説明

塩を含有するアラミドポリマーのための湿式紡糸の改良方法

状態調節溶液に接する間に1:1を超える延伸比を用いる、少なくとも3重量%の塩含量を有するメタ−アラミドポリマー溶液の湿式紡糸。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、タイ(Tai)らに付与された特許文献1の「塩を含有するアラミドポリマーのための湿式紡糸方法(Wet Spinning Process for Aramid Polymer Containing Salts)」の改良である。本出願は、高塩含量溶液の湿式紡糸によって製造されるメタ−アラミド繊維の一段湿式延伸を組み込んだ方法を開示する。本発明者らは、本方法によって製造された繊維の機械的特性が、さらに改良できることを見いだした。
【0002】
【特許文献1】米国特許第5,667,743号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、
(a)溶媒濃度が凝固溶液の約15〜25重量%、および塩濃度が凝固溶液の約30〜45重量%になるように、塩と溶媒の混合物を含有する水性凝固溶液内で、ポリマーを繊維に凝固して、凝固溶液を摂氏約90〜125の温度に維持する工程と、
(b)繊維を凝固溶液から取り出して、それを溶媒、塩、および水濃度が、座標W、X、Y、およびZによって境界が定められる図1で示される面積で画定されるように溶媒および塩の混合物を含有する水性状態調節溶液に接触させ、状態調節溶液を約20〜60℃の温度に維持する工程と、
(c)繊維を延伸溶液の10〜50重量%の溶媒濃度、および延伸溶液の1〜15重量%の塩濃度を有する水性延伸溶液中で延伸する工程と、
(d)繊維を水で洗浄する工程と、
(e)繊維を乾燥させる工程と
を含んでなり、
工程(b)で用いられる状態調節溶液と接する間に繊維を延伸することを改良点とし、延伸が1:1を超える延伸比をかけて達成される、米国特許第5,667,743号明細書で開示された、ある濃度のポリマー、溶媒、水、および3重量%を超える塩(溶液総重量を基準として)を含有する、溶媒紡糸溶液からのメタ−アラミドポリマーの湿式紡糸の改良方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明は、タイ(Tai)らに付与された米国特許第5,667,743号明細書の改良方法であるので、この公報と比べて本明細書でも同様の表現および同様の開示が存在する。
【0005】
用語「湿式紡糸」とは、ここでの用法では、液体凝固浴に浸された吐糸管を通じてポリマー溶液が押し出される、紡糸方法と定義される。凝固浴はポリマーに対し概して、非溶媒である。
【0006】
熱間伸展(stretch)または熱間伸展(stretching)という用語は、ここでの用法では、繊維がポリマーのガラス遷移温度に近いまたはそれを超える温度に加熱され、同時に繊維が延伸または伸張される工程を定義する。例えばポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)では、ガラス遷移温度は約250℃以上である。延伸は典型的に、異なる速度で走行するロール間で繊維が動く間にそれを伸張して達成される。熱間伸展工程では繊維が延伸され、また結晶化もされて、機械的特性を発現する。
【0007】
ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)、(MPD−I)およびその他のメタ−アラミドは、いくつかの基礎的方法によって重合されてもよい。例えば米国特許第3,063,966号明細書、米国特許第3,287,324号明細書で開示されるものなど。これらの方法から形成されるポリマー溶液は、塩が豊富であってもよく、塩が皆無でも、または少量の塩を含有してもよい。少量の塩を有するとして述べられるポリマー溶液は、3.0重量%を超えない塩を含有する溶液である。重合、または塩が皆無のまたは低塩含量溶液に対する塩の添加のいずれかから帰結する塩含量が少なくとも3重量%でさえあれば、これらのポリマー溶液のいずれを本発明の方法によって湿式紡糸してもよい。
【0008】
紡糸溶液中の塩含量は、概して重合反応で形成される副生成物酸の中和から生じるが、さもなければ塩が皆無のポリマー溶液に塩を添加して、本方法に必要な塩濃度を提供しても良い。
【0009】
本方法で使用しても良い塩としては、カルシウム、リチウム、マグネシウムまたはアルミニウムよりなる群から選択されるカチオンを有する塩化物または臭化物が挙げられる。塩化カルシウムまたは塩化リチウム塩が好ましい。塩は塩化物または臭化物として添加されてもよく、またはカルシウム、リチウム、マグネシウムまたはアルミニウム酸化物または水酸化物の重合溶液への添加によって、アラミド重合からの副産物酸の中和から生成してもよい。所望の塩濃度はまた、中和された溶液にハロゲン化物を添加して、中和から得られる塩含量を紡糸のために所望されるレベルに増大させることで達成されても良い。本発明において、塩混合物を使用することも可能である。
【0010】
溶媒は、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのプロトン受容体としても機能する溶媒よりなる群から選択される。ジメチルスルホキシド(DMSO)もまた、溶媒として使用してもよい。
【0011】
本発明は、少なくとも25モル%(ポリマーに対して)の式、[−CO−R−CO−NH−R−NH−]、(I)を有する反復構造単位を含有するアラミドからできた繊維の製造のための方法に関する。
【0012】
1分子中のRおよび/またはRは、全く同一の意味を有することができるが、それらはまた所定の定義の範囲内で、分子内で異なることができる。
【0013】
および/またはRが、その原子価結合が互いにメタ位にあるまたは比較できる角度の位置にあるあらゆる二価の芳香族ラジカルを表すのであれば、これらは単核または多核芳香族炭化水素ラジカル、またはその他の単核または多核であることができる複素環式−芳香族ラジカルである。複素環式−芳香族ラジカルの場合、これらは芳香族核内に、特に1つまたは2つの酸素、窒素、またはイオウ原子を有する。
【0014】
多核芳香族ラジカルは、互いに縮合でき、またはC−C結合を通じて、または例えば−O−、−CH−、−S−、−CO−またはSO−などの架橋基を通じて互いに結合できる。
【0015】
その原子価結合が互いにメタ位にあるまたは比較できる角度の位置にある多核芳香族ラジカルの例は、1,6−ナフチレン、2,7−ナフチレンまたは3,4'−ビフェニルジイルである。このタイプの単核芳香族ラジカルの好ましい例は、1,3−フェニレンである。
【0016】
特に、直接紡糸できるポリマー溶液を製造することが好ましく、それは繊維形成物質として、少なくとも25モル%(ポリマーに対して)の上で定義した式Iの反復構造単位を有するポリマーを含有する。直接紡糸できるポリマー溶液は、溶媒中で、式II、HN−R−NH(II)を有するジアミンと、式III、ClOC−R−COCl(III)を有するジカルボン酸二塩化物とを反応させて製造される。
【0017】
好ましいメタ−アラミドポリマーは、少なくとも25モル%の(ポリマーに対して)MPD−Iを含有するMPD−Iまたはコポリマーである。
【0018】
本発明の方法のポリマー紡糸溶液中では、塩および溶媒の多数の組み合わせが成功裏に使用できるかもしれないが、塩化カルシウムとDMAcとの組み合わせが最も好ましい。
【0019】
本方法を連続プロセスとして使用して繊維を製造しても良い。連続プロセスの例を図2のダイアグラムに示す。ポリマー紡糸溶液は、ポリマー温度を調節する熱交換器を通して貯蔵タンクから汲み上げられ、紡糸溶液定量ポンプ(1)の入口にデリバリされる。次にポリマーを定量ポンプを通じ供給ラインを通して吐糸管(3)に、そして最終的に吐糸管(4)を通して汲み上げる。吐糸管は90〜125℃の範囲で温度制御される凝固溶液の表面下に伸びる。本方法の凝固溶液は、凝固浴が125°Cを超える温度に維持されても成功裏に状態調節できる繊維を生じる。実際には、理論的でないが、135℃を超える温度では、溶媒損失が概して溶媒代替物質および/または回収の費用効率を超えるので、DMAc溶媒システムでは凝固浴温度は、約135℃の上限操作温度に制限される。凝固溶液は凝固浴(5)(紡糸浴と称されることもある)内に収容される。繊維束は凝固浴内で形成され、第1のロール上に凝固浴を出る(6)。
【0020】
次に凝固溶液を出た繊維を繊維を可塑化状態に保つ状態調節溶液に接触させながら、湿式延伸する。図1に示すように、状態調節溶液濃度が座標W、X、Y、およびZによって画定される領域内であることが不可欠である。これらの座標は、20〜60℃の温度で、繊維構造からの溶媒の拡散を制限し、可塑化ポリマー繊維を維持する溶媒、塩、および水の組み合わせを画定する。座標:W(20/25/55)、X(55/25/20)、Y(67/1/32)、およびZ(32/1/67)は、それぞれ溶媒/塩/水の総状態調節溶液の重量%として提示される。状態調節溶液は、状態調節浴、状態調節スプレー、ジェット抽出モジュール、またはそれらの組み合わせ(7)の使用を通じて、好ましくはジェット抽出モジュールの使用を通じて、典型的に塗布される。適切な延伸のため、溶液が繊維を状態調節するために、状態調節溶液が繊維束中の各個々のフィラメントに接触することが最重要である。本発明の状態調節溶液は、溶媒によって繊維が膨潤して可塑化されるように、繊維中で溶媒濃度を維持する。次に可塑化繊維は破損することなく、完全に延伸されてもよい。延伸の張力下では、ポリマーが延伸形態に押し込まれると、あらゆる大きな空隙は崩壊する。
【0021】
次に例えば2組のロール(6)および(8)を使用して、間で状態調節溶液を塗布して(7)繊維を延伸する。繊維をこの様式で延伸する場合、ロール速度を状態調節延伸の入り口、および状態調節延伸の出口で調節し、所望の延伸比を得る。ここでの用法では「延伸比」とは、単位重量の糸あたりの元の長さに対する最終長さの比率を意味する。ロール速度は調節されて、1:1を超える延伸比を達成する。6:1を超える延伸比を用いることができるが、概してこのような比率は増大する繊維損傷および/または破損の可能性のために、それほど望ましくない。延伸比の好ましい上限は6:1である。好ましい範囲は3:1〜6:1であり、より好ましい範囲は4:1〜5.5:1である。
【0022】
本方法は、凝固工程、状態調節延伸工程、および任意のその後の延伸工程中で、従来のアラミド染色加工によって容易に染色できる繊維を発現させる。良好な物理特性を完成するのに、乾燥以外の熱処理を必要としないので、繊維はその染色性を損なう加熱によって改変される必要がない。
【0023】
本方法によって形成される繊維は、状態調節および延伸浴を通じて湿式延伸され、従来の乾燥紡糸工程や、多段延伸および/または熱間伸展、またはタイ(Tai)らに付与された米国特許第5,667,743号明細書で述べられるような、一段延伸を伴う状態調節を必要とする湿式紡糸工程によって達成されるものに優る物理特性を生じる可能性がある。
【0024】
状態調節処理および状態調節延伸段階を出た繊維は、引き続くその後の延伸段階で再度延伸してもよい。繊維は、水、塩、および溶媒を含有する延伸溶液を使用して湿式延伸してもよく、溶媒濃度は、状態調節溶液中の溶媒濃度未満であるように選択される。繊維は、2組のロールの間(9)にある時に、繊維が延伸溶液に接触する、2組のロール(8)および(10)を使用して延伸してもよい。延伸溶液は、延伸浴、延伸スプレー、ジェット抽出モジュール、またはそれらの組み合わせ(9)の使用を通じて典型的に塗布されてもよい。延伸浴の入り口および延伸浴の出口のロール速度を調節して、所望の延伸比を得ることができる。6と同程度に高い延伸比がこの工程で有用なことが分かった。延伸溶液の濃度範囲は10〜50重量%のDMAc、好ましくは10〜25重量%のDMAcである。塩濃度は好ましくは4重量%を超えず、延伸溶液の15重量%程度に高くあることができる。塩は延伸溶液との接触によって繊維から除去されるので、溶液中に塩が存在する。典型的に方法によって維持される塩濃度は、4%を超えない。4%を超えて塩含量増大させることが所望ならば、追加的な塩を添加してもよい。延伸溶液の温度は、20〜80℃に維持される。
【0025】
全ての湿式延伸が完了した後、繊維を洗浄セクション(11)において水で洗浄する。繊維を洗浄するのに使用する方法は、好ましくはジェット抽出モジュールの使用によるが、繊維から溶媒および塩を除去するあらゆる手段または機器を使用しても良い。洗浄後、例えば一組のニップロール(12)を使用して繊維の水含量を低下させ、繊維を乾燥させて(13)、次に最終用途のために加工してもよい。あるいは繊維を乾燥させ、次にホットシュー上の、または加熱ロール上のホットチューブ(14)に繊維を通過させることで追加的熱処理を施して、結晶化を引き起こしてもよい。繊維は典型的に約120〜125℃で乾燥させ、所望ならばはるかにより高温で結晶化しても良い。結晶化は、ポリマーのガラス遷移温度を超える温度で、繊維を加熱ロールの間に通過させることで典型的に達成される。MPD−Iでは、実質的な結晶化を達成するのに必要な熱処理は、250℃以上の温度を必要とする。繊維は結晶化に先だって延伸できるので、繊維を熱間伸展して高粘着性繊維を発現することは本方法の要件ではない。したがって結晶化のための熱処理は、非常に低いまたは皆無の延伸で達成でき、延伸浴の出口を通って仕上げ浴(15)までにわずかな追加的延伸が必要である。
【0026】
本発明の方法は、円形、マメ型またはドッグボーンをはじめとする、多様な繊維形状を得ることを可能にする。溝付孔吐糸管を使用してリボン型を製造してよく、三つに分かれた形の横断面を「Y」形孔吐糸管から製造しても良い。
【0027】
試験方法
インヘレント粘度(IV)は、式:IV=ln(hrel)/c(式中、cはポリマー溶液濃度(溶媒100ml中0.5gのポリマー)であり、hrel(相対粘度)は30℃で毛細管粘度計中で測定されたポリマー溶液と溶媒との間のフロータイム比率である。)によって定義される。ここで報告され、特定されるインヘレント粘度値は、4重量%塩化リチウムを含有するDMAcを使用して判定される。
【0028】
ASTM D885の手順に従って、繊維および糸の物理特性(モジュラス、粘着性、および破断点伸び)を測定した。繊維および糸の捻れは、デニールにかかわらずインチあたり(1.2センチメートルあたり)3回であった。
【0029】
本方法の異なる段階における湿式紡糸繊維の横断面の検査は、繊維形態学に対する洞察を提供する。乾燥させた繊維の横断面を提供するために繊維サンプルをミクロトーム切断したが、繊維は延伸または洗浄を受けていないため、繊維構造が繊維単離工程中に過度の影響を受けないことを確実にするために、特別な取り扱いが必要であった。横断切り出し工程中に繊維構造を保存するために、工程から凝固したまたは凝固して状態調節した繊維を除去して、それが取り出されたのと同様の組成物の溶液に入れた。約10分間後、この溶液の容積の約半分を除去し、約0.1重量%の界面活性剤を含有する等容積の水で置き換えた。この繊維サンプルが含有される溶液の容積のおよそ半分を界面活性剤添加水で置き換える工程を、ほぼ全ての元の溶液が界面活性剤添加水で置き換わるまで継続した。次に液体から繊維サンプルを除去し、約110℃の循環空気オーブン内で乾燥させた。次に乾燥させた繊維をミクロトーム切断して、顕微鏡下で検査した。
【0030】
以下の例では、特に断りのない限り全ての部および百分率は重量を基準とし、度は摂氏である。
【実施例】
【0031】
実施例1
メタフェニレンジアミンとイソフタロイル塩化物とを反応させて、連続重合プロセスでポリマー紡糸溶液を調製した。9.71部のDMAcに溶解した1部のメタフェニレンジアミン溶液をクーラーを通じてミキサー内に計量供給し、その中に1.88部の溶融イソフタロイル塩化物を同時に計量供給した。混合物を配分して、組み合わせた試薬のフローを選択して乱流混合をもたらした。溶融イソフタロイル塩化物を約60℃で供給し、メタフェニレンジアミンを約−15℃に冷却した。反応混合物を32の長さ対直径比を有する被覆付きスクラップ壁熱交換器内に直接導入し、配分して約9分間のホールドアップ時間を得た。熱交換器溶出液は中和剤中に連続的に流れ、その中には反応溶液中の1ポンドのポリマーあたり0.311ポンドの水酸化カルシウムが連続的に添加された。中和されたポリマー溶液を真空下で加熱して水を除去し、溶液を濃縮した。得られたポリマー溶液はポリマー紡糸溶液であり、下で述べる紡糸工程で使用された。
【0032】
このポリマー紡糸溶液は、4.0%のDMAc中塩化リチウム中での測定で、1.55のインヘレント粘度を有した。この紡糸溶液中のポリマー濃度は、19.3重量%であった。紡糸溶液はまた、8.9重量%の塩化カルシウムおよび約0.5重量%の水も含有した。DMAcの濃度は71.3重量%であった。
【0033】
この溶液を撹拌される溶液タンク(1)に入れ、およそ90℃に加熱して、次に定量ポンプ(2)の手段によって供給し、それぞれ直径50.8μm(2ミル)の20000個の孔を有する3本の吐糸管(3)を通して濾過した。紡糸溶液を重量で18%のDMAc、40%の塩化カルシウム、および42%の水を含有する凝固溶液中に直接押出した。凝固溶液(4)を約118℃に維持した。
【0034】
凝固溶液を出た繊維束を(20.5ft/m)の速度を有するロールセットに巻き付けた(6)。重量で53.5%のDMAc、2.2%の塩化カルシウム、および44.3%の水を含有する状態調節溶液を繊維束と接触させて、繊維束をロールセットから(6)ロールセット(8)に(82.0ft/m)の速度で巻き付ける間に、各個々のフィラメントを湿潤した。ロ−ル速度の違いからは、延伸比(4.0)が生じた。状態調節溶液は40℃であった。
【0035】
ロールセット(8)を出た繊維束を重量で21%のDMAc、2%の塩化カルシウム、および77%の水を含有する延伸溶液に接触させ、繊維束の各個々のフィラメントを湿潤した。次に繊維束を(82.0ft/m)の速度でロールセット(10)に巻き付けて、湿式延伸ゾーン延伸中で(1.0)の延伸比を得た。
【0036】
湿式延伸後、フィラメントを洗浄セクションに供給し、繊維を70℃の水で洗浄した。洗浄セクションは5個のジェット抽出モジュールから構成された。洗浄した繊維をロールセット(10)と同一速度でロールセット(12)に巻き付けた。加工の残りの部分で、繊維に追加的延伸または伸張は行わなかった。
【0037】
水洗に続いて、繊維を125℃で乾燥させた。熱間伸張または結晶化工程に曝さなくても、繊維は良好なテキスタイル特性を有した。この繊維の物理特性は、デニール(2dpf)、粘着性(5.0gpd)、伸張38.1%、モジュラス(73.7gpd)であった。
【0038】
実施例2〜6
繊維は、実施例1で述べられる湿式紡糸であった。凝固溶液内のDMAc、CaCl、および水濃度は、それぞれ17.7〜18重量%、39.5〜40.7重量%、および41.3〜42.8重量%の範囲であった。状態調節溶液中のDMAc、CaCl、および水の濃度は、それぞれ53.5〜53.7重量%、2.2〜3.5、および43.0〜44.3重量%の範囲であった。延伸溶液中のDMAc、CaCl、および水の濃度は、それぞれ20.8〜21.3重量%、2.0〜2.4重量%、および76.3〜77.1重量%の範囲であった。状態調節ゾーンの延伸、および延伸ゾーンの延伸で適用されるロール速度および延伸比を表IおよびIaに示す。ロール速度を分あたりフィート(ft/m)で示す。得られた繊維特性を表IIに示す。連続プロセスで使用される工程および様々なロールを図2、および上の本発明の詳細な説明で同定する。
【0039】
実施例A
実施例Aは状態調節工程中に延伸が適用されない比較である。
【0040】
繊維は実施例1で述べた湿式紡糸であった。凝固溶液の濃度は、18重量%のDMAc、40重量%のCaCl、および42重量%の水であった。状態調節溶液の濃度は、53.6重量%のDMAc、3.4重量%のCaCl、および43重量%の水であった。延伸溶液の濃度は21重量%のDMAc、2.3重量%のCaCl、および76.7重量%の水であった。ロール速度および関連した延伸比を表IおよびIaに示す。ロール速度を分あたりフィート(ft/m)で示す。得られた繊維の特性を表IIに示す。前述の操作モードに従った連続プロセスで使用される工程および様々なロールを図2で同定する。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の状態調節溶液の組成を図解し、領域は座標W、X、Y,およびZによって境界が定められる。
【図2】本発明の実施において使用してもよい加工工程および技術のダイアグラムを図解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)溶媒濃度が凝固溶液の約15〜25重量%、および塩濃度が凝固溶液の約30〜45重量%になるように、塩と溶媒の混合物を含有する水性凝固溶液内で、ポリマーを繊維に凝固して、凝固溶液を摂氏約90〜125℃の温度に維持する工程と、
(b)繊維を凝固溶液から取り出して、それを溶媒、塩、および水の濃度が、座標W、X、Y、およびZによって境界が定められる図1で示される面積で画定されるように溶媒および塩の混合物を含有する水性状態調節溶液に接触させ、状態調節溶液を約20〜60℃の温度に維持する工程と、
(c)繊維を延伸溶液の10〜50重量%の溶媒濃度、および延伸溶液の1〜15重量%の塩濃度を有する水性延伸溶液中で延伸する工程と、
(d)繊維を水で洗浄する工程と、
(e)繊維を乾燥させる工程と
を含んでなり、
工程(b)の状態調節溶液と接する間に1:1を超える延伸比をかけて繊維を延伸することを改良点とする、
ある濃度のポリマー、溶媒、水、および少なくとも3重量%の塩を含有する、溶媒紡糸溶液からのメタアラミドポリマーの湿式紡糸の方法。
【請求項2】
状態調節溶液を通じた延伸比が3:1〜6:1の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
状態調節溶液を通じた延伸比が4:1〜5.5:1の範囲である、請求項2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−510073(P2007−510073A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538349(P2006−538349)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/036119
【国際公開番号】WO2005/042814
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】