説明

塩素を有する合成樹脂の判別器

【課題】 種々のプラスチック類から塩素を有するプラスチックを複雑な装置を要することなく簡便、明瞭、迅速かつ安価に選別する。
【解決手段】 銅材からなる加熱体とこの加熱体を他の部材へ着脱自在に固着するための係合手段とで構成し、あるいは有炎ガス燃焼手段と、この有炎ガス燃焼手段に設けられて少なくともその端部はガス燃焼による炎の外炎による加熱可能位置に設定された銅材加熱体とにより構成される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本願考案は、塩素化合物を有する合成樹脂の判別器に関し、詳しくは、合成樹脂片を燃焼炎中で銅触媒下に加熱し、銅の炎色反応による緑色炎の発生の有無により、樹脂試料が塩素化合物を有する合成樹脂であるか否かを判別する技術に関するものである。
【0002】
【考案の背景】
今日、多くのプラスチック素材が生活のあらゆる分野に浸透しており、その利便性は多言を要しない。しかしながら、このようなプラスチック製品もいったん廃棄するとなると容易ではなく、環境破壊の最たるものとして社会的な指弾を受けることになる。 すなわち、ほとんどのプラチックは、耐バクテリア性を有していてこれを腐食分解することができないからである。
そこで、一部リサイクルに供される場合を除き、ほとんどのプラスチックは焼却処分されているのが現状である。
【0003】
然るに、プラスチックの種類によっては焼却の際に有害物質の発生が不可避のものがある。 例えば、塩素を有する塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等、組成元素に塩素を有する合成樹脂は、焼却により有毒塩素ガスを発生する。 したがって、プラスチック類の廃棄物を焼却処理する場合には、これらの中から塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等を選別除去してなす必要がある。 しかしながら、種々のプラスチック廃棄物の中から塩素を有する合成樹脂を簡便に選別することは、これまで困難であった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本願考案に係る判別器は、塩素を含有するプラスチックか否かを簡単かつ迅速に判別するためになされたもので、 銅材からなる加熱体とこの加熱体を他の部材へ着脱自在に固着するための係合手段を具え、この係合手段はバンド式縛着手段で構成されている。
【0005】
前記構成において、前記係合手段は加熱体を構成する銅線の一端ににより一体に形成した螺旋状部で構成することがある。
【0006】
また、判別器を、有炎ガス燃焼手段と、この有炎ガス燃焼手段に設けられて少なくともその端部はガス燃焼による炎の外炎による加熱可能位置に設定された銅材加熱体と、により構成することがある。
【0007】
さらに、前記構成において、前記銅材加熱体は、有炎ガス燃焼手段へ固着可能な係合手段を具え、有炎ガス燃焼手段に対して着脱自在に構成することがある。
【0008】
さらにまた、前記構成において、前記係合手段と加熱体とは銅線により一体に形成し、係合手段は銅線に形成した螺旋状部で構成するとともこの螺旋状部を被覆して有炎ガス燃焼手段の火口近傍に装着するように構成することがある。
【0009】
また、前記構成において、係合手段はバンド式縛着手段で構成することがある。
【0010】
【考案の実施形態】
図面にもとづいてこの考案の実施の形態を説明する。
図1は、判別器の第1実施形態を示す側面図で、図において1は判別器であり、この判別器1は、通直形状の加熱体2と他の部材への係合手段としての螺旋状部3とを有してなり、適宜径を有する銅線により一体に形成されている。
そして、前記螺旋状部3には螺旋径に対応するロッド状部材Lを着脱自在に嵌合できるようになっている。なお、螺旋状部3は、樹脂材等により被覆することもある。これは、樹脂材の弾性力によりロッド状部材Lとの着脱を容易にする、あるいは加熱体2の加熱時に熱の伝導を減殺する等を目的としている。
【0011】
図2は、判別器1の第2実施形態を示す図である。この実施形態で、加熱体2は適宜径の銅線またはロッド状の銅材で形成されている。この加熱体2には、判別器1を他の部材に着脱可能に固着するための係合手段として周知のバンド式縛着手段4が設けられていて、加熱体2はバンド4aの内側に形成した抱持部4bに挿入されており、バンド4aにより他の部材を縛着することにより、判別器1を他の部材へ着脱自在に固着することができる。なお、加熱体2と抱持部4bとの間には適着の断熱材を介在させることもある。
【0012】
次に上記構成に基づいて、判別器1の使用方法を説明する。図1において、螺旋状部3に持ち手として適宜のロッド状部材Lを挿入してこれを手に把持して、ガス炎により加熱体2を加熱する。 次いで、判別の対象であるプラスチックに加熱体2を当接させてプラスチックを熔融させ、加熱体2の先端に少量のプラスチックを付着させる。 そして、ガスコンロ、ガスバ−ナ−等のガス炎高温域である外炎におてプラスチックの付着した加熱体2の先端を加熱する。 銅の炎色反応は、元来青緑であるが、対象プラスチックに塩素が存在する場合、強熱により、炎色は、鮮やかな緑色に変化するが、塩素を有しないプラスチックの場合にはこのような鮮明な緑色は得られない。
このような銅による炎色は、次ぎのように考えられる。 すなわち、単体では安定している銅原子は、塩素の存在により炎中でイオン化されこの銅イオンが励起されて輝線スペクトルの放出を容易にし、上記のような反応を呈すると思われる。 このように、本願に係る判別器によれば、極めて簡単・明瞭にプラスチックにおける塩素の存否を判別できる。
【0013】
図3は、本願考案に係る判別器の第3実施形態を示す側面図である。
図において、1Aは判別器であり、有炎ガス燃焼手段としてのガスコンロその他のガス器具の着火に用いられる長尺型ライタ−5と、この長尺型ライタ−5の長筒部5aの火口5b側の端部に着脱可能に設けられた加熱体2とから構成されている。銅の線材から形成される加熱体2の先端は、図4に示すようにガス燃焼による炎Fの高温域、すなわち外炎F1による加熱が可能な位置に設置されている。また、3は、加熱体2を前記長筒部5aへ着脱可能に固着する係合手段としての螺旋状部で銅の線材により加熱体2と一体に形成されている。
なお、螺旋状部3は、樹脂材等により被覆して、その弾性力に長筒部5aとの着脱をより容易にすることもある。
なおまた、該実施形態では、有炎ガス燃焼手段としての長尺型ライタ−5を使用した例を述べたが、長尺型ライタ−に替えて通常の喫煙用のいわゆる使い捨て型ライタ−を使用することもできる。
【0014】
図5は、本願考案に係る判別器の第4実施形態を示す側面図である。
図において、1Bは、判別器であり、6は有炎ガス燃焼手段としての通常の喫煙に用いられるいわゆる使い捨て型ライタ−と、このライタ−6胴部に着脱可能に設けられた加熱体2とから構成されている。銅の線材から形成される加熱体2の先端は、ガス燃焼による炎Fの高温域、すなわち外炎F1による加熱が可能な位置に設置されている。また、7は加熱体2を前記ライタ−6胴部へ着脱可能に固着する係合手段としての周知のバンド式縛着手段である。バンドと加熱体2の関連構成は、前述した図2に示す場合と同一であるので説明は省略する。
【0015】
次ぎに、前述の構成に基づき、図3および図5に示す実施形態に係る判別器の使用方法を説明する。
図3、4において、まず、ライタ−着火させて、加熱体2を加熱する。次いで、判別の対象であるプラスチックに加熱体2を当接させてプラスチックを熔融させ、加熱体2の先端に少量のプラスチックを付着させる。
プラスチックが付着したところで、再びライタ−を着火させ、加熱体2の先端を炎の高温域である外炎部で加熱する。
前述したように、対象プラスチックに塩素が存在する場合、強熱により、炎色は、鮮やかな緑色に変化するが、塩素を有しないプラスチックの場合にはこのような鮮明な緑色は得られない。以降の詳細は
【0012】に記述したとうりである。
【0016】
【考案の効果】
この考案に係る判別器は、以上説明したように、塩素を有する合成樹脂の判別器を、銅材からなる加熱体とこの加熱体を他の部材へ着脱自在に固着するための係合手段とで構成し、あるいは有炎ガス燃焼手段と、この有炎ガス燃焼手段に設けられて少なくともその端部はガス燃焼による炎の外炎による加熱可能位置に設定された銅材加熱体とにより構成したので、種々のプラスチック類から塩素を有するものを簡単、明瞭かつ迅速に判別することができる。したがって、例えば、プラスチック廃棄物の焼却処分にあたって、有毒ガスを発生するプラスチックを事前に容易に選別除去できるので、環境破壊防止等に資するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願考案に係る判別器の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】本願考案に係る判別器の第2実施形態を示す斜視図である。
【図3】本願考案に係る判別器の第3実施形態を示す側面図である。
【図4】図3に示す実施形態におけるガス炎と加熱体との位置関係を示す一部切欠側面図である。
【図5】本願考案に係る判別器の第4実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
1、1A、1B.........判別器
2...............加熱体
3...............係合手段(螺旋状部)
4、7.............係合手段(バンド式縛着手段)
5、6.............有炎ガス燃焼手段

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 銅材からなる加熱体とこの加熱体を他の部材へ着脱自在に固着するための係合手段を具え、この係合手段はバンド式縛着手段であることを特徴とする塩素を有する合成樹脂の判別器。
【請求項2】 請求項1において、前記係合手段は加熱体を構成する銅線の一端にこれと一体に形成した螺旋状部で構成したことを特徴とする塩素を有する合成樹脂の判別器。
【請求項3】 有炎ガス燃焼手段と、この有炎ガス燃焼手段に設けられて少なくともその端部はガス燃焼による炎の外炎による加熱可能位置に設定された銅材加熱体と、を具えてなる塩素を有する合成樹脂の判別器。
【請求項4】 請求項3において、前記銅材加熱体は、有炎ガス燃焼手段へ固着可能な係合手段を具え、有炎ガス燃焼手段に対して着脱自在になしたことを特徴とする塩素を有する合成樹脂の判別器。
【請求項5】 請求項4において、前記係合手段と加熱体とは銅線により一体に形成するとともに、係合手段は銅線を螺旋状に形成して有炎ガス燃焼手段の火口近傍に装着するようにしたことを特徴とする塩素を有する合成樹脂の判別器。
【請求項6】 請求項5において、前記螺旋状に形成される係合手段を構成する銅線には被覆をなしたことを特徴とする塩素を有する合成樹脂の判別器。
【請求項7】 請求項4において、係合手段は加熱体の一端に取り付けたバンド式縛着手段であることを特徴とする塩素を有する合成樹脂の判別器。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【登録番号】実用新案登録第3064204号(U3064204)
【登録日】平成11年9月8日(1999.9.8)
【発行日】平成12年1月7日(2000.1.7)
【考案の名称】塩素を有する合成樹脂の判別器
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平11−3586
【出願日】平成11年5月24日(1999.5.24)
【出願人】(396005302)株式会社セフティ・サポート・サービス (1)