説明

壁構造

【課題】フレーム材から表面板が剥離することにより不具合が生じることを防止できる壁構造を提供する。
【解決手段】壁パネル1が有するフレーム材3の一部及びこのフレーム材3の前面に貼り付けられた表面板4の一部を切除して壁開口部7が形成される。フレーム材3の切断端部301及びこの前方に配置された表面板4の切断端部40が挟み具8で挟まれたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁パネルで構成される壁に壁開口部が形成された壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室の壁パネルで構成される壁に埋込型の棚を設けるにあたって、棚を嵌め込むための壁開口部を壁パネルに形成した壁構造が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
ところで、壁パネルには、フレーム材を枠組みしてなる補強用のパネル枠の前面に表面板を貼付けたものがある。このような壁パネルによって構成された壁に前記壁開口部を形成するには表面板の一部を切除すればよいが、この切除部分の背面側にフレーム材が存在する場合にはこのフレーム材も表面板と共に切除する必要がある。
【0004】
しかし、このように表面板と共にフレーム材を切除した場合、切除時において壁開口部の縁部に大きな応力が加わる。このため、例えば前記棚を交換するにあたって壁開口部から既設の棚を取り外した際には、接着剤の経年劣化等もあいまって、図7のように表面板のフレーム材前方に位置する部分がフレーム材から剥離する恐れがある。なお、図7中符号3,4,7は、夫々、フレーム材、表面板、壁開口部である。このような表面板4の剥離が生じると棚の取付けに支障をきたし、また、壁パネルの構造上の強度も低下する。また棚を新設する場合でも、前記切除時の応力により表面板4がフレーム材3から剥離することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−104441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、フレーム材から表面板が剥離することにより不具合が生じることを防止できる壁構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明の壁構造は、壁パネルが有するフレーム材の一部及びこのフレーム材の前面に貼り付けられた表面板の一部を切除して壁開口部が形成され、前記フレーム材の切断端部及びこの前方に配置された前記表面板の切断端部が挟み具で挟まれたことを特徴とする。
【0008】
また、前記壁開口部は、隣接する二枚の壁パネルの各壁パネルが有する表面板の一部及び前記表面板の隣接する他方の壁パネル側の端縁に沿って配置されたフレーム材の一部を切除することで、前記隣接する二枚の壁パネルに亘って形成され、前記挟み具により、前記各壁パネルのフレーム材の切断端部及びこれらの前方に配置された前記各壁パネルの表面板の切断端部が挟まれることが好ましい。
【0009】
また、前記各壁パネルの隣接する他方の壁パネル側の端縁に沿って配置されたフレーム材同士が隣接して配置され、これら両フレーム材に前記挟み具が固定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にあっては、フレーム材から表面板が剥離することにより、不具合が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の壁開口部近傍の壁の側断面図である。
【図2】壁構造を示す正面図である。
【図3】壁開口部に棚を設置する様子を側断面で示した説明図である。
【図4】図1のA−A断面図である。
【図5】被取付部材を示し、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は底面図である。
【図6】スペーサーを示し、(a)は背面図、(b)は側面図である。
【図7】フレーム材から表面板が剥離した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。本実施形態の壁構造は浴室の壁に適用したものであって、図2に示されるように壁に形成された壁開口部7に既設の棚に代えて新設の棚9が設けられたものである。
【0013】
前記浴室を形成する浴室ユニットは壁を構成する壁パネル1を二枚備え、これら二枚の壁パネル1は図2に示すように左右に並べられた状態で、床パン(不図示)上に建て込まれている。そして、これら二枚の壁パネル1によって、浴槽及び洗い場の両者に隣接する浴室の一壁面が構成されている。
【0014】
なお、図2中左側の壁パネル1は浴槽側に配置され、図中右側の壁パネル1は洗い場側に配置されている。以下、特に区別する場合には、前記隣接する両壁パネル1のうち、浴槽側に配置される壁パネル1を浴槽側壁パネル1と記載し、洗い場側に配置される壁パネル1を洗い場側壁パネル1と記載する。
【0015】
両壁パネル1は洗い場側壁パネル1が浴槽側壁パネル1よりも左右幅が小さい点が異なるが、その他の構成は同じである。なお、本実施形態では両壁パネル1の左右幅が異なるが、両壁パネル1の左右幅は同一であってもよいものとする。
【0016】
各壁パネル1はパネル枠2の前面全域に接着剤を用いて上下に長い矩形状の表面板4を貼り付けたものであり、表面板4の背面におけるパネル枠2で囲まれた領域には石膏ボード10(図4参照)が貼り付けられている。
【0017】
図2に示されるように、パネル枠2は中空棒状のフレーム材3を枠組みして形成されている。パネル枠2は、フレーム材3として、表面板4の上下左右の端縁に沿って配置されて矩形枠状に連結される外フレーム30と、左右の外フレーム30の間に架け渡して設けられる二本の内フレーム31を備えている。なお、両壁パネル1の二本の内フレーム31は同レベルに位置している。
【0018】
各フレーム材3はリップ付き溝型鋼からなり、図4に示すように後方に開口した断面略C字に形成されている。なお、フレーム材3の断面形状はこれに限定されるものではなく、矩形枠状等であってもよい。
【0019】
図2に示されるように、前記二枚の壁パネル1で構成される壁の下部には、正面視横長矩形状で壁の厚み方向に貫通する壁開口部7が形成されている。この壁開口部7には壁埋込型の棚9(ニッチ)が前方から嵌め込まれ、この棚9は両壁パネル1に取り付けられている。
【0020】
壁開口部7は各壁パネル1の表面板4の一部及び同部後方に配置されたフレーム材3の一部を切除することで二枚の壁パネル1に亘って形成されている。
【0021】
具体的に壁開口部7は、浴槽側壁パネル1の左側の外フレーム30と、洗い場側壁パネル1の右側の外フレーム30と、両壁パネル1の上下の内フレーム31で囲まれた領域に形成されている。従って、壁開口部7の形成にあたっては、浴槽側壁パネル1の右側の外フレーム30及び洗い場側壁パネル1の左側の外フレーム30が切除される。以下、これら切除される外フレーム30を切除フレーム30と記載する。
【0022】
前記二本の切除フレーム30は図4に示すように左右に隣接して配置されている。図2に示されるように、各切除フレーム30の切除部300は上の内フレーム31よりも下方で且つ下の内フレーム31よりも上方に位置している。以下、各切除フレーム30における切除部300の下方部の上端部及び切除部300の上方部の下端部を夫々切断端部301,切断端部302と記載する。
【0023】
そして、両切除フレーム30の下側の切断端部301と、これら切断端部301の前方に配置される各壁パネル1の表面板4の切断端部40により、後述する挟み具8が取り付けられる下側の取付部6が構成されている。同様に、両切除フレーム30の上側の切断端部302と、これら切断端部302の前方に配置される各壁パネル1の表面板4の切断端部41により、別の挟み具8が取り付けられる上側の取付部6が構成されている。
【0024】
前記上下の取付部6には図1のように挟み具8が夫々取り付けられ、各挟み具8により対応する取付部6をなす表面板4及び切除フレーム30の夫々の部位が前後方向に挟まれている。
【0025】
両挟み具8の構成は同じである。挟み具8は下の取付部6には図1のように取り付けられ、上の取付部6には前記下の取付部6に取り付けられた挟み具8を上下に反転させた状態で取り付けられる。なお、以下の挟み具8の構成については、図1のように挟み具8を下の取付部6に取り付けた際の方向を基準とし、取付部6側を下方、壁開口部7側を上方として説明する。
【0026】
挟み具8は被取付部材80とスペーサー81で構成され、両者は金属板を折り曲げ加工して形成されている。
【0027】
被取付部材80は、図5に示されるように後板部800と、後板部800の両側端部から前方に突出した固着板部801と、後板部800の上端部から前方に突出した当接板部802と、当接板部802の前端部から下方に突出した引掛板部803で構成されている。
【0028】
両固着板部801は引掛板部803よりも下方に位置し、各固着板部801にはねじ挿通用の孔804が形成されている。両固着板部801と後板部800により、前方に開口する第一被嵌部805が形成されている。
【0029】
後板部800の上端部は下方部よりも左右幅が大きく、当接板部802は後板部800の上縁全長に亘り、引掛板部803は当接板部802の前縁全長に亘っている。これら後板部800の上端部、当接板部802、及び引掛板部803により、第一被嵌部805よりも左右幅が大きい下方に開口する第二被嵌部806が形成されている。
【0030】
スペーサー81は、図6に示されるように被挿入板部810と、被挿入板部810の下端部から後方に突出する操作片部811とで構成され、その左右幅は被取付部材80の両固着板部801間の距離よりも小さい。
【0031】
図1のように挟み具8を取付部6に取り付けるには例えば以下のように行われる。
【0032】
まず、被取付部材80の第一被嵌部805を取付部6の後部に被せると共に、第二被嵌部806を取付部6の壁開口部7側の端部に被せる。
【0033】
次に、取付部6の背面を構成する両切除フレーム30の背面とこれに対向する後板部800の間にスペーサー81の被挿入板部810を挿入する。この挿入は操作片部811をハンマーで打ち込む等して行われる。なお、図6(a)のように被挿入板部810の上端部は上側程左右幅が狭くなっており、これにより被挿入板部810は両切除フレーム30と後板部800の間に容易に挿入できるようになっている。
【0034】
上記により、被取付部材80の引掛板部803を取付部6の前面をなす両表面板4の前面に当接させ、当接板部802を取付部6の壁開口部7側の端面をなす両表面板4の切断端面及び両切除フレーム30の切断端面に当接させる。また、両固着板部801を取付部6の後部両側面をなす両切除フレーム30の側面に当接させる。さらに、後板部800をスペーサー81の被挿入板部810を介して取付部6の背面をなす両切除フレーム30の背面に当接させる。
【0035】
そして、この状態で、被取付部材80の各固着板部801の孔804にねじ5を通し、各ねじ5を対応する切除フレーム30に固着することにより、被取付部材80は両切除フレーム30に取り付けられる。また、これにより被取付部材80の後板部800と両切除フレーム30の間にスペーサー81の被挿入板部810が挟まれて固定され、スペーサー81の被挿入板部810が両切除フレーム30と後板部800の間から抜け出ることが防止される。
【0036】
このように挟み具8を取付部6に取り付けることで、各切除フレーム30の切断端部40,41及びこの前方に配置された各表面板4の切断端部40,41が被取付部材80の引掛板部803と後板部800の間にスペーサー81の被挿入板部810を介して挟まれる。
【0037】
図2に示すように前記挟み具8が取り付けられた壁開口部7には既設の棚に代えて新設の棚9が前方から嵌め込まれている。棚9は、正面視横長矩形状で前方に開口する箱状体90の内側に棚板部91を形成したものであり、箱状体90の浴槽側部分には浴槽に湯水を供給するための図示しない混合水栓が取り付けられる混合栓取付部95が設けられている。また、箱状体90の前開口の周縁部には外方に突出する鍔部93が周方向の全長に亘って形成されている。
【0038】
棚9を両壁パネル1に取り付けるには、図3に示すように箱状体90を壁開口部7に嵌め込む。そして、鍔部93の周方向の略全長に亘る背面を壁開口部7の周縁部に沿わせた状態で、下側の鍔部93に前方から通した複数のねじ94を対応する壁パネル1の表面板4にねじ込む。なお、図3では挟み具8の図示を省略している。
【0039】
また、図2のように棚9の箱状体90の奥部前面には鏡92が取り付けられている。
【0040】
以上説明した本実施形態の壁構造では、壁パネル1が有する切除フレーム30の一部及び切除フレーム30の前面に貼り付けられた表面板4の一部を切除して壁開口部7が形成されている。そして、切除フレーム30の切断端部301,302及びこの前方に配置された表面板4の切断端部40,41が挟み具8で挟まれている。このため、図7のように切除フレーム30の切断端部40,41から前方の表面板4が剥離した場合に、挟み具8により切除フレーム30の切断端部40,41の前面に表面板4を密着した状態とすることができる。このため、前記表面板4の剥離により、棚9を取り付ける場合に支障をきたすことがなく、また、壁パネル1の構造上の強度低下も防止できる。
【0041】
また、壁開口部7が、隣接する二枚の壁パネル1の各壁パネル1が有する表面板4の一部及び表面板4の隣接する他方の壁パネル1側の端縁に沿って配置された切除フレーム30の一部を切除することで、隣接する二枚の壁パネル1に亘って形成されている。そして、挟み具8により、各壁パネル1の切除フレーム30の切断端部301,302及びこれらの前方に配置された各壁パネル1の表面板4の切断端部40,41が挟まれている。このようにすると、壁開口部7を二枚の壁パネル1に亘って形成することができて、壁開口部7に取付けられる棚9の大きさや位置の自由度が増す。また、このように二枚の壁パネル1に亘って壁開口部7を形成したものにおいて、前記表面板4の剥離によって不具合が生じることを防止できる。
【0042】
また、本実施形態では、各壁パネル1の隣接する他方の壁パネル1側の端縁に沿って配置された切除フレーム材30同士が隣接して配置され、両切除フレーム材30に挟み具8が固定されている。この場合、挟み具8を強固に取り付けることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、壁開口部に棚9を嵌め込んで取り付けたが、壁開口部に嵌め込んで取り付けられる取付物としてはこれに限定されるものではなく、埋込型のキャビネット等であってもよい。また、壁開口部7を二枚の壁パネル1に亘って形成したが、壁開口部7は一枚の壁パネル1にのみ形成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 壁パネル
3 フレーム材
4 表面板
7 壁開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁パネルが有するフレーム材の一部及びこのフレーム材の前面に貼り付けられた表面板の一部を切除して壁開口部が形成され、前記フレーム材の切断端部及びこの前方に配置された前記表面板の切断端部が挟み具で挟まれたことを特徴とする壁構造。
【請求項2】
前記壁開口部は、隣接する二枚の壁パネルの各壁パネルが有する表面板の一部及び前記表面板の隣接する他方の壁パネル側の端縁に沿って配置されたフレーム材の一部を切除することで、前記隣接する二枚の壁パネルに亘って形成され、前記挟み具により、前記各壁パネルのフレーム材の切断端部及びこれらの前方に配置された前記各壁パネルの表面板の切断端部が挟まれたことを特徴とする請求項1に記載の壁構造。
【請求項3】
前記各壁パネルの隣接する他方の壁パネル側の端縁に沿って配置されたフレーム材同士が隣接して配置され、これら両フレーム材に前記挟み具が固定されたことを特徴とする請求項2に記載の壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−112150(P2012−112150A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260889(P2010−260889)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】