墨付け自走装置及びその装置による墨付け方法
【課題】墨付け作業を自動的に行え、また、この墨付け作業を正確に行えるようになる墨付け自走装置及びその装置による墨付け方法を提供すること。
【解決手段】自走装置は、H型鋼Wに沿って自走するための自走手段と、走行距離を測定するための走行距離測定手段と、H型鋼Wに墨付け作業を行うための墨付け手段と、H型鋼Wの前後端を検出するための前後端センサと、走行距離測定手段及び両方のセンサからの信号が入力し、自走手段及び墨付け手段を駆動制御するための制御手段とを備え、制御手段は、自走装置がH型鋼Wの後端から前端に向かって自走したときに走行距離検出手段で検出される走行距離が、墨付け作業を行うべき位置までの距離L2〜L4、L6〜L8になったときに、自走を停止させて墨付け手段で墨付け作業を行うことと、前後端センサで検出されるH型鋼Wの前後端間の全長L1、L5を測定することと、を行う。
【解決手段】自走装置は、H型鋼Wに沿って自走するための自走手段と、走行距離を測定するための走行距離測定手段と、H型鋼Wに墨付け作業を行うための墨付け手段と、H型鋼Wの前後端を検出するための前後端センサと、走行距離測定手段及び両方のセンサからの信号が入力し、自走手段及び墨付け手段を駆動制御するための制御手段とを備え、制御手段は、自走装置がH型鋼Wの後端から前端に向かって自走したときに走行距離検出手段で検出される走行距離が、墨付け作業を行うべき位置までの距離L2〜L4、L6〜L8になったときに、自走を停止させて墨付け手段で墨付け作業を行うことと、前後端センサで検出されるH型鋼Wの前後端間の全長L1、L5を測定することと、を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走することにより、例えば、建築物用の建材に、他の建材との接合位置等をマークするための墨付け作業を行うために用いられる墨付け自走装置、及びこの墨付け自走装置による墨付け方法に係り、H型鋼や溝型鋼等の建材を含む各種の墨付け対象物に墨付け作業を行うために利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
H型鋼等の建築物用の建材には、他の建材と接合等すべき位置をマークするための墨付け作業が行われ、この墨付け作業は、従来、工場において、墨壷を用いる墨刺し方式により行われている。この墨刺し方式で用いられる墨刺し部材は、下記の特許文献1に示されており、作業者は、この特許文献1に示されているような墨刺し部材を用いる手作業により、墨付け対象物の所定位置に墨付け作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−309082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の墨付け作業は、作業者の手作業により行われているため、この作業に多くの手間と時間がかかり、また、作業者のミスにより、墨付け対象物の正確な位置に墨付け作業が行われないおそれもある。
【0005】
本発明の目的は、墨付け作業を自動的に行え、また、この墨付け作業を正確に行えるようになる墨付け自走装置及びその装置による墨付け方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る墨付け自走装置は、墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置であって、前記制御手段は、前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記自走手段により自走したときに前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記自走手段を駆動制御して自走を停止させ、かつ前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行うことと、前記走行距離測定手段により、前記第1検出手段で検出される前記一方の端部から前記第2検出手段で検出される前記他方の端部までの前記墨付け対象物の全長を測定することと、を行うことを特徴とするものである。
【0007】
この墨付け自走装置によると、自走手段による自走により、墨付け自走装置は、墨付け対象物の墨付け作業を行うべき位置へ自動的に移動することになり、また、墨付け手段により、墨付け対象物に自動的に墨付け作業を行うため、墨付け作業を自動的に行えることになり、また、墨付け作業は、走行距離測定手段で測定される所定位置で行われるため、墨付け作業を正確に行えることになる。
【0008】
さらに、本発明に係る墨付け自走装置は、第1検出手段で検出される墨付け対象物の一方の端部から第2検出手段で検出される他方の端部まで自走するため、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することができ、これにより、墨付け作業を行う墨付け対象物が本来の長さを有している所定の墨付け対象物であるか否かを確認することができる。
【0009】
なお、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することは、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行った後に実施してよく、あるいは、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う前に実施してもよい。
【0010】
ここで、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することを、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う前に実施することとは、自走装置が墨付け対象物の全長を走行してこの全長を測定した後に、自走装置が墨付け対象物の走行開始位置まで戻り、この後に、自走装置が墨付け位置まで前進して墨付け作業を行うことや、自走装置が墨付け対象物の全長を走行してこの全長を測定した後に、自走装置が墨付け対象物の走行開始位置に向かって後退し、この後退の途中において、墨付け手段が墨付け作業を行うことである。
【0011】
走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することが、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行った後に実施され、そして、この墨付け作業が行われた墨付け対象物が本来の長さを有していない墨付け対象物であることが判明した場合には、その墨付け対象物は間違いの墨付け対象物であるため、本来の墨付け対象物に対して改めて墨付け作業を行えばよく、墨付け作業が行われた間違いの墨付け対象物については、墨付け作業で付けられたマークを消去すればよい。
【0012】
また、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することが、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う前に実施され、そして、この墨付け作業が行われた墨付け対象物が本来の長さを有していない墨付け対象物であることが判明した場合には、第2検出手段により墨付け対象物の前記他方の端部が検出されるまで自走している墨付け自走装置を、その位置で停止させたままとし、制御手段による自走手段等の駆動制御を終了させればよい。
【0013】
本発明に係る墨付け自走装置による墨付け方法は、墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置により行う墨付け方法であって、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記墨付け自走装置が自走する第1工程と、前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御して前記墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ前記制御手段が前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第2工程と、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第2検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記他方の端部まで前記墨付け自走装置が自走し、前記走行距離測定手段により前記墨付け対象物の全長を測定する第3工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0014】
この墨付け自走装置による墨付け方法によっても、墨付け自走装置は、自走手段による自走により、墨付け対象物の墨付け作業を行うべき位置へ自動的に移動するとともに、墨付け手段により、墨付け対象物に自動的に墨付け作業を行うため、墨付け作業を自動的に行えることになる。また、墨付け作業は、走行距離測定手段で測定される所定位置で行われるため、墨付け作業を正確に行えることになる。
【0015】
また、墨付け自走装置は、第1検出手段で検出される墨付け対象物の一方の端部から第2検出手段で検出される他方の端部まで自走するため、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することもできる。
【0016】
以上の墨付け自走装置による墨付け方法において、前記墨付け対象物が第1墨付け対象物となっていて、この第1墨付け対象物に隣接して第2墨付け対象物を第1墨付け対象物と平行に配置するなどのように、複数の墨付け対象物を互いに平行に配置し、これらの墨付け対象物に対して墨付け作業を行う場合には、第1墨付け対象物に対しての前記第3工程が終了した後に、制御手段による自走手段の駆動制御により、墨付け自走装置を前記第1検出手段で検出される第1墨付け対象物の前記一方の端部まで戻し、この後に、墨付け自走装置を第1墨付け対象物から第2墨付け対象物に移し替えることを行い、さらにこの後に、この第2墨付け対象物に対して上述した第1〜3工程と同じ工程を行うようにしてもよい。
【0017】
また、この墨付け方法とは異なる墨付け方法として、第1墨付け対象物に対しての前記第3工程が終了した後に、墨付け自走装置を第1墨付け対象物から第2墨付け対象物に移し替える第4工程と、制御手段が自走手段を駆動制御することにより、第1墨付け対象物の前記他方の端部と同じ側の第2墨付け対象物の端部となっていて前記第1検出手段で検出される第1端部から、この第1端部とは反対側の端部となっている第2墨付け対象物の第2端部に向かって墨付け自走装置が自走する第5工程と、走行距離検出手段で検出される走行距離が、第2墨付け対象物の前記第1端部から墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、制御手段の記録部に記録されているデータに基づいて制御手段の中央処理部で演算される距離になったときに、制御手段が自走手段を駆動制御して墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第6工程と、を実施するようにしてもよい。
【0018】
これによると、第1墨付け対象物に隣接してこの第1墨付け対象物と平行に配置されている第2墨付け対象物に対して墨付け作業を行うときに、墨付け自走装置を第1検出手段で検出される第1墨付け対象物の前記一方の端部まで戻すことを省略できることになり、このため、作業性の向上を図ることができる。
【0019】
そして、第2墨付け対象物に対して上述の第4〜6工程を行うときは、第6工程の後に、制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、第2検出手段で検出される第2墨付け対象物の前記第2端部まで墨付け自走装置が自走し、走行距離測定手段により第2墨付け対象物の全長を測定する第7工程を実施してもよく、あるいは、実施しなくてもよい。
【0020】
この第7工程を実施した場合には、第2墨付け対象物が本来の長さを有している所定の墨付け対象物であるか否かを確認することができる。
【0021】
以上説明した本発明は、各種の墨付け対象物に対して墨付け作業を行うために用いることができ、この墨付け対象物は、構造材が金属製や木製となっている建築物用の建材でもよく、あるいは、橋脚や鉄塔等のための構成材でもよく、また、これらの建材や構成材はH型鋼でもよく、溝型鋼でもよく、さらに、木製柱や木製梁でもよい。
【0022】
また、墨付け自走装置に設ける墨付け手段は、前述した特許文献1に示されているような墨刺し部材を用いるものでもよく、あるいは、墨壷から繰り出される墨糸によるものでもよく、任意な構造、形式の墨付け手段でよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、墨付け作業を自動的に行え、また、この墨付け作業を正確に行えるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る墨付け自走装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、墨付け自走装置の正面図である。
【図3】図3は、墨付け自走装置に設けられている墨付け手段を構成するスライダ、墨刺し部材及び墨容器を示す正面図である。
【図4】図4は、図3の側断面図である。
【図5】図5は、図2で示されている墨付け手段のうち、墨刺し部材と墨容器を省略して示した自走装置の本体の正面図である。
【図6】図6は、図5で示されている墨付け手段の接離手段により墨刺し部材が墨付け対象物に接触しているときを示す正面図である。
【図7】図7は、図5で示されている墨付け手段の接離手段により墨刺し部材が墨付け対象物から離間しているときを示す正面図である。
【図8】図8は、墨付け自走装置の本体の底面図である。
【図9】図9は、墨付け自走装置の本体の側断面図である。
【図10】図10は、墨付け自走装置の本体の内部構造を示す平面図である。
【図11】図11は、図10で示されている制御手段を機能的に示した概念図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る墨付け作業を示すフローチャートのうち、前段部分を示す図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る墨付け作業を示すフローチャートのうち、中段部分を示す図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に係る墨付け作業を示すフローチャートのうち、後段部分を示す図である。
【図15】図15は、図12〜図14のフローチャートによる墨付け作業が実施される複数の墨付け対象物の配置関係を示す平面図である。
【図16】図16は、墨付け自走装置の前進の基準点を規定するための補正治具が用いられた場合において、この補正治具の全体を示す斜視図である。
【図17】図17は、図16の補正治具を墨付け対象物に取り付けたときを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る墨付け自走装置は、建築物の建材となっているH型鋼に、他の建材との接合位置を直線でマークするために用いられるものである。このため、本実施形態における墨付け対象物は、H型鋼である。
【0026】
図1には、本実施形態に係る墨付け手段50を備えている墨付け自走装置1の全体の斜視図が示されている。初めに、この墨付け自走装置1について説明すると、墨付け自走装置1は、本体2と、この本体2に着脱可能に被せられているカバー部材3とを有しており、カバー部材3の上面には、自走装置1を持ち運び可能とするための2個の取手4が設けられている。また、カバー部材3には、液晶による表示画面5と、電源ボタンやスタートボタンを含む複数のボタンによる操作部6とが設けられているとともに、カバー部材3に形成されている窓孔3Aを開閉するための蓋部材7も設けられている。
【0027】
図10には、カバー部材3を取り外したときの本体2の内部構造の平面図が示されている。この本体2の内部には、バッテリが配置されている電源部8と、コンピュータとなっている制御手段9のための電子回路基板と、駆動輪10にカップリング11を介して接続されているパルスモータによる駆動モータ12と、ロータリエンコーダ13がカップリング14を介して接続されている従動輪15と、図1で示されている墨付け手段50の駆動源となっている電動モータ16とが収納されている。また、本体2の底面図である図8に示されているように、本体2には、それぞれ幅広となっている駆動輪10及び従動輪15のそれぞれの下部を本体2の下側に露出させるための孔2A,2Bが形成されているとともに、図10に示されているように、本体2の内部には、これらの駆動輪10、従動輪15を覆うためのカバー17,18が配置されている。
【0028】
自走装置1が、駆動モータ12による駆動輪10の回転でH型鋼Wに沿って自走すると、従動輪15及びカップリング14を介してロータリエンコーダ13が回転駆動されるため、このロータリエンコーダ13により自走装置1の走行距離が測定されることになる。
【0029】
また、図10に示されているように、本体2の内部には、カード式記録媒体を挿入するための挿入口19が電源部8と隣接して配設されており、このカード式記録媒体には、墨付け対象物となっているH型鋼W(図2を参照)についての設計データとなっているCADデータから、このH型鋼Wに墨付け作業を行ううえで必要とされる各種のデータが取り出されて記録されており、このカード式記録媒体が挿入口19に挿入されることにより、これらのデータが制御手段9の記録部に記録できるようになっており、そして、制御手段9が、これらのデータと、制御手段9の記録部に記録されている作業順序等に関するプログラムを含むデータと、ロータリエンコーダ13等からの入力信号とに基づき、駆動モータ12や電動モータ16を駆動制御するようになっている。
【0030】
したがって、本実施形態に係る自走装置は、H型鋼Wについて予め作成されているCADデータを直接利用して、このH型鋼Wに墨付け作業を行えるものになっており、上述したH型鋼Wに墨付け作業を行ううえで必要とされる各種のデータのなかには、H型鋼Wにおける他の建材との接合位置に関するデータ、すなわち、H型鋼Wにおける墨付け作業を行うべき位置に関するデータが含まれている。
【0031】
なお、図1で示されている表示画面5には、挿入口19に挿入されたカード式記録媒体に記録されているH型鋼Wの種類等に関するデータを含む各種の情報が表示されるようになっている。
【0032】
また、図1で示されているカバー部材3の窓孔3Aの位置は、図10で示されている電源部8と挿入口19が配置されている位置と一致している。このため、カバー部材3を本体2から取り外すことなく、蓋部材7を開けるだけにより、電源部8へのバッテリのセット作業及び電源部8からのバッテリの取り出し作業と、挿入口19へのカード式記録媒体の挿入作業及び挿入口19からのカード式記録媒体の抜き取り作業とを行えるようになっている。
【0033】
また、図10に示されているように、駆動輪10が配置されている本体2の内部の前部には、前端センサ20が配置され、従動輪15が配置されている本体2の内部の後部には、後端センサ21が配置されている。これらのセンサ20,21は、発光部と受光部からなる光学式センサであり、図8に示されているように、本体2には、センサ20,21の発光部から出射したビーム光が本体2の下側に進行し、H型鋼Wで反射したこのビーム光が受光部に入射できるようにするための孔2C,2Dが形成されている。
【0034】
また、図8には、自走装置1をH型鋼Wに載置セットしたときに、自走装置1の走行方向と直交するH型鋼Wの幅方向の両側の端面に接触する一対のガイド手段30が示されている。本体2の下面に配置されているこれらのガイド手段30のそれぞれは、自走装置1の走行方向に、言い換えるとH型鋼Wの長さ方向に延びる長さを有しているベース部材31と、このベース部材31の長さ方向の両端に下向きに取り付けられた2個の中心軸32と、これらの中心軸32を中心にベース部材31に回転自在に配設された長筒状の2個のガイド筒部材33とを有する。H型鋼Wの幅方向に向かい合って本体2に配設されているこれらのガイド手段30のそれぞれのベース部材31には、2本のガイドバー34,35の基端部が結合され、H型鋼Wの幅方向内側へ延びているこれらのガイドバー34,35は、本体2に取り付けられたブロック状の2個のガイド部材36,37のガイド孔にスライド自在に挿入されている。
【0035】
このため、一対のガイド手段30のそれぞれは、ガイドバー34,35とガイド部材36,37の案内作用により、H型鋼Wの幅方向に移動自在となっている。そして、それぞれのベース部材31には取手38が設けられており、これらの取手38により、これらのガイド手段30をH型鋼Wの幅方向に手で移動させることができる。
【0036】
なお、本体2の側断面図である図9に示されているように、ガイド部材36,37は、本体2の下面に上方へ窪んで形成された溝部2Eに配置されているとともに、この溝部2Eには、板状の2個の補助部材39,40が配置されており、これらの補助部材39,40には下向きに突出した突出部39A,40Aが設けられている。これらの突出部39A,40Aは、図8に示されているとおり、それぞれのガイド手段30ごとに設けられているとともに、H型鋼Wの幅方向に延びている。また、図9から分かるように、それぞれのガイド手段30のベース部材31には上方へ立ち上がった2個の立上部31A,31Bが形成され、これらの立上部31A,31Bに、突出部39A,40Aがスライド自在に挿入された切込部31C,31Dが形成されている。
【0037】
このため、一対のガイド手段30がガイドバー34,35とガイド部材36,37の案内作用によりH型鋼Wの幅方向に移動することは、突出部39A,40Aにより切込部31C,31Dが案内されることによっても行われることになり、これにより、一対のガイド手段30のベース部材31がH型鋼Wの長さ方向に振れることを補助部材39,40の突出部39A,40Aにより防止して、これらのガイド手段30をH型鋼Wの幅方向へ移動させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、図8に示されているとおり、一対のガイド手段30のベース部材31のそれぞれには、補助部材39,40に対して転動自在となった2個のガイドローラ41,42が設けられており、このため、一対のガイド手段30は、これらのガイドローラ41,42の転動により円滑にH型鋼Wの幅方向に移動する。
【0039】
また、本体2の溝部2Eには基台43が設けられ、この基台43には、ガススプリング44のシリンダ44Aがブラケット45で取り付けられており、H型鋼Wの幅方向に向いているガススプリング44のピストンロッド44Bの先端には、連結部材46が結合されている。この連結部材46と、一対のガイド手段30のうち、一方のガイド手段30のベース部材31との間には、ワイヤー47が架け渡されており、また、連結部材46と、一対のガイド手段30のうち、他方のガイド手段30のベース部材31との間には、本体2に取り付けられた方向反転ローラ48に掛け回されたワイヤー49が架け渡されている。
【0040】
ガススプリング44のピストンロッド44Bは、シリンダ44A内に封入されている高圧ガスによりシリンダ44Aが突出する方向への圧力を常時受けているため、一対のガイド手段30のそれぞれは、ガススプリング44により、互いに近づく方向へ常時弾性的に付勢されている。このため、これらのガイド手段30を取手38によりH型鋼Wの幅方向に拡大移動させてから、前述した駆動輪10及び従動輪15をH型鋼Wの上面に載せて自走装置1をこのH型鋼Wに載置セットし、この後に、取手38から手を離すと、一対のガイド手段30のそれぞれはガススプリング44により互いに近づく方向へ移動し、それぞれのガイド手段30の前述のガイド筒部材33が、図2に示されているように、H型鋼Wの幅方向の両側の端面WAに自ずと当接することになり、これらの端面WAは、図2に示されているように、H型鋼Wの上側フランジ部WBの幅方向の端面である。
【0041】
これにより、一対のガイド手段30は、自走装置1の走行方向と直交するH型鋼Wの幅方向の両側の端面WAにH型鋼Wを挟着する状態で接触することになり、このため、後述するように自走装置1がH型鋼Wの長さ方向に自走したときに、それぞれのガイド手段30のガイド筒部材33が前述の中心軸32を中心に回転しながら、ガイド手段30が自走装置1をH型鋼Wに対してガイドすることになり、自走装置1をH型鋼Wの長さ方向に安定させて走行させることができる。
【0042】
また、一対のガイド手段30には、これらのガイド手段30を互いに近づく方向に常時弾性的に付勢するための弾性付勢手段となっているガススプリング44による付勢力が付与されているため、墨付け作業を行うH型鋼Wに幅寸法が異なっている各種のものがあっても、一対のガイド手段30の間隔を最大の間隔に拡大しながら、自走装置1をH型鋼Wに載置セットすると、これらのガイド手段30の間隔はガススプリング44による付勢力により縮小するため、幅寸法が異なっているそれぞれのH型鋼Wの幅方向の両側の端面に一対のガイド手段30を、これらのガイド手段30によりH型鋼Wが自ずと挟着された状態にして接触させることができることになり、これにより、幅寸法が異なっているそれぞれのH型鋼Wに自走装置1をセットするための作業を簡単に行える。
【0043】
次に、図1で示されている墨付け手段50について説明する。この墨付け手段50は、自走装置1の本体2の前面部2Fに配置されている。
【0044】
図10で説明した電動モータ16の駆動軸16Aの一方の端部は、本体2の前面部2Fから自走装置1の外部に突出しており、この一方の端部には駆動プーリ51が結合されている。前面部2Fには、図1に示されているように、この駆動プーリ51のほかに、アイドルプーリ52,53と、方向反転プーリ54,55が回転自在に配設されており、これらのプーリ51〜55には、無端走行体であるベルト56が掛け回されている。なお、これらのプーリ51〜55及びベルト56は、タイミングプーリ及びタイミングベルトである。
【0045】
ベルト56のうち、2個の方向反転プーリ54と55の間の下段部分には、スライダ57が連結されており、また、前面部2Fの両端部には、上下2本のガイドバー58,59がH型鋼Wの幅方向が長さ方向となって架け渡されており、スライダ57は、これらのガイドバー58,59に案内されてH型鋼Wの幅方向に移動自在となっている。このため、スライダ57は、電動モータ16の正逆駆動による駆動プーリ51の正逆回転により、ガイドバー58,59に案内されてH型鋼Wの幅方向に往復動する。
【0046】
図2には、墨付け手段50を正面から見た構造を示すために自走装置1の正面図が示されている。また、図3には、墨付け手段50のうち、スライダ57及びこのスライダ57に配置されている部材の正面図が示されており、図4は、図3の側断面図である。スライダ57には、上下方向を長さ方向とする2本のガイドロッド60(図6及び図7も参照)が設けられており、これらのガイドロッド60に案内されて昇降自在となっている昇降部材61がスライダ57に取り付けられている。また、それぞれのガイドロッド60には、昇降部材61に下方への弾性付勢力を常時作用させているコイルばね62が巻装されているとともに、昇降部材61の下部には2個のローラ63が回転自在に取り付けられており、昇降部材61が下降位置に達しているときに、これらのローラ63がH型鋼Wの上面を転動することにより、スライダ57及び昇降部材61がH型鋼Wの幅方向に円滑に往復動できるようになっている。
【0047】
また、図3及び図4に示されているように、昇降部材61の前面には、墨刺し部材65を保持したホルダー66が取り付けられている。墨刺し部材65は、合成樹脂製の本体65Aと、この本体65Aから斜め下向きに延びている筆先65Bとからなり、この筆先65Bは、それぞれが細幅で薄厚となっている多数の金属製の薄板67を厚さ方向に重ね合わせることにより形成されており、これらの薄板67の幅方向は、H型鋼Wの長さ方向になっているとともに、薄板67の厚さ方向は、H型鋼Wの幅方向となっている。
【0048】
墨刺し部材65の本体65Aの全体と筆先65Bの一部はホルダー66の内部に収納されており、このホルダー66にねじ込まれた2個の止めねじ68の加圧力により、墨刺し部材65がホルダー66に止められている。また、ホルダー66には、墨刺し部材65の本体65Aの上面を斜め下向きに押すための押しねじ69が螺入されており、それぞれの止めねじ68を緩めた後に、この押しねじ69をホルダー66内に螺進させることにより、ホルダー66の下面からH型鋼W側へ突出している筆先65Bの突出量を調整することができるようになっている。このため、押しねじ69は、墨刺し部材65のH型鋼W側への突出量を調整するための墨刺し部材突出量調整手段となっている。
【0049】
また、図4に示されているとおり、ホルダー66の前面には、墨刺し部材65に供給される墨を収納した墨容器70が取り付けられている。この墨容器70の上面は墨差し入れ口70Aとなっているとともに、墨容器70の内部には、墨を含浸させるための不織布71が収納されており、また、墨容器70の内部には、墨を墨刺し部材65の筆先65Bに供給するための墨供給口70Bが形成されている。この墨供給口70Bは、筆先65Bを構成している上述の薄板67の幅方向に筆先65Bと向かい合っており、このため、不織布71に含浸されている墨をそれぞれの薄板67の間に毛細管現象により確実に供給することができるようになっている。なお、本実施形態における墨は、墨壷用の白液である。
【0050】
図5は、図2で示されている墨付け手段50のうち、墨刺し部材65と墨容器70を省略して示した自走装置1の本体2の正面図である。また、図6及び図7には、墨刺し部材65と墨容器70を省略することにより、スライダ57と昇降部材61の全体正面図が示されている。スライダ57の前面には、軸72から下側に延びているとともに、この軸72を中心にH型鋼Wの幅方向に揺動自在となっている第1係合部材73が配設されている。また、スライダ57の前面には、この第1係合部材73をH型鋼Wの幅方向の一方の側へ弾性的に付勢するための付勢部材となっているコイルばね74が配設され、このコイルばね74による第1係合部材73の揺動は、スライダ57の前面に設けられたストップピン75により止められているため、通常時の第1係合部材73は図6に示されている鉛直下向きの姿勢となっている。
【0051】
また、昇降部材61の後面には、この昇降部材61がスライダ57に設けられている前述の2本のガイドロッド60に案内されて上昇したときに、第1係合部材73と係合可能となっている第2係合部材76が固定配置されている。第1係合部材73の下部と第2係合部材76の上部には、これらの係合部材73と76の係合を円滑に行わせるための傾斜面73A,76Aが形成されている。
【0052】
図5に示されているように、自走装置1の本体2の前面部2Fには、H型鋼Wの幅方向における一方の端部の側において、傾斜部材77が他方の端部の側に向けて取り付けられており、この傾斜部材77には、この傾斜部材77が取り付けられている前面部2Fの端部の側に向かって上り傾斜となっている傾斜面77Aが形成されている。また、前面部2Fの他方の端部には、突き部材78が取り付けており、この突き部材78は、傾斜部材77が取り付けられている前面部2Fの端部の側に向かって延びている。
【0053】
図10に示されている電動モータ16の正駆動により図5で示されている駆動プーリ51が正回転すると、ベルト56の走行によりスライダ57は、傾斜部材77側への移動である図5及び図6の矢印Aの方向へ前進する。そして、スライダ57が傾斜部材77の配置箇所に達すると、昇降部材61に設けられているローラ63が傾斜部材77の傾斜面77Aに乗り上げるため、昇降部材61はガイドロッド60の案内作用によりスライダ57に対して上昇し、この上昇により、第2係合部材76は、一旦コイルばね74に抗してストップピン75とは反対側へ揺動する第1係合部材73に係合することになる。これにより、昇降部材61は上昇位置を維持することになる。
【0054】
また、電動モータ16の逆駆動により駆動プーリ51が逆回転すると、ベルト56の逆側への走行によりスライダ57は、突き部材78側への移動である図5及び図7の矢印Bの方向へ後退する。そして、スライダ57が突き部材78の先端箇所に達すると、第1係合部材73は突き部材78で突かれるため、この第1係合部材73はコイルばね74に抗してストップピン75とは反対側へ揺動する。このため、第1係合部材73と第2係合部材76との係合が解除されて、昇降部材61は、昇降部材61自身の重量や、墨刺し部材65及び墨容器70の重量、さらにはガイドロッド60に巻装されているコイルばね62のばね力により、ガイドロッド60に案内されてスライダ57に対して下降することになり、これにより、昇降部材61及び墨刺し部材65は元の下降位置に戻る。
【0055】
以上の説明から分かるように、本実施形態では、電動モータ16や駆動プーリ51、さらにはベルト56により、スライダ57、昇降部材61及びこの昇降部材61に配置されている墨刺し部材65をH型鋼Wの幅方向に往復動させるための往復動手段80(図1及び図2を参照)が構成されており、また、スライダ57に設けられているガイドロッド60や第1係合部材73、昇降部材61に配置されている第2係合部材76、さらには自走装置1の本体2の前面部2Fに配置されている傾斜部材77や突き部材78により、昇降部材61及びこの昇降部材に配置されている墨刺し部材65をスライダ57に対して昇降させるための昇降手段81が構成されている。
【0056】
そして、墨刺し部材65がスライダ57に対して下降したときには、墨刺し部材65の筆先65BはH型鋼Wに接触し、墨刺し部材65がスライダ57に対して上昇したときには、墨刺し部材65の筆先65BはH型鋼Wから離間するため、昇降手段81は、この筆先65BをH型鋼Wに対して接触、離間させるための接離手段81にもなっている。
【0057】
以上において、墨刺し部材65が往復動手段80により図5及び図6の矢印Aの方向に移動することが、往動になっており、また、墨刺し部材65が往復動手段80により図5及び図7の矢印Bの方向に移動することが、復動になっている。図6の二点鎖線で示すように、墨刺し部材65の筆先65Bは、往動方向Aに対して鋭角の傾き角度Cとなっている。この往動方向Aに墨刺し部材65が移動するときに、墨刺し部材65はスライダ57に対して下降しているため、H型鋼Wの上面に直線による線を引く墨付け作業が、この上面に接触している筆先65Bからの墨によって行われることになり、したがって、傾き角度Cにより、筆先65Bが損傷等することなくこの墨付け作業を行うことができる。
【0058】
また、復動方向Bに墨刺し部材65が移動するときは、墨刺し部材65は上昇していてH型鋼Wの上面に接触していないため、この復動も筆先65Bが損傷等することなく行われる。
【0059】
図10に示されている自走装置1の本体2の内部には、スライダ57や墨刺し部材65が往動限位置及び復動限位置に達したことを検出するための往復動限位置検出手段82が配置されている。この往復動限位置検出手段82は、前述した電動モータ16の駆動軸16Aの駆動プーリ51が取り付けられている端部とは反対側の端部に結合されているプーリ83と、このプーリ83との間にベルト84が掛け回されているプーリ85と、このプーリ85と一体に回転する切欠部付きの遮光板86と、この遮光板86の両側に配置された発光部及び受光部からなる光学式センサ87とを含んで構成されている。この光学式センサ87は、それぞれが発光部及び受光部からなる2個の検出部を備えており、また、光学式センサ87は、コンピュータになっている前述の制御手段9の入力部に接続されている。なお、プーリ83,85及びベルト84は、タイミングプーリ及びタイミングベルトである。
【0060】
スライダ57や墨刺し部材65が往復動手段80により往動限位置に達したときには、遮光板86の切欠部は、光学式センサ87の上記2個の検出部のうち、一方の検出部の配置箇所に達するため、この往動限位置は光学式センサ87により検出され、また、スライダ57や墨刺し部材65が往復動手段80により復動限位置に達したときには、遮光板86の切欠部は、光学式センサ87の上記2個の検出部のうち、他方の検出部の配置箇所に達するため、この復動限位置は光学式センサ87により検出され、そして、これらの検出信号は光学式センサ87から制御手段9に入力する。光学式センサ87が往動限位置を検出したときには、制御手段9は、この制御手段9の記録部に記録されているプログラムに基づき、それまで正駆動していた電動モータ16を一旦停止させた後に逆駆動させることになり、これにより、スライダ57や墨刺し部材65は復動を開始する。また、光学式センサ87が復動限位置を検出したときには、制御手段9は、上記プログラムに基づき、電動モータ16の逆駆動を停止させ、これにより、スライダ57や墨刺し部材65は、往動開始の初期位置となっている復動限位置に停止することになる。
【0061】
図11には、コンピュータとなっている制御手段9の機能的概念図が示されている。この制御手段9は、入力部9Aと、表示部9Bと、中央処理部(CPU)9Cと、記録部9Dとを有している。入力部9Aは、図1で示した複数のボタンによる操作部6と、図10で示したカード式記録媒体を挿入するための挿入口19とを含むものであり、また、表示部9Bは、図1で示した液晶による表示画面5である。そして、記録部9Dには、墨付け作業の作業順序に関するプログラムを含む各種のデータが記録されており、また、記録部9Dには、H型鋼Wについての設計データとなっているCADデータのうち、H型鋼Wに墨付け作業を行ううえで必要とされる墨付け位置に関するデータを含むデータが、挿入口19に挿入されるカード式記録媒体102から記録できるようになっている。
【0062】
なお、後述の説明で分かるように、本実施形態では、記録部9Dが制御手段9の内部記録部となっているのに対して、カード式記録媒体102は、制御手段9の外付けされる外部記録部として利用されるようになっている。
【0063】
また、制御手段9には、H型鋼Wの一方の端部となっている後端を検出するための図10で示した後端センサ21からの検出信号と、H型鋼Wの他方の端部である前端を検出するための前端センサ20からの検出信号とが入力部9Aから入力し、本実施形態では、後端センサ21が、H型鋼Wの一方の端部を検出するための第1検出手段であり、前端センサ20が、H型鋼Wの他方の端部を検出するための第2検出手段である。さらに、制御手段9には、自走装置1の走行距離を測定するための走行距離測定手段100からの信号が入力部9Aから入力し、この走行距離測定手段100は、図10で説明した従動輪15やロータリエンコーダ13により構成されている。
【0064】
さらに、図11で示されている中央処理部9Cは、自走装置1をH型鋼Wに沿って自走させるための自走手段101と、前述した墨付け手段50とを駆動制御するものとなっている。自走手段101は、前述した説明から分かるように、図10に示されている駆動モータ12や駆動輪10により構成されており、また、墨付け手段50は、前述したように、図10で示されている電動モータ16や図2で示した墨刺し部材65により構成されている。
【0065】
なお、前述のスライダ57や墨刺し部材65が往動限位置及び復動限位置に達したことを検出するための図10の往復動限位置検出手段82からの信号は、制御手段9に入力部9Aから入力し、これらの入力信号に基づき、中央処理部9Cは、前述したように墨付け手段50の電動モータ16を駆動制御することにより、H型鋼Wに対する墨付け作業のために、スライダ57及び墨刺し部材65に前述した往動、復動を行わせる。
【0066】
次に、自走装置1によりH型鋼Wに対して行われる墨付け作業について説明する。
【0067】
図12〜図14は、本発明の一実施形態に係る墨付け方法を示すフローチャートであり、このフローチャートは、図15に示されているように、複数本のH型鋼Wが互いに隣接して平行に配置されている場合に、これらのH型鋼Wに対して実施される墨付け作業についてのものとなっている。図15には、第1墨付け対象物となっている第1H型鋼W1と、第2墨付け対象物となっている第2H型鋼W2とが示されており、これらのH型鋼W1,W2は、それぞれの一方の端部である後端W1A,W2AがH型鋼W1,W2の長さ方向に対して同じ側となって配置されている。
【0068】
また、図15には、第1H型鋼W1についての一方の端部である後端W1Aから他方の端部である前端W1Bまでの全長L1と、第2H型鋼W2についての一方の端部である後端W2Aから他方の端部である前端W2Bまでの全長L5も示されており、さらに、図15には、第1H型鋼W1についての後端W1Aからの複数の墨付け位置の距離L2〜L4と、第2H型鋼W2についての後端W2Aからの複数の墨付け位置の距離L6〜L8も示されている。すなわち、第1H型鋼W1についても、第2H型鋼W2についても、それぞれの墨付け位置の距離についての基準点は後端W1A,W2Aとなっている。
【0069】
以上の全長L1,L5と、後端W1A,W2Aからの墨付け位置の距離L2〜L4,L6〜L8は、図11で示したカード式記録媒体102に、第1及び第2H型鋼W1,W2についてのファイルごとに分けられて予め記録されている。
【0070】
図12〜図14で示すフローチャートは、図11の制御手段9の中央処理部9Cが、入力部9Aから入力するセンサ20,21等からの入力信号に基づき、記録部9Dに記録されているプログラム等のデータにより自走手段101及び墨付け手段50を駆動制御することにより行われるものになっているとともに、作業者によって行われる作業をも含むものになっている。
【0071】
第1及び第2H型鋼W1,W2についての墨付け作業を行うためには、初めに、図1等で示した自走装置1を第1H型鋼W1の後端W1Aの近傍の箇所に載置するとともに、カード式記録媒体102を図10で示した挿入口19に挿入し、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により電源を投入する。これにより、制御手段9の中央処理部9Cの処理作業により、表示部9B(図1で示されている表示画面5)には、カード式記録媒体102に記録されている第1H型鋼W1と第2H型鋼W2のうち、一方のH型鋼だけについての墨付け作業を行う単数処理と、第1H型鋼W1と第2H型鋼W2についての墨付け作業を連続して行う複数処理とが表示され、操作部6の操作により、図12のステップS1において、複数処理を選択すると、中央処理部9Cの処理作業により、表示部9Bには、カード式記録媒体102に記録されている第1及び第2H型鋼W1,W2についての2つのファイルが表示される。この後に、操作部6の操作により、ステップS2において、第1及び第2H型鋼W1,W2のうち、最初に墨付け作業を行うべき第1H型鋼W1についてのファイルを表示部9Bにおいて選択すると、ステップS3において、中央処理部9Cの処理作業により、第1H型鋼W1についての全長L1や、墨付け作業を行う回数、後端W1Aからの墨付け位置の距離L2〜L4を含むデータが、カード式記録媒体102から制御手段9の記録部9Dに取り込まれ、また、表示部9Bには、これらのデータが表示される。
【0072】
したがって、以上の説明から分かるように、カード式記録媒体102は、制御手段9の外付けされる外部記録部となっている。
【0073】
そして、操作部6に設けられているスタートボタンを操作すると、制御手段9の中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、ステップS4において、自走装置1は第1H型鋼W1の後端W1Aに向かって後退し始め、ステップS5において、第1検出手段である後端センサ21が第1H型鋼W1の後端W1Aを検出すると、言い換えると、自走装置1が第1H型鋼W1の後端W1Aに達すると、ステップS6において、制御手段9の中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の後退は停止する。この後、前述のプログラムで規定されている短時間の経過後に、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、ステップS7において、自走装置1は第1H型鋼W1の前端W1Bに向かう走行、言い換えると、最初の墨付け位置へ向かう前進を開始し、この前進の全行程をとおして、自走装置1の走行距離が、後端センサ21で検出されている第1H型鋼W1の後端W1Aが基準点となって走行距離測定手段100により常時測定され、この測定データは入力部9Aから中央処理部9Cに入力する。
【0074】
以上のように自走装置1が前進を開始した後に、ステップS8において、前端センサ20が第1H型鋼W1の前端W1Bを検出せずに、ステップS10において、走行距離測定手段100で測定される走行距離が図15で示す距離L2になると、すなわち、中央処理部9Cに入力する距離が、記録部4Dに記録されている距離L2になって、墨付け作業を行うべき位置に自走装置1が達すると、ステップS11において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の前進は停止する。
【0075】
なお、この自走装置1が前進を停止する位置は、自走装置1に設けられている墨付け手段50の位置が第1H型鋼W1の後端W1Aから距離L2となる位置である。このため、上述したように走行距離測定手段100で測定される走行距離が図15で示す距離L2になるとは、中央処理部9Cが、走行距離測定手段100から送られてくる距離データに対して、制御手段9の記録部9Dに予め記録されている従動輪15と墨刺し部材65との間の前後距離や、従動輪15と後端センサ21との間の前後距離を加算等の演算処理を行って得られた値であり、中央処理部9Cによるこのような加算等の演算処理は、これ以後の走行距離測定手段100から中央処理部9Cに入力する距離データについても行われ、以下の説明において、走行距離測定手段100により測定される走行距離とは、このような距離をいう。
【0076】
また、ステップS8において、前端センサ20が第1H型鋼の前端を検出した場合には、この第1H型鋼は、本来の長さを有していない間違いのH型鋼であるため、中央処理部9Cは、図14で示されているステップS9において、上述のプログラムで規定されている処理にしたがい、自走手段101を緊急停止させて自走装置1の前進を止めるとともに、自走装置1が載置されている第1H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第1H型鋼から取り外し、第1H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0077】
また、図12のステップS11において、自走装置1の前進が墨付け作業を行うべき位置で停止すると、ステップS12において、中央処理部9Cが墨付け手段50を駆動制御することにより、この墨付け手段50の墨刺し部材65が前述した往復動を行うことによって第1H型鋼W1に対する墨付け作業が行われ、これにより、図15に示されているように、第1H型鋼W1の後端W1Aから距離L2の位置において、この第1H型鋼W1の上面に墨付け線Nが引かれることになる。
【0078】
この墨付け作業の終了後に図12のステップS13に移行し、このステップS13において、中央処理部9Cによって自走手段101等が駆動制御されることにより、全部の墨付け作業が終了するまでステップS7〜ステップS12が繰り返される。
【0079】
そして、ステップS13において、全部の墨付け作業が終了すると、図13のステップS14において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1は、図15で示した第1H型鋼W1の全長L1を確認するための前進を開始する。この前進により、ステップS15において、前端センサ20が第1H型鋼W1の前端W1Bを検出すると、ステップS16において、中央処理部9Cは自走手段101の駆動を停止させて自走装置1の前進を止める。
【0080】
そして、中央処理部9Cは、ステップS17において、これまでの走行距離測定手段100により測定されていて、後端センサ21で検出された第1H型鋼W1の後端W1Aから前端センサ20で検出された第1H型鋼W1の前端W1Bまでの距離が、記録部9Dに記録されている第1H型鋼W1の全長L1と同じになっているか否か、言い換えると、走行距離測定手段100で測定された第1H型鋼W1の全長が記録部9Dに記録されている本来の全長L1になっているか否かを判断する。したがって、本実施形態の自走装置1によると、走行距離測定手段100により第1H型鋼の全長が測定されて確認されることになり、この全長が本来の全長L1になっている場合には、中央処理部9Cはその旨を表示部9Bに表示する。これにより、第1H型鋼W1についての全部の作業が終了する。
【0081】
また、ステップS17において、走行距離測定手段100で測定された第1H型鋼の全長が本来の全長L1になっていない場合には、この全長が測定されたH型鋼は間違いのH型鋼であるため、図14のステップS9において、中央処理部9Cは、前述のプログラムに規定されている処理にしたがい、自走装置1が載置されている第1H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第1H型鋼から取り外し、第1H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0082】
また、ステップS17において、走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L1と同じになっている場合には、ステップS18において、作業者は、第1H型鋼W1の前端に停止している自走装置1を持ち上げることにより、図15で説明したように、第1H型鋼W1と隣接して平行に配置されている第2H型鋼W2の上に自走装置1を移し替える作業を行う。
【0083】
この移し替え作業は、自走装置1の向きを反転させることにより、自走装置1の前端センサ20を第2H型鋼W2の後端W2Aの側に向け、この自走装置1を第2H型鋼W2の前端W2Bに近い箇所に載置セットすることにより行う。この後に、ステップS19において、操作部6の操作により、表示部9Bに表示されている第1及び第2H型鋼W1,W2についてのファイルのうち、次に墨付け作業を行うべき第2H型鋼W2についてのファイルを表示部9Bにおいて選択すると、ステップS20において、中央処理部9CCの処理作業により、第2H型鋼W1についての全長L5や、墨付け作業を行う回数、後端W2Aからの墨付け位置の距離L6〜L8を含むデータが、カード式記録媒体102から制御手段9の記録部9Dに取り込まれ、また、表示部9Bには、これらのデータが表示される。
【0084】
次いで、操作部6に設けられているスタートボタンを操作すると、制御手段9の中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、ステップS21において、自走装置1は第2H型鋼W2の前端W2Bに向かって後退し始め、ステップS22において、第1検出手段である後端センサ21が第2H型鋼W2の前端W2Bを検出すると、言い換えると、自走装置1が第2H型鋼W2の前端W2Bに達すると、ステップS23において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の後退は停止する。この後、前述のプログラムで規定されている短時間の経過後に中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、図14のステップS24において、自走装置1は第2H型鋼W2の後端W2Aに向かう走行、言い換えると、第2H型鋼W2における最初の墨付け位置へ向かう前進を開始し、この前進の全行程をとおして、自走装置1の走行距離が、後端センサ21で検出されている第2H型鋼W2の前端W2Bが基準点となって走行距離測定手段100により常時測定され、この測定データは入力部9Aから中央処理部9Cに入力する。
【0085】
以上のように自走装置1が第2H型鋼W2についての墨付け作業を行うためにこの第2H型鋼W2の前端W2Bからの前進を開始した後に、言い換えると、自走装置1が第1H型鋼W1の前端W1Bと同じ側となっている第2H型鋼W2の第1端部である前端W2Bからの前進を開始した後に、ステップS25において、前端センサ20が第2H型鋼W2の後端W2Aを検出せずに、ステップS26において、走行距離測定手段100で測定されて中央処理部9Cに入力する走行距離が、図15で示す全長L5から距離L8を差し引いた値と同じ距離になると、言い換えると、走行距離測定手段100で測定されて中央処理部9Cに入力する走行距離が、中央処理部9Cがカード式記録媒体102から記録部9Dに記録されている全長L5と距離L6〜L8のデータとに基づいて演算処理することにより、全長L5から距離L8を差し引いた値と同じ距離になると、ステップS27において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の前進は停止する。
【0086】
なお、ステップS25において、前端センサ20が第2H型鋼の前端を検出した場合には、この第2H型鋼は、本来の長さを有していない間違いのH型鋼であるため、中央処理部9Cは、前述した第1H型鋼の場合と同様に、図14のステップS9において、前述のプログラムで規定されている処理にしたがい、自走手段101を緊急停止させて自走装置1の前進を止めるとともに、自走装置1が載置されている第2H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第2H型鋼から取り外し、第2H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0087】
図14のステップS27において、自走装置1の前進が停止すると、ステップS28において、中央処理部9Cが墨付け手段50を駆動制御することにより、この墨付け手段50の墨刺し部材65が前述した往復動を行うことによって第2H型鋼W2に対する墨付け作業が行われ、これにより、図15に示されているように、第2H型鋼W2の後端W2Aから距離L8の位置において、この第2H型鋼W2の上面に墨付け線Nが引かれる。
【0088】
この墨付け作業の終了後に図14のステップS29に移行し、このステップS29において、中央処理部9Cによって自走手段101等が駆動制御されることにより、第2H型鋼W2についての全部の墨付け作業が終了するまでステップS24〜ステップS28が繰り返される。
【0089】
そして、ステップS29において、全部の墨付け作業が終了すると、ステップS30において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1は、図15で示した第2H型鋼W2の全長L5を確認するための前進を開始する。この前進により、ステップS31において、前端センサ20が第2H型鋼W2の第2端部となっている後端W2Aを検出すると、ステップS32において、中央処理部9Cは自走手段101の駆動を停止させて自走装置1の前進を止める。次いで、中央処理部9Cは、ステップS33において、前述した第1H型鋼W1の場合と同様に、第2H型鋼W2の前端W2Bから走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L5と同じ距離になっているか否か、言い換えると、これまでの走行距離測定手段100により測定され、後端センサ21で検出された第2H型鋼W2の前端W2Bから前端センサ20で検出された第2H型鋼W2の後端W2Aまでの距離が、第2H型鋼W2の本来の全長L5と同じ距離になっているか否か、を判断する。すなわち、本実施形態の自走装置1によると、走行距離測定手段100により第2H型鋼W2についての全長も測定されて確認されることになり、この全長が本来の全長L5になっている場合には、中央処理部9Cはその旨を表示部9Bに表示する。
【0090】
また、ステップS33において、この全長が本来の全長L5になっていない場合には、この全長が測定されたH型鋼は間違いのH型鋼であるため、図14のステップS9において、中央処理部9Cは、前述のプログラムに規定されている処理にしたがい、自走装置1が載置されている第2H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、第2H型鋼W2の後端に達している自走装置1を第2H型鋼から取り外し、第2H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0091】
また、ステップS33において、走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L5と同じ距離になっている場合には、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、第2H型鋼W2の後端に達している自走装置1を第2H型鋼W2から取り外す。
【0092】
以上の作業により、第1及び第2H型鋼W1,W2についての全部の作業が終了する。
【0093】
なお、ステップS33において、走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L5と同じ距離になっていない場合と、本来の全長L5と同じ距離になっている場合との両方において、中央処理部9Cにより自走手段101を駆動制御することにより、第2H型鋼W2の後端W2Aに達している自走装置1を、第2H型鋼W2の第2端部となっている後端W2Aから第1端部となっている前端W2Bの側へ少し後退させてから停止させ、この後に、作業者が、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第2H型鋼W2から取り外すようにしてもよい。
【0094】
これによると、自走装置1が第2H型鋼W2から取り外されるまでの間に、何らかの理由により、自走装置1が第2H型鋼W2の後端から脱落してしまうことを防止できることになる。
【0095】
このようにH型鋼Wの全長を測定するために停止した位置から自走装置1を少し後退させることは、図13のステップS17で第1H型鋼W1の全長を測定するために、ステップS16において、自走装置1を第1H型鋼W1の前端で停止させた後においても実施してもよい。
【0096】
図15には、以上説明した自走装置1についての移動軌跡Xが示されている。この自走装置移動軌跡Xのうち、部分軌跡X1はステップS7〜S16に関するものであり、部分軌跡X2はステップS18に関するもの、部分軌跡X3はステップS24〜S32に関するものである。
【0097】
また、本実施形態では、作業者が自走装置1の後を追うように移動するときの作業者移動軌跡Yも示されている。この作業者の移動は、第1及び第2H型鋼W1,W2についてのそれぞれの墨付け作業が行われた位置の近傍に、例えば、これらのH型鋼W1,W2の墨付け作業位置に接合される相手側の鋼材の識別番号等に関する表示物Mを作業者が表示するために行われるものであり、作業者移動軌跡Yは、自走装置移動軌跡Xの部分軌跡X1〜X3と対応する部分軌跡Y1〜Y3からなる。
【0098】
なお、図15には、第1及び第2H型鋼W1,W2と平行に配置された第3H型鋼W3についても墨付け作業を行う場合が示されている。第2H型鋼W2についての墨付け作業が終了した後に、第3H型鋼W3についての墨付け作業を行う場合には、自走装置移動軌跡Xについての延長部分軌跡X4及び作業者移動軌跡Yについての延長部分軌跡Y4から分かるように、作業者は自走装置1を第2H型鋼W2から第3H型鋼W3の後端W3Aの近傍に移し替え、この後に、第3H型鋼W3についてのそれぞれの墨付け作業を行うために、自走装置移動軌跡Xについての延長部分軌跡X5及び作業者移動軌跡Yについての延長部分軌跡Y5から分かるように、第1H型鋼W1の場合と同様に、自走装置1を第3H型鋼W3の前端W3Bに向かって前進させるようにする。
【0099】
以上の説明から分かるように、本実施形態に係る自走装置1及びこの自走装置1による墨付け方法によると、自走装置1は、自走手段101による自走により、H型鋼Wの墨付け作業を行うべき位置へ自動的に移動することになり、また、墨付け手段50により、H型鋼Wに自動的に墨付け作業を行うため、墨付け作業を自動的に行えることになり、また、墨付け作業は、走行距離測定手段100で測定される所定位置で行われるため、墨付け作業を正確に行えることになる。
【0100】
また、自走装置1は、第1検出手段となっている後端センサ21で検出されるH型鋼Wの一方の端部である後端又は前端から、第2検出手段となっている前端センサ20で検出される他方の端部である前端又は後端まで自走するため、走行距離測定手段100によりH型鋼Wの全長を測定することができ、これにより、墨付け作業行うH型鋼Wが本来の長さを有している所定の墨付け対象物であるか否かを確認することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る自走装置1による墨付け方法によると、複数のH型鋼Wが互いに隣接して平行に配置されている場合には、第1H型鋼W1について墨付け作業が終了した後に、自走装置1を第1H型鋼W1の後端W1Aに戻し、この後に、第1H型鋼W1から第2H型鋼W2に移し替えた自走装置1を第2H型鋼W2の前端W2Bに向かって前進させるのではなく、第1H型鋼W1について墨付け作業が終了した後に、第1H型鋼W1から第2H型鋼W2に移し替えた自走装置1を、第2H型鋼W2についての墨付け作業のために、第1H型鋼W1の前端W1Bと同じ側の第2H型鋼W2の第1端部となっている第2H型鋼W2の前端W2Bから前進させるため、自走装置1を第1H型鋼W1の後端W1Aまで戻すことを省略できることになり、これにより、第1及び第2H型鋼W1、W2についての墨付け作業を効率的に実施することができる。
【0102】
また、作業者が図15で示した表示物Mを第1及び第2H型鋼W1,W2の上面に表示する場合には、自走装置1の後を追うように移動する作業者も、第1H型鋼W1の後端W1Aまで戻ることを行わなくてもよいため、作業者の作業量を軽減することができる。
【0103】
図16及び図17は、自走装置1に配置されている前述した光学式の後端センサ21により、H型鋼Wの後端が検出することができない又は検出することが困難な場合に用いる補正治具90を示している。光学式の後端センサ21により、H型鋼Wの後端が検出することができない又は検出することが困難な場合とは、例えば、図17に示されているように、H型鋼Wの後端WCに斜めの面取り部WDが設けられている場合である。光学式の後端センサ21の発光部から出射したビーム光が斜めの面取り部WDで反射されると、このビーム光は後端センサ21の受光部に入射しないため、このセンサ21によりH型鋼Wの後端WCを検出することはできない。
【0104】
補正治具90は、図16に示されているように、H型鋼Wの長さ方向に延びる2個の平行なアーム部材91と、これらのアーム部材91の後端間に架設された基準部材92と、この基準部材92の両端から下向きに延びる2本の平行な垂下部材93と、それぞれのアーム部材91の下面に取り付けられた板状のマグネット94とからなる。この補正治具90は、マグネット94によりH型鋼Wに対して着脱自在となっており、補正治具90を用いる場合には、図17に示されているように、それぞれの垂下部材93をH型鋼Wの後端WCに、言い換えると、H型鋼Wの上側フランジ部WBの後面に当て、マグネット94によりそれぞれのアーム部材91をH型鋼Wの上面に吸着させる。
【0105】
これによると、H型鋼Wの上面に載置セットされた自走装置1が後退すると、基準部材92の直角形状となっている後端92Aを光学式の後端センサ21により検出できることになり、この後端92Aの位置を基準点にして自走装置1を前進させることができる。
【0106】
なお、この補正治具90を用いると、H型鋼Wの実際の後端WCの位置に対して基準部材92の後端92Aの位置は、基準部材92や垂下部材93についてのH型鋼Wの長さ方向の寸法と対応するずれ量Zだけ後方へずれることになるため、図1で示した操作部6の操作等により制御手段9の記録部にずれ量Zを記録し、これにより、制御手段9の中央処理部が、ずれ量Zのデータと、前述したH型鋼Wの長さ方向における墨付け作業をすべき位置に関するデータとにより、自走装置1が墨付け作業する位置まで前進する距離を演算するようにする。
【0107】
また、光学式の後端センサ21が、発光部及び受光部の配置箇所と、発光部から出射したビーム光が反射される箇所との間の上下距離が発光部の傾き角度により規定される距離型センサである場合には、図17で示すように、上述の基準点となる基準部材92の後端92Aの高さ位置を、H型鋼Wの後端WCの上面と同じになっている高さ位置Hとすることが好ましい。
【0108】
これによると、補正治具90を用いるときであっても、発光部の傾き角度を、補正治具90を用いないときと同じにすることができ、発光部の傾き角度を変更する作業を省略することができる。
【0109】
なお、図16及び図17で示した補正治具90は、H型鋼Wの前端に、前述した前端センサ20により検出することができない又は検出することが困難な斜めの面取り部等が設けられている場合にも、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、例えば、建築物用の建材に、他の建材との接合位置等をマークするための墨付け作業を行うために利用できるものである。
【符号の説明】
【0111】
1 墨付け自走装置
9 制御手段
20 第2検出手段である前端センサ
21 第1検出手段である後端センサ
50 墨付け手段
100 自走手段
W 墨付け対象物であるH型鋼
W1 第1墨付け対象物である第1H型鋼
W1A 第1H型鋼の一方の端部である後端
W1B 第1H型鋼の他方の端部である前端
W2 第2墨付け対象物である第2H型鋼
W2A 第2H型鋼の第2端部である前端
W2B 第2H型鋼の第1端部である後端
L1 第1H型鋼の全長
L2〜L4 第1H型鋼についての墨付け作業の位置の距離
L5 第2H型鋼の全長
L6〜L8 第2H型鋼についての墨付け作業の位置の距離
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走することにより、例えば、建築物用の建材に、他の建材との接合位置等をマークするための墨付け作業を行うために用いられる墨付け自走装置、及びこの墨付け自走装置による墨付け方法に係り、H型鋼や溝型鋼等の建材を含む各種の墨付け対象物に墨付け作業を行うために利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
H型鋼等の建築物用の建材には、他の建材と接合等すべき位置をマークするための墨付け作業が行われ、この墨付け作業は、従来、工場において、墨壷を用いる墨刺し方式により行われている。この墨刺し方式で用いられる墨刺し部材は、下記の特許文献1に示されており、作業者は、この特許文献1に示されているような墨刺し部材を用いる手作業により、墨付け対象物の所定位置に墨付け作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−309082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の墨付け作業は、作業者の手作業により行われているため、この作業に多くの手間と時間がかかり、また、作業者のミスにより、墨付け対象物の正確な位置に墨付け作業が行われないおそれもある。
【0005】
本発明の目的は、墨付け作業を自動的に行え、また、この墨付け作業を正確に行えるようになる墨付け自走装置及びその装置による墨付け方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る墨付け自走装置は、墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置であって、前記制御手段は、前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記自走手段により自走したときに前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記自走手段を駆動制御して自走を停止させ、かつ前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行うことと、前記走行距離測定手段により、前記第1検出手段で検出される前記一方の端部から前記第2検出手段で検出される前記他方の端部までの前記墨付け対象物の全長を測定することと、を行うことを特徴とするものである。
【0007】
この墨付け自走装置によると、自走手段による自走により、墨付け自走装置は、墨付け対象物の墨付け作業を行うべき位置へ自動的に移動することになり、また、墨付け手段により、墨付け対象物に自動的に墨付け作業を行うため、墨付け作業を自動的に行えることになり、また、墨付け作業は、走行距離測定手段で測定される所定位置で行われるため、墨付け作業を正確に行えることになる。
【0008】
さらに、本発明に係る墨付け自走装置は、第1検出手段で検出される墨付け対象物の一方の端部から第2検出手段で検出される他方の端部まで自走するため、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することができ、これにより、墨付け作業を行う墨付け対象物が本来の長さを有している所定の墨付け対象物であるか否かを確認することができる。
【0009】
なお、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することは、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行った後に実施してよく、あるいは、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う前に実施してもよい。
【0010】
ここで、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することを、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う前に実施することとは、自走装置が墨付け対象物の全長を走行してこの全長を測定した後に、自走装置が墨付け対象物の走行開始位置まで戻り、この後に、自走装置が墨付け位置まで前進して墨付け作業を行うことや、自走装置が墨付け対象物の全長を走行してこの全長を測定した後に、自走装置が墨付け対象物の走行開始位置に向かって後退し、この後退の途中において、墨付け手段が墨付け作業を行うことである。
【0011】
走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することが、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行った後に実施され、そして、この墨付け作業が行われた墨付け対象物が本来の長さを有していない墨付け対象物であることが判明した場合には、その墨付け対象物は間違いの墨付け対象物であるため、本来の墨付け対象物に対して改めて墨付け作業を行えばよく、墨付け作業が行われた間違いの墨付け対象物については、墨付け作業で付けられたマークを消去すればよい。
【0012】
また、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することが、制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う前に実施され、そして、この墨付け作業が行われた墨付け対象物が本来の長さを有していない墨付け対象物であることが判明した場合には、第2検出手段により墨付け対象物の前記他方の端部が検出されるまで自走している墨付け自走装置を、その位置で停止させたままとし、制御手段による自走手段等の駆動制御を終了させればよい。
【0013】
本発明に係る墨付け自走装置による墨付け方法は、墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置により行う墨付け方法であって、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記墨付け自走装置が自走する第1工程と、前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御して前記墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ前記制御手段が前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第2工程と、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第2検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記他方の端部まで前記墨付け自走装置が自走し、前記走行距離測定手段により前記墨付け対象物の全長を測定する第3工程と、を含んでいることを特徴とするものである。
【0014】
この墨付け自走装置による墨付け方法によっても、墨付け自走装置は、自走手段による自走により、墨付け対象物の墨付け作業を行うべき位置へ自動的に移動するとともに、墨付け手段により、墨付け対象物に自動的に墨付け作業を行うため、墨付け作業を自動的に行えることになる。また、墨付け作業は、走行距離測定手段で測定される所定位置で行われるため、墨付け作業を正確に行えることになる。
【0015】
また、墨付け自走装置は、第1検出手段で検出される墨付け対象物の一方の端部から第2検出手段で検出される他方の端部まで自走するため、走行距離測定手段により墨付け対象物の全長を測定することもできる。
【0016】
以上の墨付け自走装置による墨付け方法において、前記墨付け対象物が第1墨付け対象物となっていて、この第1墨付け対象物に隣接して第2墨付け対象物を第1墨付け対象物と平行に配置するなどのように、複数の墨付け対象物を互いに平行に配置し、これらの墨付け対象物に対して墨付け作業を行う場合には、第1墨付け対象物に対しての前記第3工程が終了した後に、制御手段による自走手段の駆動制御により、墨付け自走装置を前記第1検出手段で検出される第1墨付け対象物の前記一方の端部まで戻し、この後に、墨付け自走装置を第1墨付け対象物から第2墨付け対象物に移し替えることを行い、さらにこの後に、この第2墨付け対象物に対して上述した第1〜3工程と同じ工程を行うようにしてもよい。
【0017】
また、この墨付け方法とは異なる墨付け方法として、第1墨付け対象物に対しての前記第3工程が終了した後に、墨付け自走装置を第1墨付け対象物から第2墨付け対象物に移し替える第4工程と、制御手段が自走手段を駆動制御することにより、第1墨付け対象物の前記他方の端部と同じ側の第2墨付け対象物の端部となっていて前記第1検出手段で検出される第1端部から、この第1端部とは反対側の端部となっている第2墨付け対象物の第2端部に向かって墨付け自走装置が自走する第5工程と、走行距離検出手段で検出される走行距離が、第2墨付け対象物の前記第1端部から墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、制御手段の記録部に記録されているデータに基づいて制御手段の中央処理部で演算される距離になったときに、制御手段が自走手段を駆動制御して墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ制御手段が墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第6工程と、を実施するようにしてもよい。
【0018】
これによると、第1墨付け対象物に隣接してこの第1墨付け対象物と平行に配置されている第2墨付け対象物に対して墨付け作業を行うときに、墨付け自走装置を第1検出手段で検出される第1墨付け対象物の前記一方の端部まで戻すことを省略できることになり、このため、作業性の向上を図ることができる。
【0019】
そして、第2墨付け対象物に対して上述の第4〜6工程を行うときは、第6工程の後に、制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、第2検出手段で検出される第2墨付け対象物の前記第2端部まで墨付け自走装置が自走し、走行距離測定手段により第2墨付け対象物の全長を測定する第7工程を実施してもよく、あるいは、実施しなくてもよい。
【0020】
この第7工程を実施した場合には、第2墨付け対象物が本来の長さを有している所定の墨付け対象物であるか否かを確認することができる。
【0021】
以上説明した本発明は、各種の墨付け対象物に対して墨付け作業を行うために用いることができ、この墨付け対象物は、構造材が金属製や木製となっている建築物用の建材でもよく、あるいは、橋脚や鉄塔等のための構成材でもよく、また、これらの建材や構成材はH型鋼でもよく、溝型鋼でもよく、さらに、木製柱や木製梁でもよい。
【0022】
また、墨付け自走装置に設ける墨付け手段は、前述した特許文献1に示されているような墨刺し部材を用いるものでもよく、あるいは、墨壷から繰り出される墨糸によるものでもよく、任意な構造、形式の墨付け手段でよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、墨付け作業を自動的に行え、また、この墨付け作業を正確に行えるという効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る墨付け自走装置の全体を示す斜視図である。
【図2】図2は、墨付け自走装置の正面図である。
【図3】図3は、墨付け自走装置に設けられている墨付け手段を構成するスライダ、墨刺し部材及び墨容器を示す正面図である。
【図4】図4は、図3の側断面図である。
【図5】図5は、図2で示されている墨付け手段のうち、墨刺し部材と墨容器を省略して示した自走装置の本体の正面図である。
【図6】図6は、図5で示されている墨付け手段の接離手段により墨刺し部材が墨付け対象物に接触しているときを示す正面図である。
【図7】図7は、図5で示されている墨付け手段の接離手段により墨刺し部材が墨付け対象物から離間しているときを示す正面図である。
【図8】図8は、墨付け自走装置の本体の底面図である。
【図9】図9は、墨付け自走装置の本体の側断面図である。
【図10】図10は、墨付け自走装置の本体の内部構造を示す平面図である。
【図11】図11は、図10で示されている制御手段を機能的に示した概念図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態に係る墨付け作業を示すフローチャートのうち、前段部分を示す図である。
【図13】図13は、本発明の一実施形態に係る墨付け作業を示すフローチャートのうち、中段部分を示す図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態に係る墨付け作業を示すフローチャートのうち、後段部分を示す図である。
【図15】図15は、図12〜図14のフローチャートによる墨付け作業が実施される複数の墨付け対象物の配置関係を示す平面図である。
【図16】図16は、墨付け自走装置の前進の基準点を規定するための補正治具が用いられた場合において、この補正治具の全体を示す斜視図である。
【図17】図17は、図16の補正治具を墨付け対象物に取り付けたときを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る墨付け自走装置は、建築物の建材となっているH型鋼に、他の建材との接合位置を直線でマークするために用いられるものである。このため、本実施形態における墨付け対象物は、H型鋼である。
【0026】
図1には、本実施形態に係る墨付け手段50を備えている墨付け自走装置1の全体の斜視図が示されている。初めに、この墨付け自走装置1について説明すると、墨付け自走装置1は、本体2と、この本体2に着脱可能に被せられているカバー部材3とを有しており、カバー部材3の上面には、自走装置1を持ち運び可能とするための2個の取手4が設けられている。また、カバー部材3には、液晶による表示画面5と、電源ボタンやスタートボタンを含む複数のボタンによる操作部6とが設けられているとともに、カバー部材3に形成されている窓孔3Aを開閉するための蓋部材7も設けられている。
【0027】
図10には、カバー部材3を取り外したときの本体2の内部構造の平面図が示されている。この本体2の内部には、バッテリが配置されている電源部8と、コンピュータとなっている制御手段9のための電子回路基板と、駆動輪10にカップリング11を介して接続されているパルスモータによる駆動モータ12と、ロータリエンコーダ13がカップリング14を介して接続されている従動輪15と、図1で示されている墨付け手段50の駆動源となっている電動モータ16とが収納されている。また、本体2の底面図である図8に示されているように、本体2には、それぞれ幅広となっている駆動輪10及び従動輪15のそれぞれの下部を本体2の下側に露出させるための孔2A,2Bが形成されているとともに、図10に示されているように、本体2の内部には、これらの駆動輪10、従動輪15を覆うためのカバー17,18が配置されている。
【0028】
自走装置1が、駆動モータ12による駆動輪10の回転でH型鋼Wに沿って自走すると、従動輪15及びカップリング14を介してロータリエンコーダ13が回転駆動されるため、このロータリエンコーダ13により自走装置1の走行距離が測定されることになる。
【0029】
また、図10に示されているように、本体2の内部には、カード式記録媒体を挿入するための挿入口19が電源部8と隣接して配設されており、このカード式記録媒体には、墨付け対象物となっているH型鋼W(図2を参照)についての設計データとなっているCADデータから、このH型鋼Wに墨付け作業を行ううえで必要とされる各種のデータが取り出されて記録されており、このカード式記録媒体が挿入口19に挿入されることにより、これらのデータが制御手段9の記録部に記録できるようになっており、そして、制御手段9が、これらのデータと、制御手段9の記録部に記録されている作業順序等に関するプログラムを含むデータと、ロータリエンコーダ13等からの入力信号とに基づき、駆動モータ12や電動モータ16を駆動制御するようになっている。
【0030】
したがって、本実施形態に係る自走装置は、H型鋼Wについて予め作成されているCADデータを直接利用して、このH型鋼Wに墨付け作業を行えるものになっており、上述したH型鋼Wに墨付け作業を行ううえで必要とされる各種のデータのなかには、H型鋼Wにおける他の建材との接合位置に関するデータ、すなわち、H型鋼Wにおける墨付け作業を行うべき位置に関するデータが含まれている。
【0031】
なお、図1で示されている表示画面5には、挿入口19に挿入されたカード式記録媒体に記録されているH型鋼Wの種類等に関するデータを含む各種の情報が表示されるようになっている。
【0032】
また、図1で示されているカバー部材3の窓孔3Aの位置は、図10で示されている電源部8と挿入口19が配置されている位置と一致している。このため、カバー部材3を本体2から取り外すことなく、蓋部材7を開けるだけにより、電源部8へのバッテリのセット作業及び電源部8からのバッテリの取り出し作業と、挿入口19へのカード式記録媒体の挿入作業及び挿入口19からのカード式記録媒体の抜き取り作業とを行えるようになっている。
【0033】
また、図10に示されているように、駆動輪10が配置されている本体2の内部の前部には、前端センサ20が配置され、従動輪15が配置されている本体2の内部の後部には、後端センサ21が配置されている。これらのセンサ20,21は、発光部と受光部からなる光学式センサであり、図8に示されているように、本体2には、センサ20,21の発光部から出射したビーム光が本体2の下側に進行し、H型鋼Wで反射したこのビーム光が受光部に入射できるようにするための孔2C,2Dが形成されている。
【0034】
また、図8には、自走装置1をH型鋼Wに載置セットしたときに、自走装置1の走行方向と直交するH型鋼Wの幅方向の両側の端面に接触する一対のガイド手段30が示されている。本体2の下面に配置されているこれらのガイド手段30のそれぞれは、自走装置1の走行方向に、言い換えるとH型鋼Wの長さ方向に延びる長さを有しているベース部材31と、このベース部材31の長さ方向の両端に下向きに取り付けられた2個の中心軸32と、これらの中心軸32を中心にベース部材31に回転自在に配設された長筒状の2個のガイド筒部材33とを有する。H型鋼Wの幅方向に向かい合って本体2に配設されているこれらのガイド手段30のそれぞれのベース部材31には、2本のガイドバー34,35の基端部が結合され、H型鋼Wの幅方向内側へ延びているこれらのガイドバー34,35は、本体2に取り付けられたブロック状の2個のガイド部材36,37のガイド孔にスライド自在に挿入されている。
【0035】
このため、一対のガイド手段30のそれぞれは、ガイドバー34,35とガイド部材36,37の案内作用により、H型鋼Wの幅方向に移動自在となっている。そして、それぞれのベース部材31には取手38が設けられており、これらの取手38により、これらのガイド手段30をH型鋼Wの幅方向に手で移動させることができる。
【0036】
なお、本体2の側断面図である図9に示されているように、ガイド部材36,37は、本体2の下面に上方へ窪んで形成された溝部2Eに配置されているとともに、この溝部2Eには、板状の2個の補助部材39,40が配置されており、これらの補助部材39,40には下向きに突出した突出部39A,40Aが設けられている。これらの突出部39A,40Aは、図8に示されているとおり、それぞれのガイド手段30ごとに設けられているとともに、H型鋼Wの幅方向に延びている。また、図9から分かるように、それぞれのガイド手段30のベース部材31には上方へ立ち上がった2個の立上部31A,31Bが形成され、これらの立上部31A,31Bに、突出部39A,40Aがスライド自在に挿入された切込部31C,31Dが形成されている。
【0037】
このため、一対のガイド手段30がガイドバー34,35とガイド部材36,37の案内作用によりH型鋼Wの幅方向に移動することは、突出部39A,40Aにより切込部31C,31Dが案内されることによっても行われることになり、これにより、一対のガイド手段30のベース部材31がH型鋼Wの長さ方向に振れることを補助部材39,40の突出部39A,40Aにより防止して、これらのガイド手段30をH型鋼Wの幅方向へ移動させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、図8に示されているとおり、一対のガイド手段30のベース部材31のそれぞれには、補助部材39,40に対して転動自在となった2個のガイドローラ41,42が設けられており、このため、一対のガイド手段30は、これらのガイドローラ41,42の転動により円滑にH型鋼Wの幅方向に移動する。
【0039】
また、本体2の溝部2Eには基台43が設けられ、この基台43には、ガススプリング44のシリンダ44Aがブラケット45で取り付けられており、H型鋼Wの幅方向に向いているガススプリング44のピストンロッド44Bの先端には、連結部材46が結合されている。この連結部材46と、一対のガイド手段30のうち、一方のガイド手段30のベース部材31との間には、ワイヤー47が架け渡されており、また、連結部材46と、一対のガイド手段30のうち、他方のガイド手段30のベース部材31との間には、本体2に取り付けられた方向反転ローラ48に掛け回されたワイヤー49が架け渡されている。
【0040】
ガススプリング44のピストンロッド44Bは、シリンダ44A内に封入されている高圧ガスによりシリンダ44Aが突出する方向への圧力を常時受けているため、一対のガイド手段30のそれぞれは、ガススプリング44により、互いに近づく方向へ常時弾性的に付勢されている。このため、これらのガイド手段30を取手38によりH型鋼Wの幅方向に拡大移動させてから、前述した駆動輪10及び従動輪15をH型鋼Wの上面に載せて自走装置1をこのH型鋼Wに載置セットし、この後に、取手38から手を離すと、一対のガイド手段30のそれぞれはガススプリング44により互いに近づく方向へ移動し、それぞれのガイド手段30の前述のガイド筒部材33が、図2に示されているように、H型鋼Wの幅方向の両側の端面WAに自ずと当接することになり、これらの端面WAは、図2に示されているように、H型鋼Wの上側フランジ部WBの幅方向の端面である。
【0041】
これにより、一対のガイド手段30は、自走装置1の走行方向と直交するH型鋼Wの幅方向の両側の端面WAにH型鋼Wを挟着する状態で接触することになり、このため、後述するように自走装置1がH型鋼Wの長さ方向に自走したときに、それぞれのガイド手段30のガイド筒部材33が前述の中心軸32を中心に回転しながら、ガイド手段30が自走装置1をH型鋼Wに対してガイドすることになり、自走装置1をH型鋼Wの長さ方向に安定させて走行させることができる。
【0042】
また、一対のガイド手段30には、これらのガイド手段30を互いに近づく方向に常時弾性的に付勢するための弾性付勢手段となっているガススプリング44による付勢力が付与されているため、墨付け作業を行うH型鋼Wに幅寸法が異なっている各種のものがあっても、一対のガイド手段30の間隔を最大の間隔に拡大しながら、自走装置1をH型鋼Wに載置セットすると、これらのガイド手段30の間隔はガススプリング44による付勢力により縮小するため、幅寸法が異なっているそれぞれのH型鋼Wの幅方向の両側の端面に一対のガイド手段30を、これらのガイド手段30によりH型鋼Wが自ずと挟着された状態にして接触させることができることになり、これにより、幅寸法が異なっているそれぞれのH型鋼Wに自走装置1をセットするための作業を簡単に行える。
【0043】
次に、図1で示されている墨付け手段50について説明する。この墨付け手段50は、自走装置1の本体2の前面部2Fに配置されている。
【0044】
図10で説明した電動モータ16の駆動軸16Aの一方の端部は、本体2の前面部2Fから自走装置1の外部に突出しており、この一方の端部には駆動プーリ51が結合されている。前面部2Fには、図1に示されているように、この駆動プーリ51のほかに、アイドルプーリ52,53と、方向反転プーリ54,55が回転自在に配設されており、これらのプーリ51〜55には、無端走行体であるベルト56が掛け回されている。なお、これらのプーリ51〜55及びベルト56は、タイミングプーリ及びタイミングベルトである。
【0045】
ベルト56のうち、2個の方向反転プーリ54と55の間の下段部分には、スライダ57が連結されており、また、前面部2Fの両端部には、上下2本のガイドバー58,59がH型鋼Wの幅方向が長さ方向となって架け渡されており、スライダ57は、これらのガイドバー58,59に案内されてH型鋼Wの幅方向に移動自在となっている。このため、スライダ57は、電動モータ16の正逆駆動による駆動プーリ51の正逆回転により、ガイドバー58,59に案内されてH型鋼Wの幅方向に往復動する。
【0046】
図2には、墨付け手段50を正面から見た構造を示すために自走装置1の正面図が示されている。また、図3には、墨付け手段50のうち、スライダ57及びこのスライダ57に配置されている部材の正面図が示されており、図4は、図3の側断面図である。スライダ57には、上下方向を長さ方向とする2本のガイドロッド60(図6及び図7も参照)が設けられており、これらのガイドロッド60に案内されて昇降自在となっている昇降部材61がスライダ57に取り付けられている。また、それぞれのガイドロッド60には、昇降部材61に下方への弾性付勢力を常時作用させているコイルばね62が巻装されているとともに、昇降部材61の下部には2個のローラ63が回転自在に取り付けられており、昇降部材61が下降位置に達しているときに、これらのローラ63がH型鋼Wの上面を転動することにより、スライダ57及び昇降部材61がH型鋼Wの幅方向に円滑に往復動できるようになっている。
【0047】
また、図3及び図4に示されているように、昇降部材61の前面には、墨刺し部材65を保持したホルダー66が取り付けられている。墨刺し部材65は、合成樹脂製の本体65Aと、この本体65Aから斜め下向きに延びている筆先65Bとからなり、この筆先65Bは、それぞれが細幅で薄厚となっている多数の金属製の薄板67を厚さ方向に重ね合わせることにより形成されており、これらの薄板67の幅方向は、H型鋼Wの長さ方向になっているとともに、薄板67の厚さ方向は、H型鋼Wの幅方向となっている。
【0048】
墨刺し部材65の本体65Aの全体と筆先65Bの一部はホルダー66の内部に収納されており、このホルダー66にねじ込まれた2個の止めねじ68の加圧力により、墨刺し部材65がホルダー66に止められている。また、ホルダー66には、墨刺し部材65の本体65Aの上面を斜め下向きに押すための押しねじ69が螺入されており、それぞれの止めねじ68を緩めた後に、この押しねじ69をホルダー66内に螺進させることにより、ホルダー66の下面からH型鋼W側へ突出している筆先65Bの突出量を調整することができるようになっている。このため、押しねじ69は、墨刺し部材65のH型鋼W側への突出量を調整するための墨刺し部材突出量調整手段となっている。
【0049】
また、図4に示されているとおり、ホルダー66の前面には、墨刺し部材65に供給される墨を収納した墨容器70が取り付けられている。この墨容器70の上面は墨差し入れ口70Aとなっているとともに、墨容器70の内部には、墨を含浸させるための不織布71が収納されており、また、墨容器70の内部には、墨を墨刺し部材65の筆先65Bに供給するための墨供給口70Bが形成されている。この墨供給口70Bは、筆先65Bを構成している上述の薄板67の幅方向に筆先65Bと向かい合っており、このため、不織布71に含浸されている墨をそれぞれの薄板67の間に毛細管現象により確実に供給することができるようになっている。なお、本実施形態における墨は、墨壷用の白液である。
【0050】
図5は、図2で示されている墨付け手段50のうち、墨刺し部材65と墨容器70を省略して示した自走装置1の本体2の正面図である。また、図6及び図7には、墨刺し部材65と墨容器70を省略することにより、スライダ57と昇降部材61の全体正面図が示されている。スライダ57の前面には、軸72から下側に延びているとともに、この軸72を中心にH型鋼Wの幅方向に揺動自在となっている第1係合部材73が配設されている。また、スライダ57の前面には、この第1係合部材73をH型鋼Wの幅方向の一方の側へ弾性的に付勢するための付勢部材となっているコイルばね74が配設され、このコイルばね74による第1係合部材73の揺動は、スライダ57の前面に設けられたストップピン75により止められているため、通常時の第1係合部材73は図6に示されている鉛直下向きの姿勢となっている。
【0051】
また、昇降部材61の後面には、この昇降部材61がスライダ57に設けられている前述の2本のガイドロッド60に案内されて上昇したときに、第1係合部材73と係合可能となっている第2係合部材76が固定配置されている。第1係合部材73の下部と第2係合部材76の上部には、これらの係合部材73と76の係合を円滑に行わせるための傾斜面73A,76Aが形成されている。
【0052】
図5に示されているように、自走装置1の本体2の前面部2Fには、H型鋼Wの幅方向における一方の端部の側において、傾斜部材77が他方の端部の側に向けて取り付けられており、この傾斜部材77には、この傾斜部材77が取り付けられている前面部2Fの端部の側に向かって上り傾斜となっている傾斜面77Aが形成されている。また、前面部2Fの他方の端部には、突き部材78が取り付けており、この突き部材78は、傾斜部材77が取り付けられている前面部2Fの端部の側に向かって延びている。
【0053】
図10に示されている電動モータ16の正駆動により図5で示されている駆動プーリ51が正回転すると、ベルト56の走行によりスライダ57は、傾斜部材77側への移動である図5及び図6の矢印Aの方向へ前進する。そして、スライダ57が傾斜部材77の配置箇所に達すると、昇降部材61に設けられているローラ63が傾斜部材77の傾斜面77Aに乗り上げるため、昇降部材61はガイドロッド60の案内作用によりスライダ57に対して上昇し、この上昇により、第2係合部材76は、一旦コイルばね74に抗してストップピン75とは反対側へ揺動する第1係合部材73に係合することになる。これにより、昇降部材61は上昇位置を維持することになる。
【0054】
また、電動モータ16の逆駆動により駆動プーリ51が逆回転すると、ベルト56の逆側への走行によりスライダ57は、突き部材78側への移動である図5及び図7の矢印Bの方向へ後退する。そして、スライダ57が突き部材78の先端箇所に達すると、第1係合部材73は突き部材78で突かれるため、この第1係合部材73はコイルばね74に抗してストップピン75とは反対側へ揺動する。このため、第1係合部材73と第2係合部材76との係合が解除されて、昇降部材61は、昇降部材61自身の重量や、墨刺し部材65及び墨容器70の重量、さらにはガイドロッド60に巻装されているコイルばね62のばね力により、ガイドロッド60に案内されてスライダ57に対して下降することになり、これにより、昇降部材61及び墨刺し部材65は元の下降位置に戻る。
【0055】
以上の説明から分かるように、本実施形態では、電動モータ16や駆動プーリ51、さらにはベルト56により、スライダ57、昇降部材61及びこの昇降部材61に配置されている墨刺し部材65をH型鋼Wの幅方向に往復動させるための往復動手段80(図1及び図2を参照)が構成されており、また、スライダ57に設けられているガイドロッド60や第1係合部材73、昇降部材61に配置されている第2係合部材76、さらには自走装置1の本体2の前面部2Fに配置されている傾斜部材77や突き部材78により、昇降部材61及びこの昇降部材に配置されている墨刺し部材65をスライダ57に対して昇降させるための昇降手段81が構成されている。
【0056】
そして、墨刺し部材65がスライダ57に対して下降したときには、墨刺し部材65の筆先65BはH型鋼Wに接触し、墨刺し部材65がスライダ57に対して上昇したときには、墨刺し部材65の筆先65BはH型鋼Wから離間するため、昇降手段81は、この筆先65BをH型鋼Wに対して接触、離間させるための接離手段81にもなっている。
【0057】
以上において、墨刺し部材65が往復動手段80により図5及び図6の矢印Aの方向に移動することが、往動になっており、また、墨刺し部材65が往復動手段80により図5及び図7の矢印Bの方向に移動することが、復動になっている。図6の二点鎖線で示すように、墨刺し部材65の筆先65Bは、往動方向Aに対して鋭角の傾き角度Cとなっている。この往動方向Aに墨刺し部材65が移動するときに、墨刺し部材65はスライダ57に対して下降しているため、H型鋼Wの上面に直線による線を引く墨付け作業が、この上面に接触している筆先65Bからの墨によって行われることになり、したがって、傾き角度Cにより、筆先65Bが損傷等することなくこの墨付け作業を行うことができる。
【0058】
また、復動方向Bに墨刺し部材65が移動するときは、墨刺し部材65は上昇していてH型鋼Wの上面に接触していないため、この復動も筆先65Bが損傷等することなく行われる。
【0059】
図10に示されている自走装置1の本体2の内部には、スライダ57や墨刺し部材65が往動限位置及び復動限位置に達したことを検出するための往復動限位置検出手段82が配置されている。この往復動限位置検出手段82は、前述した電動モータ16の駆動軸16Aの駆動プーリ51が取り付けられている端部とは反対側の端部に結合されているプーリ83と、このプーリ83との間にベルト84が掛け回されているプーリ85と、このプーリ85と一体に回転する切欠部付きの遮光板86と、この遮光板86の両側に配置された発光部及び受光部からなる光学式センサ87とを含んで構成されている。この光学式センサ87は、それぞれが発光部及び受光部からなる2個の検出部を備えており、また、光学式センサ87は、コンピュータになっている前述の制御手段9の入力部に接続されている。なお、プーリ83,85及びベルト84は、タイミングプーリ及びタイミングベルトである。
【0060】
スライダ57や墨刺し部材65が往復動手段80により往動限位置に達したときには、遮光板86の切欠部は、光学式センサ87の上記2個の検出部のうち、一方の検出部の配置箇所に達するため、この往動限位置は光学式センサ87により検出され、また、スライダ57や墨刺し部材65が往復動手段80により復動限位置に達したときには、遮光板86の切欠部は、光学式センサ87の上記2個の検出部のうち、他方の検出部の配置箇所に達するため、この復動限位置は光学式センサ87により検出され、そして、これらの検出信号は光学式センサ87から制御手段9に入力する。光学式センサ87が往動限位置を検出したときには、制御手段9は、この制御手段9の記録部に記録されているプログラムに基づき、それまで正駆動していた電動モータ16を一旦停止させた後に逆駆動させることになり、これにより、スライダ57や墨刺し部材65は復動を開始する。また、光学式センサ87が復動限位置を検出したときには、制御手段9は、上記プログラムに基づき、電動モータ16の逆駆動を停止させ、これにより、スライダ57や墨刺し部材65は、往動開始の初期位置となっている復動限位置に停止することになる。
【0061】
図11には、コンピュータとなっている制御手段9の機能的概念図が示されている。この制御手段9は、入力部9Aと、表示部9Bと、中央処理部(CPU)9Cと、記録部9Dとを有している。入力部9Aは、図1で示した複数のボタンによる操作部6と、図10で示したカード式記録媒体を挿入するための挿入口19とを含むものであり、また、表示部9Bは、図1で示した液晶による表示画面5である。そして、記録部9Dには、墨付け作業の作業順序に関するプログラムを含む各種のデータが記録されており、また、記録部9Dには、H型鋼Wについての設計データとなっているCADデータのうち、H型鋼Wに墨付け作業を行ううえで必要とされる墨付け位置に関するデータを含むデータが、挿入口19に挿入されるカード式記録媒体102から記録できるようになっている。
【0062】
なお、後述の説明で分かるように、本実施形態では、記録部9Dが制御手段9の内部記録部となっているのに対して、カード式記録媒体102は、制御手段9の外付けされる外部記録部として利用されるようになっている。
【0063】
また、制御手段9には、H型鋼Wの一方の端部となっている後端を検出するための図10で示した後端センサ21からの検出信号と、H型鋼Wの他方の端部である前端を検出するための前端センサ20からの検出信号とが入力部9Aから入力し、本実施形態では、後端センサ21が、H型鋼Wの一方の端部を検出するための第1検出手段であり、前端センサ20が、H型鋼Wの他方の端部を検出するための第2検出手段である。さらに、制御手段9には、自走装置1の走行距離を測定するための走行距離測定手段100からの信号が入力部9Aから入力し、この走行距離測定手段100は、図10で説明した従動輪15やロータリエンコーダ13により構成されている。
【0064】
さらに、図11で示されている中央処理部9Cは、自走装置1をH型鋼Wに沿って自走させるための自走手段101と、前述した墨付け手段50とを駆動制御するものとなっている。自走手段101は、前述した説明から分かるように、図10に示されている駆動モータ12や駆動輪10により構成されており、また、墨付け手段50は、前述したように、図10で示されている電動モータ16や図2で示した墨刺し部材65により構成されている。
【0065】
なお、前述のスライダ57や墨刺し部材65が往動限位置及び復動限位置に達したことを検出するための図10の往復動限位置検出手段82からの信号は、制御手段9に入力部9Aから入力し、これらの入力信号に基づき、中央処理部9Cは、前述したように墨付け手段50の電動モータ16を駆動制御することにより、H型鋼Wに対する墨付け作業のために、スライダ57及び墨刺し部材65に前述した往動、復動を行わせる。
【0066】
次に、自走装置1によりH型鋼Wに対して行われる墨付け作業について説明する。
【0067】
図12〜図14は、本発明の一実施形態に係る墨付け方法を示すフローチャートであり、このフローチャートは、図15に示されているように、複数本のH型鋼Wが互いに隣接して平行に配置されている場合に、これらのH型鋼Wに対して実施される墨付け作業についてのものとなっている。図15には、第1墨付け対象物となっている第1H型鋼W1と、第2墨付け対象物となっている第2H型鋼W2とが示されており、これらのH型鋼W1,W2は、それぞれの一方の端部である後端W1A,W2AがH型鋼W1,W2の長さ方向に対して同じ側となって配置されている。
【0068】
また、図15には、第1H型鋼W1についての一方の端部である後端W1Aから他方の端部である前端W1Bまでの全長L1と、第2H型鋼W2についての一方の端部である後端W2Aから他方の端部である前端W2Bまでの全長L5も示されており、さらに、図15には、第1H型鋼W1についての後端W1Aからの複数の墨付け位置の距離L2〜L4と、第2H型鋼W2についての後端W2Aからの複数の墨付け位置の距離L6〜L8も示されている。すなわち、第1H型鋼W1についても、第2H型鋼W2についても、それぞれの墨付け位置の距離についての基準点は後端W1A,W2Aとなっている。
【0069】
以上の全長L1,L5と、後端W1A,W2Aからの墨付け位置の距離L2〜L4,L6〜L8は、図11で示したカード式記録媒体102に、第1及び第2H型鋼W1,W2についてのファイルごとに分けられて予め記録されている。
【0070】
図12〜図14で示すフローチャートは、図11の制御手段9の中央処理部9Cが、入力部9Aから入力するセンサ20,21等からの入力信号に基づき、記録部9Dに記録されているプログラム等のデータにより自走手段101及び墨付け手段50を駆動制御することにより行われるものになっているとともに、作業者によって行われる作業をも含むものになっている。
【0071】
第1及び第2H型鋼W1,W2についての墨付け作業を行うためには、初めに、図1等で示した自走装置1を第1H型鋼W1の後端W1Aの近傍の箇所に載置するとともに、カード式記録媒体102を図10で示した挿入口19に挿入し、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により電源を投入する。これにより、制御手段9の中央処理部9Cの処理作業により、表示部9B(図1で示されている表示画面5)には、カード式記録媒体102に記録されている第1H型鋼W1と第2H型鋼W2のうち、一方のH型鋼だけについての墨付け作業を行う単数処理と、第1H型鋼W1と第2H型鋼W2についての墨付け作業を連続して行う複数処理とが表示され、操作部6の操作により、図12のステップS1において、複数処理を選択すると、中央処理部9Cの処理作業により、表示部9Bには、カード式記録媒体102に記録されている第1及び第2H型鋼W1,W2についての2つのファイルが表示される。この後に、操作部6の操作により、ステップS2において、第1及び第2H型鋼W1,W2のうち、最初に墨付け作業を行うべき第1H型鋼W1についてのファイルを表示部9Bにおいて選択すると、ステップS3において、中央処理部9Cの処理作業により、第1H型鋼W1についての全長L1や、墨付け作業を行う回数、後端W1Aからの墨付け位置の距離L2〜L4を含むデータが、カード式記録媒体102から制御手段9の記録部9Dに取り込まれ、また、表示部9Bには、これらのデータが表示される。
【0072】
したがって、以上の説明から分かるように、カード式記録媒体102は、制御手段9の外付けされる外部記録部となっている。
【0073】
そして、操作部6に設けられているスタートボタンを操作すると、制御手段9の中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、ステップS4において、自走装置1は第1H型鋼W1の後端W1Aに向かって後退し始め、ステップS5において、第1検出手段である後端センサ21が第1H型鋼W1の後端W1Aを検出すると、言い換えると、自走装置1が第1H型鋼W1の後端W1Aに達すると、ステップS6において、制御手段9の中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の後退は停止する。この後、前述のプログラムで規定されている短時間の経過後に、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、ステップS7において、自走装置1は第1H型鋼W1の前端W1Bに向かう走行、言い換えると、最初の墨付け位置へ向かう前進を開始し、この前進の全行程をとおして、自走装置1の走行距離が、後端センサ21で検出されている第1H型鋼W1の後端W1Aが基準点となって走行距離測定手段100により常時測定され、この測定データは入力部9Aから中央処理部9Cに入力する。
【0074】
以上のように自走装置1が前進を開始した後に、ステップS8において、前端センサ20が第1H型鋼W1の前端W1Bを検出せずに、ステップS10において、走行距離測定手段100で測定される走行距離が図15で示す距離L2になると、すなわち、中央処理部9Cに入力する距離が、記録部4Dに記録されている距離L2になって、墨付け作業を行うべき位置に自走装置1が達すると、ステップS11において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の前進は停止する。
【0075】
なお、この自走装置1が前進を停止する位置は、自走装置1に設けられている墨付け手段50の位置が第1H型鋼W1の後端W1Aから距離L2となる位置である。このため、上述したように走行距離測定手段100で測定される走行距離が図15で示す距離L2になるとは、中央処理部9Cが、走行距離測定手段100から送られてくる距離データに対して、制御手段9の記録部9Dに予め記録されている従動輪15と墨刺し部材65との間の前後距離や、従動輪15と後端センサ21との間の前後距離を加算等の演算処理を行って得られた値であり、中央処理部9Cによるこのような加算等の演算処理は、これ以後の走行距離測定手段100から中央処理部9Cに入力する距離データについても行われ、以下の説明において、走行距離測定手段100により測定される走行距離とは、このような距離をいう。
【0076】
また、ステップS8において、前端センサ20が第1H型鋼の前端を検出した場合には、この第1H型鋼は、本来の長さを有していない間違いのH型鋼であるため、中央処理部9Cは、図14で示されているステップS9において、上述のプログラムで規定されている処理にしたがい、自走手段101を緊急停止させて自走装置1の前進を止めるとともに、自走装置1が載置されている第1H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第1H型鋼から取り外し、第1H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0077】
また、図12のステップS11において、自走装置1の前進が墨付け作業を行うべき位置で停止すると、ステップS12において、中央処理部9Cが墨付け手段50を駆動制御することにより、この墨付け手段50の墨刺し部材65が前述した往復動を行うことによって第1H型鋼W1に対する墨付け作業が行われ、これにより、図15に示されているように、第1H型鋼W1の後端W1Aから距離L2の位置において、この第1H型鋼W1の上面に墨付け線Nが引かれることになる。
【0078】
この墨付け作業の終了後に図12のステップS13に移行し、このステップS13において、中央処理部9Cによって自走手段101等が駆動制御されることにより、全部の墨付け作業が終了するまでステップS7〜ステップS12が繰り返される。
【0079】
そして、ステップS13において、全部の墨付け作業が終了すると、図13のステップS14において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1は、図15で示した第1H型鋼W1の全長L1を確認するための前進を開始する。この前進により、ステップS15において、前端センサ20が第1H型鋼W1の前端W1Bを検出すると、ステップS16において、中央処理部9Cは自走手段101の駆動を停止させて自走装置1の前進を止める。
【0080】
そして、中央処理部9Cは、ステップS17において、これまでの走行距離測定手段100により測定されていて、後端センサ21で検出された第1H型鋼W1の後端W1Aから前端センサ20で検出された第1H型鋼W1の前端W1Bまでの距離が、記録部9Dに記録されている第1H型鋼W1の全長L1と同じになっているか否か、言い換えると、走行距離測定手段100で測定された第1H型鋼W1の全長が記録部9Dに記録されている本来の全長L1になっているか否かを判断する。したがって、本実施形態の自走装置1によると、走行距離測定手段100により第1H型鋼の全長が測定されて確認されることになり、この全長が本来の全長L1になっている場合には、中央処理部9Cはその旨を表示部9Bに表示する。これにより、第1H型鋼W1についての全部の作業が終了する。
【0081】
また、ステップS17において、走行距離測定手段100で測定された第1H型鋼の全長が本来の全長L1になっていない場合には、この全長が測定されたH型鋼は間違いのH型鋼であるため、図14のステップS9において、中央処理部9Cは、前述のプログラムに規定されている処理にしたがい、自走装置1が載置されている第1H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第1H型鋼から取り外し、第1H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0082】
また、ステップS17において、走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L1と同じになっている場合には、ステップS18において、作業者は、第1H型鋼W1の前端に停止している自走装置1を持ち上げることにより、図15で説明したように、第1H型鋼W1と隣接して平行に配置されている第2H型鋼W2の上に自走装置1を移し替える作業を行う。
【0083】
この移し替え作業は、自走装置1の向きを反転させることにより、自走装置1の前端センサ20を第2H型鋼W2の後端W2Aの側に向け、この自走装置1を第2H型鋼W2の前端W2Bに近い箇所に載置セットすることにより行う。この後に、ステップS19において、操作部6の操作により、表示部9Bに表示されている第1及び第2H型鋼W1,W2についてのファイルのうち、次に墨付け作業を行うべき第2H型鋼W2についてのファイルを表示部9Bにおいて選択すると、ステップS20において、中央処理部9CCの処理作業により、第2H型鋼W1についての全長L5や、墨付け作業を行う回数、後端W2Aからの墨付け位置の距離L6〜L8を含むデータが、カード式記録媒体102から制御手段9の記録部9Dに取り込まれ、また、表示部9Bには、これらのデータが表示される。
【0084】
次いで、操作部6に設けられているスタートボタンを操作すると、制御手段9の中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、ステップS21において、自走装置1は第2H型鋼W2の前端W2Bに向かって後退し始め、ステップS22において、第1検出手段である後端センサ21が第2H型鋼W2の前端W2Bを検出すると、言い換えると、自走装置1が第2H型鋼W2の前端W2Bに達すると、ステップS23において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の後退は停止する。この後、前述のプログラムで規定されている短時間の経過後に中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、図14のステップS24において、自走装置1は第2H型鋼W2の後端W2Aに向かう走行、言い換えると、第2H型鋼W2における最初の墨付け位置へ向かう前進を開始し、この前進の全行程をとおして、自走装置1の走行距離が、後端センサ21で検出されている第2H型鋼W2の前端W2Bが基準点となって走行距離測定手段100により常時測定され、この測定データは入力部9Aから中央処理部9Cに入力する。
【0085】
以上のように自走装置1が第2H型鋼W2についての墨付け作業を行うためにこの第2H型鋼W2の前端W2Bからの前進を開始した後に、言い換えると、自走装置1が第1H型鋼W1の前端W1Bと同じ側となっている第2H型鋼W2の第1端部である前端W2Bからの前進を開始した後に、ステップS25において、前端センサ20が第2H型鋼W2の後端W2Aを検出せずに、ステップS26において、走行距離測定手段100で測定されて中央処理部9Cに入力する走行距離が、図15で示す全長L5から距離L8を差し引いた値と同じ距離になると、言い換えると、走行距離測定手段100で測定されて中央処理部9Cに入力する走行距離が、中央処理部9Cがカード式記録媒体102から記録部9Dに記録されている全長L5と距離L6〜L8のデータとに基づいて演算処理することにより、全長L5から距離L8を差し引いた値と同じ距離になると、ステップS27において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1の前進は停止する。
【0086】
なお、ステップS25において、前端センサ20が第2H型鋼の前端を検出した場合には、この第2H型鋼は、本来の長さを有していない間違いのH型鋼であるため、中央処理部9Cは、前述した第1H型鋼の場合と同様に、図14のステップS9において、前述のプログラムで規定されている処理にしたがい、自走手段101を緊急停止させて自走装置1の前進を止めるとともに、自走装置1が載置されている第2H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第2H型鋼から取り外し、第2H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0087】
図14のステップS27において、自走装置1の前進が停止すると、ステップS28において、中央処理部9Cが墨付け手段50を駆動制御することにより、この墨付け手段50の墨刺し部材65が前述した往復動を行うことによって第2H型鋼W2に対する墨付け作業が行われ、これにより、図15に示されているように、第2H型鋼W2の後端W2Aから距離L8の位置において、この第2H型鋼W2の上面に墨付け線Nが引かれる。
【0088】
この墨付け作業の終了後に図14のステップS29に移行し、このステップS29において、中央処理部9Cによって自走手段101等が駆動制御されることにより、第2H型鋼W2についての全部の墨付け作業が終了するまでステップS24〜ステップS28が繰り返される。
【0089】
そして、ステップS29において、全部の墨付け作業が終了すると、ステップS30において、中央処理部9Cが自走手段101を駆動制御することにより、自走装置1は、図15で示した第2H型鋼W2の全長L5を確認するための前進を開始する。この前進により、ステップS31において、前端センサ20が第2H型鋼W2の第2端部となっている後端W2Aを検出すると、ステップS32において、中央処理部9Cは自走手段101の駆動を停止させて自走装置1の前進を止める。次いで、中央処理部9Cは、ステップS33において、前述した第1H型鋼W1の場合と同様に、第2H型鋼W2の前端W2Bから走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L5と同じ距離になっているか否か、言い換えると、これまでの走行距離測定手段100により測定され、後端センサ21で検出された第2H型鋼W2の前端W2Bから前端センサ20で検出された第2H型鋼W2の後端W2Aまでの距離が、第2H型鋼W2の本来の全長L5と同じ距離になっているか否か、を判断する。すなわち、本実施形態の自走装置1によると、走行距離測定手段100により第2H型鋼W2についての全長も測定されて確認されることになり、この全長が本来の全長L5になっている場合には、中央処理部9Cはその旨を表示部9Bに表示する。
【0090】
また、ステップS33において、この全長が本来の全長L5になっていない場合には、この全長が測定されたH型鋼は間違いのH型鋼であるため、図14のステップS9において、中央処理部9Cは、前述のプログラムに規定されている処理にしたがい、自走装置1が載置されている第2H型鋼が本来の長さを有していない間違いのH型鋼である旨の異常事態発生を表示部9Bに表示する。この後に、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、第2H型鋼W2の後端に達している自走装置1を第2H型鋼から取り外し、第2H型鋼を本来のH型鋼に交換するなどの作業を行う。
【0091】
また、ステップS33において、走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L5と同じ距離になっている場合には、作業者は、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、第2H型鋼W2の後端に達している自走装置1を第2H型鋼W2から取り外す。
【0092】
以上の作業により、第1及び第2H型鋼W1,W2についての全部の作業が終了する。
【0093】
なお、ステップS33において、走行距離測定手段100により測定された距離が本来の全長L5と同じ距離になっていない場合と、本来の全長L5と同じ距離になっている場合との両方において、中央処理部9Cにより自走手段101を駆動制御することにより、第2H型鋼W2の後端W2Aに達している自走装置1を、第2H型鋼W2の第2端部となっている後端W2Aから第1端部となっている前端W2Bの側へ少し後退させてから停止させ、この後に、作業者が、操作部6に設けられている電源ボタンの操作により、電源を遮断し、自走装置1を第2H型鋼W2から取り外すようにしてもよい。
【0094】
これによると、自走装置1が第2H型鋼W2から取り外されるまでの間に、何らかの理由により、自走装置1が第2H型鋼W2の後端から脱落してしまうことを防止できることになる。
【0095】
このようにH型鋼Wの全長を測定するために停止した位置から自走装置1を少し後退させることは、図13のステップS17で第1H型鋼W1の全長を測定するために、ステップS16において、自走装置1を第1H型鋼W1の前端で停止させた後においても実施してもよい。
【0096】
図15には、以上説明した自走装置1についての移動軌跡Xが示されている。この自走装置移動軌跡Xのうち、部分軌跡X1はステップS7〜S16に関するものであり、部分軌跡X2はステップS18に関するもの、部分軌跡X3はステップS24〜S32に関するものである。
【0097】
また、本実施形態では、作業者が自走装置1の後を追うように移動するときの作業者移動軌跡Yも示されている。この作業者の移動は、第1及び第2H型鋼W1,W2についてのそれぞれの墨付け作業が行われた位置の近傍に、例えば、これらのH型鋼W1,W2の墨付け作業位置に接合される相手側の鋼材の識別番号等に関する表示物Mを作業者が表示するために行われるものであり、作業者移動軌跡Yは、自走装置移動軌跡Xの部分軌跡X1〜X3と対応する部分軌跡Y1〜Y3からなる。
【0098】
なお、図15には、第1及び第2H型鋼W1,W2と平行に配置された第3H型鋼W3についても墨付け作業を行う場合が示されている。第2H型鋼W2についての墨付け作業が終了した後に、第3H型鋼W3についての墨付け作業を行う場合には、自走装置移動軌跡Xについての延長部分軌跡X4及び作業者移動軌跡Yについての延長部分軌跡Y4から分かるように、作業者は自走装置1を第2H型鋼W2から第3H型鋼W3の後端W3Aの近傍に移し替え、この後に、第3H型鋼W3についてのそれぞれの墨付け作業を行うために、自走装置移動軌跡Xについての延長部分軌跡X5及び作業者移動軌跡Yについての延長部分軌跡Y5から分かるように、第1H型鋼W1の場合と同様に、自走装置1を第3H型鋼W3の前端W3Bに向かって前進させるようにする。
【0099】
以上の説明から分かるように、本実施形態に係る自走装置1及びこの自走装置1による墨付け方法によると、自走装置1は、自走手段101による自走により、H型鋼Wの墨付け作業を行うべき位置へ自動的に移動することになり、また、墨付け手段50により、H型鋼Wに自動的に墨付け作業を行うため、墨付け作業を自動的に行えることになり、また、墨付け作業は、走行距離測定手段100で測定される所定位置で行われるため、墨付け作業を正確に行えることになる。
【0100】
また、自走装置1は、第1検出手段となっている後端センサ21で検出されるH型鋼Wの一方の端部である後端又は前端から、第2検出手段となっている前端センサ20で検出される他方の端部である前端又は後端まで自走するため、走行距離測定手段100によりH型鋼Wの全長を測定することができ、これにより、墨付け作業行うH型鋼Wが本来の長さを有している所定の墨付け対象物であるか否かを確認することができる。
【0101】
また、本実施形態に係る自走装置1による墨付け方法によると、複数のH型鋼Wが互いに隣接して平行に配置されている場合には、第1H型鋼W1について墨付け作業が終了した後に、自走装置1を第1H型鋼W1の後端W1Aに戻し、この後に、第1H型鋼W1から第2H型鋼W2に移し替えた自走装置1を第2H型鋼W2の前端W2Bに向かって前進させるのではなく、第1H型鋼W1について墨付け作業が終了した後に、第1H型鋼W1から第2H型鋼W2に移し替えた自走装置1を、第2H型鋼W2についての墨付け作業のために、第1H型鋼W1の前端W1Bと同じ側の第2H型鋼W2の第1端部となっている第2H型鋼W2の前端W2Bから前進させるため、自走装置1を第1H型鋼W1の後端W1Aまで戻すことを省略できることになり、これにより、第1及び第2H型鋼W1、W2についての墨付け作業を効率的に実施することができる。
【0102】
また、作業者が図15で示した表示物Mを第1及び第2H型鋼W1,W2の上面に表示する場合には、自走装置1の後を追うように移動する作業者も、第1H型鋼W1の後端W1Aまで戻ることを行わなくてもよいため、作業者の作業量を軽減することができる。
【0103】
図16及び図17は、自走装置1に配置されている前述した光学式の後端センサ21により、H型鋼Wの後端が検出することができない又は検出することが困難な場合に用いる補正治具90を示している。光学式の後端センサ21により、H型鋼Wの後端が検出することができない又は検出することが困難な場合とは、例えば、図17に示されているように、H型鋼Wの後端WCに斜めの面取り部WDが設けられている場合である。光学式の後端センサ21の発光部から出射したビーム光が斜めの面取り部WDで反射されると、このビーム光は後端センサ21の受光部に入射しないため、このセンサ21によりH型鋼Wの後端WCを検出することはできない。
【0104】
補正治具90は、図16に示されているように、H型鋼Wの長さ方向に延びる2個の平行なアーム部材91と、これらのアーム部材91の後端間に架設された基準部材92と、この基準部材92の両端から下向きに延びる2本の平行な垂下部材93と、それぞれのアーム部材91の下面に取り付けられた板状のマグネット94とからなる。この補正治具90は、マグネット94によりH型鋼Wに対して着脱自在となっており、補正治具90を用いる場合には、図17に示されているように、それぞれの垂下部材93をH型鋼Wの後端WCに、言い換えると、H型鋼Wの上側フランジ部WBの後面に当て、マグネット94によりそれぞれのアーム部材91をH型鋼Wの上面に吸着させる。
【0105】
これによると、H型鋼Wの上面に載置セットされた自走装置1が後退すると、基準部材92の直角形状となっている後端92Aを光学式の後端センサ21により検出できることになり、この後端92Aの位置を基準点にして自走装置1を前進させることができる。
【0106】
なお、この補正治具90を用いると、H型鋼Wの実際の後端WCの位置に対して基準部材92の後端92Aの位置は、基準部材92や垂下部材93についてのH型鋼Wの長さ方向の寸法と対応するずれ量Zだけ後方へずれることになるため、図1で示した操作部6の操作等により制御手段9の記録部にずれ量Zを記録し、これにより、制御手段9の中央処理部が、ずれ量Zのデータと、前述したH型鋼Wの長さ方向における墨付け作業をすべき位置に関するデータとにより、自走装置1が墨付け作業する位置まで前進する距離を演算するようにする。
【0107】
また、光学式の後端センサ21が、発光部及び受光部の配置箇所と、発光部から出射したビーム光が反射される箇所との間の上下距離が発光部の傾き角度により規定される距離型センサである場合には、図17で示すように、上述の基準点となる基準部材92の後端92Aの高さ位置を、H型鋼Wの後端WCの上面と同じになっている高さ位置Hとすることが好ましい。
【0108】
これによると、補正治具90を用いるときであっても、発光部の傾き角度を、補正治具90を用いないときと同じにすることができ、発光部の傾き角度を変更する作業を省略することができる。
【0109】
なお、図16及び図17で示した補正治具90は、H型鋼Wの前端に、前述した前端センサ20により検出することができない又は検出することが困難な斜めの面取り部等が設けられている場合にも、適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、例えば、建築物用の建材に、他の建材との接合位置等をマークするための墨付け作業を行うために利用できるものである。
【符号の説明】
【0111】
1 墨付け自走装置
9 制御手段
20 第2検出手段である前端センサ
21 第1検出手段である後端センサ
50 墨付け手段
100 自走手段
W 墨付け対象物であるH型鋼
W1 第1墨付け対象物である第1H型鋼
W1A 第1H型鋼の一方の端部である後端
W1B 第1H型鋼の他方の端部である前端
W2 第2墨付け対象物である第2H型鋼
W2A 第2H型鋼の第2端部である前端
W2B 第2H型鋼の第1端部である後端
L1 第1H型鋼の全長
L2〜L4 第1H型鋼についての墨付け作業の位置の距離
L5 第2H型鋼の全長
L6〜L8 第2H型鋼についての墨付け作業の位置の距離
【特許請求の範囲】
【請求項1】
墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置であって、
前記制御手段は、
前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記自走手段により自走したときに前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記自走手段を駆動制御して自走を停止させ、かつ前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行うことと、
前記第2検出手段により前記墨付け対象物の前記他方の端部が検出されるまで前記自走手段の駆動制御により自走させ、前記走行距離測定手段により、前記第1検出手段で検出される前記一方の端部から前記第2検出手段で検出される前記他方の端部までの前記墨付け対象物の全長を測定することと、
を行うことを特徴する墨付け自走装置。
【請求項2】
墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置により行う墨付け方法であって、
前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記墨付け自走装置が自走する第1工程と、
前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御して前記墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ前記制御手段が前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第2工程と、
前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第2検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記他方の端部まで前記墨付け自走装置が自走し、前記走行距離測定手段により前記墨付け対象物の全長を測定する第3工程と、
を含んでいることを特徴とする墨付け自走装置による墨付け方法。
【請求項3】
請求項2に記載の墨付け自走装置による墨付け方法において、前記墨付け対象物は第1墨付け対象物であり、この第1墨付け対象物に隣接して第2墨付け対象物が前記第1墨付け対象物と平行に配置されており、
前記第3工程の後に前記墨付け自走装置を前記第1墨付け対象物から前記第2墨付け対象物に移し替える第4工程と、
前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第1墨付け対象物の前記他方の端部と同じ側の前記第2墨付け対象物の端部となっていて前記第1検出手段で検出される第1端部から、この第1端部とは反対側の端部となっている前記第2墨付け対象物の第2端部に向かって前記墨付け自走装置が自走する第5工程と、
前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記第2墨付け対象物の前記第1端部から墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されているデータに基づいて前記制御手段の中央処理部で演算される距離になったときに、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御して前記墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ前記制御手段が前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第6工程と、
を含んでいることを特徴とする墨付け自走装置による墨付け方法。
【請求項4】
請求項3に記載の墨付け自走装置による墨付け方法において、前記第6工程の後に、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第2検出手段で検出される前記第2墨付け対象物の前記第2端部まで前記墨付け自走装置が自走し、前記走行距離測定手段により前記第2墨付け対象物の全長を測定する第7工程を含んでいることを特徴とする墨付け自走装置による墨付け方法。
【請求項1】
墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置であって、
前記制御手段は、
前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記自走手段により自走したときに前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記自走手段を駆動制御して自走を停止させ、かつ前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行うことと、
前記第2検出手段により前記墨付け対象物の前記他方の端部が検出されるまで前記自走手段の駆動制御により自走させ、前記走行距離測定手段により、前記第1検出手段で検出される前記一方の端部から前記第2検出手段で検出される前記他方の端部までの前記墨付け対象物の全長を測定することと、
を行うことを特徴する墨付け自走装置。
【請求項2】
墨付け作業が行われる墨付け対象物に沿って自走するための自走手段と、この自走手段による走行距離を測定するための走行距離測定手段と、前記墨付け対象物に前記墨付け作業を行うための墨付け手段と、前記墨付け対象物の一方の端部を検出するための第1検出手段と、前記墨付け対象物の他方の端部を検出するための第2検出手段と、前記走行距離測定手段、前記第1検出手段及び前記第2検出手段からの信号が入力し、前記自走手段及び前記墨付け手段を駆動制御するための制御手段と、を備えている墨付け自走装置により行う墨付け方法であって、
前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第1検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記他方の端部に向かって前記墨付け自走装置が自走する第1工程と、
前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記墨付け対象物の前記一方の端部から前記墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されている距離になったときに、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御して前記墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ前記制御手段が前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第2工程と、
前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第2検出手段で検出される前記墨付け対象物の前記他方の端部まで前記墨付け自走装置が自走し、前記走行距離測定手段により前記墨付け対象物の全長を測定する第3工程と、
を含んでいることを特徴とする墨付け自走装置による墨付け方法。
【請求項3】
請求項2に記載の墨付け自走装置による墨付け方法において、前記墨付け対象物は第1墨付け対象物であり、この第1墨付け対象物に隣接して第2墨付け対象物が前記第1墨付け対象物と平行に配置されており、
前記第3工程の後に前記墨付け自走装置を前記第1墨付け対象物から前記第2墨付け対象物に移し替える第4工程と、
前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第1墨付け対象物の前記他方の端部と同じ側の前記第2墨付け対象物の端部となっていて前記第1検出手段で検出される第1端部から、この第1端部とは反対側の端部となっている前記第2墨付け対象物の第2端部に向かって前記墨付け自走装置が自走する第5工程と、
前記走行距離検出手段で検出される走行距離が、前記第2墨付け対象物の前記第1端部から墨付け作業を行うべき位置までの距離であって、前記制御手段の記録部に記録されているデータに基づいて前記制御手段の中央処理部で演算される距離になったときに、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御して前記墨付け自走装置の自走を停止させ、かつ前記制御手段が前記墨付け手段を駆動制御してこの墨付け手段が墨付け作業を行う第6工程と、
を含んでいることを特徴とする墨付け自走装置による墨付け方法。
【請求項4】
請求項3に記載の墨付け自走装置による墨付け方法において、前記第6工程の後に、前記制御手段が前記自走手段を駆動制御することにより、前記第2検出手段で検出される前記第2墨付け対象物の前記第2端部まで前記墨付け自走装置が自走し、前記走行距離測定手段により前記第2墨付け対象物の全長を測定する第7工程を含んでいることを特徴とする墨付け自走装置による墨付け方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【公開番号】特開2012−139797(P2012−139797A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−468(P2011−468)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000149011)株式会社大橋製作所 (7)
【出願人】(509198088)株式会社シグマテック (1)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000149011)株式会社大橋製作所 (7)
【出願人】(509198088)株式会社シグマテック (1)
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