説明

壁埋込水栓

【課題】ボックス内の接続部からの漏水を確実に壁の表面に筋状に流下させて、漏水が生じていることを早期に知らせることのできる壁埋込水栓を提供する。
【解決手段】壁2の裏側に設けたボックス3内に水栓本体4を収納し、ボックス3の表面を前面カバー9で覆蓋し、ボックス3内に、壁裏の給水管5を水栓本体4に接続する接続部4bと、接続部4bからの漏水を受ける水受け6を設けて構成し、水受け6には、漏水を壁2の表面に導くための樋部7が前面カバー9方向に延出して形成され、樋部7の先端の左右両側面が前面カバー9側へ向かって縮幅するようにテーパ面を形成し、樋部7の先端中央には漏水を落下させるための落下用切欠きが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁埋込水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、壁裏に設けたケーシング内部に水栓本体を収納し、壁の表面をカバーで覆蓋するとともに、ケーシング内に、壁裏の給水管を水栓本体に接続する接続部と、接続部からの漏水を受ける水受けを設けた壁埋込水栓が存在する。
【特許文献1】特開2002−309634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されている壁埋込水栓においては、給水管と水栓本体とが壁裏で接続されるため、万が一その接続部分から漏水が生じた時に、その漏水を水受けで受け止めて、漏水を壁の表面に導くことができ、これにより、水栓の使用者に漏水が生じていることを気付かせるように構成したものであるが、接続部分からの漏水が極めて少量である場合には、すぐに壁の表面側に流れ出てこないために、漏水を早期に発見できない虞があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑み案出したものであって、少量の漏水でも確実に壁の表面に筋状に流して、水栓の使用者が早期に漏水に気付くことのできる壁埋込水栓を提供することを目的とし、その請求項1は、壁裏に設けたボックス内に水栓本体を収納し、前記ボックスを前面カバーで覆蓋するとともに、前記ボックス内に、壁裏の給水管を前記水栓本体に接続する接続部と、該接続部からの漏水を受ける水受けを設けてなる壁埋込水栓において、前記水受けには、前記漏水を前記壁の表面側に導くための樋部が前記前面カバー方向に延出して形成されているとともに、該樋部の先端はその左右両側面が前記前面カバー側へ向かって縮幅するようにテーパ面を形成し、樋部の先端中央には漏水を落下させるための落下用切欠きが形成されていることである。
【0005】
また、請求項2は、前記樋部の底面には、前記落下用切欠きに向かって延びるガイド溝が形成されていることである。
【0006】
また、請求項3は、前記前面カバーの裏面には、前記漏水を前記壁の表面に導くための縦方向の水案内用リブが形成されていることである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、壁裏に設けたボックス内に水栓本体を収納し、前記ボックスを前面カバーで覆蓋するとともに、前記ボックス内に、壁裏の給水管を前記水栓本体に接続する接続部と、該接続部からの漏水を受ける水受けを設けてなる壁埋込水栓において、前記水受けには、前記漏水を前記壁の表面側に導くための樋部が前記前面カバー方向に延出して形成されているとともに、該樋部の先端はその左右両側面が前記前面カバー側へ向かって縮幅するようにテーパ面を形成し、樋部の先端中央には漏水を落下させるための落下用切欠きが形成されていることにより、ボックス内で水栓本体と給水管の接続部から漏水した場合、この漏水を水受けで受けて、樋部を通して漏水を壁の表面側に導く際に、樋部の先端の左右両側面がテーパ面で先端側が縮幅されているため、少量の漏水でも樋部の先端中央部に良好に集められて、樋部の先端中央に形成されている落下用切欠きから良好に筋状に壁の表面に漏水を流すことができるものとなり、これにより、水栓使用者は壁の表面に筋状に流れ落ちる漏水を視認し易くなり、漏水を早期に発見して対策を講じることができるものとなる。
【0008】
また、前記樋部の底面には、前記落下用切欠きに向かって延びるガイド溝が形成されていることにより、ガイド溝に沿わせて少量の漏水でも樋部先端の落下用切欠きから確実に壁の表面に筋状に流すことができるものとなる。
【0009】
また、前記前面カバーの裏面には、前記漏水を前記壁の表面に導くための縦方向の水案内用リブが形成されていることにより、樋部から漏水を前面カバーの裏面の縦方向の水案内用リブに導き、水案内用リブに沿って下方側の壁の表面に漏水を流下させることができるものとなり、少量の漏水でも上手く壁の表面に筋状に流すことができるものとなる。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、壁埋込水栓の設置状態の正面構成図であり、図2は、図1のA−A線断面構成図である。
壁埋込水栓1は、例えば脱衣室の壁2の裏側に、前面側が開放された箱状のボックス3を設け、このボックス3内には、水栓本体4が収納されており、この水栓本体4には、壁2の裏側に縦方向に配管される給水管5が接続されるワンタッチジョイントで構成された接続部4bが形成され、また、水栓本体4の水量調節を行うバルブ部4a側には垂下状に接続部4cが形成されており、この接続部4cには、壁2の表側で吐水口部12を着脱可能に接続できるように構成されている。なお、この吐水口部12には、洗濯機用ホースが接続されるものである。
【0011】
壁2の表側には、ボックス3の表側開口を覆蓋するように、四角パッキン8を介在させて気密状に前面カバー9が覆設されており、この前面カバー9の前面に、水栓本体4のバルブ部4aを操作できるハンドル10が設けられ、ハンドル10の中央部はキャップ11で覆蓋されている。
なお、ボックス3内には、接続部4bの下方側に水受け6が設けられ、この水受け6には、前面カバー9側へ延出した樋部7が形成されており、この樋部7の先端から漏水を壁2の表面と前面カバー9の裏面間に流下させることができるように構成されている。
【0012】
なお、図3では、前面カバー9と四角パッキン8と水受け6の分解斜視図を示す。
なお、図4には、前面カバーの裏面図を示し、先ず前面カバー9を説明すると、前面カバー9の上部には収納凹部Sが形成されており、この収納凹部Sの前面には水栓本体4のハンドル10側を通すための前面開口9aが形成されており、収納凹部Sの下面には吐水口部12を通すための下開口9bが貫通形成されている。また、収納凹部Sから下方側へ垂下状に垂下片9cが形成されており、垂下片9cの下端で室内側へ傾斜して傾斜片9dが形成され、傾斜片9dの下端から垂直に下端垂下片9eが一体形成されており、下端垂下片9eの下端では、壁2側へ折り曲げて下端外周片9fが形成されたものとなっている。
この下端外周片9fの幅方向中央部には、貫通状に下端開口91が形成されている。この下端開口91内に下端を臨ませて、下端垂下片9eの裏側には、縦方向の水案内用リブ92が一体形成されており、この水案内用リブ92は、横方向に間隔をおいて3本のリブで構成されている。なお、水案内用リブ92の外側には、補強リブ93が形成されている。
【0013】
次に、水受け6を図5の斜視図で、また図6の平面構成図で説明すると、水受け6は、底面6aの外周に立ち上げて外周壁6bが形成されてトレー状となっており、底面6aの中央部には上方へ立ち上げて円形の管通し筒部6cが一体形成され、この管通し筒部6c内に前述した給水管5を通すことができるように構成されている。
また、底面6aと連通状に前端側には、下向きに傾斜して前方側へ突出する樋部7が一体形成されており、樋部7の底面中央部には1本のガイド溝7eが凹み状に形成され、このガイド溝7eの先端の樋部7の先端中央部には、V字状に切り欠いて落下用切欠き7cが形成されており、また、樋部7の先端の左右側面には、先端側へ向かって樋部7が縮幅するように、傾斜状に左テーパ面7aと右テーパ面7bが形成されて、この左テーパ面面7aと右テーパ面7bと落下用切欠き7cにより、樋部7の先端は略W字状に形成されている。また、樋部7の根元部には、外周壁6bと連続して立上壁7dが形成されている。
【0014】
この水受け6は、図2のように、前面カバー9の水案内用リブ92にほぼ当接状に樋部7を臨ませて配置されるものである。
水栓本体4の接続部4bと給水管5が接続された状態で、この接続部4bから漏水が生じ、壁2の裏側に沿って下方側へ流下すると、壁裏が腐敗する不具合が生ずることとなるが、接続部4bから流下する漏水は水受け6の底面6aで良好に受け止められて、漏水は樋部7のガイド溝7eに沿って良好に先端の落下用切欠き7cに導かれ、また、樋部7上を広がって流れてくる漏水は、樋部7の先端側の左テーパ面7a及び右テーパ面7bにより中央側の落下用切欠き7cに良好に集められて、この落下用切欠き7cから下方側へ流下されるものであり、漏水が少量であっても確実に落下用切欠き7cから下方側へ流下させることができるものである。
【0015】
この場合に、樋部7の先端は、前面カバー9の水案内用リブ92に臨ませてあるため、漏水は縦方向の水案内リブ92に沿って確実に下端開口91に導かれ、下端開口91から壁2の表面に漏水は筋状に流下されることとなる。
従って、漏水が壁表面に筋状に流下されるため、水栓使用者はこの筋状に流下される漏水を視認し易くなり、内部で漏水が生じていることを良好に知ることができて、良好に対応措置を取ることができるものとなる。
【0016】
このように、接続部4bからの漏水を、水受け6で受け止めて、樋部7を介して狙いを付けて前面カバー9の水案内用リブ92に導き、確実に下端開口91から壁2の表面に筋状に流下させることができ、極めて少量の漏水でも筋状に視認し易い状態で壁2の表面に流出させることができるものである。
なお、水受け6の樋部7のガイド溝7eは、1本に限るものではなく、また案内用リブ92も3本に限るものではない。
【0017】
なお、水案内用リブ92により下端開口91に漏水を狙いを付けて導くことができるため、下端開口91の開口面積は極めて小さく設定することができ、ボックス3内部の気密性を良好に確保できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】壁埋込水栓の設置状態の正面構成図である。
【図2】図1のA−A線断面構成図である。
【図3】前面カバーと四角パッキンと水受けの分解斜視図である。
【図4】前面カバーの裏面図である。
【図5】水受けの斜視構成図である。
【図6】水受けの平面構成図である。
【符号の説明】
【0019】
1 壁埋込水栓
2 壁
3 ボックス
4 水栓本体
4a バルブ部
4b,4c 接続部
5 給水管
6 水受け
6a 底面
6b 外周壁
6c 管通し筒部
7 樋部
7a 左テーパ面
7b 右テーパ面
7c 落下用切欠き
7e ガイド溝
8 四角パッキン
9 前面カバー
9e 下端垂下片
9f 下端外周片
10 ハンドル
12 吐水口部
91 下端開口
92 水案内用リブ
S 収納凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁裏に設けたボックス内に水栓本体を収納し、前記ボックスを前面カバーで覆蓋するとともに、前記ボックス内に、壁裏の給水管を前記水栓本体に接続する接続部と、該接続部からの漏水を受ける水受けを設けてなる壁埋込水栓において、
前記水受けには、前記漏水を前記壁の表面側に導くための樋部が前記前面カバー方向に延出して形成されているとともに、
該樋部の先端はその左右両側面が前記前面カバー側へ向かって縮幅するようにテーパ面を形成し、樋部の先端中央には漏水を落下させるための落下用切欠きが形成されていることを特徴とする壁埋込水栓。
【請求項2】
前記樋部の底面には、前記落下用切欠きに向かって延びるガイド溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁埋込水栓。
【請求項3】
前記前面カバーの裏面には、前記漏水を前記壁の表面に導くための縦方向の水案内用リブが形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の壁埋込水栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−285013(P2007−285013A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113917(P2006−113917)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】