説明

増幅光を使用してパターニングすることが可能な、電子回路タイプの適用例に有用な組成物ならびにそれに関連する方法および組成物

【課題】光活性化可能なポリマー組成物およびポリマー複合体を作製するための、材料および方法を提供する。
【解決手段】光活性化可能なポリマー組成物およびポリマー複合体は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せから選択されたポリマー結合剤を含み、このポリマー結合剤は、ポリマー組成物の全重量の40〜97重量%からの量で存在するものであり、スピネル結晶充填剤は、ポリマー組成物の全重量の3〜60重量%からの量で存在し、また、これらを作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、例えばレーザを用いるなど、増幅光を使用して活性化することのできる(例えば、その活性化の前(メタライゼーションに有利な反応性が少しでもある場合)よりも非常に大きな、メタライゼーションに有利な反応性を持たせることができる)、ポリマー組成物に関する。より具体的には、本発明の組成物は、1つまたは複数のポリマー連続ドメインを、複数の不連続ドメインと併せて含んでおり、この不連続ドメインは、スピネル結晶質タイプを含むものである。
【背景技術】
【0002】
電子回路は、サブトラクティブ法を使用して、剛性エポキシ−金属積層体から作製することができる。そのような方法では、まず誘電体を固体金属層と重ね合わせ(または積層し)、その後、この金属のほとんどを取り除くことによって、金属層を金属回路パターンへと変換する。この結果、微細なラインの導電性回路パターンを得ることができる。典型的な場合、金属は、化学エッチングによって除去する。しかし、そのような方法は、高価で環境に好ましくなく、この産業の性能要件を満足させるのに益々厄介なものとなりつつある。
【0003】
Goosey他の特許文献1は、レーザで活性化された誘電体材料と、増感プレディップおよびミリング法を含んだ無電解金属析出法とを対象としている。この方法は、二酸化チタン、窒化アルミニウム、または二酸化ジルコニウムの充填剤を、誘電体被覆材料中に組み込み、次いで最終的に、この充填剤をメタライゼーション触媒に変換する(レーザエネルギーを使用して)。
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願第1367872号明細書
【特許文献2】米国特許第2833686号明細書
【特許文献3】米国特許第2946763号明細書
【特許文献4】米国特許第4169933号明細書
【特許文献5】米国特許第4242496号明細書
【特許文献6】米国特許第4238600号明細書
【特許文献7】米国特許第4075262号明細書
【特許文献8】米国特許第3991013号明細書
【特許文献9】米国特許第3991014号明細書
【特許文献10】米国特許第4011199号明細書
【特許文献11】米国特許第4048148号明細書
【特許文献12】米国特許第4083829号明細書
【特許文献13】米国特許第4118372号明細書
【特許文献14】米国特許第4122070号明細書
【特許文献15】米国特許第4130545号明細書
【特許文献16】米国特許第4153779号明細書
【特許文献17】米国特許第4159365号明細書
【特許文献18】米国特許第4161470号明細書
【特許文献19】米国特許第4184996号明細書
【特許文献20】米国特許第4189549号明細書
【特許文献21】米国特許第4219461号明細書
【特許文献22】米国特許第4232143号明細書
【特許文献23】米国特許第4232144号明細書
【特許文献24】米国特許第4245082号明細書
【特許文献25】米国特許第4256624号明細書
【特許文献26】米国特許第4269965号明細書
【特許文献27】米国特許第4272625号明細書
【特許文献28】米国特許第4370466号明細書
【特許文献29】米国特許第4383105号明細書
【特許文献30】米国特許第4447592号明細書
【特許文献31】米国特許第4522974号明細書
【特許文献32】米国特許第4617369号明細書
【特許文献33】米国特許第4664972号明細書
【特許文献34】米国特許第4684712号明細書
【特許文献35】米国特許第4727129号明細書
【特許文献36】米国特許第4727131号明細書
【特許文献37】米国特許第4728714号明細書
【特許文献38】米国特許第4749769号明細書
【特許文献39】米国特許第4762907号明細書
【特許文献40】米国特許第4778927号明細書
【特許文献41】米国特許第4816555号明細書
【特許文献42】米国特許第4849499号明細書
【特許文献43】米国特許第4851496号明細書
【特許文献44】米国特許第4851497号明細書
【特許文献45】米国特許第4857626号明細書
【特許文献46】米国特許第4864013号明細書
【特許文献47】米国特許第4868278号明細書
【特許文献48】米国特許第4882410号明細書
【特許文献49】米国特許第4923947号明細書
【特許文献50】米国特許第4999416号明細書
【特許文献51】米国特許第5015721号明細書
【特許文献52】米国特許第5015722号明細書
【特許文献53】米国特許第5025082号明細書
【特許文献54】米国特許第5086158号明細書
【特許文献55】米国特許第5102935号明細書
【特許文献56】米国特許第5110896号明細書
【特許文献57】米国特許第5143956号明細書
【特許文献58】欧州特許出願第356226号明細書
【非特許文献1】"Liquid Crystal Polymers VI: Liquid Crystalline Polyesters of Substituted Hydroquinones"
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光活性化可能なポリマー組成物およびポリマー複合体を作製するための、代替の材料および方法が、依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリマータイプの結合剤、およびスピネル結晶型の充填剤を含む、光活性化可能なポリマー組成物を対象とする。ポリマー結合剤は、下記のタイプのポリマー(そのコポリマーも含む)の少なくとも1種または複数、すなわちエポキシ、ビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂、液晶ポリマー、ポリアミド、およびシアン酸エステルの、少なくとも1種または複数を含む。
【0007】
選択された特定の実施形態に応じて、ポリマー結合剤は、光活性化可能なポリマー組成物の全重量に対し、下記の値のいずれか2つ、すなわち40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、および97重量%のいずれか2つの間およびこのいずれか2つを含む範囲内の量で、存在する。光活性化可能なポリマー組成物は、スピネル結晶充填剤をさらに含む。選択された特定の実施形態に応じて、スピネル結晶充填剤は、光活性化可能なポリマー組成物の全重量に対し、下記の値のいずれか2つ、すなわち3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、および60重量%のいずれか2つの間およびこのいずれか2つを含む範囲内の量で、存在する。その他の任意選択の成分は、充填剤、顔料、粘度調整剤、および上記ポリマー系に一般的なその他の添加剤などを、本発明の組成物に組み込むことができるが、(選択された特定の実施形態に応じて)任意選択の成分の総量は、光活性可能なポリマー組成物の全重量の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%を超えないことを条件とする。
【0008】
本発明のその他の特徴および利点は、下記の詳細な説明ならびに特許請求の範囲から明らかにされよう。前述の概要および下記の詳細な説明は、単なる例示および説明的なものにすぎず、添付の特許請求の範囲で定義された本発明を限定しようとするものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
定義:
本明細書で使用される、「含む(「comprises」、「comprising」、「includes」、「including」)」、「有する(「has」、「having」)」という用語、またはこれらの任意のその他の変形例は、非排他的な包含事項を網羅するものとする。例えば、要素リストを構成する組成物、フィルム、複合体、プロセス、方法、物品、または装置は、これらの要素だけに必ずしも限定されるものではなく、特に列挙されておらずあるいはそのようなプロセス、方法、物品、または装置に固有のその他の要素を含むことができる。さらに、反対の内容を特に述べない限り、「または」は包括的であることを指し、すなわち排他的であることを指すものではない。例えば、条件AまたはBは、下記のいずれか1つによって満たされ、すなわちAは真であり(または存在し)かつBは偽である(または存在しない)こと、Aは偽であり(または存在せず)かつBは真である(または存在する)こと、AとBの両方が真である(または存在する)ことの、いずれか1つによって満たされる。「a」または「an」の使用は、本発明の要素および構成成分について述べるのに用いられる。これは、単なる都合上、かつ本発明の一般的意味が与えられるようになされる。この記述は、1つまたは少なくとも1つが含まれるように読むべきであり、単数形は、その他を意味することが明らかでない限り、複数形も含む。
【0010】
本明細書で使用する「フィルム」または「ポリマーフィルム」は、柔軟性でも剛性でもよく、かつロールまたはシートの形をした、ポリマー組成物の物理的形態を表す。
【0011】
本明細書で使用する「組成物」または「ポリマー組成物」という用語は、様々な成分、例えばスピネル結晶充填剤およびポリマー結合剤を含む、組成物を表す。
【0012】
本明細書で使用する「組成物」という用語は、少なくとも1つまたは複数の相を有する層状構造を表す。
【0013】
本明細書で使用する「プリプレグ」という用語は、部分硬化したBステージポリマー組成物または完全硬化したCステージポリマー組成物を有する、ガラス布または繊維強化剛性誘電体層を意味する。例えば、本発明の一態様による組成物をガラス布構造に含浸させて、プリプレグを形成する。
【0014】
本明細書で使用されるFR−4およびFR−5という用語は、ガラス強化マトリックス中の化学的に特殊なエポキシ樹脂であり、例えば、FR−4およびFR−5を含む、全国電機製造業者協会(NEMA)によって分類される様々なグレードの銅張りエポキシ含浸ガラス布板である。
【0015】
本明細書で使用する「隣接」という用語は、層、部材、または構造が別の層、部材、または構造のすぐ隣りにあることを、必ずしも意味しない。それでも互いに直接接触する層、部材、または構造の組合せは、互いに隣接する。
【0016】
本明細書で使用する「DC」という用語は、デジタル回路を意味する。
【0017】
本明細書で使用する「機能層」という用語は、熱伝導性があること、寸法上安定であること、接着性があること、容量性であること、抵抗性であること、および高周波誘電容量を持つことを含むがこれらに限定することのない、機能的特性を有する層を意味する。
【0018】
他に特に定義しない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様なまたは均等な方法および材料を、本発明の実施または試験の際に使用することができるが、適切な方法および材料について、以下に記述する。本明細書で述べるすべての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、その全体を、参照により本明細書に援用する。矛盾が生じた場合には、定義を含めた本明細書を考慮されたい。さらに、材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0019】
説明:
一実施形態では、本発明の光活性化可能なポリマー組成物は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せから選択されたポリマー結合剤と、スピネル結晶充填剤とを含む。ポリマー結合剤は、ポリマー組成物の全重量の、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%からの量で存在する。スピネル結晶充填剤は、ポリマー組成物の全重量の、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、および60重量%からの量で存在する。
【0020】
別の実施形態では、単層の光活性化可能なポリマー複合体は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せからなる群から選択されたポリマー結合剤を、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%と、スピネル結晶充填剤とを含む、ポリマー組成物を含む。スピネル結晶充填剤の重量%は、この層で使用されるポリマー組成物の全重量に対し、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%である。
【0021】
別の実施形態では、2層の光活性化可能なポリマー複合体は、第1の層および第2の層を含み、この第1の層は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せから選択されたポリマーを、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%、すなわちこのポリマー結合剤の重量%が第1の層に使用されるポリマー組成物の全重量に対するものである結合剤と、この第1の層に使用されるポリマー組成物の全重量に対して少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%のスピネル結晶充填剤とを含んだ組成物を含み、第2の層は、機能層を含む。
【0022】
別の実施形態では、3層の光活性化可能なポリマー複合体は、内層に隣接している2つの外層を含み、この内層は、2つの外層の間に位置決めされ、これら外層の少なくとも一方は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せから選択されたポリマー結合剤を、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%、すなわちこのポリマー結合剤の重量%が一方の外層に使用されるポリマー組成物の全重量に対するものである結合剤と、この一方の外層に使用されるポリマー組成物の全重量に対して少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%のスピネル結晶充填剤とを含んだ組成物を含み、内層(および任意選択で他方の外層)は、機能層である。
【0023】
別の実施形態では、光活性化可能なポリマー組成物を作製するための方法は、スピネル結晶充填剤を有機溶媒中に分散させて分散体を形成するステップであって、このスピネル結晶充填剤の平均粒径が、下記の数値、すなわち50、100、300、500、800、1000、2000、3000、4000、5000、および10000ナノメートルのいずれか2つの間である(かつこの2つを含む)ステップと;この分散体を、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せから選択されたポリマー結合剤と一緒にして、ポリマー組成物を形成するステップと;ポリマー組成物を平面の一部に塗布して、層を形成するステップと;この層に熱エネルギーを加えて、ポリマー複合体を形成するステップとを含む。
【0024】
別の実施形態では、本発明による方法は、ポリマー複合体の一部をレーザ光線で光活性化して、光活性化パターンをこの複合体の表面に形成するステップと、無電解(またはおそらくは電解)メッキ浴を使用して、ポリマー複合体の光活性化パターンを金属メッキすることにより、光活性化パターン上に導電性経路を形成するステップとを、さらに含む。ある実施形態で、光活性化可能なポリマー組成物は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せからなる群から選択されたポリマー結合剤を含み、このポリマー結合剤は、ポリマー組成物の全重量の、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%からの量で存在し、スピネル結晶充填剤は、ポリマー組成物の全重量の、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%からの量で存在する。ポリマー組成物は、下記の数値、すなわちミクロン当たり0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間およびこれら2つを含む、可視−赤外線吸収係数を有する。スピネル結晶充填剤は、化学式AB24またはBABO4によって表される。この式のA成分は、原子価2を有する金属陽イオンであり、カドミウム、亜鉛、銅、コバルト、マグネシウム、スズ、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、クロム、およびこれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される。この式のB成分は、原子価3を有する金属陽イオンであり、カドミウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、マグネシウム、スズ、チタン、鉄、アルミニウム、クロム、およびこれらの2つ以上の組合せからなる群から選択される。
【0025】
あるいは、A成分は、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタン、およびこれらの2つ以上の組合せからなる群から選択された、周期表からの元素であり、B成分は、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズ、およびこれらの2つ以上の組合せからなる群から選択された、周期表からの元素である。
【0026】
スピネル結晶充填剤は、下記の数値、すなわち50、100、300、500、800、1000、2000、3000、4000、5000、および10000ナノメートルのいずれか2つの間およびこれら2つを含む、平均粒径を有することができる。
【0027】
この組成物を、ガラス構造に含浸させてプリプレグを形成することができ、または繊維構造に含浸させることができ、またはフィルムの形にすることができる。
【0028】
本発明のフィルム複合体は、下記の数値、すなわち1、2、3、4、5、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、および200ミクロンのいずれか2つの間、およびこれら2つを含む、厚さを有することができる。
【0029】
別の実施形態では、単層の光活性化可能なポリマー複合体は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せからなる群から選択されたポリマー結合剤を、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%、すなわちこのポリマー結合剤の重量%が、第1の層で使用されるポリマー複合体の全重量に対するものである結合剤と、このポリマー組成物の全重量に対して少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%のスピネル結晶充填剤とを含む、ポリマー組成物を含む。単層ポリマー複合体は、下記の数値、すなわちミクロン当たり0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間およびこれら2つを含む、可視−赤外光吸収係数を有することができる。単層ポリマー複合体は、エポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、液晶ポリマー、ポリアミド、またはシアン酸エステルでよいポリマー結合剤を含む。
【0030】
別の実施形態では、2層の光活性化可能なポリマー複合体は、第1の層および第2の層を含み、この第1の層は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せからなる群から選択されたポリマー結合剤を、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%、すなわちこのポリマー結合剤の重量%が第1の層に使用されるポリマー組成物の全重量に対するものである結合剤と、この第1の層に使用されるポリマー組成物の全重量に対して少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%のスピネル結晶充填剤とを含んだ組成物を含み、第2の層は、機能層を含む。第1の層は、フィルムまたはプリプレグの形をとることができる。第1の層は、下記の数値、すなわちミクロン当たり0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間、およびこれら2つを含む、可視−赤外光吸収係数を有することができる。これら第2の機能層は、フィルムまたはプリプレグの形をとることができる。第2の機能層は、熱伝導層、キャパシタ層、抵抗層、寸法安定性の誘電体層、または接着層でもよい。
【0031】
別の実施形態では、3層の光活性化可能なポリマー複合体は、内層に隣接する2つの外層を含み、この内層は、2つの外層の間に位置決めされ、これら外層の少なくとも一方は、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せからなる群から選択されたポリマー結合剤を、少なくとも40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、または97重量%、すなわちこのポリマー結合剤の重量%が第1の層に使用されるポリマー組成物の全重量に対するものである結合剤と、この第1の層に使用されるポリマー組成物の全重量に対して少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、55、または60重量%のスピネル結晶充填剤とを含んだ組成物を含み、内層(および任意選択で外層の一方)は、フィルムまたはプリプレグのような機能層を含む。
【0032】
別の実施形態では、光活性化可能なポリマー組成物を作製するための方法は、スピネル結晶充填剤を有機溶媒中に分散させて分散体を形成するステップであって、このスピネル結晶充填剤の平均粒径が、下記の数値、すなわち50、100、300、500、800、1000、2000、3000、4000、5000、および10000ナノメートルのいずれか2つの間であるステップと;この分散体を、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せからなる群から選択されたポリマー結合剤と一緒にして、ポリマー組成物を形成するステップと;ポリマー組成物を平面の一部に塗布して、層を形成するステップと;この層に熱エネルギーを加えて、ポリマー組成物を硬化するステップとを含む。熱に曝されたポリマー組成物は、下記の数値、すなわちミクロン当たり0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間、およびこれら2つを含む、可視−赤外光吸収係数を有することができる。この方法は、さらに、ポリマー組成物の一部をレーザ光線で光活性化して、光活性化パターンをこの組成物の表面に形成するステップと、無電解(または電解)メッキ浴を使用して、ポリマー組成物体の光活性化パターンを金属メッキすることにより、光活性化部分上に導電性経路を形成するステップとを含む。
【0033】
さらに別の実施形態では、回路板は、ポリマー組成物を取り入れる。組成物は、集積回路パッケージ、ピングリッドアレイにおける相互接続、マルチチップモジュール、チップスケールパッケージ、ボールグリッドアレイ、高周波モジュール、デジタルモジュール、チップオンフレックス、スタックドビアサブストレート、埋込み受動素子を有するプリント回路板、高密度相互接続回路板、「LGA」ランドグリッドアレイ、「SOP」(システムオンパッケージ)モジュール、「QFN」クワッドフラットパッケージノーリード、および「FC−QFN」フリップチップクワッドフラットパッケージノーリードから選択された構成要素中に取り入れてもよく、高密度相互接続に使用される構成要素には、ウェハスケールパッケージ、テープ自動ボンディング回路パッケージ、チップオンフレックス回路パッケージ、またはチップオンボード電子回路パッケージが含まれる。
【0034】
本発明の組成物は、任意選択で、酸化防止剤、光安定剤、光吸収係数調整剤、難燃性添加剤、帯電防止剤、熱安定剤、補強剤、紫外線吸収剤、接着促進剤、無機充填剤、例えばシリカ、界面活性剤、または分散剤、あるいはこれらの組合せからなる群から選択された添加剤を、さらに含む。光吸収係数調整剤には、炭素粉末または黒鉛粉末が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0035】
本発明のポリマー組成物は、その内部に分散された高度に光活性化可能なスピネル結晶充填剤を有し、この充填剤は、画定可能な結晶構成内に、2つ以上の金属酸化物クラスタ構造を含む。結晶構成全体は、その理想的な状態(すなわち非汚染、非誘導体状態)にあるとき、下記の一般式を有する。
【0036】
AB24
上式で、
i.A(一実施形態では、Aは、限定的ではないにしても主として、原子価2を有する金属陽イオンである)は、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタン、およびこれらの組合せを含む群から選択され、第1の金属酸化物クラスタ(「金属酸化物クラスタ1」)の1次陽イオン成分に、典型的な場合には4面体構造を提供するものであり、
ii.B(一実施形態では、Bは、限定的ではないにしても主として、原子価3を有する金属陽イオンである)は、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズ、およびこれらの組合せを含む群から選択され、第2の金属酸化物クラスタ(「金属酸化物クラスタ2」)の1次陽イオン成分に、典型的な場合には8面体構造を提供するものであり、
iii.上記AまたはBの群内で、可能な原子価2を有する任意の金属陽イオンは、「A」として使用することができ、可能な原子価3を有する任意の金属陽イオンは、「B」として使用することができ、
iv.「金属酸化物クラスタ1」(典型的な場合、4面体構造)の幾何形状は、「金属酸化物クラスタ2」(典型的な場合、8面体構造)の幾何形状とは異なり、
v.AおよびBからの金属陽イオンは、「逆」スピネル型結晶構造の場合のように、「金属酸化物クラスタ2」(典型的な場合、8面体構造)の金属陽イオンとして使用することができ、
vi.Oは、限定的ではないにしても主として、酸素であり、
vii.「金属酸化物クラスタ1」および「金属酸化物クラスタ2」は、一緒になって、電磁放射線に対して高い感受性を有する単一の識別可能な結晶型構造を提供するが、これは、下記の性質によって明らかにされたものであり、すなわち約10から約30重量%の添加量でポリマーベースの誘電体中に分散させたときに、「可視−赤外線」吸収係数が下記の数値のいずれか2つ、すなわちミクロン当たり0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間およびこれら2つを含むように測定することができるというものである。
【0037】
スピネル結晶充填剤は、ポリマー結合剤溶液中に分散させることができる。ポリマー結合剤溶液は、溶媒に溶解したエポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せを含む。充填剤は、典型的な場合、下記の数値のいずれか2つ、すなわちポリマーの3、5、7、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、および60重量%のいずれか2つの間およびこれら2つを含む重量%で分散され、最初は、下記の数値のいずれか2つ、すなわち50、100、300、500、800、1000、2000、3000、4000、5000、および10000ナノメートルのいずれか2つの間およびこれら2つを含む平均粒径を有する(ポリマー結合剤に組み込んだ後)。
【0038】
スピネル結晶充填剤は、有機溶媒中に分散させることができ(分散剤の助けを借りて、または分散剤の助けなしで)、その後のステップでは、ポリマー結合剤溶液中に分散させて、ブレンドポリマー組成物を形成する。次いでブレンドポリマー組成物を、平面(またはドラム)上に流延し、加熱し、乾燥し、硬化し、または半硬化させて、内部にスピネル結晶充填剤が分散されているポリマーフィルムを形成する。
【0039】
次いでポリマーフィルムは、レーザ光線を使用することによって、光活性化ステップにより処理することができる。レーザ光線は、光学素子を使用して集束させることができ、かつ回路トレースまたはその他の電気部品を堆積させることが望ましいポリマーフィルムの表面の一部に向けることができる。表面の選択部分をいったん光活性化したら、金属メッキステップ、例えば無電解メッキステップによって後で形成される回路トレース用の経路(または、時にはスポット)として、この光活性化部分を使用することができる。
【0040】
ポリマーフィルムまたはポリマー複合体を使用して回路を作製するのに用いられる、処理ステップの数は、今日の工業で現在のところ用いられているサブトラクティブ法のステップ数に比べ、しばしば非常に少ない。
【0041】
一実施形態では、ポリマー組成物およびポリマー複合体は、下記の数値のいずれか2つ、すなわちミクロン当たり(即ち1/ミクロン)0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間およびこれら2つを含む、可視−赤外線吸収係数を有する。可視−赤外線は、各フィルムごとの光吸収係数を測定するのに使用される。フィルムの厚さは、光吸収係数を決定するための計算に使用する。
【0042】
本明細書で使用する可視−赤外線吸収係数(時々、本明細書では、単に「α」と呼ぶ)は、計算された数値である。この計算された数値は、複合体フィルムのサンプルを光線経路上に置いた後、特定波長の光に関して測定された強度(分光計を使用)の比を得、その数値を、空気中を通る同じ光の光強度で割ることによって、見出される。
【0043】
この比の自然対数を得て、これに(−1)を乗じ、次いでその数値をフィルムの厚さ(ミクロン単位で測定された)で割ると、可視−赤外線吸収係数を計算することができる。
【0044】
次いで可視−赤外線吸収係数に関する一般式を、下記の一般式で表す。
【0045】
α=−1×[ln(l(X)/l(O))]/t
(式中、l(X)は、フィルムを透過する光の強度を表し、
l(O)は、空気を透過する光の強度を表し、
tは、フィルムの厚さを表す。)
典型的な場合、これらの計算におけるフィルムの厚さは、ミクロンを単位として表す。したがって、特定のフィルムの光吸収係数(またはα数)は、1/ミクロンまたはミクロンの逆数(例えば、ミクロン-1)として表す。本明細書で論じられる測定に有用な、特定の光の波長は、典型的な場合、スペクトルの可視光から赤外線の部分を包含する光の波長である。
【0046】
ポリマー組成物およびポリマー複合体は、下記の重量%のいずれか2つ、すなわち3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、20、24、25、28、30、32、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、および60重量%の2つの間である(かつこの2つを含む)範囲内の量でポリマー結合剤溶液中に実質的に均質に分散された、スピネル結晶充填剤を含む。ポリマー複合体が含有するスピネル結晶充填剤が多すぎると、この複合体は充填剤の添加量が高くなるにつれて柔軟性を失う傾向があるので、下流処理で取り扱うには時々脆くなりすぎる可能性がある。
【0047】
一実施形態では、スピネル結晶充填剤が、下記の一般式で表される。
【0048】
AB24
(式中、Aは、典型的な場合に原子価2を有する金属陽イオンであり、カドミウム、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マグネシウム、スズ、チタン、およびこれらの2つ以上の組合せを含む群から選択され、Bは、典型的な場合に原子価3を有する金属陽イオンであり、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズ、およびこれらの2つ以上の組合せを含む群から選択され、Oは、すべての場合とは限らないにしても主として、酸素である。)
一実施形態では、金属陽イオンAが、スピネル構造の第1の金属酸化物クラスタ、「金属酸化物クラスタ1」(典型的な場合、4面体構造)の1次陽イオン成分を提供する。金属陽イオンBは、第2の金属酸化物クラスタ、「金属酸化物クラスタ2」(典型的な場合、8面体構造)の1次陽イオン成分を提供する。
【0049】
別の実施形態では、上記AおよびBの群内で、可能な原子価2を有する任意の金属陽イオンを、「A」陽イオンとして使用することができる。さらに、可能な原子価3を有する任意の金属陽イオンを、「B」陽イオンとして使用することができるが、これは、「金属酸化物クラスタ1」の幾何形状が、「金属酸化物クラスタ2」の幾何形状とは異なることを前提とする。
【0050】
さらに別の実施形態では、AおよびBを、「金属酸化物クラスタ2」(典型的な場合、8面体構造)の金属陽イオンとして使用することができる。これは、典型的な場合に一般式B(AB)O4を有する「逆」スピネル型結晶構造の、特定の場合にも言えることである。
【0051】
1つまたは複数のステップで、ポリマー結合剤を十分低い粘度(典型的な場合、50、40、30、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1.5、1、0.5、0.1、0.05、および0.001キロポアズ未満の粘度)にまで溶媒和して、スピネル結晶充填剤(類似のまたは同じ溶媒中に懸濁可能にすることもできる)をポリマー結合剤溶液中に十分に分散させる。スピネル結晶充填剤の分散は、溶液または分散液中に粒子の過度な凝集が生じないように、実施される。充填剤粒子の望ましくない凝集は、望ましくない界面ボイド、またはその他の問題をポリマー複合体に引き起こす可能性がある。
【0052】
スピネル結晶充填剤粒子は、ポリマー結合剤溶液中に直接分散させることができ、または、ポリマー結合剤溶液中に分散させる前に、溶媒に分散させることができる。充填剤の粒子は、この粒子が下記の数値のいずれか2つ、すなわち50、100、300、500、800、1000、2000、3000、4000、5000、および10000ナノメートルのいずれか2つの間の平均粒径に達するまで溶媒中に混合して、分散液を形成することができる。次いでこの分散液を、高速または高剪断の混合装置を使用して、混合することができる。スピネル結晶充填剤は、様々な適切な溶媒を使用して、分散させることができる。場合によっては、分散液は、特に商用規模の生産に向けて、安定な分散液の形成の補助に関する当業者に知られている、1種または複数の適切な分散剤を含んでもよい。
【0053】
ポリマー結合剤溶液中に分散させたスピネル結晶充填剤は、一般に、下記の数値のいずれか2つ、すなわち50、100、200、250、300、350、400、450、500、1000、2000、3000、4000、5000、および10000ナノメートルのいずれか2つの間およびこれら2つを含む平均粒径を有する。一般に、分散したスピネル結晶充填剤の少なくとも80、85、90、92、94、95、96、98、99、または100%は、上記粒径の範囲内にある。ポリマー結合剤溶液中の結晶サイズは、COULTER(登録商標)製の小容積モジュールを持つLS130粒径分析器などの、レーザ粒子分析器によって決定することができる。
【0054】
ポリマー結合剤溶液とスピネル結晶充填剤粒子とを一緒にして、組成物の比較的均一な分散液を形成する。次いでこの組成物は、以下に示すように、固形分含量が典型的な場合には98.0、98.5、99.0、または99.5重量%より高いポリマー複合体に変換することができる。
【0055】
いくつかのスピネル結晶充填剤は、追加の剪断力をほとんどまたはまったく必要とせずに、ポリマー結合剤溶液中に容易に分散されるので、形成されたスラリは、望ましくない凝集体を、100、50、20、10、8、6、5、4、3、2、または1ppmより少ない量でしばしば含有する可能性がある。望ましくない凝集体は、平均粒径が10、11、12、13、14、または15ミクロンより大きい結合した(隣接した)スピネル結晶充填剤の収集物と定義される。しかし、いくつかのスピネル結晶充填剤は、ナノサイズの充填剤をポリマー中に十分分散させるため、望ましくない粒子凝集体が破砕されるように若干のミリングまたは濾過を必要とする可能性がある。ミリングおよび濾過は、コストがかかる可能性があり、すべての望ましくない凝集体を満足のいくように除去することができない。したがって、一実施形態では、スピネル結晶充填剤は、(少なくとも99重量%の純度の)ジメチルアセトアミド溶媒中に20重量%で分散可能であり、かつ懸濁可能である。スピネル結晶充填剤を溶媒中に分散および懸濁させた後(任意選択で、高剪断機械式ミキサの助けを借りて)、この溶液を20℃で72時間、静止状態に保った場合、15、10、8、6、4、2、または1重量%未満の充填剤粒子を、溶液中に析出させることができる。
【0056】
本発明では、レーザによって形成されるパターンのバルクメタライゼーションの前に、レーザ(またはその他の類似のタイプの光パターニング技法)による活性化を通して効率的かつ正確な表面パターニングが可能になるように、選択された群のスピネル結晶充填剤を使用する。
【0057】
一実施形態では、光吸収係数調整剤を、スピネル結晶充填剤の一部であり必ずしもそのすべてに対してではない部分置換として、添加することができる。置換の適切な量は、下記の数値のいずれか2つ、すなわちスピネル結晶充填剤成分の総量の1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、または40重量%のいずれか2つの間およびこれら2つを含む範囲にすることができる。一実施形態では、スピネル結晶充填剤の約10重量%を、炭素粉末または黒鉛粉末に置換することができる。そこから形成されたポリマー複合体は、その表面に金属イオンを効果的にメッキすることができるよう、ポリマー複合体中に存在する十分な量のスピネル結晶構造を有するべきであり、それと同時に、上述の量の置換(例えば炭素粉末)によって、十分な量の光エネルギー(すなわち、複合体の表面を効果的に光活性化する光エネルギーの量)を吸収することができるようにポリマー複合体を暗色にする。
【0058】
有用な光吸収係数の特定の範囲が、ポリマー組成物およびポリマー複合体に関して有利に見出されている。具体的には、ポリマー組成物およびポリマー複合体は、典型的な場合にある特定のレーザ機械の使用によって高速光活性化ステップで効果的に作用するよう、十分な程度の光吸収能力を必要とすることがわかった。
【0059】
例えば、用いられるあるタイプの光活性化ステップ(例えばレーザ光線の使用を採用するステップ)では、本発明のポリマー組成物および複合体が、その表面に明確な回路トレースパターンを形成することができるよう、かなりの量の光エネルギーを吸収できることがわかった。これは、比較的短い時間で行うことができる。逆に、市販のポリマーフィルム(すなわち、これら特定の充填剤を含まないフィルム、または非機能的スピネル結晶充填剤を含有するフィルム)は、より長く得ることができ、低すぎる光吸収係数を有し、仮にそうであったとしても比較的短い時間で光活性化可能にすることができない。したがって、多くのポリマーフィルム、比較的高い添加量のその他のスピネル結晶充填剤を含有するフィルムでさえ、高速の光活性化製造に役立てるのに十分な光エネルギーを吸収することができず、それと共に、明確な回路パターンの金属メッキを受容することができないと考えられる。
【0060】
本発明の実施形態で使用するのに適切な、広範なポリマー結合剤には、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、またはこれらの組合せが含まれる。ポリマー結合剤は、無機充填剤、例えばシリカまたはアルミナを含むことができる。広範なポリマー結合剤は、ポリマー組成物および複合体の調製に、特に有用であることがわかった。
【0061】
本発明のポリマー結合剤の調製に有用な有機溶媒は、ポリマー結合剤を溶解することが可能であるべきである。適切な溶媒は、適切な沸点、例えば225℃より低い沸点も有するべきであり、したがってポリマー溶液は、適度な(すなわち、より都合良く、よりコストのかからない)温度で乾燥することができる。210、205、200、195、190、180、170、160、150、140、130、120、および110℃未満の沸点が適切である。
【0062】
上述のように、本発明の実施形態で使用するのに適切なポリマー結合剤には、エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミドトリアジン(BT)、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、およびシアン酸エステルが含まれる。
【0063】
エポキシ樹脂は、熱硬化性ポリマーに硬化することのできる熱可塑性材料である。主な樹脂タイプには、とりわけ、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ノボラック、過酸樹脂、およびヒダントイン樹脂が含まれる。多くのエポキシ樹脂供給業者が世界中にあり、最も認知されている商標には、Araldite、DER、Epi−Cure、Epi−Res、Epikote、Epon、Epotufが含まれ、このそれぞれは、配合および処理に応じて広範な性質をもたらす。追加の成分を、エポキシ樹脂および硬化剤の配合物に添加してもよい。これらの成分には、希釈剤と、柔軟性、靭性、または剥離強度に影響を及ぼす樹脂改質剤と、接着充填剤と、着色剤と、染料と、流動学的添加剤と、難燃剤とが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0064】
一実施形態では、ポリマー結合剤は、エポキシ樹脂を含むことができる。適切なエポキシ樹脂の例には、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、およびグリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定するものではない。さらに、任意のシリカまたはアルミナ充填エポキシも適切である。
【0065】
適切なグリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂の例には、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、臭素化ビスフェノールAタイプ、水素化ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールSタイプ、ビスフェノールAFタイプ、ビフェニルタイプ、ナフタレンタイプ、フルオレンタイプ、フェノールノボラックタイプ、クレゾールノボラックタイプ、DPPノボラックタイプ、3官能性タイプ、トリス(ヒドロキシフェニル)メタンタイプ、およびテトラフェニロールエタンタイプのエポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0066】
適切なグリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂の例には、ヘキサヒドロフタレートタイプおよびフタレートタイプのエポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0067】
適切なグリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルイソシアヌレート、ヒダントインタイプ、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、アミノフェノールタイプ、アニリンタイプ、およびトルイジンタイプのエポキシ樹脂が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0068】
一実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリエステルを含むことができる。適切なポリエステルの例には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(トリメチレン)テレフタレートなど、ポリ(e−カプロラクトン)、ポリカーボネート、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(4−ヒドロキシ安息香酸)−コ−ポリ(エチレンテレフタレート)(PHBA)、およびポリ(ヒドロキシブチレート)が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0069】
別の実施形態では、ポリマー結合剤は、ポリアミドを含むことができる。適切な脂肪族ポリアミドの例には、本発明で有用な、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、およびナイロン6,12、ナイロン3、ナイロン4,6、およびこれらのコポリマーが含まれるが、これらに限定するものではない。脂肪族芳香族ポリアミドの例には、ナイロン6T(またはナイロン6(3)T)、ナイロン10T、およびこれらのコポリマー含まれるが、これらに限定するものではなく、ナイロン11、ナイロン12、およびナイロンMXD6も、本発明での使用に適している。芳香族ポリアミドの例には、やはり本発明での使用に適している、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ(p−ベンズアミド)、およびポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0070】
別の実施形態では、ポリマー結合剤は、フルオロポリマーを含むことができる。フルオロポリマーという用語は、ポリマー構造の反復単位中に含有される、より多くのとは言わないまでも少なくとも1個のフッ素原子を有する、任意のポリマーを意味するものとする。フルオロポリマーまたはフルオロポリマー成分という用語は、フルオロポリマー樹脂(すなわち、フルオロ樹脂)も意味するものとする。一般に、フルオロポリマーは、ポリマーの反復分子にまたはポリマーの反復分子と共有結合したフッ素原子を含有する、ポリマー材料である。適切なフルオロポリマー成分には、下記のものが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0071】
1.ポリマー全体の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または約100重量%を占める、下記の部分を有する「PFA」、すなわちポリ(テトラフルオロエチレン−コ−パーフルオロ[アルキルビニルエーテル])であって、その変形例または誘導体を含めたもの。
【0072】
【化1】

【0073】
(式中、R1はCn2n+1であり、nは、20までまたはそれ以上を含む、1以上の任意の自然数であり、典型的な場合、nは1から3に等しく、xおよびyはモル分率であり、xは、0.95から0.99の範囲内であり、典型的な場合は0.97であり、yは、0.01から0.05の範囲内であり、典型的な場合は0.03であり、ASTM D 1238に記載されるメルトフローレートは1から100(g/10分)の範囲内であり、好ましくは1から50(g/10分)であり、より好ましくは2から30(g/10分)であり、最も好ましくは5から25(g/10分)である。)
2.ポリマー全体の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または約100重量%を占める下記の部分を含む、全体的にまたは部分的にテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンから得られた「FEP」、すなわちポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン[ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)コポリマーとも言う])であって、その変形例または誘導体を含めたもの。
【0074】
【化2】

【0075】
(式中、xおよびyはモル分率であり、xは、0.85から0.95の範囲内であり、典型的な場合は0.92であり、yは、0.05から0.15の範囲内であり、典型的な場合は0.08であり、ASTM D 1238に記載されるメルトフローレートは1から100(g/10分)の範囲内であり、好ましくは1から50(g/10分)であり、より好ましくは2から30(g/10分)であり、最も好ましくは5から25(g/10分)である。FEPコポリマーは、(i)50、55、60、65、70、または75%から約75、80、85、90、または95%のテトラフルオロエチレン、および(ii)5、10、15、20、または25%から約25、30、35、40、45、または50%(一般に7から27%)のヘキサフルオロプロピレンから、直接または間接的に得ることができる。そのようなFEPコポリマーは、周知であり、特許文献2および3に記載されている。)
3.全体的にまたは部分的にテトラフルオロエチレンから得られ、かつポリマー全体の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または約100重量%を占める下記の部分を有し、xは50と500000との間の任意の自然数に等しい、「PTFE」、すなわちポリテトラフルオロエチレンであって、その変形例または誘導体を含めたもの。
【0076】
4.全体的にまたは部分的にエチレンおよびテトラフルオロエチレンから得られ、ポリマー全体の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99、または約100重量%を占める下記の部分を有する「ETFE」、すなわちポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン)であって、その変形例または誘導体を含めたもの。
【0077】
【化3】

【0078】
(式中、xおよびyはモル分率であり、xは0.40から0.60の範囲内であり、典型的な場合は0.50であり、yは0.40から0.60であり、典型的な場合は0.50であり、ASTM D 1238に記載されるメルトフローレートは1から100(g/10分)の範囲内であり、好ましくは1から50(g/10分)であり、より好ましくは2から30(g/10分)であり、最も好ましくは5から25(g/10分)である。)
フルオロポリマー樹脂の有利な特徴は、高温安定性、耐化学腐食性、有利な電気的性質(特に高周波特性)、低摩擦性、および低粘着性を含む。その他の可能性ある有用なフルオロポリマー樹脂には、下記のものが含まれる。
【0079】
1.クロロトリフルオロエチレンポリマー(CTFE)
2.テトラフルオロエチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(TFE/CTFE)
3.エチレンクロロトリフルオロエチレンコポリマー(ECTFE)
4.ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
5.ポリフッ化ビニル(PVF)、および
6.Teflon(登録商標)AF(本件特許出願人製)
【0080】
さらに別の実施形態では、ポリマー結合剤は、液晶ポリマーまたはサーモトロピック液晶ポリマーを含むことができる。液晶ポリマーは、一般に、可溶性または溶融加工性のポリアミドまたはポリエステルを含む。液晶ポリマーには、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド、およびポリアゾメチンが含まれるが、これらに限定するものではない。適切な液晶ポリマーは、Jackson他の特許文献4、5、および6、ならびに非特許文献1に記載されている。「サーモトロピック」という用語は、特許文献7に記載されているTOT試験によって試験をしたときに、直交偏光子に光を透過させるポリマー、したがって異方性融解物を形成すると見なされるポリマーを意味する。適切な液晶ポリマーは、例えば特許文献8、9、10、11、7、12、13、14、15、16、17、18、4、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、および58に記載されている。液晶ポリマーの商用例には、Zenite(登録商標)(DuPont)、VECTRA(登録商標)(Hoechst)、およびXYDAR(登録商標)(Amoco)という商標で販売されている芳香族ポリエステルまたはポリ(エステル−アミド)が含まれる。
【0081】
別の実施形態では、本発明のポリマー結合剤は、シアン酸エステルを含むことができる。適切なシアン酸エステルの例には、ジシアノビスフェノールAおよび4,4’−イソプロピルビス(フェニルシアネート)が含まれるが、これらに限定するものではない。この基本構造に修正を加えることによって、靭性、剛性、および高ガラス転移温度を含むがこれらに限定することのない様々なエンジニアリング特性を、もたらすことができる。これらのモノマーを加熱すると、典型的な場合はトリアジン樹脂であるプレポリマーが得られる。さらに加熱すると、ガラス転移温度が240〜290℃の範囲内である高度に架橋したポリシアヌレートが形成される。この樹脂を、単独で、またはエポキシとブレンドして使用することができる。ある電子関連の適用例では、シアン酸エステルをベースにした少なくとも3種のポリマー、すなわちシアン酸エステルホモポリマー、シアン酸エステルとビスマレイミドとのコポリマー(ビスマレイミドトリアジン(BT)樹脂として知られる)と、ビスマレイミドを使用する。
【0082】
本発明のポリマー結合剤は、ポリマー結合剤溶液(および/または流延溶液)が形成されるよう適切な溶媒に溶解するときに、1種または複数の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤には、加工助剤、酸化防止剤、光安定剤、光吸収係数調整剤、難燃添加剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、例えば酸化ケイ素、接着促進剤、補強剤、および界面活性剤または分散剤と、これらの組合せが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0083】
ポリマー溶液は、支持体の表面、例えばエンドレスベルトまたは回転ドラムの表面に流延しまたは塗布することができ、それによってフィルム層を形成することができる。溶媒含有フィルム層は、適切な温度(熱硬化することができる)でベークすることによって、または実質的な乾燥フィルムを生成する単なる乾燥(または「Bステージ」として知られる部分乾燥)によって、自立型フィルムに変換することができる。本発明で使用する、実質的な乾燥フィルムとは、2、1.5、1.0、0.5、0.1、0.05、および0.01重量%未満の揮発分(例えば、溶媒または水)がポリマー複合体中に残っているフィルムと定義される。さらに、内部にスピネル結晶充填剤が分散されている熱可塑性ポリマー組成物を押し出して、フィルムまたは任意のその他の所定の成形品を形成することができる。
【0084】
一実施形態では、下記の数値のいずれか2つ、すなわち1、2、3、4、5、7、8、9、10、12、14、16、18、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、および200ミクロンのいずれか2つの間およびこれら2つを含んだ厚さを有するポリマーフィルム(ポリマー複合体)を作製する。スピネル結晶充填剤を、例えば約10から約30重量%の添加レベルでポリマー結合剤中に分散させた場合、下記の数値のいずれか2つ、すなわちミクロン当たり0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、および0.6のいずれか2つの間およびこれら2つを含んだ「可視−赤外線」吸収係数が、測定される。
【0085】
本発明の実施形態では、記述されるスピネル結晶充填剤によって、既に光活性化された経路(レーザ光線を介して比較的短い時間で形成された)上への良好な金属イオン堆積が、可能になる。さらに、スピネル結晶充填剤は、高速光活性化プロセスで機能性をもたらす(すなわち、「光活性化」は、比較的低いレベルの光で容易に行われる)可視−赤外線吸収係数を、複合体に与える。
【0086】
本発明によれば、ポリマー結合剤は、組成物およびポリマー複合体に重要な物理的性質を与えるよう選択される。有利な性質には、良好な接着性(すなわち、金属接着または金属への接着)、高および/または低モジュラス(適用例に応じて)、高い機械的伸び、低湿潤膨張係数(CHE)、および高引張り強さが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0087】
ポリマー結合剤の場合と同様に、スピネル結晶充填剤は、強力な光エネルギーが加えられた後に、明確な光活性化経路を有するポリマー複合体が提供されるよう、特に選択することもできる。例えば、明確な光活性化経路は、この光活性化材料を無電解メッキ浴に浸漬した後に、明確な回路金属トレースをより容易に生成することができる。金属は、典型的な場合、無電解メッキステップを介して、ポリマー複合体表面の光活性化部分に堆積される。
【0088】
一実施形態では、本発明のポリマー組成物を使用して、多層(少なくとも2層以上)ポリマー複合体を形成することができる。多層ポリマー複合体は、プリント回路板(「PCB」)、チップスケールパッケージ、ウェハスケールパッケージ、高密度相互接続板(HDI)、モジュール、「LGA」ランドグリッドアレイ、「SOP」(システムオンパッケージ)モジュール、「QFN」クワッドフラットパッケージノーリード、「FC−QFN」フリップチップクワッドフラットパッケージノーリード、またはその他同様のタイプの電子基板の、少なくとも一部として使用することができる。プリント回路板(ポリマー組成物で覆われ、またはその内部にポリマー複合体を組み込んだもの)は、片面、両面にすることができ、スタックまたはケーブル(すなわち、フレキシブルな回路ケーブル)に組み込むことができる。スタックは、一般に多層板と呼ばれるものを形成するための、いくつかの個々の回路を含むことができる。これらのタイプの回路のいずれかは、単一のフレキシブルまたはリジッド回路に使用することができ、あるいは、リジッド/フレキシブルプリント配線板またはケーブルが形成されるように組み合わせることができる。
【0089】
3層ポリマー複合体の場合、スピネル結晶充填剤は、外層、内層、少なくとも2層、または3層すべてに含めることができる。さらに、スピネル結晶充填剤の濃度(または添加量)は、所望の最終特性に応じて、個々の層のそれぞれで異ならせることができ、または同じにすることができる。
【0090】
一実施形態では、電磁放射線(すなわち、レーザ光線による光エネルギー)をポリマー複合体の表面に当てる。一実施形態では、ポリマーフィルムまたは複合体を、市販されているEsko−Graphics Cyrel(登録商標)デジタルイメージャ(CDI)を使用して光活性化することができる。このイメージャは、連続波モードで操作することができ、またはパルスモードで操作することができる。このエネルギーを、フィルムの特定の所定部分に当てる目的は、フィルム表面を光活性化することである。本明細書で定義されるように、光活性化という用語は、ポリマー複合体の表面の一部、すなわち、金属回路トレースを形成することが可能な手法で表面に金属イオンを結合させることができる部分と定義される。少量の金属だけが、フィルム表面の光活性化部分に無電解メッキされ、それによって導電性経路の形成が不可能になる場合、このフィルムを、本明細書における「光活性化可能」と見なすことはできない。
【0091】
ポリマー複合体を光活性化するため、50ワットのイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)レーザを用いることができる。しかし、その他のタイプのレーザを使用することができる。一実施形態では、YAGレーザ(例えば、Chicago Laser System Model CLS−960−S Resistor Trimmer System)を使用して、約355、532、または1064nmの波長の光の範囲で1から100ワットの間のエネルギーを放出することができる。一般に、ポリマー複合体表面の一部を光活性化するのに有用なレーザ光の波長は、下記の数値のいずれか2つ、すなわち200nm、355nm、532nm、1064nm、または3000nmのいずれか2つの間およびこれら2つを含む波長の範囲にすることができる。
【0092】
一般に、レーザ光線は、音響光学変調器/スプリッタ/減衰器(AOM)を使用して変調させることができ、シングルビームで23ワットまで生成することができる。ポリマー複合体は、ドラムまたは金属板の外面に、真空によってまたは接着剤によって(あるいはその両方によって)、所定位置に保持することができる。ドラムタイプのアセンブリは、生産時間を短縮させるため、分当たり1から2000回転に及ぶ速度でフィルムを回転させることができる。レーザ光線のスポットサイズ(またはビーム直径)は、下記の数値のいずれか2つ、すなわち1、2、4、6、8、10、15、20、または25ミクロンのいずれか2つの間およびその2つを含む焦点距離にすることができ、典型的な場合は18または12ミクロンである。平均露光量(例えば、エネルギー線量)は、下記の数値のいずれか2つ、すなわち0.1、0.5、1.0、2、4、6、8、10、15、または20J/cm2のいずれか2つの間、およびこれら2つを含む範囲にすることができる。この実施例では、少なくとも4および8J/cm2を使用した。
【0093】
イメージファイルとして知られるプリント回路板のデジタルパターンは、ポリマー複合体表面の所望の部分(すなわち部位)に光を向けるのに使用することができる。ソフトウェアを使用して、ライン、スペース、カーブ、パッド、ホールの部位に関する情報、ならびにパッド直径、パッドピッチ、およびホール直径などのその他の情報を記憶することができる。このデータは、AOM電子デバイスに容易にアクセス可能なデジタルメモリに、記憶させることができる。
【0094】
レーザ光線の動きは、コンピュータによって制御することができ、パネルまたは複合体の表面の端から端まで、組織化された所定の画素ごと(ラインごと)の手法で、誘導される。回路パターンの微細なフィーチャ、例えば線幅が100、75、50、または25ミクロン未満のフィーチャは、ポリマー組成物の表面に刻み込まれている。光源、走査、ビーム変調、デジタルパターン転写、および上述の機械的条件の組合せをすべて使用して、所望の特定の回路パターンを提供することができる。
【0095】
一実施形態では、金属を、引き続きポリマー複合体の光活性化部分に塗布する。これらのポリマー複合体の場合、無電解メッキステップで「無電解」メッキ浴を使用して、表面に金属をメッキすることができる。メッキ浴は、銅イオン供給源、還元剤、酸化剤、およびキレート剤を、微量のその他の添加剤に加えて含むことができる。
【0096】
メッキ浴でフィルム表面を金属メッキすることができる、速度および品質を制御することができる変数には、メッキ浴の温度、メッキされる表面の量、溶液の化学的バランス(例えば、消費された物質をメッキ溶液に補充すること)、および機械的攪拌の程度が含まれるが、これらに限定するものではない。メッキ浴の温度範囲は、室温から、約70から80℃の間の温度に制御することができる。この温度は、使用されるキレート剤(およびその他の添加剤)のタイプ、および量に応じて調節することができる。
【0097】
デジタル方式で画像形成された回路は、1段階または2段階プロセスを使用することによって、無電解銅メッキすることができる。まず、本発明のポリマー組成物または複合体に、光活性化ステップによってデジタル方式で画像形成する。光活性化による細片、または種々雑多な粒子は、清浄な無電解銅メッキステップを開始させるため、機械的ブラッシング、空気または超音波処理によって除去することができる。これらの初期ステップを開始した後、光活性化ポリマー組成物または複合体を、無電解銅メッキ浴中に、約>3ミクロン/時のメッキ速度で浸漬することができる。
【0098】
本発明の利点について、下記の非限定的な実施例で述べる。ポリマー結合剤およびスピネル結晶充填剤を含有する複合体の、調製および試験で使用される処理および試験手順を、以下に記述する。
【実施例】
【0099】
以下の実施例は、以下に述べるスピネル結晶充填剤の分散液とブレンドされたポリマー結合剤から調製した。
【0100】
(実施例1)
金属酸化物スラリを調製したが、この調製は、まず、Netzschから市販されている媒体ミルで、分散剤Disperbyk−192(BYK−Chemie GmbH製の顔料親和性基とのコポリマー)25gをアセトン247.5gに溶解することにより行った。この溶媒を、1000rpmで攪拌した。微細な銅クロマイトスピネル、CuCr24粉末(Shepherd Black 20C980)250gを添加し、約30分間混合した。上記ミリングプロセスの後、スラリ中の平均1次粒径は0.664ミクロンであることが、測定された。このスラリを、以下のサンプル調製で使用する。
【0101】
サンプルA:10重量%の充填エポキシ組成物は、Dyhard(商標)100SF(硬化剤として使用、Degussa AGからの固化防止剤を含むシアノグアニジン)7.20gおよびDyhard(商標)UR500(促進剤として使用、Degussa AGからのカルバミド化合物)10.80gを、Epon(商標)862(Resolution Performance Products,LLPからのビスフェノールF/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂)162.00gに溶解することによって調製した。Dyhard(商標)UR500の組成物は、>80%のN,N”−(4−メチル−m−フェニレン)ビス(N’,N’−ジメチル尿素)からなる。均質で粘性のある有機媒体を得た後、事前に分散させた銅クロマイトスピネル粉末スラリ20gを添加し、手で、または市販のミキサで、完全に混合した。上記組成物を、3本ロールミルでさらに処理して、一貫した粘度および分散状態のペーストを実現した。この組成物に関する粘度は、10rpmおよび25℃で#5スピンドルを使用してブルックフィールドHBT粘度計で測定した場合、約30〜100Pa・Sであった。
【0102】
サンプルB:10重量%のスピネル充填エポキシ組成物は、Dyhard(商標)100SF(硬化剤として使用、Degussa AGからの固化防止剤を含むシアノグアニジン)7.12gおよびDyhard(商標)UR500(促進剤として使用、Degussa AGからのカルバミド化合物)10.68gを、Epon(商標)862(Resolution Performance Products,LLPからのビスフェノールF/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂)162.0gに溶解することによって調製した。Dyhard(商標)UR500の組成物は、>80%のN,N”−(4−メチル−m−フェニレン)ビス(N’,N’−ジメチル尿素)からなるものであった。均質で粘性のある有機媒体を得た後、事前に分散させた銅クロマイトスピネル粉末スラリ20g、および大豆レシチン(Central Soya Inc.からの界面活性剤)2gを添加し、手で、または市販のミキサで、完全に混合した。上記組成物を、3本ロールミルでさらに処理して、一貫した粘度および分散状態のペーストを実現した。この組成物に関する粘度は、10rpmおよび25℃で#5スピンドルを使用してブルックフィールドHBT粘度計で測定した場合、約30〜100Pa・Sであった。
【0103】
サンプルC:10重量%の充填エポキシ組成物を、上述の成分を使用して、すなわちDyhard(商標)100SF、Dyhard(商標)UR500、Epon(商標)862、および事前に分散させた銅クロマイトスピネルスラリを使用して、調製した。界面活性剤をリン酸エステル(Rhone Poulenc IncからのRE−610)に変え、それぞれの量を7.12g、10.68g、160.2g、20g、および2gにした。
【0104】
サンプルD:10重量%の充填エポキシ組成物を、上述の成分を使用して、すなわちDyhard(商標)100SF、Dyhard(商標)UR500、Epon(商標)862、および事前に分散させた銅クロマイトスピネルスラリを使用して、調製した。界面活性剤を、消泡剤2−ヘプタノン(Eastman Chemicalsから)に変え、それぞれの量を7.12g、10.68g、160.2g、20g、および2gにした。
【0105】
サンプルE:上述の手順に従い、5重量%の充填組成物を、上述の成分を使用して、すなわちDyhard(商標)100SF、Dyhard(商標)UR500、Epon(商標)862、事前に分散させた銅クロマイトスピネルスラリ、および大豆レシチンをそれぞれ7.52g、11.28g、169.2g、10g、および2gの量で使用して、調製した。
【0106】
サンプルF:20重量%の充填エポキシ組成物を、上述の成分を使用して、すなわちDyhard(商標)100SF、Dyhard(商標)UR500、Epon(商標)862、事前に分散させた銅クロマイトスピネルスラリ、および大豆レシチンをそれぞれ6.32g、9.48g、142.2g、40g、および2gの量で使用して、調製した。
【0107】
サンプルG:30重量%の充填エポキシ組成物を、上述の成分を使用して、すなわちDyhard(商標)100SF、Dyhard(商標)UR500、Epon(商標)862、事前に分散させた銅クロマイトスピネルスラリ、および大豆レシチンをそれぞれ5.52g、8.28g、124.2g、60g、および2gの量で使用して、調製した。
【0108】
上述のロールミルで処理したペースト組成物を、別々に、ドクターブレードによって厚さ5ミルのKapton(登録商標)ポリイミドキャリアフィルム上に被覆し、それによって、ピンホール、気泡、またはその他の目に見える欠陥がない状態で、2.5から3.0ミルの範囲内の均一な厚さを実現した。これらの、より厚いサンプルフィルムは、DC画像形成ワーク用であった。光学密度(OD)測定のため、0.5から2.0ミルの範囲内の、別の一組のより薄い被覆フィルムも、ドクターブレードを用いて調製したが、測定データは、この一連のCuCr24スピネル充填エポキシサンプルに関する吸収係数を計算するのに使用されるものである。10分間定着させた後、被覆されたサンプルを150℃で1時間加熱して、エポキシ媒体の硬化を完了させた。データを、下記の表1にまとめる。
【0109】
【表1】

【0110】
DuPont Cyrelデジタルイメージャを使用したときの、レーザイメージアビリティおよび銅メッキ可能性を、任意の厚さのサンプルA〜Gに関して下記の通りまとめる。
【0111】
【表2】

【0112】
上記実施例は、1つのタイプのエポキシ樹脂を用いるが、この実施例は、単なる例示であることが理解されよう。使用したエポキシ樹脂は、広範な種類の様々なエポキシ樹脂の代表例である。
【0113】
(実施例2)
金属酸化物スラリを調製したが、この調製は、Netzschから市販されている媒体ミルで、分散剤Disperbyk−192(BYK−Chemie GmbH製の顔料親和性基とのコポリマー)25gをアセトン247.5gに溶解することにより行った。この溶媒を、1000rpmで攪拌した。微細な銅クロマイトスピネル、CuCr24粉末(Shepherd Black 20C980)250gを添加し、約30分間混合した。上記ミリングプロセスの後、スラリ中の平均1次粒径は0.664ミクロンであることが、測定された。このスラリを、以下のサンプル調製で使用する。
【0114】
ビスマレイミド/トリアジン(BT)樹脂は、ビスマレイミドとジシアノビスフェノールAとの反応生成物であり、これが、トリアジン環およびジアジン環を含有する構造をもたらす。これらは、三菱化学からBT樹脂として販売されており、シアン酸エステルとして分類される。BTは、約195℃のTgを有し、約160℃の使用温度を提供することができる。このDC調査に必要なBT樹脂溶液は、70重量%の樹脂と、溶媒としての30重量%のメチルエチルケトン(MEK)とからなる。
【0115】
BT樹脂溶液の粘度を上昇させるため、MEKを、室温で磁気攪拌しながらヒュームフード内で蒸発させた。室温での蒸発を選択することによって、受け取ったままの溶液のBT樹脂の物理的および化学的性質を変化させるような、望ましくない熱の影響がないことが、確認された。20.5時間の蒸発によって、7.03重量%のMEKが除去され、75.29重量%のBT樹脂溶液が得られた。このプロセスは、BT樹脂溶液の粘度を上昇させ、その結果、デジタル回路画像形成のためのより許容可能な被覆として、適切な粘度の充填BTが得られることがわかった。
【0116】
3種の組成物、H、I、およびJは、BT樹脂中に5、10、および20重量%のCuCr24スピネルが提供されるように作製した。実際の量は、80℃で溶媒乾燥する後続のステップの後にほぼ完全に除去されるべき揮発性MEK溶媒を差し引いた後、必要とされるBT樹脂の量と共に計算した。CuCr24スピネル粉末を、BT樹脂溶液中に容易に分散させ、無機材料と有機結合剤溶液とを混合するのに適切な方法を使用した。しかし、BT樹脂溶液に使用される溶媒MEKの揮発性は高いので、分散装置/方法は、全粘度を上昇させおよび/またはスキン層を形成することになるMEKの損失が最小限に抑えられるよう、処理された材料のフルまたはセミエンクロージャを設けるべきである。特定のサンプルの調製手順を、以下に示す。
【0117】
サンプルH:BT樹脂組成物中に5重量%のCuCr24スピネルを加えたもの50gを、前もって濃縮したBT樹脂溶液(MEK中、75.29重量%のBT樹脂)63.09g中に上記CuCr24スピネル粉末スラリ2.50gを混合することによって調製した。添加した成分の総量は65.59gであったが、揮発性MEK溶媒を差し引いた後、残りのCuCr24スピネルおよびBT樹脂によって、指定量50gが得られた。
【0118】
サンプルI:BT樹脂組成物中に10重量%のCuCr24スピネルを加えたもの50gを、前もって濃縮したBT樹脂溶液(MEK中、75.29重量%のBT樹脂)59.77g中に上記CuCr24スピネル粉末スラリ5.00gを混合することによって調製した。添加した成分の総量は64.77gであったが、揮発性MEK溶媒を差し引いた後、残りのCuCr24スピネルおよびBT樹脂によって、指定量50gが得られた。
【0119】
サンプルJ:BT樹脂組成物中に20重量%のCuCr24スピネルを加えたもの50gを、前もって濃縮したBT樹脂溶液(MEK中、75.29重量%のBT樹脂)53.13g中に上記CuCr24スピネル粉末スラリ100.00gを混合することによって調製した。添加した成分の総量は63.13gであったが、揮発性MEK溶媒を差し引いた後、残りのCuCr24スピネルスラリおよびBT樹脂によって、指定量50gが得られた。
【0120】
平行群の3種の組成物、K、L、およびMも、界面活性剤として1重量%の大豆レシチンを添加することにより、BT樹脂中に5、20、および30重量%のCuCr24スピネルが得られるように調製した。実際の量は、80℃で溶媒乾燥する後続のステップの後にほぼ完全に除去されるべき揮発性MEK溶媒を差し引いた後、必要とされるBT樹脂の量と共に計算した。所望の重量%のCuCr24スピネルを維持するため、BT樹脂を犠牲にして大豆レシチン界面活性剤を添加した。特定のサンプルの調製手順を、以下に示す。
【0121】
サンプルK:BT樹脂組成物中に5重量%のCuCr24スピネルを加えたもの50gを、前もって濃縮したBT樹脂溶液(MEK中、75.29重量%のBT樹脂)62.42gおよび界面活性剤としての大豆レシチン0.5g中に上記CuCr24スピネル粉末スラリ2.50gを混合することによって調製した。添加した成分の総量は65.42gであったが、揮発性MEK溶媒を差し引いた後、残りのCuCr24スピネルおよびBT樹脂によって、指定量50gが得られた。
【0122】
サンプルL:BT樹脂組成物中に20重量%のCuCr24スピネルを加えたもの50gを、前もって濃縮したBT樹脂溶液(MEK中、75.29重量%のBT樹脂)52.46gおよび界面活性剤としての大豆レシチン0.5g中に上記CuCr24スピネル粉末スラリ10.00gを混合することによって調製した。添加した成分の総量は62.96gであったが、揮発性MEK溶媒を差し引いた後、残りのCuCr24スピネルおよびBT樹脂によって、指定量50gが得られた。
【0123】
サンプルM:BT樹脂組成物中に30重量%のCuCr24スピネルを加えたもの50gを、前もって濃縮したBT樹脂溶液(MEK中、75.29重量%のBT樹脂)45.82gおよび界面活性剤としての大豆レシチン0.5g中に上記CuCr24スピネル粉末スラリ15.00gを混合することによって調製した。添加した成分の総量は61.32gであったが、揮発性MEK溶媒を差し引いた後、残りのCuCr24スピネルおよびBT樹脂によって、指定量50gが得られた。
【0124】
DC画像形成ワークの場合、1ミリメートルの厚さの銅箔を、キャリア層として使用した。上記HからMの組成物を別々に、ドクターブレードによって被覆し、それによって、ピンホール、気泡、またはその他の目に見える欠陥がない状態で、2.5から3.0ミルの範囲内の均一な厚さを実現した。10分間定着させた後、これら被覆したサンプルを80℃で1時間加熱して、BT樹脂溶液中に含有されるMEK溶媒を蒸発させ、その後、製造業者が推奨するように、BT樹脂を200℃で90分間硬化した。
【0125】
光学密度(OD)の測定用として、別の一組のより薄い被覆フィルムも、ドクターブレードを用いて、厚さ5ミルのKapton(登録商標)ポリイミドキャリアフィルム上に0.5から2.0ミルの範囲で調製し、その測定データを使用して、この一連のCuCr24スピネル充填BTサンプルに関する吸収係数を計算した。
【0126】
スピネル充填BT樹脂に関するデータを、下記の表2にまとめる。
【0127】
【表3】

【0128】
DuPont Cyrelデジタルイメージャを使用したときの、サンプルI、J、L、およびM(実行可能な実施例)と、HおよびK(比較例)とに関するレーザイメージアビリティおよび銅メッキ可能性を、以下にまとめる。
【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

【0131】
形成されたポリマー複合体は、微細な導電性経路を有する回路を作製するのに使用することができる。微細な導電性経路は、無電解金属メッキステップを使用して形成することができる。例えば、レーザ光線で複合体の表面を光活性化した後に、その光活性化部分をメッキして、細いラインまたは経路をポリマー組成物または複合体の表面に形成する。
【0132】
本発明のいかなる特定の理論にも拘泥するものではないが、少なくとも本発明のいくつかの実施形態では、増幅光(例えばレーザ)が、完全とはいかないまでも実質的にポリマー連続ドメインを揮発除去し、露光された不連続スピネル結晶型ドメインを残すと考えられる。増幅光によって引き起こされる、(スピネル結晶の)周囲条件へ熱処理および突発的なの曝露によって、結晶は、メタライゼーション処理を受ける準備をすると思われる。
【0133】
前述の明細書では、本発明について、特定の実施形態を参照しながら述べてきた。しかし当業者なら、特許請求の範囲で述べた本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を行うことができることが理解されよう。したがって、明細書および図は、制限的な意味ではなく例示的な意味を持つと見なし、そのような修正のすべては、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0134】
利益、その他の利点、および問題の解決策を、特定の実施形態に関して述べてきた。例えば利点には、微細なラインフィーチャを形成すること、基板上に銅パターンを形成するリソグラフィ法に比べボード上に回路を作製する製造方法を単純化すること、パネルトゥパネル式バッチ処理法とは対照的にメッキステップに加えてレーザ画像形成ステップでリールトゥリール式処理ができることが含まれる。しかし、これらの利益、利点、問題の解決策と、任意の利益、利点、または解決策をもたらしまたはより顕著なものにすることができる任意の要素は、いずれかまたはすべての特許請求の範囲の極めて重要な、必要とされ、または本質的な、特徴または要素と解釈するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光活性化可能なポリマー組成物であって、
A.エポキシ樹脂、シリカ充填エポキシ、ビスマレイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン、フルオロポリマー、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブタジエン/ポリイソプレン架橋性樹脂(およびコポリマー)、液晶ポリマー、ポリアミド、シアン酸エステル、およびこれらの組合せからなる群から選択され、前記ポリマー組成物の全重量の40から97重量%の量で存在するポリマー結合剤と、
B.前記ポリマー組成物の全重量の3から60重量%の量で存在するスピネル結晶充填剤と
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
ミクロン当たり0.05から0.6の間およびこれらの数値を含んだ可視−赤外線吸収係数を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記スピネル結晶充填剤は、化学式AB24によって表され、ただし
i.Aは、原子価2を有する金属陽イオンであり、
ii.Aは、カドミウム、亜鉛、銅、コバルト、マグネシウム、スズ、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、クロム、またはこれらの2種以上の組合せであり、
iii.Bは、原子価3を有する金属陽イオンであり、
iv.Bは、カドミウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マンガン、スズ、チタン、アルミニウム、クロム、またはこれらの2種以上の組合せである
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記スピネル結晶充填剤は、化学式BABO4によって表され、ただし
i.Aは、原子価2を有する金属陽イオンであり、
ii.Aは、カドミウム、亜鉛、銅、コバルト、マグネシウム、スズ、チタン、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、クロム、またはこれらの2種以上の組合せであり、
iii.Bは、原子価3を有する金属陽イオンであり、
iv.Bは、カドミウム、マンガン、ニッケル、亜鉛、銅、コバルト、鉄、マンガン、スズ、チタン、アルミニウム、クロム、またはこれらの2種以上の組合せである
ことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
Bは、クロム、鉄、アルミニウム、ニッケル、マンガン、スズ、およびこれらの2種以上の組合せからなる群から選択された、周期表からの元素であることを特徴とする請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記スピネル結晶充填剤は、50から10000ナノメートルの間およびこれらの数値を含んだ平均粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
プリプレグが形成されるようガラス構造に染み込ませることを特徴とする請求項1に記載の組成物。

【公開番号】特開2006−348298(P2006−348298A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−166500(P2006−166500)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】