説明

壁取付け型対象物を取り付ける装置

本発明は、壁取付け型対象物(例えば、衛生陶器類、特に便器)を、建物の壁(W)に取り付けることのできる少なくとも1つの壁ブラケット(2)を使用して、壁(W)に取り付ける装置であって、対象物(例えば、便器の本体(3))がこの壁ブラケット(2)に支持されており、この対象物(3)が、各ロックねじ(4)によって壁ブラケットに固定されており、ロックねじ(4)が、対象物(3)の上側(6)における各穴(5)を通じて係合しており、ロックねじ(4)を各壁ブラケット(2)に上からねじ込むことができる、装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁取付け型対象物(例えば、衛生陶器類、特に便器)を、壁に固定することのできる少なくとも1つの壁ブラケットによって、壁に取り付ける装置であって、対象物(例えば、便器の本体)が、壁ブラケットに支持されており、上から壁ブラケットにねじ込むことができる、装置、に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許公開第1338711号明細書には、全体的な印象に対して美観を損なうようには影響せずに対象物を壁に確実に取り付けることを容易にすることを目的とする、壁取付け型対象物のための皿頭型固定装置(countersunk fastening device)が開示されている。この点において、この固定装置は、壁に片持ち梁状に取り付けるための適切なねじ部を有するボルトと係合するための内部のねじ部分を有する管を備えており、この管を、壁に取り付ける対象物の一部における対応する貫通穴に挿入する。更に、この固定装置は、クランピングスリーブ(壁に取り付ける対象物の一部の内壁に当たるまでボルトの上からねじ込まれている管を囲むように使用することができる)と、ねじ要素(スリーブにおける半径方向貫通穴において係合し、管に形成されている対応する半径方向凹部によって形成されている傾斜面上の対応する端部を介して作用する)とを備えており、この場合、傾斜面の存在によって、ねじ要素を締め付けることによって、管に対する引っ張り作用と、壁に取り付ける対象物の一部に対する、軸方向におけるスリーブの摺動動作とが発生する。この目的のため、衛生陶器類(一例として便器として記載されている)は、壁に面するように必然的に設けられている後壁における2つの貫通穴と、側壁における2つの穴とを備えていなければならず、これらの穴によって、壁に取り付けるためのボルトを挿入することができ、その一方で、ねじ要素を操作するための工具(例えば、六角スパナ)を挿入することができる。そして、便座又は便器の蓋を取り付けるため、便器の本体の上側に2つの追加の穴を設けなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、壁取付け型対象物(例えば、衛生陶器類)を取り付ける装置であって、十分な安定性及び耐荷重能力を有する一方で、単純な取付けと、製造費用の低減とを提供し、側面における取付け穴の必要性がなく、対象物がトイレの本体を含んでいる場合、場合によっては同時に便座の取付けを可能とする、装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、例えば、上述したタイプの取付け装置において、各ロックねじが、対象物の本体の上側におけるそれぞれの穴を通じて係合し、各ロックねじを、それぞれの壁ブラケットに上からねじ込むことができることにおいて、基本的に達成される。このようにして、側面における目障りな貫通穴と、後部における追加の貫通穴とを必要とせず、その結果として、例えば、材料の消費量及び重量が低減するように、対象物の本体は後壁を有する必要がない。ロックねじのために設けられる穴(好ましくは数が2つであり、対象物の本体の後方、垂直正中面(vertical median plane)の各側に1つずつ)は、例えば、プラスチック又は木から作製されている個別の便座又は便器の蓋を取り付けるために通常設けられている穴とすることができる。
【0005】
更に、ロックねじは、耐トルク性であるように、摺動体に格納されているロックナットと協働することができ、この摺動体は、例えば、壁ブラケットに組み込まれており、壁の方に斜めに上昇している、壁ブラケットの軌道(track)上を摺動するように取り付けられている。穴を通じてロックねじをねじ込むことによって、このロックねじは、便器の(例えば、セラミックの)本体を、摺動体によってと、軌道の傾斜のため、便器の本体を取り付ける建物の壁の方に必然的に引き込む。この目的のため、ロックねじは、壁に垂直に延びる縦軸線を有する溝穴を通じて壁ブラケットを貫通することができる。ロックナットは、壁ブラケット自体のねじ部分によって、又は摺動体のねじ部分によって形成することもできる。
【0006】
ロックねじの上端部(場合によってはねじ頭が設けられている)は、対象物の本体の上側に形成されている穴内に、又は穴に組み込まれている(場合によっては穴より幅広く形成されている)凹部内に沈み込ませる(すなわち、穴又は凹部から突き出さない)ようにすることができる。
【0007】
穴又は凹部の領域においては、ロックねじのシャンクは、(場合によってはプラスチックに包まれている)金属スリーブによって囲まれていることが好ましく、したがって、対象物の(例えば、セラミックの)本体のうち、ねじが挿入されている領域における圧力が軽減される。
【0008】
本発明の別の好ましい実施形態においては、便座又は便器の蓋のヒンジを、ロックねじによって便器の本体に取り付けることができ、この結果として、便座又は便器の蓋のための個別の固定装置の必要がない。
【0009】
本発明の別のコンセプトによると、便座又は便器の蓋のヒンジは、便器の本体を壁に取り付けるための便器の本体における穴又は場合によっては設けられる凹部が覆われるように、構成、配置、及び寸法設定することができる。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態においては、ロックねじは、その上端部に、場合によっては設けられるねじ頭を収容する収容体を有し、耐トルク性であるように、収容体ナットがこの収容体の中に保持又は形成されている。便座又は便器の蓋のヒンジの取付けねじを、この収容体ナットにねじ込むことができる。個別の収容体ナットを使用しているため、便器の本体の取付けねじをしっかりとねじ込むことができる一方で、便座又は便器の蓋を取り付ける手段を受け入れるナットによって、調整することが可能である。
【0011】
本発明の更なる目的、特徴、利点、及び可能な用途は、添付の図面を参照しながらの、実施例の以下の説明から明らかになる。更に、説明したすべての特徴若しくは図解したすべての特徴、又はその両方は、個別に、又は任意の組合せにおいて、本発明の主題を構成し、このことは、これらが個々の請求項に含まれているか、或いは、先行する請求項に含まれているかには無関係である。
【0012】
図面の内容は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】便器の本体の形式における、本発明による対象物の本体の後部からの斜視図であり、便器の本体を建物(図示していない)の壁に取り付けるための壁ブラケットを示してあり、便座又は便器の蓋は示していない。
【図2】図1と比較してより大きな縮尺における、部分的に切り取られている描写であり、便器の本体に関連して取付け装置と壁ブラケットとを一緒に概略的に示している。
【図3】図2と比較してより大きな縮尺における、切り取られている部分の描写の側面図(一部が断面図)であり、便器の本体のロックねじを壁ブラケットに結合する状況を示している。
【図4】本発明による取付け装置の別の形態の概略的な縦断面図であり、この取付け装置は、便座又は便器の蓋を便器の本体に取り付ける役割も同時に果たしている
【図5a】図4による取付け装置のロックねじの特定の構造のコンポーネント部品を分解図として示しており、これらのコンポーネント部品は、便座又は便器の蓋のヒンジの取付けねじに結合することができる。
【図5b】図4による取付け装置のロックねじの特定の構造のコンポーネント部品を組立て図)として示しており、これらのコンポーネント部品は、便座又は便器の蓋のヒンジの取付けねじに結合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明において使用される便器1の形式における衛生陶器類を示しており、便器の、例えばセラミックの本体3の形式における対象物の本体は、基本的に後壁を備えておらず、この結果として、材料及び重量が節約されている。便器の本体3は、少なくとも1つの壁ブラケット2によって建物の壁Wに取り付けられており、壁ブラケット2は、壁ボルト12を使用して建物の壁Wに固定することができ、便器の本体3は、壁ブラケット2が固定された後、この壁ブラケット2に支持される。
【0015】
便器の本体3は、少なくとも1本のロックねじ4によって壁ブラケット2に取り付けられており、このロックねじ4は、便器本体3の上側6における丸い穴5を通じて係合しており、壁ブラケット2に上からねじ込まれている。この目的のため、便座又は便器の蓋のヒンジ(図には示していない)を取り付けるために通常設けられている穴5を使用することができる。ロックねじ4が完全にねじ込まれたとき、ロックねじ4の上側を便器の本体3の上側6と同一平面上にすることができる、又は、上側6より下に位置させることができる(can be countersunk into this)。
【0016】
図2から理解することができるように、ロックねじ4のねじ部分はロックナット7と協働し、耐トルク性であるように、このロックナット7は摺動体8の中に保持されている。摺動体8は、壁ブラケット2に組み込まれており、建物の壁Wの方に斜めに上昇している軌道9上で摺動するように取り付けられている。ロックねじ7を締め付けることによって、便器の本体3(例えば、セラミックから作製されている)が、建物の壁Wに引き込まれて密着する。この目的のため、ロックねじ4は、建物の壁Wに垂直に延びる縦軸線を有する溝穴を通じて壁ブラケット2を貫通している。
【0017】
図3においては、ロックねじ4の上端部(場合によってはねじ頭10が設けられている)を、穴5を組み込んでおり便器の本体3の上側6に設けられている凹部11内に沈み込ませる(凹部から突き出さない)ように配置する方法を理解することができる。図示した場合においては、ねじ頭10に内側六角ソケットが設けられている。更に、図3から理解することができるように、ロックねじ4のシャンク13は、穴5又は凹部11の領域において金属スリーブ14によって囲まれており、この金属スリーブ14には、その一部分にプラスチックカバー15が設けられている。これにより、取付け領域において、便器1の例えばセラミック材料に対する圧力が確実に軽減される。
【0018】
図1〜図3に示した実施例によると、便座又は便器の蓋のヒンジの、取り付けられるコンポーネントを、ロックねじ4によって便器の本体3に固定することもできる。更に、固定した後に、穴5若しくは凹部11、又はその両方が見えないように、ヒンジが穴5又は凹部11を覆うことができる。
【0019】
図4は、本発明の別の実施形態において、壁ブラケット2を壁ボルト12によって建物の壁Wに取り付ける方法を示している。取り付けられた状態においては、便器の本体3の上側6の後縁部が、建物の壁Wの内面に直接密着している。後部の方の領域においては、壁ブラケット2が、便器の本体3の上側6の下方において突き出している。取り付ける目的で、便器の本体3が後壁を有する必要はない。図4に示した実施形態においては、この図においては見えていないねじ頭10(参照:図5a及び図5b)が収容体16に格納されている。便器の本体3の上側6における穴5は、便器の本体3の上側6に形成されている凹部11の最下点に位置している。穴5の領域においては、ロックねじ4のシャンク13が金属スリーブ14によって囲まれており、この金属スリーブ14は、その一部分がプラスチックカバー15によって囲まれている。収容体16は、金属スリーブ14の上側に着座している。
【0020】
図5a及び図5bにおいて理解することができるように、個別の収容体ナット17(図示した場合には長方形である)が、耐トルク性であるように、ただし収容体16に対して軸方向に移動可能であるように、収容体16の中に配置されている。収容体ナット17は、例えば、収容体16の側面の開口を通じて押し込むことができる。収容体ナット17には、追加の取付けねじ18を上からねじ込むことができ、この追加の取付けねじ18は、例えば、木又はプラスチックから作製されている便座又は便器の蓋のヒンジ19(図示していない)の、取り付けられるコンポーネントを、保持する役割を果たす。ヒンジ19は、凹部11が上から覆われることによって、便器の本体3を壁に取り付ける手段が外側から見えないように、構成、配置、及び寸法設定されている。全体としての設置は、極めて単純であり信頼性が高い。
【符号の説明】
【0021】
1 衛生陶器類(便器)
2 壁ブラケット
3 オブジェクトの本体、便器の本体
4 ロックねじ
5 穴
6 上側
7 ロックナット
8 摺動体
9 軌道
10 ねじ頭
11 凹部
12 壁ボルト
13 シャンク
14 金属スリーブ
15 プラスチックカバー
16 収容体
17 収容体ナット
18 取付けねじ
19 ヒンジ
W 建物の壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁取付け型対象物、例えば衛生陶器類、特に便器(1)を、建物の壁(W)に取り付けることのできる少なくとも1つの壁ブラケット(2)を使用して、前記壁(W)に取り付けるための装置であって、便器のような前記対象物の前記本体(3)が前記壁ブラケット(2)に支持され、前記対象物(3)が、ねじによって前記壁ブラケットに取り付けられる、装置において、
ロックねじ(4)の各々が、前記対象物の前記本体(3)の上側(6)における各穴(5)を通じて係合しており、前記ロックねじ(4)を前記壁ブラケット(2)の各々に上からねじ込むことができることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記ロックねじ(4)が、ロックナットと協働し、該ロックナット(7)が、耐トルク性であるように、好ましくは摺動体の中に着座しており、前記摺動体が、前記壁(W)の方に斜めに上昇している前記壁ブラケット(2)の軌道(9)上を摺動するように取り付けられており、前記ロックねじ(4)が、好ましくは溝穴において前記壁ブラケット(2)を貫通していることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
場合によってはねじ頭(10)が設けられている、前記ロックねじ(4)の上端部が、前記対象物の前記本体(3)の前記上側(6)に形成されている前記穴(5)内に、又は前記穴(5)を組み込んでいる凹部(11)内に沈み込むように配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ロックねじ(4)のシャンク(13)が、前記穴(5)又は前記凹部(11)の領域において、金属スリーブ(14)(場合によってはプラスチックコーティングされている)によって囲まれていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
便座又は便器の蓋のヒンジ(19)を、前記便器の前記本体(3)に前記ロックねじ(4)によって取り付けることができることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
便座又は便器の蓋の前記ヒンジ(19)が、前記穴(5)又は前記凹部(11)を覆っていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記ロックねじ(4)が、その上端部に収容体(16)を有し、前記収容体(16)が、前記場合によっては存在するねじ頭(10)を収容しており、前記収容体(16)が、該収容体(16)内に着され且つ耐トルク性であるように形成されている収容体ナット(17)を有し、便座又は便器の蓋のヒンジ(19)の取付けねじ(18)が、前記収容体ナット(17)と協働することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2011−506802(P2011−506802A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537306(P2010−537306)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010471
【国際公開番号】WO2009/074301
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509193083)ビレロイ アンド ボッホ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】