説明

塗装材料

本発明は、バインダーと、100μm以下の大きさ及び/または表面粗さの粒子を含有する少なくとも一種類の充填剤と、光触媒作用を果たす活性剤とを含む塗装材料に関する。本発明によれば、バインダーは光触媒作用によって少なくとも部分的に化学分解し、ミクロ構造の自己清浄化表面が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バインダーと、10μm未満の大きさ及び/または10μm未満の表面粗さの粒子を含有する充填剤とを含む塗装材料ならびに建築物の正面及びその他の部分を塗装するための塗装材料の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
上記塗装材料は、建築物の正面及び他の表面を塗装して視覚的効果を得たり、構造上の物理的特性を改善するという理由で使用されている。しかし、そのような塗装材料で塗装された表面をきれいにすることはしばしば困難で、費用がかかるという点が大きな問題であることが分かった。このような理由で、そのような塗装材料で塗装された領域の表面を自己清浄化できるようなデザインを創作できる方法を求めるための努力が長い間にわたって行われてきた。
【0003】
自己清浄化表面を実現するということに関連して、表面が定常的に分解する鉱物系の塗料をベースとする塗装材料が長い間使用されてきた。このプロセスによれば、チョーキングとして知られているように、その表面は絶えず再生し、表面に付着したほこりは塗料の分解プロセス中に除去される。しかし、これらの表面においては、ある場合には、露出した領域の不均一で完全な分解がばらばらの場所において起こり、チョーキングは塗料の急速な分解を引き起こし、それゆえ回復間隔を短縮するだけでなく、塗装表面と接触した場合、それに接触した材料(例えば、衣服)は塗料が分解した物質によって汚されるという不都合な点がある。
【0004】
鉱物系の塗料をベースとする自己清浄化塗装材料の他に、シリコーン樹脂塗料を含有する自己清浄化塗装材料も知られている。シリコーン樹脂塗料は、降雨によってほとんど濡れることがない疎水性の表面を形成する。ほこりの粒子は、水を流すことによって表面から洗い落される。しかし、そのような塗装材料については、自己清浄化特性を得るために必要とされる疎水性は、数カ月にわたって風雨にさらされた後でなければ十分に成長せず、そのために、塗装材料に含まれる水溶性成分を雨が完全に洗い流すには時間がかかるという問題があることが分かった。
【0005】
しかし、それでは、塗装が完成する最初の2、3カ月以内に汚れが増加するという可能性に結びつくことになる。そのようにして汚れる傾向は、乾燥時期が長期間続いた後に、特に見られる。その後、大量のほこりと汚染物質が空気中に存在し、降雨によって吸収される。ほこりの粒子は表層に堆積して湿気を吸収し、それらが堆積した建築物の良好な外観を損ない、表面全体を汚してしまう。
【0006】
特許文献1には、上記種類の塗装材料を使用して自己清浄化表面を作ることが記載されている。この刊行物に記載された塗装材料は、少なくとも二峰性の粒径分布を示す充填剤を含有している。その充填剤は、少なくとも5μmの粒径の粒子を含有する一方、最大で3μmの粒径の粒子を含有している。そのような塗装材料を使用すると、汚れた雨水が物体の表面を洗い流し、その表面に堆積したほこりの粒子は転がっていく水滴によって引き寄せられるという効果がある。さらに、上記刊行物に記載された塗装材料を使用すると、特別の充填剤を使用することによって得られる、雨水が表面を洗い流すという効果のために、耐久性のある乾燥した外観が得られる。これによって湿気による損害、特に、建築物の外側層が風雨にさらされることに伴う損害を予防することができる。さらに、建築物の外側が乾燥することによって、微生物に対する基本的な生存条件の重要な要素である水分を奪い去ってしまうことになる。そこで、公知の塗装材料を使用することによって得られる表面は、自然な状態において、生命をおびやかすものを添加することなく、菌類、藻類、地衣類などがはびこることはない。
【0007】
特許文献1に記載された塗装材料に匹敵する塗装材料が特許文献2に記載されている。この特許文献2に記載された塗装材料によれば、自己清浄化表面は、疎水性ポリマーまたは恒久疎水化材料を使用して、5ないし200μm離れた凸部を有する表面構造を形成することによって得られる。一方、そのような凸部は水または水含有洗浄剤によって分離されることはないことが確かめられている。この表面のミクロ構造は、特別のミクロ構造によって引き起こされる、いわゆる超疎水性による自己清浄化特性を生み出す。この特性は、ロータス効果として知られるようになった。
【0008】
上記刊行物によれば、好ましい表面構造は、すべての場合において以下のような処理が必要であることは確かめられているが、鍛圧、エッチング、フライス削り、又はほこりを伴う表面を被覆するような表面の後処理によって好ましい表面構造を得ることができる。このようにして得られる凸部は水または水含有洗浄剤によって除去されることはない。上記刊行物に記載された自己清浄化表面構造は、特別なスプレーを使うことによっても滑らかな表面上に得ることができる。
【0009】
特許文献3には、無機物バインダーおよび充填剤をベースとするプラスチック用塗装材料が記載されている。上記刊行物に記載された塗装材料は、無機物の汚れ成分および超親水性物質の分解によって自己清浄化するための光触媒作用を果たす活性剤を含有している。一方、上記塗装材料の製造に使用されるバインダーは光触媒作用を果たす活性剤の光触媒効果に対して安定である。
【0010】
特許文献4には、光触媒作用を果たす活性剤を含有する第一の塗装層と第二の塗装層を有する塗装製品が記載されている。上記刊行物に記載された2つの層の組み合わせは、光触媒作用によって分解しない光触媒作用の施された自己清浄化表面を生み出す。
【0011】
しかしながら、特許文献1および特許文献2によって公知である塗装材料を使用して、例えば、滑らかな表面に対してスプレーされると、特許文献2に強調されているように、ミクロ構造が水または水含有洗浄剤によって分離しないことが注意深く確かめられたとしても、最初に観察された顕著な自己清浄化特性を永久に維持することはできないことが分かった。
【特許文献1】国際公開第00/39049号パンフレット
【特許文献2】欧州特許第0772514B1号明細書
【特許文献3】国際公開第00/06633号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第0916411A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は上記塗装材料を適用することに伴って起こる問題を解決することにある。本発明は、塗装材料が雨にさらされたり、移動水にさらされたり、風による圧力を受けても、その自己清浄化特性が永久に維持される塗装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、上記課題は公知の塗装材料を改良することによって解決される。本発明の塗装材料は、バインダーが少なくとも部分的に触媒によって化学分解し、少なくとも一種類の触媒作用を果たす活性剤を含有することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
鉱物系の塗料をベースとする公知の塗装材料において発生するチョーキングのような好ましくない現象を防ぐために、塗装材料の組成は、バインダーの光触媒による分解がDIN EN ISO 4628-6のチョーキングレベル1相当か又はそのチョーキングレベル1未満となるように選択されるのが好ましい。
【0015】
本発明による塗装材料が外部塗装として、(均分円の方向及びこれに垂直な方向の試料による)EN ISO 2810に従って外部風化試験にさらされるとき、バインダーの光触媒による分解によって1年間に0.1μm以上、好ましくは1μm以上塗装材料の層の厚さが薄くなるという現象によって、好ましい自己清浄化特性を永久に達成することは、本発明の技術的範囲内であることが確かめられる。
【0016】
本発明は、欧州特許第0773514B1号明細書に記載されているように、水及び/または洗浄剤と接触することによって表面粒子が分離するために表面構造が損傷を受けるということに加えて、機械的負荷によって起こされる表面構造の変化が観察されるという事実に本質的に基づいて公知の塗装物質において観察される自己清浄化特性の喪失が起こるという洞察結果に基づいている。例えば、空気によって運ばれてくる粒子によって引き起こされる負荷は外観表面のミクロ構造に損傷を与え、自己清浄化特性の喪失をもたらすことになる。
【0017】
本発明の塗装材料を使用すると、充填粒子の間のバインダー層が触媒によって化学分解することによって新しいミクロ構造が定常的に生成されるというような損傷表面の自動再生メカニズムが伴われる。100μmの未満の大きさ及び/または表面粗さの充填粒子を使用すると、新しく生成した表面構造は好ましい超疎水性を示し、自己清浄化特性を永久に維持する表面を形成することができる。
【0018】
ここに、本発明者による洞察は、特許文献2においてはまさに避けねばならなかった表面層の除去が、もし、塗装材料が好ましい表面構造または粒径を有する粒子を含有するならば、その表面層が好ましい特性の保持という観点から利点になるという点を利用していることにある。
【0019】
本発明の塗装材料の使用中に起こる触媒作用によるバインダーの化学分解があっても、上記鉱物系の塗料に伴って起こる問題が発生しない。というのは、触媒によるバインダーの分解速度は適切な触媒作用を果たす活性剤の使用によって制御できるからであり、これらの分解産物の十分な量が洗い流されること及び/または揮発性材料が触媒による分解の間に生成し、最初の場所における自己清浄化表面にその揮発性材料が蓄積しないという事実により、目に見える汚れを引き起こす分解産物の蓄積は起こらない。
【0020】
触媒によるバインダーの化学分解が短期間の回復間隔という結果にならないように、選択された粒子の大きさ及び/または表面粗さに従ってその表面を好ましく再生するために必要な速度を定めなければならない。
【0021】
全体として言えば、本発明による塗装材料を使用することで、表面が自動再生されるにも関わらず、風雨に対する十分な抵抗力が得られるようになる。塗装材料の風雨に対する抵抗とは、例えば、塗装面が、日光、紫外線、温度、酸素、湿気及び/または水分のような塗装を破壊する外的影響に耐えることができるような特性を有することをいう。一般的な塗装材料について言えば、二酸化チタン顔料のように光触媒作用のある塗装成分に、その光触媒作用を低減するような表面処理を施すことによって天候に対する耐性が得られる。このように、塗装材料に対する優れた保護効果のある安定性の高い顔料が一般的な塗装についても得られる。これらの知られた材料に残留している光触媒作用によって、1年間にわずか数μmづつの層厚さの減少が観察されるように、層の厚さは風雨にさらされることによってゆっくりと何年もかけて減少していく。
【0022】
優れた光触媒作用を果たす活性剤を添加することによって、表面処理された光触媒作用を果たす活性剤を伴う一般的な材料の分解速度よりも速いが、好ましくないチョーキングを避けるようにバインダーと光触媒作用を果たす活性剤とを選択することによって分解速度を調整しながら、バインダーの化学分解を好ましい範囲に規制する点において、本発明の塗装材料はそれらの知られている材料とは異なる。
【0023】
分解速度及び/または分解産物の特性を好ましい範囲に調整することに関して、少なくとも部分的に光触媒によって化学分解するバインダーと、少なくとも一種類の光触媒作用を果たす金属酸化物を含む触媒作用を果たす活性剤とを含有することは特に有利であることが分かった。
【0024】
光触媒によって化学分解するバインダーは、ポリマー分散水、水に再分散することができるポリマー分散物、疎水性樹脂及び/または予備樹脂製品である。
【0025】
光触媒作用を果たす活性剤は、光触媒作用を果たす金属酸化物の形態をとることができる。好ましい分解特性を考慮すると、光触媒作用を果たす活性剤としては、触媒作用を果たす活性剤の全量に対して、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらに好ましくは少なくとも90重量%である、チタン、亜鉛、鉄、マンガン、モリブデン及び/またはタングステンの酸化物を用いることができる。
【0026】
さらに、もし触媒作用を果たす活性剤が、触媒作用を果たす活性剤の全量に対して、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは1重量%超で10重量%以下、より好ましくは2.5重量%超で10重量%以下、一層好ましくは5重量%以上で10重量%以下である、C、N、S及び/またはPt、Rh、Mn、Cr、Ru、Ni、Pd、Fe、Co、Ir、Cu、Mo、Zr、Re、AgおよびAuからなるグループから選択される元素の酸化物及び/またはハロゲン化物である少なくとも一種類の添加剤、特に、イオンを含有することによって、触媒特性および生成する分解産物の調整を行うことができる。これによって、太陽光線のスペクトルの可視範囲の波長においても触媒特性を励起することができ、太陽から離れている建築物の北側の塗装に対しても作用することが可能になる。
【0027】
有機材料の分解に対して適切な光触媒は、ドイツ国特許出願公開第19757496A1号明細書に記載されている。光触媒の構造と分解に関してこの刊行物に開示された内容は、本願中に含まれている。
【0028】
光触媒作用を果たす金属酸化物に関連する光触媒によって分解するバインダーの使用については、有機物のよごれが光触媒によって化学分解する現象が付加的に起こることによって自己清浄化が維持されるということに伴ってロータス効果を有する自己再生表面が得られるという点は、特に有利であることが分かった。
【0029】
特に好ましい自己清浄化特性を得ることに関しては、もし、触媒作用を果たす活性剤が硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化チタン、好ましくは部分的に結晶形態であるか又はアナタース形の二酸化チタンを含有することが有利であることが分かった。
【0030】
本発明の塗装材料を使用すると、もし、充填剤が、10μm以下の大きさ及び/又は表面粗さの粒子、特に、1μm以下の大きさ及び/又は表面粗さの粒子、さらに好ましくは高分散性のシリカの形態であるナノ粒子を含有するならば、顕著な疎水性が得られるために特に好ましい自己清浄化特性が達成される。塗装材料は、60重量%未満、好ましくは40重量%未満、特に好ましくは30重量%未満の好ましい粒径または表面粗さを有する充填剤を含有することが有利である。
【0031】
好ましい自己清浄化特性を得ることに関して、もし、塗装材料が過剰なバインダーを使用して調製されるならば、一層有利であることが分かった。
【0032】
従って、本発明による層は、含有される充填剤が高分散性のシリカのようなナノ粒子を少なくとも部分的に含むことに特徴がある重要な調製法または副次的に重要な調製法で調製される。当業者であれば、重要な調製法または副次的に重要な調製法とは、顔料、充填剤および間隙が、それぞれバインダーによって完全に囲まれる調製法であると理解することができる。
【0033】
塗装材料の表面または塗装材料を使用することによって得られるフィルムの表面は乾燥しており、バインダー、充填剤および顔料の閉じた層によって硬化状態にある。このようにして形成される塗装表面は自己清浄化特性を示さない。
【0034】
可視光線を最も簡単な形で利用するために、ドイツ国特許出願公開第19757496号明細書に記載されている多孔質の光触媒のような光触媒作用を果たす金属酸化物を添加することによって、硫化亜鉛、酸化亜鉛、二酸化チタン、好ましくは部分的に結晶形態であるか又はアナタース形の二酸化チタンを使用すると、日光または紫外線の効果による触媒の作用によって有機成分が化学分解するために、バインダーのフィルムが、外側表面の外側層で最初に分解する。このバインダーの分解によって、疎水特性を伴うミクロな表面構造を形成しているナノ粒子が露出する。例えば、高分散性のシリカゲルのようなポリマー分散物とナノ粒子の組み合わせ、いわゆるナノコンポジットを使用することは有利である。ナノコンポジットの場合、ナノ粒子はすでにポリマー分散粒子の表面に蓄積している。
【0035】
表面において起こるバインダーの光触媒作用による化学分解だけでなく、有機汚染物の粒子の光触媒作用による化学分解は、当業界の一般レベルに比べて十分に効果的で耐久性のある自己清浄化作用を生み出す。そのプロセスにおいて、その表面は定常的に起こるバインダーの化学分解によって絶えず再生され、ミクロ構造の喪失による自己清浄化特性の低減は確実に防がれる。
【0036】
しかし、光触媒作用による化学分解は、上記チョーキング表面に比べて非常に少ないので、チョーキング表面に当てはまる不利な点は避けることができる。
【0037】
国際公開第00/39049号パンフレットに提案されている塗装材料とは反対に、本発明の塗装材料は10μm以下の平均粒径、特に1μm以下の平均粒径、特に好ましくは0.1μm以下の平均粒径を有する単峰性の粒径分布である充填剤を含有する。
【0038】
特に好ましい本発明の実施形態としては、塗装材料は、選択的に、0.01重量%から0.1重量%の顔料分散剤で、特に0.05重量%の顔料分散剤と、0.1重量%から1重量%の増粘剤で、特に約0.3重量%の増粘剤と、5重量%から30重量%の他の充填剤で、特に10重量%から20重量%の他の充填剤で、例えば、微細な石英のような充填剤と、10重量%から20重量%の顔料で、特に約15重量%の顔料と、2重量%から8重量%の疎水化剤で、特に約6重量%の疎水化剤と、4重量%までの溶剤と、0.8重量%までの保存料及び/または35重量%までの水とともに、 10重量%から30重量%のバインダーで、特に約20重量%の光触媒作用で化学分解するようなバインダーと、2重量%から30重量%の充填剤で、特に5重量%から15重量%の充填剤で、特に好ましくは約10重量%の充填剤で、平均粒径が1μm以下の充填剤であって、特に平均粒径が0.1μm以下であるナノスケールシリカのような充填剤と、2重量%から15重量%の光触媒作用を果たす顔料で、特に3重量%から8重量%の光触媒作用を果たす顔料で、特に好ましくは約5重量%の光触媒作用を果たす顔料で、必要ならば、C、N及び/またはSを伴うTiO2のような光触媒作用を果たす顔料とを含有している。
【実施例】
【0039】
本発明の塗装材料の好ましい調製例は下記のとおりである。
【0040】
水=26.6重量%、
顔料分散剤=0.05重量%、
増粘剤=0.3重量%、
バインダー=20重量%、
微細な石英(充填剤)=15重量%、
ナノスケールシリカ=10重量%、
TiO2(顔料)=15重量%、
光触媒作用を果たす顔料=5重量%、
疎水化剤=6重量%、
溶剤=2重量%、
保存料=0.05重量%
上記薬剤の合計=100重量%
要するに、ロータス効果の利点を有する自己清浄化表面のすべての適用例の不利な点は、ロータス効果を生み出すナノテクノロジーと光触媒の組み合わせによる本発明によって解消されることを記載することができる。
【0041】
ミクロ/ナノ構造を有する表面のロータス効果によって、水の接触面積が極端に小さくなり、水と表面のエネルギーの相互作用は、1%未満になる。
【0042】
塗装構造の作製のために使用される塗装材料に対して、ナノゲルベースのシリカのようなナノスケールの粒子を添加することによって、表面が連続して風雨にさらされるているうちに何度も何度も上記粒子によって表面構造が効果的に再生されるという本発明の作用によって、そのような塗装の耐久性は改善される。
【0043】
このプロセスのために、本発明は、特に、ナノスケールの充填剤の添加によって約150μmの厚さを有する一塗料層中に無数のナノスケールの表面層がすでに存在し、それによって次の表面層は自動的に、風雨にさらされる外側面の表面層に引き続いて効果を発揮するようになるという利点を有する光触媒を使用する。
【0044】
このプロセスにおいて、本発明のナノスケールの充填剤を囲むバインダーは化学分解し、その表面に新しいナノ構造を生み出す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、10μm以下の大きさ及び/または表面粗さの粒子、好ましくは1μm以下の大きさ及び/または表面粗さの粒子、特に好ましくは0.1μm以下の大きさ及び/または表面粗さの粒子を含有する少なくとも一種類の充填剤と、光触媒作用を果たす活性剤とを含む塗装材料であって、
バインダーは光触媒作用によって少なくとも部分的に化学分解し、好ましくは、光触媒作用による分解はDIN EN ISO 4628-6のチョーキングレベル1相当か又はそのチョーキングレベル1未満であって、(均分円の方向及びこれに垂直な方向の試料による)EN ISO 2810に従って外部風化試験を行ったとすれば、塗装材料によって形成される外側塗装の層の厚さは、1年間に0.1μm以上、好ましくは1μm以上光触媒作用によって減少するようにミクロ構造の自己清浄化表面が作られることを特徴とする塗装材料。
【請求項2】
バインダーは少なくとも部分的に光触媒作用によって化学分解され、触媒作用を果たす活性剤は少なくとも一種類の光触媒作用を果たす金属酸化物を含有することを特徴とする請求項1記載の塗装材料。
【請求項3】
バインダーは、ポリマー分散水、水の中に再分散することができるポリマー分散物、疎水性樹脂及び/または予備樹脂製品またはナノコンポジットであることを特徴とする請求項1または2記載の塗装材料。
【請求項4】
バインダーは、シリコーンまたはケイ酸塩を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項5】
触媒作用を果たす活性剤は、触媒作用を果たす活性剤の全重量に対して60重量%以上、好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上のチタン、亜鉛、鉄、マンガン、モリブデン及び/またはタングステンの酸化物を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項6】
触媒作用を果たす活性剤は、触媒作用を果たす活性剤の全重量に対して、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは1重量%超で10重量%以下、より好ましくは2.5重量%超で10重量%以下、一層好ましくは5重量%以上で10重量%以下である、C、N、S及び/またはPt、Rh、Mn、Cr、Ru、Ni、Pd、Fe、Co、Ir、Cu、Mo、Zr、Re、AgおよびAuからなるグループから選択される元素の酸化物及び/またはハロゲン化物である少なくとも一種類の添加剤、特に、イオンを含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項7】
光触媒作用を果たす活性剤は、二酸化チタン、特に、アモルファス形態、部分的に結晶形態またはアナタース形である、C、N及び/またはSを伴うTiO2からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項8】
充填剤は、10μm以下の大きさ及び/または表面粗さの粒子、特に1μm以下の大きさ及び/または表面粗さの粒子、さらに好ましくは高分散性のシリカの形態のナノ粒子を含有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項9】
高分散性のシリカの形態のナノ粒子の充填剤は、好ましくは、ゾル・ゲル法を使って析出によって製造されるシリカゲルであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項10】
少なくとも一種類の充填剤は、10μm以下の平均粒径、特に1μm以下の平均粒径、特に好ましくは0.1μm以下の平均粒径である単峰性の粒径分布を示すことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項11】
塗料材料は、過剰な充填剤を使用して調製されることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項12】
塗料材料は、顔料及び/または市場で入手可能な添加剤、特に促進剤及び/またはリターダーを含有することを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項13】
選択的に、0.01重量%から0.1重量%の顔料分散剤で、特に0.05重量%の顔料分散剤と、0.1重量%から1重量%の増粘剤で、特に約0.3重量%の増粘剤と、5重量%から30重量%の他の充填剤で、特に10重量%から20重量%の他の充填剤で、例えば、微細な石英のような充填剤と、10重量%から20重量%の顔料で、特に約15重量%の顔料と、2重量%から8重量%の疎水化剤で、特に約6重量%の疎水化剤と、4重量%までの溶剤と、0.8重量%までの保存料及び/または35重量%までの水とともに、
10重量%から30重量%のバインダーで、特に約20重量%の光触媒作用で化学分解するようなバインダーと、2重量%から30重量%の充填剤で、特に5重量%から15重量%の充填剤で、特に好ましくは約10重量%の充填剤で、平均粒径が1μm以下の充填剤であって、特に平均粒径が0.1μm以下であるナノスケールシリカのような充填剤と、2重量%から15重量%の光触媒作用を果たす顔料で、特に3重量%から8重量%の光触媒作用を果たす顔料で、特に好ましくは約5重量%の光触媒作用を果たす顔料で、必要ならば、C、N及び/またはSを伴うTiO2のような光触媒作用を果たす顔料とを含有する請求項1ないし12のいずれか1項に記載の塗装材料。
【請求項14】
建築物の正面、特に、外側正面及び/または他の部分の塗装用としての請求項1ないし13のいずれか1項に記載の塗装材料の使用。

【公表番号】特表2007−532737(P2007−532737A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507769(P2007−507769)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004033
【国際公開番号】WO2005/100459
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(506340840)エステーオー アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】