説明

壁面装着体用固定状態切替えシステム

【課題】吸磁力を利用して壁面装着体を壁面に強固に固定したり移動可能状態に切替えることができ、また、壁面に対する装着位置を自由に選択できたり、装着位置を簡単に移動させることができ、また、壁面も全く損傷させることがない壁面装着体用固定状態切替えシステムを提供すること。
【解決手段】壁面装着体3の壁面1に対する装着状態を固定または移動可能に切替える壁面装着体用固定状態切替えシステムにおいて、前記壁面1に強磁性体部材2を設置し、吸磁力の大きさを変化させて前記強磁性体部材2の表面に着脱自在に取付けられる磁力固定部材5を前記壁面装着体3に対して別体または一体に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は壁面装着体用固定状態切替システムに係り、特に壁面装着体の壁面に対する固定状態を切替えるのに好適な壁面装着体用固定状態切替えシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において壁面装着体としては、壁面に取付けられるものを意味する。従来から壁面装着体としては、例えば、薄型の壁掛けテレビや、一輪挿し用の花瓶、絵画等の装飾品や、姿見用の鏡、箪笥等の家具や、店舗若しくはイベント会場における展示品が知られている。
【0003】
このような壁面装着体を壁面に取付けるためには、壁面にフック等の吊下げ手段を釘、止めねじ、ボルト・ナット、接着等の固定手段によって固着し、その吊下げ手段に壁面装着体を吊下げて装着している(例えば、特許文献1、図3参照)。
【0004】
また、箪笥等の床に設置される家具等については、箪笥の上面と天井面との間に棒状の転倒防止具を展張する(例えば、特許文献2参照)とともに、箪笥と壁面との間を固定ステー等の連結手段によって連結固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−263116号公報
【特許文献2】特開平08−252139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の壁面装着体においては、フック等の吊下げ手段や固定ステー等の連結手段を壁面に固定する場合に、壁面に穴を開けたり接着剤を塗布するために壁面が傷つき、模様替え等のために壁面装着体の装着位置を変えると、その傷が露出して壁面の美観を損ねるという不都合があった。
【0007】
また、釘や止めねじを用いる場合には、壁面の素材が薄かったり石膏ボードのように剛性が低い場合には、壁面の奥側に補強板等がある位置にしか装着できないこととなり、装着位置を自由に設定することができないという不都合があった。
【0008】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、吸磁力を利用して壁面装着体を壁面に強固に固定したり移動可能状態に切替えることができ、また、壁面に対する装着位置を自由に選択できたり、装着位置を簡単に移動させることができ、また、壁面も全く損傷させることがない壁面装着体用固定状態切替えシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の第1の態様の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、壁面装着体の壁面に対する装着状態を固定または移動可能に切替える壁面装着体用固定状態切替えシステムにおいて、前記壁面に強磁性体部材を設置し、吸磁力の大きさを変化させて前記強磁性体部材の表面に着脱自在に取付けられる磁力固定部材を前記壁面装着体に対して別体または一体に設けたことを特徴とする。
【0010】
このような構成の本発明によれば、壁面を形成する強磁性体部材に磁力固定部材の吸磁力を変化させて着脱させることにより壁面装着体の壁面に対する装着状態を固定または移動可能に切替えることができる。また、磁力固定部材の吸磁力をもって壁面を形成する強磁性体部材に強固に固定することができるので、壁面装着体を簡単かつ確実に壁面に装着することができる。また、磁力固定部材の吸磁力を弱く変化させることにより壁面装着体を壁面に対して移動自在とさせることができ、装着位置の移動も容易に行うことができる。また、壁面に対して従来のような損傷を与えることを確実に防止することができる。
【0011】
また、本発明の第2の態様の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、前記強磁性体部材が薄鋼板により形成されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成の本発明によれば、強磁性体部材が薄鋼板であるために、壁面に設置容易であり、しかも既設の壁面にも簡単に設置することができる。
【0013】
また、本発明の第3の態様の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、前記磁力固定部材が吸磁力を有する永久磁石と、前記永久磁石による吸磁力を変更させる吸磁力変更部材とを有する。
【0014】
このような構成の本発明によれば、吸磁力変更部材を操作することにより永久磁石による吸磁力を変更させることができ、壁面を形成する強磁性体部材に対して磁力固定部材を容易に着脱させることができ、作業時間を短縮させることができる。
【0015】
また、本発明の第4の態様の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、前記壁面装着体が別体の前記壁面装着体に着脱自在に取付られるように形成されていることを特徴とする。
【0016】
このような構成の本発明によれば、壁面装着体と別体の磁力固定部材に壁面装着体を着脱自在に取付けることにより壁面に対して装着したり取り外すことができる。これにより既存の壁面装着体に全く手を加えることなく本発明を適用することができ、汎用性に優れたものとなる。具体的には、壁面装着体と別体の磁力固定部材の吸磁力を変化させて壁面を形成する強磁性体部材に着脱させることにより、磁力固定部材ひいては壁面装着体の壁面に対する装着状態を固定または移動可能に切替えることができる。また、磁力固定部材の吸磁力をもって壁面を形成する強磁性体部材に強固に固定することができるので、壁面装着体の落下も確実に防止することができる。また、磁力固定部材の吸磁力を弱く変化させることにより壁面装着体を壁面に対して移動自在とさせることができ、移動も容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明の第5の態様の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、前記壁面装着体が床に設置されるとともに一体に設けられている磁力固定部材により壁面に固着されるように形成されていることを特徴とする。
【0018】
このような構成の本発明によれば、壁面装着体に一体に設けられている磁力固定部材をもって壁面装着体の壁面に対する装着状態を装着状態を固定または移動可能に切替えることができる。その装着状態を固定とすることにより壁面装着体の転倒を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸磁力を利用して壁面装着体を壁面に強固に固定したり移動可能状態に切替えることができ、また、壁面に対する装着位置を自由に選択できたり、装着位置を簡単に移動させることができ、また、壁面も全く損傷させることがない壁面装着体用固定状態切替えシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の壁面装着体用固定状態切替えシステムの第1実施形態を示す斜視図
【図2】図1の一部縦断拡大側面図
【図3】本発明の壁面装着体用固定状態切替えシステムの第2実施形態を示す図2と同様の一部縦断拡大正面図
【図4】本発明の壁面装着体用固定状態切替えシステムの第3実施形態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図1から図4について、詳細に説明する。
【0022】
図1および図2は本発明の壁面装着体用固定状態切替えシステムの第1実施形態を示す。
【0023】
本実施形態の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、壁面1に対して壁面装着体3として薄型の壁掛けテレビ4を設置する例を示している。この壁掛けテレビ4は壁面1に対する装着状態を固定または移動可能に切替え自在に形成されている。
【0024】
更に説明すると、壁面1の表面側の全面に強磁性体部材としての薄鋼板2が接着若しくは鋲止め等の固着方法によって壁面1と一体となるように形成されている。薄鋼板2の表面には後述する磁力固定部材5の吸磁力を阻害しない程度の壁面を装飾する樹脂層(有機樹脂、有機樹脂フィルム、無機物、あるいはこれらを組み合わせたもの)、印刷層等の被覆等が施されていてもよい。薄鋼板2の板厚については、50μm〜1000μmの範囲から壁掛けテレビ4の重量、吸磁力の大きさ等に応じて選択するとよい。また、薄鋼板2の設置領域は壁面1の全体とする他に、予め設計された磁力固定部材5の位置変更位置に合わせた壁面1の一部分としても良い。更に、薄鋼板2に代えて壁面1を形成する柱や梁材等の鋼材としても良い。
【0025】
本実施形態の壁掛けテレビ4は、別体に形成されている磁力固定部材5により壁面1に装着されるように形成されている。この磁力固定部材5は吸磁力の大きさを変化させて強磁性体部材である薄鋼板2に着脱自在に取付けられるように形成されている。この磁力固定部材5としては、例えば特開2000−114032号公報等に開始されている公知の構成の装置を用いるとよい。具体的には、磁力固定部材5の外ケース6の内部に永久磁石7が内蔵されており、レバー8aをもって回転させられて永久磁石7による吸磁力をオン・オフに変更させる吸磁力変更部材8を主たる構成要素として形成されているとよい。その吸磁力の大きさは、壁掛けテレビ4を平常時や地震時に壁面2より落下しない大きさに設定するとよい。磁力固定部材5の外ケース6の正面にはフック9が突設されており、壁掛けテレビ4の上部に形成されている吊下げ具4aを掛けて壁掛けテレビ4を吊下げるようにされている。
【0026】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0027】
本実施形態の壁面装着体用固定状態切替えシステムにおいて壁面装着体3としての壁掛けテレビ4を設置するには、予め床に強磁性体部材である薄鋼板2を壁面1を形成する部材として固着させておく。強磁性体部材が薄鋼板2であるために、壁面1に設置容易であり、しかも既設の壁面にも簡単に設置することができる。
【0028】
そして、本実施形態の壁掛けテレビ4を壁面1に設置するには、設置位置に磁力固定部材5を定位させ、その後に磁力固定部材5の吸磁力変更部材8のレバー8aをオフからオンに切り換えて永久磁石7の吸磁力を最大に変更して磁力固定部材5を薄鋼板2に吸磁力によって固着させる。本実施形態においては2個の磁力固定部材5を固定させる。この場合、2個の磁力固定部材5で壁掛けテレビ4を固定させたが、これ以上の数の磁力固定部材5で壁掛けテレビ4を固定しても良く、適宜磁力固定部材5の数を決めればよい。
次に、壁掛けテレビ4の各吊下げ具4aを各磁力固定部材5の各フック9に掛けて壁掛けテレビ4を吊下げる。このように磁力固定部材5の吸磁力をもって壁面1を形成する強磁性体部材である薄鋼板2に磁力固定部材5を強固に固定することができ、その磁力固定部材5に壁掛けテレビ4を吊下げて壁面1に装着することができるので、壁面装着体3である壁掛けテレビ4を簡単かつ確実に壁面1に装着することができる。また、壁面1に対して磁力固定部材5を吸磁力をもって固着するので、壁面1に対して従来のような損傷を与えることを確実に防止することができる。
【0029】
また、部屋や展示状態の模様替え等の目的に応じて壁掛けテレビ4の装着位置を変える場合には、壁掛けテレビ4を磁力固定部材5から取り外した後に、吸磁力変更部材8のレバー8aをオンからオフに切り換えて永久磁石7の吸磁力を最小に変更して、磁力固定部材5を新しい装着場所に移動させて前記と同様の装着作業によって再装着する。このように磁力固定部材5の吸磁力を弱く変化させることにより壁面装着体である壁掛けテレビ4を壁面1に対して移動自在とさせることができ、移動も容易に行うことができる。
【0030】
本実施形態の壁面装着体用固定状態切替えシステムによれば、壁面1を形成する強磁性体部材の薄鋼板2に磁力固定部材5の吸磁力を変化させて着脱させることにより壁面装着体3である壁掛けテレビ4の壁面1に対する装着状態を固定または移動可能に容易に切替えることができる。
【0031】
また、吸磁力変更部材8を操作することにより永久磁石7による吸磁力を変化させることができ、壁面1を形成する強磁性体部材である薄鋼板2に対して磁力固定部材5を容易に着脱させることができ、作業時間を短縮させることができる。
【0032】
壁掛けテレビ4に設けられている既設の吊下げ具4aに対応して磁力固定部材5のフック9の形状等を設定することにより、既存の壁面装着体3である壁掛けテレビ4に全く手を加えることなく本発明を適用することができ、汎用性に優れたものとなる。
【0033】
次に、本発明の第2実施形態を図3により説明する。
【0034】
本実施形態の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、壁面装着体3として実施形態1の壁掛けテレビ4に代えて一輪挿し等の花瓶10を用いたものである。この花瓶10の壁面1側には強磁性体である鋼板11が固着されており、この鋼板11を磁力固定部材5に対して吸磁力をもって装着するようにしている。その他の構成は第1実施形態と同一であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0035】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0036】
本実施形態においては、磁力固定部材5の吸磁力変更部材8のレバー8aをオン・オフ切り換えて永久磁石7の吸磁力を最大・最小に変更して、花瓶10と磁力固定部材5とを同時に薄鋼板2に吸着・非吸着とさせて、花瓶10の壁面1に対する装着状態を固定または移動可能に容易に切替える。
【0037】
前記永久磁石7および吸磁力変更部材8の組合せは、磁力固定部材5を薄鋼板2に吸磁着させる組と、花瓶10を磁力固定部材5に吸磁着させる組と別々に設けて、それぞれの吸磁着を別工程で実行できるように形成してもよい。
【0038】
次に、本発明の第3実施形態を図4により説明する。
【0039】
本実施形態の壁面装着体用固定状態切替えシステムは、壁面装着体3として実施形態1の壁掛けテレビ4に代えて床12に設置される箪笥13を壁面1に固定状態にして装着する場合を示したものである。
【0040】
具体的には、箪笥13の壁面1および薄鋼板2に対面する部分である裏面上部に磁力固定部材5を一体に設けて形成したものである。その他の構成は第1実施形態と同一であり、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0042】
本実施形態の箪笥13を壁面1に固定するには、箪笥13を床12の所望の設置位置に定位させるとともに裏面を薄鋼板2に密着させる。次に、磁力固定部材5の吸磁力変更部材8のレバー8aをオフからオンに切り換えて永久磁石7の吸磁力を最大に変更して磁力固定部材5を薄鋼板2に吸磁力によって固着させる。これにより磁力固定部材5の吸磁力をもって壁面1を形成する強磁性体部材である薄鋼板2に磁力固定部材5を強固に固定することができ、その磁力固定部材5と箪笥13とが一体であるので、壁面装着体3である箪笥13を簡単かつ確実に壁面1に固定状態に装着することができる。これにより箪笥13の転倒を確実に防止することができる。
【0043】
また、部屋や展示状態の模様替え等の目的に応じて箪笥13の装着位置を変える場合には、吸磁力変更部材8のレバー8aをオンからオフに切り換えて永久磁石7の吸磁力を最小に変更して、箪笥13を新しい装着場所に移動させて前記と同様の装着作業によって再装着する。このように磁力固定部材5の吸磁力を弱く変化させることにより壁面装着体である箪笥13を壁面1に対して移動自在とさせることができ、移動も容易に行うことができる。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態のみに限定されるものではなく、必要に応じて変更することができるものである。例えば、壁面1をアート壁面とし、アート素材を前記第1実施形態または第2実施形態のようにして壁面1に着脱させてアートを作成してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 壁面
2 薄鋼板
3 壁面装着体
4 壁掛けテレビ
5 磁力固定部材
7 永久磁石
8 吸磁力変更部材
10 花瓶
13 箪笥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面装着体の壁面に対する装着状態を固定または移動可能に切替える壁面装着体用固定状態切替えシステムにおいて、前記壁面に強磁性体部材を設置し、吸磁力の大きさを変化させて前記強磁性体部材の表面に着脱自在に取付けられる磁力固定部材を前記壁面装着体に対して別体または一体に設けたことを特徴とする壁面装着体用固定状態切替えシステム。
【請求項2】
前記強磁性体部材は、薄鋼板により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の壁面装着体用固定状態切替えシステム。
【請求項3】
前記磁力固定部材は、吸磁力を有する永久磁石と、前記永久磁石による吸磁力を変更させる吸磁力変更部材とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の壁面装着体用固定状態切替えシステム。
【請求項4】
前記壁面装着体は、別体の前記壁面装着体に着脱自在に取付られるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の壁面装着体用固定状態切替えシステム。
【請求項5】
前記壁面装着体は、床に設置されるとともに一体に設けられている磁力固定部材により壁面に固着されるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の壁面装着体用固定状態切替えシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−172635(P2011−172635A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37143(P2010−37143)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(396026570)株式会社栄住産業 (21)
【出願人】(510029542)鋼鈑商事株式会社 (6)
【Fターム(参考)】