説明

塗膜積層体

【課題】自然感を帯びた斑点状の仕上り外観を表出することができる塗膜積層体を提供する。
【解決手段】本発明塗膜積層体は、基材上に下塗り塗膜を有し、その上に模様塗膜を有するものであって、該下塗り塗膜は、凹凸形状を有する透光性塗膜であり、該模様塗膜は、液状またはゲル状の色粒によって形成された斑点模様が散在した塗膜であり、該斑点模様として、透光性を有するものを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な塗膜積層体に関するものである。本発明は、主に建築物や土木構造物等に対して適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物や土木構造物の壁面等においては、その美観性を高めるため、斑点模様による意匠性を付与することが行われている。例えば、特開2000−140750(特許文献1)等には、このような意匠性を表出するために、複数種の着色塗料を斑点状に塗装する方法が記載されている。
しかし、特許文献1の方法で得られる模様面の意匠性は、人工的な印象を与えるものとなりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−140750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、自然感を帯びた斑点状の仕上り外観を表出することができる塗膜積層体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討の結果、基材上に特定の下塗り塗膜及び模様塗膜を設けた塗膜積層体に想到し、本発明を完成させるに到った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
【0007】
1.基材上に下塗り塗膜を有し、その上に模様塗膜を有する塗膜積層体であって、
該下塗り塗膜は、凹凸形状を有する透光性塗膜であり、
該模様塗膜は、液状またはゲル状の色粒によって形成された斑点模様が散在した塗膜であり、該斑点模様として、透光性を有するものを含む
ことを特徴とする塗膜積層体。
2.前記下塗り塗膜は、透光性粒子が透明樹脂で固定化された透光性塗膜である1.記載の塗膜積層体。
3.前記下塗り塗膜は、透光性粒子と透明樹脂の固形分重量比率が1:1〜30:1である1.記載の塗膜積層体。
4.前記透光性粒子は、平均粒子径が0.1〜5mmである1.記載の塗膜積層体。
5.前記基材は、着色されたものである1.記載の塗膜積層体。
6.少なくとも前記斑点模様間の間隙は、透明被膜で覆われていることを特徴とする1.記載の塗膜積層体。
【発明の効果】
【0008】
上記1.〜6.の塗膜積層体によれば、自然感を帯びた仕上り外観を表出することができる。すなわち、このような塗膜積層体によれば、各種天然石に類似した天然石調の意匠性が得られる。
このような効果は、斑点模様の透光性、下塗り塗膜の透光性及び凹凸形状によって、積層塗膜に適度な透明感が付与されることによって奏されるものと考えられる。
上記2.〜6.では、特に、このような意匠的効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明塗膜積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明塗膜積層体の別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1に、本発明塗膜積層体の一例を示す。図1は塗膜の断面図である。
【0011】
本発明は、主に、建築物、土木構造物等に適用することができる。
本発明における基材1としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、合板、プラスチック板、金属板、木工板、ガラス、煉瓦、陶磁器タイル等が挙げられる。
基材1は、何らかの表面処理(フィラー処理、サーフェーサー処理、シーラー処理等)が施されたものや、予め着色塗料等で着色されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙が貼り付けられたものであってもよい。
基材1として、着色塗料で着色されたものを用いる場合は、模様塗膜3の斑点模様の色調を考慮して、着色塗料の色調を設定すればよい。
【0012】
本発明では、基材1の上に下塗り塗膜2が設けられる。この下塗り塗膜2は、凹凸形状を有する透光性塗膜である。なお、本発明における透光性とは、可視光を透過する性質のことである。
下塗り塗膜2は、その表面形状に凹凸を有し、かつ塗膜が透光性を有するものであればよい。下塗り塗膜2は、透明樹脂から形成されるもの、あるいは、透光性粒子及び透明性樹脂から形成されるもの等が挙げられる。
【0013】
本発明において、下塗り塗膜2としては、透光性粒子21が透明樹脂22で固定化された透光性塗膜が好適である。透光性粒子21は、透明樹脂22の被膜中で透光性を示すものである。このような透光性塗膜によれば、凹凸形状を有する塗膜が形成しやすくなり、意匠性向上の点でも有利となる。
このような透光性塗膜は、透光性粒子21及び透明樹脂22を含む塗料を塗装することによって形成できる。塗装手段としては、吹付け、ローラー塗り、刷毛塗り等が採用できる。この中でも吹付けが好適である。塗付け量は、好ましくは0.1〜2kg/m、より好ましくは0.2〜1kg/m程度である。
【0014】
透光性粒子21としては、光透過率が3%以上(より好ましくは3〜50%、さらに好ましくは10〜30%)であるものが好適である。なお、ここに言う光透過率とは、濁度計による全光線透過率の値である。この測定では、試料を内厚5mmの透明ガラス製セル中に充填し、次いで徐々に水を充填した後、セル中の気泡を振動によって取り除いたものを用いる。但し試料としては、粒子径が0.5〜1.0mmのものを選別して用いる。
このような透光性粒子21の具体例としては、例えば長石、珪砂、珪石、寒水石、ガラス粒子等が挙げられる。
【0015】
透光性粒子21の平均粒子径は、好ましくは0.1〜5mm、より好ましくは0.1〜2mm、さらに好ましくは0.2〜1mm、最も好ましくは0.3〜0.8mmである。透光性粒子21がこのような粒子径であれば、本発明の意匠的効果を安定的に得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0016】
透明樹脂22は、形成被膜が透明性を有するものであればよい。透明樹脂22を構成する樹脂の種類としては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0017】
透光性粒子21と透明樹脂22の固形分重量比率は、好ましくは1:1〜30:1、より好ましくは3:1〜20:1、さらに好ましくは5:1〜10:1である。両成分がこのような比率であれば、本発明の意匠的効果が得られやすくなる。
【0018】
本発明では、下塗り塗膜2の上に模様塗膜3が設けられる。この模様塗膜3は、液状またはゲル状の色粒によって形成された斑点模様31が散在した塗膜である。図1では、2種(2色)の斑点模様(31a、31b)がそれぞれ散在している。このような斑点模様を構成する斑点は、互いに密接した状態で散在していてもよいし、間隙を挟んだ状態で散在していてもよい。斑点の大きさは、特に限定されないが、好ましくは20mm以下、より好ましくは1〜15mm程度である。
斑点模様は1色から構成されてもよいが、2色以上から構成されることが望ましい。斑点模様31の間隙から、下層(基材1及び/または下塗り塗膜2)が見える場合は、これら下層の色調も合わせた多色模様が得られる。
【0019】
本発明では、斑点模様31として透光性を有するものを含む。透光性を有する斑点模様は、可視光透過性を有するものであり、下層の下塗り塗膜2まで(場合により基材1まで)を視認可能とする。斑点模様31の中に、このようなものが含まれることにより、本発明では優れた意匠的効果を得ることができる。
透光性を有する斑点模様は、模様塗膜中に、少なくとも1種(1色)含まれていればよく、2種(2色)以上含まれていてもよい。
【0020】
上記斑点模様31を形成する色粒では、着色顔料を1種または2種以上を組み合わせて使用することにより、所望の色調に設定することができる。また、色粒中の着色顔料比率を比較的低めに調整することにより、透光性を有する斑点模様が得られる。
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、カーボンブラック、酸化第二鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、酸化鉄、群青、コバルトグリーン等の無機着色顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機着色顔料、パール顔料、アルミニウム顔料、蛍光顔料等が挙げられる。
【0021】
模様塗膜3は、例えば以下の方法によって形成できる。
(1)1種以上(好ましくは2種以上)の着色塗料を斑点状に塗装する。
(2)液状またはゲル状の1種以上(好ましくは2種以上)の色粒が媒体中に分散した塗料を塗装する。
このうち本発明では、上記(2)が好適である。上記(2)によれば、1回の塗装で斑点模様が形成できる。また上記(2)では、色粒の粒径、比率等が容易に調製でき、比較的安定した斑点模様が得られやすい。
【0022】
上記(2)の塗装においては、吹付け、ローラー塗り、刷毛塗り等の手段が採用できる。塗料の塗付け量は、好ましくは0.03〜1kg/m、より好ましくは0.05〜0.8kg/m程度である。本発明では、この塗付け量を比較的少なく設定することによって、斑点模様に透光性を付与することも可能である。
【0023】
本発明では、図2に示すように、斑点模様間の間隙は、透明被膜4で覆われていることが望ましい。このような透明被膜4の存在によって、本発明の意匠的効果を高めることができる。特に、下塗り塗膜が透光性粒子を含む場合に有利である。
このような透明被膜4は、透明樹脂を主成分とする塗料を塗装することによって形成できる。また、上記(2)において、媒体中に透明樹脂を含む塗料を用いることによって、透明被膜4を形成することもできる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0025】
透明ガラス粒子(平均粒子径0.35mm)、透明樹脂(アクリルシリコン樹脂エマルション)、造膜助剤、消泡剤を含む塗料A(透明ガラス粒子:透明樹脂=6:1(固形分重量比率))を用意した。
一方、透明白色粒子(アクリル樹脂、酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする透明着色塗料の粒状物)と、透明褐色粒子(アクリル樹脂、黄色酸化鉄、弁柄、黒色酸化鉄、酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする透明着色塗料の粒状物)と、透明濃灰色粒子(アクリル樹脂、黒色酸化鉄、酸化チタン、脂肪族炭化水素系溶剤を主成分とする透明着色塗料の粒状物)が水性媒体中に分散した塗料B(透明白色粒子:透明褐色粒子:透明濃灰色粒子=40:40:20(固形分重量比率))を用意した。
【0026】
淡黄色の着色下塗塗膜を有するスレート板に対し、上記塗料Aを塗付け量0.8kg/mにて吹付け塗装し、24時間乾燥した。この工程により、凹凸形状(凹凸の高さ:約1〜2mm)を有する透光性塗膜が形成された。
次に、上記塗料Bを塗付け量0.5kg/mにて吹付け塗装し、24時間乾燥した。この工程により、透光性を有する斑点模様(白色、褐色、濃灰色)が散在した塗膜が形成された。なお、塗装及び乾燥は、すべて常温下(23℃)で行った。
以上の方法により得られた塗膜積層体は、天然石調の仕上り外観を有するものであった。
【符号の説明】
【0027】
1:基材
2:下塗り塗膜
3:模様塗膜
4:透明被膜
21:透光性粒子
22:透明樹脂
31a、31b:斑点模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に下塗り塗膜を有し、その上に模様塗膜を有する塗膜積層体であって、
該下塗り塗膜は、凹凸形状を有する透光性塗膜であり、
該模様塗膜は、液状またはゲル状の色粒によって形成された斑点模様が散在した塗膜であり、該斑点模様として、透光性を有するものを含む
ことを特徴とする塗膜積層体。
【請求項2】
前記下塗り塗膜は、透光性粒子が透明樹脂で固定化された透光性塗膜である請求項1記載の塗膜積層体。
【請求項3】
前記下塗り塗膜は、透光性粒子と透明樹脂の固形分重量比率が1:1〜30:1である請求項1記載の塗膜積層体。
【請求項4】
前記透光性粒子は、平均粒子径が0.1〜5mmである請求項1記載の塗膜積層体。
【請求項5】
前記基材は、着色されたものである請求項1記載の塗膜積層体。
【請求項6】
少なくとも前記斑点模様間の間隙は、透明被膜で覆われていることを特徴とする請求項1記載の塗膜積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−143686(P2012−143686A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2641(P2011−2641)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(510114125)株式会社エフコンサルタント (32)
【Fターム(参考)】