説明

塗装スプレーガン用フィルタ及びそれを用いた塗装スプレーガン

【課題】被塗装物の塗装の仕上がりを向上させる塗装スプレーガンを提供する。
【解決手段】塗装スプレーガンは、塗装スプレーガン本体(1)と、該塗装スプレーガン本体(1)の先端側に設けられた塗料を噴霧する塗料ノズルと、該塗装スプレーガン本体(1)内に塗料を供給する塗装スプレーガン本体(1)に設けられた塗料供給部(9)とを有してなる塗装スプレーガンであって、前記塗料ノズル内及び/又は前記塗料供給部(9)内に塵埃を捕捉するフィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の車体等の被塗装物の塗装に用いられる塗装スプレーガンに関し、より詳しくは、被塗装物の塗装の仕上がりを向上させる塗装スプレーガンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の塗装スプレーガンとしては、例えば特許文献1に記載のような塗装スプレーガンが知られている。この塗装スプレーガンは、塗料が供給されるガン本体と、塗料を噴出するための噴出口を有する塗料ノズルと、その噴出口から噴出される塗料の流量を制御するニードル弁とを備え、非塗装時においてはニードル弁によって塗料ノズルの噴出口が塞がれ、塗装時においては、ニードル弁を移動させることによって塗料ノズルの噴出口を空けて、その噴出口から塗料を噴出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−361122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような塗装スプレーガンは、被塗装物の塗装にあたって、ガン本体内の塗料流路に付着した塗料粒子やゴミをそのまま塗料ノズルから噴出してしまい、それがために、被塗装物の塗装の仕上がりを低下させてしまうという問題があった。さらに、上記のような塗装スプレーガンは、塗料中に微小な塗料粒子やゴミが含まれていた場合、その微小な塗料粒子やゴミをそのまま塗料ノズルから噴出してしまうため、これによっても、被塗装物の塗装の仕上がりを低下させてしまうという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑み、被塗装物の塗装の仕上がりを向上させる塗装スプレーガンを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1の発明に係る塗装スプレーガンは、塗装スプレーガン本体(1)と、該塗装スプレーガン本体(1)の先端側に設けられた塗料を噴霧する塗料ノズル(12)と、該塗装スプレーガン本体(1)内に塗料を供給する塗装スプレーガン本体(1)に設けられた塗料供給部(9)とを有してなる塗装スプレーガンであって、前記塗料ノズル(12)内及び/又は前記塗料供給部(9)内に塵埃を捕捉するフィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)を設けてなることを特徴としている。
【0008】
請求項2の発明に係る塗装スプレーガンは、上記請求項1に記載の塗装スプレーガンにおいて、前記フィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)は、網目状のフィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)と、該フィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)の表面部又は裏面部に形成された複数の突起(20c,30c)とを有してなることを特徴としている。
【0009】
請求項3の発明に係る塗装スプレーガンは、上記請求項1又は2に記載の塗装スプレーガンにおいて、前記フィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)は、ロール状に形成されてなることを特徴としている。
【0010】
請求項4の発明に係る塗装スプレーガンは、上記請求項2又は3に記載の塗装スプレーガンにおいて、前記フィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)の周枠には、補強部材(20b,30b)が形成されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。請求項1の発明によれば、塗料ノズル(12)内に塵埃を捕捉するフィルタ(第1フィルタ20)を設け、又、塗料供給部9内に塵埃を捕捉するフィルタ(第2フィルタ30)を設けているから、塵埃を塗料ノズル(12)から噴出してしまう事態を低減させることができる。そのため、本発明によれば、被塗装物の塗装の仕上がりを向上させることができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、塗料ノズル(12)内に塵埃を捕捉するフィルタ(第1フィルタ20)を設け、さらには、塗料供給部(9)内に塵埃を捕捉するフィルタ(第2フィルタ30)を設けているから、塵埃を塗料ノズル(12)から噴出してしまう事態をより低減させることができる。そのため、さらに被塗装物の塗装の仕上がりを向上させることができる。
【0013】
また、請求項2の発明によれば、上記フィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)は、網目状のフィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)を有しているから、その網目内に塵埃を捕捉することができる。そしてさらに、網目内に捕捉された塵埃が、網目内からの塗料の通過を阻害してしまったとしても、フィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)の表面部又は裏面部には複数の突起(20c,30c)が形成されているから、塗料の流通経路を形成できる。それゆえ、塗料の通過を阻害してしまう事態を低減させることができる。
【0014】
さらに、請求項3の発明によれば、上記フィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)は、ロール状に形成されているから、フィルタ(第1フィルタ20,第2フィルタ30)内の塗料の流通経路を自由自在に設定することができる。
【0015】
そして、請求項4の発明によれば、上記フィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)の周枠には、補強部材(20b,30b)が形成されているから、上記フィルタ本体(第1フィルタ本体20a,第2フィルタ本体30a)の周枠が経年劣化に伴い細かく裂けたり、めくれたりしてしまう事態を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る塗装スプレーガンの外観構成を示す図である。
【図2】同実施形態に係る塗装スプレーガン本体先端部の分解斜視図である。
【図3】(a)は同実施形態に係る第1フィルタの展開平面図、(b)は(a)のX−X線拡大断面図である。
【図4】同実施形態に係る塗料供給部側の分解斜視図である。
【図5】(a)は同実施形態に係る第2フィルタの展開平面図、(b)は(a)のY−Y線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る塗装スプレーガンの一実施形態について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。
【0018】
本実施形態に係る塗装スプレーガンは、図1に示すように、略ピストル形状の塗装スプレーガン本体1を有し、この塗装スプレーガン本体1には、当該塗装スプレーガン本体1を把持する把持部2が設けられている。そして、その把持部2の下方には、圧縮空気の供給元と接続する空気ニップル3が設けられ、この空気ニップル3の近傍には、塗装スプレーガン本体1内に供給される空気量を調整できる空気量調整装置4が上記空気ニップル3と略並行となるような位置に設けられている。
【0019】
また、その把持部2の上方には、塗装スプレーガン本体1内のニードル弁10(図2参照)の動きを加減して塗料の噴出量を調整できる塗料噴出量調整装置5が設けられ、その塗料噴出量調整装置5の上方には、塗料の塗り幅を調節するためのパター開き調整装置6が上記塗料噴出量調整装置5と略並行となるような位置に設けられている。
【0020】
さらに、塗装スプレーガン本体1の略中央部には、引き金7が把持部2と略並行となるような位置に設けられ、この引き金7を引くことで、塗装スプレーガン本体1内部の空気弁(図示せず)が開き、塗料を被塗装物に噴霧させることができる。
【0021】
そして、塗装スプレーガン本体1の先端には空気キャップ8が締結固定されている。さらに詳しく塗装スプレーガン本体1の先端の構成を、図2を用いて説明する。塗装スプレーガン本体1の先端部11の外周には雄ねじ11aが形成され、この雄ねじ11aには、空気キャップ8の内部に形成されている雌ねじ(図示せず)が螺合される。これにより、塗装スプレーガン本体1の先端部11に空気キャップ8が締結固定される。
【0022】
そしてさらに、塗装スプレーガン本体1の先端部11内周には、雌ねじ11bが形成され、この雌ねじ11bには、塗料ノズル12における筒状の基端部12aの外周面に形成されている雄ねじ12bが螺合される。これにより、塗装スプレーガン本体1の先端部11に塗料ノズル12が締結固定される。
【0023】
この塗料ノズル12は、筒状の基端部12aを有し、その基端部12aにはリング状の平面部12cが固着され、さらに、その平面部12cの他端部には略六角錐状の塗料ノズル本体12dが固着されている。この塗料ノズル本体12dの先端部には、塗料と圧縮空気の混合物が噴霧される噴霧口12eが貫設され、基端部には、所要箇所に複数の空気孔12fが貫設されている。なお、上記平面部12cの外径は、上記空気キャップ8の内径よりも径小に形成されている。
【0024】
一方、空気キャップ8は、一対の突出部8aが設けられており、この突出部8aの内径側には空気孔8b(図示では1つ)が設けられている。このように設けられた空気孔8bからは、上記塗料ノズル12の空気孔12fから噴出された塗装スプレーガン本体1内の圧縮空気が半径内側方向に向けて噴出される。それは、塗装スプレーガン本体1の先端部11に塗料ノズル12が締結固定され、さらに、空気キャップ8が締結固定される際、平面部12cと空気キャップ8の裏面側には空気通路が形成された状態で締結固定されるため、この空気通路を通って空気孔8bから圧縮空気が噴霧されるためである。なお、空気キャップ8の中心部には挿入孔8cが形成されており、この挿入孔8c内に塗料ノズル12の噴霧口12eが挿入される(図4参照)。
【0025】
また一方、図2に示すように、塗料ノズル12の筒状の基端部12a内には、塵埃を捕捉するロール状に形成された筒状の第1フィルタ20が挿入される。そして、この第1フィルタ20は、当該第1フィルタ20内に、塗装スプレーガン本体1の先端部11に塗料ノズル12が締結固定される際、ニードル弁10が挿通できるように形成されている。これにより、図1に示すように、塗料ノズル12内に第1フィルタ20が設けられることとなる。
【0026】
上記のような第1フィルタ20は、厚み約0.15mmからなる矩形状の弾性樹脂で形成され、図3(a)に示すように、網目状の第1フィルタ本体20aを有している。そして、この網目状の第1フィルタ本体20aの周枠には当該第1フィルタ本体20aと同一の材質で形成される補強部材20bが形成されている。このような補強部材20bを設ければ、上記第1フィルタ本体20aの周枠が経年劣化に伴い細かく裂けたり、めくれたりしてしまう事態を低減させることができる。
【0027】
また、第1フィルタ本体20aの裏面部には、全域に亘って、図3(b)に示すように、複数の突起20cが形成されている。なお、本実施形態においては、第1フィルタ本体20aの裏面部全域に亘って複数の突起20cが形成される例を示したが、全域に亘って複数の突起20cを形成せずとも良い。また、表面部に複数の突起20cを形成しても良い。
【0028】
ところで、このように形成される第1フィルタ20を、図2に示すような形状にするには、図3(b)に示す矢印P方向に第1フィルタ20を巻いていくことにより、図2に示すようなロール形状に形成されることとなる。なお、このロール形状を維持するには、端面同士を接着剤等で固定すれば良い。
【0029】
このように形成される第1フィルタ20は、網目状の第1フィルタ本体20aを有しているから、その網目内に塵埃を捕捉することができる。そしてさらに、網目内に捕捉された塵埃が、網目内からの塗料の通過を阻害してしまったとしても、第1フィルタ本体20aの表面部又は裏面部には複数の突起20cが形成されているから、塗料の流通経路を形成できる。それゆえ、塗料の通過を阻害してしまう事態を低減させることができる。
【0030】
また、第1フィルタ20は、ロール状に形成されているから、第1フィルタ20内の塗料の流通経路を自由自在に設定することができる。
【0031】
また一方、塗装スプレーガン本体1には、図1に示すように、空気キャップ8の軸方向と垂直になる方向に、塗料を塗装スプレーガン本体1内に供給する塗料供給部9が突設されている。そして、この塗料供給部9には、締結部15aを有するホース15が接続されている。なお、このホースの先端には塗料を貯留している塗料タンク(図示せず)が設けられている。
【0032】
図4を用いてより詳しく塗料供給部9とホース15の接続方法を説明すると、塗料供給部9の先端には、筒状の先端部9aが設けられており、その先端部9aの外周面には雄ねじ9bが形成されている。そして、締結部15aを有するホース15の締結部15aの内周面には、雌ねじ15bが形成されており、この雌ねじ15bに雄ねじ9bが螺合される。これにより、塗料供給部9とホース15が接続されることとなる。
【0033】
また、図4に示すように、塗料供給部9とホース15が接続されるにあたって、塗料供給部9内には、塵埃を捕捉するロール状に形成された筒状の第2フィルタ30が挿入される。そして、この第2フィルタ30が塗料供給部9内に挿入された状態で、塗料供給部9とホース15が接続されることとなる。これにより、図1に示すように、塗料供給部9内に第2フィルタ30が設けられることとなる。
【0034】
上記のような第2フィルタ30は、厚み約0.15mmからなる弾性樹脂で形成され、図5(a)に示すように、矩形状で網目状の第2フィルタ本体30aを有している。そして、この網目状の第2フィルタ本体30aの周枠には当該第2フィルタ本体30aと同一の材質で形成される補強部材30bが形成されている。
【0035】
また、第2フィルタ本体30aの裏面部には、全域に亘って、図5(b)に示すように、複数の突起30cが形成されている。なお、本実施形態においては、第2フィルタ本体30aの裏面部全域に亘って複数の突起30cが形成される例を示したが、全域に亘って複数の突起30cを形成せずとも良い。また、表面部に複数の突起30cを形成しても良い。
【0036】
そしてまた、第2フィルタ本体30aの周枠に形成された補強部材30bの一辺に矩形状の掴み部30dが一体形成されている。
【0037】
ところで、このように形成される第2フィルタ30を、図4に示すような形状にするには、図5(b)に示す矢印P1方向に第2フィルタ30を巻いていくことにより、図2に示すようなロール形状に形成されることとなる。なお、このロール形状を維持するには、端面同士を接着剤等で固定すれば良い。
【0038】
しかして、この第2フィルタ30と第1フィルタ20との相違は、掴み部30dを設けているか否かの相違のみであるため、第2フィルタ30は第1フィルタ20と同一の作用効果を奏する。なお、第2フィルタ30に掴み部30dを設けることによって、簡単容易に塗料供給部9内から第2フィルタ30を抜出することができる。
【0039】
しかして以上説明した本実施形態によれば、塗料ノズル12内に塵埃を捕捉する第1フィルタ20を設け、又は、塗料供給部9内に塵埃を捕捉する第2フィルタ30を設けているから、塵埃を塗料ノズル12から噴出してしまう事態を低減させることができる。そのため、本実施形態によれば、被塗装物の塗装の仕上がりを向上させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態によれば、塗料ノズル12内に塵埃を捕捉する第1フィルタ20を設け、さらには、塗料供給部9内に塵埃を捕捉する第2フィルタ30を設けているから、塵埃を塗料ノズル12から噴出してしまう事態をより低減させることができる。そのため、さらに被塗装物の塗装の仕上がりを向上させることができる。
【0041】
なお、本実施形態においては、第1フィルタ20及び第2フィルタ30を弾性樹脂で形成する例を示したが、弾性樹脂でなくとも、弾性のある金網等で形成しても良い。また、第1フィルタ20及び第2フィルタ30の形状はロール形状に限らず、どのような形状であっても良い。
【0042】
なおまた、本実施形態において示した塗装スプレーガンの形状に限らず、重力式の塗装スプレーガン等、様々な形状の塗装スプレーガンに適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 塗装スプレーガン本体
9 塗料供給部
12 塗料ノズル
20 第1フィルタ(フィルタ)
20a 第1フィルタ本体(フィルタ本体)
20b 補強部材
20c 突起
30 第2フィルタ(フィルタ)
30a 第2フィルタ本体(フィルタ本体)
30b 補強部材
30c 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装スプレーガン本体と、該塗装スプレーガン本体の先端側に設けられた塗料を噴霧する塗料ノズルと、該塗装スプレーガン本体内に塗料を供給する塗装スプレーガン本体に設けられた塗料供給部とを有してなる塗装スプレーガンであって、
前記塗料ノズル内及び/又は前記塗料供給部内に塵埃を捕捉するフィルタを設けてなることを特徴とする塗装スプレーガン。
【請求項2】
前記フィルタは、網目状のフィルタ本体と、該フィルタ本体の表面部又は裏面部に形成された複数の突起とを有してなることを特徴とする請求項1に記載の塗装スプレーガン。
【請求項3】
前記フィルタは、ロール状に形成されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装スプレーガン。
【請求項4】
前記フィルタ本体の周枠には、補強部材が形成されてなることを特徴とする請求項2又は3に記載の塗装スプレーガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−13842(P2013−13842A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147176(P2011−147176)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(511161351)
【Fターム(参考)】