説明

壁構造体

【課題】レンガを組み込んで形成する壁構造体であって、平面視円弧状部分を有する任意形状の壁構造体を提供する。
【解決手段】平面視円弧状部分を有する壁構造体であって、平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成する。段Aは、レンガ1と、レンガ1と水平方向で隣り合って配置する補助部材2とにより形成し、レンガ1は直方体状である。補助部材2は平面視台形状補助部材2aと平面視二等辺三角形状補助部材2bとを備える。平面視台形状補助部材2aは、レンガ1と同等の高さ寸法を有する四角柱状であり、平面視二等辺三角形状補助部材2bは、レンガ1と同等の高さ寸法を有する三角柱状である。段Bは、レンガ1と、レンガ1と水平方向で隣り合って配置する平面視二等辺三角形状補助部材2bとにより形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面視円弧状部分を有する任意形状の花壇および塀等の壁構造体に関する。特に、レンガを切断加工することなく、レンガと補助部材とを組み込んで平易に形成することができる壁構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
レンガを積み上げて形成する従来の壁構造体の施工技術には、馬踏み積み、イギリス積みおよびフランス積み等がある。これらの施工技術は、いずれも1段目のレンガを横長に積んだ後、1段目のレンガと半分ずつ重なるようにずらして2段目のレンガを積み上げ、同様に3段目以降のレンガを積み上げていくことにより、千鳥模様の壁構造体を形成する技術であり、形成される壁構造体は、いずれも平面視直線状である。このため、これらの壁構造体は、デザインに変化が少なく、独創性が小さいため、飽きられやすい。
【0003】
また、レンガは直方体状であるため、レンガを積み上げて、平面視円形状の壁構造体を形成しようとすると、水平方向に隣り合って配置するレンガとレンガの間に、大きな隙間が生じる。したがって、下段のレンガと重なるように、直ぐ上に上段のレンガを積み上げていくと、水平方向の強度が不十分な構造体となる。また、レンガを円形状に積み上げ、高さ方向でレンガを互い違いに配置すると、水平方向に隣り合って配置するレンガとレンガとの間に大きな隙間があるため、下段のレンガと、直ぐ上に配置するレンガとの接合面積が狭くなり、強固な構造体を得ることができない。
【0004】
かかる従来の技術上の問題点を克服し、レンガを用いた平面視円形状の花壇が知られており、一般家庭で行われるガーデニングにおいても平易に形成することができる(特許文献1)。この花壇は、レンガとレンガとの間に補助部材を配置し、補助部材として、平面視二等辺三角形状で、レンガと同等の高さ寸法を有し、長さが等しい二辺の長さがレンガの長辺より短く設定されている部材を使用する。
【0005】
図9は、補助部材92とレンガ91により形成した従来の円形花壇の斜視図である(特許文献1)。図9に示す例では、段Aと段Bとを交互に積み上げ、各段は14枚のレンガ91と、14枚の補助部材92から構成される。1個のレンガまたは補助部材あたり、
360度÷14枚÷2≒13度
となり、
13度÷2=6.5度
であるから、段Aと段Bを、同様のレンガ91と補助部材92とから構成し、段Aと段Bとを6.5度ずつ回転して配置することにより、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材92の直ぐ上にレンガ91が配置し、下段にある方のレンガ91の直ぐ上に補助部材92が配置する円形花壇を形成することができる。この花壇は、側面に凹凸を有し、デザイン的価値が高い。
【0006】
かかる補助部材とレンガとの構成により円形花壇を形成することができるが、この方法により、円形状以外の、半円形状、四分円形状、楕円形状等の平面視円弧状部分を有する花壇を形成することはできない。意匠性を高めるために、下方にある段の補助部材92の直ぐ上にレンガ91を配置し、下方にある段のレンガ91の直ぐ上に補助部材92を配置すると、平面視円弧状部分の両端で13度未満の半端な角度が生じるため、平面視円弧状部分を有する花壇等を形成することができない。
【特許文献1】実用新案登録第3135792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
平面形状が円形状以外の優雅な曲線形状を有する壁構造体や、曲線と直線を組み合わせた更にデザイン性の高い壁構造体へのニーズは大きく、特にガーデニングの分野では、半円形状、楕円形状等の平面視円弧状部分を有する花壇への関心が高い。また、一般家庭で行われるガーデニングにおいても平易に施工できる花壇が強く望まれている。
【0008】
本発明の課題は、レンガを組み込んで形成する壁構造体であって、平面視円弧状部分を有する任意形状の壁構造体を提供することにある。また、レンガを切断加工することなく、一般家庭でも容易に施工できる壁構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、平面視円弧状部分を有する壁構造体であって、平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成する。段Aは、レンガ1と、レンガ1と水平方向で隣り合って配置する補助部材2とにより形成し、レンガ1は、長辺と短辺と高さとを有する直方体状であり、長辺の方向が円弧の半径方向となるように配置する。補助部材2は、平面視台形状補助部材2aと、平面視二等辺三角形状補助部材2bとを備える。平面視台形状補助部材2aは、レンガ1と同等の高さ寸法を有する四角柱状であり、平面視台形状補助部材2aにおける台形の上底は下底より短く、上底および下底以外の2辺の長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺より短い。また、上底と下底以外の2辺のうちの1辺と、上底および下底とのなす角度がともに略90度であり、上底が円弧の内側を向くように、円弧状部分の両末端に配置し、台形の4辺のうち互いに平行な上底と下底以外の2辺の少なくとも一方がレンガ1の長辺と向かい合って配置する。
【0010】
平面視二等辺三角形状補助部材2bは、レンガ1と同等の高さ寸法を有する三角柱状であり、平面視二等辺三角形状補助部材2bにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺の長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺より短い。また、長さの等しい2辺が作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、長さの等しい2辺は、レンガ1の長辺と向かい合って配置する。段Bは、レンガ1と、レンガ1と水平方向で隣り合って配置する平面視二等辺三角形状補助部材2bとにより形成し、レンガ1は、長辺の方向が円弧の半径方向となるように配置する。平面視二等辺三角形状補助部材2bは、補助部材2bにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺の作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、長さの等しい2辺がレンガ1の長辺と向かい合って配置する。かかる段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置する。
【0011】
レンガ1のサイズが、長辺y×短辺t×高さhであり、平面視二等辺三角形状補助部材2bにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺の作る角度が2θ度であるとき、
2tan-1(t/2y)−5≦2θ≦2tan-1(t/2y)+5
である態様が好ましい。また、平面視台形状補助部材2aにおける台形の4辺のうち、上底および下底以外の2辺と、上底との作る角度が、90度と、(90+α)度であるとき、
θ−5≦α≦θ+5
である態様が好ましい。
【0012】
本発明の他の態様の壁構造体は、平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する。補助部材2として、平面視長方形状補助部材2cを備え、平面視直線状部分は、レンガ1と、レンガ1と水平方向で隣り合って配置する平面視長方形状補助部材2cとからなる段を積み上げて形成する。レンガ1は、長辺の方向が、壁構造体の側面に直交するように配置する。また、平面視長方形状補助部材2cは、レンガ1と同等の高さ寸法を有する四角柱状であり、平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1と水平方向で向かい合って配置する2辺の長さ寸法はレンガ1の長辺より短い。長方形の4辺のうち、レンガ1と向かい合って配置する2辺以外の2辺の長さがレンガ1の短辺と同等の寸法を有する。平面視直線状部分は、下段の補助部材2cの直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2cを配置する。
【0013】
補助部材2の材質は、発泡スチロール、発泡ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、プラスチックス、石綿、石膏、陶磁、セメント、モルタル、コンクリート、金属または金属酸化物が好適である。一方、最上段から数えて2段目以下に配置する段のレンガ1と補助部材2とが、穴部または切り欠き部を有し、壁構造体の形成後、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部が形成されるようにレンガ1と補助部材2とを配置する態様が好ましい。補助部材2の切り欠き部は、壁構造体を形成したときに壁構造体の内部方向を向く部分を切り欠くように形成されている形態が好ましい。また、補助部材の切り欠き部が、壁構造体を形成したときにレンガ1と向かい合う面に形成されている態様が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、平面視円弧状部分を有する壁構造体、または平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する壁構造体であって、壁の側面に凹凸を有するデザイン性の高い壁構造体を提供することができる。また、レンガを切断加工することなく、一般家庭でも容易に施工できる壁構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
壁構造体は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に複数段積み上げて形成する。図1は、壁構造体の構成単位である段Aと段Bを例示する平面図であり、図1(a)は、段Aの平面図であり、図1(b)は、段Bの平面図である。図1に示すように、段Aと段Bは、同様の大きさの平面視円弧状部分Xを有し、図1に示す例では、平面視円弧状部分は半円形状である。図1に示すように、塀3等の側面に形成することができ、壁構造体が半円形状等の円弧状部分Xを有するため、デザイン的価値が高い優美な花壇等を提供することができる。
【0016】
図1(a)に示すように、段Aは、レンガ1と、レンガ1と水平方向に隣り合って配置する補助部材2とにより形成する。図2は、壁構造体を構成するレンガ1の斜視図である。図2に示すように、レンガ1は、長辺Yと短辺Tと高さHとを有する直方体状である。図1(a)に示すように、レンガ1は、長辺Yの方向が円弧の半径方向となるように配置する。レンガ1のサイズは、JIS規格で定められた長辺Yが210mm、短辺Tが100mm、高さHが60mmである「JISレンガ」が一般的である。また、長辺Yが半分の「半マスサイズ」(長辺Y;105mm、短辺T;100mm、高さH;60mm)、短辺Tを半分にした「ヨウカンサイズ」(長辺Y;210mm、短辺T;50mm、高さT;60mm)または高さHを半分にした「ハンペンサイズ」(長辺Y;210mm、短辺T;100mm、高さH;30mm)等の各種のサイズのレンガを使用することができる。
【0017】
レンガは、粘土と砂を混ぜ、成形し、乾燥し、焼成して製造した赤茶色の「赤レンガ」を好ましく使用できるが、セメントと砂を混ぜて製造した「セメントレンガ」、焼きムラを付けた「焼き過ぎレンガ」、大理石もしくは花崗岩をレンガサイズに切断したもの、直方体の頂点の角を切り取ったレンガ、頂点の角に自然な丸みを付けたレンガ、または直方体の面を正確に面取りしていないレンガ等を使用することにより、一層デザイン的価値の高い花壇を製造することができる。
【0018】
図1(a)に示すように、段Aの形成に使用する補助部材2は、平面視台形状補助部材2aと、平面視二等辺三角形状補助部材2bとを備える。図3は、壁構造体を構成する補助部材2のうち、平面視台形状補助部材2aの斜視図である。図3に示すように、平面視台形状補助部材2aは四角柱状である。また、高さ2aHは、レンガ1の高さHと同等であるため、レンガ1と水平方向に隣り合って配置すると、レンガ1と補助部材2aの高さを揃えることができる。したがって、段A上に段Bを容易に形成することができる。また、補助部材2aは、図3に示すように、台形の4辺のうち互いに平行な上底2aJと下底2aKを有し、上底2aJが下底2aKより短い。
【0019】
上底2aJと下底2aK以外に、2辺2aS,2aTを有し、辺2aS,2aTは、そのうちの少なくとも1辺がレンガの長辺と向かい合って配置する。図1(a)に示す例では、辺2aSがレンガ1の長辺Yと向かい合って配置しているが、壁構造体の構造により、辺2aSと辺2aTの双方がレンガ1の長辺Yと向かい合って配置することがある。また、上底および下底以外の2辺2aS,2aTの長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺Yより短いため、壁構造体の側面に凹凸を形成することができ、意匠的価値の高い花壇等を提供することができる。補助部材2aは、図1(a)に示すように、上底が円弧の内側を向くように配置する。
【0020】
図4は、壁構造体を構成する補助部材2のうち、平面視二等辺三角形状補助部材2bの斜視図である。図4に示すように、平面視二等辺三角形状補助部材2bは三角柱状である。また、高さ2bHは、レンガ1の高さHと同等であるため、レンガ1と補助部材2bの高さを揃えることができ、段A上に段Bを容易に形成することができる。また、補助部材2bにおける二等辺三角形の3辺のうち長さの等しい2辺2bS,2bTは、図1(a)に示すように、レンガ1の長辺Yと向かい合って配置する。一方、長さの等しい2辺2bS,2bTの長さ寸法がレンガ1の長辺Yより短いため、壁構造体の側面に凹凸を形成することができる。補助部材2bは、図1(a)に示すように、等しい2辺2bS,2bTが作る頂点が、円弧状部分Xの内側を向くように配置する。
【0021】
図1(b)に示すように、段Bは、レンガ1と、レンガ1と水平方向に隣り合って配置する平面視二等辺三角形状補助部材2bとにより形成する。段Bにおけるレンガ1は、図1(b)に示すように、長辺Yの方向が円弧の半径方向となるように配置する。段Bにおける平面視二等辺三角形状補助部材2bは、段Aにおける平面視二等辺三角形状補助部材2bと同様の部材を使用する。したがって、平面視二等辺三角形状補助部材2bの高さ2bHは、レンガ1の高さHと同等である。また、補助部材2bにおける二等辺三角形の3辺のうち長さの等しい2辺2bS,2bTは、図1(b)に示すように、レンガ1の長辺Yと向かい合って配置する。一方、長さの等しい2辺2bS,2bTの長さ寸法がレンガ1の長辺Yより短いため、壁構造体の側面に凹凸を形成することができる。補助部材2bは、長さの等しい2辺2bS,2bTが作る頂点が、円弧の内側を向くように配置する。
【0022】
図5は、平面視半円形状を有する壁構造体を塀3等の側面に形成した花壇の斜視図である。図5に示すように、壁構造体は、段Aと段Bとを交互に配置して複数段積み上げて形成する。また、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置するように積み上げる。たとえば、図1(a)に示す段Aを下段に形成した後、段Aにおける補助部材2の直ぐ上に、段Bにおけるレンガ1を配置し、段Aにおけるレンガ1の直ぐ上に、段Bにおける補助部材2を配置するように積み上げる。段Aの代わりに段Bを下段とする場合も同様である。レンガ1と補助部材2とが高さ方向で隣り合っているため、補助部材2とレンガ1とを接合するための接合剤を乗せる付き代を広く確保することができ、積み上げ施工が容易となる。また、段Aと段Bとを上記の配置構成により交互に複数段積み上げて形成することにより、壁構造体の側面に千鳥状に配置する凹凸が形成され、意匠的価値の高い壁構造体を提供することができ、特に花壇として有用である。複数段とは2段以上を意味する。
【0023】
平面視台形状の補助部材2aは、図1に示すように、平面視円弧状部分Xの両末端に配置する。また、補助部材2aは、上底と下底以外の2辺のうち1辺と、上底および下底とのなす角度がともに略90度である。図3に示す例では、上底2aJと下底2aK以外の2辺のうちの1辺2aTと、上底2aJおよび下底2aKとのなす角度がともに略90度である。壁構造体は、段Aと段Bとを上記の配置構成により複数段積み上げて形成されるため、段A中の補助部材2aは、段B中のレンガ1と隣り合うことになる。レンガ1は直方体状であるから、補助部材2aにおいて、上底と下底以外の2辺のうち1辺と、上底および下底とのなす角度がともに略90度とすることにより、段A中の補助部材2aと段B中のレンガ1とを揃えて配置することができ、滑らかな円弧状のカーブを有する壁構造体を形成することができる。かかる観点から、略90度とは、90±10度以内が好ましく、90±5度以内がより好ましい。
【0024】
図6は、壁構造体を構成する補助部材2とレンガ1の配置を示す平面図である。図6(a)は、平面視二等辺三角形状補助部材2bと、その上に積むレンガ1(破線で示す。)の配置を示す。平面視二等辺三角形状補助部材2bの辺2bS,2bTは、水平方向に隣り合って配置する2個のレンガ(図示していない。)の長辺より短いため、空洞Mが生じる。図6(a)に示すように、補助部材2b上に配置するレンガ1の短辺Tの下方がちょうど空洞Mとなるように配置すると、形成する壁構造体の側面に現れるレンガの直ぐ下に丁度同じ大きさの空洞Mが現れるため、千鳥状に形成される凹凸は一層優美となり、好ましい。
【0025】
レンガ1のサイズが、長辺Yの長さをy、短辺Tの長さをt、高さHの長さをhとし、平面視二等辺三角形状補助部材2bにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺2bS,2bTの作る角度を2θ度とする。図6(a)に示すように、補助部材2b上に配置するレンガ1の短辺Tの下方がちょうど空洞Mとなるようにするには、
tanθ=(t/2)/y
=t/2y
θ=tan-1(t/2y) ・・・・・(式1)
となる。
【0026】
レンガ1と補助部材2との間の目地幅等を考慮すると、
2tan-1(t/2y)−5≦2θ≦2tan-1(t/2y)+5 が好ましく、
2tan-1(t/2y)−3≦2θ≦2tan-1(t/2y)+3 がより好ましく、
2tan-1(t/2y)−1≦2θ≦2tan-1(t/2y)+1 が特に好ましい。
JISレンガとヨウカンサイズのレンガを例に取り、θ(度)と好ましい2θ(度)を表1に示す。表中、±5とは、2tan-1(t/2y)±5の範囲を示す。同様に、±3とは、2tan-1(t/2y)±3の範囲、±1とは、2tan-1(t/2y)±1の範囲を示す。
【0027】
【表1】

【0028】
図6(b)は、平面視台形状補助部材2aと、その上に積むレンガ1(破線で示す。)の配置を示す。平面視台形状補助部材2aの辺2aS,2aTは、水平方向に隣り合って配置する2個のレンガ(図示していない。)の長辺より短いため、空洞Mが生じる。図6(b)に示すように、補助部材2a上に配置するレンガ1の短辺Tの下方がちょうど空洞Mとなるように配置すると、形成する壁構造体の側面に現れるレンガの側面積は、そのすぐ下にある空洞Mの側面積と同一となり、形成する壁構造体の側面に現れるレンガの直ぐ下に丁度同じ大きさの空洞Mが現れるため、千鳥状に形成される凹凸は一層優美となり、好ましい。
【0029】
図6(b)に示すように、平面視台形状補助部材2aにおける台形の4辺のうち、上底2aJおよび下底2aK以外の2辺2aS,2aTと、上底2aJとの作る角度が、90度と、(90+α)度であるとし、補助部材2a上に配置するレンガ1の短辺Tの下方がちょうど空洞Mとなるように配置するための角度αの値を検討する。図1(b)に示す例では、段Bは、合計9個のレンガ1と、合計8個の二等辺三角形状補助部材2bとにより構成されることから明らかなとおり、段Bにおける円弧状部分の両末端にはレンガ1が配置し、レンガ1とレンガ1との間に補助部材2bが配置するため、
段Bにおける補助部材2bの個数n=レンガ1の個数−1
である。
【0030】
補助部材2bにおいて、辺2bSと辺2bTとが作る角は2θであり、円弧の中心をCとすると、辺2bSとCWとは平行であり、辺2bTとCZとは平行であるから、
∠WCZ=2θ
であり、
円弧の中心角=2θ×段Bにおける補助部材2bの個数(段B)
=2θ×n ・・・・・(式2)
となる。段Aと段Bとは、高さ方向に交互に重ねて配置し、下方にある段の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下方にある段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置するように積み上げる。したがって、段Aにおいては、段Bのn個の補助部材2b上にレンガ1を配置するため、段Aの円弧状部分に配置するレンガ1はn個となり、n個のレンガ1の間に補助部材2bを配置する。したがって、段Aにおける補助部材2bはn−1個となる。
【0031】
図1(b)の場合と同様に、図1(a)においても、補助部材2bにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺が作る頂角は2θであり、
∠WCZ=2θ
である。したがって、段Aにおいて、
二等辺三角形状補助部材2bにより形成される中心角=2θ×補助部材2bの個数
=2θ×(n−1)
となる。上記の(式2)より、段Aと段Bにより形成される円弧の中心角は等しく、2θ×nであるから、
2θ×n−2θ×(n−1)=2θ
の角度を、段Aの両端に配置する台形状補助部材2aにより調整することになる。
【0032】
下方の段のレンガ1の直ぐ上に補助部材2を配置し、下方の段の補助部材2の直ぐ上にレンガ1を配置して積み上げ、壁構造体の側面に同様の凹凸を形成するため、円弧の両端に配置する台形状補助部材2aは同一形状とする態様が好ましい。このため、図1(a)において、
α×2=2θ
となる態様が好ましく、
α=θ
となる。したがって、レンガ1と補助部材2との間の目地幅等を考慮すると、
θ−5≦α≦θ+5 が好ましく、
θ−3≦α≦θ+3 がより好ましく、
θ−1≦α≦θ+1 が特に好ましい。
【0033】
図6(b)は、補助部材2aにおける台形の上底2aJと、高さ方向で隣り合うレンガ1(破線で示す。)の短辺Tが重なっている。かかる態様は、レンガ1と補助部材2aとの接合面積が広く、強固な壁構造体を形成できる点で好ましい。一方、レンガ1と補助部材2aとの接合強度が十分であるときは、図6(b)において、上底2aJを図面の左方向に平行移動したような高さの低い態様の台形を有する補助部材2aを使用できる。
【0034】
つぎに、図6(b)に示すように、補助部材2aにおける台形の上底2aJと、高さ方向で隣り合うレンガ1(破線で示す。)の短辺Tが重なるときの上底2aJの長さjについて検討する。
tanα=(t−j)/y
α=tan-1{(t−j)/y} ・・・・・(式3)
であり、上記の(式1)より、
θ=tan-1(t/2y)
であり、上記の(式3)より、
α=tan-1{(t−j)/y}
である。
【0035】
α=θより、
t/2y=(t−j)/y
t=2(t−j)
t=2t−2j
j=t/2
となる。したがって、レンガ1と補助部材2との間の目地幅等を考慮すると、
t/2×0.9≦j≦t/2×1.1が好ましく、
t/2×0.92≦j≦t/2×1.08がより好ましく、
t/2×0.95≦j≦t/2×1.05が特に好ましい。
【0036】
レンガ1および補助部材2は、花壇または塀等の壁構造体の製造に使用する部材であり、園芸用、土木用または建築用の部材であるから、幾何学上の正確な三角柱または四角注である必要はなく、頂点の角を切り取り、角に自然な丸みを付けた部材、または正確に面取りしていない部材等も使用することができる。したがって、レンガ1は直方体状のもの、平面視台形状補助部材2aは四角柱状のもの、平面視二等辺三角形状補助部材2bは三角柱状のもの、また平面視長方形状補助部材2cは四角柱状のものをそれぞれ使用することができる。
【0037】
本発明の壁構造体の他の態様は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する。図7と図8は、平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有する壁構造体を構成する段の平面図であり、図7に示す段と、図8に示す段とを交互に積み上げて形成することにより、平面視楕円形状の壁構造体を容易に形成することができる。図7に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図1(b)に示す段Bの構成であり、図8に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図1(a)に示す段Aの構成である。本発明の壁構造体は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成するから、図7と図8に示す例のほかに、平面視円弧状部分Xが段Aの構成であり、同じ段の他方の平面視円弧状部分が段Bの構成である態様とすることも可能である。
【0038】
平面視直線状部分Uは、補助部材2として平面視長方形状補助部材2cを使用する。レンガ1と、レンガ1と水平方向で隣り合って配置する平面視長方形状補助部材2cとからなる段を積み上げて形成する。レンガ1は、長辺の方向が、壁構造体の側面に直交するように配置する。また、平面視長方形状補助部材2cは四角柱状であり、レンガ1と同等の高さ寸法を有するため、積み上げた後、レンガ1と補助部材2cとは、高さが同等となり、壁構造体の形成が容易となる。平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1と水平方向で向かい合って配置する2辺2cS,2cTの長さは、レンガ1の長辺Yより短いため、形成する壁構造体の側面には、補助部材2cの所に空洞が生じる。
【0039】
長方形の4辺のうち、レンガ1と向かい合って配置する2辺2cS,2cT以外の2辺の長さは、レンガ1の短辺Tと同等の寸法を有する。また、図7に示す段と、図8に示す段とを積み上げ、下段の補助部材2cの直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2cを配置する。したがって、補助部材2cとレンガ1とが、高さ方向で交互に配置するため、補助部材2cの所に生じる空洞も千鳥状に配置し、デザイン的価値の高い側面を備える壁構造体を形成することができる。また、レンガを切断加工する必要がなく、一般家庭でも容易に壁構造体を形成できる
【0040】
図10は、平面視円弧状部分Xを有し、平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有する壁構造体を構成する段の平面図であり、図10(a)に示す段と、図10(b)に示す段とを交互に積み上げて形成することにより、平面視略長方形状であり、4個のコーナーが平面視四分円状の壁構造体を容易に形成することができる。同様にして、平面視略多角形状であり、コーナーが平面視円弧状の壁構造体を容易に形成することが可能である。図11は、平面視円弧状部分X1,X2に連結する平面視直線状部分Uを有する壁構造体を構成する段の平面図である。図11において、X1とX2とを交換した構成を有する段と、図11に示す段とを交互に積み上げて形成する壁構造体は、塀3等の側面に平面視半楕円形状に突き出した構造を有し、優美でデザイン的価値が高く、花壇等として有用である。
【0041】
補助部材の材質は、発泡スチロール、発泡ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、プラスチックス、石綿、石膏、陶磁、セメント、モルタル、コンクリート、金属または金属酸化物が好適である。発泡ポリオレフィンとしては、発泡ポリエチレン、または発泡ポリプロピレン等を使用することができる。発泡ポリエチレンは、ソフトで、しなやかであり、耐薬品性に優れ、繰り返し使用することができる。発泡ポリプロピレンは、発泡ポリエチレンに比べて耐熱性に優れる。合成ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム等を使用することができる。プラスチックスとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等を使用することができる。セメントとしては、たとえばパーライトを骨材とするセンメント材料を使用し、必要に応じて無機顔料を配合した部材を使用することができる。金属または金属酸化物としては、ステンレス、アルミニウム、アルミナ等を使用することができ、他の材料からなる補助部材の表面を金属または金属酸化物の板状体で被覆した部材も使用することができる。
【0042】
レンガと補助部材との接合剤としては、たとえば、セメントモルタル、シリコーン樹脂、シリコーン・エポキシ系樹脂、ウレタン・エポキシ系樹脂等を好ましく使用することができる。特に、ウレタン・エポキシ系樹脂は、ウレタン樹脂の持つ高弾性とエポキシ樹脂の持つ高接着性を有し、熱、水、アルカリに高い抵抗性を示し、安定した物性を有する点で好ましい。
【0043】
図12は、壁構造体を構成する段であって、最上段から数えて2段目以下に配置する段の平面図を示し、図12(a)に示す段と図12(b)に示す段とを交互に積み上げると、平面視円弧状部分を有する壁構造体を形成することができる。図12に示すように、最上段から数えて2段目以下に配置する段のレンガ1と補助部材2とが、穴部4または切り欠き部を有し、壁構造体の形成後、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部が形成されるようにレンガ1と補助部材2とを配置する態様が好ましい。かかる態様の壁構造体は、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部に鉄筋等の補強材を配置し、セメントモルタル等の接合剤を注入することにより壁構造体の機械的強度を高めることができる。
【0044】
図13は、壁構造体を構成し、穴部4または切り欠き部5を有する補助部材2の平面図である。図13(a)と図13(b)は、補助部材2が穴部4を有する例である。壁構造体を形成すると、補助部材2はレンガ1(図示していない。)と高さ方向で隣り合うため、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部が形成されるように、補助部材2の穴部4の位置に合わせて、レンガ1も穴部を有する態様が好ましい。図13(c)〜図13(f)は、補助部材2が切り欠き部5を有する例である。図14は、壁構造体を構成する段であって、図13(d)に示すような切り欠き部5を有する補助部材2を配置して形成した段の平面図であり、レンガ1は穴部4を有する。
【0045】
したがって、壁構造体を形成するときは、下段の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置するため、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部を形成することができる。したがって、図13(d)に示すように、補助部材2の切り欠き部は、壁構造体を形成したときに壁構造体の内部方向を向く部分を切り欠くように形成されている態様が好ましい。図13(c)、図13(e)と図13(f)においては、補助部材2の切り欠き部5が、壁構造体を形成したときにレンガ1と向かい合う面に形成されている。壁構造体を形成すると、下段の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置する。したがって、補助部材2の切り欠き部5の位置に合わせてレンガ1に切り欠き部または穴部を形成することにより、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部を形成することができる。
【0046】
(実施例1)
【0047】
本実施例においては、平面視半円形状で5段積みの壁構造体を塀の側面に形成した。レンガ1は、図2に示すような長辺Y(y=210mm)、短辺T(t=100mm)、高さH(h=60mm)とを有する直方体状のJISレンガ(赤レンガ)を使用した。補助部材2は、平面視台形状補助部材2aと、平面視二等辺三角形状補助部材2bを使用し、補助部材2は、パーライトを骨材とするセンメント材料で作成し、無機顔料を配合することにより濃いグレー調の部材を使用した。平面視台形状補助部材2aは高さ60mmの四角柱状であり、図6(b)に示すように、台形の各辺の長さが、上底2aJ(j=50mm)、下底2aK(84mm)、辺2aT(168mm)、辺2aS(171mm)であった。
【0048】
したがって、台形の上底2aJが下底2aKより短く、上底および下底以外の2辺2aS,2aTの長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺(y=210mm)より短く、上底2aJ(j=50mm)とレンガ1の短辺T(t=100mm)との長さ関係は、j=t/2であった。また、上底と下底以外の2辺のうちの1辺2aTと、上底2aJおよび下底2aKとのなす角度がともに90度であり、角αは11.3度であった。一方、平面視二等辺三角形状補助部材2bは、高さ60mmの三角柱状であり、図6(a)に示すように、二等辺三角形の長さの等しい2辺2bS,2bTの長さが171mmであり、レンガ1の長辺Y(y=210mm)より短いものを使用した。また、二等辺三角形の長さの等しい2辺2bS,2bTの作る角2θは22.5度であり、θは11.25度であった。
【0049】
tan-1(t/2y)
=tan-1(100/2×210)
=13.4
2tan-1(t/2y)−5=21.8
2tan-1(t/2y)+5=31.8
21.8<22.5<31.8
であるから、
2tan-1(t/2y)−5<2θ<2tan-1(t/2y)+5
であった。また、α=11.3、θ=11.25より、θ−1<α<θ+1であった。
【0050】
つぎに、花壇を形成する場所にセメントモルタルを厚さ100mm形成し、水平となるように調整し、乾燥し、土台とした。セメントモルタルは砂3:セメント1の割合で作成した。つぎに、レンガで形成した塀の側面に直径500mmの半円を描き、描いた線に沿って、半円の外側に第1段目のレンガ1と補助部材2を配置した。第1段目は、図1(a)に示すように、段Aの構成とした。段Aは、レンガ1と補助部材2とが、水平方向で隣り合うように配置した。レンガ1は、図1(a)に示すように、長辺Yの方向が円弧の半径方向となるように配置した。
【0051】
また、平面視台形状補助部材2aは、上底2aJが円弧の内側を向くように、円弧状部分Xの両末端に配置し、互いに平行な上底と下底以外の2辺のうち1辺2aSがレンガ1の長辺Yと向かい合うように配置した。平面視二等辺三角形状部材2bは、長さの等しい2辺2bS,2bTが作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、また長さの等しい2辺2bS,2bTは、レンガ1の長辺Yと向かい合うように配置した。第1段目のレンガ1と補助部材2の配置を完了した後、1つずつ補助部材2を抜き取り、補助部材2を配置する部分の土台と、補助部材2のレンガ1と向かい合う面に接合剤を塗布し、元の場所に組み込み、接合した。接合剤は、ウレタン・エポキシ系樹脂を使用した。
【0052】
つぎに、段Aの上に第2段目を形成した。第2段目の段構成は、図1(b)に示すような段Bとし、段A上に積み上げた。段Bは、図1(b)に示すように、レンガ1と平面視二等辺三角形状補助部材2bとを、水平方向で隣り合うように配置した。レンガ1は、長辺Yの方向が円弧の半径方向となるように配置した。また、平面視二等辺三角形状補助部材2bは、二等辺三角形における長さが等しい2辺2bS,2bTの作る頂点が円弧の内側を向くように配置し、長さの等しい2辺2bS,2bTがレンガ1の長辺Yと向かい合うように配置した。下段にある段Aの補助部材2の直ぐ上に、段Bのレンガ1を配置し、下段にある段Aのレンガ1の直ぐ上に、段Bの補助部材2を配置した。第2段目のレンガ1と補助部材2の配置を完了した後、1つずつ補助部材2を抜き取り、補助部材2を配置する所と、補助部材2のレンガ1と向かい合う面に接合剤を塗布し、元の場所に組み込み、接合した。接合剤は、第1段目と同様のものを使用した。
【0053】
同様にして、第3段目〜第5段目を積み上げた。第3段目と第5段目とは段Aの構成とし、第4段目は段Bの構成とした。段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置した。その結果、内径500mm、外径920mmの平面視円弧状部分を有し、5段積みの花壇を塀の側面に形成することができた。本実施例のレンガ1と補助部材2との配置構成によれば、上段と下段との接合において、補助部材2とレンガ1とを接合するための接合剤を乗せる付き代を広く確保できるため、積み上げ施工が容易であった。また、形成した壁構造体の側面は、補助部材2を配置する部分に空洞Mが生じ、空洞Mは千鳥状に形成されるため、優美でデザイン的価値の高い花壇が得られた。また、レンガを切断加工する必要がなく、容易に積み上げることができた。
【0054】
(実施例2)
【0055】
本実施例においては、平面視楕円形状で6段積みの壁構造体を形成した。この壁構造体は、平面視円弧状部分を有し、平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する。最初に、図8に示す段を形成した後、図7に示す段を積み上げ、その後、図8に示す段と図7に示す段とを交互に積み上げた。第1段目を形成するときは、図8に示すように、予め土台に直径D500mmの半円と、直線(長さL=800mm)を描き、描いた線に沿って、線の外側にレンガ1を配置した。図7に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図1(b)に示す段Bの構成であり、図8に示す平面視円弧状部分Xはいずれも、図1(a)に示す段Aの構成である。また、平面視円弧状部分は、段Aと段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置した。
【0056】
平面視直線状部分Uは、補助部材2として平面視長方形状補助部材2cを使用し、図7と図8に示すように、レンガ1と平面視長方形状補助部材2cとが、水平方向で隣り合うように配置し、レンガ1は、長辺Yの方向が、壁構造体の側面に直交するように配置した。平面視長方形状補助部材2cは、高さ60mmの四角柱状であり、レンガ1と同じ高さを有するため、積み上げた後、レンガ1と補助部材2cとは、高さが同等となり、壁構造体の形成が容易であった。平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1と水平方向で向かい合って配置する2辺2cS,2cTの長さは168mmであり、レンガ1の長辺Y(y=210mm)より短いため、形成する壁構造体の側面には、補助部材2cの所に空洞が生じた。
【0057】
長方形の4辺のうち、レンガ1と向かい合って配置する2辺2cS,2cT以外の2辺の長さは、レンガ1の短辺T(t=100mm)と同じであり、図7に示す段と、図8に示す段とを交互に積み上げ、下段の補助部材2cの直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2cを配置した。その他の点は、実施例1と同様とした。
【0058】
作成した壁構造体は、平面視円弧状部分が、内径500mm、外径920mmであり、平面視直線状部分が、長さL800mmであり、6段積みの平面視楕円形状の構造体であった。本実施例のレンガ1と補助部材2との配置構成によれば、上段と下段との接合において、接合剤を乗せる付き代を広く確保することができるため、積み上げ施工が容易であった。また、形成した壁構造体の側面には、補助部材2を配置する部分に空洞Mが生じ、空洞Mは、千鳥状に形成されるため、優美でデザイン的価値の高い花壇が得られた。また、レンガを切断加工する必要がなく、容易に積み上げることができた。
【0059】
(実施例3)
【0060】
本実施例においては、平面視半円形状で7段積みの壁構造体である花壇を塀の側面に形成した。この花壇は、最上段から数えて2段目以下に配置するレンガ1と補助部材2には穴部を有するものを使用し、壁構造体内に補強材として鉄筋を設置した。レンガ1は、図2に示す中央部Frに直径20mmの穴部を高さ方向に形成したレンガを使用した。補助部材2のうち、平面視台形状補助部材2aは、図6(b)に示すように、上底2aJから長さfb=105mmの位置Fbに直径20mmの穴部を高さ方向に形成したものを使用した。また、平面視二等辺三角形状補助部材2bは、図6(a)に示すように、頂点から長さfa=105mmの位置Faに直径20mmの穴部を高さ方向に形成したものを使用した。
【0061】
第1段目の段構成は、図12(a)に示すように段Aの構成とし、第2段目の段構成は、図12(b)に示すように段Bの構成とし、奇数段目は段Aの構成とし、偶数段目は段Bの構成とし、合計6段形成した。最上段である第7段目を形成する前の壁構造体は、土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部が形成されていた。この穴部に、長さ400mmの節のある異型鉄筋D10(公称直径9.53mm、最大外径11.13mm)を挿入し、接合剤としてウレタン・エポキシ系樹脂を穴部に注入した。その後、実施例1の段Aと同じ構成の最上段を積み上げた。その他の点は、実施例1と同様にして壁構造体を形成した。
【0062】
その結果、内径500mm、外径920mmの平面視円弧状部分を有し、7段積みの花壇を塀3の側面に形成することができた。本実施例の壁構造体は、内部に鉄筋を有するため、堅牢で容易に崩れにくい安定な構造体であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
平面視円弧状部分を有する任意形状の花壇および塀等を提供することができる。また、レンガを切断加工することなく、レンガと補助部材とを組み込んで平易に形成することができる壁構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の壁構造体の構成単位である段Aと段Bを例示する平面図である。
【図2】本発明の壁構造体を構成するレンガ1の斜視図である。
【図3】本発明の壁構造体を構成する平面視台形状補助部材2aの斜視図である。
【図4】本発明の壁構造体を構成する平面視二等辺三角形状補助部材2bの斜視図である。
【図5】本発明の壁構造体を塀3の側面に形成した花壇の斜視図である。
【図6】本発明の壁構造体を構成する補助部材2とレンガ1の配置を示す平面図である。
【図7】平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有する本発明の壁構造体を構成する段の平面図である。
【図8】平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有する本発明の壁構造体を構成する段の平面図である。
【図9】補助部材92とレンガ91により形成した従来の円形花壇の斜視図である。
【図10】平面視円弧状部分Xに連結する平面視直線状部分Uを有する本発明の壁構造体を構成する段の平面図である。
【図11】平面視円弧状部分X1,X2に連結する平面視直線状部分Uを有する本発明の壁構造体を構成する段の平面図である。
【図12】本発明の壁構造体を構成する段であって、最上段から数えて2段目以下に配置する段の平面図である。
【図13】本発明の壁構造体を構成し、穴部4または切り欠き部5を有する補助部材2の平面図である。
【図14】本発明の壁構造体を構成する段であって、図13(d)に示すような切り欠き部5を有する補助部材2を配置して形成した段の平面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 レンガ、2 補助部材、2a 平面視台形状補助部材、2b 平面視二等辺三角形状補助部材、2c 平面視長方形状補助部材、3 塀、X 平面視円弧状部分、Y 長辺。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円弧状部分を有する壁構造体であって、
前記平面視円弧状部分は、段Aと段Bとを交互に積み上げて形成し、
前記段Aは、レンガ1と、該レンガ1と水平方向で隣り合って配置する補助部材2とにより形成し、
前記レンガ1は、長辺と短辺と高さとを有する直方体状であり、長辺の方向が前記円弧の半径方向となるように配置し、
前記補助部材2は、平面視台形状補助部材2aと、平面視二等辺三角形状補助部材2bとを備え、
前記平面視台形状補助部材2aは、
レンガ1と同等の高さ寸法を有する四角柱状であり、平面視台形状補助部材2aにおける台形の上底は、下底より短く、上底および下底以外の2辺の長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺より短く、
上底と下底以外の2辺のうちの1辺と、上底および下底とのなす角度がともに略90度であり、
上底が前記円弧の内側を向くように、円弧状部分の両末端に配置し、
台形の4辺のうち互いに平行な上底と下底以外の2辺の少なくとも一方がレンガ1の長辺と向かい合って配置し、
前記平面視二等辺三角形状補助部材2bは、
レンガ1と同等の高さ寸法を有する三角柱状であり、平面視二等辺三角形状補助部材2bにおける二等辺三角形の長さの等しい2辺の長さ寸法がいずれもレンガ1の長辺より短く、
長さの等しい前記2辺が作る頂点が前記円弧の内側を向くように配置し、
長さの等しい前記2辺は、レンガ1の長辺と向かい合って配置し、
前記段Bは、レンガ1と、該レンガ1と水平方向で隣り合って配置する平面視二等辺三角形状補助部材2bとにより形成し、
前記レンガ1は、長辺の方向が前記円弧の半径方向となるように配置し、
前記平面視二等辺三角形状補助部材2bは、該補助部材2bにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺の作る頂点が前記円弧の内側を向くように配置し、
長さの等しい前記2辺がレンガ1の長辺と向かい合って配置し、
前記段Aと前記段Bのうち、下段にある方の補助部材2の直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段にある方のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2を配置する壁構造体。
【請求項2】
前記レンガ1のサイズが、長辺y×短辺t×高さhであり、前記平面視二等辺三角形状補助部材2bにおける二等辺三角形の長さが等しい2辺の作る角度が2θ度であるとき、
2tan-1(t/2y)−5≦2θ≦2tan-1(t/2y)+5
である請求項1に記載の壁構造体。
【請求項3】
前記平面視台形状補助部材2aにおける台形の4辺のうち、上底および下底以外の2辺と、上底との作る角度が、90度と、(90+α)度であるとき、
θ−5≦α≦θ+5
である請求項1または2に記載の壁構造体。
【請求項4】
前記平面視円弧状部分に連結する平面視直線状部分を有する壁構造体であって、
補助部材2として、平面視長方形状補助部材2cを備え、
前記平面視直線状部分は、レンガ1と、該レンガ1と水平方向で隣り合って配置する平面視長方形状補助部材2cとからなる段を積み上げて形成し、
前記レンガ1は、長辺の方向が、壁構造体の側面に直交するように配置し、
前記平面視長方形状補助部材2cは、
レンガ1と同等の高さ寸法を有する四角柱状であり、
平面視長方形状補助部材2cにおける長方形の4辺のうち、レンガ1と水平方向で向かい合って配置する2辺の長さ寸法がレンガ1の長辺より短く、
前記長方形の4辺のうち、レンガ1と向かい合って配置する前記2辺以外の2辺の長さがレンガ1の短辺と同等の寸法を有し、
下段の補助部材2cの直ぐ上に、上段のレンガ1を配置し、下段のレンガ1の直ぐ上に、上段の補助部材2cを配置する請求項1〜3のいずれかに記載の壁構造体。
【請求項5】
前記補助部材2の材質が、発泡スチロール、発泡ポリオレフィン、天然ゴム、合成ゴム、プラスチックス、石綿、石膏、陶磁、セメント、モルタル、コンクリート、金属または金属酸化物である請求項1〜4のいずれかに記載の壁構造体。
【請求項6】
最上段から数えて2段目以下に配置する段のレンガ1と補助部材2とは、穴部または切り欠き部を有し、壁構造体の形成後、2段目から土台に至るまで高さ方向に貫通する穴部が形成されるようにレンガ1と補助部材2とを配置する請求項1〜5のいずれかに記載の壁構造体。
【請求項7】
補助部材2の前記切り欠き部は、壁構造体を形成したときに壁構造体の内部方向を向く部分を切り欠くように形成されている請求項6に記載の壁構造体。
【請求項8】
補助部材の前記切り欠き部は、壁構造体を形成したときにレンガ1と向かい合う面に形成されている請求項6に記載の壁構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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