、ジャイロセンサ等に用いられる6本の腕部を有する「王」型をなすものであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1……圧電素子 2……圧電素子片 21……基部 22、23……腕部 221、231……上側凹部 222、232……下側凹部 24……又部 27……第1面 28……側面 29……第2面 3……電極 31……第1の電極 311、321……端子 312、322……側面電極 313、323……上側凹部電極 314、324……下側凹部電極 32……第2の電極 4……電極膜 500……インクジェットヘッド 501……ノズル孔 100……水晶ウエハ Cr……クロム層 Au……金層 M1、M2、M3……レジストマスク L1〜L4……レジスト膜 O1〜O5……中心 Q、Q1〜Q5……レジスト液 S1〜S5……線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面、側面およびこれらが交差する角部を有する被塗布物に対して、吐出法により液滴をノズルから吐出し、前記被塗布物に塗膜を形成する塗膜形成方法であって、
複数の前記液滴を、前記上面の法線方向から前記角部付近に、前記被塗布物の平面視にて前記角部の延在方向に直交する方向に前記液滴の直径よりも短い距離ずらして吐出し、前記複数の液滴のうちの前記角部でせん断された液滴が前記側面を流下することにより、前記側面に前記塗膜を形成することを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
前記被塗布物の平面視にて、前記液滴を前記角部の延在方向に直交する方向に前記液滴の半径よりも短い距離ずらして複数滴吐出する請求項1に記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
前記ノズルから吐出された複数の前記液滴のうち、最も離間する一対の前記液滴の中心間距離は、20μm〜100μmである請求項1または2に記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
前記被塗布物の平面視にて、前記ノズルから吐出された複数の前記液滴のうち、最も離間する一対の前記液滴の中心間の中間点付近に、前記角部が位置する請求項1ないし3のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
前記角部でせん断された液滴を、前記側面の前記被塗布物の厚さ方向の中間点よりも下側まで流下させる請求項1ないし4のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
前記液滴の径は、10μm〜50μmである請求項1ないし5のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項7】
前記液滴の粘度は、1cP〜20cPである請求項1ないし6のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項8】
前記被塗布物は、圧電体材料で構成された圧電素子片である請求項1ないし7のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項9】
前記液滴は、レジスト液である請求項1ないし8のいずれかに記載の塗膜形成方法。
【請求項10】
上面、側面およびこれらが交差する角部を有する圧電素子片の表面に電極を形成することにより圧電素子を形成する圧電素子の製造方法であって、
前記圧電素子片の表面に前記電極形成用の金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記金属膜の表面にレジストマスクを形成するレジストマスク形成工程と、
前記レジストマスクを用いて前記金属膜をパターニングし、前記電極を形成する電極形成工程とを有し、
前記レジストマスク形成工程では、複数の前記レジスト液を、前記上面の法線方向から前記角部付近に、前記圧電素子片の平面視にて前記角部の延在方向に直交する方向に前記レジスト液の直径よりも短い距離ずらして吐出し、前記複数のレジスト液のうちの前記角部でせん断されたレジスト液が前記側面を流下することにより、前記側面にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、その後、前記レジスト膜に露光および現像を行うことにより前記レジストマスクを形成することを特徴とする圧電素子の製造方法。
【請求項11】
前記圧電素子片は、基部と、基部から互いに平行に突出した少なくとも一対の腕部を有し、前記レジストマスク形成工程では、前記圧電素子片の側面のうち前記一対の腕部の付け根部分の又部には、前記レジスト液を塗布しない請求項10に記載の圧電素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−227814(P2010−227814A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77816(P2009−77816)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】