塞栓剤逆流からの防御のための微小弁装置及びその使用方法
塞栓処置に役立ち、血管内において実質上拘束されない前方向への血流を可能にするか、或いは血液中に導入される塞栓剤の還流(逆流や逆行流)を減らしたり、停止させる装置を提供する。当該装置を用いる方法も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療用塞栓治療システムに関する。より詳しくは、本発明は、カテーテルを通って塞栓剤が送り込まれ、カテーテルの送り口を介して末梢組織に治療を施すような塞栓治療処置の間、血管内において治療薬が逆流するのを低減する保護装置を用いた塞栓治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
塞栓療法、化学塞栓療法、X線塞栓療法は、肝細胞癌、子宮筋腫、肝臓癌の二次転移、脳髄膜腫の手術前処置、気管支動脈塞栓血症などの一連の疾患を治療するためにしばしば臨床的に使用される。塞栓剤は様々な形で具体化され、例えば、ビーズ、液体、泡、接着剤などの形で主要血管に置かれる場合がある。ビーズにはあっては、コーティングが施されたり、コーティング無しの場合もある。ビーズのコーティング剤としては、化学療法薬剤、放射線薬剤、その他の治療薬剤であったりする場合もある。微細な血管に塞栓を生じさせることが望まれる場合、小さなサイズ(例えば、10μm〜100μm)のビーズが使われる。また、大きな血管に塞栓を生じさせるような場合には、通常、より大きなサイズ(例えば、100μm〜900μm)のビーズが選ばれる。
【0003】
最小限的又は限定的な侵襲的療法として捉えられている塞栓剤治療は、時として良い結果をもたらすものであるが、少ない発生率ではあるが目標としない部位に塞栓を発生させることがあり、有害事象や病的状態を招く場合もある。目標としない部位に塞栓剤を送達することの1つの原因として“動脈内逆流”がある。この逆流は、塞栓剤がカテーテルの遠位端から出て、カテーテルの外側周りで逆流するところに発生する。この逆流は、健康な器官に行き着き、それ自体にダメージを与える可能性がある。
【0004】
逆流はまた、動脈は依然として明白な状態にあるも塞栓剤を投与している間に起こることがある。また、逆流は動脈が静的状態となって注入された塞栓剤が後方に流れる際に生じる場合もある。
【0005】
加えて、逆流は時間依存型の現象でもあり得る。時々ではあるが、逆流は塞栓剤の注入の反応として起こることあり、そこでは、あまりに早すぎて手術者が対処できないほど逆流が急激に(例えば、ミリ秒の時間尺度で)起こることがある。また、逆流は瞬間的に起こる場合もあり、その後は血管中に前方流れが一時的に回復し、結局は追加の逆流が続くことになる。
【0006】
図1は肝動脈106中での従来(先行技術)の塞栓治療状態を示している。カテーテル101は、標的となる臓器103に塞栓を生じさせるのを目標に、肝動脈106内に塞栓剤(ビーズ)102を供給する。塞栓剤102を注入している間、血液の前方流れ(矢印107方向)を維持することは重要である。何故なら、その前方流を利用して標的臓器103の血管床内部深くまで塞栓剤102を運ぶ必要があるからである。
【0007】
肝動脈の末梢域において造影剤が逆流するのが見えるまでは塞栓剤102は連続して注入される。通常は、塞栓剤102はまれにしか直接視覚化することができないため、場合によっては造影剤が塞栓剤102に添加されることもある。造影剤を追加することで、造影剤の逆流(矢印108で示す)を視覚化することが可能になり、それは塞栓剤102の逆流を示すことにもなる。逆流を起こすと、はからずもカテーテル101の先端近くに位置する側副動脈105へと塞栓剤102を送り込むことになるかもしれない。側副動脈105に塞栓剤102が存在することは、標的でない器官104に目的としない塞栓を発生することになり、それは別の肝葉、胃葉、小腸葉、膵臓葉、胆葉、その他の器官葉となる場合がある。
【0008】
塞栓剤の目標外送達は人体に対し著しく望ましくない効果をもたらす場合がある。例えば、肝臓治療では、塞栓剤の目標外送達は、胃と小腸を含む他の器官に望ましからぬ影響を与える可能性がある。子宮筋腫治療では、塞栓剤の目標外送達は、無月経や受胎率を低める恐れのある微小卵巣損害、早発型閉経、場合によっては卵巣への相当なダメージを招きかねない単卵巣又は両卵巣塞栓を起こす可能性がある。その他の意図しない有害事象としては、片側性深在性臀部痛、臀部壊死、子宮壊死などがある。
【0009】
往々にしてインターベンショナル・ラジオロジストは、塞栓剤を緩やかに解放するか、更に/或いは投薬量を低くすることにより逆流の量や影響量を減らそうと努めている。ロスタイム、複雑性、患者や(患者を長時間モニタリングする)内科医への増加したX線放射量、及び低い薬効は、塞栓剤の遅い送達を準最適なものにする。また、投薬量を減らすことは、往々にしてフォローアップ処置を複数回することの必要性を招くものである。内科医が逆流する量を減らそうとする時でさえ、カテーテル先端の局部流動条件はあまりに早く変化するために、内科医によるコントロールが不可能となり、迅速で瞬間的な逆流の状態が注入全般にわたって起こる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの特徴によれば、塞栓処置に役立ち、血管内において実質上拘束されない前方向への血流を可能にするか、或いは血液中に導入される塞栓剤の還流(逆流や逆行流)を減らしたり、停止させる展開可能な装置が提供される。
【0011】
実施形態によっては、展開可能な装置は、その遠位端に弁を堅固に固定する送達カテーテルを備えている。外カテーテルは、弁が患者を通って所望の目標血管へ進むまでは、弁を折り畳まれた円筒形状に維持するべく導入中は弁の上に延びるようにして提供される。一旦、目標に至ったならば、以下に説明するが外ケーシングは弁の上から引き込められて弁を開放状態でと拡張させる。
【0012】
他の実施形態では、展開可能な装置は送達カテーテルと、塞栓処置の間に送達カテーテルの遠位端にある弁座に弁を送り込む弁イントロデューサとを備える。外カテーテルは必要とされない。弁イントロデューサは、弁の遠位端を閉じた形態に保持し、プッシュワイヤは弁の近位端に当接して、送達カテーテルを通って弁イントロデューサの外へ弁を押し出すために使用される。弁は、送達カテーテルの遠位端に位置する弁座へとプッシュワイヤによって進められる。一旦弁座が弁の近位部を捕捉して送達カテーテルの遠位端に弁をロックしたならば、プッシュワイヤはその後、送達カテーテルから引き出されて、装置自体に送達カテーテルを通る強制流体流れを与える。実施形態によっては、弁と弁座の間のロッキングを解放するために弁に引き部材が結合され、塞栓剤が分配された後、送達カテーテルの中への弁の後退を可能にしている。
【0013】
展開可能な弁は、互いに交差し(即ち、編み込まれる)かつスプリングバイアス有して互いに対して好ましい交差角をとる複数のフィラメントを備えている。第1の状態で、弁は、好ましくは、送達カテーテルの直径と実質上等しい直径を持った円筒状配置構造に維持される。第2の状態ではフィラメントのスプリングバイアスにより自由に開く。第2の状態では、弁の近位端が送達カテーテルに付けられた状態で、血流において血液が弁を過ぎて末梢部へ遠位方向へ流れていないならば、弁は実質上載頭円錐形となる。弁の遠位端は、血液が弁を過ぎて遠位方向に流れていない場合、それが展開することで血管の壁と接触することを目的としている。
【0014】
いくつかの実施形態では、弁は、血管内での実質的に自由な前方流れを可能にするか塞栓剤の逆流を低減しつつ血液や造影剤の逆流を可能にする。他の実施形態では、弁は、さらに血管内での実質的に自由な前方流れを可能するか塞栓剤の逆流を低減しつつ血液の逆流を低減するか、あるいは停止させる。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、弁の非展開状態における拡張半径方向力は40mN以下になる。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、弁は、円筒状の配置構造から全開位置へ拡張する時定数が、約3.2cPの粘性を有する静的流体において、1.0〜0.01秒、より好ましくは0.50〜0.05秒となる。
【0017】
本発明の更なる特徴によれば、弁には100MPaより大きいヤング弾性率を持つ。
【0018】
更に本発明の別の特徴によれば、弁フィラメントの好ましい交差角は約130度となる。
【0019】
本発明の別の特徴によれば、弁のフィラメントは、開放位置でそれらが塞栓剤を捕捉できるように、所望の数及び直径をもつべく選択される。ほんの一例だが、弁のフィラメントは開放位置においてそれらが500μmの細孔サイズを呈し、以て500μmより大きなビーズのような塞栓剤の逆流を防げるように選択される。別の例として、弁のフィラメントは、開放位置でそれらが250μmの細孔サイズを呈し、以て250μmより大きな塞栓剤の逆流を防げるように選択される。
【0020】
1つの実施形態では、弁フィラメントはフィルタによってコーティングされ、同フィルタは、例えば、吹き付け、紡績、電気紡績、接着剤を使った接合、熱融合、溶融接合、他の方法など、所望の方法に従って形成され、かつフィラメントに取り付けられる。フィルタは所望の細孔サイズ径を持つことが好ましいが、細孔サイズ自体はフィルタを形成・取り付け技術によっては均一にならないかもしれない。一例として、フィルタ細孔サイズを約40μmとし、特性サイズが40μm以上の塞栓剤が弁を通過して逆流するのを防止するようにしても良い。別の例としては、フィルタ細孔サイズを約20μmとし、特性サイズが20μm以上の塞栓剤が弁を通って逆流するのを防止するようにしても良い。双方の場合、血球(特性サイズは20μm以下の血球)と分子サイズが20μm以下の造影剤は、フィルタと弁を通り抜けることになる。
【0021】
本発明の追加の特徴によれば、フィラメントが好ましい交差角となるような全開位置では、弁は、送達カテーテルの直径の少なくとも2倍、好ましくは送達カテーテルの直径の少なくとも5倍の遠位径を持つようになっている。
【0022】
一実施形態では、フィラメントは全てポリマーから形成される。別実施形態では、1本又はそれ以上のフィラメントは、ステンレス鋼や白金、或いは白金イリジウムから形成される。
【0023】
1本又はそれ以上のフィラメントをポリマーで形成する実施形態では、ポリマーから形成されるフィラメントは、送達カテーテルの中へ入る近位端において溶融されることが好ましい。
【0024】
弁は、幾つかある方法の内のどの方法によっても展開して良い。ほんの一例を掲げるが、外カテーテル又はスリーブを用いて弁を非展開状態で保持し、弁を展開する際には外カテーテル又はスリーブを送達カテーテルに対して後方に引くようにしても良い。外カテーテルかスリーブを利用する場合、送達カテーテルを外カテーテルやスリーブに近づけるように移動することで弁を捕捉して非展開位置へと戻すようにしても良い。
【0025】
別の例として、弁の遠位端にループを設け、送達カテーテルの遠位端を通ってこれより遠くへと延びかつ弁の遠位のループを通るガイドワイヤに係合させるようにしても良い。ガイドワイヤを近位方向に引くことで、弁は展開する。
【0026】
別の例としては、弁を被覆するにあたって制御スレッド付きの編みスリーブを設けることが可能である。制御スレッドを引くことで編みスリーブを解くようにして弁を解放するのである。
【0027】
更に別の例として、外カテーテルがない場合には、弁は、送達カテーテルを通って進行させ、送達カテーテルの遠位端にある弁座と、弁の近位端に設けられる対応嵌合構造を係合させることで展開されるようにしても良い。弁が弁座に係入した状態で、弁フィラメントは、弁の動的作動に対して更に拘束することなく送達カテーテルから遠くに延びる。
【0028】
更に、弁は、幾つかある方法の内のどの方法によっても退縮させることができる。外カテーテルが設けられた場合、外カテーテルと送達カテーテルを互いに対して移動可能にして外カテーテルによって弁を折り畳むことができる。外カテーテルを設けない実施形態にあっては、弁は完全に送達カテーテルの中に引き込まれるか、或いは送達カテーテルの近位端から完全に回収されるようにして、弁を送達カテーテルの遠位端から解放して回収されるようにしても良い。ブレイド構造物を備えた1本又はそれ以上のプルワイヤを弁に取り付け、そのような弁回収を補助するようにしても良い。必要ならば、弁が展開した状態で患者から回収されることも有り得ることも理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】非対象器官へと逆流する塞栓剤を示し、肝動脈中にある従来の塞栓カテーテルを示した従来技術の図である。
【図2A】非展開状態を示す、本発明装置の第1実施形態の概略図である。
【図2B】遠位方向へと通過する血液と共に部分的に展開した状態を示す、本発明装置の第1実施形態の概略図である。
【図2C】血流が停滞状態となった完全展開状態を示す、本発明装置の第1実施形態の概略図である。
【図3A】フィルタ部品によって被覆されたブレイド部品を有する弁の模範的実施形態を示した概略図であって、その非展開状態を示した図である。
【図3B】フィルタ部品によって被覆されたブレイド部品を有する弁の模範的実施形態を示した概略図であって、その展開状態を示した図である。
【図4A】横網みによって被覆された図3A、3Bの弁の模範的実施形態を示した概略図であって、非展開状態を示した図である。
【図4B】横網みによって被覆された図3A、3Bの弁の模範的実施形態を示した概略図であって、部分展開状態を示した図である。
【図4C】横網みによって被覆された図3A、3Bの弁の模範的実施形態を示した概略図であって、完全展開状態を示した図である。
【図5A】ガイドワイヤ動作によって展開可能な弁の模範的実施形態を示す概略図である。
【図5B】ガイドワイヤ動作によって展開可能な弁の模範的実施形態を示す概略図である。
【図6A】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図6B】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図6C】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図6D】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図7A】単一の形状記憶フィラメント及びフィルタからなる弁の模範的実施形態示す図である。
【図7B】単一の形状記憶フィラメント及びフィルタからなる弁の模範的実施形態示す図である。
【図8A】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示す図である。
【図8B】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示し、図8Aの8B‐8B線に沿った概略的断面図である。
【図8C】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示す図である。
【図8D】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示し、図8Cの8D‐8D線に沿った概略的断面図である。
【図8E】図8A‐8Dに示された実施形態による、送達カテーテルの注入ポート内への導入のための、弁とプッシュワイヤを取り囲むイントロデューサの概略図である。
【図9A】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示す図である。
【図9B】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示し、図9Aの9B‐9B線に沿った断面図である。
【図9C】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示す図である。
【図9D】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示し、図9Cの9D‐9D線に沿った断面図である。
【図10A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図10B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図11A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図11B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図12A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図12B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療用塞栓治療システムに関する。より詳しくは、本発明は、カテーテルを通って塞栓剤が送り込まれ、カテーテルの送り口を介して末梢組織に治療を施すような塞栓治療処置の間、血管内において治療薬が逆流するのを低減する保護装置を用いた塞栓治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
塞栓療法、化学塞栓療法、X線塞栓療法は、肝細胞癌、子宮筋腫、肝臓癌の二次転移、脳髄膜腫の手術前処置、気管支動脈塞栓血症などの一連の疾患を治療するためにしばしば臨床的に使用される。塞栓剤は様々な形で具体化され、例えば、ビーズ、液体、泡、接着剤などの形で主要血管に置かれる場合がある。ビーズにはあっては、コーティングが施されたり、コーティング無しの場合もある。ビーズのコーティング剤としては、化学療法薬剤、放射線薬剤、その他の治療薬剤であったりする場合もある。微細な血管に塞栓を生じさせることが望まれる場合、小さなサイズ(例えば、10μm〜100μm)のビーズが使われる。また、大きな血管に塞栓を生じさせるような場合には、通常、より大きなサイズ(例えば、100μm〜900μm)のビーズが選ばれる。
【0003】
最小限的又は限定的な侵襲的療法として捉えられている塞栓剤治療は、時として良い結果をもたらすものであるが、少ない発生率ではあるが目標としない部位に塞栓を発生させることがあり、有害事象や病的状態を招く場合もある。目標としない部位に塞栓剤を送達することの1つの原因として“動脈内逆流”がある。この逆流は、塞栓剤がカテーテルの遠位端から出て、カテーテルの外側周りで逆流するところに発生する。この逆流は、健康な器官に行き着き、それ自体にダメージを与える可能性がある。
【0004】
逆流はまた、動脈は依然として明白な状態にあるも塞栓剤を投与している間に起こることがある。また、逆流は動脈が静的状態となって注入された塞栓剤が後方に流れる際に生じる場合もある。
【0005】
加えて、逆流は時間依存型の現象でもあり得る。時々ではあるが、逆流は塞栓剤の注入の反応として起こることあり、そこでは、あまりに早すぎて手術者が対処できないほど逆流が急激に(例えば、ミリ秒の時間尺度で)起こることがある。また、逆流は瞬間的に起こる場合もあり、その後は血管中に前方流れが一時的に回復し、結局は追加の逆流が続くことになる。
【0006】
図1は肝動脈106中での従来(先行技術)の塞栓治療状態を示している。カテーテル101は、標的となる臓器103に塞栓を生じさせるのを目標に、肝動脈106内に塞栓剤(ビーズ)102を供給する。塞栓剤102を注入している間、血液の前方流れ(矢印107方向)を維持することは重要である。何故なら、その前方流を利用して標的臓器103の血管床内部深くまで塞栓剤102を運ぶ必要があるからである。
【0007】
肝動脈の末梢域において造影剤が逆流するのが見えるまでは塞栓剤102は連続して注入される。通常は、塞栓剤102はまれにしか直接視覚化することができないため、場合によっては造影剤が塞栓剤102に添加されることもある。造影剤を追加することで、造影剤の逆流(矢印108で示す)を視覚化することが可能になり、それは塞栓剤102の逆流を示すことにもなる。逆流を起こすと、はからずもカテーテル101の先端近くに位置する側副動脈105へと塞栓剤102を送り込むことになるかもしれない。側副動脈105に塞栓剤102が存在することは、標的でない器官104に目的としない塞栓を発生することになり、それは別の肝葉、胃葉、小腸葉、膵臓葉、胆葉、その他の器官葉となる場合がある。
【0008】
塞栓剤の目標外送達は人体に対し著しく望ましくない効果をもたらす場合がある。例えば、肝臓治療では、塞栓剤の目標外送達は、胃と小腸を含む他の器官に望ましからぬ影響を与える可能性がある。子宮筋腫治療では、塞栓剤の目標外送達は、無月経や受胎率を低める恐れのある微小卵巣損害、早発型閉経、場合によっては卵巣への相当なダメージを招きかねない単卵巣又は両卵巣塞栓を起こす可能性がある。その他の意図しない有害事象としては、片側性深在性臀部痛、臀部壊死、子宮壊死などがある。
【0009】
往々にしてインターベンショナル・ラジオロジストは、塞栓剤を緩やかに解放するか、更に/或いは投薬量を低くすることにより逆流の量や影響量を減らそうと努めている。ロスタイム、複雑性、患者や(患者を長時間モニタリングする)内科医への増加したX線放射量、及び低い薬効は、塞栓剤の遅い送達を準最適なものにする。また、投薬量を減らすことは、往々にしてフォローアップ処置を複数回することの必要性を招くものである。内科医が逆流する量を減らそうとする時でさえ、カテーテル先端の局部流動条件はあまりに早く変化するために、内科医によるコントロールが不可能となり、迅速で瞬間的な逆流の状態が注入全般にわたって起こる可能性がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の1つの特徴によれば、塞栓処置に役立ち、血管内において実質上拘束されない前方向への血流を可能にするか、或いは血液中に導入される塞栓剤の還流(逆流や逆行流)を減らしたり、停止させる展開可能な装置が提供される。
【0011】
実施形態によっては、展開可能な装置は、その遠位端に弁を堅固に固定する送達カテーテルを備えている。外カテーテルは、弁が患者を通って所望の目標血管へ進むまでは、弁を折り畳まれた円筒形状に維持するべく導入中は弁の上に延びるようにして提供される。一旦、目標に至ったならば、以下に説明するが外ケーシングは弁の上から引き込められて弁を開放状態でと拡張させる。
【0012】
他の実施形態では、展開可能な装置は送達カテーテルと、塞栓処置の間に送達カテーテルの遠位端にある弁座に弁を送り込む弁イントロデューサとを備える。外カテーテルは必要とされない。弁イントロデューサは、弁の遠位端を閉じた形態に保持し、プッシュワイヤは弁の近位端に当接して、送達カテーテルを通って弁イントロデューサの外へ弁を押し出すために使用される。弁は、送達カテーテルの遠位端に位置する弁座へとプッシュワイヤによって進められる。一旦弁座が弁の近位部を捕捉して送達カテーテルの遠位端に弁をロックしたならば、プッシュワイヤはその後、送達カテーテルから引き出されて、装置自体に送達カテーテルを通る強制流体流れを与える。実施形態によっては、弁と弁座の間のロッキングを解放するために弁に引き部材が結合され、塞栓剤が分配された後、送達カテーテルの中への弁の後退を可能にしている。
【0013】
展開可能な弁は、互いに交差し(即ち、編み込まれる)かつスプリングバイアス有して互いに対して好ましい交差角をとる複数のフィラメントを備えている。第1の状態で、弁は、好ましくは、送達カテーテルの直径と実質上等しい直径を持った円筒状配置構造に維持される。第2の状態ではフィラメントのスプリングバイアスにより自由に開く。第2の状態では、弁の近位端が送達カテーテルに付けられた状態で、血流において血液が弁を過ぎて末梢部へ遠位方向へ流れていないならば、弁は実質上載頭円錐形となる。弁の遠位端は、血液が弁を過ぎて遠位方向に流れていない場合、それが展開することで血管の壁と接触することを目的としている。
【0014】
いくつかの実施形態では、弁は、血管内での実質的に自由な前方流れを可能にするか塞栓剤の逆流を低減しつつ血液や造影剤の逆流を可能にする。他の実施形態では、弁は、さらに血管内での実質的に自由な前方流れを可能するか塞栓剤の逆流を低減しつつ血液の逆流を低減するか、あるいは停止させる。
【0015】
本発明の1つの特徴によれば、弁の非展開状態における拡張半径方向力は40mN以下になる。
【0016】
本発明の別の特徴によれば、弁は、円筒状の配置構造から全開位置へ拡張する時定数が、約3.2cPの粘性を有する静的流体において、1.0〜0.01秒、より好ましくは0.50〜0.05秒となる。
【0017】
本発明の更なる特徴によれば、弁には100MPaより大きいヤング弾性率を持つ。
【0018】
更に本発明の別の特徴によれば、弁フィラメントの好ましい交差角は約130度となる。
【0019】
本発明の別の特徴によれば、弁のフィラメントは、開放位置でそれらが塞栓剤を捕捉できるように、所望の数及び直径をもつべく選択される。ほんの一例だが、弁のフィラメントは開放位置においてそれらが500μmの細孔サイズを呈し、以て500μmより大きなビーズのような塞栓剤の逆流を防げるように選択される。別の例として、弁のフィラメントは、開放位置でそれらが250μmの細孔サイズを呈し、以て250μmより大きな塞栓剤の逆流を防げるように選択される。
【0020】
1つの実施形態では、弁フィラメントはフィルタによってコーティングされ、同フィルタは、例えば、吹き付け、紡績、電気紡績、接着剤を使った接合、熱融合、溶融接合、他の方法など、所望の方法に従って形成され、かつフィラメントに取り付けられる。フィルタは所望の細孔サイズ径を持つことが好ましいが、細孔サイズ自体はフィルタを形成・取り付け技術によっては均一にならないかもしれない。一例として、フィルタ細孔サイズを約40μmとし、特性サイズが40μm以上の塞栓剤が弁を通過して逆流するのを防止するようにしても良い。別の例としては、フィルタ細孔サイズを約20μmとし、特性サイズが20μm以上の塞栓剤が弁を通って逆流するのを防止するようにしても良い。双方の場合、血球(特性サイズは20μm以下の血球)と分子サイズが20μm以下の造影剤は、フィルタと弁を通り抜けることになる。
【0021】
本発明の追加の特徴によれば、フィラメントが好ましい交差角となるような全開位置では、弁は、送達カテーテルの直径の少なくとも2倍、好ましくは送達カテーテルの直径の少なくとも5倍の遠位径を持つようになっている。
【0022】
一実施形態では、フィラメントは全てポリマーから形成される。別実施形態では、1本又はそれ以上のフィラメントは、ステンレス鋼や白金、或いは白金イリジウムから形成される。
【0023】
1本又はそれ以上のフィラメントをポリマーで形成する実施形態では、ポリマーから形成されるフィラメントは、送達カテーテルの中へ入る近位端において溶融されることが好ましい。
【0024】
弁は、幾つかある方法の内のどの方法によっても展開して良い。ほんの一例を掲げるが、外カテーテル又はスリーブを用いて弁を非展開状態で保持し、弁を展開する際には外カテーテル又はスリーブを送達カテーテルに対して後方に引くようにしても良い。外カテーテルかスリーブを利用する場合、送達カテーテルを外カテーテルやスリーブに近づけるように移動することで弁を捕捉して非展開位置へと戻すようにしても良い。
【0025】
別の例として、弁の遠位端にループを設け、送達カテーテルの遠位端を通ってこれより遠くへと延びかつ弁の遠位のループを通るガイドワイヤに係合させるようにしても良い。ガイドワイヤを近位方向に引くことで、弁は展開する。
【0026】
別の例としては、弁を被覆するにあたって制御スレッド付きの編みスリーブを設けることが可能である。制御スレッドを引くことで編みスリーブを解くようにして弁を解放するのである。
【0027】
更に別の例として、外カテーテルがない場合には、弁は、送達カテーテルを通って進行させ、送達カテーテルの遠位端にある弁座と、弁の近位端に設けられる対応嵌合構造を係合させることで展開されるようにしても良い。弁が弁座に係入した状態で、弁フィラメントは、弁の動的作動に対して更に拘束することなく送達カテーテルから遠くに延びる。
【0028】
更に、弁は、幾つかある方法の内のどの方法によっても退縮させることができる。外カテーテルが設けられた場合、外カテーテルと送達カテーテルを互いに対して移動可能にして外カテーテルによって弁を折り畳むことができる。外カテーテルを設けない実施形態にあっては、弁は完全に送達カテーテルの中に引き込まれるか、或いは送達カテーテルの近位端から完全に回収されるようにして、弁を送達カテーテルの遠位端から解放して回収されるようにしても良い。ブレイド構造物を備えた1本又はそれ以上のプルワイヤを弁に取り付け、そのような弁回収を補助するようにしても良い。必要ならば、弁が展開した状態で患者から回収されることも有り得ることも理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】非対象器官へと逆流する塞栓剤を示し、肝動脈中にある従来の塞栓カテーテルを示した従来技術の図である。
【図2A】非展開状態を示す、本発明装置の第1実施形態の概略図である。
【図2B】遠位方向へと通過する血液と共に部分的に展開した状態を示す、本発明装置の第1実施形態の概略図である。
【図2C】血流が停滞状態となった完全展開状態を示す、本発明装置の第1実施形態の概略図である。
【図3A】フィルタ部品によって被覆されたブレイド部品を有する弁の模範的実施形態を示した概略図であって、その非展開状態を示した図である。
【図3B】フィルタ部品によって被覆されたブレイド部品を有する弁の模範的実施形態を示した概略図であって、その展開状態を示した図である。
【図4A】横網みによって被覆された図3A、3Bの弁の模範的実施形態を示した概略図であって、非展開状態を示した図である。
【図4B】横網みによって被覆された図3A、3Bの弁の模範的実施形態を示した概略図であって、部分展開状態を示した図である。
【図4C】横網みによって被覆された図3A、3Bの弁の模範的実施形態を示した概略図であって、完全展開状態を示した図である。
【図5A】ガイドワイヤ動作によって展開可能な弁の模範的実施形態を示す概略図である。
【図5B】ガイドワイヤ動作によって展開可能な弁の模範的実施形態を示す概略図である。
【図6A】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図6B】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図6C】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図6D】カテーテルに弁のメッシュ部品を付ける2つの模範的方法を示す図である。
【図7A】単一の形状記憶フィラメント及びフィルタからなる弁の模範的実施形態示す図である。
【図7B】単一の形状記憶フィラメント及びフィルタからなる弁の模範的実施形態示す図である。
【図8A】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示す図である。
【図8B】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示し、図8Aの8B‐8B線に沿った概略的断面図である。
【図8C】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示す図である。
【図8D】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の実施形態を示し、図8Cの8D‐8D線に沿った概略的断面図である。
【図8E】図8A‐8Dに示された実施形態による、送達カテーテルの注入ポート内への導入のための、弁とプッシュワイヤを取り囲むイントロデューサの概略図である。
【図9A】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示す図である。
【図9B】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示し、図9Aの9B‐9B線に沿った断面図である。
【図9C】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示す図である。
【図9D】送達カテーテルへ弁を取り付ける模範的構造及び方法の別実施形態を示し、図9Cの9D‐9D線に沿った断面図である。
【図10A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図10B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図11A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図11B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図12A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図12B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置治療中に血管内において塞栓剤を含む輸液の逆流を軽減するための血管内弁装置であって、
i)各々の直径が0.025mm〜0.127mmである、複数の細長い第1フィラメントであって、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する前記第1フィラメントであり、
前記近位端は互いに固着され、前記第1フィラメントは、前記近位端から抹消へ向かう長さ部分に沿って、前記第1フィラメントが互いに移動可能なように互いに対し接着されず、
弁は非展開状態へと完全に折り畳むことできると共に、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと完全に拡張でき、
前記展開状態では前記第1フィラメントが100°〜150°の角度で互いに交差し、100MPa以上のヤング弾性率を有するような前記第1フィラメント、及び
ii)編みこまれた前記第1フィラメントに提供されるフィルタであって、前記フィルタは、前記編みこまれた第1フィラメントにポリマーの第2のフィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成され、500μmを超えない細孔サイズを規定する前記フィルタ、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性を持つ静止流体中で1秒以内で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、前記弁がひとたび展開状態となったならば、前記弁は、血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となることを特徴とする血管内弁装置。
【請求項2】
前記弁は、体液が第1流体圧で近位から遠位の方向に弁に対して流動する際には、前記閉弁形態へと自動的に崩壊するように形成され、弁の周りの体液流れを可能にし、
前記弁は血管内において前記開弁形態へと自動的に拡張し、血管内において遠位から近位方向に弁に向かって通過する輸液の流れを阻止するように形成され、
前記弁は、(i)前記体液が遠位から近位方向に前記弁に対して流れる時、(ii)前記体液が静的流動状態にある時、又は(iii)前記弁の近位側流体圧力は前記弁の遠位側流体圧力よりも大きいことで圧力差を生み、その流体圧力差により、弁の近位側において、弁の遠位側流体圧力よりも小さくかつ半径方向拡張力に打ち勝つのに十分な純流体圧を生じる時、のいずれかの時に前記弁は自動的に拡張することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項3】
前記第2フィラメントは、液体状態のポリマーを以て静電沈着されるか又は紡績され、その液体状態において液体溶剤は5%〜25%の高分子固体濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項4】
前記弁は、拡張した前記開弁形態にある時、血管内に体液に対して透過性があることを特徴とする請求項2に記載の血管内弁装置。
【請求項5】
前記弁は、心臓収縮中に前記閉弁形態へと自動的に潰れ、心臓拡張中に前記開弁形態へと自動的に拡張することを特徴とする請求項2に記載の血管内弁装置。
【請求項6】
更に、遠位端と、内径を定義するルーメン、及び外径を有する第1カテーテルを有し、前記弁は前記第1カテーテルの前記遠位端に結合され、前記非展開状態の前記弁は、前記第1カテーテルの前記内径よりも小さいか、又は略等しい直径を有し、前記展開状態において弁は、前記第1カテーテルの前記外径よりも実質上大きい直径を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項7】
前記弁が前記ルーメンとの流体連通する中央開口部を有することを特徴とする請求項6に記載の血管内弁装置。
【請求項8】
更に、前記第1カテーテル上に延設される第2カテーテルを有し、前記非展開状態において前記第2カテーテルは又前記弁上に延び、前記展開状態において前記弁は前記第2カテーテルより離反して延びることを特徴とする請求項7に記載の血管内弁装置。
【請求項9】
更に、遠位端を有する制御部材を有し、前記弁は前記制御部材の前記遠位端に結合されることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項10】
更に、自己展開式カラーを有し、前記弁の近位端は前記自己展開式カラーに結合されることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項11】
前記弁は複数のフラップを有することを特徴とする請求項10に記載の血管内弁装置。
【請求項12】
前記弁は管状スリーブを有することを特徴とする請求項9に記載の血管内弁装置。
【請求項13】
更に、自己展開式ループを有し、前記弁の近位端は前記自己展開式ループに結合され、前記弁は開口する遠位端を有することを特徴とする請求項9に記載の血管内弁装置。
【請求項14】
更に、血管内弁近くのカテーテルの壁に洗浄弁を有し、該洗浄弁は通常は閉弁位置にあり、作動するか予め設定された条件を満たすことで開弁できることを特徴とする請求項6に記載の血管内弁装置。
【請求項15】
近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端の間に延びる長さ部分、内径を決めるルーメン、及び外径を有する細長い送達カテーテルであって、輸液を前記ルーメンによって送達可能な前記送達カテーテル、及び
前記送達カテーテルの前記近位端から制御できる展開制御部材であって、該制御部材は前記弁を前記非展開状態から前記展開状態へと動かすようになっており、前記非展開状態では、前記弁は前記送達カテーテルの前記ルーメンの前記内径よりも小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態では、前記弁は前記送達カテーテルの前記外径より実質上大きな直径を有するような前記展開制御部材、を更に有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項16】
前記展開状態での前記弁は、前記送達カテーテルから血管へと輸液を配達するために前記ルーメンと流体連通する開口部を有することを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項17】
前記送達カテーテルの遠位端は弁座を備え、前記弁は前記弁座に対して係合可能な嵌合構造を有し、前記弁が前記展開状態にある場合、前記弁の前記嵌合構造は前記弁座に係合して、前記弁を前記送達カテーテルの前記遠位端にロックすることを特徴とする請求項16に記載の血管内弁装置。
【請求項18】
前記展開制御部材は、前記弁が前記弁座の前記遠位端でロックされている間に、前記送達カテーテルから退縮可能であることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項19】
前記展開制御部材は、前記送達カテーテルを通って進行可能なワイヤであり、前記ワイヤは前記弁の一部分に接して、前記弁を前記ルーメンを介して前記弁座へと遠くに進行させることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項20】
前記展開制御部材は、前記弁が前記弁座の前記遠位端にロックされる際に前記弁に結合されるワイヤであることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項21】
更に、前記弁に取り付けられて前記送達カテーテルの前記長さ部分を介して延びる退縮要素を有し、該退縮要素は前記弁に対して十分な引張力を与えて前記弁座から前記弁をロック解除することを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項22】
前記展開制御部材は、前記弁が前記弁座の前記遠位端でロックされている間に前記送達カテーテルから退縮でき、
前記退縮要素は前記送達カテーテル内に延びると共に、前記展開制御部材を前記送達カテーテルから取り除く際に前記弁に結合されることを特徴とする請求項21に記載の血管内弁装置。
【請求項23】
前記退縮要素は1本又はそれ以上のワイヤであることを特徴とする請求項22に記載の血管内弁装置。
【請求項24】
前記退縮要素はワイヤーブレイドを備えることを特徴とする請求項22に記載の血管内弁装置。
【請求項25】
前記ワイヤーブレイドにはポリマーコーティングが設けられることを特徴とする請求項24に記載の血管内弁装置。
【請求項26】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記遠位端に設けられる内周溝を備え、
前記嵌合構造は、前記内周溝と長手方向に一直線上に並んだ際に前記溝の中に拡張する要素を備えることを特徴とする請求項17に記載の血管内弁装置。
【請求項27】
前記弁座は、長手方向に位置をずらした複数の溝を備えることを特徴とする請求項26に記載の血管内弁装置。
【請求項28】
前記嵌合構造は拡張可能なフランジを備えることを特徴とする請求項26に記載の血管内弁装置。
【請求項29】
前記フランジは円周方向に連続したものであることを特徴とする請求項28に記載の血管内弁装置。
【請求項30】
前記フランジは、前記弁の近位部分の周囲で、半径方向に位置を変えた複数の離散要素から構成されることを特徴とする請求項28に記載の血管内弁装置。
【請求項31】
前記フランジが近位端と遠位端を有し、前記近位端は前記遠位端に対して小径であることを特徴とする請求項28に記載の血管内弁装置。
【請求項32】
更に、前記弁と前記展開制御部材を取り囲み、前記送達カテーテルの前記ルーメンの内径より小さな直径を備えた遠位端を有するイントロデューサを有し、
前記イントロデューサは、前記送達カテーテル内への導入のため前記弁の前記直径を抑制することを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項33】
前記展開制御部材は前記送達カテーテルを通って延びる内カテーテルであり、前記弁は前記内カテーテルに据え付けられ、前記送達カテーテルと前記内カテーテルは互いに対して軸方向に変位可能であることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項34】
処置治療中に血管内において輸液の逆流を軽減するための血管内弁装置であって、
a)近位端と遠位端、内径を決めるルーメン、及び外径を有する細長い送達カテーテルであって、輸液は前記ルーメンを介して送達されるような前記送達カテーテル、
b)前記送達カテーテルの前記遠位端に結合され、第1の小径を持った収納状態と、第2の大径を持った半径方向に拡張した展開状態とを持つ弁であって、前記第2の大径は前記外径よりも実質上大きく、前記血管内弁装置が使用される血管にまたがって延びることができ、
i)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、前記弁は非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメントと、
ii)編み込まれた前記第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有し、前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、前記弁がひとたび展開状態となったならば、前記弁は、血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となるような前記フィルタと、を有する前記弁、及び
c)前記弁を前記収納状態から前記展開状態へと移動させる制御要素、を有し、さらに前記展開状態の弁は、前記送達カテーテルを通って血管内に延びる通路にそって輸液を送達可能な開口部を有し、前記展開状態の前記弁は、血管内の体液を、弁に対し近位から遠位にかけて自動的に流動させると共に、遠位から近位にかけての方向の輸液の逆流を阻止することを特徴とする血管内弁装置。
【請求項35】
人間又は動物の血管又は他の導管を処置する方法において、
a)、近位端と、遠位端と、前記遠位端の弁座と、内径を決めるルーメンと、外径とを有する細長い送達カテーテルを、血管又は他の導管へ送達する行程と、
b)次いで、前記送達カテーテルの前記近位端から前記遠位端に対し、前記遠位端へ進行した際に前記弁座に接する嵌合構造を有しかつ以下の特徴を有する弁を進行させる行程とを備え、
前記弁は、
i)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、
前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、
前記弁は前記送達カテーテル内で非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記送達カテーテルの外側で非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、
前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメント、及び、
ii)前記編み込まれた第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有する前記フィルタ、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、前記非展開状態にある前記弁は、前記ルーメンの前記内径より小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルの前記外径より実質的に大きい直径を有し、
前記弁が前記送達カテーテルの前記近位端にある時、前記弁は前記非展開状態であり、また、前記弁の前記嵌合構造が前記弁座に係合した際には、前記弁の一部分が前記送達カテーテルの前記遠位端から延び、前記展開状態へと移動し、前記展開状態にある弁は、血管内で、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、
c)前記送達カテーテルを通って前記弁の前記開口部から血管或いは他の導管の中へ、前記複数の細孔の特徴的直径よりも大きい特徴的サイズを有する薬剤であって、血管或いは他の導管内の薬剤の前記細孔を通って近位の方向への逆流が禁じられるような前記薬剤を注入する行程をさらに有することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記弁を進行させる行程は、送達カテーテルを通ってプッシュワイヤを進めることを含み、前記プッシュワイヤは、前記送達カテーテルに対し前記弁を遠位に進める力を与えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記弁を進行させる行程中、前記プッシュワイヤと前記弁は、互いに接し、かつ互いから分離可能であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤を注入する行程の後、更に
前記弁座から前記弁の前記嵌合構造を解放し、前記送達カテーテルの前記ルーメン内へ前記弁を引き込む行程と、
人間か動物から前記送達カテーテルを回収する行程とを有することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記弁座から前記弁の前記嵌合構造を解放する行程は、前記弁に結合された1本又はそれ以上のワイヤに引張力を付与することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記弁と前記弁座は、機械的に連動する関係をもって接触し合うことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記血管又は他の導管は血管であり、前記輸液は塞栓剤であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項42】
人間又は動物の血管又は他の導管を処置する方法において、
a)、近位の第1カテーテル、遠位の第2カテーテル、及び前記第1カテーテルと前記第2カテーテルの間において長手方向に配置された弁を有する装置であって、前記弁の近位端が前記第1カテーテルの遠位端に結合され、前記弁の遠位端が前記第2カテーテルの近位端に結合され、前記第1カテーテルは前記第2カテーテルより大きな内径を有し、前記弁は、ブレイド構造を有すると共に特徴のあるサイズの複数の孔を持つ材料でコーティングされた近位部分を有し、前記弁は拡大した第1の直径を持った展開状態へと付勢されるような、前記装置を用意する行程と、
b)前記装置を通って、取り外し可能な細長部材を、前記第2カテーテルの近位端に向けて挿入し、それにより前記弁を伸長させかつ弁の直径をより小さい第2の直径に減少させる行程と、
c)その後、前記弁を非展開状態となるように小さな第2の直径に設定した状態で患者の中の目標部位に装置を進行させる行程と、
d)その後、前記細長部材を前記第2カテーテルの近位端との接触から外し、前記弁を展開状態にする行程と、
e)その後、血管又は他の導管内において前記孔を介した薬剤の近位方向への逆流が禁止されるように前記複数の孔の特性サイズよりも大きい特性サイズを有する薬剤を、前記第1カテーテルを介し注入すると共に前記弁の前記第2の部分から出させて、血管又は他の導管内に注入する行程と、
f)その後、患者から前記装置を回収する行程とを有することを特徴とする方法。
【請求項43】
前記弁は、完全に開弁状態での半径方向拡張力が40mN以下であり、少なくとも1本のフィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を有し、前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと開弁することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細長部材はコイル管状部材であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記細長部材は指標帯を付けたガイドワイヤであることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項46】
人間又は動物の血管又は他の導管を処置する方法であって、
a)血管内へシステムを送達することであって、該システムは、
i)近位端、遠位端、外径、及び内径を決めるルーメンを有する内カテーテル、
前記内カテーテルの前記遠位端に位置する弁であって、前記弁は、
A)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、
前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、
前記弁は送達カテーテル内で非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記送達カテーテルの外側で非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、
前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメント、及び
B)前記編み込まれた第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有する前記フィルタ、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中において1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、
前記展開状態にある前記弁は、血管内で、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であると共に、開口部を有し、
ii)近位端、遠位端、内径を決めるルーメン、及び外径を有する外カテーテルであって、前記内カテーテルは前記外カテーテルを通って延び、非展開状態にある前記弁は前記外カテーテルの前記ルーメン内に位置する、前記外カテーテルを有し、
b)その後、前記内カテーテルと前記外カテーテルを互いに対して移動させて、前記外カテーテルの前記遠位端から前記弁を動かして弁を前記展開状態へと拡張する行程であって、
前記弁の開口部は、少なくとも弁が前記展開状態にある時、前記内カテーテルの前記ルーメンとの流体連通状態にあり、前記弁は展開状態にあって開いている時には血管に広がる大きさの直径を有し、
c)前記内カテーテルを通って、前記弁の開口部から血管の中へと塞栓剤を注入する行程と、
d)血液流動条件に応じて前記弁を動的に開閉させる行程であって、
前記弁は、開弁している時、前記弁を通ってその遠位から近位へ向かう方向の輸液の流れを防止するように輸液に対し不透過性を有する、行程とを有することを特徴とする方法。
【請求項47】
前記弁が前記展開状態にある時、前記第1フィラメントは、実質的に載頭円錐形となることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項48】
第1フィラメントは、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、液晶ポリマー、ステンレス鋼、ニチロール、フッ素化ポリマー、ナイロン、ポリアミド、白金、白金イリジウムの中から選ばれた材料からなることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項49】
更に、患者から装置を回収するに先立ち、細長部材を第1カテーテルを介して後方に挿入して、第2カテーテルの近位端と接触させ、弁を非展開状態にさせることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項50】
処置時における血管内輸液の逆流を低減するための血管内装置であって、該血管内装置は
a)近位端と遠位端、内径を決めるルーメン、及び外径を有し、前記ルーメンを介して血管に輸液を送達することができる細長い送達カテーテル、
b)前記送達カテーテルの前記遠位端に設けられる弁座、
c)前記送達カテーテルを通って前記弁座へと変位可能な弁を有し、
前記弁は、
i)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、
前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、
前記弁は前記送達カテーテル内で非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記送達カテーテルの外側で非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、
前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメント、
ii)編み込まれた前記第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有する前記フィルタ、及び
iii)前記弁が前記弁座へと進行して弁座に対して弁をロックする際に前記弁座に係合される嵌合構造であって、前記非展開状態にある前記弁は、前記カテーテルの内径より小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルの前記外径より実質的に大きい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルから血管へと輸液を送達するために前記ルーメンと流体連通する開口部を有するような前記嵌合構造、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、
前記弁がひとたび前記展開状態となったならば、前記弁は、血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で、前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、そして
前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となることを特徴とする血管内装置。
【請求項51】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記遠位端に位置することを特徴とする請求項50に記載の血管内弁装置。
【請求項52】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記ルーメン内に設けられることを特徴とする請求項51に記載の血管内弁装置。
【請求項53】
前記弁は更に、前記弁が前記弁座へと進行して弁座に対して弁をロックする際に前記弁座に係合される嵌合構造を有し、前記非展開状態にある前記弁は、前記カテーテルの内径より小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルの前記外径より実質的に大きい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルから血管へと輸液を送達するために前記ルーメンと流体連通する開口部を有することを特徴とする請求項51に記載の血管内弁装置。
【請求項54】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記ルーメンの内面に沿って円周溝を備え、前記嵌合構造は前記円周溝内に拡張する少なくとも1つの要素を有することを特徴とする請求項53に記載の血管内弁装置。
【請求項55】
更に、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能な展開要素であって、前記送達カテーテルの近位端から前記遠位端に向かって遠くへと前記弁を進行させるようになっている前記展開要素を有することを特徴とする請求項50に記載の血管内弁装置。
【請求項56】
前記展開要素は前記送達カテーテルを通って進行可能なプッシュワイヤであり、該プッシュワイヤは、前記弁の一部分に当接して前記弁を前記送達カテーテルを介して前記弁座へと遠くに進行させることを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項57】
更に、前記弁に結合される退縮要素であって、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能であると共に前記弁に張力を付与することで前記弁座に対して前記弁を保持するように構成された前記退縮要素を有することを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項58】
更に、前記弁に結合される退縮要素であって、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能であると共に前記弁に張力を付与することで前記弁座から前記弁を解放し前記送達カテーテル内に弁を引き込むように構成された前記退縮要素を有することを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項59】
更に、前記展開要素から分離した状態で前記弁に結合される退縮要素であって、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能で、前記弁座から前記弁を解放して前記送達カテーテル内に弁を引き込むのに充分な張力を付与する前記退縮要素を有することを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項60】
処置治療中に血管内において輸液の逆流を軽減するための血管内弁システムであって、
a)近位端、遠位端、第1内径を有するルーメン、及び血管に挿入されるサイズの第1外径を有する第1管状部材、
b)近位面を有する近位端、遠位端、前記第1内径よりも小さい第2内径を有するルーメン、及び血管に挿入されるサイズの第2外径を有する第2管状部材、
c)前記第1管状部材と前記第2管状部材との間を長手方向に変位する弁であって、該弁は夫々が近位端と遠位端を有する第1フィラメントのブレイドを有し、前記第1フィラメントの前記近位端は前記第1管状部材の前記遠位端に結合され、前記第1フィラメントの前記遠位端は前記第2管状部材の前記近位端に結合され、前記第1フィラメントのブレイドは拡張位置において付勢されて前記第1外径及び前記第2外径よりも大きな直径へと半径方向外方に拡張し、前記弁は近位部分と遠位部分を規定するような、前記弁、
d)前記拡張位置の近傍で前記弁を横切って形成されるフィルタであって、500μmを超えない細孔サイズを規定し、前記拡張位置から遠くにあって前記弁の少なくとも一部が前記フィルタから自由であるような、前記フィルタ、及び
e)処置治療中に前記第1管状部材の中に挿入できかつそこから移動できる細長部材であって、前記第1内径よりも小さく前記第2内径よりも大きい遠位面を有する前記細長部材、を有し、
前記遠位面が第2管状部材の前記近位面と接触状態となって前記ブレイドに張力を付与して前記ブレイドの直径を減少させるように、前記細長部材は前記第1管状部材の中に挿入でき、前記弁を非展開状態にして血管内で送達し、そして
前記細長部材はその後、前記弁と前記接触から外れることができ、前記弁が血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で、前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動できるような展開状態に前記弁をいたらしめ、前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となることを特徴とする弁システム。
【請求項61】
前記フィルタは、編み込まれた第1フィラメント上にポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されることを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項62】
前記弁は、各々の直径が0.025mm〜0.127mmの複数の細長い第1フィラメントを備え、前記第1フィラメントは、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有し、前記ブレイドが半径方向外側に拡張された際には前記第1フィラメントの夫々は100°〜150°の角度で互いに交差し、更に前記第1フィラメントは、100MPa以上のヤング弾性率を有することを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項63】
前記弁は、3.2cPの粘性を持つ静止流体中で1秒以内で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張することを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項64】
前記細長要素は遠位端を有する管状要素であり、前記第2部材はカテーテルであり、前記管状要素の遠位端が前記第2部材の近位面に接して前記張力を付与することを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項65】
前記管状要素はワイヤコイルを有することを特徴とする請求項64に記載の弁システム。
【請求項66】
前記細長部材は指標帯を付けたガイドワイヤであり、前記遠位面は前記指標帯に設けられることを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項67】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項68】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項34に記載の血管内装置。
【請求項69】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項70】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項71】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項50に記載の血管内装置。
【請求項1】
処置治療中に血管内において塞栓剤を含む輸液の逆流を軽減するための血管内弁装置であって、
i)各々の直径が0.025mm〜0.127mmである、複数の細長い第1フィラメントであって、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する前記第1フィラメントであり、
前記近位端は互いに固着され、前記第1フィラメントは、前記近位端から抹消へ向かう長さ部分に沿って、前記第1フィラメントが互いに移動可能なように互いに対し接着されず、
弁は非展開状態へと完全に折り畳むことできると共に、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと完全に拡張でき、
前記展開状態では前記第1フィラメントが100°〜150°の角度で互いに交差し、100MPa以上のヤング弾性率を有するような前記第1フィラメント、及び
ii)編みこまれた前記第1フィラメントに提供されるフィルタであって、前記フィルタは、前記編みこまれた第1フィラメントにポリマーの第2のフィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成され、500μmを超えない細孔サイズを規定する前記フィルタ、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性を持つ静止流体中で1秒以内で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、前記弁がひとたび展開状態となったならば、前記弁は、血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となることを特徴とする血管内弁装置。
【請求項2】
前記弁は、体液が第1流体圧で近位から遠位の方向に弁に対して流動する際には、前記閉弁形態へと自動的に崩壊するように形成され、弁の周りの体液流れを可能にし、
前記弁は血管内において前記開弁形態へと自動的に拡張し、血管内において遠位から近位方向に弁に向かって通過する輸液の流れを阻止するように形成され、
前記弁は、(i)前記体液が遠位から近位方向に前記弁に対して流れる時、(ii)前記体液が静的流動状態にある時、又は(iii)前記弁の近位側流体圧力は前記弁の遠位側流体圧力よりも大きいことで圧力差を生み、その流体圧力差により、弁の近位側において、弁の遠位側流体圧力よりも小さくかつ半径方向拡張力に打ち勝つのに十分な純流体圧を生じる時、のいずれかの時に前記弁は自動的に拡張することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項3】
前記第2フィラメントは、液体状態のポリマーを以て静電沈着されるか又は紡績され、その液体状態において液体溶剤は5%〜25%の高分子固体濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項4】
前記弁は、拡張した前記開弁形態にある時、血管内に体液に対して透過性があることを特徴とする請求項2に記載の血管内弁装置。
【請求項5】
前記弁は、心臓収縮中に前記閉弁形態へと自動的に潰れ、心臓拡張中に前記開弁形態へと自動的に拡張することを特徴とする請求項2に記載の血管内弁装置。
【請求項6】
更に、遠位端と、内径を定義するルーメン、及び外径を有する第1カテーテルを有し、前記弁は前記第1カテーテルの前記遠位端に結合され、前記非展開状態の前記弁は、前記第1カテーテルの前記内径よりも小さいか、又は略等しい直径を有し、前記展開状態において弁は、前記第1カテーテルの前記外径よりも実質上大きい直径を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項7】
前記弁が前記ルーメンとの流体連通する中央開口部を有することを特徴とする請求項6に記載の血管内弁装置。
【請求項8】
更に、前記第1カテーテル上に延設される第2カテーテルを有し、前記非展開状態において前記第2カテーテルは又前記弁上に延び、前記展開状態において前記弁は前記第2カテーテルより離反して延びることを特徴とする請求項7に記載の血管内弁装置。
【請求項9】
更に、遠位端を有する制御部材を有し、前記弁は前記制御部材の前記遠位端に結合されることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項10】
更に、自己展開式カラーを有し、前記弁の近位端は前記自己展開式カラーに結合されることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項11】
前記弁は複数のフラップを有することを特徴とする請求項10に記載の血管内弁装置。
【請求項12】
前記弁は管状スリーブを有することを特徴とする請求項9に記載の血管内弁装置。
【請求項13】
更に、自己展開式ループを有し、前記弁の近位端は前記自己展開式ループに結合され、前記弁は開口する遠位端を有することを特徴とする請求項9に記載の血管内弁装置。
【請求項14】
更に、血管内弁近くのカテーテルの壁に洗浄弁を有し、該洗浄弁は通常は閉弁位置にあり、作動するか予め設定された条件を満たすことで開弁できることを特徴とする請求項6に記載の血管内弁装置。
【請求項15】
近位端、遠位端、前記近位端と前記遠位端の間に延びる長さ部分、内径を決めるルーメン、及び外径を有する細長い送達カテーテルであって、輸液を前記ルーメンによって送達可能な前記送達カテーテル、及び
前記送達カテーテルの前記近位端から制御できる展開制御部材であって、該制御部材は前記弁を前記非展開状態から前記展開状態へと動かすようになっており、前記非展開状態では、前記弁は前記送達カテーテルの前記ルーメンの前記内径よりも小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態では、前記弁は前記送達カテーテルの前記外径より実質上大きな直径を有するような前記展開制御部材、を更に有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項16】
前記展開状態での前記弁は、前記送達カテーテルから血管へと輸液を配達するために前記ルーメンと流体連通する開口部を有することを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項17】
前記送達カテーテルの遠位端は弁座を備え、前記弁は前記弁座に対して係合可能な嵌合構造を有し、前記弁が前記展開状態にある場合、前記弁の前記嵌合構造は前記弁座に係合して、前記弁を前記送達カテーテルの前記遠位端にロックすることを特徴とする請求項16に記載の血管内弁装置。
【請求項18】
前記展開制御部材は、前記弁が前記弁座の前記遠位端でロックされている間に、前記送達カテーテルから退縮可能であることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項19】
前記展開制御部材は、前記送達カテーテルを通って進行可能なワイヤであり、前記ワイヤは前記弁の一部分に接して、前記弁を前記ルーメンを介して前記弁座へと遠くに進行させることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項20】
前記展開制御部材は、前記弁が前記弁座の前記遠位端にロックされる際に前記弁に結合されるワイヤであることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項21】
更に、前記弁に取り付けられて前記送達カテーテルの前記長さ部分を介して延びる退縮要素を有し、該退縮要素は前記弁に対して十分な引張力を与えて前記弁座から前記弁をロック解除することを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項22】
前記展開制御部材は、前記弁が前記弁座の前記遠位端でロックされている間に前記送達カテーテルから退縮でき、
前記退縮要素は前記送達カテーテル内に延びると共に、前記展開制御部材を前記送達カテーテルから取り除く際に前記弁に結合されることを特徴とする請求項21に記載の血管内弁装置。
【請求項23】
前記退縮要素は1本又はそれ以上のワイヤであることを特徴とする請求項22に記載の血管内弁装置。
【請求項24】
前記退縮要素はワイヤーブレイドを備えることを特徴とする請求項22に記載の血管内弁装置。
【請求項25】
前記ワイヤーブレイドにはポリマーコーティングが設けられることを特徴とする請求項24に記載の血管内弁装置。
【請求項26】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記遠位端に設けられる内周溝を備え、
前記嵌合構造は、前記内周溝と長手方向に一直線上に並んだ際に前記溝の中に拡張する要素を備えることを特徴とする請求項17に記載の血管内弁装置。
【請求項27】
前記弁座は、長手方向に位置をずらした複数の溝を備えることを特徴とする請求項26に記載の血管内弁装置。
【請求項28】
前記嵌合構造は拡張可能なフランジを備えることを特徴とする請求項26に記載の血管内弁装置。
【請求項29】
前記フランジは円周方向に連続したものであることを特徴とする請求項28に記載の血管内弁装置。
【請求項30】
前記フランジは、前記弁の近位部分の周囲で、半径方向に位置を変えた複数の離散要素から構成されることを特徴とする請求項28に記載の血管内弁装置。
【請求項31】
前記フランジが近位端と遠位端を有し、前記近位端は前記遠位端に対して小径であることを特徴とする請求項28に記載の血管内弁装置。
【請求項32】
更に、前記弁と前記展開制御部材を取り囲み、前記送達カテーテルの前記ルーメンの内径より小さな直径を備えた遠位端を有するイントロデューサを有し、
前記イントロデューサは、前記送達カテーテル内への導入のため前記弁の前記直径を抑制することを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項33】
前記展開制御部材は前記送達カテーテルを通って延びる内カテーテルであり、前記弁は前記内カテーテルに据え付けられ、前記送達カテーテルと前記内カテーテルは互いに対して軸方向に変位可能であることを特徴とする請求項15に記載の血管内弁装置。
【請求項34】
処置治療中に血管内において輸液の逆流を軽減するための血管内弁装置であって、
a)近位端と遠位端、内径を決めるルーメン、及び外径を有する細長い送達カテーテルであって、輸液は前記ルーメンを介して送達されるような前記送達カテーテル、
b)前記送達カテーテルの前記遠位端に結合され、第1の小径を持った収納状態と、第2の大径を持った半径方向に拡張した展開状態とを持つ弁であって、前記第2の大径は前記外径よりも実質上大きく、前記血管内弁装置が使用される血管にまたがって延びることができ、
i)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、前記弁は非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメントと、
ii)編み込まれた前記第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有し、前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、前記弁がひとたび展開状態となったならば、前記弁は、血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となるような前記フィルタと、を有する前記弁、及び
c)前記弁を前記収納状態から前記展開状態へと移動させる制御要素、を有し、さらに前記展開状態の弁は、前記送達カテーテルを通って血管内に延びる通路にそって輸液を送達可能な開口部を有し、前記展開状態の前記弁は、血管内の体液を、弁に対し近位から遠位にかけて自動的に流動させると共に、遠位から近位にかけての方向の輸液の逆流を阻止することを特徴とする血管内弁装置。
【請求項35】
人間又は動物の血管又は他の導管を処置する方法において、
a)、近位端と、遠位端と、前記遠位端の弁座と、内径を決めるルーメンと、外径とを有する細長い送達カテーテルを、血管又は他の導管へ送達する行程と、
b)次いで、前記送達カテーテルの前記近位端から前記遠位端に対し、前記遠位端へ進行した際に前記弁座に接する嵌合構造を有しかつ以下の特徴を有する弁を進行させる行程とを備え、
前記弁は、
i)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、
前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、
前記弁は前記送達カテーテル内で非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記送達カテーテルの外側で非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、
前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメント、及び、
ii)前記編み込まれた第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有する前記フィルタ、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、前記非展開状態にある前記弁は、前記ルーメンの前記内径より小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルの前記外径より実質的に大きい直径を有し、
前記弁が前記送達カテーテルの前記近位端にある時、前記弁は前記非展開状態であり、また、前記弁の前記嵌合構造が前記弁座に係合した際には、前記弁の一部分が前記送達カテーテルの前記遠位端から延び、前記展開状態へと移動し、前記展開状態にある弁は、血管内で、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、
c)前記送達カテーテルを通って前記弁の前記開口部から血管或いは他の導管の中へ、前記複数の細孔の特徴的直径よりも大きい特徴的サイズを有する薬剤であって、血管或いは他の導管内の薬剤の前記細孔を通って近位の方向への逆流が禁じられるような前記薬剤を注入する行程をさらに有することを特徴とする方法。
【請求項36】
前記弁を進行させる行程は、送達カテーテルを通ってプッシュワイヤを進めることを含み、前記プッシュワイヤは、前記送達カテーテルに対し前記弁を遠位に進める力を与えることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記弁を進行させる行程中、前記プッシュワイヤと前記弁は、互いに接し、かつ互いから分離可能であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤を注入する行程の後、更に
前記弁座から前記弁の前記嵌合構造を解放し、前記送達カテーテルの前記ルーメン内へ前記弁を引き込む行程と、
人間か動物から前記送達カテーテルを回収する行程とを有することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記弁座から前記弁の前記嵌合構造を解放する行程は、前記弁に結合された1本又はそれ以上のワイヤに引張力を付与することを含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記弁と前記弁座は、機械的に連動する関係をもって接触し合うことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記血管又は他の導管は血管であり、前記輸液は塞栓剤であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項42】
人間又は動物の血管又は他の導管を処置する方法において、
a)、近位の第1カテーテル、遠位の第2カテーテル、及び前記第1カテーテルと前記第2カテーテルの間において長手方向に配置された弁を有する装置であって、前記弁の近位端が前記第1カテーテルの遠位端に結合され、前記弁の遠位端が前記第2カテーテルの近位端に結合され、前記第1カテーテルは前記第2カテーテルより大きな内径を有し、前記弁は、ブレイド構造を有すると共に特徴のあるサイズの複数の孔を持つ材料でコーティングされた近位部分を有し、前記弁は拡大した第1の直径を持った展開状態へと付勢されるような、前記装置を用意する行程と、
b)前記装置を通って、取り外し可能な細長部材を、前記第2カテーテルの近位端に向けて挿入し、それにより前記弁を伸長させかつ弁の直径をより小さい第2の直径に減少させる行程と、
c)その後、前記弁を非展開状態となるように小さな第2の直径に設定した状態で患者の中の目標部位に装置を進行させる行程と、
d)その後、前記細長部材を前記第2カテーテルの近位端との接触から外し、前記弁を展開状態にする行程と、
e)その後、血管又は他の導管内において前記孔を介した薬剤の近位方向への逆流が禁止されるように前記複数の孔の特性サイズよりも大きい特性サイズを有する薬剤を、前記第1カテーテルを介し注入すると共に前記弁の前記第2の部分から出させて、血管又は他の導管内に注入する行程と、
f)その後、患者から前記装置を回収する行程とを有することを特徴とする方法。
【請求項43】
前記弁は、完全に開弁状態での半径方向拡張力が40mN以下であり、少なくとも1本のフィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を有し、前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと開弁することを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記細長部材はコイル管状部材であることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記細長部材は指標帯を付けたガイドワイヤであることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項46】
人間又は動物の血管又は他の導管を処置する方法であって、
a)血管内へシステムを送達することであって、該システムは、
i)近位端、遠位端、外径、及び内径を決めるルーメンを有する内カテーテル、
前記内カテーテルの前記遠位端に位置する弁であって、前記弁は、
A)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、
前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、
前記弁は送達カテーテル内で非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記送達カテーテルの外側で非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、
前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメント、及び
B)前記編み込まれた第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有する前記フィルタ、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中において1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、
前記展開状態にある前記弁は、血管内で、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であると共に、開口部を有し、
ii)近位端、遠位端、内径を決めるルーメン、及び外径を有する外カテーテルであって、前記内カテーテルは前記外カテーテルを通って延び、非展開状態にある前記弁は前記外カテーテルの前記ルーメン内に位置する、前記外カテーテルを有し、
b)その後、前記内カテーテルと前記外カテーテルを互いに対して移動させて、前記外カテーテルの前記遠位端から前記弁を動かして弁を前記展開状態へと拡張する行程であって、
前記弁の開口部は、少なくとも弁が前記展開状態にある時、前記内カテーテルの前記ルーメンとの流体連通状態にあり、前記弁は展開状態にあって開いている時には血管に広がる大きさの直径を有し、
c)前記内カテーテルを通って、前記弁の開口部から血管の中へと塞栓剤を注入する行程と、
d)血液流動条件に応じて前記弁を動的に開閉させる行程であって、
前記弁は、開弁している時、前記弁を通ってその遠位から近位へ向かう方向の輸液の流れを防止するように輸液に対し不透過性を有する、行程とを有することを特徴とする方法。
【請求項47】
前記弁が前記展開状態にある時、前記第1フィラメントは、実質的に載頭円錐形となることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項48】
第1フィラメントは、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、液晶ポリマー、ステンレス鋼、ニチロール、フッ素化ポリマー、ナイロン、ポリアミド、白金、白金イリジウムの中から選ばれた材料からなることを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項49】
更に、患者から装置を回収するに先立ち、細長部材を第1カテーテルを介して後方に挿入して、第2カテーテルの近位端と接触させ、弁を非展開状態にさせることを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項50】
処置時における血管内輸液の逆流を低減するための血管内装置であって、該血管内装置は
a)近位端と遠位端、内径を決めるルーメン、及び外径を有し、前記ルーメンを介して血管に輸液を送達することができる細長い送達カテーテル、
b)前記送達カテーテルの前記遠位端に設けられる弁座、
c)前記送達カテーテルを通って前記弁座へと変位可能な弁を有し、
前記弁は、
i)夫々が0.025mm〜0.127mmの直径を持ち、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有する複数の細長い第1フィラメントであって、
前記近位端は互いにで固着され、前記第1フィラメント同士は互いに対し移動可能なように、前記近位端から遠位の前記長さ部分に沿って互いに接着されず、
前記弁は前記送達カテーテル内で非展開状態へと完全に折り畳むことができ、前記第1フィラメントのバネ付勢力によって前記送達カテーテルの外側で非展開状態から半径方向に拡張した展開状態へと拡張可能であり、
前記展開状態において、第1フィラメントは100°〜150°の角度で互いに交差し、前記第1フィラメントは100MPa以上のヤング弾性率を持つような前記第1フィラメント、
ii)編み込まれた前記第1フィラメントに設けられるフィルタであって、前記編み込まれた第1フィラメントにポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されかつ500μmを超えない細孔サイズを有する前記フィルタ、及び
iii)前記弁が前記弁座へと進行して弁座に対して弁をロックする際に前記弁座に係合される嵌合構造であって、前記非展開状態にある前記弁は、前記カテーテルの内径より小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルの前記外径より実質的に大きい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルから血管へと輸液を送達するために前記ルーメンと流体連通する開口部を有するような前記嵌合構造、を有し、
前記弁は、3.2cPの粘性の静的流体中で1秒以下で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張し、
前記弁がひとたび前記展開状態となったならば、前記弁は、血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で、前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動可能であり、そして
前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となることを特徴とする血管内装置。
【請求項51】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記遠位端に位置することを特徴とする請求項50に記載の血管内弁装置。
【請求項52】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記ルーメン内に設けられることを特徴とする請求項51に記載の血管内弁装置。
【請求項53】
前記弁は更に、前記弁が前記弁座へと進行して弁座に対して弁をロックする際に前記弁座に係合される嵌合構造を有し、前記非展開状態にある前記弁は、前記カテーテルの内径より小さいか、或いは略等しい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルの前記外径より実質的に大きい直径を有し、前記展開状態にある前記弁は、前記送達カテーテルから血管へと輸液を送達するために前記ルーメンと流体連通する開口部を有することを特徴とする請求項51に記載の血管内弁装置。
【請求項54】
前記弁座は前記送達カテーテルの前記ルーメンの内面に沿って円周溝を備え、前記嵌合構造は前記円周溝内に拡張する少なくとも1つの要素を有することを特徴とする請求項53に記載の血管内弁装置。
【請求項55】
更に、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能な展開要素であって、前記送達カテーテルの近位端から前記遠位端に向かって遠くへと前記弁を進行させるようになっている前記展開要素を有することを特徴とする請求項50に記載の血管内弁装置。
【請求項56】
前記展開要素は前記送達カテーテルを通って進行可能なプッシュワイヤであり、該プッシュワイヤは、前記弁の一部分に当接して前記弁を前記送達カテーテルを介して前記弁座へと遠くに進行させることを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項57】
更に、前記弁に結合される退縮要素であって、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能であると共に前記弁に張力を付与することで前記弁座に対して前記弁を保持するように構成された前記退縮要素を有することを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項58】
更に、前記弁に結合される退縮要素であって、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能であると共に前記弁に張力を付与することで前記弁座から前記弁を解放し前記送達カテーテル内に弁を引き込むように構成された前記退縮要素を有することを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項59】
更に、前記展開要素から分離した状態で前記弁に結合される退縮要素であって、前記送達カテーテルの前記近位端から制御可能で、前記弁座から前記弁を解放して前記送達カテーテル内に弁を引き込むのに充分な張力を付与する前記退縮要素を有することを特徴とする請求項55に記載の血管内弁装置。
【請求項60】
処置治療中に血管内において輸液の逆流を軽減するための血管内弁システムであって、
a)近位端、遠位端、第1内径を有するルーメン、及び血管に挿入されるサイズの第1外径を有する第1管状部材、
b)近位面を有する近位端、遠位端、前記第1内径よりも小さい第2内径を有するルーメン、及び血管に挿入されるサイズの第2外径を有する第2管状部材、
c)前記第1管状部材と前記第2管状部材との間を長手方向に変位する弁であって、該弁は夫々が近位端と遠位端を有する第1フィラメントのブレイドを有し、前記第1フィラメントの前記近位端は前記第1管状部材の前記遠位端に結合され、前記第1フィラメントの前記遠位端は前記第2管状部材の前記近位端に結合され、前記第1フィラメントのブレイドは拡張位置において付勢されて前記第1外径及び前記第2外径よりも大きな直径へと半径方向外方に拡張し、前記弁は近位部分と遠位部分を規定するような、前記弁、
d)前記拡張位置の近傍で前記弁を横切って形成されるフィルタであって、500μmを超えない細孔サイズを規定し、前記拡張位置から遠くにあって前記弁の少なくとも一部が前記フィルタから自由であるような、前記フィルタ、及び
e)処置治療中に前記第1管状部材の中に挿入できかつそこから移動できる細長部材であって、前記第1内径よりも小さく前記第2内径よりも大きい遠位面を有する前記細長部材、を有し、
前記遠位面が第2管状部材の前記近位面と接触状態となって前記ブレイドに張力を付与して前記ブレイドの直径を減少させるように、前記細長部材は前記第1管状部材の中に挿入でき、前記弁を非展開状態にして血管内で送達し、そして
前記細長部材はその後、前記弁と前記接触から外れることができ、前記弁が血管内において、拡張した開弁形態と折り畳まれた閉弁形態との間で、前記弁の周りの局部的体液流動条件に従って動的に移動できるような展開状態に前記弁をいたらしめ、前記弁が前記開弁形態にある時、前記フィルタの前記細孔サイズにより、前記フィルタは輸液の塞栓剤に対し非透過性となることを特徴とする弁システム。
【請求項61】
前記フィルタは、編み込まれた第1フィラメント上にポリマーの第2フィラメントを静電沈着させるか又は紡績することにより形成されることを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項62】
前記弁は、各々の直径が0.025mm〜0.127mmの複数の細長い第1フィラメントを備え、前記第1フィラメントは、近位端、遠位端、及びその間に延びる長さ部分を有し、前記ブレイドが半径方向外側に拡張された際には前記第1フィラメントの夫々は100°〜150°の角度で互いに交差し、更に前記第1フィラメントは、100MPa以上のヤング弾性率を有することを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項63】
前記弁は、3.2cPの粘性を持つ静止流体中で1秒以内で前記非展開状態から前記展開状態へと拡張することを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項64】
前記細長要素は遠位端を有する管状要素であり、前記第2部材はカテーテルであり、前記管状要素の遠位端が前記第2部材の近位面に接して前記張力を付与することを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項65】
前記管状要素はワイヤコイルを有することを特徴とする請求項64に記載の弁システム。
【請求項66】
前記細長部材は指標帯を付けたガイドワイヤであり、前記遠位面は前記指標帯に設けられることを特徴とする請求項60に記載の弁システム。
【請求項67】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項1に記載の血管内弁装置。
【請求項68】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項34に記載の血管内装置。
【請求項69】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項70】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項71】
前記弁は40mN以下の半径方向拡張力を有することを特徴とする請求項50に記載の血管内装置。
【図12A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図12B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図13A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図13B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図14A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図14B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図15A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図15B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図16A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図16B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図17A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図17B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図18A】送達カテーテルに弁を取り付けるための模範的構造及び方法の別の実施形態を示す図である。
【図18B】送達カテーテルに弁を取り付けるための模範的構造及び方法の別の実施形態を示す図である。
【図19】送達カテーテルの遠位端に弁を運ぶための装置の別の実施形態の、遠位端の概略図である。
【図20】図19の弁の概略図である。
【図21A】図20の弁のための異なる弁構造を用いた各実施形態の遠位端を示す図である。
【図21B】図20の弁のための異なる弁構造を用いた各実施形態の遠位端を示す図である。
【図21C】図20の弁のための異なる弁構造を用いた各実施形態の遠位端を示す図である。
【図22】展開状態にある図19の装置を示す図である。
【図23】展開状態にある図19の装置を示す図である。
【図24】スリーブ弁を展開させるための別の装置の概略図であって、収容状態にある弁を示した図である。
【図25】スリーブ弁を展開させるための別の装置の概略図であって、弁の展開状態を示した図である。
【図26】スリーブ弁を展開させるための別の装置の概略図であって、弁の展開状態を示した図である。
【図27】バルーンを使用する弁を展開するための装置の概略図であって、閉じた状態の弁を示した図である。
【図28】バルーンを使用する弁を展開するための装置の概略図であって、展開状態の弁を示した図である。
【図29】バルーンを使用する弁を展開するための装置の概略図であって、展開状態の弁を示した図である。
【図30】バルーンを使用するフィルタを展開するための別の装置の概略図である。
【図31】バルーンを使用するフィルタを展開するための別の装置の概略図である。
【図32】バルーンを使用するフィルタを展開するための別の装置の概略図である。
【図33】弁を展開するための別の装置の概略図である。
【図34】弁を展開するための別の装置の概略図であって、収容状態にある弁を示した図である。
【図35】弁を展開するための別の装置の概略図であって、展開された弁を示した図である。
【図36】弁を展開するための別の装置の概略図であって、使用状態にある弁を示した図である。
【図37】弁を展開するための別の装置の概略図であって、図37は初期閉止状態を示す図である。
【図38】弁を展開するための別の装置の概略図であって、展開状態を示す図である。
【図39】弁を展開するための別の装置の概略図であって、展開状態を示す図である。
【図40】弁を展開するための別の装置の概略図であって、仮の状態で再び閉じられた状態を示す図である。
【図41】本発明の別実施例のうちのいずれかに関連して使用可能な幾つかの洗浄弁を示す図である。
【図42】本発明の別実施例のうちのいずれかに関連して使用可能な幾つかの洗浄弁を示す図である。
【図43】本発明の別実施例のうちのいずれかに関連して使用可能な幾つかの洗浄弁を示す図である。
【図44】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図45】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図46】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図47】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図48】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図49】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図50】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図51】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の模範的実施形態を図2A〜2Cに示す。図2A〜2Cは相対的なサイズで示されてはおらず、むしろ説明のために示されていることに留意されたい。図2A〜2Cには、近位端(図示せず)と遠位端205を有する送達カテーテル201が動脈204内に配置された状態で示されている。送達カテーテル201は、患者(図示せず)の体外から患者の目標血管(動脈又は静脈)に塞栓剤を供給するようになっている。カテーテル201の遠位端205へ取り付けられるものは、複数のフィラメント203a、203b、203c…を有して示した模範的な実施形態の弁203であって、各フィラメントは好ましくは網状になっており、互いに対し移動可能になっている。以下で説明するように、フィラメントは、弁が実質上載頭円錐形となるように、バネ付勢された状態で(即ち、それらは“形状記憶”の状態を有する)、互いに対し所望の交差角を成す(尚、ここで用いた“実質的に載頭円錐形”という用語は、円錐台だけでなく、切頂双曲面や切頂放物体、更に円形の近位端から始まりそこから分岐するような他の如何なる形状も含むことに留意されたい)。カテーテル201の周囲には、送達カテーテル201と弁203の上を移動できるような外カテーテル、又はスリーブ202がある。必要なら、外カテーテル又はスリーブ202は送達カテーテルの全長程に伸ばしても良い。外カテーテル又はスリーブ202が送達カテーテルの全長に沿って伸ばした場合、それは近位へと伸びかつ患者の体外から手術者によってコントロールすることができる近位端(図示せず)を有する。或いは、外カテーテル又はスリーブ202は、送達カテーテル201の遠位端及び弁203の上だけを伸びるが、近位へと伸びかつ患者の体外からの手術者によってコントロール可能な制御要素によってコントロールされる。
【0031】
図2Aに示すように、外カテーテル又はスリーブ202が弁203上まで延設された場合、複数フィラメントは円筒形に付勢される。従って、図2Aは退縮又は非展開の円筒形状態となったブレイド弁を示しており、ここではブレイドフィラメント203a、203b、203c…はカテーテル205の遠位端に取り付けられ、更にスリーブ202によって覆われている。カテーテル201は、矢印220方向の前方血流(例えば、心臓収縮時に経験されるように、カテーテルが動脈内に保持された状態で、血液が弁に対し近位から遠位への方向に流れる状態、即ち遠位に流れる血液)を持つ動脈204内に配置される。図2Bに示すように、矢印210の方向にスリーブ202が退縮することで、弁203の非拘束部分は拘束を解かれ、その形状記憶位置に向かって半径方向に拡がる(長手方向には退縮する)。しかしながら、例えば、80〜120mmHg或いはそれ以上の力で発生して遠位方向に流れる血流(矢印220に示す)は、弁が一層完全に開くのを阻止し、弁が血管204の壁面に接触するのを回避させる。その結果、弁203は、不十分な状態で開き、遠位又は近位方向へと流れる血流をブロックする状態に維持される。言い換えれば、前方向の血流は、網を長くすると同時に(完全開き位置に対して)その直径を減じることで、流体の網・血管壁間の通過を可能にする。
【0032】
図2Cは、血流が、緩やかな前方流れ221か静的な流れ、或いはカテーテル201を介して塞栓剤を送達させた後に発生し、弁203を通過する可能性のある逆の流れ222(例えば、以下に限定されたことではないが心臓収縮時において血管内で弁を長手方向静的に保持し、かつ弁に対しては遠位から近位方向に移動することで起こる)、或いは静的な流れ(近位又は遠位方向への血液の著しい流れがないような時に起こるような、弁の両側が実質上等しい圧力、即ちほぼ0mmHgの圧力を持つ流れ)、或いは緩やかな前方流れ(弁の遠位側の圧力が近位側の圧力よりも僅かに大きい場合、例えば0〜80mmHgの際に起こる流れ)の状態にあるような弁203を示している。緩やかな前方流れ221の状態では、血液によって網状弁のフィラメントに対して付与される力は、弁203が開いて血管204の壁に到達するのを回避するには不十分となる。静流状態においては、血液は、弁に対し如何なる前方への力を付与しない。逆の流れ222の際には、血液は、弁が完全に開くのを補助する力を付与する。図2Cの完全展開状態では、網状弁は、塞栓剤の弁に近づく流れを止めるフィルタとして作用する。しかしながら、より詳しくは後述することになるが、ブレイド弁203の細孔サイズによっては血液及び造影剤の弁を通ってカテーテル201の周りへと流れる逆流を可能にする一方で、塞栓剤の流れに対してこれを阻止するか著しく減じることがあるかもしれない。
【0033】
当業者であるならば、本カテーテル201は当該分野では既知の如何なるカテーテルになり得ることを理解すべきである。通常、カテーテルの長さは60cm(2フィート)〜2.4m(8フィート)、外径は0.67mm〜3mm(カテーテルサイズ換算で2〜9フレンチに対応)になり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やフッ素化エチレンプロピレン(FEP)等のフッ素化ポリマーで作られるライナ、ステンレス鋼やチタンのような金属、或いはポリエチレン・テレフタレート(PET)や液晶ポリマー等のポリマーから作られる網、更にPEBAX(商標)等のポリエーテルブロックアミド熱可塑性弾性樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミド共ポリマー、ポリエステル、ポリエステル共ポリマー、PTFEやFEPのようなフッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、或いはその他の適切な材料から作られる外コーティング、或いは血流内で使用されるカテーテルを製造するにあたって使用される他の基準又は特殊材料から作られることになる。スリーブ又は外カテーテル202は、ブレイド203を円筒形に保持できかつ、弁のブレイド203とカテーテル201の上でスライド可能な材料から構成される。スリーブ又は外カテーテル202は、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミド共ポリマー、ポリエステル、ポリエステルの共ポリマー、PTFEやFEPのようなフッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、或いは他の適切な材料から作ることも可能である。スリーブ又は外カテーテルは又、ステンレス鋼やチタンなどの金属、PETや液晶ポリマーのようなポリマー、或いは他の適切な材料からなるブレイドを含んでも良い。スリーブ又は外カテーテル202の肉厚は、0.05mm〜0.25mmの範囲であることが好ましく、更には0.1mm〜0.15mmの範囲内に収まること好ましい。
【0034】
弁203は1種、2種或いはそれ以上の金属(例えば、ステンレス鋼やニチロール)又はポリマーフィラメントから構成され、外部がかからない状態で実質的に載頭円錐形を成すようになっている。ポリマーのフィラメントを使う場合、フィラメントは、PET、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、液晶ポリマー、フッ素化ポリマー、ナイロン、ポリアミド、その他の適切なポリマーから構成しても良い。必要なら、ポリマーフィラメントを用いる際、1種又はそれ以上の金属フィラメントがポリマーフィラメントと共に使用しても良い。本発明の1つの形態として、金属フィラメントを使用する際に、体内での追跡を可能にするべくX線不透過材料からなるようにしても良い。弁は、長さを縮小する一方で長さで直径を拡大することができ、長さを伸ばす一方で直径を減じることができる。弁は、大きな直径を持つように形状設定された形状記憶材から構成されることが好ましい。前述したように、弁は解放されるまでは小径方向に保持されることが好ましく、スリーブ又は他の拘束部品202の削除により解放された際には、弁の遠位端はより大きな直径へと拡張する。弁を複数フィラメントで構成する場合、フィラメントをそれらの長さに沿って、又はそれらの遠位端で互いに接着されないようにし、動的な流動条件に応じて即座に弁が自動的に開閉できるようにすることが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態において、弁はカテーテル本体に結合された近位端でのみ拘束される一方、弁の残りの部分はスリーブやカテーテルによって拘束される状態(退縮状態)か、部分的に拘束されない状態(部分的展開状態)か、或いは完全に非拘束されない状態(完全展開状態)のいずれかが可能である。部分的又は完全に非拘束の状態にある時、血管内の流動状態によっては弁は血管壁に達するかもしれないし、或いは達しないかもしれない。
【0036】
前述したように、弁の直径は局所の流動状態に応じて自動的に変化することで、前方への流れを可能にするも短時間又は長期間の逆流においては塞栓剤を捕らえるようにすべきである。簡単に言えば、弁には2つの状態が存在すると考えて良い。“閉止”状態では、弁は血管壁に対してシールされず、血液は少なくとも近位部においてその周りを遠位方向へと流れるかもしれない。“開放”状態では、弁は血管壁に対して拡張し、仮に血液が血管内の弁をいずれかの方向に流れ過ぎものであるなら、血液は弁を通り抜けるに違いない。尚、この“開放”状態においては、塞栓剤は、弁の下流側に(又は、遠位から近位への方向において)流れるのを防止される。
【0037】
3つのパラメーターが、弁の性能と新規性、即ち、弁の半径方向(外方)の力、弁がその状態を閉止から開放へと変化する際の時定数、及び弁の細孔サイズ、を決定するのを補助する。
【0038】
好ましい実施形態では、ブレイドの周囲の流れのいずれかの部分がうっ血状態に近づいた際には、弁は血管壁に対して十分に拡張し(即ち、開放条件に達し)、血液が遠位の方向に標準の力で遠位へと流動する際には、閉じた状態のままとなる。更に詳しく言えば、弁が拡張する際の半径方向の力が、前方への血流からの力より大きい場合、弁は血管壁に向かって拡張する。しかしながら、本発明の1つの特徴によれば、遠位方向への血流によって弁が開放状態になるのを回避するように、弁の拡張の半径方向力は低めに設定される(より詳細には以下に記述する)。この低い拡張力は、従来からのステント、ステント移植物、遠位の保護フィルタ、その他の血管装置の各拡張力(これらは、あらゆる流動条件において血管壁に対し十分拡張するほど十分に高い半径方向力を有する)とは異なる。
【0039】
ブレイドの拡張の半径方向力に関しては、JedwabとClercによって記述されており(応用バイオマテリアル・ジャーナル、4巻、77〜85頁、1993年)、その後、DeBeule(DeBeuleその他、バイオメカニクス及びバイオメディカル・エンジニアリングにおける計算方法、2005年)によって以下のように更新されている。
【数1】
ここでK1,K2,K3は以下の式によって与えられる定数である。
【数2】
また、IとIpは、ブレイド・フィラメントの慣性の表面及び極モーメントであり、Eはフィラメントのヤング弾性率、Gはフィラメントの剛性率である。初期ブレイド角(β0)、最終ブレイド角(β)、ステント径(D0)、フィラメント数(n)に加え、これらの材料特性はブレイド弁の半径方向力に影響を与える。
【0040】
一実施形態では、図2A〜2Cで示されるような弁構造に伴い、弁203は24本のポリエチレン・テレフタレート(PET)フィラメント203a、203b...から構成され、各々は0.1mmの直径を有し、直径8mmの円筒形、及び130°のブレイド角へと予備成形される(即ち、フィラメントは、弁が完全に展開した状態を仮定して載頭円錐形に開放した際には、130°の角度を成すようにバネ付勢されるか、そのような形状記憶を持つ)。そのフィラメントは、200MPaよりも大きいヤング率を持つことが好ましく、更に弁は、完全展開状態(即ち、フィラメントが形状記憶の形をとった状態)で40mN以下の半径方向を有することが好ましい。より好ましくは、弁は完全展開状態で20mN以下の半径方向力を有し、更により好ましくは、弁は展開状態で約10mN(ここで使用される“約”は±20%を意味するものとして定義する)。弁がフィルタとブレイド・フィラメントを備える場合(図3A及び3Bを参照して以下に説明する)、ブレイド部品は完全展開状態で半径方向力が20mN以下になることが好ましく、更に好ましくは10mN以下の半径方向力、更に好ましくは約5mNの半径方向力を有する。これは、例えばAN‐‐GIOGUARD(Cordis社の登録商標)等の従来の塞栓捕獲装置や従来ニチロールステント、完全展開状態で通常40mN〜100mNの半径方向力を有するステント移植と比較したものである。
【0041】
本発明の1つの特徴によれば、弁は、急激に変化する流動方向によって塞栓剤の高い捕捉効率を達成するためにかなり早く開閉する。一実施形態において、弁は、0.067秒での血液の粘性(即ち、約3.2cP)の粘性とほぼ等しい粘性を持つ静的流体(例えば、グリセリン)の中で、完全閉止(非展開)状態から全開状態へと移動する。ここでは、静的流体中において、その全閉位置から全開位置へと移動するのにかかる時間を「時定数」と呼ぶ。本発明の別の特徴によれば、弁は、血液の粘性を持つ流体中の弁の時定数が0.01秒〜1.00秒の間にあるように配置構成される。より好ましくは、弁は、血液粘性を持つ流体中の弁の時定数は0.05〜0.50秒であるように配置構成される。弁の時定数自体は、上述したパラメータ(例えば、フィラメントの数、フィラメントの弾性係数、フィラメント径など)の1つ、又はそれ以上を変えることにより調節可能である。
【0042】
当業者には自明であろうが、ブレイド形状や材料特性は、弁の半径方向力と時定数に密接な関係がある。発明の1つの特徴によれば、弁は、異なる直径や流動条件からなる様々な動脈に対し有効であるため、それぞれの実施例において他とは異なる最適化を有することができる。ほんの一例をあげれば、一実施形態では弁は10本のフィラメントを有し、別実施形態では弁は40本のフィラメントを有する。フィラメント径については、他の直径でも利用可能であるが0.127mm〜0.025mmの範囲から選択されることが好ましい。ピッチ角(即ち、全開位置‐形状記憶位置でのフィラメントによってなされる交差角)に関しても、他のピッチ角を使っても良いが、100°〜150°の範囲から選ばれることが好ましい。フィラメントのヤング率については、少なくとも100MPaはあることが好ましく、少なくとも200MPaあるようにすると更に好ましい状態になる。
【0043】
発明の別の特徴によれば、弁は、血液が弁を通過する際に血流中の塞栓剤を捕捉(ろ過)できるほど十分に小さい細孔サイズを有するように選択される。大きな塞栓剤(例えば500μm)が使われる場合、(仮に、フィルタに例えば500μm以下の細孔があるという条件で)弁のフィラメントを、塞栓剤が弁を通り抜けるのを防ぐフィルタとして直接作用させることができる。或いは又、フィルタをフィラメント構造に付加するようにしても良い。そのような分離型フィルタは、より小さな塞栓剤が使用される場合において特に有効である。
【0044】
図3Aは、カテーテル201の遠位端でのブレイド弁203であって、ブレイド構造203にフィルタ301を付加させた弁を示す。フィルタは、吹き付け法、紡績法、電気紡績法、接着剤を使った接合、熱融合、機械的なブレイド捕捉、溶融接合、ボンディング、その他の所望の方法によってブレイド上に設置することができる。フィルタは、ePTFEのような細孔材料か、レーザー穿孔付きポリウレタンのように細孔を付加させた固体物質のいずれか、或いは、ブレイド上に敷設された極薄フィラメントのウェブであっても良い。フィルタ301が薄フィラメントのウェブである場合、フィルタの特徴たる細孔サイズ径は、フィルタを通して異なる直径のビーズを通すことを企図し、その径のビーズが大量フィルタを通過できることを見据えて決定するようにしても良い。極薄フィラメントは、静電界を使うか或いは静電界を使用せずに、或いはその双方の状態を利用し、米国特許第4,738,740号に従って回転マンドレル上に紡ぐことができる。このようにして形成されたフィルタは、接着剤を使ってブレイド構造に接着しても良く、ブレイドをマンドレル上にセットした状態で、マンドレル上でフィルタを紡ぐか、マンドレルの下でフィルタを紡ぐか、或いはブレイドの上下でそれを捉えるようにフィルタを紡具用にしても良い。フィルタにある幾つかの細孔は、溶射又は電気紡績と、細孔がレーザー穿孔されるか第2の行程によって形成されるような第2のステップから形成されるようにしても良い。好ましい実施形態では、ブレイド上でのフィルタ形成のために、静電沈着又は紡績されることが可能な材料がそれ自身に接合可能な好適材料と共に使用される。フィルタは、ポリウレタン、ペレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、フッ素化ポリマー、アクリルポリマー、アクリレート、ポリカーボネート、その他の適切材料から作っても良い。ポリマーは湿潤状態でブレイド上で紡がれるため、ポリマーが溶剤によって溶けることが好ましい。好ましい実施形態では、フィルタは、ジメチルアセトアミドで可溶なるポリウレタンから形成される。ポリマー材料は、静電紡績工程の場合、好ましくは5〜10%の固体濃度、湿式紡績工程の場合、好ましくは15〜25%の固体濃度の液体状態でブレイド上で紡がれる。図3Bは、外カテーテル202が手前(矢印方向)に引き込まれ、ブレイド203及びフィルタ311が拡張された状態の弁拡張状態を示している。
【0045】
本発明の1つの特徴によれば、フィルタ301の特徴的な細孔サイズは10μm〜500μmの間である。より好ましくは、フィルタ301の特徴的な細孔サイズは15μm〜100μmの間である。更に好ましくは、フィルタ301の特徴的な細孔サイズは40μm以下であり、更に好ましくは20μm〜40μmの間になる。最も望ましいものとしてフィルタ301には、塞栓剤の通過を阻止する一方で、血液と造影剤の通過を可能にするようなサイズの特徴的細孔が設けられる。逆流する血液及び造影剤を、弁の遠位側から弁の近位端に向かう方向でフィルタを通り抜けさせることで、造影剤を標的部位が完全に塞栓された状態を示すものとして使用しても良く、更に塞栓処置の臨床エンドポイントを特定させることに役立たせることができる。したがって、発明の1つの特徴によれば、弁は、臨床のエンドポイントの指標としての造影剤の逆流を可能にしつつ、同時に塞栓剤の逆流を防いでいる。血液がフィルタ材を通って後方に流れるのを可能にすることで、比較的遅い速度でさえも弁の遠位側の背圧を緩和できる。しかしながら、フィルタは、必ずしも血液又は造影剤を「逆流」方向に通過させる必要はないことを理解されたい。
【0046】
本発明の方法の1つの特徴によれば、弁は血管内展開が可能である。弁は、カテーテルの遠位端に結合されることが好ましい。カテーテルの遠位端が処置のための正規位置にある場合に弁は展開する。好ましくは、弁が展開された状態で、塞栓剤はカテーテルをと被って血管内遠くに送達される。塞栓剤の送達は、結果として遠位方向への血流の速度低下又は停止を招き、弁が、カテーテルの外径よりも小さいかそれに等しい初期の直径(即ち、収納又は非展開状態)から、好ましくはカテーテル外径の少なくとも2倍、より典型的には4〜10倍の最終直径(開放状態)へと拡張することで終わる傾向がある。その開放状態において、弁は、近位方向に弁を通って(カテーテル壁と血管壁の間で)移動する塞栓剤を阻止する。発明の1つの特徴によれば、塞栓処置が終了した後は、弁はその閉止位置へと退縮可能であることが好ましい。
【0047】
注目すべきは、弁が局部的流動条件に基づいて開閉する動的要素であることである。通常の流動条件では、流動圧は弱いバイアス力に対し十分打ち勝つものであるため、弁を血管壁と接触しないような閉じ位置に付勢する。静的または逆方向の流れでは、弁フィラメントのバイアス力は、弁を、好ましくは血管壁と十分接触するような開放位置に至らしめ、これにより、好ましくは血液と造影剤の逆流を許しつつ塞栓剤の逆流に対しては制限を加える。弁を介して血液と造影剤を逆流させることは必ずしも必要ではない。とはいえ、血液の逆流は弁の遠位側での背圧を防ぎ、造影剤の逆流は血流の視覚化にも役立つ。
【0048】
本発明の1つの特徴によれば、弁の展開はカテーテルの近位端から制御される。実施形態によっては、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端へと延びる1本の制御ワイヤ、或いは2本以上からなる制御ワイヤのセットが手術者によって使用、制御され、弁を展開したり、随意的に退縮させたりするかもしれない。また実施形態によっては、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端へと延びる制御スレッドを使って、弁を覆う織物を解き弁を展開する。実施形態によっては、弁を結合したカテーテルの長さ方向に延びる外スリーブによって弁を覆い、拡張時はこのスリーブを後方に引くことで弁を拡張させる。また実施形態によっては、制御要素に結合されカテーテルの長さ方向に延びる外スリーブによって弁を覆い、拡張時は制御要素を使ってこのスリーブを後方に引くことで弁を拡張させる。また実施形態によっては、弁がガイドワイヤに結合され、カテーテルガイドワイヤを除去することで、弁の展開を開始させる。制御ワイヤ、スレッド、スリーブなどは、例えば60cm〜240cmの範囲の標準的長さからなるものかもしれない。
【0049】
先にも説明したように、様々な方法で弁を展開することができる。図2で記述したように、弁を覆う外カテーテル又はスリーブを移動させることにより弁を展開することができる。その実施形態では、弁は、カテーテルかスリーブを遠位方向に移動させるか、或いは送達カテーテルと弁を近位方向に移動することにより元の状態に戻ることができる。別の実施形態としては、図4A〜4Cに示すように、弁は、弁203(フィルタ301で示される)を覆う網スリーブ(ウエルト編物)402を不可逆的に除去することにより(解くことにより)解放される。より詳しく言えば、図4Aに示すように、弁203はカテーテル201の遠位端へ取り付けられる。弁の頂部に設けられるのがウエルト編物スリーブ402である。制御スレッド401はこのウエルト編物に結合され、カテーテルの近位端へと延びる。一実施形態として、解くことかできない編物は薄さ10μm〜60μmのポリエステルから構成される。この編物は張力のもとで保持される繊維鞘であっても良い。図4Bは制御スレッド401を引っ張ることによる弁の展開を示している。一実施形態において、スレッド401は編物スリーブ402の遠位端に接続され、スリーブ402の遠位端から最初に材料を取り除くことにより弁を解放する。制御スレッド401を後方に引き、スリーブサイズを減らすと、フィルタ301がある弁203の遠位端は自由に開くことができる。弁の径又は長さについての医師が調整できるようにウエルト編物スリーブ402を部分的に或いは、完全に取り外しても良い。図4Cでは、ウエルト編物が更に完全に取り外され、弁203とフィルタ301の大部分を自由な状態にしている。別実施形態では、スレッドはスリーブの中間か近位端に取り付けられ、初めにスリーブの中間又は近位端から材料を取り除くことで弁を解放している。
【0050】
図5A及び5Bに示すように、別実施形態としては、ガイドワイヤ501を使って弁503を展開しても良い。更に詳しく言えば、弁503にはループ502が設けられ、それらは弁503のフィラメントの遠位端又はその近傍に取り付けられる。ループ502はフィラメントと一体化されても良いし、或いは別個の材料で作りフィラメントに取り付けるようにしても良い。図5Aに示すように、ループ502は、カテーテル201のルーメンを通って延びるガイドワイヤ501の遠位端で輪を作る。弁端部におけるループ502は、カテーテル201とガイドワイヤ501が血管を介して進行している間に、ガイドワイヤ501周りで輪を成す。このようにして、弁の遠位端は閉じ位置で維持される。図5Bの矢印で示したように、ガイドワイヤ501が近位方向へ引くことで遠位のループ502は解放され、弁503が展開される。
【0051】
本発明の1つの特徴によれば、本発明の如何なる実施形態の弁も、幾つかある内の任意の方法によりカテーテルの遠位端へ取り付けられる。図6Aで示すように、弁203は、弁203の近位端に重なりかつカテーテル201上の弁203の近位端から近位方向へと延びるスリーブ601によって、カテーテル201に取り付けられる。図6Bは、カテーテル201、弁203及びスリーブ601の断面図である。スリーブ601は、カテーテル201に対して接着されるか、或いは熱収縮工程又は他の機械的工程により機械的に保持され、カテーテル201とスリーブ601の間において弁の遠位端を捕捉することでカテーテル201上で弁203の遠位端をこのように保持する。
【0052】
1つの好適実施形態では、弁はカテーテルへ溶融接合される。より詳しく言えば、図6Cから分かるように、弁とカテーテルが溶融される領域602では、最大限でもカテーテル201の内、外径に微小の変化しか生じないようにして、カテーテル201に弁203が溶融される。図6Dは、カテーテル201、弁203及び溶融域602が全て同一径となった溶融弁の断面図である。カテーテルと弁の融合は、弁を熱的に溶かすか、カテーテルを溶かすか、弁・カテーテルの双方を溶かすか或いは化学的な工程により達成することができる。
【0053】
図7A、7Bを参照するに、ここには単一のフィラメントコイルからなる弁702が示されている。そのコイルは、金属又はポリマーから作ることができ、フィラメントは形状記憶ポリマーであることが好ましい。図7Aはカテーテル201上で退縮状態にあるコイル弁701を示している。コイル弁の遠位端にはフィルタ702が設けられる。図7Bは展開状態のコイル弁を示し、この場合、弁701とフィルタ702は遠位端で拡張する。弁を展開するにあたっては、かつて開示されたことのある種々な方法のいずれも使用することができる。
【0054】
図8A〜8Eを参照するに、ここには展開装置800の別の実施形態が示されている。展開装置800は送達カテーテル801、弁803、展開要素810及び弁イントロデューサ812を備えている。以下の説明で明らかとなるが、先に述べた特定実施形態とは異なり、ここでは弁を展開するにあたって送達カテーテルを外カテーテルや外スリーブに対し進行させる必要がない。
【0055】
送達カテーテル801は1mm(3フレンチ)・マイクロカテーテル、或いは1.33mm(4フレンチ)又は1.67mm(5フレンチ)・マイクロカテーテルであることが好ましい。送達カテーテル801は単層又は2層或いはそれ以上の層から構成される。一実施形態では、送達カテーテル801は、例えばFEPやPTFEからなる内ライナ、金属、ポリマー、液晶ポリマーの内の1つ又はそれ以上からなる中央ブレイド、そしてPEBAX(登録商標)等のポリエーテル・ブロック・アミド熱可塑性弾性樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、或いはその他の適当なポリマーからなる外ポリマーカバーを備えている。
【0056】
送達カテーテル801の遠位端805には、弁座814と、その弁座814に近い位置か離れた位置、或いはその周囲に配置されるX線不透過性の標識帯816とが設けられる。弁座814は、送達カテーテル801の遠位端805に位置する円周溝によって形成されることが好ましい。弁座814は、送達カテーテル上に直接形成されるものでも良く、或いは送達カテーテルか送達カテーテルの遠位端805に接着又は融合されるものでも良い。弁座814を送達カテーテル801上に直接形成するようにして送達カテーテル自体を多層構成物から作る場合、弁座814は、単層や2層を通る形で構成したり、或いは2つの層を通り、更に第3の外層の深さの一部を通る形で構成しても良い。
【0057】
弁803は通常、上記実施形態のいずれかに記載されたものである。弁803は、ポリマー面でコーティングされたポリマーブレイドでも、ポリマー面でコーティングされたポ金属ブレイドでも、或いはポリマー面でコーティングされたポリマー・金属ブレイドの組合せからなるものでも良い。ポリマー面は、シートや穿孔付きシート、或いはメッシュであっても良い。弁は血液に対して透過性のものでも良いし、或いは不透過性であっても良い。その構成にかかわらず、弁は、局部血液流動条件に応じて開閉する動的要素である。弁803の近位部分は、以下に詳しく説明するように、弁が送達カテーテルを通って進行した際に、送達カテーテル801の遠位端805に設けられた弁座812と係合する嵌合構造818を備える。
【0058】
嵌合構造818は、カテーテルの本体を通る進行のため圧縮可能であるが自動的に拡張して弁座814に着座するように形状記憶ポリマーか弾性ポリマーを備えるものでも良い。図8C及び8Dを参照するに、嵌合構造818が弁座814に着座した際には、そのような係合により送達カテーテル801に対し弁803がロックされ、送達カテーテルに対しての弁の更なる遠位方向への移動を阻止し、かつ弁が処置している間、送達カテーテルの遠位端から抜け出てしまうのを防止する。嵌合構造818は、夫々が別れて弁座に着座するような、複数の独立した特徴物(例えば、4つの特徴物)から構成されるものでも良い。更に、特徴物の形状は、弁803が送達カテーテルを介して進行する際と弁座814に係合した後の双方で、送達カテーテル801内での低い形状を保持するために、例えば特徴物の中心を通る半径方向“高さ”寸法818hが0.25mmを超えないくらい、小さくなければならない。一例をあげれば、弁803の嵌合構造は、弁803に接着、融合、クリンプ加工、さもなければ取り付けられるものであって、かつ弁座814に受容可能な複数のX線不透過性金属スラグ818a〜dを備えている。弁座814は更に、X線不透過性の指標を備えるようにしても良い。このようにすれば、弁座と弁の整列状態を蛍光透視法のもとで視覚化することができる。スラグ818a〜dは、ひとたびスラグが弁座に受容されたならば、弁803の進行や後退を防止するように形成される近、遠位面819a、819aを有する。即ち、各面819a、819bは、送達カテーテルの長手軸線に垂直な平面内で延びるものかもしれない。弁803の近位部分は、弁を通る内径803を決めるように送達カテーテル801の内壁801aによって拘束されることが好ましい。
【0059】
展開要素810は、通常は構造において従来のガイドワイヤと同様であることが好ましいプッシュワイヤである。プッシュワイヤの遠位端810aの外径は、弁803の近位端の内径より大きい。その結果、プッシュワイヤ810を使って弁803の近位部分803aに押圧力を与え、かつ送達カテーテル801によって弁を進行させることができる。即ち、プッシュワイヤ810の遠位端810aと弁の近位部分803aは、プッシュワイヤ810が弁803を通って自由に延びないような相対サイズを有する。近位部分803aが内壁801aによって抑制される際、プッシュワイヤ810は、その遠位端の直径を増加させて弁への押圧力付与を容易にするためのポリマービーズが金属ビーズを備えても良い。これに加えるか、その代わりとして、弁への押圧力付与を助けるために円筒又は管状要素をプッシュワイヤの遠位端に融合又は接着するようにしても良い。又、これに加えるかその代わりとして、1つ以上の金属又はポリマーコイルをプッシュワイヤの遠位端に設け、その外径を増やすようにしても良い。プッシュワイヤの遠位端に付加された如何なる特徴物もプッシュワイヤの追従性を維持しなければならない。プッシュワイヤ810はX線不透過性材料から作られるか、或いはその長さに沿って白金等により1つ又はそれ以上のX線不透過指標を含むことが好ましい。
【0060】
弁イントロデューサ812は例えば、PTFEから作られるポリマー管である。イントロデューサ812の長さは1cm〜50cmであることが好ましく、更にその操作を容易にするためにその近位端(図示せず)にハンドルをオプションとして設けるようにしても良い。図8Eに示すように、弁803と、好ましくはプッシュワイヤの少なくとも一部分は、弁803の遠位端を折り畳んだ状態に保持しつつ、イントロデューサ812内に保持される。イントロデューサ812は、弁803を折り畳んだ状態に保持することによって、弁を送達カテーテル801を通る進行に適したサイズにする。イントロデューサ812は折り畳まれた弁803とプッシュワイヤ810を含むのに十分大きな内径を有する。イントロデューサ812は、送達カテーテルの近位端にある注入ポート807の内径より小さな外径を有することで、イントロデューサを注入ポート内へ進行させることができる。一実施形態において、その内径は0.89mm、外径は0.96mmである。
【0061】
図8C及び8Dを参照するに、装置800の使用により、標準ガイドワイヤ(図示せず)が患者の血管を通って所望の治療位置へと前方に進められる。送達カテーテル801は標準ガイドワイヤ上で所望位置へと進められる。ひとたび送達カテーテル801が所望位置に至ったならば、標準ガイドワイヤは送達カテーテル及び患者から取り除かれる。次いで弁イントロデューサ812が送達カテーテル801の注入ポートに挿入される。弁イントロデューサ812の長さによっては、それは単に送達カテーテルの近位端において弁を挿入するためのガイドとして機能するか、或いは送達カテーテルの実質上長さに沿ったガイドとして機能しても良い。その後、プッシュワイヤ810はイントロデューサ812に対し遠位の方向に進行して、送達カテーテル801内にある弁803(非展開状態)を弁座814に向けて押し込む。弁803が弁座814に接近すると、嵌合構造818は自動的に拡張して弁座814に係合し、弁803を送達カテーテル801の遠位端805に対してロックする。ロックされた状態では、弁は送達カテーテルの遠位端で展開される。その後、プッシュワイヤ810は送達カテーテル801から回収される。
【0062】
その後、塞栓剤が送達カテーテル801及び弁803を通って注入される。弁803は上述したように機能する。即ち、塞栓剤が注入される際には弁803は前方流れを可能にする一方、送達カテーテルが挿入される血管中において塞栓剤が反対方向に流れる(逆流する)のを防止する。塞栓剤を注入している間、チューブ構造体内チューブ(即ち、外スリーブを備えた送達カテーテル)を使用しないことの結果として、様々な上記実施形態で説明したように、より大きな送達カテーテルを使って、処置部位に塞栓剤の大きな流れを供給することができる。注入終了後は送達カテーテル801は、その遠位端805における弁803と共に患者から回収される。
【0063】
弁と弁座の間の積極的な係合が望まれるが、それは必ずしも必要ではないことを理解されたい。即ち、カテーテルの遠位端に対して弁を整列させることが、例えば各々にX線不透過標識を使用することによって蛍光透視法で視覚化することができるならば、弁は、手動でカテーテルに対して適当な位置に保持することが可能となる。
【0064】
展開装置800に類似する別実施形態は、弁に取り付けられた細いワイヤから構成される展開要素を備えている。ワイヤの直径としては0.025mm〜0.125mmが好ましく、標準ワイヤ又は平坦ワイヤであっても良い。カテーテルのルーメンからの何らかの妨害を制限する上で、平坦ワイヤはカテーテルの内面により接近した状態で対応するかもしれない。使用時、細いワイヤは弁座へと弁を進め、次いで塞栓剤の注入中はカテーテルの中で弁に取り付けられた状態となる。
【0065】
図9A〜9Dに、展開装置900の別実施形態が示される。展開装置900は実質上、装置800に類似しており、送達カテーテル901、弁903、プッシュワイヤ910及び弁イントロデューサ(イントロデューサ812について説明したようなもの)を備える。装置900と先に記述した装置800との間の差異は、弁座に対し弁をロックするため弁に設けられた嵌合構造918にある。図9A及び9Bにおいて、嵌合構造918は近位のリング状フランジであり、それはプッシュワイヤ910によって押し込まれた際には、径方向に圧縮されるか、或いは送達カテーテルを介した進行を可能にするサイズに変形される。図9C及び9Dに示されたように、ひとたびプッシュワイヤ910によって弁903を送達カテーテル901の遠位端905に送達したならば、フランジ918は弁座に置かれた時点で弁座914の中へと拡張し、弁903を弁座914に対してロックする。リング状フランジ918は、弁のブレイドか、或いは弁の残りの部分よりはるかに高い拡張力を持つ弁の金属ブレイド部分や金属ステント部分に結合された弾性要素によって形成されるかもしれない。
【0066】
図10A〜12Bは、弁・弁座間のロック係合のために弁の上で使用可能なフランジ嵌合構造の追加実施形態を示している。図10A及び10Bは、断面L字状又はJ字状の近位端を有して弁座1014内に係合するフランジ1018を示している。図11A及び11Bは、フランジが近位テーパー(即ち、小さな近位直径と比較的大きい遠位直径)を有するように、突き合わせ前面1118aと後方斜面1118b(断面において、「返し」のように見える)を有するフランジ1118を示している。この構造は、送達カテーテル1101からの弁1103の除去するにあたって、弁座1014からフランジ1118を近位方向に解放するのを容易にするものであり、更に以下に説明するが、弁退縮要素が設けられた装置の実施形態に関連して特に適切なものである。図12A及び12Bは、O−リングで構成されたフランジ1218を示し、ここでは弁座1214はO−リングを捕えるため円形溝の形態をとる。図13A及び13Bは、送達カテーテル1301の遠位端の弁座1314とそれに対応する弁1303の嵌合構造1318の別実施形態を示している。弁座1314及び嵌合構造1318は、長手方向に位置を変えて弁1303・弁座1314間の係合を高めるための複数の構造物により“キー溝”が付けられるが、構造物が互いに対し適切な長手方向整列状態になるまではロック係合を防止している。図示した例のように、弁座は長手方向に位置を変えた複数のチャンネル1314a、1314bを備え、遠位チャンネル1314aは近位チャンネル1314bよりも大きな幅寸法を有しても良い。嵌合構造1318は、遠位のチャンネル1314aに受容されるサイズではあるが、近位チャンネル1314bに対しては大きすぎて受容できない遠位フランジ1318aを備えている。嵌合構造は又、近位チャンネル1314bに受容されかつ捕えられるような適切サイズの近位フランジ1318bを備えている。近位、遠位の各フランジ1318a、1318bが近位、遠位の各チャンネル1314a、1314bと位置があった時には、フランジは夫々のチャンネルへ拡張し、送達カテーテル1301の遠位端に対して弁1303をロック係合する。上述された実施形態のいずれにおいても、フランジは周方向に途切れることのない要素を備えたり、或いは弁の近位部分周りで半径方向に変位された個別の要素から構成されるようにしても良い。更に、弁座は所謂“ネガティブ”なスペースとして示され、嵌合構造はそのようなスペースに拡張する1つ又はそれ以上の要素として示されているが、例えば弁座が送達カテーテルのルーメンへ拡張する要素を有し、嵌合構造が弁の近位端の周り設けられた溝や他の“ネガティブ”スペースになるといったように、弁座と嵌合構造の構造を互いに逆転させることも可能なことがわかる。但し、そのような逆転形態は、送達カテーテルの遠位端で注入経路の直径を減少させるため、それほど好ましいものとはいえない。
【0067】
図14A及び14Bには別実施形態としての展開装置1400が示される。展開装置1400は装置800と同様の要素を備えており、送達カテーテル1401、弁1403、プッシュワイヤ1410及び弁イントロデューサ(イントロデューサ812について説明したようなもの)を備える。加えて、装置1400は、弁1403の近位部分、更に好ましくは嵌合構造1418に取り付けられる退縮要素1420を備え、弁に解放かつ退縮力を付与することで弁を弁座から解放し、送達カテーテルを介して弁を回収するようになっている。
【0068】
退縮要素1420は嵌合構造1418に付けられたプルワイヤである。プルワイヤ1420は平坦なものでも良く、或いは塞栓剤の送達するための送達カテーテルのルーメン内部の利用可能部分を最大限にするため、送達カテーテル1401の内面1401aに近似して合致するように形成したものでも良い。送達カテーテルから弁1403を解放して回収するために、プルワイヤ1420は張力において十分な機械的強度を持たなければならない。とはいえ、プッシュワイヤ1410がプルワイヤ1420に平行を延び、送達カテーテルの遠位端へ弁を進行させる機能を果たすため、高い圧縮剛性を持つ必要はないことが理解される。
【0069】
本装置の使用については装置800と同様である。弁1403、プッシュワイヤ1410及びプルワイヤ1420は全て、送達カテーテルの注入ポート内へ各要素の導入を容易にするイントロデューサ(図示せず)に包囲される。プッシュワイヤ1410は、弁1403とプルワイヤ1420をイントロデューサの外に出して送達カテーテル1401の遠位端へと進行させる。ひとたび弁1403が弁座1414と係合したならば、プッシュワイヤ1410は送達カテーテル1401から回収される。その後、塞栓剤が送達カテーテル1401を介して注入され、患者を治療する。塞栓剤の注入後は、十分な張力をプルワイヤ1420に付与して弁1403を弁座1414から解放し、それを送達カテーテル1401内に退縮させることで、弁1403を送達カテーテル1401内へ回収することができる。次いで、送達カテーテルは患者から取り除かれる。任意ではあるが、患者から送達カテーテルを取り除く前に、プルワイヤ1420を用いて送達カテーテル1401から完全に弁1403を回収するようにしても良い。
【0070】
単一のプルワイヤに加えて、退縮要素もまた、塞栓剤注入後に送達カテーテルから弁を回収するために同様に使用可能な他の形態をとるようにしても良い。例えば、図15A及び15Bでは、退縮要素は、図示された1組のプルワイヤ1520a、1520bのように、複数のプルワイヤを備えている。更に図16A及び16Bに示すように、退縮要素は、多数の金属線やポリマーフィラメントからなる管状の退縮ブレイド1620を有しても良い。ブレイド1620はステンレス鋼、Elgilоy(登録商標)、ニチロール、その他の弾性材料から作られるかもしれない。管状のブレイド1620は、送達カテーテルのルーメンの直径に等しいか、或いはそれより大きい所定の直径を有するかもしれない。このようにして、退縮ブレイドを、送達カテーテル1601のルーメン径より小さな直径にするべくプッシュワイヤ1610の押圧力に対してピンと張った状態に保持することができる。ひとたびプッシュワイヤ1610が弁座1614へと弁1603を進行させたならば、張力がブレイド1620から解放され、送達カテーテル1601の内壁1601aに対してブレイドを外側に保持することが可能になる。更には、図17A及び17Bに示すように退縮ブレイド1720をポリマーコーティング1722で被覆するようにしても良い。ポリマーコーティング1722は、退縮要素がカテーテル本体を形成するように、例えばポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、PTFE又はFEPの内の1つ又はそれ以上を含むかもしれない。尚、プッシュワイヤとは別個の退縮要素を採用する実施形態では、分離したプッシュワイヤ1710が送達カテーテルを介して弁と退縮要素の双方の前進を行なうため、退縮要素は低い圧縮強度で設計できることに留意されたい。
【0071】
更に別の選択肢として、弁座へ弁を進行させかつ処置の終わりに弁座から弁を退縮させるのに十分な圧縮・引張強度を有するような単一の要素で、プッシュワイヤと退縮要素を構成しても良い。そのような単一の要素は、塞栓剤の十分な注入を可能にするべく送達カテーテルのルーメン内部に利用可能部分を確保するデザインでなければならない。
【0072】
図18Aにより別の展開装置1800が示される。展開装置1800は、送達カテーテル1801、弁1803、プッシュワイヤ1810、ポリマーコーティングが施されたブレイド1820の形態なる退縮要素、及び弁イントロデューサ(イントロデューサ812について説明したようなもの)を備える。弁座1814は送達カテーテル1801の遠位端に形成される。弁座1814の嵌合構造1818は、送達カテーテルを介した進行のために圧縮される。図18Bに示されるように、ひとたび嵌合構造1818が送達カテーテル1801の遠位端1805を通過したならば、嵌合構造は拡張して弁座1814と接触する。退縮要素1820は弁1803上で張力を維持し、弁座1814に対して弁1803を保持する。
【0073】
本発明の別実施形態では展開要素を必要としない。流体圧を使うことで弁はカテーテルを通って弁座へと前進する。図8〜17に関連して上述した弁設計のどれも、例えばイントロデューサを使ってカテーテル内に設けられる。その後、注入ポートを介して多量の生理食塩水やヘパリン処理された生理食塩水が、弁の後方からカテーテルに注入され、弁を遠位端に向けて押す。ここでは参照によって援用される米国特許第6,306,074号が、放射性治療種のような治療要素をカテーテルを介して送達部位に進めるための流体圧使用について記述している。弁を進行させるにあたっては、弁とカテーテル内面との間の摩擦力や血圧と重力との間の摩擦力を考慮に入れ、流体圧を同様に付与しても良い。弁がカテーテル内部にある場合、カテーテル内部に、多量の溶液が作用する適切な障壁を提供するためにカテーテル自体は十分に半径方向に折り畳まれることが認識される。
【0074】
別実施形態としての送達装置1900が図19に示される。送達装置1900は、近位端(図示せず)と遠位端1903を有する外カテーテル1901、外カテーテルを通って拡張可能な内カテーテル1904、及び外カテーテル1901の遠位端1903に位置する弁1905を備えている。弁1905は、近位で拡張可能なフレームワーク1906、フレームワーク1906の近位端に結合された1つ以上の制御部材1908(或いは図20の1908a、1908b)、フレームワーク1906の遠位端にある中央カラー1910、及びカラー1910から遠くに延びる1つ以上の弁フラップ1912を備えている。フレームワーク1906とカラー1910は拡張可能な構造から作られることが好ましい。フレームワーク1906及びカラー1910の両方は、自己展開式のように形状記憶や他のバネのような拡張可能な特性を持つ材料から形成されるか、或いは形状記憶やバネの特性を持たない材料から構成されるにしても、以下に更に説明するように例えばバルーンの拡張による力によって拡張可能な材料から形成されることが好ましい。フレームワーク1906及びカラー1910は、金属線やポリマーフィラメントからなるメッシュ、ワイヤや管状ステントの構造物、或いは他の適切な構造物であっても良い。フレームワーク1906及びカラー1910は一括して一体成形されるか、或いは夫々別々に形成され、その後結合されるものでも良い。カラー1910は十分に拡張できるものであり、部分的或いは完全に拡張した際には、動脈の内壁と接触するように適切に寸法決めされる。弁フラップ1912は、上述した弁構造に類似する形で構成されることが好ましい。例えば、弁フラップ1912は各々、フィラメント構造、又はポリマーコーティングで被覆された他のメッシュを有するかもしれない。弁フラップは、血液及び/又は造影剤の通過を可能にするように構築されるかもしれないし、或いはそのような流体を通さないかもしれない。弁フラップ1912は、同じサイズでアヒルの口ばしのような形の2枚のフラップ1912(図21A)でも、同じ寸法の3枚以上のフラップ1912’(図21B)でも、或いは異なるサイズのフラップ1912a”、1912b”(図21C)であっても良い。各実施形態において、フラップの遠位部分は、内カテーテル1904の通路として円形の開口部1913を共に規定するように形成されるかもしれない(破線で示す)。制御部材1908により、外・内カテーテル1901、1904に対して弁1905を収納形態と展開形態の間で進行・退縮させることができる。或いは、内カテーテル1904に弁1905を直接結合し、外カテーテル1901に対して内カテーテルを移動することで、弁1905を収納形態と展開形態の間で移動させるようにしても良い。第1の収納形態では、フレームワーク1906とカラー1910は、外カテーテル1901によって半径方向に制約を受け、フラップ1912は(弁を介した内カテーテル1904の挿入に先立ち)互いに対して閉じた状態に保持される(図21A〜21C)。図19に示す第2収納形態においては、フレームワーク1906、カラー1910及び弁1905は外カテーテル1901内部において半径方向に抑制されたままであり、内カテーテル1904は弁フラップ1912を通って延ばされる。第1の展開形態においては、制御部材1908を操作することで弁1905を外カテーテル1901の遠位端から外に出し、遠くへと進行させ、カラー1910は、弁フラップ1912の近位端が動脈壁1920に近接するまで自己展開が許容される(図22)。或いは、弁1905が内カテーテル1904に対して結合される場合、内カテーテルは制御部材として機能し、内カテーテルと外カテーテルは互いに対して移動され、弁を外カテーテルの遠位端から外へと進行させて同じ展開形態にする。第1の展開形態においては、弁1905は動脈通路を通る血液1922aの前方流れにより開弁を余儀なくされる。塞栓剤1924は、内カテーテル1904を経て注入され、血液の前方流れ1922aは動脈1920を伴う塞栓剤1924の進行を防止する。血液の流れが遅く静的又は逆行する流れ1922bと変化する際には、弁は、圧流条件によって第2の展開形態へと動的に変化し、この状態において弁フラップ1912の遠位端は内カテーテル1904に接する(図23)。これにより、如何なる塞栓剤も弁を超えた逆流が防止される。
【0075】
図24を参照するに、送達装置1900に実質上類似した、別実施形態としての送達装置2000には弁2005が設けられる。弁2005は、近位の拡張可能なフレームワーク2006、オプションとしてフレームワーク2006の近位端に結合された1つ又はそれ以上の制御部材2008a、2008b、フレームワーク2006の遠位端に位置する中央カラー2010及び管状弁スリーブ2012を備えている。スリーブ2012は、上述した如何なる弁に類似した形で、例えばポリマーコーティングが施されたフィラメント構造物を伴って構築されることが好ましいが、他の構造物からなるものでも良い。収納形態では、スリーブ2012は、内カテーテル2004をスリーブから延ばした状態で、送達装置200の外カテーテル2001と内カテーテル2004の間に位置する。内カテーテル2004に対し外カテーテルを据え付け、外カテーテルに対して内カテーテルを進行させることで、或いは制御部材2008a、2008bを操作してスリーブを外カテーテル2001と内カテーテル2004の双方に対して移動することで、スリーブ2012を、外カテーテル2001に対して進行させ、展開形態にさせるようにしても良い。弁2005のカラー2010が外カテーテルからどのように解放されるかに関係なく、ひとたび解放されたならばカラー2010は拡張して動脈壁2020と接触し、弁2012を展開させる。血液は弁と内カテーテルの間に流れるかもしれない(図25)。血液の流れ2012bが遅いか静的か、或いは逆流する場合に生じる第2の展開形態においては、弁スリーブ2012は内カテーテル2004に対して接することになる(図26)。
【0076】
図27に、別実施形態としての送達装置2100が示される。送達装置2100は、カテーテル2101に結合された弁2105を備えている。弁2105は、カラー2117によってそれらの近位端で結合された複数の支柱2116を備えている。適切なフィルター材2118が支柱2116間に延設される。送達装置2100は又、カテーテル2101に結合されたガード2126を備えており、弁2105が非展開形態にある場合に支柱2116の遠位端から動脈壁2120を保護するようになっている。送達装置2100はバルーン2124の形の制御部材を備えており、バルーンは拡張された際には支柱に半径方向力を付与し、支柱を十分に曲げてガード2126から弁を解放する。この結果、弁2105は展開した形態となる。バルーン2124は、内カテーテル2104の専用ルーメン、別個の拡張カテーテル、或いは他のいずれの適切なシステム(図30〜32に関して下記に説明するようなもの)を使用することで拡張しても良い。展開した形態では血液の前方流れが弁の外部で許される(図28)。しかしながら、静的な流れ(2122b)や遅い流れ、或いは逆流においては、弁2105は変化する流動条件に応じて迅速かつ動的に応答し、動脈壁2120に対して完全に開弁し、弁を通過する塞栓剤の流れを防止する(図29)。
【0077】
図30〜32に、別実施形態としての送達装置2200が示される。カテーテル2201は外制御部材バルーン2234を備えている。弁2205はバルーン2234上に設けられ、円周方向に変位された支柱2216を横切って伸びる濾過材2212を備えている。バルーンは支柱間で半径方向にセンタリングされて位置決めされる。バルーン2234はカテーテル2201のルーメン2228との連通する圧力弁2235を備えている。閉塞先端2242が設けられたガイドワイヤ2240は、カテーテル2201のルーメン2228を通って進行する。閉塞先端2242は圧力弁2235を過ぎて進行する(図31)。その後、生理食塩水等の注入液2234がカテーテルルーメン2228内に注入される。図32を参照するに、十分な流体と圧力が与えられて注入液は圧力弁2235内に入りバルーン2234を満たす。バルーン2234は充満されて高圧となり、その後封止状態となって低圧条件への漏出を防ぐ。バルーン2234は充満されて高圧状態であるため、弁2205と接してこれを展開形態へと移動させる。その後、ガイドワイヤ2240はカテーテル2201から回収されることになるかもしれない。その後、弁は、カテーテル2201を通る塞栓剤注入に関連して上述したように使用される。処置が終わった後は、カテーテル2201を後方へと引き、外カテーテル(図示せず)の中に入れるようにし、弁2205と外カテーテルの遠位端の間の接触が、圧力弁2235に打ち勝って、圧力弁を解放させ、バルーン2234を収縮させ、患者からの回収のため弁に非展開形態を再びとらせるようにしても良い。
【0078】
図33に、別実施形態としての送達装置2300が示される。装置は、外カテーテル2301、外カテーテルを通して延びる内カテーテル2304及び弁2305を備え、同弁は、内カテーテル2304に結合されるか、又は独立した制御部材2308によって作動される拡張可能なワイヤ・フレームワーク2306と、フレームワークに結合された拡張可能なカラー2310と、カラーから延びるテーパー付き第1のスリーブ部分2311と、第1のスリーブ部分から延びる第2スリーブ部分2312と、を有する。収納された形態(図示せず)では、内カテーテル2304、フレームワーク2306、制御部材2308、カラー2310及びスリーブ部分2311、2312は、外カテーテル2301内に保持され、動脈2320内部の関連部位に向かって進行する。展開された形態では、内カテーテル2304は、外カテーテル2301の遠位端から外へと進められ、制御部材2308は装置の近位端から操作され、フレームワーク2306、カラー2310及びスリーブ2311、2312を、内カテーテル2304の上で外カテーテル2301の外へ展開させる。カラー2310は、テーパーが付いた第1のスリーブ2311の近位端を拡張して動脈壁2320に隣接させる。前方への血流2322aがある間、血液は、吹き流しを通る空気と同様に、内カテーテル2304とスリーブ2311、2312の間を流れる。しかしながら、少なくとも第2のスリーブ2312は逆の血流状態2322bに応じて潰れるように構成されるため、塞栓剤はスリーブ2311、2312の外側に接触するがこの部分を通過することはできない。
【0079】
図34〜36には、別実施形態としての送達装置2400が示されている。その送達装置2400は、その遠位端に自己展開式の形状記憶ループ(又はカラー)2410を付けた制御部材2408を備えている。弁2412はループ2410から延設される。弁2412は開口した遠位端2413を備える。制御部材2408は操作され、動脈の処置部位へと進行した外カテーテル2401の遠位端2403へと弁2412を進める。図35を参照するに、制御部材2408はその後、操作されて外カテーテル2401の遠位端2403からループと弁を出し、ここでループは自動的に拡張し、弁2412の近位端を動脈壁2420に対向させるか、隣接するように位置させる、その後、図36に示すように、内カテーテル2404は、外カテーテル2401を介して進められ、更にフィルタ弁2412の開口した遠位端2413を通って十分進められる。塞栓剤2424が内カテーテル2404から注入される。血液は、内カテーテル2404とフィルタ弁2412の間を前方へと吹くことになるかもしれない。血流が逆行する間、ループ2410は、動脈壁2420に対しその直径を保持するが、フィルタ弁2412の遠位及び中心部分は、変化する血圧に応じ、内カテーテル2404に対して動的に潰れ、弁を過ぎた塞栓剤2424の逆流を防止する。
【0080】
図37に別の実施形態としての送達装置2500を示す。送達装置2500は、カテーテル2501、カテーテル2501周りでそのカテーテル又は第1制御部材2532に結合された第1カラー2530、第1カラー2530から変位されてカテーテル周りに位置しかつ第2制御部材2536に結合された第2カラー2534、第1、第2カラー2530、2534間に延びる複数の支柱2516、及び支柱2516の少なくとも一部分、好ましくは第2カラー2534上に延びる弁スリーブ2512を備える。図38を参照するに、操作にあって、第2制御部材2536がカテーテル2501及び/又は第1制御部材2532(即ち、第1カラー2530が結合されるどちらか)に対して退縮されると、支柱2516は外方へ撓むことを余儀なくされ、これにより弁スリーブ2512の近位端を動脈壁2520に対して移動させることになる。塞栓剤2524をカテーテル2512を介して注入しても良い。前方へと進行する血液2522aは弁スリーブ2512とカテーテル2501の間に流れるかもしれない。図39を参照するに、血液がその流動方向2522bを変えた場合、弁スリーブ2512にかかる圧力の迅速な変化により、弁スリーブは、カテーテル2501に対して潰れるその遠位端と共に動的に反応し、塞栓剤2524の逆流を防止する。送達装置2500は、第2制御部材2536に対して第1制御部材2532を近位へ移動させることで、支柱2516をストレート状にして折り畳み、これにより弁スリーブ2512の直径を縮小した状態で回収されるかもしれない(図40)。
【0081】
上述したどの実施形態でも、弁の後方に出口を持つルートを介して外カテーテルを制御可能に洗浄することは望ましいことかもしれないということを理解されたい。そのような出水には造影剤、生理食塩水などが含まれるかもしれない。図41を参照するに、一実施形態としての洗浄弁は、外カテーテル2601に1つ以上の開口スリット2640を備えている。サイドストッパ2642が、外、内カテーテル2601、2604の間の環状空間内に設けられる。或いは、ストッパ2642は、その内部に内カテーテルを設けない外カテーテル2601に対して設けられるかもしれない。サイドストッパ2642は制御部材2644の遠位端に結合される。閉じた状態で制御部材2644の近位端が操作され、サイドストッパ2642を開口スリット2640の閉塞位置に配し、この部分を介する流体通過を防止させる。洗浄可能にするためには、制御部材2644の近位端が操作され、サイドストッパ2642を開口スリット2640に対して近位か遠位(図示)のいずれかに配し、スリットを介して流体を洗い流す。図42には、外カテーテル2701にスリット弁2740を組み込んだ洗浄システムの別の実施形態が示されている。そのようなスリット弁2740は通常、閉じた状態にある。しかしながら、圧力下で洗浄を適用することにより、スリット弁2740は開かれ、洗浄水のカテーテルからの抜け出しが可能になる(図43)。
【0082】
図44に別実施形態としての弁展開装置2800を示す。装置2800は、長手方向に位置を変えた2つの置き換えられたマイクロカテーテル2801、2802と、それらの間に位置する動的な弁2805とを備えている。より詳しく言えば、最も近位側の第1マイクロカテーテル2801は、好ましくは0.69mmの内径、0.97mmの外径を有する“ハイフロー”型のマイクロカテーテルであり、その近位端2801aに近位のルアコネクタ2803又は他の適当なコネクタを備え、更に遠位端2801bを有している。遠位側の第2マイクロカテーテル2802は、好ましくは近位面2802cを持った近位端2802a、0.53mmの小内径、及び第1マイクロカテーテルと同じ0.97mmの外径を有している。弁2805は、好ましくは、その近位端2805bにおいて第1マイクロカテーテル2801の遠位端2801bに融合され、かつその遠位端2805bにおいて第2のマイクロカテーテル2802の近位端2802bに融合されるブレイドを備える。ブレイドは、非展開状態から展開状態へと半径方向に自己拡張するように自然にバイアスがかけられる。ここで、非展開状態の弁(以下に記述する)は第1、第2マイクロカテーテルの外径とほぼ等しい直径を持し、展開状態では直径は実質的にそれより大きくなる。ブレイドは、上述した幾つかの弁に関連して記述したポリマーコーティングが施された近位部分2805cを備える一方、ブレイドの遠位部分2805dにはコーティングが施されず、流体の通過を可能にする“開口した設計”となっている。
【0083】
更に装置2800は、好ましくは0.53mmの内径と0.64mmの外径を有する薄壁の管状細長部材2850を備える。管状部材2850は、長手方向の安定性のため、好ましくは軸方向に延びる外周ワイヤ2854又は上鞘2856を備えたワイヤコイル2852の形態であることが最も好ましい。コイル管状部材は、トオーイボースト・アダプタのようなルアコネクタ2803とロックするためのハブ2858を設けた近位端2850a、及び遠位端2850bを有する。コイル管状部材2850がルアコネクタ2803に挿入された際には、第1マイクロカテーテル2801及び弁2805を通り、その遠位端2850bが第2マイクロカテーテル2802の近位面2802cに当接する。コイル管状部材2850は、完全に第1マイクロカテーテル2801内へ進んだ状態で第2マイクロカテーテル2802の近位端2802aが第1マイクロカテーテル2802の遠位端2801bから十分な距離を以て隔てられ、以て弁に張力を付与して弁を伸長させ、その直径を血管内進行に適したかなり小さな非展開直径へと抑制するような、サイズとなっている。装置2800はこの形態において、製造時パッケージ及び/又は殺菌パッケージとして提供されるようにしても良い。
【0084】
図45を参照するに、標準的な0.356mmのガイドワイヤ2860が装置2800用として提供される。ガイドワイヤ2860は、ハブ2858とルアーコネクタ2803を通り、更に第1マイクロカテーテル2801、弁2805、第2マイクロカテーテル2802を通って挿入される。ガイドワイヤ2860は塞栓部位へと進められ、その後、装置2800がガイドワイヤ上をその部位に向かって進められる。
【0085】
図46はガイドワイヤ2860が回収された状態を示しており、コイル管状部材2850はルアーコネクタ2803から解放され、第1マイクロカテーテル2801から取り除かれ、弁2805の動脈壁(図示せず)への拡張を可能にしている。その後、塞栓剤2824が第1マイクロカテーテル2801を介して注入され、弁のコーティングされていない遠位部分2805dと第2マイクロカテーテル2802を介して流出する。重要なこととして、弁2805は、その遠位端において第2マイクロカテーテルに結合されるが、心収縮と心拡張中の血圧の変化から生じる流動条件に対して迅速に調整する動的な弁であるということである。即ち、心収縮による血液の前方流動時においては、コーティングを施した弁の近位部分2805cが潰れて弁の周りに血液が流れるのを可能にしつつ、心拡張によって生じる血液の遅い流れ又は静的流、或いは逆行して流れる際には、コーティングを施した弁の近位部分が脈壁に向かって開口し、どんな塞栓剤の通過をも防止するようになっている。
【0086】
図47を参照するに、処置後、マイクロカテーテル2801、2802と弁2805を有する装置を単純に動脈から回収しても良く、それは自動的に弁を折り畳むことになる。しかしながら、オプションとして、コイル管状部材2805を折り畳みの補助として再挿入しても良く、更にガイドワイヤ2860をオプションとして再挿入し、患者から逆方向のトラッキングを容易にしても良い。このような除去方法の如何にかかわらず、ブレイド角度はその折り畳みによりサイズが減少し、塞栓剤が通過するにはあまりにも小さすぎる開口部を形成するため、弁を折り畳んだ上で弁内に残留する如何なる塞栓剤2824も、元の状態に戻った弁内に捕捉されたままとなることが理解されよう。
【0087】
図48及び49に、実質的に展開装置2800に類似する、別実施形態としての弁展開装置2900を示す。装置2900は長手方向に位置を変えた2つの置き換えられたマイクロカテーテル2901、2902と、それらの間に位置する動的な弁2905とを備えている。より詳しく言えば、最も近位側の第1マイクロカテーテル2901は、好ましくは0.69mmの内径、0.97mmの外径を有する“ハイフロー”型のマイクロカテーテルであり、その近位端2901aにコネクタ2903を備えかつ遠位端2901bを有している。遠位側の第2マイクロカテーテル2902は、好ましくは近位面2902cを持った近位端2902a、0.53mmの小内径、及び第1マイクロカテーテルと同じ0.97mmの外径を有している。弁2905は、好ましくは、その近位端2905bにおいて第1マイクロカテーテル2901の遠位端2901bに融合され、かつその遠位端2905bにおいて第2のマイクロカテーテル2902の近位端2902bに融合されるブレイドを備える。ブレイドは、上述した幾つかの弁に関連して記述したポリマーコーティングが施された近位部分2905cを備える一方、ブレイドの遠位部分2905dにはコーティングが施されず、流体の通過を可能にする“開口した設計”となっている。
【0088】
装置2900は、更にガイドワイヤ2960のような細長部材を備える。ガイドワイヤ2960は、好ましくは0.45mmの直径を有し(他の寸法でもよい)、その近位端2960aに隣接するハブ2958と、その遠位端2960bに隣接する、好ましくはX線不透過性の指標帯2962とを備えている。指標帯2962は、第2マイクロカテーテルの内径より大きく、従って近位面2902cに当接するようになっている。実際の長さか“しるし”、或いは第1マイクロカテーテル2901の近位端2901a又は指標帯2962の遠位端からのガイドワイヤ間のストッパによって固定長が示されている。ガイドワイヤは、指標帯が第2マイクロカテーテルの近位面に突き当たる上記固定長を以て第1マイクロカテーテルに挿入され、結果としてこのことが弁を潰れた形状へと至らしめる。その後、ガイドワイヤを備えた装置は目標に向かって進められる。ひとたび目標に到達したならば、ガイドワイヤは装置から取り除かれる。
【0089】
図50を参照するに、装置の使用に関しては、図46に関連して上述した装置のそれと実質的に類似するものである。弁2905は動脈壁(図示せず)に向かって拡張する。その後、塞栓剤2924が第1マイクロカテーテル2901を介して注入され、弁のコーティングされていない遠位部分2905dと第2マイクロカテーテル2902を介して流出する。重要なこととして、弁2905は、その遠位端において第2マイクロカテーテルに結合されるものだが、心収縮と心拡張中の血圧の変化から生じる流動条件に対して迅速に調整する動的な弁であるということである。即ち、心収縮による血液の前方流動時においては、コーティングを施した弁の近位部分2905cが潰れて弁の周りに血液が流れるのを可能にしつつ、心拡張によって生じる血液の遅い流れ又は静的流、或いは逆行して流れる際には、コーティングを施した弁の近位部分が脈壁に向かって開口し、どんな塞栓剤の通過をも防止するようになっている。
【0090】
図51を参照するに、処置後、マイクロカテーテル2901、2902と弁2905を有する装置は、単にそれを動脈から退縮させることで回収でき、それは結果として弁を折り畳むことにもなる。しかしながら、オプションとして、ガイドワイヤ2960を再挿入することで弁2905を折り畳むようにしても良い。ブレイド角度はその折り畳みにより減少し、塞栓剤が通過するにはあまりにも小さすぎる開口部を形成するため、弁を折り畳んだ上で弁内に残留する如何なる塞栓剤2924も、元の状態に戻った弁内に捕捉されたままとなることが理解されよう。
【0091】
ここに記述したどの実施形態においても、弁の構成部品は展開と退縮の際の摩擦力を低めるためにコーティングを施すようにしても良い。構成部品は又、弁に沿って血栓形成を低めたり、治療学や生物学や塞栓症治療との互換性を持たせる上でコーティングを施すようにしても良い。構成部品は、退縮の際に塞栓剤が除去されるように塞栓剤との結合性を高めるようにコーティングを施すようにしても良い。
【0092】
本発明の1つの特徴によれば、蛍光透視法のもとでの容易な視覚化のためにカテーテル本体とメッシュに夫々別個の標識が付けられるかもしれない。カテーテル本体には、例えばカテーテル管組織にX線不透過性材料を混ぜ合わせるといったような当該技術に知られた如何なる手段を用いて標識を付けることができる。X線不透過性材料については、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、その他の材料であっても良い。その代わりとして、或いはこれに加えるようにして、X線不透過性リングを白金、白金イリジウム、金、タンタルなどから製造し、これをカテーテル上に配置するか圧着することも可能である。弁には、リングのようなX線不透過性要素を1本又は複数本のフィラメントに圧着することで標識化することも可能である。その代わりとして、或いはこれに加えるようにして、X線不透過性媒体をブレイドとフィルタの材料へ合成することが可能である。さもなければ、前述したように1本又はそれ以上のフィラメントを選び、これを白金イリジウムのようなX線不透過性材料で作るようにしても良い。
【0093】
ある実施形態では、弁は、シングルルーメン或いはマルチルーメンカテーテルかもしれないカテーテルに取り付けられる。好ましくは、カテーテルは塞栓剤を送達するため少なくとも1本のルーメンを使用する。しかしながら、他の実施形態としては、カテーテルに展開前の弁を格納するのに役立つルーメンか、或いはそれを介して弁を送達するためのルーメンを設けるようにしても良い。弁の展開を制御するために制御部材を使用するような場合、所望なら、1本又は複数本のルーメンに展開と退縮のための制御ワイヤを含ませるようにしても良い。或いはこの代わりに、制御部材を延設させるカテーテルに、その中を制御ワイヤが延びるような、長手方向に開口した溝を備えさせるようにしても良い。例えば塞栓剤を投与した後の動脈洗浄用として、或いは弁と共に使用する可能性のあるバルーンの制御用として、その様な目的の流体を投与するために追加のルーメンを使用しても良い。
【0094】
上記の装置及び方法は、主として、体内管に生体液(例えば血液)の近位・遠位流動を可能にすると共に、弁を通って近位方向に向かう輸液の逆流を防止するシステムに向けられてきた。遠位方向への血液の流れを減じるため弁も又、最適化され得ることを理解されたい。弁の半径方向の力はブレイド角を調節することにより調整することができる。半径方向の力を調整することで、血液の流れを50パーセント以上にまで減少するが可能である。一例としてあげるならば、130°より大きなブレイド角が、弁を過ぎて遠位方向に流れる血流を著しく縮小するとしたならば、約150°のブレイド角により血流の速度は50〜60パーセント遅くなる。その他のブレイド角は末端血流を多様に減少することが可能とある。減少された末端血流は、脳と脊髄の動静脈奇形治療のために末端血流が減じられる所謂“ウェッジ”法の代わりに使用することができる。弁によってひとたび血流が遅くなったならば、シアノアクリルのような接着剤を目標部位に塗布するようにしても良い。
【0095】
以上、血管内塞栓剤の逆流を低減、又は防止する装置及び方法に関し、多数の実施形態を掲げ説明してきた。本発明の特定実施形態を説明したが、本発明はその範囲において当該技術が認めるのと同じくらい広いものであり、明細書においても同様に読まれるべきであり、本発明がこれら特定実施形態に制限されることは意図するものではない。従って、例えばカテーテル、スリーブ・制御要素、制御スレッド付き布スリーブなど、保護弁のための特定の展開手段を説明したが、例えばバルーン、衝撃吸収スリーブ、或いはそれらの組合せなど、他の展開機構もまた使用可能であることを理解されたい。同様に、弁フィラメント用、弁フィルタ用、カテーテル用及び展開手段用として様々な材料はリストアップしたが、夫々に対し、その他の材料も又使用可能であることを理解されたい。又、本発明を人間の特定の動脈に関連して説明してきたが、本発明は、人間と動物の如何なる血管や、腺管を含む他の導管に対しても適用可能であることを理解されたい。特に、本装置は又、肝臓や腎臓や膵臓の癌治療においても使用可能である。更に、それらの近位端が当該技術では良く知られた形態を含む様々な形態のいずれかとることが可能なため、各実施形態はそれらの遠位端に関して記述してきた。ほんの一例として掲げるが、例えば近位端は2種のハンドルを備えることができる。1つは内(送達)カテーテルに接続されたものであり、他の1つは外カテーテル、スリーブ又は作動ワイヤ(又はストリング)に接続されたハンドルである。1つのハンドルを他のハンドルに対して第1の方向に移動することにより弁を展開し、適用可能なら、そのハンドルを反対の第2の方向に動かすことで元の状態に戻すようにしても良い。ハンドルの配置構造によっては、ハンドル同士を互いに離反又は接近した際に、弁の展開が起こるようにしても良い。よく知られているように、ハンドルは双方間の直線運動や回転運動のために配置することができる。所望なら、互いに対する各ハンドルの動きを視覚的に測定することができ、それが開弁の程度を示すものとなるように、内カテーテルの近位端に、カテーテルに沿って間隔をおいてハッシュマークやその他の指標を設けるようにしても良い。従って当業者であるならば、ここで提供した発明の精神及び請求の範囲を逸脱することなく更に別の実施形態も可能であることを理解するであろう。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図12B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図13A】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座前位置に位置する状態を示した図である。
【図13B】送達カテーテルへの弁を取り付けるための追加の模範的構造及び方法を示し、送達カテーテルの弁座に対する弁が、着座後位置に位置する状態を夫々示した図である。
【図14A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図14B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図15A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図15B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図16A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図16B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図17A】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、縦断面である。
【図17B】送達カテーテル内に弁が吸引されるように、送達カテーテルからの弁を解放する模範的構造をもつ実施形態を示す、横断面である。
【図18A】送達カテーテルに弁を取り付けるための模範的構造及び方法の別の実施形態を示す図である。
【図18B】送達カテーテルに弁を取り付けるための模範的構造及び方法の別の実施形態を示す図である。
【図19】送達カテーテルの遠位端に弁を運ぶための装置の別の実施形態の、遠位端の概略図である。
【図20】図19の弁の概略図である。
【図21A】図20の弁のための異なる弁構造を用いた各実施形態の遠位端を示す図である。
【図21B】図20の弁のための異なる弁構造を用いた各実施形態の遠位端を示す図である。
【図21C】図20の弁のための異なる弁構造を用いた各実施形態の遠位端を示す図である。
【図22】展開状態にある図19の装置を示す図である。
【図23】展開状態にある図19の装置を示す図である。
【図24】スリーブ弁を展開させるための別の装置の概略図であって、収容状態にある弁を示した図である。
【図25】スリーブ弁を展開させるための別の装置の概略図であって、弁の展開状態を示した図である。
【図26】スリーブ弁を展開させるための別の装置の概略図であって、弁の展開状態を示した図である。
【図27】バルーンを使用する弁を展開するための装置の概略図であって、閉じた状態の弁を示した図である。
【図28】バルーンを使用する弁を展開するための装置の概略図であって、展開状態の弁を示した図である。
【図29】バルーンを使用する弁を展開するための装置の概略図であって、展開状態の弁を示した図である。
【図30】バルーンを使用するフィルタを展開するための別の装置の概略図である。
【図31】バルーンを使用するフィルタを展開するための別の装置の概略図である。
【図32】バルーンを使用するフィルタを展開するための別の装置の概略図である。
【図33】弁を展開するための別の装置の概略図である。
【図34】弁を展開するための別の装置の概略図であって、収容状態にある弁を示した図である。
【図35】弁を展開するための別の装置の概略図であって、展開された弁を示した図である。
【図36】弁を展開するための別の装置の概略図であって、使用状態にある弁を示した図である。
【図37】弁を展開するための別の装置の概略図であって、図37は初期閉止状態を示す図である。
【図38】弁を展開するための別の装置の概略図であって、展開状態を示す図である。
【図39】弁を展開するための別の装置の概略図であって、展開状態を示す図である。
【図40】弁を展開するための別の装置の概略図であって、仮の状態で再び閉じられた状態を示す図である。
【図41】本発明の別実施例のうちのいずれかに関連して使用可能な幾つかの洗浄弁を示す図である。
【図42】本発明の別実施例のうちのいずれかに関連して使用可能な幾つかの洗浄弁を示す図である。
【図43】本発明の別実施例のうちのいずれかに関連して使用可能な幾つかの洗浄弁を示す図である。
【図44】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図45】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図46】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図47】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図48】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図49】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図50】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【図51】弁を展開するための装置の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の第1の模範的実施形態を図2A〜2Cに示す。図2A〜2Cは相対的なサイズで示されてはおらず、むしろ説明のために示されていることに留意されたい。図2A〜2Cには、近位端(図示せず)と遠位端205を有する送達カテーテル201が動脈204内に配置された状態で示されている。送達カテーテル201は、患者(図示せず)の体外から患者の目標血管(動脈又は静脈)に塞栓剤を供給するようになっている。カテーテル201の遠位端205へ取り付けられるものは、複数のフィラメント203a、203b、203c…を有して示した模範的な実施形態の弁203であって、各フィラメントは好ましくは網状になっており、互いに対し移動可能になっている。以下で説明するように、フィラメントは、弁が実質上載頭円錐形となるように、バネ付勢された状態で(即ち、それらは“形状記憶”の状態を有する)、互いに対し所望の交差角を成す(尚、ここで用いた“実質的に載頭円錐形”という用語は、円錐台だけでなく、切頂双曲面や切頂放物体、更に円形の近位端から始まりそこから分岐するような他の如何なる形状も含むことに留意されたい)。カテーテル201の周囲には、送達カテーテル201と弁203の上を移動できるような外カテーテル、又はスリーブ202がある。必要なら、外カテーテル又はスリーブ202は送達カテーテルの全長程に伸ばしても良い。外カテーテル又はスリーブ202が送達カテーテルの全長に沿って伸ばした場合、それは近位へと伸びかつ患者の体外から手術者によってコントロールすることができる近位端(図示せず)を有する。或いは、外カテーテル又はスリーブ202は、送達カテーテル201の遠位端及び弁203の上だけを伸びるが、近位へと伸びかつ患者の体外からの手術者によってコントロール可能な制御要素によってコントロールされる。
【0031】
図2Aに示すように、外カテーテル又はスリーブ202が弁203上まで延設された場合、複数フィラメントは円筒形に付勢される。従って、図2Aは退縮又は非展開の円筒形状態となったブレイド弁を示しており、ここではブレイドフィラメント203a、203b、203c…はカテーテル205の遠位端に取り付けられ、更にスリーブ202によって覆われている。カテーテル201は、矢印220方向の前方血流(例えば、心臓収縮時に経験されるように、カテーテルが動脈内に保持された状態で、血液が弁に対し近位から遠位への方向に流れる状態、即ち遠位に流れる血液)を持つ動脈204内に配置される。図2Bに示すように、矢印210の方向にスリーブ202が退縮することで、弁203の非拘束部分は拘束を解かれ、その形状記憶位置に向かって半径方向に拡がる(長手方向には退縮する)。しかしながら、例えば、80〜120mmHg或いはそれ以上の力で発生して遠位方向に流れる血流(矢印220に示す)は、弁が一層完全に開くのを阻止し、弁が血管204の壁面に接触するのを回避させる。その結果、弁203は、不十分な状態で開き、遠位又は近位方向へと流れる血流をブロックする状態に維持される。言い換えれば、前方向の血流は、網を長くすると同時に(完全開き位置に対して)その直径を減じることで、流体の網・血管壁間の通過を可能にする。
【0032】
図2Cは、血流が、緩やかな前方流れ221か静的な流れ、或いはカテーテル201を介して塞栓剤を送達させた後に発生し、弁203を通過する可能性のある逆の流れ222(例えば、以下に限定されたことではないが心臓収縮時において血管内で弁を長手方向静的に保持し、かつ弁に対しては遠位から近位方向に移動することで起こる)、或いは静的な流れ(近位又は遠位方向への血液の著しい流れがないような時に起こるような、弁の両側が実質上等しい圧力、即ちほぼ0mmHgの圧力を持つ流れ)、或いは緩やかな前方流れ(弁の遠位側の圧力が近位側の圧力よりも僅かに大きい場合、例えば0〜80mmHgの際に起こる流れ)の状態にあるような弁203を示している。緩やかな前方流れ221の状態では、血液によって網状弁のフィラメントに対して付与される力は、弁203が開いて血管204の壁に到達するのを回避するには不十分となる。静流状態においては、血液は、弁に対し如何なる前方への力を付与しない。逆の流れ222の際には、血液は、弁が完全に開くのを補助する力を付与する。図2Cの完全展開状態では、網状弁は、塞栓剤の弁に近づく流れを止めるフィルタとして作用する。しかしながら、より詳しくは後述することになるが、ブレイド弁203の細孔サイズによっては血液及び造影剤の弁を通ってカテーテル201の周りへと流れる逆流を可能にする一方で、塞栓剤の流れに対してこれを阻止するか著しく減じることがあるかもしれない。
【0033】
当業者であるならば、本カテーテル201は当該分野では既知の如何なるカテーテルになり得ることを理解すべきである。通常、カテーテルの長さは60cm(2フィート)〜2.4m(8フィート)、外径は0.67mm〜3mm(カテーテルサイズ換算で2〜9フレンチに対応)になり、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やフッ素化エチレンプロピレン(FEP)等のフッ素化ポリマーで作られるライナ、ステンレス鋼やチタンのような金属、或いはポリエチレン・テレフタレート(PET)や液晶ポリマー等のポリマーから作られる網、更にPEBAX(商標)等のポリエーテルブロックアミド熱可塑性弾性樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミド共ポリマー、ポリエステル、ポリエステル共ポリマー、PTFEやFEPのようなフッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、或いはその他の適切な材料から作られる外コーティング、或いは血流内で使用されるカテーテルを製造するにあたって使用される他の基準又は特殊材料から作られることになる。スリーブ又は外カテーテル202は、ブレイド203を円筒形に保持できかつ、弁のブレイド203とカテーテル201の上でスライド可能な材料から構成される。スリーブ又は外カテーテル202は、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミド共ポリマー、ポリエステル、ポリエステルの共ポリマー、PTFEやFEPのようなフッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリカーボネート、或いは他の適切な材料から作ることも可能である。スリーブ又は外カテーテルは又、ステンレス鋼やチタンなどの金属、PETや液晶ポリマーのようなポリマー、或いは他の適切な材料からなるブレイドを含んでも良い。スリーブ又は外カテーテル202の肉厚は、0.05mm〜0.25mmの範囲であることが好ましく、更には0.1mm〜0.15mmの範囲内に収まること好ましい。
【0034】
弁203は1種、2種或いはそれ以上の金属(例えば、ステンレス鋼やニチロール)又はポリマーフィラメントから構成され、外部がかからない状態で実質的に載頭円錐形を成すようになっている。ポリマーのフィラメントを使う場合、フィラメントは、PET、ポリエチレン・ナフタレート(PEN)、液晶ポリマー、フッ素化ポリマー、ナイロン、ポリアミド、その他の適切なポリマーから構成しても良い。必要なら、ポリマーフィラメントを用いる際、1種又はそれ以上の金属フィラメントがポリマーフィラメントと共に使用しても良い。本発明の1つの形態として、金属フィラメントを使用する際に、体内での追跡を可能にするべくX線不透過材料からなるようにしても良い。弁は、長さを縮小する一方で長さで直径を拡大することができ、長さを伸ばす一方で直径を減じることができる。弁は、大きな直径を持つように形状設定された形状記憶材から構成されることが好ましい。前述したように、弁は解放されるまでは小径方向に保持されることが好ましく、スリーブ又は他の拘束部品202の削除により解放された際には、弁の遠位端はより大きな直径へと拡張する。弁を複数フィラメントで構成する場合、フィラメントをそれらの長さに沿って、又はそれらの遠位端で互いに接着されないようにし、動的な流動条件に応じて即座に弁が自動的に開閉できるようにすることが好ましい。
【0035】
好ましい実施形態において、弁はカテーテル本体に結合された近位端でのみ拘束される一方、弁の残りの部分はスリーブやカテーテルによって拘束される状態(退縮状態)か、部分的に拘束されない状態(部分的展開状態)か、或いは完全に非拘束されない状態(完全展開状態)のいずれかが可能である。部分的又は完全に非拘束の状態にある時、血管内の流動状態によっては弁は血管壁に達するかもしれないし、或いは達しないかもしれない。
【0036】
前述したように、弁の直径は局所の流動状態に応じて自動的に変化することで、前方への流れを可能にするも短時間又は長期間の逆流においては塞栓剤を捕らえるようにすべきである。簡単に言えば、弁には2つの状態が存在すると考えて良い。“閉止”状態では、弁は血管壁に対してシールされず、血液は少なくとも近位部においてその周りを遠位方向へと流れるかもしれない。“開放”状態では、弁は血管壁に対して拡張し、仮に血液が血管内の弁をいずれかの方向に流れ過ぎものであるなら、血液は弁を通り抜けるに違いない。尚、この“開放”状態においては、塞栓剤は、弁の下流側に(又は、遠位から近位への方向において)流れるのを防止される。
【0037】
3つのパラメーターが、弁の性能と新規性、即ち、弁の半径方向(外方)の力、弁がその状態を閉止から開放へと変化する際の時定数、及び弁の細孔サイズ、を決定するのを補助する。
【0038】
好ましい実施形態では、ブレイドの周囲の流れのいずれかの部分がうっ血状態に近づいた際には、弁は血管壁に対して十分に拡張し(即ち、開放条件に達し)、血液が遠位の方向に標準の力で遠位へと流動する際には、閉じた状態のままとなる。更に詳しく言えば、弁が拡張する際の半径方向の力が、前方への血流からの力より大きい場合、弁は血管壁に向かって拡張する。しかしながら、本発明の1つの特徴によれば、遠位方向への血流によって弁が開放状態になるのを回避するように、弁の拡張の半径方向力は低めに設定される(より詳細には以下に記述する)。この低い拡張力は、従来からのステント、ステント移植物、遠位の保護フィルタ、その他の血管装置の各拡張力(これらは、あらゆる流動条件において血管壁に対し十分拡張するほど十分に高い半径方向力を有する)とは異なる。
【0039】
ブレイドの拡張の半径方向力に関しては、JedwabとClercによって記述されており(応用バイオマテリアル・ジャーナル、4巻、77〜85頁、1993年)、その後、DeBeule(DeBeuleその他、バイオメカニクス及びバイオメディカル・エンジニアリングにおける計算方法、2005年)によって以下のように更新されている。
【数1】
ここでK1,K2,K3は以下の式によって与えられる定数である。
【数2】
また、IとIpは、ブレイド・フィラメントの慣性の表面及び極モーメントであり、Eはフィラメントのヤング弾性率、Gはフィラメントの剛性率である。初期ブレイド角(β0)、最終ブレイド角(β)、ステント径(D0)、フィラメント数(n)に加え、これらの材料特性はブレイド弁の半径方向力に影響を与える。
【0040】
一実施形態では、図2A〜2Cで示されるような弁構造に伴い、弁203は24本のポリエチレン・テレフタレート(PET)フィラメント203a、203b...から構成され、各々は0.1mmの直径を有し、直径8mmの円筒形、及び130°のブレイド角へと予備成形される(即ち、フィラメントは、弁が完全に展開した状態を仮定して載頭円錐形に開放した際には、130°の角度を成すようにバネ付勢されるか、そのような形状記憶を持つ)。そのフィラメントは、200MPaよりも大きいヤング率を持つことが好ましく、更に弁は、完全展開状態(即ち、フィラメントが形状記憶の形をとった状態)で40mN以下の半径方向を有することが好ましい。より好ましくは、弁は完全展開状態で20mN以下の半径方向力を有し、更により好ましくは、弁は展開状態で約10mN(ここで使用される“約”は±20%を意味するものとして定義する)。弁がフィルタとブレイド・フィラメントを備える場合(図3A及び3Bを参照して以下に説明する)、ブレイド部品は完全展開状態で半径方向力が20mN以下になることが好ましく、更に好ましくは10mN以下の半径方向力、更に好ましくは約5mNの半径方向力を有する。これは、例えばAN‐‐GIOGUARD(Cordis社の登録商標)等の従来の塞栓捕獲装置や従来ニチロールステント、完全展開状態で通常40mN〜100mNの半径方向力を有するステント移植と比較したものである。
【0041】
本発明の1つの特徴によれば、弁は、急激に変化する流動方向によって塞栓剤の高い捕捉効率を達成するためにかなり早く開閉する。一実施形態において、弁は、0.067秒での血液の粘性(即ち、約3.2cP)の粘性とほぼ等しい粘性を持つ静的流体(例えば、グリセリン)の中で、完全閉止(非展開)状態から全開状態へと移動する。ここでは、静的流体中において、その全閉位置から全開位置へと移動するのにかかる時間を「時定数」と呼ぶ。本発明の別の特徴によれば、弁は、血液の粘性を持つ流体中の弁の時定数が0.01秒〜1.00秒の間にあるように配置構成される。より好ましくは、弁は、血液粘性を持つ流体中の弁の時定数は0.05〜0.50秒であるように配置構成される。弁の時定数自体は、上述したパラメータ(例えば、フィラメントの数、フィラメントの弾性係数、フィラメント径など)の1つ、又はそれ以上を変えることにより調節可能である。
【0042】
当業者には自明であろうが、ブレイド形状や材料特性は、弁の半径方向力と時定数に密接な関係がある。発明の1つの特徴によれば、弁は、異なる直径や流動条件からなる様々な動脈に対し有効であるため、それぞれの実施例において他とは異なる最適化を有することができる。ほんの一例をあげれば、一実施形態では弁は10本のフィラメントを有し、別実施形態では弁は40本のフィラメントを有する。フィラメント径については、他の直径でも利用可能であるが0.127mm〜0.025mmの範囲から選択されることが好ましい。ピッチ角(即ち、全開位置‐形状記憶位置でのフィラメントによってなされる交差角)に関しても、他のピッチ角を使っても良いが、100°〜150°の範囲から選ばれることが好ましい。フィラメントのヤング率については、少なくとも100MPaはあることが好ましく、少なくとも200MPaあるようにすると更に好ましい状態になる。
【0043】
発明の別の特徴によれば、弁は、血液が弁を通過する際に血流中の塞栓剤を捕捉(ろ過)できるほど十分に小さい細孔サイズを有するように選択される。大きな塞栓剤(例えば500μm)が使われる場合、(仮に、フィルタに例えば500μm以下の細孔があるという条件で)弁のフィラメントを、塞栓剤が弁を通り抜けるのを防ぐフィルタとして直接作用させることができる。或いは又、フィルタをフィラメント構造に付加するようにしても良い。そのような分離型フィルタは、より小さな塞栓剤が使用される場合において特に有効である。
【0044】
図3Aは、カテーテル201の遠位端でのブレイド弁203であって、ブレイド構造203にフィルタ301を付加させた弁を示す。フィルタは、吹き付け法、紡績法、電気紡績法、接着剤を使った接合、熱融合、機械的なブレイド捕捉、溶融接合、ボンディング、その他の所望の方法によってブレイド上に設置することができる。フィルタは、ePTFEのような細孔材料か、レーザー穿孔付きポリウレタンのように細孔を付加させた固体物質のいずれか、或いは、ブレイド上に敷設された極薄フィラメントのウェブであっても良い。フィルタ301が薄フィラメントのウェブである場合、フィルタの特徴たる細孔サイズ径は、フィルタを通して異なる直径のビーズを通すことを企図し、その径のビーズが大量フィルタを通過できることを見据えて決定するようにしても良い。極薄フィラメントは、静電界を使うか或いは静電界を使用せずに、或いはその双方の状態を利用し、米国特許第4,738,740号に従って回転マンドレル上に紡ぐことができる。このようにして形成されたフィルタは、接着剤を使ってブレイド構造に接着しても良く、ブレイドをマンドレル上にセットした状態で、マンドレル上でフィルタを紡ぐか、マンドレルの下でフィルタを紡ぐか、或いはブレイドの上下でそれを捉えるようにフィルタを紡具用にしても良い。フィルタにある幾つかの細孔は、溶射又は電気紡績と、細孔がレーザー穿孔されるか第2の行程によって形成されるような第2のステップから形成されるようにしても良い。好ましい実施形態では、ブレイド上でのフィルタ形成のために、静電沈着又は紡績されることが可能な材料がそれ自身に接合可能な好適材料と共に使用される。フィルタは、ポリウレタン、ペレタン、ポリオレフィン、ポリエステル、フッ素化ポリマー、アクリルポリマー、アクリレート、ポリカーボネート、その他の適切材料から作っても良い。ポリマーは湿潤状態でブレイド上で紡がれるため、ポリマーが溶剤によって溶けることが好ましい。好ましい実施形態では、フィルタは、ジメチルアセトアミドで可溶なるポリウレタンから形成される。ポリマー材料は、静電紡績工程の場合、好ましくは5〜10%の固体濃度、湿式紡績工程の場合、好ましくは15〜25%の固体濃度の液体状態でブレイド上で紡がれる。図3Bは、外カテーテル202が手前(矢印方向)に引き込まれ、ブレイド203及びフィルタ311が拡張された状態の弁拡張状態を示している。
【0045】
本発明の1つの特徴によれば、フィルタ301の特徴的な細孔サイズは10μm〜500μmの間である。より好ましくは、フィルタ301の特徴的な細孔サイズは15μm〜100μmの間である。更に好ましくは、フィルタ301の特徴的な細孔サイズは40μm以下であり、更に好ましくは20μm〜40μmの間になる。最も望ましいものとしてフィルタ301には、塞栓剤の通過を阻止する一方で、血液と造影剤の通過を可能にするようなサイズの特徴的細孔が設けられる。逆流する血液及び造影剤を、弁の遠位側から弁の近位端に向かう方向でフィルタを通り抜けさせることで、造影剤を標的部位が完全に塞栓された状態を示すものとして使用しても良く、更に塞栓処置の臨床エンドポイントを特定させることに役立たせることができる。したがって、発明の1つの特徴によれば、弁は、臨床のエンドポイントの指標としての造影剤の逆流を可能にしつつ、同時に塞栓剤の逆流を防いでいる。血液がフィルタ材を通って後方に流れるのを可能にすることで、比較的遅い速度でさえも弁の遠位側の背圧を緩和できる。しかしながら、フィルタは、必ずしも血液又は造影剤を「逆流」方向に通過させる必要はないことを理解されたい。
【0046】
本発明の方法の1つの特徴によれば、弁は血管内展開が可能である。弁は、カテーテルの遠位端に結合されることが好ましい。カテーテルの遠位端が処置のための正規位置にある場合に弁は展開する。好ましくは、弁が展開された状態で、塞栓剤はカテーテルをと被って血管内遠くに送達される。塞栓剤の送達は、結果として遠位方向への血流の速度低下又は停止を招き、弁が、カテーテルの外径よりも小さいかそれに等しい初期の直径(即ち、収納又は非展開状態)から、好ましくはカテーテル外径の少なくとも2倍、より典型的には4〜10倍の最終直径(開放状態)へと拡張することで終わる傾向がある。その開放状態において、弁は、近位方向に弁を通って(カテーテル壁と血管壁の間で)移動する塞栓剤を阻止する。発明の1つの特徴によれば、塞栓処置が終了した後は、弁はその閉止位置へと退縮可能であることが好ましい。
【0047】
注目すべきは、弁が局部的流動条件に基づいて開閉する動的要素であることである。通常の流動条件では、流動圧は弱いバイアス力に対し十分打ち勝つものであるため、弁を血管壁と接触しないような閉じ位置に付勢する。静的または逆方向の流れでは、弁フィラメントのバイアス力は、弁を、好ましくは血管壁と十分接触するような開放位置に至らしめ、これにより、好ましくは血液と造影剤の逆流を許しつつ塞栓剤の逆流に対しては制限を加える。弁を介して血液と造影剤を逆流させることは必ずしも必要ではない。とはいえ、血液の逆流は弁の遠位側での背圧を防ぎ、造影剤の逆流は血流の視覚化にも役立つ。
【0048】
本発明の1つの特徴によれば、弁の展開はカテーテルの近位端から制御される。実施形態によっては、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端へと延びる1本の制御ワイヤ、或いは2本以上からなる制御ワイヤのセットが手術者によって使用、制御され、弁を展開したり、随意的に退縮させたりするかもしれない。また実施形態によっては、カテーテルの近位端からカテーテルの遠位端へと延びる制御スレッドを使って、弁を覆う織物を解き弁を展開する。実施形態によっては、弁を結合したカテーテルの長さ方向に延びる外スリーブによって弁を覆い、拡張時はこのスリーブを後方に引くことで弁を拡張させる。また実施形態によっては、制御要素に結合されカテーテルの長さ方向に延びる外スリーブによって弁を覆い、拡張時は制御要素を使ってこのスリーブを後方に引くことで弁を拡張させる。また実施形態によっては、弁がガイドワイヤに結合され、カテーテルガイドワイヤを除去することで、弁の展開を開始させる。制御ワイヤ、スレッド、スリーブなどは、例えば60cm〜240cmの範囲の標準的長さからなるものかもしれない。
【0049】
先にも説明したように、様々な方法で弁を展開することができる。図2で記述したように、弁を覆う外カテーテル又はスリーブを移動させることにより弁を展開することができる。その実施形態では、弁は、カテーテルかスリーブを遠位方向に移動させるか、或いは送達カテーテルと弁を近位方向に移動することにより元の状態に戻ることができる。別の実施形態としては、図4A〜4Cに示すように、弁は、弁203(フィルタ301で示される)を覆う網スリーブ(ウエルト編物)402を不可逆的に除去することにより(解くことにより)解放される。より詳しく言えば、図4Aに示すように、弁203はカテーテル201の遠位端へ取り付けられる。弁の頂部に設けられるのがウエルト編物スリーブ402である。制御スレッド401はこのウエルト編物に結合され、カテーテルの近位端へと延びる。一実施形態として、解くことかできない編物は薄さ10μm〜60μmのポリエステルから構成される。この編物は張力のもとで保持される繊維鞘であっても良い。図4Bは制御スレッド401を引っ張ることによる弁の展開を示している。一実施形態において、スレッド401は編物スリーブ402の遠位端に接続され、スリーブ402の遠位端から最初に材料を取り除くことにより弁を解放する。制御スレッド401を後方に引き、スリーブサイズを減らすと、フィルタ301がある弁203の遠位端は自由に開くことができる。弁の径又は長さについての医師が調整できるようにウエルト編物スリーブ402を部分的に或いは、完全に取り外しても良い。図4Cでは、ウエルト編物が更に完全に取り外され、弁203とフィルタ301の大部分を自由な状態にしている。別実施形態では、スレッドはスリーブの中間か近位端に取り付けられ、初めにスリーブの中間又は近位端から材料を取り除くことで弁を解放している。
【0050】
図5A及び5Bに示すように、別実施形態としては、ガイドワイヤ501を使って弁503を展開しても良い。更に詳しく言えば、弁503にはループ502が設けられ、それらは弁503のフィラメントの遠位端又はその近傍に取り付けられる。ループ502はフィラメントと一体化されても良いし、或いは別個の材料で作りフィラメントに取り付けるようにしても良い。図5Aに示すように、ループ502は、カテーテル201のルーメンを通って延びるガイドワイヤ501の遠位端で輪を作る。弁端部におけるループ502は、カテーテル201とガイドワイヤ501が血管を介して進行している間に、ガイドワイヤ501周りで輪を成す。このようにして、弁の遠位端は閉じ位置で維持される。図5Bの矢印で示したように、ガイドワイヤ501が近位方向へ引くことで遠位のループ502は解放され、弁503が展開される。
【0051】
本発明の1つの特徴によれば、本発明の如何なる実施形態の弁も、幾つかある内の任意の方法によりカテーテルの遠位端へ取り付けられる。図6Aで示すように、弁203は、弁203の近位端に重なりかつカテーテル201上の弁203の近位端から近位方向へと延びるスリーブ601によって、カテーテル201に取り付けられる。図6Bは、カテーテル201、弁203及びスリーブ601の断面図である。スリーブ601は、カテーテル201に対して接着されるか、或いは熱収縮工程又は他の機械的工程により機械的に保持され、カテーテル201とスリーブ601の間において弁の遠位端を捕捉することでカテーテル201上で弁203の遠位端をこのように保持する。
【0052】
1つの好適実施形態では、弁はカテーテルへ溶融接合される。より詳しく言えば、図6Cから分かるように、弁とカテーテルが溶融される領域602では、最大限でもカテーテル201の内、外径に微小の変化しか生じないようにして、カテーテル201に弁203が溶融される。図6Dは、カテーテル201、弁203及び溶融域602が全て同一径となった溶融弁の断面図である。カテーテルと弁の融合は、弁を熱的に溶かすか、カテーテルを溶かすか、弁・カテーテルの双方を溶かすか或いは化学的な工程により達成することができる。
【0053】
図7A、7Bを参照するに、ここには単一のフィラメントコイルからなる弁702が示されている。そのコイルは、金属又はポリマーから作ることができ、フィラメントは形状記憶ポリマーであることが好ましい。図7Aはカテーテル201上で退縮状態にあるコイル弁701を示している。コイル弁の遠位端にはフィルタ702が設けられる。図7Bは展開状態のコイル弁を示し、この場合、弁701とフィルタ702は遠位端で拡張する。弁を展開するにあたっては、かつて開示されたことのある種々な方法のいずれも使用することができる。
【0054】
図8A〜8Eを参照するに、ここには展開装置800の別の実施形態が示されている。展開装置800は送達カテーテル801、弁803、展開要素810及び弁イントロデューサ812を備えている。以下の説明で明らかとなるが、先に述べた特定実施形態とは異なり、ここでは弁を展開するにあたって送達カテーテルを外カテーテルや外スリーブに対し進行させる必要がない。
【0055】
送達カテーテル801は1mm(3フレンチ)・マイクロカテーテル、或いは1.33mm(4フレンチ)又は1.67mm(5フレンチ)・マイクロカテーテルであることが好ましい。送達カテーテル801は単層又は2層或いはそれ以上の層から構成される。一実施形態では、送達カテーテル801は、例えばFEPやPTFEからなる内ライナ、金属、ポリマー、液晶ポリマーの内の1つ又はそれ以上からなる中央ブレイド、そしてPEBAX(登録商標)等のポリエーテル・ブロック・アミド熱可塑性弾性樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、或いはその他の適当なポリマーからなる外ポリマーカバーを備えている。
【0056】
送達カテーテル801の遠位端805には、弁座814と、その弁座814に近い位置か離れた位置、或いはその周囲に配置されるX線不透過性の標識帯816とが設けられる。弁座814は、送達カテーテル801の遠位端805に位置する円周溝によって形成されることが好ましい。弁座814は、送達カテーテル上に直接形成されるものでも良く、或いは送達カテーテルか送達カテーテルの遠位端805に接着又は融合されるものでも良い。弁座814を送達カテーテル801上に直接形成するようにして送達カテーテル自体を多層構成物から作る場合、弁座814は、単層や2層を通る形で構成したり、或いは2つの層を通り、更に第3の外層の深さの一部を通る形で構成しても良い。
【0057】
弁803は通常、上記実施形態のいずれかに記載されたものである。弁803は、ポリマー面でコーティングされたポリマーブレイドでも、ポリマー面でコーティングされたポ金属ブレイドでも、或いはポリマー面でコーティングされたポリマー・金属ブレイドの組合せからなるものでも良い。ポリマー面は、シートや穿孔付きシート、或いはメッシュであっても良い。弁は血液に対して透過性のものでも良いし、或いは不透過性であっても良い。その構成にかかわらず、弁は、局部血液流動条件に応じて開閉する動的要素である。弁803の近位部分は、以下に詳しく説明するように、弁が送達カテーテルを通って進行した際に、送達カテーテル801の遠位端805に設けられた弁座812と係合する嵌合構造818を備える。
【0058】
嵌合構造818は、カテーテルの本体を通る進行のため圧縮可能であるが自動的に拡張して弁座814に着座するように形状記憶ポリマーか弾性ポリマーを備えるものでも良い。図8C及び8Dを参照するに、嵌合構造818が弁座814に着座した際には、そのような係合により送達カテーテル801に対し弁803がロックされ、送達カテーテルに対しての弁の更なる遠位方向への移動を阻止し、かつ弁が処置している間、送達カテーテルの遠位端から抜け出てしまうのを防止する。嵌合構造818は、夫々が別れて弁座に着座するような、複数の独立した特徴物(例えば、4つの特徴物)から構成されるものでも良い。更に、特徴物の形状は、弁803が送達カテーテルを介して進行する際と弁座814に係合した後の双方で、送達カテーテル801内での低い形状を保持するために、例えば特徴物の中心を通る半径方向“高さ”寸法818hが0.25mmを超えないくらい、小さくなければならない。一例をあげれば、弁803の嵌合構造は、弁803に接着、融合、クリンプ加工、さもなければ取り付けられるものであって、かつ弁座814に受容可能な複数のX線不透過性金属スラグ818a〜dを備えている。弁座814は更に、X線不透過性の指標を備えるようにしても良い。このようにすれば、弁座と弁の整列状態を蛍光透視法のもとで視覚化することができる。スラグ818a〜dは、ひとたびスラグが弁座に受容されたならば、弁803の進行や後退を防止するように形成される近、遠位面819a、819aを有する。即ち、各面819a、819bは、送達カテーテルの長手軸線に垂直な平面内で延びるものかもしれない。弁803の近位部分は、弁を通る内径803を決めるように送達カテーテル801の内壁801aによって拘束されることが好ましい。
【0059】
展開要素810は、通常は構造において従来のガイドワイヤと同様であることが好ましいプッシュワイヤである。プッシュワイヤの遠位端810aの外径は、弁803の近位端の内径より大きい。その結果、プッシュワイヤ810を使って弁803の近位部分803aに押圧力を与え、かつ送達カテーテル801によって弁を進行させることができる。即ち、プッシュワイヤ810の遠位端810aと弁の近位部分803aは、プッシュワイヤ810が弁803を通って自由に延びないような相対サイズを有する。近位部分803aが内壁801aによって抑制される際、プッシュワイヤ810は、その遠位端の直径を増加させて弁への押圧力付与を容易にするためのポリマービーズが金属ビーズを備えても良い。これに加えるか、その代わりとして、弁への押圧力付与を助けるために円筒又は管状要素をプッシュワイヤの遠位端に融合又は接着するようにしても良い。又、これに加えるかその代わりとして、1つ以上の金属又はポリマーコイルをプッシュワイヤの遠位端に設け、その外径を増やすようにしても良い。プッシュワイヤの遠位端に付加された如何なる特徴物もプッシュワイヤの追従性を維持しなければならない。プッシュワイヤ810はX線不透過性材料から作られるか、或いはその長さに沿って白金等により1つ又はそれ以上のX線不透過指標を含むことが好ましい。
【0060】
弁イントロデューサ812は例えば、PTFEから作られるポリマー管である。イントロデューサ812の長さは1cm〜50cmであることが好ましく、更にその操作を容易にするためにその近位端(図示せず)にハンドルをオプションとして設けるようにしても良い。図8Eに示すように、弁803と、好ましくはプッシュワイヤの少なくとも一部分は、弁803の遠位端を折り畳んだ状態に保持しつつ、イントロデューサ812内に保持される。イントロデューサ812は、弁803を折り畳んだ状態に保持することによって、弁を送達カテーテル801を通る進行に適したサイズにする。イントロデューサ812は折り畳まれた弁803とプッシュワイヤ810を含むのに十分大きな内径を有する。イントロデューサ812は、送達カテーテルの近位端にある注入ポート807の内径より小さな外径を有することで、イントロデューサを注入ポート内へ進行させることができる。一実施形態において、その内径は0.89mm、外径は0.96mmである。
【0061】
図8C及び8Dを参照するに、装置800の使用により、標準ガイドワイヤ(図示せず)が患者の血管を通って所望の治療位置へと前方に進められる。送達カテーテル801は標準ガイドワイヤ上で所望位置へと進められる。ひとたび送達カテーテル801が所望位置に至ったならば、標準ガイドワイヤは送達カテーテル及び患者から取り除かれる。次いで弁イントロデューサ812が送達カテーテル801の注入ポートに挿入される。弁イントロデューサ812の長さによっては、それは単に送達カテーテルの近位端において弁を挿入するためのガイドとして機能するか、或いは送達カテーテルの実質上長さに沿ったガイドとして機能しても良い。その後、プッシュワイヤ810はイントロデューサ812に対し遠位の方向に進行して、送達カテーテル801内にある弁803(非展開状態)を弁座814に向けて押し込む。弁803が弁座814に接近すると、嵌合構造818は自動的に拡張して弁座814に係合し、弁803を送達カテーテル801の遠位端805に対してロックする。ロックされた状態では、弁は送達カテーテルの遠位端で展開される。その後、プッシュワイヤ810は送達カテーテル801から回収される。
【0062】
その後、塞栓剤が送達カテーテル801及び弁803を通って注入される。弁803は上述したように機能する。即ち、塞栓剤が注入される際には弁803は前方流れを可能にする一方、送達カテーテルが挿入される血管中において塞栓剤が反対方向に流れる(逆流する)のを防止する。塞栓剤を注入している間、チューブ構造体内チューブ(即ち、外スリーブを備えた送達カテーテル)を使用しないことの結果として、様々な上記実施形態で説明したように、より大きな送達カテーテルを使って、処置部位に塞栓剤の大きな流れを供給することができる。注入終了後は送達カテーテル801は、その遠位端805における弁803と共に患者から回収される。
【0063】
弁と弁座の間の積極的な係合が望まれるが、それは必ずしも必要ではないことを理解されたい。即ち、カテーテルの遠位端に対して弁を整列させることが、例えば各々にX線不透過標識を使用することによって蛍光透視法で視覚化することができるならば、弁は、手動でカテーテルに対して適当な位置に保持することが可能となる。
【0064】
展開装置800に類似する別実施形態は、弁に取り付けられた細いワイヤから構成される展開要素を備えている。ワイヤの直径としては0.025mm〜0.125mmが好ましく、標準ワイヤ又は平坦ワイヤであっても良い。カテーテルのルーメンからの何らかの妨害を制限する上で、平坦ワイヤはカテーテルの内面により接近した状態で対応するかもしれない。使用時、細いワイヤは弁座へと弁を進め、次いで塞栓剤の注入中はカテーテルの中で弁に取り付けられた状態となる。
【0065】
図9A〜9Dに、展開装置900の別実施形態が示される。展開装置900は実質上、装置800に類似しており、送達カテーテル901、弁903、プッシュワイヤ910及び弁イントロデューサ(イントロデューサ812について説明したようなもの)を備える。装置900と先に記述した装置800との間の差異は、弁座に対し弁をロックするため弁に設けられた嵌合構造918にある。図9A及び9Bにおいて、嵌合構造918は近位のリング状フランジであり、それはプッシュワイヤ910によって押し込まれた際には、径方向に圧縮されるか、或いは送達カテーテルを介した進行を可能にするサイズに変形される。図9C及び9Dに示されたように、ひとたびプッシュワイヤ910によって弁903を送達カテーテル901の遠位端905に送達したならば、フランジ918は弁座に置かれた時点で弁座914の中へと拡張し、弁903を弁座914に対してロックする。リング状フランジ918は、弁のブレイドか、或いは弁の残りの部分よりはるかに高い拡張力を持つ弁の金属ブレイド部分や金属ステント部分に結合された弾性要素によって形成されるかもしれない。
【0066】
図10A〜12Bは、弁・弁座間のロック係合のために弁の上で使用可能なフランジ嵌合構造の追加実施形態を示している。図10A及び10Bは、断面L字状又はJ字状の近位端を有して弁座1014内に係合するフランジ1018を示している。図11A及び11Bは、フランジが近位テーパー(即ち、小さな近位直径と比較的大きい遠位直径)を有するように、突き合わせ前面1118aと後方斜面1118b(断面において、「返し」のように見える)を有するフランジ1118を示している。この構造は、送達カテーテル1101からの弁1103の除去するにあたって、弁座1014からフランジ1118を近位方向に解放するのを容易にするものであり、更に以下に説明するが、弁退縮要素が設けられた装置の実施形態に関連して特に適切なものである。図12A及び12Bは、O−リングで構成されたフランジ1218を示し、ここでは弁座1214はO−リングを捕えるため円形溝の形態をとる。図13A及び13Bは、送達カテーテル1301の遠位端の弁座1314とそれに対応する弁1303の嵌合構造1318の別実施形態を示している。弁座1314及び嵌合構造1318は、長手方向に位置を変えて弁1303・弁座1314間の係合を高めるための複数の構造物により“キー溝”が付けられるが、構造物が互いに対し適切な長手方向整列状態になるまではロック係合を防止している。図示した例のように、弁座は長手方向に位置を変えた複数のチャンネル1314a、1314bを備え、遠位チャンネル1314aは近位チャンネル1314bよりも大きな幅寸法を有しても良い。嵌合構造1318は、遠位のチャンネル1314aに受容されるサイズではあるが、近位チャンネル1314bに対しては大きすぎて受容できない遠位フランジ1318aを備えている。嵌合構造は又、近位チャンネル1314bに受容されかつ捕えられるような適切サイズの近位フランジ1318bを備えている。近位、遠位の各フランジ1318a、1318bが近位、遠位の各チャンネル1314a、1314bと位置があった時には、フランジは夫々のチャンネルへ拡張し、送達カテーテル1301の遠位端に対して弁1303をロック係合する。上述された実施形態のいずれにおいても、フランジは周方向に途切れることのない要素を備えたり、或いは弁の近位部分周りで半径方向に変位された個別の要素から構成されるようにしても良い。更に、弁座は所謂“ネガティブ”なスペースとして示され、嵌合構造はそのようなスペースに拡張する1つ又はそれ以上の要素として示されているが、例えば弁座が送達カテーテルのルーメンへ拡張する要素を有し、嵌合構造が弁の近位端の周り設けられた溝や他の“ネガティブ”スペースになるといったように、弁座と嵌合構造の構造を互いに逆転させることも可能なことがわかる。但し、そのような逆転形態は、送達カテーテルの遠位端で注入経路の直径を減少させるため、それほど好ましいものとはいえない。
【0067】
図14A及び14Bには別実施形態としての展開装置1400が示される。展開装置1400は装置800と同様の要素を備えており、送達カテーテル1401、弁1403、プッシュワイヤ1410及び弁イントロデューサ(イントロデューサ812について説明したようなもの)を備える。加えて、装置1400は、弁1403の近位部分、更に好ましくは嵌合構造1418に取り付けられる退縮要素1420を備え、弁に解放かつ退縮力を付与することで弁を弁座から解放し、送達カテーテルを介して弁を回収するようになっている。
【0068】
退縮要素1420は嵌合構造1418に付けられたプルワイヤである。プルワイヤ1420は平坦なものでも良く、或いは塞栓剤の送達するための送達カテーテルのルーメン内部の利用可能部分を最大限にするため、送達カテーテル1401の内面1401aに近似して合致するように形成したものでも良い。送達カテーテルから弁1403を解放して回収するために、プルワイヤ1420は張力において十分な機械的強度を持たなければならない。とはいえ、プッシュワイヤ1410がプルワイヤ1420に平行を延び、送達カテーテルの遠位端へ弁を進行させる機能を果たすため、高い圧縮剛性を持つ必要はないことが理解される。
【0069】
本装置の使用については装置800と同様である。弁1403、プッシュワイヤ1410及びプルワイヤ1420は全て、送達カテーテルの注入ポート内へ各要素の導入を容易にするイントロデューサ(図示せず)に包囲される。プッシュワイヤ1410は、弁1403とプルワイヤ1420をイントロデューサの外に出して送達カテーテル1401の遠位端へと進行させる。ひとたび弁1403が弁座1414と係合したならば、プッシュワイヤ1410は送達カテーテル1401から回収される。その後、塞栓剤が送達カテーテル1401を介して注入され、患者を治療する。塞栓剤の注入後は、十分な張力をプルワイヤ1420に付与して弁1403を弁座1414から解放し、それを送達カテーテル1401内に退縮させることで、弁1403を送達カテーテル1401内へ回収することができる。次いで、送達カテーテルは患者から取り除かれる。任意ではあるが、患者から送達カテーテルを取り除く前に、プルワイヤ1420を用いて送達カテーテル1401から完全に弁1403を回収するようにしても良い。
【0070】
単一のプルワイヤに加えて、退縮要素もまた、塞栓剤注入後に送達カテーテルから弁を回収するために同様に使用可能な他の形態をとるようにしても良い。例えば、図15A及び15Bでは、退縮要素は、図示された1組のプルワイヤ1520a、1520bのように、複数のプルワイヤを備えている。更に図16A及び16Bに示すように、退縮要素は、多数の金属線やポリマーフィラメントからなる管状の退縮ブレイド1620を有しても良い。ブレイド1620はステンレス鋼、Elgilоy(登録商標)、ニチロール、その他の弾性材料から作られるかもしれない。管状のブレイド1620は、送達カテーテルのルーメンの直径に等しいか、或いはそれより大きい所定の直径を有するかもしれない。このようにして、退縮ブレイドを、送達カテーテル1601のルーメン径より小さな直径にするべくプッシュワイヤ1610の押圧力に対してピンと張った状態に保持することができる。ひとたびプッシュワイヤ1610が弁座1614へと弁1603を進行させたならば、張力がブレイド1620から解放され、送達カテーテル1601の内壁1601aに対してブレイドを外側に保持することが可能になる。更には、図17A及び17Bに示すように退縮ブレイド1720をポリマーコーティング1722で被覆するようにしても良い。ポリマーコーティング1722は、退縮要素がカテーテル本体を形成するように、例えばポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、PTFE又はFEPの内の1つ又はそれ以上を含むかもしれない。尚、プッシュワイヤとは別個の退縮要素を採用する実施形態では、分離したプッシュワイヤ1710が送達カテーテルを介して弁と退縮要素の双方の前進を行なうため、退縮要素は低い圧縮強度で設計できることに留意されたい。
【0071】
更に別の選択肢として、弁座へ弁を進行させかつ処置の終わりに弁座から弁を退縮させるのに十分な圧縮・引張強度を有するような単一の要素で、プッシュワイヤと退縮要素を構成しても良い。そのような単一の要素は、塞栓剤の十分な注入を可能にするべく送達カテーテルのルーメン内部に利用可能部分を確保するデザインでなければならない。
【0072】
図18Aにより別の展開装置1800が示される。展開装置1800は、送達カテーテル1801、弁1803、プッシュワイヤ1810、ポリマーコーティングが施されたブレイド1820の形態なる退縮要素、及び弁イントロデューサ(イントロデューサ812について説明したようなもの)を備える。弁座1814は送達カテーテル1801の遠位端に形成される。弁座1814の嵌合構造1818は、送達カテーテルを介した進行のために圧縮される。図18Bに示されるように、ひとたび嵌合構造1818が送達カテーテル1801の遠位端1805を通過したならば、嵌合構造は拡張して弁座1814と接触する。退縮要素1820は弁1803上で張力を維持し、弁座1814に対して弁1803を保持する。
【0073】
本発明の別実施形態では展開要素を必要としない。流体圧を使うことで弁はカテーテルを通って弁座へと前進する。図8〜17に関連して上述した弁設計のどれも、例えばイントロデューサを使ってカテーテル内に設けられる。その後、注入ポートを介して多量の生理食塩水やヘパリン処理された生理食塩水が、弁の後方からカテーテルに注入され、弁を遠位端に向けて押す。ここでは参照によって援用される米国特許第6,306,074号が、放射性治療種のような治療要素をカテーテルを介して送達部位に進めるための流体圧使用について記述している。弁を進行させるにあたっては、弁とカテーテル内面との間の摩擦力や血圧と重力との間の摩擦力を考慮に入れ、流体圧を同様に付与しても良い。弁がカテーテル内部にある場合、カテーテル内部に、多量の溶液が作用する適切な障壁を提供するためにカテーテル自体は十分に半径方向に折り畳まれることが認識される。
【0074】
別実施形態としての送達装置1900が図19に示される。送達装置1900は、近位端(図示せず)と遠位端1903を有する外カテーテル1901、外カテーテルを通って拡張可能な内カテーテル1904、及び外カテーテル1901の遠位端1903に位置する弁1905を備えている。弁1905は、近位で拡張可能なフレームワーク1906、フレームワーク1906の近位端に結合された1つ以上の制御部材1908(或いは図20の1908a、1908b)、フレームワーク1906の遠位端にある中央カラー1910、及びカラー1910から遠くに延びる1つ以上の弁フラップ1912を備えている。フレームワーク1906とカラー1910は拡張可能な構造から作られることが好ましい。フレームワーク1906及びカラー1910の両方は、自己展開式のように形状記憶や他のバネのような拡張可能な特性を持つ材料から形成されるか、或いは形状記憶やバネの特性を持たない材料から構成されるにしても、以下に更に説明するように例えばバルーンの拡張による力によって拡張可能な材料から形成されることが好ましい。フレームワーク1906及びカラー1910は、金属線やポリマーフィラメントからなるメッシュ、ワイヤや管状ステントの構造物、或いは他の適切な構造物であっても良い。フレームワーク1906及びカラー1910は一括して一体成形されるか、或いは夫々別々に形成され、その後結合されるものでも良い。カラー1910は十分に拡張できるものであり、部分的或いは完全に拡張した際には、動脈の内壁と接触するように適切に寸法決めされる。弁フラップ1912は、上述した弁構造に類似する形で構成されることが好ましい。例えば、弁フラップ1912は各々、フィラメント構造、又はポリマーコーティングで被覆された他のメッシュを有するかもしれない。弁フラップは、血液及び/又は造影剤の通過を可能にするように構築されるかもしれないし、或いはそのような流体を通さないかもしれない。弁フラップ1912は、同じサイズでアヒルの口ばしのような形の2枚のフラップ1912(図21A)でも、同じ寸法の3枚以上のフラップ1912’(図21B)でも、或いは異なるサイズのフラップ1912a”、1912b”(図21C)であっても良い。各実施形態において、フラップの遠位部分は、内カテーテル1904の通路として円形の開口部1913を共に規定するように形成されるかもしれない(破線で示す)。制御部材1908により、外・内カテーテル1901、1904に対して弁1905を収納形態と展開形態の間で進行・退縮させることができる。或いは、内カテーテル1904に弁1905を直接結合し、外カテーテル1901に対して内カテーテルを移動することで、弁1905を収納形態と展開形態の間で移動させるようにしても良い。第1の収納形態では、フレームワーク1906とカラー1910は、外カテーテル1901によって半径方向に制約を受け、フラップ1912は(弁を介した内カテーテル1904の挿入に先立ち)互いに対して閉じた状態に保持される(図21A〜21C)。図19に示す第2収納形態においては、フレームワーク1906、カラー1910及び弁1905は外カテーテル1901内部において半径方向に抑制されたままであり、内カテーテル1904は弁フラップ1912を通って延ばされる。第1の展開形態においては、制御部材1908を操作することで弁1905を外カテーテル1901の遠位端から外に出し、遠くへと進行させ、カラー1910は、弁フラップ1912の近位端が動脈壁1920に近接するまで自己展開が許容される(図22)。或いは、弁1905が内カテーテル1904に対して結合される場合、内カテーテルは制御部材として機能し、内カテーテルと外カテーテルは互いに対して移動され、弁を外カテーテルの遠位端から外へと進行させて同じ展開形態にする。第1の展開形態においては、弁1905は動脈通路を通る血液1922aの前方流れにより開弁を余儀なくされる。塞栓剤1924は、内カテーテル1904を経て注入され、血液の前方流れ1922aは動脈1920を伴う塞栓剤1924の進行を防止する。血液の流れが遅く静的又は逆行する流れ1922bと変化する際には、弁は、圧流条件によって第2の展開形態へと動的に変化し、この状態において弁フラップ1912の遠位端は内カテーテル1904に接する(図23)。これにより、如何なる塞栓剤も弁を超えた逆流が防止される。
【0075】
図24を参照するに、送達装置1900に実質上類似した、別実施形態としての送達装置2000には弁2005が設けられる。弁2005は、近位の拡張可能なフレームワーク2006、オプションとしてフレームワーク2006の近位端に結合された1つ又はそれ以上の制御部材2008a、2008b、フレームワーク2006の遠位端に位置する中央カラー2010及び管状弁スリーブ2012を備えている。スリーブ2012は、上述した如何なる弁に類似した形で、例えばポリマーコーティングが施されたフィラメント構造物を伴って構築されることが好ましいが、他の構造物からなるものでも良い。収納形態では、スリーブ2012は、内カテーテル2004をスリーブから延ばした状態で、送達装置200の外カテーテル2001と内カテーテル2004の間に位置する。内カテーテル2004に対し外カテーテルを据え付け、外カテーテルに対して内カテーテルを進行させることで、或いは制御部材2008a、2008bを操作してスリーブを外カテーテル2001と内カテーテル2004の双方に対して移動することで、スリーブ2012を、外カテーテル2001に対して進行させ、展開形態にさせるようにしても良い。弁2005のカラー2010が外カテーテルからどのように解放されるかに関係なく、ひとたび解放されたならばカラー2010は拡張して動脈壁2020と接触し、弁2012を展開させる。血液は弁と内カテーテルの間に流れるかもしれない(図25)。血液の流れ2012bが遅いか静的か、或いは逆流する場合に生じる第2の展開形態においては、弁スリーブ2012は内カテーテル2004に対して接することになる(図26)。
【0076】
図27に、別実施形態としての送達装置2100が示される。送達装置2100は、カテーテル2101に結合された弁2105を備えている。弁2105は、カラー2117によってそれらの近位端で結合された複数の支柱2116を備えている。適切なフィルター材2118が支柱2116間に延設される。送達装置2100は又、カテーテル2101に結合されたガード2126を備えており、弁2105が非展開形態にある場合に支柱2116の遠位端から動脈壁2120を保護するようになっている。送達装置2100はバルーン2124の形の制御部材を備えており、バルーンは拡張された際には支柱に半径方向力を付与し、支柱を十分に曲げてガード2126から弁を解放する。この結果、弁2105は展開した形態となる。バルーン2124は、内カテーテル2104の専用ルーメン、別個の拡張カテーテル、或いは他のいずれの適切なシステム(図30〜32に関して下記に説明するようなもの)を使用することで拡張しても良い。展開した形態では血液の前方流れが弁の外部で許される(図28)。しかしながら、静的な流れ(2122b)や遅い流れ、或いは逆流においては、弁2105は変化する流動条件に応じて迅速かつ動的に応答し、動脈壁2120に対して完全に開弁し、弁を通過する塞栓剤の流れを防止する(図29)。
【0077】
図30〜32に、別実施形態としての送達装置2200が示される。カテーテル2201は外制御部材バルーン2234を備えている。弁2205はバルーン2234上に設けられ、円周方向に変位された支柱2216を横切って伸びる濾過材2212を備えている。バルーンは支柱間で半径方向にセンタリングされて位置決めされる。バルーン2234はカテーテル2201のルーメン2228との連通する圧力弁2235を備えている。閉塞先端2242が設けられたガイドワイヤ2240は、カテーテル2201のルーメン2228を通って進行する。閉塞先端2242は圧力弁2235を過ぎて進行する(図31)。その後、生理食塩水等の注入液2234がカテーテルルーメン2228内に注入される。図32を参照するに、十分な流体と圧力が与えられて注入液は圧力弁2235内に入りバルーン2234を満たす。バルーン2234は充満されて高圧となり、その後封止状態となって低圧条件への漏出を防ぐ。バルーン2234は充満されて高圧状態であるため、弁2205と接してこれを展開形態へと移動させる。その後、ガイドワイヤ2240はカテーテル2201から回収されることになるかもしれない。その後、弁は、カテーテル2201を通る塞栓剤注入に関連して上述したように使用される。処置が終わった後は、カテーテル2201を後方へと引き、外カテーテル(図示せず)の中に入れるようにし、弁2205と外カテーテルの遠位端の間の接触が、圧力弁2235に打ち勝って、圧力弁を解放させ、バルーン2234を収縮させ、患者からの回収のため弁に非展開形態を再びとらせるようにしても良い。
【0078】
図33に、別実施形態としての送達装置2300が示される。装置は、外カテーテル2301、外カテーテルを通して延びる内カテーテル2304及び弁2305を備え、同弁は、内カテーテル2304に結合されるか、又は独立した制御部材2308によって作動される拡張可能なワイヤ・フレームワーク2306と、フレームワークに結合された拡張可能なカラー2310と、カラーから延びるテーパー付き第1のスリーブ部分2311と、第1のスリーブ部分から延びる第2スリーブ部分2312と、を有する。収納された形態(図示せず)では、内カテーテル2304、フレームワーク2306、制御部材2308、カラー2310及びスリーブ部分2311、2312は、外カテーテル2301内に保持され、動脈2320内部の関連部位に向かって進行する。展開された形態では、内カテーテル2304は、外カテーテル2301の遠位端から外へと進められ、制御部材2308は装置の近位端から操作され、フレームワーク2306、カラー2310及びスリーブ2311、2312を、内カテーテル2304の上で外カテーテル2301の外へ展開させる。カラー2310は、テーパーが付いた第1のスリーブ2311の近位端を拡張して動脈壁2320に隣接させる。前方への血流2322aがある間、血液は、吹き流しを通る空気と同様に、内カテーテル2304とスリーブ2311、2312の間を流れる。しかしながら、少なくとも第2のスリーブ2312は逆の血流状態2322bに応じて潰れるように構成されるため、塞栓剤はスリーブ2311、2312の外側に接触するがこの部分を通過することはできない。
【0079】
図34〜36には、別実施形態としての送達装置2400が示されている。その送達装置2400は、その遠位端に自己展開式の形状記憶ループ(又はカラー)2410を付けた制御部材2408を備えている。弁2412はループ2410から延設される。弁2412は開口した遠位端2413を備える。制御部材2408は操作され、動脈の処置部位へと進行した外カテーテル2401の遠位端2403へと弁2412を進める。図35を参照するに、制御部材2408はその後、操作されて外カテーテル2401の遠位端2403からループと弁を出し、ここでループは自動的に拡張し、弁2412の近位端を動脈壁2420に対向させるか、隣接するように位置させる、その後、図36に示すように、内カテーテル2404は、外カテーテル2401を介して進められ、更にフィルタ弁2412の開口した遠位端2413を通って十分進められる。塞栓剤2424が内カテーテル2404から注入される。血液は、内カテーテル2404とフィルタ弁2412の間を前方へと吹くことになるかもしれない。血流が逆行する間、ループ2410は、動脈壁2420に対しその直径を保持するが、フィルタ弁2412の遠位及び中心部分は、変化する血圧に応じ、内カテーテル2404に対して動的に潰れ、弁を過ぎた塞栓剤2424の逆流を防止する。
【0080】
図37に別の実施形態としての送達装置2500を示す。送達装置2500は、カテーテル2501、カテーテル2501周りでそのカテーテル又は第1制御部材2532に結合された第1カラー2530、第1カラー2530から変位されてカテーテル周りに位置しかつ第2制御部材2536に結合された第2カラー2534、第1、第2カラー2530、2534間に延びる複数の支柱2516、及び支柱2516の少なくとも一部分、好ましくは第2カラー2534上に延びる弁スリーブ2512を備える。図38を参照するに、操作にあって、第2制御部材2536がカテーテル2501及び/又は第1制御部材2532(即ち、第1カラー2530が結合されるどちらか)に対して退縮されると、支柱2516は外方へ撓むことを余儀なくされ、これにより弁スリーブ2512の近位端を動脈壁2520に対して移動させることになる。塞栓剤2524をカテーテル2512を介して注入しても良い。前方へと進行する血液2522aは弁スリーブ2512とカテーテル2501の間に流れるかもしれない。図39を参照するに、血液がその流動方向2522bを変えた場合、弁スリーブ2512にかかる圧力の迅速な変化により、弁スリーブは、カテーテル2501に対して潰れるその遠位端と共に動的に反応し、塞栓剤2524の逆流を防止する。送達装置2500は、第2制御部材2536に対して第1制御部材2532を近位へ移動させることで、支柱2516をストレート状にして折り畳み、これにより弁スリーブ2512の直径を縮小した状態で回収されるかもしれない(図40)。
【0081】
上述したどの実施形態でも、弁の後方に出口を持つルートを介して外カテーテルを制御可能に洗浄することは望ましいことかもしれないということを理解されたい。そのような出水には造影剤、生理食塩水などが含まれるかもしれない。図41を参照するに、一実施形態としての洗浄弁は、外カテーテル2601に1つ以上の開口スリット2640を備えている。サイドストッパ2642が、外、内カテーテル2601、2604の間の環状空間内に設けられる。或いは、ストッパ2642は、その内部に内カテーテルを設けない外カテーテル2601に対して設けられるかもしれない。サイドストッパ2642は制御部材2644の遠位端に結合される。閉じた状態で制御部材2644の近位端が操作され、サイドストッパ2642を開口スリット2640の閉塞位置に配し、この部分を介する流体通過を防止させる。洗浄可能にするためには、制御部材2644の近位端が操作され、サイドストッパ2642を開口スリット2640に対して近位か遠位(図示)のいずれかに配し、スリットを介して流体を洗い流す。図42には、外カテーテル2701にスリット弁2740を組み込んだ洗浄システムの別の実施形態が示されている。そのようなスリット弁2740は通常、閉じた状態にある。しかしながら、圧力下で洗浄を適用することにより、スリット弁2740は開かれ、洗浄水のカテーテルからの抜け出しが可能になる(図43)。
【0082】
図44に別実施形態としての弁展開装置2800を示す。装置2800は、長手方向に位置を変えた2つの置き換えられたマイクロカテーテル2801、2802と、それらの間に位置する動的な弁2805とを備えている。より詳しく言えば、最も近位側の第1マイクロカテーテル2801は、好ましくは0.69mmの内径、0.97mmの外径を有する“ハイフロー”型のマイクロカテーテルであり、その近位端2801aに近位のルアコネクタ2803又は他の適当なコネクタを備え、更に遠位端2801bを有している。遠位側の第2マイクロカテーテル2802は、好ましくは近位面2802cを持った近位端2802a、0.53mmの小内径、及び第1マイクロカテーテルと同じ0.97mmの外径を有している。弁2805は、好ましくは、その近位端2805bにおいて第1マイクロカテーテル2801の遠位端2801bに融合され、かつその遠位端2805bにおいて第2のマイクロカテーテル2802の近位端2802bに融合されるブレイドを備える。ブレイドは、非展開状態から展開状態へと半径方向に自己拡張するように自然にバイアスがかけられる。ここで、非展開状態の弁(以下に記述する)は第1、第2マイクロカテーテルの外径とほぼ等しい直径を持し、展開状態では直径は実質的にそれより大きくなる。ブレイドは、上述した幾つかの弁に関連して記述したポリマーコーティングが施された近位部分2805cを備える一方、ブレイドの遠位部分2805dにはコーティングが施されず、流体の通過を可能にする“開口した設計”となっている。
【0083】
更に装置2800は、好ましくは0.53mmの内径と0.64mmの外径を有する薄壁の管状細長部材2850を備える。管状部材2850は、長手方向の安定性のため、好ましくは軸方向に延びる外周ワイヤ2854又は上鞘2856を備えたワイヤコイル2852の形態であることが最も好ましい。コイル管状部材は、トオーイボースト・アダプタのようなルアコネクタ2803とロックするためのハブ2858を設けた近位端2850a、及び遠位端2850bを有する。コイル管状部材2850がルアコネクタ2803に挿入された際には、第1マイクロカテーテル2801及び弁2805を通り、その遠位端2850bが第2マイクロカテーテル2802の近位面2802cに当接する。コイル管状部材2850は、完全に第1マイクロカテーテル2801内へ進んだ状態で第2マイクロカテーテル2802の近位端2802aが第1マイクロカテーテル2802の遠位端2801bから十分な距離を以て隔てられ、以て弁に張力を付与して弁を伸長させ、その直径を血管内進行に適したかなり小さな非展開直径へと抑制するような、サイズとなっている。装置2800はこの形態において、製造時パッケージ及び/又は殺菌パッケージとして提供されるようにしても良い。
【0084】
図45を参照するに、標準的な0.356mmのガイドワイヤ2860が装置2800用として提供される。ガイドワイヤ2860は、ハブ2858とルアーコネクタ2803を通り、更に第1マイクロカテーテル2801、弁2805、第2マイクロカテーテル2802を通って挿入される。ガイドワイヤ2860は塞栓部位へと進められ、その後、装置2800がガイドワイヤ上をその部位に向かって進められる。
【0085】
図46はガイドワイヤ2860が回収された状態を示しており、コイル管状部材2850はルアーコネクタ2803から解放され、第1マイクロカテーテル2801から取り除かれ、弁2805の動脈壁(図示せず)への拡張を可能にしている。その後、塞栓剤2824が第1マイクロカテーテル2801を介して注入され、弁のコーティングされていない遠位部分2805dと第2マイクロカテーテル2802を介して流出する。重要なこととして、弁2805は、その遠位端において第2マイクロカテーテルに結合されるが、心収縮と心拡張中の血圧の変化から生じる流動条件に対して迅速に調整する動的な弁であるということである。即ち、心収縮による血液の前方流動時においては、コーティングを施した弁の近位部分2805cが潰れて弁の周りに血液が流れるのを可能にしつつ、心拡張によって生じる血液の遅い流れ又は静的流、或いは逆行して流れる際には、コーティングを施した弁の近位部分が脈壁に向かって開口し、どんな塞栓剤の通過をも防止するようになっている。
【0086】
図47を参照するに、処置後、マイクロカテーテル2801、2802と弁2805を有する装置を単純に動脈から回収しても良く、それは自動的に弁を折り畳むことになる。しかしながら、オプションとして、コイル管状部材2805を折り畳みの補助として再挿入しても良く、更にガイドワイヤ2860をオプションとして再挿入し、患者から逆方向のトラッキングを容易にしても良い。このような除去方法の如何にかかわらず、ブレイド角度はその折り畳みによりサイズが減少し、塞栓剤が通過するにはあまりにも小さすぎる開口部を形成するため、弁を折り畳んだ上で弁内に残留する如何なる塞栓剤2824も、元の状態に戻った弁内に捕捉されたままとなることが理解されよう。
【0087】
図48及び49に、実質的に展開装置2800に類似する、別実施形態としての弁展開装置2900を示す。装置2900は長手方向に位置を変えた2つの置き換えられたマイクロカテーテル2901、2902と、それらの間に位置する動的な弁2905とを備えている。より詳しく言えば、最も近位側の第1マイクロカテーテル2901は、好ましくは0.69mmの内径、0.97mmの外径を有する“ハイフロー”型のマイクロカテーテルであり、その近位端2901aにコネクタ2903を備えかつ遠位端2901bを有している。遠位側の第2マイクロカテーテル2902は、好ましくは近位面2902cを持った近位端2902a、0.53mmの小内径、及び第1マイクロカテーテルと同じ0.97mmの外径を有している。弁2905は、好ましくは、その近位端2905bにおいて第1マイクロカテーテル2901の遠位端2901bに融合され、かつその遠位端2905bにおいて第2のマイクロカテーテル2902の近位端2902bに融合されるブレイドを備える。ブレイドは、上述した幾つかの弁に関連して記述したポリマーコーティングが施された近位部分2905cを備える一方、ブレイドの遠位部分2905dにはコーティングが施されず、流体の通過を可能にする“開口した設計”となっている。
【0088】
装置2900は、更にガイドワイヤ2960のような細長部材を備える。ガイドワイヤ2960は、好ましくは0.45mmの直径を有し(他の寸法でもよい)、その近位端2960aに隣接するハブ2958と、その遠位端2960bに隣接する、好ましくはX線不透過性の指標帯2962とを備えている。指標帯2962は、第2マイクロカテーテルの内径より大きく、従って近位面2902cに当接するようになっている。実際の長さか“しるし”、或いは第1マイクロカテーテル2901の近位端2901a又は指標帯2962の遠位端からのガイドワイヤ間のストッパによって固定長が示されている。ガイドワイヤは、指標帯が第2マイクロカテーテルの近位面に突き当たる上記固定長を以て第1マイクロカテーテルに挿入され、結果としてこのことが弁を潰れた形状へと至らしめる。その後、ガイドワイヤを備えた装置は目標に向かって進められる。ひとたび目標に到達したならば、ガイドワイヤは装置から取り除かれる。
【0089】
図50を参照するに、装置の使用に関しては、図46に関連して上述した装置のそれと実質的に類似するものである。弁2905は動脈壁(図示せず)に向かって拡張する。その後、塞栓剤2924が第1マイクロカテーテル2901を介して注入され、弁のコーティングされていない遠位部分2905dと第2マイクロカテーテル2902を介して流出する。重要なこととして、弁2905は、その遠位端において第2マイクロカテーテルに結合されるものだが、心収縮と心拡張中の血圧の変化から生じる流動条件に対して迅速に調整する動的な弁であるということである。即ち、心収縮による血液の前方流動時においては、コーティングを施した弁の近位部分2905cが潰れて弁の周りに血液が流れるのを可能にしつつ、心拡張によって生じる血液の遅い流れ又は静的流、或いは逆行して流れる際には、コーティングを施した弁の近位部分が脈壁に向かって開口し、どんな塞栓剤の通過をも防止するようになっている。
【0090】
図51を参照するに、処置後、マイクロカテーテル2901、2902と弁2905を有する装置は、単にそれを動脈から退縮させることで回収でき、それは結果として弁を折り畳むことにもなる。しかしながら、オプションとして、ガイドワイヤ2960を再挿入することで弁2905を折り畳むようにしても良い。ブレイド角度はその折り畳みにより減少し、塞栓剤が通過するにはあまりにも小さすぎる開口部を形成するため、弁を折り畳んだ上で弁内に残留する如何なる塞栓剤2924も、元の状態に戻った弁内に捕捉されたままとなることが理解されよう。
【0091】
ここに記述したどの実施形態においても、弁の構成部品は展開と退縮の際の摩擦力を低めるためにコーティングを施すようにしても良い。構成部品は又、弁に沿って血栓形成を低めたり、治療学や生物学や塞栓症治療との互換性を持たせる上でコーティングを施すようにしても良い。構成部品は、退縮の際に塞栓剤が除去されるように塞栓剤との結合性を高めるようにコーティングを施すようにしても良い。
【0092】
本発明の1つの特徴によれば、蛍光透視法のもとでの容易な視覚化のためにカテーテル本体とメッシュに夫々別個の標識が付けられるかもしれない。カテーテル本体には、例えばカテーテル管組織にX線不透過性材料を混ぜ合わせるといったような当該技術に知られた如何なる手段を用いて標識を付けることができる。X線不透過性材料については、硫酸バリウム、次炭酸ビスマス、その他の材料であっても良い。その代わりとして、或いはこれに加えるようにして、X線不透過性リングを白金、白金イリジウム、金、タンタルなどから製造し、これをカテーテル上に配置するか圧着することも可能である。弁には、リングのようなX線不透過性要素を1本又は複数本のフィラメントに圧着することで標識化することも可能である。その代わりとして、或いはこれに加えるようにして、X線不透過性媒体をブレイドとフィルタの材料へ合成することが可能である。さもなければ、前述したように1本又はそれ以上のフィラメントを選び、これを白金イリジウムのようなX線不透過性材料で作るようにしても良い。
【0093】
ある実施形態では、弁は、シングルルーメン或いはマルチルーメンカテーテルかもしれないカテーテルに取り付けられる。好ましくは、カテーテルは塞栓剤を送達するため少なくとも1本のルーメンを使用する。しかしながら、他の実施形態としては、カテーテルに展開前の弁を格納するのに役立つルーメンか、或いはそれを介して弁を送達するためのルーメンを設けるようにしても良い。弁の展開を制御するために制御部材を使用するような場合、所望なら、1本又は複数本のルーメンに展開と退縮のための制御ワイヤを含ませるようにしても良い。或いはこの代わりに、制御部材を延設させるカテーテルに、その中を制御ワイヤが延びるような、長手方向に開口した溝を備えさせるようにしても良い。例えば塞栓剤を投与した後の動脈洗浄用として、或いは弁と共に使用する可能性のあるバルーンの制御用として、その様な目的の流体を投与するために追加のルーメンを使用しても良い。
【0094】
上記の装置及び方法は、主として、体内管に生体液(例えば血液)の近位・遠位流動を可能にすると共に、弁を通って近位方向に向かう輸液の逆流を防止するシステムに向けられてきた。遠位方向への血液の流れを減じるため弁も又、最適化され得ることを理解されたい。弁の半径方向の力はブレイド角を調節することにより調整することができる。半径方向の力を調整することで、血液の流れを50パーセント以上にまで減少するが可能である。一例としてあげるならば、130°より大きなブレイド角が、弁を過ぎて遠位方向に流れる血流を著しく縮小するとしたならば、約150°のブレイド角により血流の速度は50〜60パーセント遅くなる。その他のブレイド角は末端血流を多様に減少することが可能とある。減少された末端血流は、脳と脊髄の動静脈奇形治療のために末端血流が減じられる所謂“ウェッジ”法の代わりに使用することができる。弁によってひとたび血流が遅くなったならば、シアノアクリルのような接着剤を目標部位に塗布するようにしても良い。
【0095】
以上、血管内塞栓剤の逆流を低減、又は防止する装置及び方法に関し、多数の実施形態を掲げ説明してきた。本発明の特定実施形態を説明したが、本発明はその範囲において当該技術が認めるのと同じくらい広いものであり、明細書においても同様に読まれるべきであり、本発明がこれら特定実施形態に制限されることは意図するものではない。従って、例えばカテーテル、スリーブ・制御要素、制御スレッド付き布スリーブなど、保護弁のための特定の展開手段を説明したが、例えばバルーン、衝撃吸収スリーブ、或いはそれらの組合せなど、他の展開機構もまた使用可能であることを理解されたい。同様に、弁フィラメント用、弁フィルタ用、カテーテル用及び展開手段用として様々な材料はリストアップしたが、夫々に対し、その他の材料も又使用可能であることを理解されたい。又、本発明を人間の特定の動脈に関連して説明してきたが、本発明は、人間と動物の如何なる血管や、腺管を含む他の導管に対しても適用可能であることを理解されたい。特に、本装置は又、肝臓や腎臓や膵臓の癌治療においても使用可能である。更に、それらの近位端が当該技術では良く知られた形態を含む様々な形態のいずれかとることが可能なため、各実施形態はそれらの遠位端に関して記述してきた。ほんの一例として掲げるが、例えば近位端は2種のハンドルを備えることができる。1つは内(送達)カテーテルに接続されたものであり、他の1つは外カテーテル、スリーブ又は作動ワイヤ(又はストリング)に接続されたハンドルである。1つのハンドルを他のハンドルに対して第1の方向に移動することにより弁を展開し、適用可能なら、そのハンドルを反対の第2の方向に動かすことで元の状態に戻すようにしても良い。ハンドルの配置構造によっては、ハンドル同士を互いに離反又は接近した際に、弁の展開が起こるようにしても良い。よく知られているように、ハンドルは双方間の直線運動や回転運動のために配置することができる。所望なら、互いに対する各ハンドルの動きを視覚的に測定することができ、それが開弁の程度を示すものとなるように、内カテーテルの近位端に、カテーテルに沿って間隔をおいてハッシュマークやその他の指標を設けるようにしても良い。従って当業者であるならば、ここで提供した発明の精神及び請求の範囲を逸脱することなく更に別の実施形態も可能であることを理解するであろう。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17A】
【図17B】
【図18A】
【図18B】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【公表番号】特表2013−512735(P2013−512735A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542173(P2012−542173)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058641
【国際公開番号】WO2011/068924
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144911)シュアファイア メディカル,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/058641
【国際公開番号】WO2011/068924
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(512144911)シュアファイア メディカル,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
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