説明

塗装用スプレーガン

【課題】安価且つ簡略な構造において、霧化した塗料の噴射の方向や位置を任意に変化させ得る塗装用スプレーガンを提供する。
【解決手段】ガン本体に、長尺で湾曲変形可能な可撓管からなるエア流通管と塗料を収容する塗料容器とを取り付ける一方、エア流通管の先端部に、圧縮エアの噴出孔76を有するノズル部32を設け、更に、塗料容器から延び出す、長尺で湾曲変形可能な可撓管からなる塗料供給管40をノズル部32に接続する。そして、塗料供給管からノズル部32に供給される塗料を、エア流通管を経てノズル部32内を流通せしめられる圧縮エアに合流させて、霧化する一方、それら圧縮エアと霧化した塗料とを共にノズル部32の噴出孔76に導く合流部58,71を、ノズル部32の先端部に設けて、構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装用スプレーガンに係り、特に、塗料を圧縮エアによって霧化して、噴射させる塗装用スプレーガンの新規な構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料を霧状にして、被塗装物に吹き付けて塗装を行うための装置として、スプレーガンが、広く用いられてきている。この塗装用スプレーガンには、各種の構造のものがあり、その中の一種として、外部から供給される圧縮エアと塗料の流路が内部にそれぞれ別個に設けられるガン本体の前端部に、塗料吐出口とエア噴出口とを有するノズル部が設けられ、ガン本体に内蔵されたニードル弁等の弁体の開閉操作に伴って、ノズル部の塗料吐出口から吐出される塗料に対して、エア噴出口から噴出される圧縮エアを衝突させることにより、塗料を微粒子として霧化させて、圧縮エアと共に被塗装物に向かって噴射するようにした構造を有するものが、知られている。
【0003】
このような構造を有するスプレーガンにおいては、例えば、ガン本体に取り付けられるトリガーレバーを単に回動操作するだけの極めて単純且つ簡単な操作を行うことにより、弁体が開閉されて、塗料が被塗装物に噴射される(吹き付けられる)ようになっている。そのため、例えば、ローラや刷毛等を用いる場合に比して、塗装作業に掛かる労力負担を効果的に軽減することが可能となる。しかしながら、被塗装物の塗装されるべき部分が、狭い奥まった箇所であったり、或いは返りのある、比較的に小さな開口部を備えた、断面C形形状等を呈する被塗装物の内面全面であったりする場合等においては、上記の如き従来のスプレーガンを用いて、それらの箇所を均一に塗装することが、容易ではなかった。
【0004】
かかる状況下、例えば、下記特許文献1等には、内部にエア流路と塗料流路とが平行して設けられると共に、塗料吐出口とエア噴出口とが先端に設けられた細長いスプレーノズルがガン本体の前端部に取り付けられてなるものが、また、下記特許文献2や3等には、そのような細長いスプレーノズルが可撓性を有し、自在に湾曲変形可能とされたものが、それぞれ提案されている。これらの構造を有するスプレーガンに用いれば、狭い奥まった箇所の被塗装部分の直近に塗料吐出口とエア噴出口を位置させることが出来、また、スプレーノズルを湾曲変形させることで、スプレーガンの向きを変えることなく、霧化した塗料の噴射方向だけを任意の方向に変えることが出来る。そして、それによって、それまでのスプレーガンでは塗装が困難であった被塗装箇所を、均一に且つ容易に塗装することが可能となるのである。
【0005】
ところが、そのような細長い、しかも湾曲変形自在とされたスプレーノズルが前端部に取り付けられた従来のスプレーガンにあっては、塗料が、ガン本体の前端部から細長いスプレーノズル内の比較的に延長距離の長い塗料流路を経て、スプレーノズル先端にまで送り出され、そして、かかるスプレーノズルの塗料吐出口から吐出せしめられるようになるために、スプレーガンとは別個の独立した加圧タンク(圧送タンク)から延びる塗料用ホースが、ガン本体に接続され、この塗料用ホースを通じて、加圧タンク内の塗料がガン本体内の塗料流路に圧送されるようになっている。しかも、かかるガン本体には、塗料用ホースに加えて、コンプレッサやブロワ等の圧縮エア供給源から延びるエア用ホースも直接に接続されている。
【0006】
このため、かくの如き細長いスプレーノズル付スプレーガンを使用する場合には、スプレーガンの付属設備が必然的に大がかりなものとなって、設備コストが高騰してしまうことが避けられなかった。しかも、色替え等の際に、スプレーガンやスプレーノズルに加えて、塗料用ホースや加圧タンクも全て洗浄しなければならないところから、洗浄作業が極めて面倒であるだけでなく、加圧タンクが比較的に大型であるために、かかる加圧タンク内に残存して、洗浄の際に、無駄に廃棄される塗料の量が不可避的に多くなってしまうといった問題も内在していた。
【0007】
一方、下記特許文献4乃至6に明らかにされるように、従来のスプレーガンには、複数箇所の被塗装部分を同時に塗装するために、或いは被塗装面に形成される塗膜の厚さを均一とすること等を目的として、ガン本体の前端部に、塗料吐出口とエア噴出口とをそれぞれ備えた複数のノズル部を設けてなるものもある。ところが、このような従来の多頭タイプのスプレーガンにあっては、複数のノズル部が、塗料の噴射方向を予め定められた特定の方向に固定した状態でガン本体に設けられているため、様々な方向に位置する複数の被塗装部分を一挙に塗装することが出来なかった。
【0008】
なお、下記特許文献7に明らかにされるように、複数のノズル部を、所定の支持具に対して、ねじ止め等により、それぞれ回動可能に設けて、複数のノズル部からの塗料の噴射方向を互いに別個に独立して変化させ得るようにしたスプレーガンもある。しかしながら、かかるスプレーガンでは、各ノズル部の噴射方向を変える際に、一々、ねじを緩めたり、締め付けたりするのが面倒であった。しかも、噴射方向を、あくまでも二次元の限られた範囲内でしか変えることが出来ず、それ故、たとえノズル部が3個以上有していても、各ノズル部の塗料の噴射方向を、例えば、三次元的に変化させることは不可能であって、自由に変化させることが出来なかったのである。
【0009】
【特許文献1】特開2005−30204号公報
【特許文献2】特開平2−15572号公報
【特許文献3】特開2001−104843号公報
【特許文献4】特開2002−66393号公報
【特許文献5】実開昭59−65758号公報
【特許文献6】実開昭59−65757号公報
【特許文献7】実開平1−69648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にした為されたのものであって、その解決課題とするところは、ガン本体の向きを変えることなく、霧化した塗料の噴射方向や噴射位置だけを任意に変えることが出来る構造が、安価且つ簡略で、しかも洗浄の際の手間や廃棄される塗料の量を可及的に少なく出来る構造において有利に実現されてなる塗装用スプレーガンを提供することを、その第一の解決課題とするものである。また、本発明は、霧化した塗料の噴射方向や噴射位置を、より広い範囲において、更に一層自由に且つ容易に変え得る塗装用スプレーガンを提供することを、その第二の解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明の態様を記載する。なお、以下の記載の態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体及び図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することが出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0012】
そして、上記第一の課題を解決するために、本発明の第一の態様とするところは、塗料を圧縮エアによって霧化して、噴射させる塗装用スプレーガンであって、(a)前記圧縮エアを外部から供給するエア供給管が接続されたガン本体と、(b)前記エア供給管に連通して、前記ガン本体から延び出す、長尺で湾曲変形可能な可撓管からなり、該ガン本体に設けられた弁体の開作動により、該エア供給管にて供給される前記圧縮エアが内部を流通せしめられるエア流通管と、(c)該エア流通管内を流通する前記圧縮エアを外部に噴出させる噴出孔を有して、該エア流通管の先端部に設けられたノズル部と、(d)前記ガン本体に取り付けられた、前記塗料が収容される塗料容器と、(e)該塗料容器から延び出して、前記ノズル部に接続される長尺で湾曲変形可能な可撓管からなり、該塗料容器内の塗料を該ノズル部内に供給する塗料供給管と、(f)前記ノズル部の先端部に設けられ、前記塗料供給管を通じて該ノズル部に供給された前記塗料を、前記エア流通管内を流通せしめられる前記圧縮エアに合流させて、霧化する一方、それら圧縮エアと霧化した塗料とを共に前記噴出孔に導く合流部とを含んで構成されていることを特徴とする塗装用スプレーガンにある。
【0013】
また、このような本発明に従う塗装用スプレーガンの第二の態様では、前記第一の態様に係る塗装用スプレーガンにおいて、前記エア流通管と前記塗料供給管とが、互いに別個の独立した管体にて構成される。
【0014】
さらに、本発明に従う塗装用スプレーガンの第三の態様では、前記第一又は第二の態様に係る塗装用スプレーガンにおいて、前記エア流通管が、湾曲変形せしめられたときに、かかる変形状態が維持可能な材質又は構造を有する管体にて構成される。
【0015】
更にまた、本発明に従う塗装用スプレーガンの第四の態様では、前記第一乃至第三のうちの何れか一つの態様に係る塗装用スプレーガンにおいて、前記塗料容器内の前記塗料が、前記圧縮エアの吸込み作用により、該塗料容器内から吸い上げられて、前記塗料供給管を通じて前記ノズル部に供給されるように構成される。
【0016】
そして、本発明に従う塗装用スプレーガンの第五の態様では、前記せる第二の課題の解決のために、前記第一乃至第四の態様に係る塗装用スプレーガンにおいて、前記エア流通管が、前記ガン本体から複数延び出して、それら複数のエア流通管のそれぞれの先端部に、前記ノズル部が設けられる一方、前記塗料供給管が、前記塗料容器から複数延び出して、該複数のノズル部にそれぞれ接続され、該複数の塗料供給管を通じて該複数のノズル部に供給された前記塗料が、該複数のノズル部の先端部にそれぞれ設けられた前記合流部にて前記圧縮エアと合流し、霧化せしめられて、それら各ノズル部の前記噴射孔から外部に噴射されるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
すなわち、本発明に従う塗装用スプレーガンの第一の態様にあっては、ガン本体から延びるエア流通管を湾曲変形させると共に、ガン本体に取り付けられた塗料容器から延びる塗料供給管を、エア流通管に追従させるように湾曲変形させることによって、ガン本体の向きや姿勢を変えることなく、霧化した塗料の噴射方向と噴射位置だけを任意に変えることが出来る。
【0018】
そして、特に、かかる塗装用スプレーガンにおいては、内部に塗料が収容される塗料容器が、ガン本体に取り付けられると共に、そのような塗料容器から延びる塗料供給管が、エア流通管の先端のノズル部に接続され、更に、このノズル部に設けられた合流部において、塗料が圧縮エアと合流されるようになっている。それ故、例えば、圧縮エア供給源から延びるエア用ホースに加えて、スプレーガンとは別個の加圧タンクから延びる塗料用ホースがガン本体に接続されて、この塗料用ホースを通じて、加圧タンクから塗料が圧送されるように構成された従来の塗装用スプレーガンとは異なって、スプレーガンとは独立した加圧タンクや、かかる加圧タンクとスプレーガンとを繋ぐ塗料用ホースが省略され、それにより、スプレーガンと共に塗装作業に必要な付属設備が小規模化されて、かかる付属設備を含む全体構造が簡略化され得ると共に、設備コストの低減が有利に図られ得る。
【0019】
しかも、塗料が圧縮エアと合流せしめられる合流部がノズル部の先端部に設けられているところから、塗料容器内の塗料を長尺な塗料供給管を通じてノズル部の先端部に送り出すのに、ガン本体に取り付けられた塗料容器内に所定の圧力を掛けて、塗料容器内からノズル部に向かって塗料を圧送させる必要が有利に解消され得る。このため、塗料容器を加圧タンク等よりも十分に小型化することが出来、それによって、塗装作業の終了後等に塗料容器内に残存して、洗浄の際等に、無駄に廃棄される塗料の量を効果的に減少させることが出来る。
【0020】
従って、かくの如き本発明に従う塗装用スプレーガンにあっては、ガン本体の向きを変えることなく、霧化した塗料の噴射方向や噴射位置だけを任意に変えることが出来、しかも、それが、安価且つ簡略で、しかも洗浄の際の手間や廃棄される塗料の量を可及的に少なく出来る構造において、極めて有利に実現され得るのである。
【0021】
また、本発明に従う塗装用スプレーガンの第二の態様によれば、エア流通管と塗料供給管とを互いに別個の材質において形成することが出来る。それによって、例えば、エア供給管を、圧縮エアによって破損することのない十分な耐圧性を備えた材料にて形成する一方、塗装供給管を、耐圧性には乏しいものの、内部を視認可能な透明性を有する材料にて形成する等、エア流通管と塗料供給管とを、それぞれのものにおいて必要とされる適正な特性のみを有するように構成することが出来る。
【0022】
さらに、本発明に従う塗装用スプレーガンの第三の態様によれば、塗料の噴射方向を、所望の方向に維持させることが可能となる。
【0023】
更にまた、本発明に従う塗装用スプレーガンの第四の態様によれば、塗料容器を、ガン本体に対して、その下側に位置するように取り付けることが出来る。それによって、例えば、塗料容器が、ガン本体に対して、その上側に位置するように取り付けられる場合に比して、塗料容器の容量を大きくしても、スプレーガンを安定的に把持して、取り扱うことが出来る。その結果として、塗装作業が、よりスムーズに且つ効率的に行われ得るといった利点が得られる。
【0024】
そして、本発明に従う塗装用スプレーガンの第五の態様によれば、例えばねじの締緩操作等の面倒な操作を何等行うことなく、単に、複数のエア流通管を、互いに異なる形状乃至は方向に湾曲変形させると共に、複数の塗料供給管を、それらのエア流通管に追従させるように湾曲変形させるだけで、ガン本体の向きを変えることなく、塗料の噴射方向を、二次元的には勿論、三次元的にも、より広い範囲において、更に一層自由に且つ容易に変えることが出来、また、ノズル部同士の間隔も、より大きく且つ更に自由に調節することが可能となる。その結果、より幅広い条件の下で、塗装作業が確実に且つ極めて有利に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明することとする。
【0026】
先ず、図1には、本発明に従う構造を有する塗装用スプレーガンの一実施形態が、その正面形態において概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、本実施形態のスプレーガンは、ガン本体10を有して構成されている。また、このガン本体10は、例えばコンプレッサ等の圧縮エアの供給源から延びるエア用ホースの先端に取り付けられる従来のエアガンと同様な基本構造を有している。
【0027】
即ち、ガン本体10は、全体としてピストル形状を呈し、所定長さを有する胴体部12と、この胴体部12の長さ方向の一端部側(図1中、右側)から下方に延びるグリップ部14と、胴体部12の長さ方向中間部に回動可能に取り付けられたトリガーレバー16とを、一体的に備えている。なお、以下からは、便宜上、ガン本体10におけるグリップ部14が設けられる長さ方向一方側(図1中、右側)を後部と言い、またその反対側(図1中、左側)を前部と言うこととする。
【0028】
かかるガン本体10においては、グリップ部14の下端部に、管状のホースジョイント18が設けられる一方、胴体部12の前端部に、管状のニップル20が取り付けられている。また、ガン本体10の内部には、グリップ部14と胴体部12とに跨って、連続して延びるエア流路22が設けられており、このエア流路22の両端部が、ホースジョイント18とニップル20のそれぞれの内側開口部に対して、それぞれ連結されている。更に、ホースジョイント18の外側開口部には、図示しないコンプレッサ等の圧縮エアの供給源から延びる、エア供給管としてのエア用ホース24が接続されている。そうして、エア用ホース24を通じて外部から供給される圧縮エアが、ホースジョイント18からガン本体10内部のエア流路22内に導入されて、このエア流路22内をニップル20側の端部に向かって流通せしめられ、更に、かかるニップル20の外側開口部を通じて外部に吹き出されるようになっている。
【0029】
また、グリップ部14内のエア流路22上には、エア流路22を開閉する弁体としての開閉弁26が設けられている。この開閉弁26は、胴体部12に取り付けられたトリガーレバー16の回動操作によって開閉せしめられるようになっている。即ち、ここでは、トリガーレバー16が、何等回動せしめられることのない通常状態では、開閉弁26が閉状態とされて、ホースジョイント18からエア流路22内に導入された圧縮エアのニップル20側への流通が阻止乃至は遮断されるようになっている一方、トリガーレバー16が、図示しないコイルスプリング等による付勢力に抗して、グリップ部14に接近する側に回動せしめられたときには、開閉弁26が開作動して、ホースジョイント18からエア流路22内に導入された圧縮エアのニップル20側への流通が許容されて、かかる圧縮エアが、ニップル20の外側開口部から外部に吹き出されるようになっている。また、図示しないコイルスプリング等による付勢力によって、トリガーレバー16が、グリップ部14から離隔する側に回動せしめられて、再び、回動前の通常位置に復帰すると、エア流路22内での圧縮エアの流通が阻止されて、ニップル20の外側開口部からの圧縮エアの吹出しが停止せしめられるようになっている。
【0030】
そして、本実施形態のスプレーガンにおいては、特に、ガン本体10の前端部に設けられたニップル20に対して、自在に湾曲変形可能なエア流通管30が接続されて、このエア流通管30内にエア流路22からの圧縮エアが流入せしめられるようになっている。また、かかるエア流通管30のガン本体10側とは反対側となる前側の先端部には、特殊な構造を有するノズル部32が設けられている。そして、ガン本体10の前端部に設けられたニップル20の下側において、塗料容器28が着脱可能に取り付けられている。
【0031】
より詳細には、塗料容器28は、軟質の樹脂材料を用いて形成された矩形のボトルからなり、比較的に薄肉で、十分な軽量性を有している。また、塗料容器28の上側底部の中央部には、円筒状の取付筒部34が、上方に向かって所定高さで延び出すようにして、一体的に設けられている。そして、この取付筒部34の内孔にて、塗料容器28の内部と外部とが互いに連通せしめられて、かかる取付筒部34の内孔の外側開口部が、塗料容器28内に所定の塗料を注ぎ入れるための注ぎ口36とされている。また、そのような取付筒部34の上端部側の外周面には、雄ねじ部(図示せず)が設けられている。そして、この雄ねじ部が、接続キャップ39に設けられた雌ねじ部(図示せず)に螺合されることにより、塗料容器28に接続キャップ39が塗料容器28の取付筒部34に着脱可能に取り付けられると共に、注ぎ口36が流体密に閉塞されている。
【0032】
また、本実施形態においては、塗料容器28と螺合される接続キャップ39の雌ねじ部が、一般的なペットボトルの蓋部材と略同様の構造とされている。これにより、市販されている様々な容量のペットボトルを接続キャップ39に取り付けることが可能とされており、低コストで容易に入手可能な各種の飲料用ペットボトルの空き容器等を塗料容器28として利用することが可能とされている。また、かかる接続キャップ39の他方の端部にも、図示しない雌ねじ部が設けられている。
【0033】
さらに、塗料容器28においては、長尺な塗料供給管40が、上側底部を貫通して、下側底部の近傍に達する位置まで延びるように取り付けられている。
【0034】
そして、ここでは、この塗料供給管40が、適度な硬度を維持しつつ、十分な可撓性が発揮されるように、例えば、ポリエチレン等を用いて形成された透明な樹脂チューブにて構成されている。これによって、塗料供給管40に対して曲げ力が加えられたときに、かかる塗料供給管40が、しなやかに且つ自在に湾曲変形せしめられ、以て、局部的に折れ曲がって、内孔が狭窄乃至は閉塞せしめられることが防止されるようになっている。また、透明性を有することで、内部を流通する塗料の流動状態が、外部から容易に視認乃至は確認出来るようになっている。更に、この塗料供給管40の長さは、特に限定されるものではないものの、ノズル部32への接続部から塗料容器28に至るまでの長さが、後述するエア流通管30の長さと同様に、好ましくは15cm以上、より好ましくは30cm以上、更に好ましくは50cm以上とされる。なお、塗料供給管40は、長手方向の適当な位置で、エア供給管30に対して結束バンド等を用いてエア流通管30に対して連結支持されていても良い。
【0035】
そして、そのような塗料供給管40が接続された塗料容器28が、接続キャップ39を介して、ガン本体10の前端部に取り付けられたニップル20に対して、着脱可能に取り付けられている。すなわち、ニップル20の下側において一体的に突出形成された、取付突部41の雄ねじ部(図示せず)に、接続キャップ39の一方雌ねじ部が螺合されると共に、他方の雌ねじ部に塗料容器28の取付筒部34が螺合されることで、ガン本体10の前部の下側部分において、塗料容器28がニップル20に対して着脱可能に取り付けられているのである。また、そのような取付状態下で、注ぎ口36が、接続キャップ39にて液密且つ気密に閉塞せしめられるようになっている。
【0036】
一方、ガン本体10の前端部のニップル20の前端部側に連通状態で取り付けられたエア流通管30は、図1及び図2から明らかな如く、長さの短い多数の樹脂スリーブ42が、軸方向に一列に連なる状態で相互に連結されて、構成されている。このエア流通管30を構成する樹脂スリーブ42は、圧縮エアの圧力に十分に耐え得るように、硬質で、比較的に伸縮性や可撓性に乏しい合成樹脂材料により、十分に厚い肉厚をもって形成されている。
【0037】
そして、かかる樹脂スリーブ42にあっては、長さ方向(軸方向)一方側の端部部位が、連結凸部44とされる一方、内孔の他方側の端部開口部が、かかる連結凸部44が突入乃至は嵌入せしめられて、凹凸嵌合する連結凹部46とされている。また、連結凸部44の外周面が、球面の一部からなる球状外周面とされる一方、連結凹部46の内周面が、連結凸部44の球状外周面に対応した球面の一部からなる球状内周面とされている。更に、それら連結凸部44の球状外周面と連結凹部46の球状内周面は、それぞれの長さ方向両側の端部の外径乃至は内径が、長さ方向中間部の外径乃至は内径よりも小さくされている。更にまた、かかる樹脂スリーブ42の長さ方向中間部の外周面は、連結凸部44とされた長さ方向一方の端部側から、連結凹部46が設けられる長さ方向他方の端部側に向かって次第に大径化するテーパ筒状面とされている。
【0038】
そして、このような樹脂スリーブ42の多数が、全て、連結凸部44を前側に位置させた同じ向きで同軸的に一列に並べられて配置され、また、かかる配置状態下で、隣り合う樹脂スリーブ42のうちの後側に位置する樹脂スリーブ42の連結凸部44が、それらのうちの前側に位置する樹脂スリーブ42の連結凹部46内に圧入されるように嵌入されて、凹凸嵌合せしめられている。これにより、互いに隣り合う樹脂スリーブ42同士が、それぞれの内孔を相互に連通させた状態で、相互に連結されている。また、そのような連結状態下において、互いに隣り合う樹脂スリーブ42における連結凸部44の球状外周面と連結凹部46の球状内周面とが、互いに摺動可能とされる一方、連結凸部44の中間部外周面よりも小径化された連結凹部46側の端部外周面に、連結凹部46の中間部内周面よりも小径化された開口側内周面が長さ方向に係合せしめられて、連結凸部44の連結凹部46内からの容易な離脱が阻止されるようになっている。
【0039】
かくして、かくの如き多数の樹脂スリーブ42の連結体からなるエア流通管30においては、その全長が、樹脂スリーブ42の連結個数によって適宜に変更され得るようになっており、ここでは、例えば、15cm以上、好ましくは30cm、より好ましくは50cm以上の極めて長い長さとされている。また、互いに連結された樹脂スリーブ42同士が、連結凸部44の球状外周面と連結凹部46の球状内周面とにおいて摺動せしめられることで、自在継ぎ手の如く、自由な方向に曲げ変形可能とされ、以て、エア流通管30において、自在に湾曲変形可能な可撓性が具備せしめられている。更に、エア流通管30が使用者によって湾曲変形せしめられたときには、再び手が加えられない限り、連結凸部44の球状外周面と連結凹部46の球状内周面との摺動抵抗(摩擦力)によって、湾曲変形状態が維持され得るようになっており、例えば、自重等により、自然に湾曲変形状態が解消されたり、或いはそれが変化したりすることがない構造とされている。
【0040】
なお、ここでは、このようなエア流通管30を構成する、互いに連結された多数の樹脂スリーブ42のうち、エア流通管30の後端に位置するものが、前端部に連結凸部44を有するものの、後端部の外周面に雄ねじ部が形成された後側ジョイントスリーブ48とされており、また、エア流通管30の前端に位置するものが、後端部に連結凹部46を有するものの、前端部の外周面に雄ねじ部が形成された前側ジョイントスリーブ50とされている。
【0041】
そして、かかる後側ジョイントスリーブ48が、雄ねじ部において、前記ガン本体10の前端部のニップル20に設けられた雌ねじ部に螺合せしめられることにより、エア流通管30が、その内孔を、ガン本体10内のエア流路22に連通させた状態で、ガン本体10の前端部に対して着脱可能に取り付けられている(図1参照)。また、前側ジョイントスリーブ50の雄ねじ部が、前記ノズル部32に設けられた雌ねじ部に螺合されることで、エア流通管30の前端に、ノズル部32が、着脱可能に取り付けられているのである。
【0042】
このエア流通管30の前端に取り付けられたノズル部32は、図2に示されるように、ノズル部本体52と先端キャップ56の二つの部分からなり、それら二つが、後側から順番に同軸的に配置された状態で、互いに一体的に接合されて、構成されている。
【0043】
それらノズル部32の二つの構成部材のうち、ノズル部本体52は、全体として、矩形の角筒形状を呈し、その軸方向中間部に、内孔を前側内孔部分58と後側内孔部分60とに二つに仕切る仕切壁62が設けられている。そして、後側内孔部分60の後側開口部の内周面に、雌ねじ部が設けられ、この雌ねじ部に対して、前記エア流通管30の前側ジョイントスリーブ50の雄ねじ部が螺合せしめられている。
【0044】
また、ノズル部本体52の前側内孔部分58を取り囲む筒壁部の下側部分には、円形の取付孔64が穿設されており、かかる取付孔64の内周には雌ねじ部が設けられている。そして、この取付孔64の雌ねじ部に、一方の端部に設けられた雄ねじ部が螺合せしめられることにより、取付スリーブ66が固着されている。この取付スリーブ66は、L字状に屈曲せしめられており、一方の端部が取付孔64を通じて、前側内孔部分58内に突入せしめられている一方、他方の端部が、略水平方向に延びるように、且つ、その開口部をガン本体10側に向けた状態で配置されて、ノズル部本体52に取り付けられている。なお、この取付スリーブ66のノズル部本体52への取付は、ねじ部分の螺合により、取付部分での気密性や液密性が確保されるようにされているが、例えば、接着剤等を用いて、取付孔64内に挿入された取付スリーブ66の外周面を取付孔64の内周面に接着する等してもよく、また、各種のシール構造を用いることにより、気密性及び液密性をより確実なものとしてもよい。
【0045】
また、取付スリーブ66にあっては、ノズル部本体への取付側とは反対側の、垂直方向に延びる基端部から水平に延び出す部分(図2中、右下部)は、その外径が垂直方向に延びる基端部や屈曲部よりも小径化されて、段付円筒状に延び出している。そして、この小径化された水平方向に延びる先端側部分に対して、前記塗料容器28から延び出す塗料供給管40が接続されている。これによって、かかる塗料供給管40内とノズル部本体52の前側内孔部分58内とが、取付スリーブ66を通じて、相互に連通せしめられている。
【0046】
さらに、ノズル部本体52内の仕切壁62には、その中心部分を貫通する小径の貫通孔68が、穿設されている。また、この貫通孔68には、前側内孔部分58や後側内孔部分60の内径よりも十分に小さな内径を有する細管70が、その長さ方向の一端部において挿通、固定されている。これによって、前側内孔部分58と後側内孔部分60とが、それらの流路断面積よりも十分に小さな流路断面積を有する細管70を通じて連通せしめられている。なお、この細管70も、その外周面が、貫通孔68の内周面に接着又は公知のシール材等を用いて固着されることで、仕切壁62に取り付けられており、それによって、それら細管70の外周面と貫通孔68の内周面との間の気密性や液密性が確保されている。
【0047】
一方、先端キャップ56は、全体として、ノズル部本体52と略同一の外周寸法と、ノズル部本体52よりも短い軸方向長さとを有する矩形角筒形状を呈している。さらに、この先端キャップ56においては、前側内孔部分58よりも小さな内径とされた内孔71が穿設されている。また、この内孔71の内周面は、前側に向かうに従って次第に小径とされたテーパ状内周面とされていると共に、内孔71の前側端部が、先端キャップ56内にまで突入せしめられた細管70の内径よりも大きな内径を有する噴出孔76とされている。また、先端キャップ56の後側端部分は、ノズル部本体52の外周寸法よりも一周り小さくされていると共に、外周側に雄ねじ部が設けられている。そして、このような先端キャップ56の雄ねじ部が、ノズル部本体52の雌ねじ部に挿入されて螺合せしめられることにより、両部材が流体密に相互に固着されている。これにより、先端キャップ56が、ノズル部本体52に連結されて、噴出孔76が、先端キャップ56の内孔71を通じて、ノズル部本体52の前側内孔部分58に連通せしめられている。
【0048】
かくして、本実施形態のスプレーガンにあっては、ガン本体10におけるトリガーレバー16の回動操作により、ガン本体10内の開閉弁26が開作動せしめられると、ホースジョイント18からエア流路22内に導入され、更にこのエア流路22内からエア流通管30内に流入せしめられた圧縮エアが、エア流通管30からノズル部32におけるノズル部本体52の後側内孔部分60内に流入して、細管70内を流通せしめられ、更にノズル部本体52の前側内孔部分58と先端キャップ56の内孔71内とを経て、噴出孔76から外部に噴出されるようになっている。
【0049】
そして、このとき、ノズル部本体52の前側内孔部分58内に流入した圧縮エアは、絞りとして機能する細管70内を流通する際に流速が増大せしめられる一方で、圧力が低下せしめられる。それによって、この細管70が開口する先端キャップ56の内孔71内とそれに連通するノズル部本体52の前側内孔部分58内とが負圧となる。その結果、取付スリーブ66を通じて前側内孔部分58に連通せしめられた塗料供給管40により、塗料容器28内の塗料が吸い上げられて、塗料供給管40内を流通し、取付スリーブ66を通じて、ノズル部本体52の前側内孔部分58内に、更には、先端キャップ56の内孔71内に導入され、それら前側内孔部分58内と先端キャップ56の内孔71内で、細管70から吹き出される圧縮エアと合流せしめられる。そして、そこで圧縮エアと合流した塗料は、圧縮エアによって分散せしめられ、霧化(微細化乃至は小滴化)されて、圧縮エアと共に、先端キャップ56の噴出孔76から噴射されるようになる。このことから明らかな如く、ここでは、ノズル部本体52の前側内孔部分58と先端キャップ56の内孔71とにて、合流部が構成されている。
【0050】
そして、前述せるように、本実施形態においては、エア流通管30と塗料供給管40とが、自在に湾曲変形可能な可撓性を有しており、しかも、エア流通管30は、一旦、使用者によって湾曲変形されると、再び手が加えられない限り、その湾曲変形状態が良好に維持され得るようになっている。
【0051】
それ故、このような本実施形態のスプレーガンにあっては、ガン本体10から延びるエア流通管30を湾曲変形させると共に、ガン本体10に取り付けられた塗料容器28から延びる塗料供給管40を、エア流通管30に追従させるように湾曲変形させることで、ノズル部32の噴出孔76の向きや位置を容易に且つ自由に変えることが出来る。
【0052】
また、かかるスプレーガンにおいては、ノズル部32内部の前端側部分で塗料と圧縮エアとが合流せしめられるようになっているところから、塗料供給管40が長尺とされているにも拘わらず、塗料容器28内の塗料が、何等圧送されることなく、圧縮エアの吸込み作用により、塗料容器28内から吸い上げられ、長尺な塗料供給管40内をノズル部32に向かって流動して、ノズル部32内部の前端側部分までスムーズに且つ確実に供給され、そして、噴出孔76から霧化した状態で噴射せしめられ得るようになっている。このため、塗料をノズル部32内に圧送して供給する従来装置とは異なって、スプレーガンとは独立した加圧タンクや、かかる加圧タンクとスプレーガンとを繋ぐ塗料用ホースが省略され、それにより、スプレーガンと共に塗装作業に必要な付属設備が小規模化されて、かかる付属設備を含む全体構造が簡略化され得ると共に、設備コストの低減が有利に図られ得る。
【0053】
しかも、塗料が圧送されるものでないところから、塗料が収容される塗料容器28内が加圧されることもなく、そのため、塗料容器28には、高度な耐圧性が何等要求されない。それ故、そのような塗料容器28が、十分な耐圧性を具備させるために不可避的に大型となる加圧タンク等よりも十分に小型化され得る。そして、それによって、塗装作業の終了後等に塗料容器28内に残存して、洗浄の際等に、無駄に廃棄される塗料の量が、塗料の収容容器として加圧タンクを用いる場合に比して、効果的に減少せしめられ得る。
【0054】
従って、かくの如き本実施形態に係る塗装用スプレーガンにあっては、ガン本体10の向きや姿勢を何等変えることなく、霧化した塗料の噴射方向や噴射位置だけを任意に変えることが出来、しかも、それが、安価且つ簡略で、しかも洗浄の際の手間や廃棄される塗料の量を可及的に少なく出来る構造において、極めて有利に実現され得る。そして、その結果として、例えば、狭い奥まった箇所、或いは返りのある、比較的に小さな開口部を備えた、断面C形形状等を呈する被塗装物の内面全面等、これまでの一般的なスプレーガンでは塗装が困難であった箇所に対する塗装を、低コストに且つ容易に行うことが出来ることとなったのである。
【0055】
また、本実施形態においては、エア流通管30と塗料供給管40とが、それぞれ別個の材質を用いてなる独立した部材にて構成されて、エア流通管30に対して十分な耐圧性が具備せしめられている一方、塗料供給管40に対して内部が視認可能な透明性が付与されている。これによって、エア流通管30と塗料供給管40とが、それぞれのものにおいて必要とされる特性のみを有するように構成されており、それが、それら各管体30,40、ひいてはスプレーガン全体の低コスト化の一助となっている。
【0056】
さらに、本実施形態のスプレーガンにあっては、ガン本体10の前端部に取り付けられた塗料容器28内の塗料が、圧縮エアの吸込み作用により、塗料容器28内から吸い上げられて、塗料供給管40を通じてノズル部32に供給されるようになっているところから、塗料容器28が、ニップル20を介してガン本体10の下側に取り付けられているにも拘わらず、かかる塗料容器28内の塗料が、ノズル部32に向かってスムーズに供給され得るようになる。そして、そのように、ノズル部32への塗料のスムーズな供給を確保しつつ、塗料容器28がガン本体10の下側に取り付けられているために、塗料容器28をガン本体10の上側に取り付ける場合とは異なって、塗料容器28の容量を大きくしても、ガン本体10を安定的に把持して、取り扱うことが出来る。その結果、塗装作業が、よりスムーズに且つ効率的に行われ得るといった利点が得られることとなる。
【0057】
また、本実施形態においては、エアと塗料との合流部を構成する先端キャップ56とノズル部本体52とが、両部材の雄ねじ部及び雌ねじ部により連結されていると共に、先端キャップ56の内孔71の内径寸法がテーパ状に変化せしめられている。これにより、塗装作業中に、先端キャップ56とノズル部本体52からなる合流部において、ゴミや塗料の塊により詰まりが発生した場合にも、先端キャップ56とノズル部本体52の螺合状態を緩めることにより、細管70と内孔71の内周面との隙間寸法を調節してエア及び塗料の流量を変化せしめて、塗料の詰まりを外部に排出することが可能とされている。これにより、固形の塊などが混入しがちな古い塗料を用いる場合にも、詰まりが生じるごとに装置の分解洗浄等の面倒な作業を要することなく、容易に詰まりを解消して、塗装作業を続行することができる。
【0058】
次に、図3及び図4には、前記せる第一の実施形態とは別の実施形態が、示されている。なお、以下に説明する本実施形態の塗装用スプレーガンに関しては、前記第一の実施形態と同様な構造とされた部材及び部位について、図1及び図2と同一の符号を図3及び図4に示すことにより、その詳細な説明は省略した。
【0059】
すなわち、本実施形態のスプレーガンにおいては、ガン本体10や塗料容器28から、エア流通管30と塗料供給管40とが、それぞれ3本ずつ、延び出している。エア流通管30は、前記第一の実施形態に係るスプレーガンに設けられるエア流通管30と、同一の材質及び同一の構造を有し、自在に湾曲変形可能な可撓性が具備せしめられている。また、各エア流通管30の前端部には、前記第一の実施形態と同一の構造を有するノズル部32が、前記第一の実施形態と同一の取付構造において、それぞれ一つずつ取り付けられている。また、塗料供給管40も、前記第一の実施形態に係るスプレーガンに設けられる塗料供給管40と同一の材質を有して、自在に湾曲変形可能な可撓性が具備せしめられている。
【0060】
そして、ここでは、ガン本体10の前端に取り付けられたニップル20の内部に、エア流路22と連通する1本の連通路を三つに分岐するエア分岐部78が設けられており、かかるエア分岐部78に対して、3本のエア流通管30が、それぞれの後端部に設けられた後側ジョイントスリーブ48にて、三つに分岐された各連通路に各々別個に連通された状態で、取り付けられている。
【0061】
また、ニップル20の下側に取り付けられた塗料容器28においては、その高さよりも所定寸法大きな軸方向長さを有する細長い吸上管38が、上側低部を貫通して、下側底部の近傍に達する位置まで、上下方向に真っ直ぐに延びるように取り付けられている。そして、吸上管38の上端部には、吸上管38を三つに分岐する塗料分岐部80が設けられ、この塗料分岐部80に対して、3本の塗料供給管40が、それぞれ連通状態で接続されている。更に、それら3本の塗料供給管40は、3本のエア流通管30の前端部に設けられたノズル部32の取付スリーブ66に対して、それぞれの先端部において、連通状態で取り付けられている。
【0062】
かくして、本実施形態のスプレーガンにあっては、ガン本体10におけるトリガーレバー16の回動操作により、ガン本体10内の開閉弁26が開作動せしめられると、エア流路22内に導入された圧縮エアが、エア分岐部78を通じて3本のエア流通管30内にそれぞれ流入せしめられ、そして、各エア流通管30の前端部に設けられたノズル部32の噴出孔76から外部にそれぞれ噴出せしめられるようになっている。また、このとき、圧縮エアの吸込み作用により、塗料容器28内の塗料が、吸上管38にて吸い上げられて、塗料分岐部80を通じて3本の塗料供給管40内にそれぞれ流入せしめられ、また、それら各塗料供給管40内を流通して、各ノズル部32内に供給される。そして、各ノズル部32内で霧化されて、各ノズル部32の噴出孔76から、圧縮エアと共に、外部に噴射されるようになっている。
【0063】
そして、ここでは、全てのエア流通管30と塗料供給管40とが、自在に湾曲変形可能とされており、また、各エア流通管30の湾曲変形状態が維持されるようになっているため、ガン本体10から延びる3本のエア流通管30を、例えば、三次元的に互いに異なる方向乃至は形状に湾曲変形させると共に、ガン本体10に取り付けられた塗料容器28から延びる3本の塗料供給管40を、それぞれ各エア流通管30に追従させるように湾曲変形させる操作を、単に行うだけで、各ノズル部32の噴出孔76の向きや位置を容易に且つより広い範囲で更に一層自由に変えることが出来、また、各ノズル部32の噴出孔76同士の間隔も、より自由に変えることが出来る。
【0064】
従って、このような本実施形態に係る塗装用スプレーガンにあっては、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が有効に享受され得るだけでなく、霧化した塗料の噴射方向や噴射位置が、より広い範囲において、更に一層自由に且つ容易に変化せしめられ得るといった、更に優れた特徴が発揮され得るのである。
【0065】
また、このような本実施形態に係る塗装用スプレーガンを用いることにより、パイプ状の物体の表面などに対して塗装を施す場合にも、3本のノズル部32の噴出孔76の向きや各ノズル部32の位置を調節して、パイプ表面の屈曲に合わせた周上の3方向から同時に塗料を吹き付けることにより、例えば、パイプの長手方向に沿ってスプレーガンを動かすだけの一度の吹き付け操作で、パイプ全周の塗装を行ったり、或いは半周ずつの塗装を行う等して、周上の広い範囲に同時に且つ均等に、容易に塗装を行うことが可能となる。
【0066】
さらに、本実施形態においては、複数の塗料容器28を設けると共に、一本のノズル部32に対して、それぞれ個別の塗料容器28が接続されるようにしてもよい。このような構造を採用すれば、例えば、各塗料容器28にそれぞれ色の異なる塗料を入れておき、それを同時に塗布せしめることにより、一度の塗布で三色からなる平行線や曲線を自由に描くことができるようになる。また、各塗料容器28に接続される各取付スリーブ66等の塗料流路上や前側ジョイントスリーブ50等のエア流路上にそれぞれ開閉弁を設けて、これらを適宜開閉することにより、各塗料の吹き出しを自在に切り替えられるようにして、多色の塗料による塗装を容易に行い得るようにしてもよい。更にまた、各ノズル部32を交換したり、塗料流路やエア流路を絞り調節したり等することにより、三本のノズル部32のそれぞれから吐出される塗料の広がり形状や量、塗布範囲等を相互に異ならせることも可能である。
【0067】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0068】
例えば、塗料供給管40は、長尺で湾曲変形可能な可撓管にて構成されておれば、その材質が、何等限定されるものではない。従って、かかる塗料供給管40を、銅等の金属管や、前記実施形態において例示した合成樹脂材料以外の合成樹脂材料からなる樹脂チューブ、或いはゴムチューブ等にて構成することも出来る。また、塗料供給管40として、市販のゴムホース等を採用することも可能である。これにより、塗料供給管40を低コストで容易に準備することが可能となる。
【0069】
また、エア流通管30も、長尺で湾曲変形可能な可撓管にて構成されておれば、その材質が、特に限定されるものではないが、圧縮エアの圧力に対する十分な耐圧性を有するものであることが、望ましい。その意味において、エア流通管30は、好適には、銅やステンレス鋼等の金属管や、十分な耐圧性を有する樹脂チューブ、ゴムチューブ等にて構成される。
【0070】
さらに、エア流通管30の湾曲変形状態を維持可能とする構造も、前記二つの実施形態に例示されるものに、決して限定されるものではなく、例えば、繰り返しの湾曲変形可能で、且つ湾曲変形状態が維持可能な材質を有する管体、例えば銅管等にて構成したり、或いはエア流通管30の湾曲変形状を維持させるための所定の治具等の別部材を用いて、エア流通管30の湾曲変形状態を維持させるように為したりすることも出来る。
【0071】
更にまた、前記二つの実施形態では、塗料容器28が、ガン本体10の前端部に接続されたニップル20の下側に位置するように取り付けられていたが、かかる塗料容器28を、ニップル20の上側、或いはニップル20以外の、例えばガン本体10の前端部の上側や下側にそれぞれ位置するように取り付けることも、勿論可能である。塗料容器28をガン本体10に対して、その上側に位置するように取り付ける場合には、塗料容器28内の塗料が、圧縮ガスの吸込み作用と塗料の自重とによって、塗料供給管40を通じて、ノズル部32内に、よりスムーズに且つ確実に供給され得る。
【0072】
さらに、本実施形態においては、接続キャップ39の少なくとも一方の雌ねじ部を、市販の各種のペットボトルの蓋と略同様の構造としたものを用いることにより、市販のペットボトルをそのまま塗料容器として採用することが可能とされていたが、かかる接続キャップ39を、ニップル20の取付筒部41と一体的に形成して、塗料容器28がニップル20の取付筒部41に直接固定されるようにしてもよい。
【0073】
また、ノズル部32の具体的構造も、例示のものに特に限定されるものではなく、ノズル部32の前端部(先端部)に、エア流通管30内を流通せしめられる圧縮エアと塗料供給管40内を流通せしめられる塗料とが合流する合流部が設けられるものであれば、その他の公知の構造が、適宜に採用され得る。
【0074】
加えて、前記第二の実施形態の如く、エア流通管30と塗料供給管40とを、それぞれ複数本ずつ、ガン本体10や塗料容器28に取り付ける場合には、それらエア流通管30と塗料供給管40のそれぞれの具体的本数が、何等限定されるものでないことは勿論である。また、それら複数本のエア流通管30と塗料供給管40のガン本体10や塗料容器28への取付構造も、例示のものに、特に限定されるものではない。
【0075】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に従う構造を有する塗装用スプレーガンの一実施形態を示す正面説明図。
【図2】図1ににおける一部切欠図を含む部分拡大説明図。
【図3】本発明に従う構造を有する塗装用スプレーガンの別の実施形態を示す図1に対応する図。
【図4】図3における平面説明図。
【符号の説明】
【0077】
10:ガン本体,24:エア用ホース,26:開閉弁,28:塗料容器,30:エア流通管,32:ノズル部,40:塗料供給管,42:樹脂スリーブ,56:ノズル部本体,58:前側内孔部分,60:後側内孔部分,71:内孔,76:噴出孔,78:エア分岐部,80:塗料分岐部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を圧縮エアによって霧化して、噴射させる塗装用スプレーガンであって、
前記圧縮エアを外部から供給するエア供給管が接続されたガン本体と、
前記エア供給管に連通して、前記ガン本体から延び出す、長尺で湾曲変形可能な可撓管からなり、該ガン本体に設けられた弁体の開作動により、該エア供給管にて供給される前記圧縮エアが内部を流通せしめられるエア流通管と、
該エア流通管内を流通する前記圧縮エアを外部に噴出させる噴出孔を有して、該エア流通管の先端部に設けられたノズル部と、
前記ガン本体に取り付けられた、前記塗料が収容される塗料容器と、
該塗料容器から延び出して、前記ノズル部に接続される長尺で湾曲変形可能な可撓管からなり、該塗料容器内の塗料を該ノズル部内に供給する塗料供給管と、
前記ノズル部の先端部に設けられ、前記塗料供給管を通じて該ノズル部に供給された前記塗料を、前記エア流通管内を流通せしめられる前記圧縮エアに合流させて、霧化する一方、それら圧縮エアと霧化した塗料とを共に前記噴出孔に導く合流部と、
を含んで構成されていることを特徴とする塗装用スプレーガン。
【請求項2】
前記エア流通管と前記塗料供給管とが、互いに別個の独立した管体にて構成されている請求項1に記載の塗装用スプレーガン。
【請求項3】
前記エア流通管が、湾曲変形せしめられたときに、かかる変形状態が維持可能な材質又は構造を有する管体にて構成されている請求項1又は請求項2に記載の塗装用スプレーガン。
【請求項4】
前記塗料容器内の前記塗料が、前記圧縮エアの吸込み作用により、該塗料容器内から吸い上げられて、前記塗料供給管を通じて前記ノズル部に供給されるようになっている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の塗装用スプレーガン。
【請求項5】
前記エア流通管が、前記ガン本体から複数延び出して、それら複数のエア流通管のそれぞれの先端部に、前記ノズル部が設けられる一方、前記塗料供給管が、前記塗料容器から複数延び出して、該複数のノズル部にそれぞれ接続され、該複数の塗料供給管を通じて該複数のノズル部に供給された前記塗料が、該複数のノズル部の先端部にそれぞれ設けられた前記合流部にて前記圧縮エアと合流し、霧化せしめられて、それら各ノズル部の前記噴射孔から外部に噴射されるようになっている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の塗装用スプレーガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−200602(P2008−200602A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39184(P2007−39184)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(507055752)有限会社東海樹脂加工 (1)
【Fターム(参考)】