説明

塗膜形成装置

【課題】比較的薄肉で変形しやすい被塗装物の外周面に一定の厚みの塗膜を容易に形成することができる塗膜形成装置を提供する。
【解決手段】塗膜形成装置1は保持部11と移動部12と塗布ユニット13を備えている。保持部11は軸芯Pが鉛直方向と平行な状態に基体4を保持する。塗布ユニット13は塗布ヘッド37と支持ベース34と移動支持部35を備えている。塗布ヘッド37は円環状に形成されて内側に基体4を通して外周面4cに塗料7を塗布する。塗布ヘッド37の内周面には全周に亘ってシール部材52が取り付けられている。シール部材52はゴムなどの弾性材料で構成され基体4と当接すると弾性変形する。支持ベース34は移動部12によって軸芯Pに沿って移動される。支持ベース34は塗布ヘッド37を支持している。移動支持部35は塗布ヘッド37を軸芯Pに対して直交する方向に移動自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物の円筒面状の外周面に塗料を塗布して塗膜を形成する塗膜形成装置に関する。例えば、PPC(普通紙複写機)、LBP(レーザビームプリンタ)、ファクシミリなどの電子写真方式を採用した画像形成装置において、転写紙上の未定着トナー像を加熱、加圧により定着させる定着部材(定着ローラ、定着ベルト)の離型層やプライマ層を形成するのに好適な塗膜形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の原理に基づく複写機およびプリンタなどの画像形成装置では、転写紙を狭厚し、熱によりトナーを溶融して該転写紙に定着させる定着プロセスを行う。近年、その定着プロセスで用いられる部品(定着ローラあるいは定着ベルト)には、基体上にシリコーンゴムなどの耐熱性ゴムで構成された弾性層(厚みが100μm〜300μm程度)と、該弾性層上に形成されたプライマ層と、フッ素樹脂で構成された離型層(厚みが20μm〜30μm程度)などが順に形成されて得られる。
【0003】
前述した離型層を形成するための工法としては、一般的に、スプレー噴霧して塗装するスプレーコーティング塗装が用いられてきた。しかし、スプレーによる噴霧は、塗着効率が20%〜30%(実際に塗装対象物に付着する塗料の割合)程度であり、塗装に用いる塗料のうち70%〜80%程度の塗料をすてていることとなり、非常に塗料の効率が悪く、非常に多くの塗料が必要となる。また、フッ素樹脂は、塗装が難しく、一度に20μm〜30μmの塗膜を吹き付けると、塗料をはじくなど表面欠陥ができてしまうため、前述した離型層を形成するためには薄い層を何層も重ねて塗装する必要があり作業時間が長時間化する傾向であった。
【0004】
一方これらの欠点を補う工法として浸漬塗装が考えられる。この浸漬塗装は、塗料を収容した液槽に被塗装物を浸し引き上げることで塗料を被塗装物に付着させて塗膜を形成する方式であるため塗着効率が90%以上と非常に高く塗装時の塗料の無駄が少ない。しかしながら、この浸漬塗装では、液槽内に完全に被塗装物が浸るだけの液量の塗料が必要となり、前述した画像形成装置の定着プロセスで用いられる部品を、その軸方向に完全に浸すためには、500mm程度の深さの液槽が必要となり、大量の塗料が必要になるという欠点があった。
【0005】
上記の欠点の全てを回避する塗工装置(例えば特許文献1乃至3に示された)が提案されている。この種の塗工装置は、液槽部を密閉して被塗装物と相対的に動かすことにより少ない塗料での浸漬塗装を実現している。前述した特許文献1乃至3に示された塗工装置は、同軸に配置された複数の被塗装物を連続的に塗装することも可能であり、勿論、被塗装物を一本ずつ塗装することも可能である。
【特許文献1】特開平8−23698号公報
【特許文献2】特開2004−279918号公報
【特許文献3】特開2004−290853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1乃至3に示された塗工装置では、比較的の圧肉の画像形成装置で用いられる感光体として用いられるアルミニウム合金で構成された円筒状の被塗装物を塗装している。このため、特許文献1乃至特許文献3には、比較的薄肉で変形しやすい被塗装物の外周に一定の厚みの塗膜を形成することが困難であった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、比較的薄肉で変形しやすい被塗装物の外周面に一定の厚みの塗膜を容易に形成することができる塗膜形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決するために請求項1に記載の塗膜形成装置は、被塗装物の円筒面状の外周面に塗料を塗布して塗膜を形成する塗膜形成装置において、前記外周面を露出させかつ前記被塗装物の軸芯が鉛直方向と平行な状態で当該被塗装物を保持する保持部と、円環の箱状に形成されて前記塗料を収容し、かつ内周面が全周に亘って切り欠かれて、前記被塗装物を内側に通して前記塗料を前記被塗装物の外周面に塗布する塗布ヘッドと、前記塗布ヘッドの内周面の全周に亘って取り付けられて前記被塗装物と当接して弾性変形することで該被塗装物との間を水密に保つシール部材と、前記塗布ヘッドを支持した支持ベースと、前記保持部と前記支持ベースとを前記軸芯に沿って相対的に移動させる移動部と、前記支持ベースに対して前記塗布ヘッドを前記軸芯に直交する方向に沿って移動自在に支持する移動支持部と、を備えたことを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の塗膜形成装置は、請求項1に記載の塗膜形成装置において、前記支持ベースが、前記塗布ヘッドの下方に配置されるベース本体と、該ベース本体の外縁から立設して先端部が前記塗布ヘッドの上方に配置される外縁凸部と、を備え、前記移動支持部が、前記ベース本体と前記塗布ヘッドとの間に配置されてこれらの双方に対して転動自在な第1転動体と、前記外縁凸部の先端部と前記塗布ヘッドとの間に配置されてこれらの双方に対して転動自在な第2転動体と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の塗膜形成装置は、請求項1に記載の塗膜形成装置において、前記塗布ヘッド内に侵入可能となる調整位置と前記塗布ヘッドから退避した退避位置とに亘って移動自在に設けられているとともに、前記調整位置で前記塗布ヘッド内に通されることで前記シール部材と干渉して前記支持ベースに対する基準となる位置に前記塗布ヘッドを位置付ける基準位置決め部材と、前記支持ベースに対して前記塗布ヘッドを移動自在とする第1の状態と、前記支持ベースに前記塗布ヘッドを固定する第2の状態とが切り替え可能な移動固定部と、前記移動固定部を前記第2の状態として前記基準位置決め部材を調整位置に位置付けた後、前記移動部に該基準位置決め部材を前記塗布ヘッド内に通させて、前記移動固定部を前記第1の状態に切り替えるように制御する制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載の塗膜形成装置は、請求項3に記載の塗膜形成装置において、前記移動固定部が、前記支持ベースに固定され、かつ印加されると前記塗布ヘッドを前記支持ベースに固定する磁力を生じる電磁石を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載の塗膜形成装置は、請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置において、前記保持部が、前記被塗装物内に挿入されるマンドレルと、前記被塗装物の両端部に挿入される一対の保持部材と、前記一対の保持部材同士が互いに近づく方向に該一対の保持部材を押圧する押圧部と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載の塗膜形成装置は、請求項5に記載の塗膜形成装置において、前記マンドレルが、前記被塗装物の両端部内に挿入される一対の円盤部材と、該円盤部材の中央部同士を連結した軸部材と、を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項7に記載の塗膜形成装置は、請求項6に記載の塗膜形成装置において、前記円盤部材の外径が、前記被塗装物の内径よりも大きく形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項8に記載の塗膜形成装置は、請求項5乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置において、前記保持部材が、前記被塗装物内に挿入される端部に該被塗装物との間を水密に保つシール部材を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項9に記載の塗膜形成装置は、請求項5乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置において、一対の保持部材のうち一方の保持部材が、前記被塗装物内に挿入される端部に該被塗装物との間を水密に保つシール部材を備え、そして、他方の保持部材が、前記被塗装物内に挿入される端部に該被塗装物の奥に向かうにしたがって徐々に先細となるテーパ部を備えたことを特徴としている。
【0017】
請求項10に記載の塗膜形成装置は、請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置において、前記塗布ヘッド内の前記塗料の液面の高さを計測可能な計測手段と、前記塗布ヘッド内に前記塗料を供給する塗料供給部と、前記計測手段が計測した液面の高さに基づいて、該液面の高さが一定となるように、前記塗料供給部に前記塗料を前記塗布ヘッド内に供給させる制御部と、を備えたことを特徴としている。
【0018】
請求項11に記載の塗膜形成装置は、請求項10に記載の塗膜形成装置において、前記塗料供給部が、前記塗料を収容する収容容器と、該収容容器と該収容容器から前記塗布ヘッドに塗料を供給する供給管とのうち少なくとも一方に設けられた前記塗料の粘度を測定可能な粘度測定部と、を備えたことを特徴としている。
【0019】
請求項12に記載の塗膜形成装置は、請求項11に記載の塗膜形成装置において、前記塗布ヘッド内の前記塗料の温度を測定可能な温度測定部と、前記塗布ヘッドの前記被塗装物に対する移動速度を測定可能な移動速度検出手段とを更に備え、前記制御部が、前記粘度測定部が測定した前記塗料の粘度と、前記温度測定部が測定した前記塗料の温度と、前記移動速度検出手段が測定した塗布ヘッドの移動速度と、に基づいて、前記被塗装物の外周面に形成された前記塗膜の厚みを推定して該塗膜の良否を判定する制御部であることを特徴としている。
【0020】
請求項13に記載の塗膜形成装置は、請求項1乃至請求項12のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置において、前記塗布ヘッドの全周に亘って、該塗布ヘッドに取り付けられているとともに、冷媒を循環する冷媒循環部と、前記冷媒循環部内の冷媒の温度を一定に保つ熱交換機と、を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項14に記載の塗膜形成装置は、請求項1乃至請求項13のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置において、前記塗布ヘッドの上方でかつ該塗布ヘッドと同軸に配置されて、前記被塗装物に塗布された塗料を加熱可能な円環状に形成された加熱部を備えたことを特徴としている。
【0022】
請求項15に記載の塗膜形成装置は、請求項14に記載の塗膜形成装置において、前記加熱部が、赤外線を輻射する赤外線発生源と、前記被塗装物と相対する開口部が少なくとも設けられて、前記赤外線発生源からの赤外線を前記被塗装物の外周面に塗布された塗料に向かって反射する円環の箱状に形成された反射部材と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に記載の塗膜形成装置によれば、移動支持部が支持ベースに対して塗布ヘッドを軸芯に直交する方向に移動自在とし、かつ塗布ヘッドの内周面の全周に弾性変形自在なシール部材を設けているので、該シール部材の弾性復元力によって、該シール部材の弾性復元力が周方向に均一となる位置に塗布ヘッドが位置付けられる。そのために、シール部材が被塗装物を押圧する力が周方向に均一となって、該シール部材の押圧する力が一部に集中することを防止でき、被塗装物が薄肉であっても、該被塗装物が変形することを防止でき、しかも、前述したシール部材の弾性復元力によって、塗布ヘッドと被塗装物との間隔が周方向に均一となるので、被塗装物の外周に一定の厚みの塗膜を形成できるとともに、よって、比較的薄肉で変形しやすい被塗装物の外周にも一定の厚みの塗膜を容易に形成することができる。
【0024】
請求項2に記載の塗膜形成装置によれば、支持ベースのベース本体と塗布ヘッドとの間と、支持ベースの外縁凸部と塗布ヘッドとの間とにそれぞれ転動体を設けているので、塗布ヘッドを軸芯に対して直交する方向に確実に移動自在とでき、そのために、塗布ヘッドと被塗装物との間隔を周方向に均一とできるとともに、塗布ヘッドが支持ベースに対して軸芯に沿って移動することを防止でき、しかも、被塗装物の外周面の塗料に浸漬される時間が軸芯に沿ってばらつくことを防止でき、したがって、被塗装物の外周に一定の厚みの塗膜を形成できる。
【0025】
請求項3に記載の塗膜形成装置によれば、制御部が塗布ヘッドを移動自在として基準位置決め部材で塗布ヘッドの位置決めを行うので、被塗装物との間隔が周方向に均一となる位置に塗布ヘッドを位置決めすることができる。また、塗布ヘッドを位置決めした後、塗布ヘッドを支持ベースに対して固定するので、塗布ヘッドが位置ずれすることを防止できる。よって、被塗装物の外周に一定の厚みの塗膜を形成できる。
【0026】
請求項4に記載の塗膜形成装置によれば、移動固定部が支持ベースに固定された電磁石を備えているので、支持ベースに対して塗布ヘッドを確実に固定できるとともに、塗布ヘッドが一旦位置決めされた位置からずれることを防止でき、しかも、該支持ベースに対して塗布ヘッドを移動自在にすることができる。
【0027】
請求項5に記載の塗膜形成装置によれば、保持部がマンドレルと一対の保持部材とを備えているので、被塗装物を確実に支持することができる。
【0028】
請求項6に記載の塗膜形成装置によれば、マンドレルが被塗装物の両端を内側から支持する一対の円盤部材と、該円盤部材同士を連結する該円盤部材よりも小径の軸部材とを備えているので、円盤部材のみが被塗装物と接触することとなって、マンドレルと被塗装物との接触面積を抑制することができ、そのために、マンドレルに被塗装物を取り付ける際に、該被塗装物に無理な力が作用することを防止でき、被塗装物が薄肉であっても該被塗装物の変形を防止できる。
【0029】
また、円盤部材で被塗装物の両端を支持するだけであるので、加熱手段などで加熱する際の熱容量が小さくできるとともに、瞬時に塗料を乾燥できて該塗料の液垂れを防止することができる。
【0030】
請求項7に記載の塗膜形成装置によれば、円盤部材の外径が被塗装物の内径より大きくなっているので、被塗装物を円盤部材で確実に保持でき、かつ、被塗装物の内側に塗料が入り込むのを防ぐことができる。
【0031】
請求項8に記載の塗膜形成装置によれば、保持部材が両端部にシール部材を備えているので、該シール部材がその変形により被塗装物の内側との間をシールすること(水密に保つこと)ができ、そのために、被塗装物内部への塗料の入り込みを防ぐことができる。
【0032】
請求項9に記載の塗膜形成装置によれば、一方の保持部材がシール部材を備え、他方の保持部材がテーパ部を設けているので、被塗装物の内部への塗料の浸入を防止できる。また、テーパ部による線接触により被塗装物が他方の保持部材から抜きやすくなるので、被塗装物に無理な力が作用することを防止できる。
【0033】
請求項10に記載の塗膜形成装置によれば、塗布ヘッド内と塗料の液面を検出する計測手段を備えているので、塗布ヘッド内と塗料の液面を一定に保つことが可能で高精度な厚み塗膜を形成することが可能となる。
【0034】
請求項11に記載の塗膜形成装置によれば、塗料を貯める収容容器もしくは収容容器から塗布ヘッドに塗料を供給する供給管の内部に塗料の粘度を測定する粘度測定部を備えているので、塗膜の厚みを一定に管理することが可能となる。
【0035】
請求項12に記載の塗膜形成装置によれば、塗料の粘度と、該塗料の温度と、塗布ヘッドの移動速度を測定でき、しかも、これらの測定した値に基づいて塗膜の厚みを演算する制御部を有しているので、塗膜の良否を判定でき、そのために、規格外の厚みになる可能性のある場合に警報を発することが可能となって、不良品の流出を抑えることが可能となる。
【0036】
請求項13に記載の塗膜形成装置によれば、塗布ヘッドの周りに冷媒を流す冷媒循環部と冷媒を一定の温度に保つ熱交換機を備えているので、塗料の温度が上昇して該塗料の粘度が変化することを防止でき、そのために、高精度な膜厚を形成することができる。
【0037】
請求項14に記載の塗膜形成装置によれば、塗布ヘッドの上方に被塗装物と同心円状の加熱部を備えているので、塗膜を周方向に均一に乾燥させることが可能となるとともに、塗膜の垂れを防止でき、しかも、塗膜にひびなどが生じることを防止できる。
【0038】
請求項15に記載の塗膜形成装置によれば、加熱部が赤外線を輻射する赤外線発生源と、該赤外線を被塗装物に向けて反射する反射部材を備えているので、塗装中のみ加熱することが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の一実施形態を、図1乃至図5、図8及び図9を参照して説明する。なお、図1は本発明に係る一実施形態の塗膜形成装置の構成図であり、図2は図1に示された塗膜形成装置の塗布ヘッドなどの断面図、図3は図1に示された塗膜形成装置の保持部の縦断面図である。
【0040】
図1に示された塗膜形成装置1は、コピー機などの画像形成装置を構成する定着ベルト2(図8に示す)のプライマ層3(図9に示す)と弾性層5とが形成された被塗装物としての基体4に塗膜としての離型層6を形成する装置である。
【0041】
定着ベルト2は、図8に示すように、無端状に形成されている。定着ベルト2は、図9に示すように、ポリイミド、Niなどで構成された無端ベルト状の基体4と、プライマ層3と、シリコーンゴムなどの耐熱性ゴムで構成された弾性層5と、プライマ層3と、フッ素樹脂で構成された離型層6とが順に積層されて構成されている。弾性層5の厚みTは、100〜300μm程度に形成されている。離型層6の厚みは、20〜30μm程度に形成されている。前述した離型層6が形成される前の被塗装物としての基体4の前述したプライマ層3と合わせた厚みは、200μm〜400μm程度に形成されている。即ち、前述した基体4は、全体として比較的薄肉で変形しやすくなっている。
【0042】
また、プライマ層3と弾性層5と離型層6は、基体4の幅方向の一端部(塗膜形成装置1によって後述の塗料7が塗布される際には上端部)4aと、基体4の幅方向の他端部(塗膜形成装置1によって塗料7が塗布される際には下端部)4bとに亘って形成されている。前述した定着ベルト2は、加熱されてトナーを転写紙に押圧して、該トナーを転写紙に定着させる。
【0043】
塗膜形成装置1は、表面にプライマ層3と弾性層5とが形成された基体4(特許請求の範囲の被塗装物に相当)の外表面即ち前述したプライマ層3上に、前述したフッ素樹脂と周知の溶媒などを含んだ塗料7(図2に示す)を塗布して、前述した離型層6を形成する。
【0044】
塗膜形成装置1は、図1に示すように、装置本体10と、保持部11と、移動部12と、塗布ユニット13と、基準位置決め機構14と、塗料供給部15と、冷却部16と、送風部17と、制御部としての制御装置18とを備えている。
【0045】
装置本体10は、工場のフロア上などに設置される。装置本体10は、複数の水平板19と、一つの鉛直板20と、複数の連結柱21と、を備えている。水平板19は、三つ設けられている。水平板19は、それそれ両表面が水平方向と平行に配置されている。水平板19は、互いに鉛直方向に沿って、互いに間隔をあけて配置されている。鉛直板20は、両表面が鉛直方向と平行に配置されている。鉛直板20は、最も下方に配置された水平板19と、最も上方に配置された水平板19とを連結している。中央に位置する水平板19は、鉛直板20の中央部に連なっている。連結柱21は、四角柱状に形成され、かつ、複数の水平板19同士を連結している。
【0046】
保持部11は、図1に示すように、マンドレル22(図3に示す)と、一対の保持部材23と、一つの保持棒24と、一つのチャックシリンダ25と、を備えている。マンドレル22は、図3に示すように、一対の円盤部材26と、一つの軸部材27とを備えている。円盤部材26は、それぞれ、勿論、厚手の円盤状に形成されている。円盤部材26の外径は、基体4の内径よりも若干大きく形成されている。軸部材27は、円柱状に形成され、かつ、その外径が円盤部材26の外径と基体4の内径より小さく形成されている。軸部材27は、一対の円盤部材26と同軸に配置されているとともに、該一対の円盤部材26同士を連結している。マンドレル22は、前述した基体4内に圧入されて、円盤部材26が基体4の両端を内側から支持することとなる。
【0047】
保持部材23は、それぞれ、全体として圧肉の円筒状に形成されている。保持部材23は、厚手の円筒状の部材本体28と、一対のシール部材29とを備えている。シール部材29は、ゴムなどの弾性変形自在な合成樹脂で構成されている。シール部材29は、円環状に形成されているとともに、図3に示すように、保持部材23の基体4内に挿入される両端部に全周に亘って埋設されている。保持部材23は、それぞれ、マンドレル22が圧入された基体4の両端内に一方のシール部材29が圧入される。保持部材23は、シール部材29が弾性変形して、該シール部材29が基体4との間を水密に保つ。
【0048】
保持棒24は、円柱状に形成され、かつ三つの水平板19のうちの中央に配置された水平板19から立設した状態で該水平板19に固定されている。保持棒24は、その軸芯が鉛直方向と平行に配置され、かつ、その上端部が上方に向かうにしたがって徐々に先細に形成されている。
【0049】
チャックシリンダ25は、シリンダ本体30と、該シリンダ本体30から凸没自在なロッド31とを備えている。シリンダ本体30は、鉛直方向に沿って下方に向かってロッド31が伸長する状態で、最も上方に位置する水平板19に取り付けられている。ロッド31は、円柱状に形成され、かつその軸芯が鉛直方向と平行に配置されているとともに、その下端部が下方に向かうにしたがって徐々に先細に形成されている。ロッド31は、鉛直方向に沿って、保持棒24と間隔をあけて相対する位置(保持棒24と同軸となる位置)に配置されている。
【0050】
保持棒24とチャックシリンダ25は、該チャックシリンダ25のロッド31が伸長することで、互いの間に挟んだ一対の保持部材23とマンドレル22とが互いに近づく方向に、これらの一対の保持部材23とマンドレル22を押圧する。保持棒24とチャックシリンダ25は、特許請求の範囲に記載された押圧部をなしている。
【0051】
前述した保持部11は、マンドレル22が基体4内に圧入されかつ該基体4の両端内に保持部材23が圧入されて、これらの基体4とマンドレル22と保持部材23を、保持棒24とチャックシリンダ25との間に配置して、該チャックシリンダ25のロッド31を伸長させる。そして、保持部11は、保持棒24とチャックシリンダ25のロッド31との間に、保持部材23を介してマンドレル22を挟んで、前述した基体4を保持する。
【0052】
保持部11が、基体4を保持すると、基体4の軸芯P(図1中に一点鎖線で示す)が、鉛直方向と平行になる。保持部11が、基体4を保持すると、該基体4の外周面4cが円筒面状(軸芯Pに直交する方向の断面形が円弧状)となる。このように、保持部11は、軸芯Pが鉛直方向と平行な状態で基体4を保持する。また、保持部11は、チャックシリンダ25のロッド31を伸長して、前述したマンドレル22などを介して基体4を保持するとともに、チャックシリンダ25のロッド31を縮小して、マンドレル22などを介して基体4を着脱自在とする。さらに、保持部11は、基体4を保持する際には、勿論、基体4の外周面4cを露出させる。
【0053】
移動部12は、図2に示すように、リニアアクチュエータ32と、移動速度検出手段としてのリニアエンコーダ33などを備えている。リニアアクチュエータ32は、長手方向が鉛直方向と平行な状態で鉛直板20に取り付けられたレールと、該レールの長手方向即ち鉛直方向に沿ってレールに対し移動するスライダとを備えている。スライダには、後述する支持ベース34が取り付けられている。
【0054】
リニアアクチュエータ32即ち移動部12は、支持ベース34を介して塗布ヘッド37を昇降させる。即ち、リニアアクチュエータ32即ち移動部12は、保持部11と支持ベース34即ち塗布ヘッド37とを前記軸芯Pに沿って相対的に移動させる。リニアエンコーダ33は、前述したスライダ即ち塗布ヘッド37の移動速度を検出して、該移動速度に応じた情報を制御装置18に向けて出力する。
【0055】
塗布ユニット13は、図2に示すように、支持ベース34と、移動支持部35と、移動固定部36と、塗布ヘッド37と、加熱部38と、チャックシリンダ39と、を備えている。
【0056】
支持ベース34は、平板状に形成されたベース本体40を備えている。ベース本体40は、リニアアクチュエータ32のスライダに取り付けられている。支持ベース34のベース本体40は、その両表面が水平方向と平行に配置されている。即ち、ベース本体40即ち支持ベース34の表面は、軸芯Pに対して直交する方向に沿って平坦に形成されている。支持ベース34は、後述する玉41を介して、塗布ヘッド37を支持している。支持ベース34は、塗布ヘッド37の下方に配置される。
【0057】
移動支持部35は、支持ベース34のベース本体40上に転動自在に設けられた第1転動体としての玉41を複数備えている。玉41上には塗布ヘッド37が配置される。即ち、玉41は、支持ベース34のベース本体40と塗布ヘッド37との間に配置されて、これらの双方に対して転動自在となる。移動支持部35は、玉41が前述した双方に対して転動することで、支持ベース34上に前述した軸芯Pに対し直交する方向に沿って、塗布ヘッド37を移動自在に支持する。
【0058】
移動固定部36は、支持ベース34のベース本体40に取り付けられた複数の電磁石42を備えている。電磁石42は、電圧が印加されると、磁力を生じて、支持ベース34のベース本体40に塗布ヘッド37を吸引して、該塗布ヘッド37を支持ベース34のベース本体40に固定する。移動固定部36は、電磁石42に印加されないと、支持ベース34のベース本体40に対して塗布ヘッド37を移動自在とする第1の状態となる。移動固定部36は、電磁石42に印加されることで、支持ベース34のベース本体40に対して塗布ヘッド37を固定する第2の状態となる。移動固定部36は、電磁石42に印加されるか否かで、第1の状態と第2の状態とが切り換え可能である。
【0059】
塗布ヘッド37は、図2に示すように、ヘッド本体43と、蓋体44とを備えている。ヘッド本体43は、円環状の底板部45と、該底板部45の外縁の全周から立設した外周壁46と、底板部45の内縁の全周から立設した内周壁47とを備えている。底板部45即ちヘッド本体43の内径は、基体4の外径よりも大きい。外周壁46の底板部45からの高さが、内周壁47の底板部45からの高さよりも高い。内周壁47の内面には、底板部45から上方に向かうにしたがって、徐々に底板部45の内側に向かう方向に傾斜した傾斜面48が形成されている。
【0060】
蓋体44は、円環状の蓋本体49と、仕切壁50とを備えている。蓋本体49は、内外径がヘッド本体43の底板部45と略等しく形成されている。蓋本体49即ち蓋体44は、その外縁部がヘッド本体43の外周壁46に重ねられて、該ヘッド本体43に取り付けられる。蓋体44は、ヘッド本体43の塗料の溶媒などが揮発することを防止するとともに、ヘッド本体43内の塗料7にゴミなどの異物が侵入することを防止する。蓋本体49の内縁は、内周壁47と間隔をあける。このため、塗布ヘッド37は、その内周面の上端部が全周に亘って切り欠かれている。即ち、塗布ヘッド37は、その内周面の上端部に内外を連通する開口部が設けられている。
【0061】
仕切壁50は、円筒状に形成され、蓋体44と同軸に配置されている。仕切壁50は、蓋本体49の内縁と外縁との間の中央部から底板部45に向かって立設している。仕切壁50の蓋本体49からの高さは、外周壁46の底板部45からの高さよりも低い。このため、仕切壁50は、ヘッド本体43の底板部45と間隔をあけて相対している。仕切壁50は、ヘッド本体43と蓋本体49とで囲まれる塗布ヘッド37内の空間51を、二つに仕切っている。仕切壁50は、塗料供給部15によって供給される際などに塗布ヘッド37内の塗料7に生じた気泡と干渉して、該気泡が基体4側に移動して該基体4に付着することを防止する。
【0062】
前述した塗布ヘッド37は、ヘッド本体43と蓋体44との間に囲まれる前述した空間51内に前述した塗料7を収容する。塗布ヘッド37は、塗料供給部15によって、液面7aが内周壁47よりも上方に位置するまで、塗料7が供給される。また、塗布ヘッド37のヘッド本体43の内周壁47の内面即ち塗布ヘッド37の内周面には、全周に亘ってシール部材52が取り付けられている。シール部材52は、ゴムなどの弾性変形自在な合成樹脂で構成されており、円環状に形成されている。シール部材52の厚みは、周方向に一定に形成されている。シール部材52は、塗布ヘッド37と同軸に配置されている。シール部材52の弾性変形していない中立状態(図2中に二点鎖線で示す)での内径は、基体4の外径よりも小さい。
【0063】
このため、シール部材52は、塗布ヘッド37内に通された基体4に当接して、該基体4を通すことができる状態(図2中に実線で示す)まで弾性変形する。シール部材52は、前述したように弾性変形すると、基体4の外周面4cを該基体4の径方向に沿って内側に押圧するとともに、該基体4の外周面4cとの間を水密に保つ。即ち、シール部材52は、基体4との間から塗布ヘッド37内の塗料7が該塗布ヘッド37外に漏れることを防止する。なお、シール部材52自体が円環状に形成されているので、塗布ヘッド37を支持ベース34に対して移動自在とすると、シール部材52の基体4の外周面4cを押圧する力は、該基体4の周方向に均一となる。
【0064】
塗布ヘッド37は、ヘッド本体43内に基体4を通すことで、該基体4の外周面4cをヘッド本体43の塗料7に浸漬させて、図2中の平行斜線で示すように、外周面4cに塗膜としての離型層6を形成する。
【0065】
また、塗布ヘッド37内には、図2に示すように、計測手段としての液面検知センサ53と、温度測定部としての温度センサ54とが設けられている。液面検知センサ53は、蓋体44の蓋本体49に取り付けられ、塗布ヘッド37内に収容された塗料7の液面7aに向かって超音波などを照射することで、該液面7aの高さを計測する。液面検知センサ53は、塗布ヘッド37内の塗料7の液面7aの高さを示す情報を制御装置18に向けて出力する。
【0066】
温度センサ54は、ヘッド本体43の内面などに取り付けられ、塗布ヘッド37内に収容された塗料7の温度を計測する。温度センサ54は、塗布ヘッド37内の塗料7の温度を示す情報を制御装置18に向けて出力する。
【0067】
加熱部38は、図2に示すように、ブラケット55と、反射部材56と、赤外線発生源としてのハロゲンヒータ57と、を備えている。ブラケット55は、支持ベース34のベース本体40から立設した立設部58と、該立設部58の上端から塗布ヘッド37の上方に向かって水平方向に延びた水平延在部59と、を備えている。
【0068】
反射部材56は、ブラケット55の水平延在部59の先端に取り付けられており、平面形状が円環の箱状に形成されている。反射部材56即ち加熱部38は、支持ベース34のベース本体40即ち塗布ヘッド37と同軸に配置されている。反射部材56の塗布ヘッド37の内側を通る基体4と相対する内縁部には、反射部材56の内外を連通した開口部60が、全周に亘って設けられている。反射部材56の他の部分の全ては、塞がれている。このように、反射部材56は、基体4と相対する開口部60が少なくとも設けられている。反射部材56は、その内側に収容するハロゲンヒータ57が輻射した赤外線を、開口部60を通して、被塗装物としての基体4に向かって反射する。
【0069】
ハロゲンヒータ57は、円環状に形成され、反射部材56内に収容されている。ハロゲンヒータ57は、支持ベース34のベース本体40と反射部材56などと同軸に配置されている。ハロゲンヒータ57は、赤外線を輻射する。
【0070】
前述した加熱部38は、塗布ヘッド37内を通って、該塗布ヘッド37によって浸漬されて基体4の外周面4cに塗布された塗料7を加熱して、該塗料7を乾燥させて、前述した離型層6の形成を促進する。
【0071】
チャックシリンダ39は、シリンダ本体61と、一対の接離ロッド62とを備えている。シリンダ本体61即ちチャックシリンダ39は、支持ベース34の下方に配置されかつ該支持ベース34に固定されている。一対の接離ロッド62は、それぞれ、棒状に形成され、互いに間隔をあけて平行に配置されている。一対の接離ロッド62は、互いの間に塗布ヘッド37内を通される基体4や保持部材23を位置付ける位置に配置されている。接離ロッド62は、互いに接離自在となっている。チャックシリンダ39は、一対の接離ロッド62同士を互いに近づけることで、該一対の接離ロッド62間に保持部材23を挟む。
【0072】
前述した塗布ユニット13は、移動部12によって、徐々に降下されることで、上端部4aから下端部4bに向かって基体4を通す。そして、塗布ユニット13は、上端部4aから下端部4bに向けて基体4の外周面4cを順に浸漬させることで、該基体4の外周面4cに塗膜としての離型層6を形成する。また、塗布ユニット13の塗布ヘッド37は、移動支持部35によって軸芯Pに直交する方向に沿って移動自在に設けられているので、シール部材52の弾性復元力によって、常に基体4と同軸に配置される。なお、前述した塗布ユニット13の塗布ヘッド37と基体4との軸芯のずれを0.1mmから0.2mm程度にすることができる。
【0073】
基準位置決め機構14は、図1に示すように、ロータリシリンダ63と、旋回アーム64と、基準位置決め部材としてのマスタマンドレル65とを備えている。ロータリシリンダ63は、シリンダ本体66と、該シリンダ本体66に対して回転自在に設けられたロッドとを備えている。シリンダ本体66は、鉛直板20に取り付けられている。ロッドの軸芯は、鉛直方向と平行である。
【0074】
旋回アーム64は、一端がロータリシリンダ63のロッドに固定された帯板状に形成されている。マスタマンドレル65は、外径が基体4の外径と等しい円柱状に形成されている。マスタマンドレル65は、旋回アーム64の他端に取り付けられている。マスタマンドレル65の軸芯は、前述した基体4の軸芯P即ち鉛直方向と平行である。
【0075】
前述した構成によって、基準位置決め機構14は、ロータリシリンダ63のロッドが回転することで、マスタマンドレル65を、保持部11によって位置決めされる良品の基体4と同じ位置の調整位置(図1中に二点鎖線で示す)と、塗布ヘッド37から離れた(退避した)退避位置とに亘って、移動自在とする。調整位置では、マスタマンドレル65は、基体4と同じ位置に位置付けられるので、塗布ヘッド37内に侵入可能となる。基準位置決め機構14は、前述した第1の状態の塗布ヘッド37内に調整位置のマスタマンドレル65を通すことで、該マスタマンドレル65にシール部材52が当接(干渉)することで、塗布ヘッド37を支持ベース34に対する基準となる位置に、該塗布ヘッド37を位置付ける。なお、基準となる位置とは、塗布ヘッド37内を通る基体4の外周面4cをシール部材52が押圧する力が周方向に均一となって、塗布ヘッド37の内縁と基体4の外周面4cとの間隔が周方向に均一となって、塗布ヘッド37が周方向に均一の厚みの離型層6を形成できる位置を示している。
【0076】
塗料供給部15は、図1に示すように、収容容器としての塗料タンク67と、攪拌用モータ68と、図示しない送液用ポンプと、粘度測定部としての粘度計69と、供給管70(図2に示す)とを備えている。塗料タンク67は、装置本体10の最も下方の水平板19上に設置されている。塗料タンク67は、前述した塗料7を収容する。攪拌用モータ68は、塗料タンク67に固定されているとともに、その塗料タンク67内に位置付けられた出力軸に羽根車が取り付けられている。攪拌モータ68は、塗料タンク67内の塗料7を攪拌して、該塗料7の粘度にむらが生じることを防止する。
【0077】
送液用ポンプは、塗料タンク67内の塗料7を、供給管70を通して塗布ヘッド37のヘッド本体43内に送り出す。粘度計69は、塗料タンク67内に設けられ、該塗料タンク67内の塗料7の粘度を測定可能である。粘度計69は、塗料タンク67内の塗料7の粘度を示す情報を制御装置18に向けて出力する。供給管70は、塗料タンク67と、塗布ヘッド37のヘッド本体43とを連結している。
【0078】
前述した塗料供給部15は、送液用ポンプが塗料タンク67内の塗料7を塗布ヘッド37のヘッド本体43内に送り出すことで、液面7aが内周壁47を上回るように、塗布ヘッド37内に前述した塗料7を供給する。
【0079】
冷却部16は、冷媒循環部としての冷媒循環用の配管71(図2に示す)と、熱交換機としての冷却水循環装置72(図1に示す)とを備えている。配管71は、塗布ヘッド37のヘッド本体43の外周壁46の外周面の全周に亘って、該塗布ヘッド37の外周壁46に取り付けられている。配管71は、冷媒としての水を通して、該水を塗布ヘッド37の外周に循環する。配管71は、水を循環することで、塗布ヘッド37内の塗料を冷却又は加熱する。
【0080】
冷却水循環装置72は、最も下方の水平板19上に設置されている。冷却水循環装置72は、配管71内の水を一旦溜めて、該水の熱を外部の熱と交感して、該水を所望の温度に冷却又は加熱する。そして、冷却水循環装置72は、冷却又は加熱した水を再度配管71内に送り出す。こうして、冷却水循環装置72は、配管71内の冷媒としての水の温度を一定に保つことで、前述した塗布ヘッド37内の塗料7を冷却又は加熱して、該塗料7の温度を一定に保つ。
【0081】
送風部17は、図1に示すように、入口ダクト73と、図示しない送風機と、出口ダクト74と、図示しない真空ポンプとを備えている。入口ダクト73は、最も上方の水平板19を貫通している。送風機は、入口ダクト73内に空気を送り出す。出口ダクト74は、鉛直板20を貫通している。真空ポンプは、出口ダクト内の空気を吸引する。前述した送風部17は、送風機から空気を送り出し、真空ポンプで空気を吸引することで、図1中の矢印Cに沿って、空気を流して、塗布ヘッド37内の塗料7から揮発した溶媒が拡散することを防止する。
【0082】
制御装置18は、周知のRAM、ROM、CPUなどを備えたコンピュータである。制御装置18は、図1に示すように、鉛直板20の上端部と最も上方の水平板19との双方に取り付けられている。制御装置18は、保持部11と、移動部12と、塗布ユニット13と、基準位置決め機構14と、塗料供給部15と、冷却部16と、送風部17とに接続しており、これらを制御して、塗膜形成装置1全体の制御を司る。即ち、制御装置18には、移動部12のリニアエンコーダ33からの情報が入力するとともに、リニアエンコーダ33からの情報などに基づいて、各部位を制御する。
【0083】
制御装置18には、起動スイッチ75と、各種の操作スイッチ76が取り付けられている。起動スイッチ75は、塗膜形成装置1全体のオン・オフを切り換えるために用いられる。操作スイッチ76は、塗膜形成装置1全体の操作を行うために用いられる。制御装置18は、操作スイッチ76によって、塗膜形成装置1全体を、塗布ヘッド位置決めモードと、通常塗布モードとに切り換えて動作させる。
【0084】
塗布ヘッド位置決めモードは、塗布ヘッド37内を清掃して、該塗布ヘッド37を再度組み付ける際などの各種の段取り作業が行われた後に動作されるモードである。塗布ヘッド位置決めモードでは、まず、図4(a)に示すように、制御装置18は、支持ベース34のベース本体40上に塗布ヘッド37が重ねられると、電磁石42に印加して、該支持ベース34に塗布ヘッド37を仮固定する。即ち、塗布ヘッド37を支持ベース34に固定した前述した移動固定部36を第2の状態にする。そして、制御装置18は、勿論、加熱部38のハロゲンヒータ57をオフとしたまま、チャックシリンダ39の一対の接離ロッド62を互いに離した状態で、移動部12に支持ベース34を最も上方に位置付けさせる。
【0085】
そして、制御装置18は、基準位置決め機構14にマスタマンドレル65を調整位置に位置付けさせる。すると、図4(b)に示すように、塗布ヘッド37の下方にマスタマンドレル65が位置付けられる。そして、制御装置18は、移動部12に塗布ヘッド37を徐々に降下させる。すると、塗布ヘッド37内にマスタマンドレル65が侵入するとともに、該マスタマンドレル65にシール部材52が当接する。このように、制御装置18は、移動部12にマスタマンドレル65を塗布ヘッド37内に通させる。そして、制御装置18は、リニアエンコーダからの情報に基づいて、図4(c)に示すように、シール部材52がマスタマンドレル65の軸芯方向に中央に位置付けられたと判定すると、移動部12を停止する。
【0086】
その後、制御装置18は、電磁石42に電圧を印加しなくなって(電磁石42をオフにして)、移動支持部35によって支持ベース34に対して塗布ヘッド37が移動自在となる第1の状態に移動固定部36を切り換える。すると、シール部材52の弾性復元力によって、シール部材52がマスタマンドレル65即ち基体4の外周面4cを押圧する力が該基体4の周方向に均一となる位置に、塗布ヘッド37が位置付けられる。そして、制御装置18は、移動固定部36を一旦第1の状態に切り換えてから所定の時間が経過すると、移動固定部36を再度第2の状態に切り換えて電磁石42に再度印加して、塗布ヘッド37を支持ベース34に固定する。そして、制御装置18は、移動部12に塗布ヘッド37を上昇させて、該塗布ヘッド37を最も上方に位置付けさせる。
【0087】
すると、塗布ヘッド37内からマスタマンドレル65が抜け出る。制御装置18は、塗布ヘッド37が最も上方に位置付けられた後、基準位置決め機構14のマスタマンドレル65を退避位置に位置付ける。こうして、制御装置18は、塗布ヘッド位置決めモードにおいて、塗布ヘッド37を、支持ベース34に対して基準となる位置に位置決めする。
【0088】
通常塗布モードは、塗布ヘッド37内に基体4を通して、該塗布ヘッド37を降下させることで、基体4の外周面4cを上端部4aから下端部4bに向かって順に塗料7を塗布して、離型層6を形成するモードである。通常塗布モードでは、まず、制御装置18は、加熱部38を停止したまま、図5(a)に示すように、チャックシリンダ25のロッド31を縮小させて、移動部12に塗布ヘッド37を最も上方に位置付けさせる。このとき、塗布ヘッド37内に保持部材23を通しておくとともに、チャックシリンダ39の一対の接離ロッド62同士を近づけて、該一対の接離ロッド62で保持部材23を挟んでおく。また、制御装置18は、塗料供給部15に塗料7を塗布ヘッド37内に供給させる。このとき、シール部材52が保持部材23との間を水密に保つこととなるので、塗布ヘッド37と保持部材23との間から塗料7が漏れることがない。
【0089】
図5(b)に示すように、塗布ヘッド37が最も上方に位置付けられた状態で、マンドレル22が圧入され一端に保持部材23が圧入された基体4が保持棒24と、チャックシリンダ25のロッド31との間に位置付けられる。制御装置18は、保持棒24と、チャックシリンダ25のロッド31との間に基体4と一対の保持部材23が位置付けられると、チャックシリンダ25のロッド31を伸長させる。すると、図5(c)に示すように、保持棒24とチャックシリンダ25のロッド31との間に保持部材23とマンドレル22などを挟んで、保持部11が基体4を軸芯が鉛直方向と平行に状態で保持する。さらに、制御装置18は、チャックシリンダ39の一対の接離ロッド62同士を互いに離す。
【0090】
そして、制御装置18は、加熱部38を動作させて、移動部12に塗布ヘッド37を徐々に降下させる。すると、基体4の外周面4cに上端部4aから下端部4bに向かって順に塗料7が塗布されて、加熱部38によって加熱されて、速やかに乾燥して、該塗料7が液だれすることなく、離型層6が形成される。
【0091】
図5(d)に示すように、制御装置18は、リニアエンコーダ33からの情報に基づいて、塗布ヘッド37が最も下方に位置付けられたと判定すると、移動部12を停止する。そして、制御装置18は、加熱部38を停止するとともに、チャックシリンダ25のロッド31を縮小する。そして、図5(d)に示すように、離型層6が形成された基体4と、基体4を支持したマンドレル22と、上方に位置した保持部材23とが取り除かれた後、制御装置18は、チャックシリンダ39の一対の接離ロッド62同士を互いに近づけて、残った保持部材23毎塗布ヘッド37を上昇させて、先ほどの図5(a)に戻って、前述した工程と同様に、基体4を塗装する。
【0092】
また、制御装置18は、通常塗布モードでは、送風部17の送風機と真空ポンプとを動作させておく。さらに、制御装置18は、通常塗布モードでは、液面検知センサ53からの情報に基いて、塗布ヘッド37内の液面が常に内周壁47を上回る一定の高さを維持するように、塗料供給部15に塗料7を塗布ヘッド37内に供給させる。また、制御装置18は、通常塗布モードでは、前述した冷却部16に冷媒としての水の温度を一定に保たせて、前述した塗布ヘッド37内の塗料7の温度を一定に保つ。
【0093】
さらに、制御装置18は、通常塗布モードでは、前述した温度センサ54が検出した塗布ヘッド37内の塗料7の温度と、粘度計69が検出した塗料7の粘度と、リニアエンコーダが検出した塗布中の塗布ヘッド37の移動速度とに基づいて、塗膜としての離型層6の厚みを推定して該塗膜としての離型層6の良否を判定する機能を有している。そして、制御装置18は、形成した離型層6の厚み即ち推定した厚みが、予め定められた良品とされる所望の範囲内であるか否かを判定する。制御装置18は、不良品であると判定すると、該制御装置18に接続した警報器に不良品が形成された旨を示す警報を該警報器から発する。
【0094】
本実施形態によれば、移動支持部35が支持ベース34に対して塗布ヘッド37を軸芯Pに直交する方向に移動自在とし、かつ塗布ヘッド37の内縁の全周に弾性変形自在なシール部材52を設けているので、該シール部材52の弾性復元力によって、該シール部材52の弾性復元力が周方向に均一となる位置に塗布ヘッド37が位置付けられる。そのために、シール部材52が被塗装物としての基体4を押圧する力が周方向に均一となって、該シール部材52の押圧する力が一部に集中することを防止でき、被塗装物としての基体4が薄肉であっても、該基体4が変形することを防止できる。
【0095】
前述したシール部材52の弾性復元力によって、塗布ヘッド37と基体4との間隔が周方向に均一となるので、基体4の外周面4cに一定の厚みの離型層6を形成できる。よって、比較的薄肉で変形しやすい基体4の外周にも一定の厚みの離型層6を容易に形成することができる。
【0096】
制御装置18が塗布ヘッド37を移動自在としてマスタマンドレル65で塗布ヘッド37の位置決めを行うので、基体4との間隔が周方向に均一となる位置に塗布ヘッド37を位置決めすることができる。また、塗布ヘッド37を位置決めした後、塗布ヘッド37を支持ベース34に対して固定するので、塗布ヘッド37が位置ずれすることを防止できる。よって、基体4の外周面4cに一定の厚みの塗膜を形成できる。
【0097】
移動固定部36が支持ベース34に固定された電磁石42を備えているので、支持ベース34に対して塗布ヘッド37を確実に固定でき、塗布ヘッド37が一旦位置決めされた位置からずれることを防止できるとともに、該支持ベース34に対して塗布ヘッド37を確実に移動自在にすることができる。
【0098】
保持部11がマンドレル22と一対の保持部材23とを備えているので、基体4を確実に支持することができる。
【0099】
マンドレル22が基体4の両端を内側から支持する一対の円盤部材26と、該円盤部材26同士を連結する該円盤部材26よりも小径の軸部材27とを備えている。そのために、円盤部材26のみが基体4と接触することとなり、マンドレル22と基体4との接触面積を抑制することができる。よって、マンドレル22に基体4を取り付ける際に、該基体4に無理な力が作用することを防止でき、基体4が薄肉であっても該基体4の変形を防止できる。
【0100】
また、円盤部材26で基体4の両端を支持するだけであるので、加熱部38などで加熱する際の熱容量が小さくでき、瞬時に塗料7を乾燥できて該塗料7の液垂れを防止することができる。
【0101】
円盤部材26の外径が基体4の内径より大きくなっているので、基体4を円盤部材26で確実に保持でき、かつ、基体4の内側に塗料が入り込むのを防ぐことができる。
【0102】
保持部材23が両端部にシール部材29を備えているので、該シール部材29がその変形により基体4の内側との間をシールすること(水密に保つこと)で、基体4内部への塗料7の入り込みを防ぐことができる。
【0103】
塗布ヘッド37内の塗料7の液面7aを検出する液面検知センサ53を備えているので、塗布ヘッド37内の塗料7の液面7aを一定に保つことが可能で高精度な厚み塗膜としての離型層6を形成することが可能となる。
【0104】
塗料7を貯める塗料タンク67の内部に塗料7の粘度を測定する粘度計69を備えているので、塗膜としての離型層6の厚みを一定に管理することが可能となる。
【0105】
塗料7の粘度と、該塗料7の温度と、塗布ヘッド37の移動速度を測定でき、これらの測定した値に基づいて離型層6の厚みを演算する制御装置18を有しているので、離型層6の良否を判定でき、規格外の厚みになる可能性のある場合に警報を発することが可能で、不良品の流出を抑えることが可能となる。
【0106】
塗布ヘッド37の周りに水を流す配管71と該水を一定の温度に保つ冷却水循環装置72を備えているので、塗料7の温度が上昇して該塗料7の粘度が変化することを防止でき、高精度な離型層6を形成することができる。
【0107】
塗布ヘッド37の上方に基体4と同心円状の加熱部38を備えているので、塗布された塗料7を周方向に均一に乾燥させることが可能となり、塗料7の垂れを防止できるとともに、塗膜としての離型層6にひびなどが生じることを防止できる。
【0108】
加熱部38が赤外線を輻射するハロゲンヒータ57と、該赤外線を被塗装物に向けて反射する反射部材56を備えているので、塗装中のみ加熱することが可能となり、消費電力を低減することが可能となる。
【0109】
次に、本発明の発明者は、前述した構成の塗膜形成装置1の効果を確認した。結果を以下の表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
なお、表1において、本発明品Aは、基体4と塗布ヘッド37の軸芯のずれを0.1mmとした移動支持部35を備えた塗膜形成装置1を用いて形成された離型層6を示している。本発明品Bは、基体4と塗布ヘッド37の軸芯のずれを0.2mmとした移動支持部35を備えた塗膜形成装置1を用いて形成された離型層6を示している。比較例は、基体4と塗布ヘッド37の軸芯のずれを0.5mmとした移動支持部35を備えない従来の塗膜形成装置を用いて形成された離型層を示している。
【0112】
なお、表1に示す実験では、塗料7として三井ヂュポン社製のPR910K(商品名)を用い、シール部材52をニトリルゴムで構成してその厚みを1.0mmとし、被塗装物として厚みが90μmのポリイミドで構成されたベルト(グンゼ社製)とし、塗布ヘッド37の移動速度を2.0mm/秒とした。
【0113】
表1によれば、本発明のように移動支持部35を設けることで、スジが発生することなく塗膜を形成できることが明らかとなった。
【0114】
前述した実施形態では、移動固定部36を設けていたが、本発明では、図6に示すように、移動固定部36を設けなくても良い。なお、図6において、前述した実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。移動固定部36を設けない場合には、図6に示すように、支持ベース34が外縁凸部77を備え、移動支持部35が、該外縁凸部77と塗布ヘッド37のヘッド本体43の底板部45上との間に複数設けられた第2転動体としての玉78を備えても良い。外縁凸部77は、支持ベース34のベース本体40の外縁から立設して、その先端部が塗布ヘッド37のヘッド本体43の底板部45の上方に配置される。玉78は、外縁凸部77の先端部と塗布ヘッド37のヘッド本体43の底板部45との間に配置されて、これらの双方に対して転動自在である。
【0115】
図6に示された例では、支持ベース34のベース本体40と塗布ヘッド37との間と、支持ベース34の外縁凸部77と塗布ヘッド37との間とにそれぞれ転動体としての玉41,78を設けているので、塗布ヘッド37を軸芯Pに対して直交する方向に確実に移動自在とでき、そのために、塗布ヘッド37と基体4との間隔を周方向に均一とできるとともに、塗布ヘッド37が支持ベース34に対して軸芯Pに沿って移動することを防止できるので、基体4の外周面4cの塗料7に浸漬される時間が軸芯Pに沿ってばらつくことを防止でき、よって、基体4の外周面4cに一定の厚みの離型層6を形成できる。
【0116】
前述した実施形態では、保持部材23の両端部にシール部材29を設けていたが、本発明では、図7に示すように、保持部材23の一端部にシール部材29を設け、他端部に保持部材23を徐々に細くするテーパ部79を設けても良い。なお、図7において、前述した実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0117】
図7に示された例では、一対の保持部材23のうち上方に位置する一方の保持部材23のシール部材29が基体4内に挿入されている。即ち、一方の保持部材23が、基体4内に挿入される端部に該基体4との間を水密に保つシール部材29を設けている。図7に示された例では、一対の保持部材23のうち下方に位置する他方の保持部材23のテーパ部79が基体4内に挿入されている。即ち、他方の保持部材23が、基体4内に挿入される端部に、該基体4の奥に向かうにしたがって徐々に先細となるテーパ部79を設けている。
【0118】
図7に示された例では、一方の保持部材23がシール部材29を備え、他方の保持部材23がテーパ部79を設けているので、基体4の内部への塗料7の浸入を防止できる。また、テーパ部79による線接触により基体4が他方の保持部材23から抜きやすくなるので、基体4に無理な力が作用することを防止できる。
【0119】
前述した実施形態では、粘度計69を塗料タンク67内に配置している。しかしながら、本発明では、粘度計69を供給管70内に配置しても良い。また、転動体として玉41,78を用いたが、本発明では、転動体としてころを用いても良い。また、図2に示された実施形態において、図6に示すように、外縁凸部77と第2転動体としての玉78を設けても良い。さらに、前述した実施形態では、離型層6を形成したが、本発明の塗膜形成装置1は、プライマ層3を形成しても良い。
【0120】
前述した実施形態では、定着ベルト2の離型層6を形成する場合を示しているが、本発明は、定着ベルト2に限ることなく種々の無端ベルトに塗膜を形成しても良いことは勿論である。
【0121】
また、前述した実施形態では、基体4を固定して、塗布ユニット13の支持ベース34を移動させている。しかしながら、本発明では、塗布ユニット13の支持ベース34を固定して、基体4を移動させても良く、塗布ユニット13の支持ベース34と基体4との双方を移動させても良い。
【0122】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。即ち、保持部11と移動部12と移動支持部35などは、実施形態に記載された構成及び配置に限定されることなく、種々の構成及び配置にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態にかかる塗膜形成装置の概略の構成を示す正面図であり、(b)は、図1(a)に示された塗膜形成装置の概略の構成を示す側面図である。
【図2】図1(a)中のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示された塗膜形成装置の保持部材とマンドレルなどの縦断面図である。
【図4】図1に示された塗膜形成装置の塗布ヘッド位置決めモードの塗布ヘッドの動きなどを説明する説明図である。
【図5】図1に示された塗膜形成装置の通常塗布モードの塗布ヘッドの動きなどを説明する説明図である。
【図6】図2に示された塗布ユニットの変形例を示す断面図である。
【図7】図3に示された保持部材の変形例を示す縦断面図である。
【図8】図1に示された塗膜形成装置によって塗膜が形成されて得られる定着ベルトの斜視図である。
【図9】図8中のIX−IX線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0124】
1 塗膜形成装置
4 基体(被塗装物)
4c 外周面
6 離型層(塗膜)
11 保持部
12 移動部
15 塗料供給部
18 制御装置(制御部)
22 マンドレル
23 保持部材
24 保持棒(押圧部)
25 チャックシリンダ(押圧部)
26 円盤部材
27 軸部材
29 シール部材
33 リニアエンコーダ(移動速度検出手段)
34 支持ベース
35 移動支持部
36 移動固定部
37 塗布ヘッド
38 加熱部
40 ベース本体
41 玉(第1転動体)
42 電磁石
52 シール部材
53 液面検知センサ(計測手段)
54 温度センサ(温度測定部)
56 反射部材
57 ハロゲンヒータ(赤外線発生源)
60 開口部
65 マスタマンドレル(基準位置決め部材)
67 塗料タンク(収容容器)
69 粘度計(粘度測定部)
70 供給管
71 配管(冷媒循環部)
72 冷却水循環装置(熱交換機)
77 外縁凸部
78 玉(第2転動体)
P 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物の円筒面状の外周面に塗料を塗布して塗膜を形成する塗膜形成装置において、
前記外周面を露出させかつ前記被塗装物の軸芯が鉛直方向と平行な状態で当該被塗装物を保持する保持部と、
円環の箱状に形成されて前記塗料を収容し、かつ内周面が全周に亘って切り欠かれて、前記被塗装物を内側に通して前記塗料を前記被塗装物の外周面に塗布する塗布ヘッドと、
前記塗布ヘッドの内周面の全周に亘って取り付けられて前記被塗装物と当接して弾性変形することで該被塗装物との間を水密に保つシール部材と、
前記塗布ヘッドを支持した支持ベースと、
前記保持部と前記支持ベースとを前記軸芯に沿って相対的に移動させる移動部と、
前記支持ベースに対して前記塗布ヘッドを前記軸芯に直交する方向に沿って移動自在に支持する移動支持部と、
を備えたことを特徴とする塗膜形成装置。
【請求項2】
前記支持ベースが、前記塗布ヘッドの下方に配置されるベース本体と、該ベース本体の外縁から立設して先端部が前記塗布ヘッドの上方に配置される外縁凸部と、を備え、
前記移動支持部が、前記ベース本体と前記塗布ヘッドとの間に配置されてこれらの双方に対して転動自在な第1転動体と、前記外縁凸部の先端部と前記塗布ヘッドとの間に配置されてこれらの双方に対して転動自在な第2転動体と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の塗膜形成装置。
【請求項3】
前記塗布ヘッド内に侵入可能となる調整位置と前記塗布ヘッドから退避した退避位置とに亘って移動自在に設けられているとともに、前記調整位置で前記塗布ヘッド内に通されることで前記シール部材と干渉して前記支持ベースに対する基準となる位置に前記塗布ヘッドを位置付ける基準位置決め部材と、
前記支持ベースに対して前記塗布ヘッドを移動自在とする第1の状態と、前記支持ベースに前記塗布ヘッドを固定する第2の状態とが切り替え可能な移動固定部と、
前記移動固定部を前記第2の状態として前記基準位置決め部材を調整位置に位置付けた後、前記移動部に該基準位置決め部材を前記塗布ヘッド内に通させて、前記移動固定部を前記第1の状態に切り替えるように制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の塗膜形成装置。
【請求項4】
前記移動固定部が、前記支持ベースに固定され、かつ印加されると前記塗布ヘッドを前記支持ベースに固定する磁力を生じる電磁石を備えたことを特徴とする請求項3記載の塗膜形成装置。
【請求項5】
前記保持部が、前記被塗装物内に挿入されるマンドレルと、前記被塗装物の両端部に挿入される一対の保持部材と、前記一対の保持部材同士が互いに近づく方向に該一対の保持部材を押圧する押圧部と、を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項6】
前記マンドレルが、前記被塗装物の両端部内に挿入される一対の円盤部材と、該円盤部材の中央部同士を連結した軸部材と、を備えたことを特徴とする請求項5記載の塗膜形成装置。
【請求項7】
前記円盤部材の外径が、前記被塗装物の内径よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項6記載の塗膜形成装置。
【請求項8】
前記保持部材が、前記被塗装物内に挿入される端部に該被塗装物との間を水密に保つシール部材を備えたことを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項9】
一対の保持部材のうち一方の保持部材が、前記被塗装物内に挿入される端部に該被塗装物との間を水密に保つシール部材を備え、そして、
他方の保持部材が、前記被塗装物内に挿入される端部に該被塗装物の奥に向かうにしたがって徐々に先細となるテーパ部を備えたことを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項10】
前記塗布ヘッド内の前記塗料の液面の高さを計測可能な計測手段と、
前記塗布ヘッド内に前記塗料を供給する塗料供給部と、
前記計測手段が計測した液面の高さに基づいて、該液面の高さが一定となるように、前記塗料供給部に前記塗料を前記塗布ヘッド内に供給させる制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項9のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項11】
前記塗料供給部が、前記塗料を収容する収容容器と、該収容容器と該収容容器から前記塗布ヘッドに塗料を供給する供給管とのうち少なくとも一方に設けられた前記塗料の粘度を測定可能な粘度測定部と、を備えたことを特徴とする請求項10に記載の塗膜形成装置。
【請求項12】
前記塗布ヘッド内の前記塗料の温度を測定可能な温度測定部と、
前記塗布ヘッドの前記被塗装物に対する移動速度を測定可能な移動速度検出手段とを更に備え、
前記制御部が、前記粘度測定部が測定した前記塗料の粘度と、前記温度測定部が測定した前記塗料の温度と、前記移動速度検出手段が測定した塗布ヘッドの移動速度と、に基づいて、前記被塗装物の外周面に形成された前記塗膜の厚みを推定して該塗膜の良否を判定する制御部であることを特徴とする請求項11記載の塗膜形成装置。
【請求項13】
前記塗布ヘッドの全周に亘って、該塗布ヘッドに取り付けられているとともに、冷媒を循環する冷媒循環部と、
前記冷媒循環部内の冷媒の温度を一定に保つ熱交換機と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項12のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項14】
前記塗布ヘッドの上方でかつ該塗布ヘッドと同軸に配置されて、前記被塗装物に塗布された塗料を加熱可能な円環状に形成された加熱部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項13のうちいずれか一項に記載の塗膜形成装置。
【請求項15】
前記加熱部が、
赤外線を輻射する赤外線発生源と、
前記被塗装物と相対する開口部が少なくとも設けられて、前記赤外線発生源からの赤外線を前記被塗装物の外周面に塗布された塗料に向かって反射する円環の箱状に形成された反射部材と、
を備えたことを特徴とする請求項14記載の塗膜形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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