説明

塗装ブース、及び塗装ブース用増速ユニット

【課題】 塗装室に搬送される大型の被塗装物の塗装品質を高めることができる塗装ブースを提供すること。
【解決手段】 塗装ブース1には、コンベア9によって搬送される自動車ボディ2を塗装するための塗装室3と、その塗装室3の上側からダウンフローの空気を供給するための給気室4とが設けられている。塗装室3の天井面に沿って平行に支持フレーム20が設けられ、支持フレーム20の上面に複数の増速ユニット26が着脱可能に固定されている。支持フレーム20及び複数の増速ユニット26の上面側にはマット状のフィルタ21が配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装室に被塗装物を搬送してその塗装を行う塗装ブース、及び塗装ブース用増速ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディなどを塗装するための設備である塗装ブースが従来よく知られている。この種の塗装ブースは、塗装室の上側に設けられた給気室からフィルタを介して塗装室に空調空気を流下させて塗装を行うとともに、塗装の際にオーバースプレーされた塗料ミストを含む汚染空気を床下に設けられた排気室から排気するよう構成されている。そして、この構成により、塗装室内の作業環境の悪化や、塗料ミストのカブリによって被塗装物の品質が損なわれるといった不具合が解消される。
【0003】
この塗装ブースにおいて例えば自動車のバックドアなどを塗装する場合、バックドアを開けた状態で上向きに塗料をスプレーする必要がある。この場合、通常のボディ塗装よりも多くの塗料ミストが舞い上がるため、その塗装位置に対応した領域では、ダウンフロー空気の流速を高めて塗料ミストを確実に排気することが望まれる。
【0004】
従来、所定領域の空気の流速を高めるように構成した塗装ブースが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
特許文献1の塗装ブースでは、塗装室と給気室とを仕切る第1のフィルタに開口部が設けられ、この開口部には、その開口部の断面積よりも大きな空気透過断面積を有する第2のフィルタを介して給気室と連通する空気増速用ブースターが設けられている。この空気増速用ブースターでは、第2のフィルタの介在によって空気透過断面が開口部の断面積よりも大きくなる。このため、そのノズルを経て吐出される単位断面積あたりの空気量は、他の部位(第1のフィルタ)の空気量に比べて大きくなる。この空気増速用ブースターによって流速の比較的速い空気流が形成され、エアーカーテン効果により塗料ミストの周囲への飛散が防止される。
【0006】
また、特許文献2の塗装ブースでは、塗装室と給気室とを仕切るフィルタに四角錐形状の流動方向変更部が1つのみ設けられ、塗装室に流れる空気の方向を変更することでその空気に含まれる塗料ミストが排気されるようになっている。
【特許文献1】実開昭58−40277
【特許文献2】特開2002−159897
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の塗装ブースでは、空気増速用ブースターのノズルの開口は比較的狭く、ある程度の幅を有する領域の流速を高めるためには、複数の空気増速用ブースターが必要となるが、その空気増速用ブースターを複数設けると、流速の制御が困難となってしまう。また、この塗装ブースでは、塗装室の天井面に配置される第1のフィルタと、空気増速用ブースター内の第2のフィルタとが個別に設けられている。そのため、各フィルタ間のシール性の確保が困難となることに加え、構成部品が多くなり、フィルタ交換などに伴うメンテナンスコストも嵩んでしまう。
【0008】
特許文献2の塗装ブースは、比較的小型の部品を塗装室内に固定した状態で塗装するためのものであるため、自動車ボディなどの大型部品を搬送しながら塗装を行うことはできない。また、搬送される部品の大きさや形状に応じて作業形態が変更される場合には、塗装ブースの設計変更が必要になるが、特許文献2にはそれに対応した構成は開示されていない。さらに、特許文献2の塗装ブースのように、フィルタに四角錐形状の流動方向変更部を設ける場合、とりわけその中心部で空気の流速が高められる。この場合、空気の流速を高めることが可能な領域が非常に狭く、しかもその周辺部の空気が乱れるといった問題も懸念される。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗装室における塗料ミストを確実に排気することができ、搬送される大型の被塗装物の塗装品質を高めることができる塗装ブース、及び塗装ブース用増速ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、搬送手段によって搬送される被塗装物を塗装するための塗装室の上側に、前記塗装室にダウンフローの空気を供給するための給気室を配設した塗装ブースにおいて、前記給気室は、前記塗装室の天井面に沿って平行に設けられた支持フレームと、水平棟から両側に流れ勾配をもつ2つの斜面を含んで構成された切妻屋根状の網目部材からなり、前記支持フレームの上面に着脱可能に固定された複数の増速ユニットと、前記支持フレーム及び前記複数の増速ユニットの上面側に配設されたマット状のフィルタとを備えることを特徴とする塗装ブースをその要旨とする。
【0011】
従って、請求項1に記載の発明によれば、増速ユニットにおける2つの斜面の上にフィルタが配設され、給気室の空気がそれら斜面を通じて塗装室に供給される。この場合、フィルタにおいて増速ユニットの上面を覆う部位はフィルタ面積が大きくなり、その部位から塗装室に供給される空気の流速を高めることができる。その結果、塗装室において、各増速ユニットに対応する幅を持った領域でダウンフローの空気の流速が高められ、塗料ミストを含む空気が確実に排気される。よって、搬送手段により塗装室に搬送される被塗装物が比較的大きな部品であってもその塗装品質を高めることができる。さらに、搬送される被塗装物の形状変更などによって塗装室における塗装位置が変更される場合、それに応じて増速ユニットの固定位置を変更することにより、その塗装位置に対応した領域の空気の流速を高めることが可能となる。
【0012】
本発明の塗装ブースにおける被塗装物としては特に限定されないが、例えば自動車ボディやバンパーなどのような大型部品が好適である。
【0013】
上記複数の増速ユニットは、支持フレームの上面全域に固定されるのではなく、上面外周部を除く箇所に固定されることが好ましい。また、上記複数の増速ユニットは、被塗装物に対して上向きで塗装を行う箇所に固定されることがより好ましい。このようにすると、塗装によって塗料ミストが舞い上がる箇所におけるダウンフローの空気の流速を確実に高めることができる。
【0014】
前記増速ユニットを構成する2つの斜面の勾配は特に限定されないが、強いていえば水平方向を基準として30°〜75°程度であることがよい。例えば、これらの勾配を60°としたときの増速ユニットは、正三角柱を横置きにしたような状態となり、この場合には増速ユニットを覆う部位のフィルタ面積を2倍に増加させることができる。従って、その増速ユニットから塗装室に供給される空気の流速を、それ以外の平坦な部位と比較して約2倍の速さに高めることができる。
【0015】
また、前記増速ユニットは、1m未満の高さを有するコンパクトなサイズとすることが好ましい。この場合、増速ユニットの設置に伴うスペースの増大及び増速ユニットの重量増を防止することができ、さらに、支持フレームに各増速ユニットを固定する際の取り扱い性が向上する。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記フィルタは、前記支持フレームの上面を覆う平坦被覆部と、前記複数の増速ユニットの上面を個別に覆う複数の袋状被覆部とを一体形成してなるものであることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項2に記載の発明によれば、フィルタは平坦被覆部と袋状被覆部とが一体的に形成されているので、従来技術のように複数のフィルタで構成するものと比較して部品点数を削減することができる。また、複数のフィルタで構成する場合、それらフィルタの連結部でのシール性を十分に確保する必要があるが、フィルタを一体形成することによりそのシール性の問題も生じることはない。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記増速ユニットが前記塗装室の幅方向に沿って複数連設されることをその要旨とする。
【0019】
従って、請求項3に記載の発明によれば、幅のある大型の被塗装物を塗装する場合において、その塗装に対応する領域で空気の流速を高めることができるため、塗料ミストを含む汚染空気を確実に排気することができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記増速ユニットにおいて前記2つの斜面の側部には、空気の通過を遮断する遮蔽部材が設けられることをその要旨とする。
【0021】
従って、請求項4に記載の発明によれば、増速ユニットの側部に遮蔽部材を設けることにより、その増速ユニットにて水平方向に流れる空気流が遮断される。ゆえに、増速ユニットを覆う袋状被覆部での空気の乱れが発生しにくくなり、より均一なダウンフローの空気を塗装室に供給することができる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、搬送手段によって搬送される被塗装物を塗装するための塗装室の上側に、前記塗装室にダウンフローの空気を供給するための給気室を配設した塗装ブースに使用される増速ユニットであって、水平棟から両側に流れ勾配をもつ2つの斜面を含んで構成された切妻屋根状の網目部材からなり、前記塗装室の天井面に沿って平行に設けられた支持フレームの上面に着脱可能に固定しうる構造の塗装ブース用増速ユニットをその要旨とする。
【0023】
従って、請求項5に記載の増速ユニットを用いると、塗装室において、増速ユニットに対応する幅を持った領域で空気の流速が高められ、塗料ミストを含む空気が確実に排気される。よって、搬送手段により塗装室に搬送される被塗装物が比較的大きな部品であってもその塗装品質を高めることができる。さらに、搬送される被塗装物の形状変更などによって塗装室における塗装位置が変更される場合、それに応じて増速ユニットの固定位置を変更することにより、その塗装位置に対応した領域の空気の流速を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、塗装室における塗料ミストを確実に排気することができ、搬送される大型の被塗装物の塗装品質を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第1の実施の形態]
【0026】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態における塗装ブースの概略構成を示す断面図である。
【0027】
図1に示されるように、この塗装ブース1は、被塗装物としての自動車ボディ2に塗料を吹き付けることにより、その自動車ボディ2の表面に塗膜を形成させるための設備である。この塗装ブース1は、自動車ボディ2の塗装を行うための塗装室3と、塗装室3の上側に設けられ塗装室3にダウンフローの空気を供給するための給気室4と、塗装室3の下側に設けられその塗装室3内の空気を排気するための排気室5とを備えている。
【0028】
塗装室3の床部7は簀子状の部材(グレーチング)で形成され、その床部7には、台車8に乗せられた自動車ボディ2を1台ずつ搬送するためのコンベア9が設けられている。また、塗装室3において搬送手段であるコンベア9の左右両側には、塗装ロボット11が設けられている。該塗装ロボット11のアーム12の先端には塗装機13が取り付けられており、その塗装機13から塗料を噴霧することによって自動車ボディ2が塗装されるようになっている。
【0029】
排気室5は、塗装室3内の汚染空気を排気ファン(図示略)の吸引力によって吸引するようになっている。なお、汚染空気中には、塗装室3内の塗装機13からオーバースプレーされた塗料ミストが含まれている。また、排気室5の側壁には、排気室5内にて浄化された空気を外部に排出する排気ダクト15が設けられている。その排気ダクト15から排出された空気は、図示しないファンによって圧送され、排気されるようになっている。なお、給気ダクト16を介して、排出された空気の一部を再び給気室4に導くようにしてもよい。
【0030】
給気室4の底部には、塗装室3の天井面に沿って平行に支持フレーム20が設けられており、その支持フレーム20の上面側にはマット状のフィルタ21が配設されている。そして、その給気室4に圧送された空気が、フィルタ21を介して所定の風速を有する清浄空気として塗装室3に向けて流下させられる。
【0031】
図2に示すように、本実施形態の支持フレーム20は、金属製かつ長方形状の枠体23に金網24を装着した構造となっている。従って、空気は支持フレーム20の表裏面を通過することができる。また、その支持フレーム20の上面には、給気室4から塗装室3に供給する空気の流速を高めるための増速ユニット26が塗装室3の幅方向に沿って4つ連設されている。各増速ユニット26は、切妻屋根状の網目部材27からなり、水平棟M1から両側に流れ勾配をもつ2つの斜面S1を含んで構成されている(図1,図2参照)。本実施形態では、各増速ユニット26は、正三角柱を横置きにしたような形状を有し、2つの斜面S1の勾配(水平方向を基準とした勾配)は60°に設定されている。そして、各増速ユニット26は、その正三角柱を横置きにした状態で、支持フレーム20の上面においてその外周部を除く箇所に着脱可能に固定されている。本実施形態において支持フレーム20に対する各増速ユニット26の固定は、周知の固定手段(例えば、ボルト及びナットや、クリップ等の係止具など)を使用して行われている。
【0032】
本実施形態の塗装ブース1では、各増速ユニット26は、自動車ボディ2のバックドアを塗装する塗装領域(斜め上向きで塗装を行う箇所)において、各増速ユニット26の水平棟M1が自動車ボディ2の搬送方向と平行となるよう配設されている。また、各増速ユニット26における2つの斜面S1の側部(三角形状の側部)には、空気の通過を遮断する遮蔽部材28が装着されている。本実施形態における遮蔽部材28は、正三角形状の金属板からなる。
【0033】
なお、本実施形態の支持フレーム20のサイズは、幅(ブース長手方向の寸法)が1650mm、長さ(ブース幅方向の寸法)が6000mm、厚さが100mmに設定されている。また、各増速ユニット26のサイズは、幅(水平棟M1に直交する方向の寸法)が950mm、長さ(水平棟M1方向の寸法)が1050mm、高さが650mmに設定されている。このように増速ユニット26をコンパクトなサイズとすることで、増速ユニット26の設置に伴うスペースの増大、増速ユニット26の重量増が防止される。また、各増速ユニット26がコンパクトで軽量になる結果、それらを支持フレーム20に固定する作業を容易に行うことが可能となる。
【0034】
本実施形態のフィルタ21は、ポリプロピレンなどの合成樹脂繊維の不織布からなるマット状物である。このフィルタ21は、支持フレーム20の上面外周部を覆う平坦被覆部29と、複数の増速ユニット26の上面を個別に覆う4つの袋状被覆部30とを一体的に形成した構造を有している。フィルタ21の袋状被覆部30は、増速ユニット26の形状に合わせて三角屋根型に形成された凹部である。そして、このフィルタ21の端縁がフィルタ押さえ部材(図示略)によって支持フレーム20の上面外周部に固定されるようになっている。
【0035】
このフィルタ21を用いることにより、その袋状被覆部30から塗装室3に供給される空気の流速が、それ以外の平坦被覆部29から供給される空気よりも速くなる。すなわち、本実施形態の増速ユニット26の形状は正三角柱であり、増速ユニット26の2つの斜面のそれぞれの面積と袋状被覆部30の開口面積とが等しいため、袋状被覆部30において空気が通過するフィルタ面積が約2倍となる。従って、フィルタ21の平坦被覆部29を通過する空気の流速V1と比較して、袋状被覆部30を通過する空気の流速V2は、約2倍となる(V2=2×V1)。なお、本実施形態の塗装ブース1では、平坦被覆部29の流速V1=0.29〜0.39m/sec、袋状被覆部30の流速V2=0.58〜0.78m/secとなるように設定している。
【0036】
このように構成すれば、図3に示すように、自動車ボディ2のバックドア2aを塗装するときに塗装機13で塗料を上向きにスプレーした場合、フィルタ21の袋状被覆部30に対応した幅を持った領域で空気の流速V2が高められるため、オーバースプレーされた塗料ミストを排気室5側に確実に排気することが可能となる。その結果、コンベア9によって次に搬送される自動車ボディ2に塗料ミストが付着することが防止される。
【0037】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0038】
(1)本実施形態の塗装ブース1では、増速ユニット26(フィルタ21の袋状被覆部30)に対応した幅を持った領域で空気の流速を高めることができる。従って、自動車ボディ2のバックドア2aを塗装するときに発生する塗料ミストを確実に排気することができるため、自動車ボディ2の塗装品質を高めることができる。
【0039】
(2)フィルタ21は平坦被覆部29と袋状被覆部30とが一体的に形成されているので、従来技術のように複数のフィルタで構成するものと比較して部品点数を削減することができる。また、複数のフィルタで構成する場合、それらフィルタの連結部でのシール性を十分に確保する必要があるが、本実施形態ではフィルタ21を一体形成しているため、シール性の問題が生じない。
【0040】
(3)本実施形態の塗装ブース1では、自動車ボディ2の設計変更に応じて塗装ブース1内での作業形態が変更される場合、それに応じた所望の位置に増速ユニット26の固定位置を適宜変更することができる。そして、その固定位置に対応した袋状被覆部30を有するフィルタ21に交換することにより、増速ユニット26に対応した領域の空気の流速を高めることが可能となる。またこの場合、1枚のフィルタ21を交換すればよいので、設計変更に伴う設備コストを抑えることができる。
【0041】
(4)本実施形態の塗装ブース1の場合、増速ユニット26が塗装室3の幅方向に沿って複数連設されるので、自動車ボディ2のような幅のある大型部品を塗装する場合においても、塗料ミストを含む汚染空気を確実に排気することができる。また、塗装ブース1は、複数の増速ユニット26を用いて空気の流速を速める構成であるので、増速ユニット26のサイズが必要以上に大きくなることがなく、その重さも抑えることができる。この場合、増速ユニット26の設置に伴うスペースの増大を防止することができ、さらに、支持フレーム20に各増速ユニット26を固定する際の取り扱い性が向上する。
【0042】
(5)本実施形態の塗装ブース1の場合、増速ユニット26の側部に遮蔽部材28を設けることにより、その増速ユニット26にて水平方向に流れる空気流が遮断される。従って、増速ユニット26を覆う袋状被覆部30での空気の乱れが発生しにくくなり、より均一なダウンフローの空気を塗装室3に供給することができる。
【0043】
(6)本実施形態の塗装ブース1では、従来の既存の設備である支持フレーム20上に三角柱状の複数の増速ユニット26を固定した構成である。そのため、新たな支持フレームを製造する場合と比べて設備コストを抑えることができる。
【0044】
(7)本実施形態の塗装ブース1の場合、コンベア9によって搬送される次の自動車ボディ2に今回の塗装分の塗料ミストが付着することが確実に防止されることから、コンベア9による自動車ボディ2の搬送間隔を短くして塗装効率(生産効率)を向上させることができる。
[第2の実施の形態]
【0045】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図4に基づき説明する。本実施の形態では、支持フレーム20における各増速ユニット26の固定態様及びフィルタ21aの構成が第1の実施形態と若干異なっている。なお、塗装ブース1における他の構成は第1の実施の形態と同一であるので、ここではその説明を省略する。
【0046】
図4に示されるように、本実施形態における各増速ユニット26は、塗装室3の幅方向に沿って4つ連設されているものの、各増速ユニット26の水平棟M1が塗装室3の幅方向に沿って略一直線上に配置されている。また、フィルタ21aには、4つの増速ユニット26を一括して覆うための袋状被覆部30aが1つのみ設けられている。この袋状被覆部30aは、三角屋根型に形成された凹部であり、増速ユニット26の4つ分の長さ、すなわち上記第1の実施形態における袋状被覆部30の4倍の長さを有する。
【0047】
このように構成しても、上記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施形態では、塗装室3の幅方向に均一に空気の流速を高めることができ、塗料ミストをより確実に排気することが可能となる。
【0048】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0049】
・上記の各実施の形態における増速ユニット26は、幅及び長さが異なっており平面視形状が長方形状であったが、その幅及び長さを同じ寸法として増速ユニット26の平面視形状が正方形となるよう形成してもよい。このように構成すると、支持フレーム20における各増速ユニット26を第1の実施形態の固定態様(図2参照)から第2の実施形態の固定態様(図4参照)に変更すべく、各増速ユニット26を90度回転させた場合においても、固定部分の形状は変わらない。よって、増速ユニット26を支持フレーム20に固定する上で実用上好ましいものとなる。
【0050】
・上記実施形態における増速ユニット26の2つの斜面S1は平面的であるが、上側または下側に若干湾曲した形状であってもなんら構わない。
【0051】
・上記各実施形態では、支持フレーム20に4つの増速ユニット26を固定するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、被塗装物のサイズや形状に対応する塗装領域に基づいて、増速ユニット26の数を適宜変更することができる。
【0052】
・上記各実施形態の塗装ブース1は、被塗装物としての自動車ボディ2を塗装するものであったが、バンパーや空力付加物(スポイラーなど)の大型の自動車部品を塗装するものであってもよい。勿論、塗装ブースは自動車部品以外の部品を塗装するものでもよい。
【0053】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0054】
(1)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記増速ユニットを構成する2つの斜面の勾配は60°であることを特徴とする塗装ブース。
【0055】
(2)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記被塗装物は、自動車のボディまたはバンパーであることを特徴とする塗装ブース。
【0056】
(3)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記増速ユニットは、前記被塗装物に対して上向きで塗装を行う箇所に配設されていることを特徴とする塗装ブース。
【0057】
(4)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記複数の増速ユニットは、1m未満の高さを有することを特徴とする塗装ブース。
【0058】
(5)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記複数の増速ユニットは、前記支持フレームの上面外周部を除く箇所に固定されていることを特徴とする塗装ブース。
【0059】
(6)請求項1乃至4のいずれか1項において、前記複数の増速ユニットの平面視形状は正方形であることを特徴とする塗装ブース。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を具体化した第1の実施形態の塗装ブースを示す断面図。
【図2】第1の実施形態のフィルタ、支持フレーム及び複数の増速ユニットを示す斜視図。
【図3】塗装室における風速を説明するための説明図。
【図4】第2の実施形態のフィルタ、支持フレーム及び複数の増速ユニットを示す斜視図。
【符号の説明】
【0061】
1…塗装ブース
2…被塗装物としての自動車ボディ
3…塗装室
4…給気室
20…支持フレーム
21,21a…フィルタ
26…増速ユニット
28…遮蔽部材
29…平坦被覆部
30,30a…袋状被覆部
M1…水平棟
S1…斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段によって搬送される被塗装物を塗装するための塗装室の上側に、前記塗装室にダウンフローの空気を供給するための給気室を配設した塗装ブースにおいて、
前記給気室は、
前記塗装室の天井面に沿って平行に設けられた支持フレームと、
水平棟から両側に流れ勾配をもつ2つの斜面を含んで構成された切妻屋根状の網目部材からなり、前記支持フレームの上面に着脱可能に固定された複数の増速ユニットと、
前記支持フレーム及び前記複数の増速ユニットの上面側に配設されたマット状のフィルタと
を備えることを特徴とする塗装ブース。
【請求項2】
前記フィルタは、前記支持フレームの上面を覆う平坦被覆部と、前記複数の増速ユニットの上面を個別に覆う複数の袋状被覆部とを一体形成してなるものであることを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記増速ユニットが前記塗装室の幅方向に沿って複数連設されることを特徴とする請求項1または2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
前記増速ユニットにおいて前記2つの斜面の側部には、空気の通過を遮断する遮蔽部材が設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗装ブース。
【請求項5】
搬送手段によって搬送される被塗装物を塗装するための塗装室の上側に、前記塗装室にダウンフローの空気を供給するための給気室を配設した塗装ブースに使用される増速ユニットであって、
水平棟から両側に流れ勾配をもつ2つの斜面を含んで構成された切妻屋根状の網目部材からなり、前記塗装室の天井面に沿って平行に設けられた支持フレームの上面に着脱可能に固定しうる構造の塗装ブース用増速ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−159093(P2006−159093A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354727(P2004−354727)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】