説明

境界音場制御の原理を用いた音場再現システム

【課題】ハイエンドリスニングルーム等の音響空間が有する高品質な音響効果をコンパクトなBoSC再生室において再現する、境界音場制御(BoSC)の原理を用いた音場再現方法及び音場再現装置を提供する。
【解決手段】BoSCの原理に基づいて設計されたBoSC録音システムを用いて所定の音響空間の音響空間内伝達関数p(t)を算出する(ステップS1)。また、所定の演算によりBoSCの原理に基づいて設計されたBoSC再生システムのシステム関数h(t)を算出する(ステップS2)。さらに、関数p(t)、h(t)を用いて音響付きシステム関数c(t)を算出する(ステップS3)。読取部11が読み取った音信号s(t)を、信号変換部22が予め関数内蔵部21に内蔵された音響付きシステム関数c(t)により変換し、BoSC再生室30に配されたBoSC再生システム31から出力する(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原音場を物理的に忠実に記録・再現することができる、境界音場制御(Boundary Surface Control: BoSC)の原理を用いた音場再現技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、音楽等をより高品質で楽しむことを目的として、各種音響効果を向上させるべく、空間の形状や壁面の素材、アンプやスピーカーなどのオーディオ装置等に工夫を凝らした大規模なオーディオルームや、高価なハイエンドリスニングルームなどが設計されている。これらの空間においては、聴者は音源から直接耳に達する直接音と壁などに反射して到達する反射音を、高品質な総合音として聴くことができ、臨場感あふれる音楽等を楽しむことができる。
【0003】
一方、本願発明者らは、BoSCの原理を用いることにより、原音場を物理的に忠実に記録・再現することのできる三次元音場再現システムとして没入型聴覚ディスプレイシステム(BoSC再生システム)を開発した。
【0004】
BoSCの原理によれば、その領域を囲む境界面上の音圧と音圧勾配を制御することにより、3次元音場内の任意の領域内の音圧を制御することができる。ここで制御を厳密に行うためには、境界面における音圧・音圧勾配制御点を波長よりも十分短く離散化しておく必要がある。上記BoSC再生システムは、コンパクト化を目的として、境界面を聴者の頭部周辺とし、その内部での忠実な音場再現を目的としたものである(特許文献1、非特許文献1、2)。
【0005】
BoSC再生システムは、システムの利用者(聴者)の頭部周辺の領域において音場を再現する4層の架台から成る楕円形のドーム部と、該ドーム部を支える4本の柱部で構成され、楕円形のドーム部の各層には合計62個のフルレンジスピーカーが配置されている。境界面を構成するマイクロホンアレイはC80フラーレンを基に設計された構造を持ち、70個のマイクロホンにより構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-118559号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】伊勢史郎,「キルヒホッフ−ヘルムホルツ積分方程式と逆システム理論に基づく音場制御の原理」,日本音響学会誌,第53巻(1997)第9号, pp. 706-713
【非特許文献2】岡田耕介, 川口孝幸, 榎本成悟, 伊勢史郎,「コンパクトな没入型聴覚ディスプレイの試作と評価」,日本音響学会誌,第62巻(2006)第1号, pp. 32-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の通り、大規模なオーディオルームやハイエンドリスニングルームでは音響効果に影響を及ぼすあらゆる要素について工夫が凝らされている。そのため、これらは非常に高価なものとなる。さらに、高度に反射音を制御して残響効果を高めるには広い空間を必要とするため、個人で所有することは極めて困難である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、個人で所有することが極めて困難な、大規模なオーディオルームやハイエンドリスニングルームにおける高品質な音響効果を、家庭内に設置可能な、BoSC再生システムを配したBoSC再生室において再現することができる、BoSCの原理を用いた音場再現方法、及びこの方法を利用した音場再現装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された、本発明に係る音場再現方法は、境界音場制御の原理に基づき設計された録音システム及び再生システムを用いる方法であって、
a) 前記録音システムを用いて所定の音響空間の音響空間内伝達関数を算出し、
b) 前記音響空間内伝達関数と前記再生システムのシステム関数から、音響付きシステム関数を算出し、
c) 所望の音信号を前記音響付きシステム関数により変換して、前記再生システムで再生する
ことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために成された、本発明に係る音場再現装置は、境界音場制御の原理に基づき設計された再生システムを用いる装置であって、
a) 所望の音信号を読み取る読取部と、
b) 境界音場制御の原理に基づき設計された録音システムを用いて算出した所定の音響空間の音響空間内伝達関数と、前記再生システムのシステム関数から、予め算出された音響付きシステム関数を用いて、前記音信号を変換する信号変換部と、
c) 前記信号変換部により変換された音信号を再生する、前記再生システムを配した再生室と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る方法及び装置を用いれば、非常に高価であったり、あるいは広い空間を要するために、個人で所有することが極めて困難であった、大規模なオーディオルームやハイエンドリスニングルーム等の音響効果を、家庭内に設置できるコンパクトなBoSC再生室において手軽に楽しむことができる。また、様々な空間の音響効果を再現する音響付きシステム関数を用いることにより、複数空間の音響効果を楽しむこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】BoSC理論による音場再生の原理を示す説明図であり、左側が原音場、右側が再現音場。
【図2】BoSCの原理に基づき設計されたBoSC録音システム(a)、及びBoSC再生システム(b)の例を示す図。
【図3】リスニングルームの例を示す図。
【図4】本発明に係る音場再現方法の一実施例の手順を示す図。
【図5】本発明に係る音場再現装置の一実施例を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の基礎となるBoSCの理論は、原音場で収音された境界面S上の音圧と粒子速度を再現音場においてそれぞれ等しくなるように二次音源から信号を出力すれば、図1の左の原音場内の領域V内の音場が右の再現音場内の領域V'に忠実に再現される、というものである。
【0015】
本発明者はこのBoSCの理論に基づき、特願2010-043335号などにおいて、図2に示すような三次元音場再現システムを提案している。この音場再現システムは、図2(a)に示すBoSC録音システムと、図2(b)に示すBoSC再生システムから成る。
【0016】
図2(a)のBoSC録音システムは、仮想的な境界面を構成するマイクロホンアレイから成り、三次元音場をできるかぎり精細に収録すること、組立時や設置時の構造的な安定性とを考慮して、C80フラーレン(Fullerene)の構造を基に、底部の10個の頂点を切り取った70個の頂点を持つ、直径約46cmの球形に近い構造である。各頂点の位置にはそれぞれ1個の無指向性マイクロホン(DPA4060-BM)を設置している。
【0017】
図2(b)のBoSC再生システムは、62個のスピーカーユニットから成り、その基台は、約1.2m×1.6m×2.0mの防音ボックスであるBoSC再生室内に設けられた木製の4層の架台からなる楕円形のドーム部と、ドーム部を支える木製の4本の柱部から構成される。4層の各架台には上からそれぞれ6個、16個、24個、16個のフルレンジユニット(Fostex FE83E)が設置されている。またドーム部の各架台と柱部の内部は空洞になっており、架台自体が密閉型エンクロージャの役割を果たす。また、受聴者の耳の高さは、フルレンジスピーカーの数が最大となる3層目の架台の高さを想定している。
【0018】
この音場再現システムでは、BoSC再生システムの各スピーカーから出力される音信号をBoSC録音システムの各マイクロホンで収録し、各スピーカーから各マイクロホンへの音響伝達特性を測定する。これにより、各スピーカーから各マイクロホンへの音響伝達関数を得ることができる。そして、二次音源であるスピーカーからの出力信号が境界面S'上の制御点で原音場を忠実に再現するように、音響伝達関数の逆フィルタ群(以下、「システム関数」とする)を入力信号に畳み込んでスピーカーから出力させる。これにより、境界面S'上で原音場を再現させることができる。
【実施例1】
【0019】
本発明に係る音場再現方法は、上記のBoSC音場再現システムを用いたものであり、大規模なオーディオルームやハイエンドリスニングルームなど高価な音響設備が施された空間における音響効果を、家庭などにおいても簡単に再現することを目的としたものである。以下、本発明に係る音場再現方法の一実施例について、図2〜4を用いて説明する。
【0020】
[音響空間内伝達関数の算出(ステップS1)]
まず、図2(a)のBoSC録音システムを用いて、大規模なオーディオルームやハイエンドリスニングルーム等の所定の音響空間における音響伝達特性を測定する。図3に、リスニングルーム(日東紡音響エンジニアリング株式会社のSound Laboratory)の例を示す。図3のリスニングルーム1内には音源である2本のスピーカーの他に、拡散壁など音響効果を高めるための各種設備が設けられている。このリスニングルーム1は、中央部の受聴エリア2で最も高品質な音響が楽しめるように設計されている。本実施例では、図3中の受聴エリア2に図2(a)のBoSC録音システムを設置することにより(ステップS11)、この空間における音響伝達特性を測定する。
【0021】
音響伝達特性の測定は、リスニングルーム1内の各スピーカーkから所定の所定の音信号x(t)を出力し、受聴エリア2に設置したBoSC録音システムにより録音して各マイクロホンnにおける収録信号ykn(t)を取得する、ことにより行われる(ステップS12)。この際の音信号x(t)としては、周波数を連続的に変化させたスイープ信号であるTSP(Time Stretched Pulse)信号を用いることができる。TSP信号を用いる場合、その周波数帯域は人間の可聴域とほぼ同等の20Hz〜20kHzとしても良いが、周波数帯域を拡張して10Hz〜100kHz等とすることが望ましい。
【0022】
なお、図3の例ではリスニングルーム1内のスピーカーの数は2であるが、以下ではこれをKに一般化して説明を行う。また、BoSC録音システムのマイクロホンの数とBoSC再生システムのスピーカーの数もそれぞれN、Mに一般化して説明する。
【0023】
ステップS12で音響伝達特性の測定に用いた音信号x(t)とその収録信号ykn(t)とから、次式によりリスニングルーム1内の伝達関数(以下、「音響空間内伝達関数」とする)p(t)を求める(ステップS13)。
【数1】

なお、式中のF、F-1は、それぞれフーリエ変換、逆フーリエ変換を示しており、音響空間内伝達関数p(t)の要素pkn(t)は、リスニングルーム1内のスピーカーkからBoSC録音システムのマイクロホンnへの音響伝達特性を示している。
【0024】
[BoSC再生システムのシステム関数の算出(ステップS2)]
一方、BoSC再生システムにおけるシステム関数(逆フィルタ群)の算出は以下のように行われる。まず、BoSC再生システム内の受聴エリアにBoSC録音システムを設置する(ステップS21)。続いてBoSC再生システムの各スピーカーmからTSP信号を出力し、BoSC録音システムの各マイクロホンnにより収録し、音響空間内伝達関数p(t)と同じ手順でBoSC再生システム内の伝達関数(以下、「BoSC再生システム内伝達関数」とする)g(t)を算出する(ステップS22)。なお、このBoSC再生システム内伝達関数g(t)はM×N行列であり、その要素gmn(t)はスピーカーmからマイクロホンnへの音響伝達特性を示している。
【0025】
次に、以下のようにgmn(t)をフーリエ変換したGmn(ω)を要素とするG(ω)を求める。
【数2】

このG(ω)を用いて、次式によりBoSC再生システムにおける逆システムH(ω)を算出する。
【数3】

ここで、Gh(ω)はG(ω)の複素共役転置行列であり、INはN×Nの単位行列である。また、β(ω)は正則化パラメータとして知られるもので、伝達システムの安定性を考慮して計算周波数毎に最適化されている。
このようにして得られたH(ω)を逆フーリエ変換することにより、BoSC再生システムのシステム関数h(t)を算出することができる(ステップS23)。
【数4】

【0026】
[音響付きシステム関数の算出(ステップS3)]
以上のステップで算出された音響空間内伝達関数p(t)にBoSC再生システムのシステム関数h(t)を畳み込むことにより、所定の音響空間内の音響効果を再現するための音響付きシステム関数c(t)が算出される。
【数5】

ただし、*は時間領域における畳み込み演算を示している。
【0027】
以上が、所定の音響空間(本実施例では図3のリスニングルーム1)における音響効果を再現するための準備ステップである。
【0028】
[音楽信号の変換・再生(ステップS4)]
本ステップでは、ステップS3で算出された音響付きシステム関数c(t)を、所望の音信号s(t)=(s1(t) ... sK(t))に畳み込み、BoSC再生システムの各スピーカーからs(t)*c(t)により変換された信号を出力することにより、所定の音響空間の音響効果をBoSC再生システムで再現させる。
【0029】
なお、音信号s(t)のチャンネル数が音響空間内のスピーカーの数Kと同じでない場合には、コンバータ等を用いてチャンネル数をKに整合させれば良い。
【実施例2】
【0030】
上記実施例1では、音響空間内伝達関数p(t)、BoSC再生システムにおけるシステム関数h(t)をそれぞれ時間の関数として算出し、これらを用いて音響付きシステム関数c(t)を算出したが、以下のように周波数の関数を用いる方法により音響付きシステム関数c(t)を算出しても良い。
【0031】
まず、音響空間内伝達関数をP(ω)とし、以下の式により算出する。
【数6】

次いで、音響空間内伝達関数P(ω)とBoSC再生システムにおける前記逆システムH(ω)から、以下の式により音響付きシステム関数c(t)を算出する。
【数7】

これにより、実施例1と同じ音響付きシステム関数c(t)を算出することができる。なお、実施例1の方法では逆フィルタ群h(t)をBoSC再生システムにおけるシステム関数としたが、実施例2の方法では、逆システムH(ω)がBoSC再生システムにおけるシステム関数となる。
【0032】
次に、図5を用いて、本発明に係る音場再現装置の構成を説明する。
本発明に係る音響空間再現装置は、読取部11、関数内蔵部21、信号変換部22、及び再生部30を備える。本実施例において、読取部11は一般的な音響装置等において用いられる読取装置である。関数内蔵部21及び信号変換部22は、図5に示すようにコンピュータ20により一体的に構成されており、キーボード及びマウスにより構成される入力部40を用いて利用者が適宜操作を行うことができる。また、再生部30はBoSCの原理に基づいて設計されたBoSC再生システム31を配したBoSC再生室である。BoSC再生システム31は所定数のアンプとスピーカーからなる出力部311、及びD/A変換部312により構成される。
【0033】
読取部11は市販のCD等の媒体から音信号s(t)を読み取り、その音信号s(t)を信号変換部22に送信する。信号変換部22は、上述の方法により予め算出され、関数内蔵部21に内蔵されている音響付きシステム関数c(t)を読み出し、これを用いて音信号s(t)をs(t)*c(t)に変換し、D/A変換部312に送信する。読取部11には、音信号s(t)のチャンネル数を音響付きシステム関数c(t)と整合する所定のチャンネル数に変換するコンバータを備える事が望ましい。これにより、チャンネル数が異なる多様な音信号s(t)を使用することができる。
【0034】
D/A変換部312は、信号変換部22から受信した音信号s(t)*c(t)をアナログ信号に変換し、出力部311のアンプを通じて各スピーカーから出力する。これにより、利用者はコンパクトなBoSC再生室30において、ハイエンドリスニングルームや大規模なオーディオルームなど、所望の音響空間が有する音響効果を手軽に楽しむことができる。
【0035】
さらに、予め複数の音響付きシステム関数c(t)を関数内蔵部21に内蔵しておけば、利用者は適宜入力部40を用いて音信号s(t)の変換に使用する音響付きシステム関数c(t)を切り替えることにより、一つのBoSC再生室30で、複数空間の音響効果を手軽に楽しむことができる。また、新たな音響空間の音響付きシステム関数c(t)を算出して所定の記録媒体に記録し、これを用いて関数内蔵部21に新たな音響付きシステム関数c(t)を内蔵させれば、随時新たな音響空間の音響効果を追加して楽しむことができる。さらに、既に内蔵部21に内蔵されている音響付きシステム関数c(t)を所定の記録媒体に記録しておけば、その記録媒体を用いて、他の場所に設置された音場再現装置でも同様に音響効果を楽しむことができる。
【0036】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜変形や修正を行えることは明らかである。例えば、コンピュータ20にデータ読取部11を含め、関数内蔵部21、信号変換部22と合わせて一体的に構成することができる。また、入力部40はより簡便な操作のみを行うリモートコントローラ等とすることもできる。その他、前記BoSC録音システムのマイクロホン数や前記BoSC再生システムのスピーカー数は、BoSCの原理に基づいて設計されたものである限り、適宜増減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…リスニングルーム
2…受聴エリア
11…読取部
20…コンピュータ
21…関数内蔵部
22…信号変換部
30…BoSC再生室
31…BoSC再生システム
311…出力部
312…D/A変換部
40…入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
境界音場制御の原理に基づき設計された録音システム及び再生システムを用いる方法であって、
a) 前記録音システムを用いて所定の音響空間の音響空間内伝達関数を算出し、
b) 前記音響空間内伝達関数と前記再生システムのシステム関数から、音響付きシステム関数を算出し、
c) 所望の音信号を前記音響付きシステム関数により変換して、前記再生システムで再生する
ことを特徴とする音場再現方法。
【請求項2】
前記音響空間において所定の音信号を出力し、該音響空間内に設置した前記録音システムにより該所定の音信号を録音して収録信号を生成し、前記所定の音信号及び前記収録信号から前記音響空間内伝達関数を算出することを特徴とする請求項1に記載の音場再現方法。
【請求項3】
前記所定の音信号がTSP信号であることを特徴とする請求項2に記載の音場再現方法。
【請求項4】
前記音響空間の音源数がK、前記録音システムのマイクロホン数がN、前記再生システムの音源数がMであるとき、
a) 前記所定の音信号と前記収録信号から、時間の関数を要素とするK行N列の行列である前記音響空間内伝達関数を生成し、
b) 前記音響空間内伝達関数と、時間の関数を要素とするN行M列の行列である前記再生システムのシステム関数の畳み込み演算により、時間の関数を要素とするK行M列の行列である前記音響付きシステム関数を算出する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の音場再現方法。
【請求項5】
前記音響空間の音源数がK、前記録音システムのマイクロホン数がN、前記再生システムの音源数がMであるとき、
a) 前記所定の音信号と前記収録信号から、周波数の関数を要素とするK行N列の行列である前記音響空間内伝達関数を生成し、
b) 前記音響空間内伝達関数と、周波数の関数を要素とするN行M列の行列である前記再生システムのシステム関数の積を算出し、これを逆フーリエ変換することにより時間の関数を要素とするK行M列の行列である前記音響付きシステム関数を算出する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の音場再現方法。
【請求項6】
前記録音システムが、C80フラーレン構造の底部の10個の頂点を切り取った70個の頂点位置に各々無指向性マイクロホンを備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の音場再現方法。
【請求項7】
前記再生システムが、4層の架台から成るドーム部と、該ドーム部を支える4本の柱部により構成され、該ドーム部の上層の架台から順に6個、16個、24個、16個のフルレンジスピーカーを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の音場再現方法。
【請求項8】
境界音場制御の原理に基づき設計された再生システムを用いる装置であって、
a) 所望の音信号を読み取る読取部と、
b) 境界音場制御の原理に基づき設計された録音システムを用いて算出した所定の音響空間の音響空間内伝達関数と、前記再生システムのシステム関数から、予め算出された音響付きシステム関数を用いて、前記音信号を変換する信号変換部と、
c) 前記信号変換部により変換された音信号を再生する、前記再生システムを配した再生室と、
を備えることを特徴とする音場再現装置。
【請求項9】
前記音響付きシステム関数が、前記音響空間において所定の音信号を出力し、該音響空間内に設置した前記録音システムにより該所定の音信号を録音して収録信号を生成し、前記所定の音信号及び前記収録信号から算出された前記音響空間内伝達関数を用いて、予め算出された関数であることを特徴とする請求項8に記載の音場再現装置。
【請求項10】
前記所定の音信号がTSP信号であることを特徴とする請求項9に記載の音場再現装置。
【請求項11】
前記音響空間の音源数がK、前記録音システムのマイクロホン数がN、前記再生システムの音源数がMであるとき、前記音響付きシステム関数が、
a) 前記所定の音信号と前記収録信号から、時間の関数を要素とするK行N列の行列である前記音響空間内伝達関数を生成し、
b) 前記音響空間内伝達関数と、時間の関数を要素とするN行M列の行列である前記再生システムのシステム関数の畳み込み演算により、時間の関数を要素とするK行M列の行列である前記音響付きシステム関数を算出する
ことにより得られた関数であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の音場再現装置。
【請求項12】
前記音響空間の音源数がK、前記録音システムのマイクロホン数がN、前記再生システムの音源数がMであるとき、前記音響付きシステム関数が、
a) 前記所定の音信号と前記収録信号から、周波数の関数を要素とするK行N列の行列である前記音響空間内伝達関数を生成し、
b) 前記音響空間内伝達関数と、周波数の関数を要素とするN行M列の行列である前記再生システムのシステム関数の積を算出し、これを逆フーリエ変換することにより時間の関数を要素とするK行M列の行列である前記音響付きシステム関数を算出する
ことにより得られた関数であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の音場再現装置。
【請求項13】
前記再生システムが、4層の架台から成るドーム部と、該ドーム部を支える4本の柱部により構成され、該ドーム部の上層の架台から順に6個、16個、24個、16個のフルレンジスピーカーを備えることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の音場再現装置。
【請求項14】
境界音場制御の原理に基づき設計された録音システムを用いて算出された所定の音響空間の音響空間内伝達関数と、境界音場制御の原理に基づき設計された再生システムのシステム関数から算出された、音響付きシステム関数を記録した記録媒体。
【請求項15】
前記音響付きシステム関数が、前記音響空間において所定の音信号を出力し、該音響空間内に設置した前記録音システムにより該所定の音信号を録音して収録信号を生成し、前記所定の音信号及び前記収録信号から算出された前記音響空間内伝達関数を用いて、予め算出された関数であることを特徴とする請求項14に記載の記録媒体。
【請求項16】
前記所定の音信号がTSP信号であることを特徴とする請求項15に記載の記録媒体。
【請求項17】
前記音響空間の音源数がK、前記録音システムのマイクロホン数がN、前記再生システムの音源数がMであるとき、前記音響付きシステム関数が、
a) 前記所定の音信号と前記収録信号から、時間の関数を要素とするK行N列の行列である前記音響空間内伝達関数を生成し、
b) 前記音響空間内伝達関数と、時間の関数を要素とするN行M列の行列である前記再生システムのシステム関数の畳み込み演算により、時間の関数を要素とするK行M列の行列である前記音響付きシステム関数を算出する
ことにより得られた関数であることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の記録媒体。
【請求項18】
前記音響空間の音源数がK、前記録音システムのマイクロホン数がN、前記再生システムの音源数がMであるとき、前記音響付きシステム関数が、
a) 前記所定の音信号と前記収録信号から、周波数の関数を要素とするK行N列の行列である前記音響空間内伝達関数を生成し、
b) 前記音響空間内伝達関数と、周波数の関数を要素とするN行M列の行列である前記再生システムのシステム関数の積を算出し、これを逆フーリエ変換することにより時間の関数を要素とするK行M列の行列である前記音響付きシステム関数を算出する
ことにより得られた関数であることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−10011(P2012−10011A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142701(P2010−142701)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】