説明

増粘展延性昇温潤滑剤

グリセリン、多価アルコール、非イオン界面活性剤、およびCarbomer増粘剤の混合物を含む、実質的に無水の増粘展延性昇温潤滑剤組成物であって、界面活性剤は皮膚およびラテックス上における組成物の濡れおよび展延性を改善し、したがってこの組成物の使用中に皮膚またはコンドームに付与して周囲の水分と接触した際に最適な昇温効果を得ることができ、組成物をコンドームパッケージに添加し、約1週間でコンドーム内および外表面のほぼ全体に展延させてコーティングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ラテックスゴムおよびヒトの皮膚上における展延性が高く、かつ水分と接触した際に潤滑性昇温効果をもたらす、身体用潤滑剤に関する。
【0002】
背景技術
潤滑剤は、ラテックス製コンドームの潤滑処理および皮膚の潤滑を含めた多数の用途に用いられている。より最近では、グリセリンまたはプロピレングリコールが水に溶解した際に発生する熱を利用した潤滑剤が設計されている。残念ながら、グリセリンおよびプロピレングリコールは皮膚その他の表面上で容易に展延せず、グリセリンは皮膚表面の水分を抽出するので長期間の使用後には皮膚を刺激する。潤滑剤を豊富に感じさせる増粘剤の添加は、潤滑剤の展延性を顕著に制限する。そのような潤滑剤の展延性は、潤滑剤の熱を保持するのに役立つと報告された1種類以上の断熱剤、たとえば蜂蜜、ミリスチン酸イソプロピルおよび/またはパルミチン酸イソプロピルの添加によってさらに妨げられる(たとえば米国特許出願公開No. 2004/0138074、2003/0232090、2003/0211161および2003/0207772、ならびに国際特許出願公開No. WO 03/092652、WO 03/092651およびWO 09/092650を参照;後記に考察)。
【0003】
USP No. 4,851,434('434特許)(Deckner)には、べたつかず刺激のない保湿剤が開示され、主要な保湿成分としてのジ-、トリ-もしくはポリグリコールアミドまたはグルカミンとα-ヒドロキシ置換脂肪酸(水素または低級アルキルを含む式をもつ)との反応生成物、保存剤、増粘剤、皮膚鎮静剤、たとえばアラントインおよび/またはdl-パンテノール、ならびに水を含有する組成物が開示されている。'434特許に開示されている非刺激性保湿剤は、身体から発生する水分と接触した際に昇温効果を生じることはなく、ラテックスおよびヒトの皮膚上で自然に展延することがない。
【0004】
USP No. 4,952,560(Kigasawaら)には、ゼラチン、カゼインおよび大豆タンパク質からなる水溶性タンパク質、ならびに炭素数2〜4の一価アルコール、ならびに/あるいは油性(oleginous)物質を含有し、さらに、2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール、約200〜800の平均分子量をもつポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンおよびソルビトールよりなる群から選択される湿潤剤を全軟膏重量に対して1〜35重量%含有する軟膏基剤が開示されている。この軟膏基剤は薬物の経皮吸収を改善するが、潤滑剤として機能するには濃厚すぎる。
【0005】
USP 5,441,723(Simmons)には、無毒性の低適合性(hypocompatible)、生分解性殺菌剤が開示されている。この無毒性の低適合性、生分解性殺菌剤は、広範な病原菌に対して有効であり、イソプロピル、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、アリルアルコール、またはその混合物よりなる群から選択される一価アルコール65〜75重量%、ならびにプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、PEG 400、グリセロールもしくは1,4-ブタンジオール、またはその混合物よりなる群から選択される少なくとも1種類の多価アルコール約4〜約16重量%(重量比)を含む。この殺菌剤中の一価アルコールは病原菌に対して主要な消毒または殺菌作用をもたらし、一方、多価アルコールは一価アルコールにより生じる表面光沢および水または水性体液により生じる表面張力を低下させ、これにより殺菌剤/消毒剤が病原菌を殺し、かつ有害作用なしに患者または無生物表面に同等に有効に作用するのを可能にし、組成物の引火点を低下させ、皮膚を滑らかにし、蒸発速度を低下させる。この殺菌剤は潤滑剤ではなく、昇温成分を含有しない。これに関して、多価アルコールは、一価アルコールの蒸発速度を低下させることにより、蒸発冷却によって本質的に表面を冷却する。
【0006】
USP No. 5,512,289(Tsengら)には、炭素原子2〜6個のヒドロキシアルキルセルロースを含む水溶性ポリマーゲルマトリックス;アルキルフェノキシポリエトキシエタノール系殺精子薬;およびポリエトキシル化非イオン化合物、たとえばポリエトキシル化ひまし油を含む可溶化部分を含有する、殺精子、抗ウイルス性の潤滑剤組成物が開示されている。アルキルフェノキシポリエトキシエタノール系殺精子薬の使用により、ヒドロキシアルキルセルロースゲルの崩壊が阻止される。可溶化剤の添加によりゲルマトリックスの崩壊が実質的に阻止され、組成物中でゲルマトリックスがその特性を維持できる。この殺精子用組成物は、医薬的に許容できるビヒクル、たとえば水、アルコール類、たとえばエタノール、グリセリン、プロピレングリコール、およびその混合物の使用により、分散させることができる。この殺精子性潤滑剤の典型的な配合物は、水75.50重量%、グリセリン17.00重量%、ヒドロキシエチルセルロース1.00重量%、ポリビニルピロリドン0.90重量%、カルボキシメチルセルロース1.00重量%、Nonoxynol-9殺精子薬2.00重量%、ポリエトキシル化ひまし油2.00重量%、メチルパラベン0.20重量%、ソルビン酸0.05 wt%、およびクエン酸0.35重量%を含有することができる。グリセリンおよびグリコールは既に水に溶解しているので、この潤滑剤は昇温効果をもたらさない。
【0007】
USP No. 5,514,698(Ahmadら)には、抗真菌性膣クリーム組成物が開示されている。この組成物はヒトの体温で安定な粘度をもち、約0.4〜10.0%のイミダゾール系抗真菌薬(ミコナゾール(miconazole)、エコナゾール(econazole)、テルコナゾール(terconazole)、サペルコナゾール(saperconazole)、イトラコナゾール(itraconazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)およびクロトリマゾール(clotrimazole))、約1.0〜5.0%の脂肪酸エステル(ステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピルおよびラウリン酸イソプロピル)、約1.0〜25.0%の脂肪族アルコール(セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびプロピレングリコール)、約2.0〜5.0%の界面活性剤(ポリソルベート(polysorbate) 60またはポリソルベート80)、約0.02〜0.20%の酸化防止剤(ブチル化ヒドロキシアニソール)、pH範囲を約3.0〜7.0の値に調整するのに十分な量の無機塩基(NaOHまたはKOH)を含む。この膣クリーム剤は潤滑剤ではなく、体温でその粘度を長期間維持することが期待されている。プロピレングリコールがその成分中に用いられているが、それは既に水と混合されており、したがってこのクリーム剤が身体から発生する水分と接触した際に昇温効果が起きることはない。
【0008】
USP No. 5,649,825(Ratkus)には、歯科用の根管殺菌性潤滑剤が開示されており、神経を歯から摘除する際にこれによって清掃用ワイヤまたはやすりをより自由に移動させることができる。この組成物は、神経腔内に組織や象牙質の屑が詰まるのを少なくする。この配合物は、寒冷気候で輸送する際の分解にも耐え、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、プロピレングリコール、メチルパラベン、プロピルパラベンおよびブチルパラベンを精製水の溶液中に含有する。この潤滑剤は昇温効果をもたらさない。
【0009】
USP No. 5,885,591(Ahmadら)には、1種類以上の多価アルコール、セルロースから誘導した1種類以上の水溶性ポリマー、水、ならびに所望により保存剤およびアルカリ金属塩基またはアルカリ土類金属塩基を含有する、高潤滑性の身体用潤滑剤組成物が開示されている。これらの組成物は、避妊ならびに疾患の治療および予防に用いる医薬を送達するためのビヒクルを提供することができる。この身体用潤滑剤組成物は、約30%のグリセリン、約5%のプロピレングリコール、約10%のソルビトール、約0.4%の保存剤、および約0.4%のヒドロキシエチルセルロース、約0.01%の水酸化ナトリウム、ならびに約50%の水を含有する。この組成物は、33〜約466の潤滑度をもつ。この身体用潤滑剤組成物は粘膜に付着し、容易には洗い落とされない。この組成物は既に水を含有するので、この潤滑剤を身体に適用してグリセリンが身体から発生する水分と接触した際に加熱または昇温反応が起きることはない。
【0010】
USP No. 6,139,848(Ahmadら)には、少なくとも1種類の水溶性多価アルコール、セルロースから誘導した水溶性ポリマー、トコフェロールまたはトコフェロール誘導体、非イオン性の水溶性または分散性乳化剤、および水を含有する、安定な身体用潤滑剤組成物が開示されている。潤滑性の油性トコフェロールまたはトコフェロール誘導体は、この身体用潤滑剤中にエマルションとして存在する。乳化剤は、好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(一般にツイーン(Tween) 60またはポリソルベート(Polysorbate) 60として知られる)、およびイソセチルアルコールのポリエチレングリコールエーテル(一般にIsoceteth 20またはArlasolve 200として知られ、ICI Americas, Inc.から入手できる;デラウェア州ニューカッスル)よりなる群から選択される、ポリアルキレン系乳化剤である。水溶性多価アルコールは、組成物の潤滑性を高める作用をする。セルロースから誘導した水溶性ポリマーは、組成物に目的とする滑り性および粘度を付与する作用をする。水は、粘膜に水分として送達されるのに十分な、かつ組成物に稠度および粘度を付与するのに十分な量であることが望まれる。非イオン界面活性剤は、トコフェロール、酢酸トコフェロールまたは他のトコフェロール誘導体を乳化してミクロエマルションにし、このエマルション中では内部相または油相が微細化されて2ミクロンまたは2ミクロン未満のサイズのきわめて小さな小球になる。エマルション小球はそれらのサイズが著しく小さいため凝集しないので、エマルションの均質性を維持し、組成物の物理的安定性を保持する補助となる。多価アルコール(グリセリン)は既に水と混和されているので、この潤滑剤を身体に付与した際に加熱または昇温反応が起きることはない。
【0011】
米国特許出願公開No. 2001/0039380(Larsonら)には、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアルキレングリコールおよび多価アルコールのうち少なくとも一方を含み、残部が水である、インビボ生体適合性の音響カップリング媒体(acoustic coupling media)が開示されている。水は既にポリプロピレンアルコールに添加されているので、混合による発熱反応は既に起きており、この潤滑剤を使用する際にさらに昇温が起きることはない。
【0012】
米国特許出願公開No. 2003/0207772および国際特許出願公開No. WO 03/092651(Ahmadら)(米国特許出願公開No. 2003/0211161および国際特許出願公開No. WO 03/092652も参照)には、多価アルコールおよび断熱剤を含有する昇温性かつ非刺激性の潤滑組成物が開示されている。多価アルコールは、グリセリン、アルキレングリコール、ポリエチレングリコールまたはその混合物からなる。アルキレングリコールは、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキサレングリコールよりなる群から選択され、一方、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400よりなる群から選択される。断熱剤は、蜂蜜、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルよりなる群から選択される。昇温作用は、多価アルコールが水に溶解する際に放出される熱により生じ、断熱剤がこの熱を保持する。断熱剤はこの潤滑剤組成物の必須部分であり、この昇温性潤滑剤の展延能を低下させる。
【0013】
米国特許出願公開No. 2003/0232090および国際特許出願公開No. WO 03/092650(Ahmadら)には、昇温性かつ非刺激性の潤滑組成物が開示されている。真菌感染症および細菌感染症を処置するための、多価アルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゲル化剤、および/またはPh調整剤を含有する、実質的に無水の昇温性、無毒性かつ非刺激性の潤滑組成物も開示されている。多価アルコールは、グリセリン、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、またはその混合物からなる。アルキレングリコールは、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびヘキサレングリコールよりなる群から選択され、一方、ポリエチレングリコールはポリエチレングリコール300およびポリエチレングリコール400よりなる群から選択される。断熱剤は、蜂蜜、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルよりなる群から選択される。断熱剤の使用により、この昇温性潤滑剤の展延能が低下する。
【0014】
米国特許出願公開No. 2004/0037911(Letourneauら)には、性器潤滑組成物が開示されている。この組成物は、(i)脂肪酸および/または植物エキスのホメオパシー希釈液、ならびに(ii)生理的に許容できるキャリヤーを含む。好ましい態様によれば、この性器潤滑組成物は約0.05〜約0.5%の麻実油および生理的に許容できるキャリヤーを含み、これにより組成物はローション剤、クリーム剤またはゲル剤を形成する。この組成物は特に、膣湿潤剤として、または性交前もしくは性交中の身体用潤滑剤として使用するのに特に有用である。脂肪酸は麻実油、リノール(C 18:2)酸またはリノレン(Cl 8:3)酸である。植物エキスには、カラジウム・セギナム(Caladium seguinum)、セピア・オフィシナリス(Sepia officianalis)、ヒカゲノカズラ(Lycopodium clavatum)およびオノスモディウム・ビルギナニウム(Onosmodium virginanium)からのエキスが含まれる。キャリヤーの厳密な組成は開示されていない。この潤滑剤は多価アルコールを含まず、温覚を生じない。
【0015】
米国特許出願公開No. 2004/0086575(Smith)には、抗ウイルス組成物が開示されている。この抗ウイルス組成物は少なくとも1種類の亜鉛化合物、少なくとも1種類のフェノール系酸化防止剤(および所望により他の成分)、および医薬用キャリヤーを含有する。亜鉛化合物は、亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、亜鉛スドキシカム(zinc sudoxicam)、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛マリエート、乳酸亜鉛、アミノ酢酸亜鉛、アスパラギン酸亜鉛、グルタミン酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酪酸亜鉛、ギ酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、酸化亜鉛、エチレンジアミン四酢酸亜鉛、ポリ硫酸ペントサン亜鉛(zinc pentosan polysulfate)、オキシ酢酸亜鉛、および水和物よりなる群から選択される。フェノール系酸化防止剤は、次式により表わされる少なくとも1種類の化合物からなる:
【0016】
【化1】

【0017】
式中、各Rは独立して、酸素を含む、または含まない、1〜12個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素残基であり、xは1〜3であり、yは0〜3であり、zは1〜3であり、x+y+zは6未満である。医薬用キャリヤーは、水、アルコール類、脂肪酸、脂肪酸エステル、およびろうのうち少なくとも1種類からなる。この組成物は潤滑剤としては機能しない。
【0018】
米国特許出願公開No. 2004/0138074(Ahmadら)には、ポリオールおよび好ましくは断熱剤を含む、実質的に無水の昇温性、無毒性かつ非刺激性の潤滑組成物が開示されている。この実質的に無水の潤滑剤組成物は、水分に曝露されると温度が少なくとも約5℃上昇し、少なくとも約11 mJ/mgの最大エネルギー放出指数をもつ、ポリオールを含む。この多価アルコールはグリセリン、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、PEG化(PEGylated)化合物、ポリアルキレングリコールを含むブロックコポリマー、およびそれらの混合物から選択される。断熱剤、たとえば蜂蜜、ミリスチン酸イソプロピルおよびパルミチン酸イソプロピルの使用により、この昇温性潤滑剤の展延能が低下する。
【0019】
欧州特許EP 0636374(Tseng)には、抗ウイルス性アルキルフェノキシポリエトキシエタノール系殺精子薬、水溶性ポリマーゲルマトリックス、および殺精子薬をゲルマトリックスと適合性にする可溶化剤を含有する、殺精子、抗ウイルス性潤滑組成物が開示されている。好ましくは、ポリエトキシル化化合物、たとえばポリエトキシル化ひまし油を使用する。水溶性ポリマーは潤滑剤として機能するので、この潤滑剤中には昇温剤は存在しない。
【0020】
日本特許第2292212号(Hans Eke Rennaruto Bidesutoreemu)には、殺菌可能なゲルが開示されている。この殺菌性ゲルは、カルボキシポリメチレンポリマー(カルボーマ(carboma))および1〜90%の安定化用多価アルコール(たとえばエチレングリコール)を含む。カルボーマは多価アルコールの補助により殺菌することができ、ゲルをコバルト60から誘導されるγ線により殺菌する際にゲルが劣化するのを避ける。これは昇温ゲルではなく、多価アルコールはγ線照射中の退色を阻止するために使用されるにすぎない。
【0021】
日本特開平15-183115(Saijo)には、変温(poikilothermal)潤滑剤が開示されている。この潤滑剤は、冷却または昇温を引き起こす成分を含有することができる。この冷却性または昇温性の成分は分散剤であり、これは水溶性ではなく、ポリマーコーティングで保護されている。昇温剤の性質が何であるか、および昇温作用の機序が何であるかは不明瞭である。
【0022】
国際特許出願公開No. WO 93/18740(Dunbar)には、シェービングゲルが開示されている。この水性、非発泡性シェービングゲルは、0.05〜4.0%のカルボキシポリメチレン、2.00〜52.0 %の多価アルコール、および所望によりシリコーン誘導体、抗掻痒薬、保存剤、キレート化剤、中和剤、可溶化剤、紫外線吸収剤または香料からなる。好ましい多価アルコールはグリセリンである。このゲルは、かみそりでシェービングする前に乾いた皮膚や毛に直接付与され、密で快適な潤滑性の良いシェービングを提供する。このシェービングゲルが昇温効果をもたらすことはない。
【0023】
潤滑剤、より具体的には昇温潤滑剤および関連物品の分野における進歩にもかかわらず、接触する皮膚、コンドームその他の表面における展延性の改善により証明される有効な弾性流体力学的潤滑作用をもたらす昇温潤滑剤が、当技術分野では依然として求められている。
【0024】
発明の開示
本発明は、卓越した展延性ならびに低い表面張力および接触角を示し、これにより皮膚と皮膚の接触およびコンドームラテックスフィルムと皮膚の接触に際して十分に濡れた均一な薄層を生成する、増粘展延性昇温潤滑剤を提供する。潤滑剤への増粘剤の添加は、展延性への悪影響のない、リッチ(rich)でクリーミーな組成物を提供する。本発明の増粘展延性昇温潤滑剤組成物は、皮膚またはコンドームラテックスフィルム上に膜厚0.01〜0.1 mmの薄層を容易に形成するのに十分な粘度をもつ。本発明の増粘展延性昇温潤滑剤組成物は、実質的に無水であり、それぞれ40〜60%のグリセリンと他の多価アルコールの混合物および0.1〜3重量%の非イオン界面活性剤、および0.1〜2.0重量%のカルボマー増粘剤を含有する。多価アルコールは、好ましくはプロピレングリコールであり、非イオン界面活性剤は好ましくはポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60またはポリソルベート80である。好ましい増粘展延性昇温組成物は、49.475%のグリセリン、49.475%のプロピレングリコール、0.25重量%カルボポール(Carbopol)971P NF、0.30重量%の抗−細菌保存剤、および0.5重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ポリソルベート20)を含む。
【0025】
本発明の増粘展延性昇温潤滑剤は、リッチ(rich)な感覚を伴ってスムーズに広がり、水分と混合した際に熱を放出する。水分は皮膚から発生したものであってもよい。水分または昇温潤滑剤のいずれかが過剰であると、放出された熱がより多量の素材を加熱しなければならないので温度上昇が少なくなることから、温度上昇はほぼ等容量の増粘展延性昇温潤滑剤と水分が混合した場合に最適である。したがって、増粘展延性昇温潤滑剤の量を使用中に得られる水分の量に制限することが望ましい。たとえばラテックス製コンドームと共に使用する場合、展延性昇温潤滑剤によりコンドームの表面を薄層としてコーティングすることが望ましい。ラテックス製コンドームの内および外表面を潤滑剤でコーティングしないと、皮膚とラテックスがこすれることにより摩擦や刺激が生じる。十分に展延した増粘展延性昇温潤滑剤の薄層があると、摩擦や刺激が除かれないとしても最小限に抑えられ、均一な放熱が保証され、これによって快適なリッチな感覚と温覚が得られる。十分に湿潤した増粘展延性昇温潤滑剤の薄層が、コンドームラテックス表面と皮膚、または皮膚と皮膚(独立した(stand-alone)潤滑剤の場合)に接触すると、弾性流体力学的潤滑が起き、それが効果的に作用し、接触表面が変形した場合でも効果的に摩擦が低下する。
【0026】
増粘展延性昇温潤滑剤をコンドームラテックス表面に均一なコーティングとして取り込ませるのは、一般に達成困難である。しかし本発明の増粘展延性昇温潤滑剤は、小さな接触角でラテックスを濡らす。したがって、約0.2〜5 mlの少量の展延性昇温潤滑剤をコンドームパッケージに添加すると、昇温潤滑剤はコンドームの内面および外面へ移行する。この移行過程で、本質的にラテックス製コンドームの内面および外面全体が約1週間以内に増粘展延性昇温潤滑剤の薄層でコーティングされる。このように、本発明の展延性昇温潤滑剤は潤滑剤をコンドーム上に均一にコーティングできるという点で有利である。したがって本発明は、増粘展延性昇温潤滑剤をこの方法で付与したラテックス製コンドームをも提供する。
【0027】
増粘展延性昇温潤滑剤を皮膚潤滑剤として使用する場合、得られる皮膚水分とほぼ同量の増粘展延性昇温潤滑剤を皮膚に適用する。所望により、増粘展延性昇温潤滑剤を適用する前に、皮膚に水分を加えることができる。水分と増粘展延性昇温潤滑剤の反応により熱が放出され、これにより温覚が得られる。皮膚上で得られる水分の量は一般に少なく、昇温効果を最適にするためには増粘展延性昇温潤滑剤の適用量がこの得られる水分量と一致することが望ましいので、この昇温効果にとって増粘昇温潤滑剤の展延性は必須である。展延性がないと、増粘昇温潤滑剤は皮膚に最初に適用した領域に濃縮され、目的とする潤滑効果および昇温効果は最適にならないであろう。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明は、皮膚と皮膚またはラテックスとの間に弾性流体力学的な潤滑剤薄膜を付与して維持する、改良された増粘展延性昇温潤滑剤を提供する。この潤滑剤は、十分な粘度、低い表面張力および低い接触角であるため、卓越した展延性を示す。この潤滑剤は実質的に無水であって、好ましくは水の含量は約5重量%未満であり、より好ましくは水の含量は約3重量%未満であり、最も好ましくは水の含量は約2重量%未満であり、たとえば水の含量は約1重量%未満である。十分な粘度をもつので、約0.01〜0.10 mm、たとえば約0.05〜0.10 mmの膜厚を、皮膚またはラテックスゴム上に得ることができる。
【0029】
したがって本発明は、グリセリンを他の多価アルコールおよび非イオン界面活性剤と共に含む、増粘展延性昇温潤滑剤を提供する。好ましくは、グリセリンは約40重量%〜60重量%の量で存在し、多価アルコールは約40重量%〜60重量%の量で存在し、非イオン界面活性剤は約0.1重量%〜3重量%、およびカルボポール増粘剤は0.1重量%〜2.0重量%の量で存在する。
【0030】
適切な多価アルコールを使用できる。好ましくは、多価アルコールはプロピレングリコールである。他の多価アルコール、たとえばブチレングリコール、ヘキサレングリコールおよびポリエチレングリコールが当技術分野で知られている。
【0031】
本発明の増粘展延性昇温潤滑剤は、水分、たとえば皮膚から発生する水分と混合した際の溶解発熱により熱を放出する成分を含む。皮膚から発生する水分は一般に少量であるので、昇温効果を得るために発熱放出を利用するには増粘展延性昇温潤滑剤の量は少量であることが望ましい。皮膚から発生する少量の水分の存在下で増粘展延性昇温潤滑剤の量が過剰であると、温度上昇はわずかにすぎず、昇温効果は最小限に抑えられる。少量の増粘展延性昇温潤滑剤は、それが皮膚上または皮膚とラテックス物品の間に安定な弾性流体力学的膜を形成した場合にのみ有効となりうる。
【0032】
多価アルコールは水と反応して溶解発熱反応により熱を放出する。この効果は周知であり、供給業者Dow Chemical Company(ミシガン州ミッドランド)の文献を含めた幾つかの化学テキスト中に考察されている。グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサレングリコールおよびポリエチレングリコールを含めた多価アルコールのいずれも、この発熱反応を示す。本発明の展延性昇温潤滑剤は、グリセリンおよび多価アルコール、好ましくはプロピレングリコールを含み、これらはその混合物の粘度が十分な潤滑特性をもたらすのを保証するのに適切な比率で混合される。粘度が高いほど、接触表面が相互に移動した際の抵抗が高くなる。さらに、粘度の高い組成物ほど重力が薄層の形成に不適切になるので、厚い潤滑剤膜を形成する傾向がある。これに対し、粘度の低い組成物ほど流動しやすく、きわめて薄い潤滑膜を形成する。
【0033】
組成の関数としてのグリセリン-プロピレングリコール混合物の粘度を、以下の表1に示す。プロピレングリコールの粘度は潤滑剤として有用であるためには低すぎ、一方、グリセリンは均一な潤滑剤薄膜を生成するには高すぎる粘度をもつ。表1には、3回の試験における潤滑剤組成物の昇温効果をも記載する。プロピレングリコールは最大の昇温効果をもたらし、一方、グリセリンは最小の昇温効果をもたらす。
【0034】
【表1】

【0035】
T=室温の試料
Tmax=37℃の等量の水と混合した際の試料の最高温度
Tsf=6.2℃;37℃の水と室温の水の混合に固有の効果
△Tsample=37℃の等量の水と混合した後の試料の温度上昇
cps=センチポアズ。
【0036】
増粘展延性昇温潤滑剤は当該表面を濡らさなければならなず、かつ低い接触角をもたなければならない。接触表面が変形性であってその表面への膜の付着がより良好でなければならず、したがってよりいっそう小さな接触角が要求される場合には、この要件はさらに重要である。接触角が大きいと潤滑流体膜が破断して物理的に分離したアイランドを形成し、この状態では皮膚と皮膚の間または皮膚とラテックスの間でこすれが生じる。これらは両方とも摩擦係数の高い対であり、皮膚刺激をもたらす。グリセリン-プロピレングリコール混合物の濡れの改善は、0.1〜3%の非イオン界面活性剤の添加により達成される。
【0037】
非イオン界面活性剤は、その名称が示すように、イオン成分が存在しないことを意味する。それらは”イオン的に”不活性である。すべての非イオン界面活性剤の大部分がエチレンオキシドと疎水性化合物の縮合物である。このグループの界面活性剤は多数あり、制限なく変更できる。それらはあらゆる界面活性剤のうち最大の単一グループであろう。Nonionic Surfactants: Organic ChemistryというタイトルのNico M. van Os編, ISBN: 0 824 79997 6, 出版社:Marcel Defcker Copyright(1998)(本明細書に特に援用する)に、多数の非イオン界面活性剤が考察されており、これにはポリオキシエチレンアルキルフェノール、アルコール類、脂肪酸のエステル、メルカプタン、およびアルキルアミン、アミド基を含む非イオン界面活性剤、ならびにポリオールエステル界面活性剤が含まれる。Dow Co.は、'DOWFAX'の商品名で多数の非イオン界面活性剤を市販している。ポリグリコールは多様な有機液体に溶解し、または適合性かつ混和性であるので、これらのポリエチレングリコール配合物は卓越した軟化性、コンディショニング性および皮膚平滑性をもたらす。
【0038】
ポリソルベート組成物も非イオン界面活性剤であり、ポリソルベート-20、40、60、65および80として入手できる。それらは下記一般式のポリオキシエチレンソルビタンモノエステル(PS)である:
【0039】
【化2】

【0040】
式中、Rはラウレート、パルミテート、ステアレートまたはオレエートであり、w、x、yおよびzはそれぞれ独立して1または2であり;あるいは、w、x、yおよびzはそれぞれ独立して17以下であり、w、x、yおよびzの和は20である。ポリソルベート-20は、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、CAS #9005-64-5であり、ソルビタンモノ-9-オクタデセノエートポリ(オキシ-l,l-エタンジイル)の化学組成をもつ。ポリソルベート40は、ポリエチレングリコールソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、CAS# 9005-66-7であり、ポリソルベート60は、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、CAS #9005-67-8であり、ポリソルベート80は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、CAS# 9005-65-6である。
【0041】
場合により、抗−細菌保存剤は増粘展延性昇温潤滑剤中に使用することができる。典型的な抗−細菌保存剤には、限定的ではないが、パラベンゾエート、パラヒドロキシベンゾエート、およびそれらのエステル類、メチルパラベン、およびプロピルパラベンが含まれる。表2A、BおよびCは、プロピレングリコールおよびグリセリンを含有する昇温潤滑剤組成物へのポリソルベート20の添加が、支持体(ガラス、ラテックス製コンドームフィルムおよび皮膚を含む)に一定容量の液体を付与した際の液滴直径および対応する接触角に及ぼす影響を示す。この接触角は、一定容量25μlの潤滑剤混合物をマイクロシリンジにより、それぞれガラス、コンドームラテックスフィルムまたは皮膚の平坦な支持体上に落下させ、昇温潤滑剤の展延直径を時間の関数として測定することにより判定される。接触角は、下記に示す周知の方程式(Roberts et al., 摩擦を減らすための表面処理 - Rubber Chemistry and Technology, 63:722 (1990))を用いて計算される;式中、Dは潤滑剤の直径であり、Vは昇温液体の容量である。
【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
この展延液滴の測定により測定した接触角は、下記の表2Dに示すKruss接触角測定値と良好に一致する。付与した液滴の展延が早すぎるため、Kruss接触角メーターを用いて皮膚試験を実施することはできなかった。
【0045】
【表4】

【0046】
昇温潤滑剤の表面張力を測定し、下記の表2Eに示す。
【0047】
【表5】

【0048】
したがって、0.5重量%のポリソルベート20の添加によりすべての例で潤滑剤の展延直径が拡大し、接触角および表面張力が低下することが、きわめて明瞭である。49.75重量%のプロピレングリコール、49.75重量%のグリセリンおよび0.5重量%のポリソルベート20を含む昇温潤滑剤組成物により証明されるように、適切な潤滑剤粘度と潤滑剤展延能の組合わせによって有効な昇温潤滑剤が得られる。
【0049】
この特定の組成物を表2A〜Cに示したが、プロピレングリコールは40重量%〜60重量%であってよく、グリセリンは40重量%〜60重量%であってよく、ポリソルベート20その他の非イオン界面活性剤は0.1〜3重量%であってよい。この組成範囲でグリセリン-プロピレングリコールの粘度は比較的安定であり、ポリソルベート20その他の非イオン界面活性剤は接触角を改善するのに有効である。
【0050】
本発明の昇温潤滑剤を皮膚潤滑剤として使用でき、その際、昇温潤滑剤の25μl体積の小滴を皮膚に適用してこする。昇温潤滑剤が水分と組み合わさるのに伴って、皮膚から発生する水分が速やかに昇温効果を生じる。この昇温潤滑剤は展延性が高く、鎮静効果をもたらす。
【0051】
本発明の展延性昇温潤滑剤をコンドームラテックス表面に付与することができる。この昇温潤滑剤は、その高い展延性のためコンドームラテックスの内面および外面全体に展延する。潤滑処理したコンドームの有用性は、潤滑剤がコンドーム表面に分布することに関係する。この潤滑処理が刺激を阻止するものだからである。展延性が良好でない潤滑剤はいずれも裸点をもち、ここではラテックスコンドーム表面が皮膚を直接こすり、高い摩擦、粘着および刺激を生じる。この作用を定量するために、少量の展延性昇温潤滑剤をコンドームの外面に付与し、昇温潤滑剤の展延を測定した。結果を表2Fに示す。
【0052】
【表6】

【0053】
グリセリンとプロピレングリコールの50重量%−50重量%混合物は、純粋なグリセリンと比較してコンドーム軸上へ高い移行距離をもっていた。ポリソルベート20をこの潤滑剤に添加すると、グリセリンおよびグリセリンとプロピレングリコールの50%−50重量%混合物は両方とも、特に1週間以内にコンドーム軸上への潤滑剤の移行距離の改善を示す。
【0054】
効果的な増粘展延性昇温潤滑剤を製造するための昇温潤滑剤の粘度を高めるための多くの化合物が入手可能である。増粘剤は、グリセリン−およびポリプロピレングリコール−ベースの潤滑組成物中に混合可能でなければならず、そして極性溶媒に相溶でなければならない。不幸にも、一般的に使用される増粘剤の多くは、潤滑剤の展延性を制限する。たとえばいくつかのセルロースベースの増粘剤は展延性を制限してしまう。相溶増粘剤の限定的でない例には、多糖架橋した、または多糖架橋されていないポリアクリレートが含まれる。Carbomer(Carbopol 971 NF樹脂)の昇温潤滑剤への添加は、展延性を制限することなく高い粘土を提供するのは驚くべきことであった。他のCarbomer組成物はCarbopol resin handbook, a Noveon(Cleveland, OH)出版に詳述されており、それを本明細書に援用する。
【0055】
昇温潤滑剤への増粘剤の添加の効果は、2つの組成物を比較することによって調べた。一つはポリソルベート20非イオン界面活性剤とともにで、他方はポリソルベート20非イオン界面活性剤非添加で行った。それらの組成物は下の表3に示す。
【0056】
【表7】

【0057】
組成物Aの粘度は1450cpsで、組成物Bの粘度は1425cpsである。それゆえ、ポリソルベートの添加は組成物の粘度を損なわなかった。増粘展延性昇温潤滑剤の粘度は表1に示した増粘剤の添加なしでの増粘展延性昇温潤滑剤の粘度よりはかなり高かったことに注目すべきである。増加した組成物の粘度により、リッチなクリーミーな潤滑剤を提供した。
【0058】
増粘展延性昇温潤滑剤の展延性は、ガラス支持体および平坦なラテックス支持体上にて測定し、その結果を表4Aから4Cに示す。増粘展延性昇温潤滑剤の展延性の表面張力を表面張力計を使用して測定し、温度は23℃±1℃にコントロールした。結果を表4Dに示す。
【0059】
【表8】

【0060】
【表9】

【0061】
【表10】

【0062】
【表11】

【0063】
ソルベート20非イオン界面活性剤の添加は、増粘昇温潤滑剤の展延性を改善した。表4Bと2B、表4Cと2Cのデータの比較は、増粘剤の添加は、増粘昇温潤滑剤の展延性を極端には低下させなかったことを明確に示している。たとえば、表4Bと表2Bは、10分の時間間隔で、増粘昇温潤滑剤は7mmの展延性を示したのに対し、増粘剤なしの昇温潤滑剤は本質的に同じ7mmの展延性を示した。表4Cと表2Cの比較は、5分の時間間隔で、増粘展延性昇温潤滑剤の展延性は9.0mmを示したのに対し、増粘剤なしの昇温潤滑剤は10.5mmの展延性を示した。それゆえ、増粘剤の添加は、皮膚またはラテックス上でのその展延性を制限することなく、潤滑剤にリッチな感覚を与えた。
【0064】
本発明の増粘展延性昇温潤滑剤をコンドームに付与する様式には、皮膚から発生する水分と一致する測定量の昇温潤滑剤を落下させることが含まれる。皮膚から発生する水分は一般に0.2〜5 mlであるので、増粘昇温潤滑剤の量は望ましくは5 ml未満である。効果的な潤滑効果および昇温効果を得るためには、この少量の増粘昇温潤滑剤がコンドームラテックスの内面および外面全体に展延しなければならない。コンドームを包装する際に測定量の増粘展延性昇温潤滑剤を添加し、展延効果は潤滑剤がコンドームの内面および外面全体に分散するのに依存する。
【0065】
本発明の増粘展延性昇温潤滑剤を皮膚潤滑剤として使用する場合、得られる皮膚水分とほぼ同量の潤滑剤を皮膚に適用する。潤滑剤はそのクリーミーな特質のためリッチ(rich)な感覚を有する。所望により、増粘展延性昇温潤滑剤を適用する前に、皮膚に水分を加えてもよい。水分と増粘展延性昇温潤滑剤の反応により熱が放出され、これにより温覚が生じる。皮膚上で得られる水分の量は一般に少なく、昇温効果を最適にするためには展延性昇温潤滑剤の適用量がこの得られる水分量と一致することが望ましいので、この昇温効果にとって増粘昇温潤滑剤の展延性は必須である。展延性がないと、昇温潤滑剤は皮膚に最初に適用した領域に濃縮され、目的とする潤滑効果および昇温効果は最適にならないであろう。適切な粘度、低い表面張力、およびヒトの皮膚に対する低い接触角の組合わせにより、昇温潤滑剤が皮膚上に展延し、これによって最適な鎮静昇温効果が得られる。
【0066】
本明細書に引用した刊行物、特許出願および特許を含めたすべての参考文献を、それぞれの参考文献が個別に具体的に援用され、その全体が本明細書に記載されたと同程度に、本明細書に援用する。
【0067】
本発明の記載に関する単数の使用は、本明細書中にそうではないと明記しない限り単数と複数の両方を含むものとする。本明細書中の範囲の記載は、本明細書中に別途指示しない限り、それぞれ別個の数値がその範囲に含まれることを個別に表わすための簡便な方法であり、それぞれ別個の数値がそれを本明細書中に個別に記載した場合と同様に本明細書中に含まれる。本明細書に記載したすべての方法は、本明細書中に別途指示しない限り、または内容によりそうではないと明記しない限り、いずれか適切な順序で実施できる。本明細書中に示すいずれかおよびすべての例または例示語(例:”たとえば”)は、本発明をより良く説明するためのものにすぎず、別途指示しない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいずれの語も、特許請求の範囲に示していない要素を本発明の実施に必須であるという指示とみなすべきではない。
【0068】
本発明を実施するために本発明者らが知る最良の様式を含めた本発明の好ましい態様を本明細書に記載する。具体的に示した態様は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものと解すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.多価アルコールおよびグリセリンの混合物;
b.該混合物に含有させた非イオン界面活性剤;および
c.多価アルコール、グリセリンおよび水分と相溶な増粘剤、
を含む増粘展延性昇温潤滑剤であって、実質的に無水であり、皮膚またはコンドーム上に薄い潤滑性層を生成し、かつ水分と接触した際に昇温効果を生じる、増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項2】
グリセリンが約40重量%〜60重量%の量で存在し、多価アルコールが約40重量%〜60重量%の量で存在し、非イオン界面活性剤が約0.1重量%〜3重量%の量で存在し、そして増粘剤が0.1〜2.0重量%の量で存在する、請求項1の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項3】
多価アルコールがプロピレングリコールである、請求項1または2の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項4】
非イオン界面活性剤がポリオキシエチレンソルビタンモノエステルである、請求項1または2の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項5】
増粘剤がカルボマーである、請求項1または2の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項6】
ポリオキシエチレンソルビタンモノエステルがポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートである、請求項4の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項7】
カルボマーがカルボポール971 NF樹脂である、請求項5の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項8】
49.475重量%のグリセリン、49.475重量%のプロピレングリコール、0.3重量%のカルボポール(Carbopol)971NF、0.5重量%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含み、0.3重量%の抗−細菌保存剤を含んでいてもよい、増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項9】
ラテックス製コンドームの表面に付与した際に、昇温潤滑剤が0.05〜0.1 mmの厚さを有する、請求項1または8の増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項10】
皮膚に付与した際に、昇温潤滑剤が0.01〜0.1 mmの厚さを有する、請求項1または8のの増粘展延性昇温潤滑剤。
【請求項11】
増粘展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項1または2の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に付与されることを含む方法。
【請求項12】
展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項3の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に適用されることを含む方法。
【請求項13】
増粘展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項4の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に付与されることを含む方法。
【請求項14】
増粘展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項5の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に付与されることを含む方法。
【請求項15】
増粘展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項6の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に付与されることを含む方法。
【請求項16】
増粘展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項7の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に付与されることを含む方法。
【請求項17】
増粘展延性昇温潤滑剤をラテックス製コンドームの内および外表面に付与する方法であって、
a.ラテックス製コンドームを請求項8の展延性昇温潤滑剤約0.2〜5 mlと接触させ;
b.コンドームを包装し;そして
c.少なくとも約一週間の間、包装されたコンドームを、展延性潤滑剤がコンドーム上を移動するのを促進する条件下で維持し、
その際、展延性昇温潤滑剤がラテックス製コンドームの内および外表面に付与されることを含む方法。
【請求項18】
請求項1または2の増粘展延性昇温潤滑剤を皮膚上に付与する方法であって、
a.皮膚からの水分または付与される水分として存在する程度と一致する昇温潤滑剤の1〜5滴を付与し、
b.温覚と潤滑作用を生じさせるために潤滑剤をこすり、
それによって、昇温効果が増粘昇温潤滑剤と水分の間の接触によって生じる、
を含む方法。
【請求項19】
請求項8の増粘展延性昇温潤滑剤を皮膚上に付与する方法であって、
a.皮膚からの水分または付与される水分として存在する程度と一致する昇温潤滑剤の1〜5滴を付与し、
b.温覚と潤滑作用を生じさせるために潤滑剤をこすり、
それによって、昇温効果が増粘昇温潤滑剤と水分の間の接触によって生じる、
を含む方法。

【公表番号】特表2008−531497(P2008−531497A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556128(P2007−556128)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009877
【国際公開番号】WO2006/091206
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(598165943)アンセル・ヘルスケア・プロダクツ・エルエルシー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ansell Healthcare Products LLC
【Fターム(参考)】