説明

塗装装置

【課題】 表面の少なくとも一部がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に容易に、短時間で、費用をかけることなく、塗装を施す。
【解決手段】 塗装対象物45に取り付けられて、塗装対象物45の軸線方向に移動可能な装置本体2と、装置本体2に設けられるとともに、塗装対象物45の周方向に回転可能、かつ、塗装対象物45の直径方向に移動可能な刷毛35を有する塗装部30と、装置本体2に設けられるとともに、塗装対象物45の直径方向に移動可能であり、かつ、塗装対象物45の表面に直径方向の両側から当接することにより、塗装対象物45の直径を検出する検出部材18を有する検出部15と、検出部材18によって検出した塗装対象物45の直径に基づいて、刷毛35を塗装対象物45の直径方向に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めする制御部41とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装装置に関し、特に、撤去し、回収した既設の電柱等のように、表面がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に塗装を施すのに好適な塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、不要になった既設の電柱は、撤去し、回収して別の場所に移転したり、橋脚や桟橋の脚部として再利用することが行われている。撤去し、回収した既設の電柱を別の場所に移転する場合、電柱の表面には、風雨に晒されること等によって汚れが付着したり、機器を取り付けたバンド類の跡等が付いていることがあるため、そのままの状態では外観が悪く、再利用することが難しい。
【0003】
このため、電柱の表面をクリーニングして汚れ等を除去する作業が必要になるが、電柱の表面のクリーニングは手作業によって行われているため、その作業に時間と手間と費用がかかる。また、電柱の表面には、クリーンニングによって除去できない汚れ等が付着していることがあるため、新品に近い状態にまでにクリーニングすることは難しい。このため、撤去し、回収した既設の電柱は、使用できるだけの十分な強度や耐久性を有しているにも関わらず、再利用されないまま保管され、或いは廃棄されることが多い。
【0004】
上記のような問題に対処するため、回収した電柱の表面に塗装を施し、新品に近い状態にすることも行われているが、手作業によって表面に塗装を施しているため、その作業に時間と手間と費用がかかる。
【0005】
一方、回収した電柱の表面に各種の塗装装置(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)によって自動的に塗装を施すことも考えられるが、これらの塗装装置は、円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に塗装を施すことを前提としており、電柱等のように、表面がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状のものに塗装を施すことは考慮していないため、これらの塗装装置によって電柱等の表面に塗装を施すことは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−182267号公報
【特許文献2】特開2005−58953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、電柱等のように、表面がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に容易に短時間で費用をかけることなく塗装を施すことができる、塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、表面の少なくとも一部がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に塗装を施す塗装装置であって、前記塗装対象物に取り付けられて、前記塗装対象物の軸線方向に移動可能な装置本体と、前記装置本体に設けられるとともに、前記塗装対象物の周方向に回転可能、かつ、前記塗装対象物の直径方向に移動可能な刷毛を有する塗装部と、前記装置本体に設けられるとともに、前記塗装対象物の直径方向に移動可能であり、かつ、前記塗装対象物の表面に直径方向の両側から当接することにより、前記塗装対象物の直径を検出する検出部材を有する検出部と、前記検出部材によって検出した前記塗装対象物の直径に基づいて、前記刷毛を前記塗装対象物の直径方向に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めする制御部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の塗装装置によれば、装置本体を塗装対象物の軸線方向に移動させながら、塗装部の刷毛を塗装対象物の周方向に回転させることにより、塗装対象物の表面の全長及び全周に亘って塗装を施すことができる。
この場合、検出部材を塗装対象物の直径方向の両側から塗装対象物の表面に当接させることで塗装対象物の直径が検出され、この検出した塗装対象物の直径に基づいて、制御部により、刷毛が塗装対象物の直径方向に移動され、その方向の所定の位置に位置決めされることになるので、外周がテーパ状の塗装対象物の表面に全長及び全周に亘って均一な圧力で刷毛を当接させることができ、塗装対象物の表面の全長及び全周に亘って均一の厚みの塗装膜を形成することができる。
【0010】
また、本発明において、前記装置本体は、フレームと、該フレームに回転可能に設けられるとともに、前記塗装対象物の直径方向に移動可能な駆動ローラとを有し、前記検出部材が検出した前記塗装対象物の直径に基づいて、前記制御部により、前記駆動ローラが前記塗装対象物の直径方向の所定の位置に位置決めされることとしてもよい。
【0011】
本発明の塗装装置によれば、検出部材が検出した塗装対象物の直径に基づいて、制御部により、駆動ローラが塗装対象物の直径方向に移動され、その方向の所定の位置に位置決めされることになる。従って、テーパ状の表面に影響されることなく、塗装対象物の表面の塗装対象物の軸線の延長上に刷毛を配置することができ、塗装対象物の表面の全長及び全周に亘って刷毛を所定の圧力で当接させ、塗装対象物の表面の全長及び全周に亘って均一な厚みの塗装膜を形成することができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記検出部は、前記装置本体に回転可能に設けられる棒ねじと、前記棒ねじに螺着されるとともに、前記棒ねじの回転に追従して前記棒ねじ上を互いに接近又は離間する方向に移動可能な一対の移動部材とを備え、前記各移動部材に前記検出部材が取り付けられていることとしてもよい。
【0013】
本発明の塗装装置によれば、棒ねじを回転させることにより、一対の移動部材が棒ねじ上を互いに接近又は離間する方向に移動し、一対の移動部材と一体に検出部材が棒ねじ上を同一方向に移動し、検出部材が直径方向の両側から塗装対象物の表面に当接し、検出部材を介して塗装対象物の直径が検出されることになる。
【0014】
さらに、本発明において、前記検出部は、前記装置本体に固定されるガイド部材と、該ガイド部材によって互いに接近又は離間する方向に移動可能に案内される一対の移動部材とを備え、前記各移動部材に前記検出部材が取り付けられていることとしてもよい。
【0015】
本発明の塗装装置によれば、ガイド部材によって案内される一対の移動部材を互いに接近又は離間する方向に移動させることにより、一対の移動部材と一体に検出部材が同一方向に移動し、検出部材が直径方向の両側から塗装対象物の表面に当接し、検出部材を介して塗装対象物の直径が検出されることになる。
【0016】
さらに、本発明において、前記塗装対象物は、支持部材によって軸線が水平方向を向くように支持され、この状態で前記塗装対象物に前記装置本体が軸線方向に移動可能に取り付けられていることとしてもよい。
【0017】
本発明の塗装装置によれば、支持部材によって軸線が水平方向を向くように支持された塗装対象物に装置本体が取り付けられ、この装置本体と一体に塗装部及び検出部が塗装対象物の軸線方向に移動することになる。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の塗装装置によれば、表面の少なくとも一部がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に、容易に、短時間で、費用をかけることなく塗装を施すことができる。従って、撤去し、回収した既設の電柱を再利用するような場合に、既設の電柱の表面に、容易に、短時間で、費用をかけることなく塗装を施すことができ、既設の電柱を新品に近い再利用が可能な状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による塗装装置の第1の実施の形態を示した概略正面図である。
【図2】図1の塗装部の概略正面図である。
【図3】図1の塗装装置の概略側面図である。
【図4】図1の制御系統のブロック図である。
【図5】本発明による塗装装置の第2の実施の形態を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明による塗装装置の第1の実施の形態が示されている。本実施の形態の塗装装置1は、表面46がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物45の表面46に塗装を施すのに適用されるものであって、本実施の形態においては、撤去し、回収した、表面46が全長に亘って所定のテーパ面に形成された円柱状の既設の電柱を塗装対象物45としている。
【0021】
本実施の形態の塗装装置1は、図1〜図3に示すように、塗装対象物45に取り付けられて、塗装対象物45の軸線方向に移動可能な装置本体2と、装置本体2に設けられるとともに、塗装対象物45の表面46に塗装を施す刷毛35を有する塗装部30と、装置本体2に設けられるとともに、塗装対象物45の表面に直径方向の両側から当接する一対の測定子18a、18aと、一対の測定子18a、18a間の距離(塗装対象物45の直径)を測定する測定部18bとからなる検出部材18を有する検出部15と、検出部15が検出した塗装対象物45の直径に基づいて、塗装部30の刷毛35を塗装対象物45の直径方向に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めする制御部41とを備えている。
【0022】
装置本体2は、フレーム3と、フレーム3に設けられるとともに、フレーム3を塗装対象物45の軸線方向に移動させる駆動ローラ7と、駆動ローラ7を回転させる第1駆動モータ8と、駆動ローラ7を塗装対象物45の直径方向(図1の上下方向)に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めさせる第2駆動モータ9とを備えている。
【0023】
フレーム3は、例えば、長方形板状の支持板4と、支持板4の四隅から下方に垂下される同一長さの4本の支柱5と、各支柱5の下端に回転可能に設けられる車輪5aとを組み合わせて構成され、このフレーム3の4本の支柱5の内側に塗装対象物45を挿通させることにより、フレーム3が塗装対象物45に軸線方向に移動可能に取り付けられる。
【0024】
塗装対象物45は、軸線が水平方向を向くように、例えば、塗装ヤードの床面の上部に軸方向の両端が支持部材47によって支持され、この塗装対象物45にフレーム3が軸線方向に移動可能に取り付けられるようになっている。
【0025】
フレーム3は、塗装対象物45に取り付けた際に、塗装対象物45の表面46の3方との間に所定の間隙6が形成される大きさに形成され、各間隙6内に装置本体2の駆動ローラ7及び後述する検出部15の検出部材18の一対の測定子18a、18aが設けられている。
【0026】
フレーム3の支持板4の上部には、第2駆動モータ9が設けられるとともに、一対の移動部材10、10が支持板4を貫通した状態で上下方向に移動可能に設けられ、この一対の移動部材10、10の下端に第1駆動モータ8が取り付けられ、第1駆動モータ8の駆動軸に駆動ローラ7が取り付けられている。
【0027】
一方の移動部材10には、上下方向に延びるようにラックギア11が取り付けられ、このラックギア11に第2駆動モータ9の駆動軸に取り付けられたピニオンギア12が噛合している。第2駆動モータ9を駆動させてピニオンギア12を回転させることにより、ラックギア11を介して一対の移動部材10、10と一体に第1駆動モータ8及び駆動ローラ7が上下方向に移動し、駆動ローラ7が上下方向の所定の位置に位置決めされる。
【0028】
検出部15は、フレーム3の支持板4の上部に横方向に延びるように回転可能に設けられる棒ねじ16と、棒ねじ16に螺着されるとともに、棒ねじ16の回転に追従して互いに接近又は離間する方向に移動する一対の移動部材17、17と、一対の移動部材17、17に取り付けられて、一対の移動部材17、17と一体に互いに接近又は離間する方向に移動する一対の測定子18a、18aと、一対の測定子18a、18a間の距離を測定する測定部18bとからなる検出部材18と、棒ねじ16を回転させる第3駆動モータ19とを備えている。
【0029】
棒ねじ16は、図1中の中央から左側の部分、及び中央から右側の部分に互いに向きが異なる雄ねじが形成され、この左側の部分の雄ねじ、及び右側の部分の雄ねじに、内面に雌ねじを形成した円環状の移動部材17がそれぞれ螺着され、棒ねじ16の正逆回転によって一対の移動部材17、17が互いに接近又は離間する方向に移動するようになっている。
【0030】
検出部材18は、塗装対象物45の表面46に直径方向の両側から接近又は離間可能な一対の測定子18a、18aと、一対の測定子18a、18a間の間隔を測定する測定部18bとを備え、一対の測定子18a、18aを塗装対象物45の表面に当接させ、一対の測定子18a、18a間の距離を測定部18bで測定することにより、塗装対象物45の直径を検出することができる。本実施の形態においては、一対の測定子18a、18aを回転可能なローラによって構成している。検出部材18としては、例えば、リニアセンサ等の接触型のセンサ、レーザセンサ、赤外線センサ等の非接触型のセンサを用いることができる。検出部材18によって検出した塗装対象物45の直径は、測定部18bから制御部41に出力され、検出した塗装対象物45の直径に基づいて、後述する塗装部30の刷毛35が塗装対象物45の直径方向に移動され、その方向の所定の位置に位置決めされる。
【0031】
塗装部30は、装置本体2を塗装対象物45に取り付けた際に、装置本体2のフレーム3の塗装対象物45の軸線方向の先端側又は後端側の端部に、中心がフレーム3の中心に一致するように回転可能に設けられる環状の回転部材31と、回転部材31を回転させる第4駆動モータ32と、回転部材31に取り付けられて回転部材31と一体に回転可能な一対の刷毛支持部33、33と、各刷毛支持部33に取り付けられるとともに、回転部材31の直径方向(塗装対象物45の直径方向)に移動可能な刷毛35と、各刷毛支持部33に設けられるとともに、各刷毛35を回転部材31の直径方向(塗装対象物45の直径方向)に移動させる移動ローラ39と、移動ローラ39を回転駆動させる第5駆動モータ40と、塗装対象物45の表面46に塗料を供給する塗料供給手段(図示せず)とを備えている。
回転部材31は、例えば、図3に示すように、周面にギア31aが設けられ、この回転部材31の周面のギア31aとフレーム3の上部に取り付けられる第4駆動モータ32のギア32aとが相互に噛合し、第4駆動モータ32の駆動により、第4駆動モータ32のギア32a、回転部材31のギア31aを介して回転部材31回転駆動するようになっている。
【0032】
一対の刷毛支持部33、33は、回転部材31の中心を中心として対向するように設けられ、これにより、一対の刷毛支持部33、33に取り付けられる一対の刷毛35、35が回転部材31の中心線上に対向配置されるようになっている。
【0033】
塗料供給手段は、例えば、塗料が充填される塗料タンクと、塗料タンク内の塗料を塗装対象物45の表面46に導く塗料供給管と、塗料タンクから塗料供給管に塗料を圧送する圧送ポンプとから構成される。
【0034】
刷毛35は、例えば、木製、金属製、プラスチック製の柄部36と、柄部36の先端部に取り付けられる刷毛部37とからなり、刷毛部37の刷毛先38が塗装対象物45の表面46に所定の圧力で押し付けられるように、刷毛支持部33に移動ローラ39を介して取り付けられている。
【0035】
第5駆動モータ40の駆動によって移動ローラ39を回転させることにより、移動ローラ39によって支持されている刷毛35が塗装対象物45の直径方向に移動し、刷毛部37の刷毛先38が塗装対象物45の直径方向の所定の位置に位置決めされ、刷毛部37の刷毛先38が塗装対象物45の表面46に所定の圧力で押し付けられる。
【0036】
制御部41は、図3に示すように、検出部15の検出部材18の一対の測定子18a、18a及び測定部18bを介して検出した塗装対象物45の直径に基づいて、塗装部30の刷毛35及び装置本体2の駆動ローラ7を制御する。具体的には、検出した塗装対象物45の直径に基づいて、塗装部30の第5駆動モータ40を駆動させて、刷毛35を塗装対象物45の直径方向に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めして、刷毛部37の刷毛先38を塗装対象物45の表面46に所定の圧力で押し付ける。また、検出した塗装対象物45の直径に基づいて、装置本体2の第2駆動モータ9を駆動させ、駆動ローラ7を塗装対象物45の直径方向に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めし、駆動ローラ7を塗装対象物45の表面46に当接させる。
【0037】
そして、上記のように構成した本実施の形態の塗装装置1を塗装対象物45に取り付け、装置本体2の第1駆動モータ8を駆動し、塗装対象物45の表面に当接する駆動ローラ7を回転させることで、装置本体2を塗装対象物45の軸線方向に移動させる。この際に、塗装部30の第4駆動モータ32を駆動させて回転部材31及びこれに取り付けられる刷毛35を回転させ、塗料供給手段によって塗装対象物45の表面46に塗料を供給する。これにより、塗装対象物45の表面46の全長及び全周に亘って所定の厚みの塗装膜を形成することができる。
【0038】
この場合、検出部15の第3駆動モータ19を駆動させ、棒ねじ16を回転させて一対の移動部材17、17と一体に検出部材18の一対の測定子18a、18aを互いに接近又は離間する方向に移動させ、一対の測定子18a、18aを塗装対象物45の表面46に当接させ、一対の測定子18a、18a間の距離を測定部18bで測定することで塗装対象物35の直径が検出される。この検出した塗装対象物45の直径が制御部41に出力されることにより、制御部41により、装置本体2の第2駆動モータ9の駆動が制御され、検出した塗装対象物45の直径に基づいて、第1駆動モータ8及び駆動ローラ7が塗装対象物45の直径方向に移動される。従って、塗装対象物45のテーパ面からなる表面46の傾斜角度に影響されることなく、駆動ローラ7を塗装対象物45の表面46に当接させることができるので、回転部材31に取り付けられている一対の刷毛35、35を、塗装対象物45の表面46の塗装対象物45の軸線の延長上に配置させることができる。
【0039】
また、検出した塗装対象物45の直径が制御部41に出力されることにより、制御部41により、塗装部30の第5駆動モータ40の駆動が制御され、検出した塗装対象物45の直径に基づいて、移動ローラ39を介して一対の刷毛35、35が塗装対象物45の直径方向に移動される。従って、塗装対象物45のテーパ面からなる表面46の傾斜角度に影響されることなく、一対の刷毛35、35の刷毛部37、37の刷毛先38、38を所定の圧力で塗装対象物45の表面46に押し付けることができ、塗装対象物45の表面の全長及び全周に亘って均一の塗装膜を形成することができる。
【0040】
上記のように構成した本実施の形態の塗装装置1にあっては、表面46がテーパ面に形成された円柱状の塗装対象物45の表面46に、容易に、短時間で、費用をかけることなく、均一の厚みの塗装膜を形成することができるので、撤去し、回収した既設の電柱の表面に塗装を施すような場合に有効に適用することができ、回収した電柱を費用をかけることなく再利用することが可能となる。
【0041】
なお、前記の説明においては、装置本体2のフレーム3に検出部材18として一対の測定子18a、18aを設けたが、フレーム3に検出部18として2対以上の測定子18a、18aを設けてもよい。
【0042】
また、前記の説明において、検出部材18の一対の測定子18a、18aを塗装対象物45の表面46に当接させ、一対の測定子18a、18a間の距離を測定部18bで測定することで塗装対象物45の直径を検出したが、一対の一対の測定子18a、18aを塗装対象物45に当接させた際の各測定子18aとフレーム3の基準点との間の距離を予め求めておき、各測定子18aとフレーム3の基準点との距離を検出することにより、塗装対象物45の直径を間接的に検出するように構成してもよい。
【0043】
図5には、本発明による塗装装置の第2の実施の形態が示されている。この塗装装置1は、装置本体2のフレーム3の支持板4の上部に、塗装対象物45の軸線と直交する方向に延びるように、一対のガイド部材20、20を設け、この一対のガイド部材20、20によって一対の移動部材21、21を互いに接近又は離間する方向に移動可能に案内し、この一対の移動部材21、21に一対の測定子18a、18aを2対、塗装対象物45の軸線方向に間隔をおいて取り付けている。
【0044】
また、支持板4の中央部に一対の案内板22、22を立設し、両案内板22、22間に支持軸23によってドラム24を回転自在に支持し、このドラム24の周囲に2本のワイヤ25、25を繰り出し、巻き取り可能に巻回させて、各ワイヤ25の一端をドラム24に固定し、各ワーヤ25の他端をドラム24から下方に繰り出し、支持板4の中央部に設けられている案内部26を介して各移動部材21の中央部に固定している。
【0045】
ドラム24を支持する支持軸23は第6駆動モータ27の駆動軸に連結され、第6駆動モータ27の駆動によってドラム24を回転させることにより、ドラム24に各ワイヤ25が巻き取られ、又はドラム24から各ワイヤ25が繰り出され、ドラム24への各ワイヤ25の巻き取り又は繰り出しに追従して一対の移動部材21、21が互いに接近又は離間する方向に移動することになる。
なお、図4においては、塗装部30の回転部材31、刷毛35、移動ローラ39、第5駆動モータ40、装置本体2の第2駆動モータ9、ラックギア11、ピニオンギア12の図示を省略している。
また、本実施の形態においては、ドラム24を第6駆動モータ27の駆動によって回転させているが、ばね等の付勢手段によってドラム24を回転させるように構成してもよい。
【0046】
そして、上記のように構成した本実施の形態の塗装装置1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏し、表面46がテーパ面に形成された円柱状の塗装対象物45の表面に、容易に、短時間で、費用をかけることなく、均一の厚みの塗装膜を形成することができるので、撤去し、回収した電柱の表面に塗装を施すような場合に有効に適用することができ、回収した電柱を費用をかけることなく再利用することが可能となる。
【0047】
なお、本実施の形態においても、一対の測定子18a、18aを塗装対象物45に当接させた際の各測定子18aとフレーム3の基準点との間の距離を予め求めておき、各測定子18aとフレーム3の基準点との距離を検出することにより、塗装対象物45の直径を間接的に検出するように構成してもよい。
【0048】
また、前記各実施の形態においては、表面46が全長に亘って所定のテーパ面に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物45に本発明を適用したが、表面46の一部が所定のテーパ面に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物45に本発明を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0049】
1 塗装装置
2 装置本体
3 フレーム
4 支持板
5 支柱
5a 車輪
6 間隙
7 駆動ローラ
8 第1駆動モータ
9 第2駆動モータ
10 移動部材
11 ラックギア
12 ピニオンギア
15 検出部
16 棒ねじ
17 移動部材
18 検出部材
18a 測定子
18b 測定部
19 第3駆動モータ
20 ガイド部材
21 移動部材
22 案内板
23 支持軸
24 ドラム
25 ワイヤ
26 案内部
27 第6駆動モータ
30 塗装部
31 回転部材
31a ギア
32 第4駆動モータ
32a ギア
33 刷毛支持部
35 刷毛
36 柄部
37 刷毛部
38 刷毛先
39 移動ローラ
40 第5駆動モータ
41 制御部
45 塗装対象物
46 表面
47 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部がテーパ状に形成された円柱状又は円筒状の塗装対象物の表面に塗装を施す塗装装置であって、
前記塗装対象物に取り付けられて、前記塗装対象物の軸線方向に移動可能な装置本体と、
前記装置本体に設けられるとともに、前記塗装対象物の周方向に回転可能、かつ、前記塗装対象物の直径方向に移動可能な刷毛を有する塗装部と、
前記装置本体に設けられるとともに、前記塗装対象物の直径方向に移動可能であり、かつ、前記塗装対象物の表面に直径方向の両側から当接することにより、前記塗装対象物の直径を検出する検出部材を有する検出部と、
前記検出部材によって検出した前記塗装対象物の直径に基づいて、前記刷毛を前記塗装対象物の直径方向に移動させ、その方向の所定の位置に位置決めする制御部とを備えていることを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
前記装置本体は、フレームと、該フレームに回転可能に設けられるとともに、前記塗装対象物の直径方向に移動可能な駆動ローラとを有し、
前記検出部材が検出した前記塗装対象物の直径に基づいて、前記制御部により、前記駆動ローラが前記塗装対象物の直径方向の所定の位置に位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の塗装装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記装置本体に回転可能に設けられる棒ねじと、前記棒ねじに螺着されるとともに、前記棒ねじの回転に追従して前記棒ねじ上を互いに接近又は離間する方向に移動可能な一対の移動部材とを備え、
前記各移動部材に前記検出部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記装置本体に固定されるガイド部材と、該ガイド部材によって互いに接近又は離間する方向に移動可能に案内される一対の移動部材とを備え、
前記各移動部材に前記検出部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗装装置。
【請求項5】
前記塗装対象物は、支持部材によって軸線が水平方向を向くように支持され、この状態で前記塗装対象物に前記装置本体が軸線方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−92840(P2011−92840A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248125(P2009−248125)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】