説明

変位検知装置とこれを利用した配管の変位検知方法

【課題】長尺状構造物における長手方向の広い範囲を検知領域にできる、設置が容易な変位検知装置を提供する。
【解決手段】配管1の表面に、溶接熱影響部2を挟んで互いに平行に配される左右のパルス波伝送ラインからなるセンサ部10と、各伝送ラインの一端からそれぞれ電気パルス波を入射し、その反射波を検知するETDR11と、センサ部10のインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置12とを有する。左右の波伝送ラインは、配管1の表面に接着される長尺状の誘電板材16と、誘電板材16上にライン状に積層される金属電極17とを有し、クロストークが生じる間隔で配されている。そして、配管1が周方向に変位したとき、これに伴い両伝送ライン間の距離が変化することで電界分布が変化して、インピーダンス変化として検知されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管などの長尺状の構造物に作用する変位を検知する変位検知装置と、これを利用した配管の変位検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物に作用する力によって当該構造物の破損を検知診断する変位検知装置(歪検知装置)が開発されている。例えば特許文献1は、火力発電所におけるタービンや配管など、熱影響を受けやすい構造物の変位(歪)を検知する変位検知装置であって、筒状に構成された第1の電極と、この第1の電極の内側へ進退可能な第2の電極となる金属棒が、絶縁支持体によって配管などの構造物表面に設けられている。構造物の表面が伸縮すると、これに応じて金属棒が円筒電極内を進退移動することで、円筒電極と金属棒とからなるコンデンサの静電容量が変化するよう構成されている。この静電容量を検知することで、構造物の変位が検知される。
【0003】
また、構造物のほかに地盤の変位を検知する変位検知装置として、特許文献2がある。特許文献2では、長手方向の圧縮又は引張りにより光伝送損失を生じる光ファイバと、当該光ファイバに光信号を入射し、その反射信号を検知する光学的時間領域反射装置(Optical Time Domain Reflectometry:OTDR)と、当該光学的時間領域反射装置からの検知信号を演算処理する演算処理装置とを有し、光ファイバによる光学的時間領域反射測定法を利用して地盤等の変位を検知している。光ファイバは、中心部材の外周に沿って並設された複数本の光ファイバ素線と、該光ファイバ素線を覆う樹脂製の保護被膜とを有する。そして、光ファイバに外力が作用したときの後方散乱光の変化によって地盤等の変位を検知している。
【0004】
ところで、高い安全性が要求される構造物として、例えば火力発電所などにおいて縦横に配されている金属配管などが挙げられる。当該金属配管は、製造工程上、周壁の一部を溶接する必要がある。溶接方法としては、長手方向に溶接継手を配して長手方向に沿って溶接する長手溶接と、周方向に溶接継手を配して周方向に沿って溶接する周溶接とがある。このような金属配管内を高温・高圧流体が流動すると、配管のクリープ変形により溶接部における局所的な変形が優先的に進行する場合があり、そこが破壊の起点となって配管に亀裂が生じる危険性が危惧されている。火力発電所においては、600℃を超える高温流体が30Mpa程度の高圧で流動することもある。この場合、長手溶接継手に作用する応力の方が周溶接継手に作用する応力よりも大きいため、長手溶接部が周溶接部より先に損傷し易い。そのため、高温・高圧流体が流動する金属配管においては、長手方向に沿ってライン状に延びる溶接部の局所変形を亀裂が発生する前に初期段階で捉えて、溶接部のどの部位において変位が生じているかを検知できるセンシング技術が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−315853号公報
【特許文献2】特開平2−242119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、構造物の変位に伴い円筒電極内を金属棒が進退する構成とすることで、変位を検知できる範囲の拡大を図っている。しかし、円筒電極と金属棒が重なっている長さ範囲でしか検知できないので、検知範囲には限界がある。これでは、長尺状の構造物における長手方向全体を検知範囲とすることは不可能である。例えば、金属性配管の長手溶接部の周方向への変位を検知したくても、特許文献1の変位検知装置では、金属棒の進退方向を長手方向へ向けたところで、円筒形の第1電極及び金属棒を配管と同等の長さにすることはできないばかりか、そもそも長手方向に沿ってライン状に延びる溶接部の周方向への変位は検知できない。一方、金属棒の進退方向を周方向へ向けた場合、長手方向に沿ってライン状に延びる溶接部の一部における周方向への変位を検知できるに過ぎない。したがって、長手方向の両端に亘る範囲において周方向の変位を検知するには、変位検知装置を長手方向に複数個並設するしかない。これでは、装置の設置が煩雑であると共に、各装置間の変位は検知できないので、検知精度に欠ける。このような問題は、長尺な構造物において、長手方向両端に亘って長手方向と直交する方向の変位を検知する場合でも同様である。
【0007】
一方、特許文献2では、光ファイバを用いていることで長尺状構造物の長手方向の両端に亘って配すことはできる。しかし、長手方向への圧縮又は引張りにより光伝送損失を生じる構成なので、長手方向と直交する方向の変位は検知できない。また、光ファイバに作用する外力に起因して変位を検知する構成なので、単に構造物の表面に配しただけでは、構造物が膨張・収縮する内部応力による変位は検知できない。構造物の内部に埋設すれば検知し得るが、構造物の製造や装置の設置が困難となる。さらに、光ファイバは樹脂製の被膜が必要であり耐熱性を有しないので、高温の熱影響を受ける構造物の変位検知には使用できない。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、長尺状構造物における長手方向の広い範囲に亘って長手方向と直交する方向への変位を検知できる、設置が容易な変位検知装置と、これを利用した配管の変位検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、長尺状構造物の、主として内部応力に基づく変位(歪)を検知する変位検知装置である。もちろん、外部から作用する力による変位(歪)も検知できる。本発明によって提案される変位検知装置には、大きく分けてクロストークによる電界分布の変化を利用した第1の構成と、コンデンサ静電容量の変化を利用した第2の構成との2つがある。第1の構成の変位検知装置は、前記長尺状構造物の表面に、該長尺状構造物の長手方向に沿って互いに平行に配される左右2本のパルス波伝送ラインと、前記2本のパルス波伝送ラインの一端からそれぞれ電気パルス波を入射し、その反射波を検知する電気的時間領域反射装置(Electrical Time Domain Reflectometer、以下、ETDRと略称することがある)と、前記電気的時間領域反射装置によって検知された検知信号から、前記パルス波伝送ラインのインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置とを有する。ETDRは、電子回路で間欠的に発信した電気的なパルス波を伝送ラインに入射して伝播させ、伝送ライン上の反射波を受信する装置である。そして、インピーダンス計測装置によって測定対象のインピーダンス分布(入射端からの距離とインピーダンスの関係)を測定する。そして、この伝送ラインに何らかの外的な要因が作用してその電気的性質(分布定数回路の回路定数)が変化すると、このインピーダンス分布にその変化が現れることを利用している。一般的には、ETDRにインピーダンス計測装置(機能)が組み込まれている。
【0010】
前記2本のパルス波伝送ラインは、電気パルス波が入射された際に、互いに電磁気的な相互作用が生じ得る間隔、すなわち互いの電界が結合したクロストークが生じる間隔で配されている。2本のパルス波伝送ラインには、同じタイミングで電気パルス波が入射される。通常、1本の伝送ラインに通電されると、これに基づき等電位線や電気力線が当該伝送ラインを起点として発生した電界分布となる。2本の伝送ラインに通電した場合も、当該2本の伝送ライン同士が十分に離れていれば、図8に示すように、各ラインにおける電界分布は互いに影響を受けず、それぞれ単独のラインに通電した場合と変わらない。したがって、この場合のトータルインピーダンスは、各ラインにおけるインピーダンスZの合成(Z2/2Z)となる。これに対し、2本の伝送ライン同士の距離が近いと、電磁気的な相互作用によって図9に示すように各電気力線が変化すると共に、等電位線が結合された電界分布となる。この現象がクロストークである。このようにクロストークが生じている場合のトータルインピーダンスは、上記クロストークが生じていない単独インピーダンスの合成値よりも高くなる。構造物に力が作用していない初期状態において、両パルス波伝送ラインの間に一定の距離を設けておけば、その後に構造物に作用するの引張歪と圧縮歪とを検知できる。構造物に引張応力しか作用しない場合は、初期状態では両パルス波伝送ライン同士を当接させておいても構わない。
【0011】
そして、前記長尺状構造物が、これの長手方向と直交する方向へ変位したとき、これに伴い前記2本のパルス波伝送ライン間の距離が変化することでクロストークによる電界分布が変化して、インピーダンス変化として検知されることを特徴とする。すなわち、2本の伝送ラインにおけるインピーダンスは、当該平行に配された2本の伝送ライン同士の距離に依存する。具体的には、2本の伝送ライン同士の距離が初期距離よりも大きくなればインピーダンスが下がり、2本の伝送ライン同士の初期距離よりも小さくなればインピーダンスが上がる特性を有する。当該インピーダンス変化により、長尺状構造物の変位を検知診断することができる。
【0012】
パルス波伝送ラインに電気パルス波を入射してそのインピーダンス分布を計測するには、当該パルス波伝送ラインが上部電極と下部電極との間に誘電層を有するマイクロストリップ路線を構成する必要がある。これを前提として、前記長尺状構造物が導電性を有する場合は、前記パルス波伝送ラインは、前記長尺状構造物を下部電極として、該長尺状構造物の表面に接着剤によって接着される長尺状の誘電板材と、前記誘電板材上に、該誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される金属電極とによって構成することができる。ここでの接着剤は、導電性、非導電性のいずれでもよい。または、前記パルス波伝送ラインを、前記長尺状構造物の表面に接着剤によって接着される長尺状の誘電板材と、前記誘電板材の上面及び下面に、該誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される上下の金属電極とによって構成することもできる。後者の場合は、構造物が導電性であると非導電性であるとを問わない。また、後者の場合も、接着剤は導電性、非導電性のいずれでもよいが、金属系の導電性接着剤を使用して、当該接着剤を下部電極として兼用することもできる。前者及び後者の構成とすれば、誘電板材の長さが、構造物の変位を検知できる範囲となる。したがって、誘電板材の長さは特に限定されないが、できるだけ長いことが好ましい。最も好ましくは、検知対象である長尺状構造物の長さ方向両端に亘る長さとする。なお、前記パルス波伝送ライン(金属電極や誘電層)は、構造物の表面に溶射するなど厚膜形成によって設けることもできる。
【0013】
第2の構成の変位検知装置は、前記長尺状構造物の表面に、該長尺状構造物の長手方向に沿って配される1本のパルス波伝送ラインと、前記パルス波伝送ラインの一端から電気パルス波を入射し、その反射波を検知する電気的時間領域反射装置と、前記電気的時間領域反射装置によって検知された検知信号から、前記パルス波伝送ラインのインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置とを有する。前記パルス波伝送ラインは、それぞれ前記長尺状構造物の表面に接着剤によって接着され、前記長尺状構造物の長手方向に沿って平行に対向配置される左右2つの長尺状の誘電板材を含む。両誘電板材の対向面同士は、上下に重なることができるよう互いに平行な傾斜面となっている。そのうえで、前記パルス波伝送ラインは、前記左右2つの誘電板材と、各誘電板材の傾斜面の裏面に、それぞれ誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される上下の金属電極とからなる。そして、前記長尺状構造物が、これの長手方向と直交する方向へ変位したとき、これに伴い前記2つの誘電板材の傾斜面間の距離が変化することでコンデンサ静電容量(キャパシタンス)が変化して、インピーダンス変化として検知されることを特徴とする。なお、前記金属電極は、それぞれ前記誘電板材の傾斜面の幅以上の幅を有することが好ましい。
【0014】
長尺状構造物としては、幅若しくは径方向寸法に対して長さ方向の寸法が十分に大きいものであれば特に限定されず、板状、筒状、柱状のいずれの構造物に対しても適用できる。中でも、上記第1又は第2の構成の変位検知装置を、前記長尺状構造物として円筒形の金属製配管に設置する場合であって、さらに前記配管の周壁の一部に、長手方向(長さ方向)に沿うライン状の溶接部を有する場合、配管には前記溶接部に沿い溶接加工時の熱の影響により前記配管が変性した溶接熱影響部が生じている。そこで、前記2本のパルス波伝送ライン又は2つの誘電板材を、前記配管の溶接熱影響部を挟んで対向配置することが好ましい。
【0015】
構造物が熱による影響を受けない場合(外力により変位する場合)であれば、前記誘電板材は誘電層となり得る素材であれば特に限定されず、合成樹脂等の高分子化合物によって成形することもできる。しかし、例えば火力発電所の配管など、構造物が熱の影響を受ける場合(内部応力により変位する場合)は、誘電率の温度依存性が小さく、且つ耐熱性の高いセラミックスとすることが好ましい。また、接着剤も、構造物が熱による影響を受けない場合であれば合成樹脂系の接着剤を使用できるが、構造物が熱の影響を受ける場合は、当該熱によって誘電板材が剥離しないようなセラミックス系もしくは金属系の接着剤を使用することが好ましい。前記パルス波伝送ラインにおけるインピーダンス変化は、該パルス波伝送ラインの入射端からの距離の関数として検出される。
【0016】
このような変位検知装置を使用すれば、電気的時間領域反射法(Electrical Time Domain Reflectometry)によって円筒形金属配管の周方向に作用する力による変位を検知する、次のような配管の変位検知方法を提案することができる。第1に、前記配管の表面に、互いの電界が結合したクロストークが生じる間隔で、前記配管の長手方向に沿って互いに平行に配した左右2本のパルス波伝送ラインの一端から、電気的時間領域反射装置によってそれぞれ電気パルス波を入射し、その反射波からインピーダンス計測装置によってパルス波伝送ラインのインピーダンスを計測して、前記配管における周方向の変位を、これに伴う前記2本のパルス波伝送ライン間の距離の変化による電界分布の変化に基づくインピーダンス変化として検知することを特徴とする方法である。
【0017】
第2に、前記配管の表面に、該配管の長手方向に沿って平行に対向配置され、互いに平行な傾斜面とされた対向面同士が上下に重なりあう左右2つの誘電板材と、各誘電板材の傾斜面の裏面に、それぞれ誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される上下の金属電極とによってコンデンサを形成する1本のパルス波伝送ラインの一端から、電気的時間領域反射装置によって電気パルス波を入射し、その反射波からインピーダンス計測装置によってパルス波伝送ラインのインピーダンスを計測して、前記配管における周方向の変位を、これに伴う前記2つの誘電板材の傾斜面間の距離の変化による静電容量変化に基づくインピーダンス変化として検知することを特徴とする方法である。
【0018】
これらの方法においても、前記配管の周壁の一部に、長手方向に沿うライン状の溶接部を有する場合は、前記2本のパルス波伝送ライン又は2つの誘電板材を、溶接加工時の熱の影響により前記配管が変性した溶接部に沿う溶接熱影響部を挟んで対向配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、電気的時間領域反射法を利用して構造物の変位(歪)をインピーダンス変化として検知できる画期的な発明である。すなわち、長尺状構造物の長手方向に沿って平行に配した2本のパルス波伝送ライン間(正確には各パルス波伝送ラインの誘電板材間)の距離が変化することで、長尺状構造物の長手方向と直交する方向への変位を検知できる。したがって、各パルス波伝送ラインの長さがそのまま変位検知範囲となるので、幅方向ないし周方向の変位を長手方向の広い範囲で確実に検知できる。しかも、パルス波伝送ラインにおけるインピーダンス変化が該パルス波伝送ラインの入射端からの距離の関数として検出されるので、長手方向の変位位置と周方向の変位量との関係を分布状態で検知することができる。このとき、2本のパルス波伝送ラインを構造物の表面に設置するだけでよいので、検知装置の設置ないしこれを備える構造物の製造が容易である。
【0020】
電界分布の変化に起因したインピーダンス変化を検知する場合、構造物に変位が生じていない初期状態において、2本のパルス波伝送ラインをクロストークが生じない間隔で配していれば、クロストークが生じる範囲にまで構造物が変位しなければ、変位を検知できない。これに対し、本発明のように初期状態において2本のパルス波伝送ラインをクロストークが生じる間隔で配していれば、2本のパルス波伝送ライン間の距離変化に伴って確実にインピーダンスが変化するので、構造物の変位を確実に検知できる。
【0021】
パルス波伝送ラインは、溶射等によって設けることもできる。しかし、この場合、種々の表面形状をもつ構造物への設置には有利であるが、誘電層の独立した形状設計は困難である。これに対し、誘電層となるバルク板材(誘電板材)を接着する手法によれば、誘電層の独立した形状設計が容易であり実用性が高い。特に、傾斜面を設ける場合に有利である。このとき、金属電極を誘電板材の長手方向両端に亘って形成しておくことで、誘電板材の長さを検知可能範囲にできる。構造物が導電性を有する場合に、当該構造物を下部電極として利用すれば、誘電層に上部電極のみを積層するだけでよいので、製造が楽であると共に下部電極の積層に必要なコストも削減できる。一方、誘電板材の下面にも金属電極を設けておけば、非導電性の構造物にも適用できる。
【0022】
コンデンサ静電容量(キャパシタンス)の変化に起因したインピーダンス変化を検知する場合、2つの誘電板材の互いに平行な傾斜面同士が上下に重なる状態で設置しておけば、2つの誘電板材同士の距離が長手方向と直行する方向へ変化することで、傾斜面同士の間に上下方向(電極間の厚み方向)の距離を変化させられる。これにより、上下の金属電極で挟まれたコンデンサにおいて空気層の厚みが増減することで、構造物の変位に基づきキャパシタンスが変動する。このとき、金属電極が傾斜面の幅以上の幅で積層されていれば、傾斜面全体をキャパシタンス変化に利用できる。
【0023】
周壁の一部にライン状の溶接部を有する配管において、溶接熱影響部を挟んで2本のパルス波伝送ライン又は2つの誘電板材を対向配置しておけば、他の部位に優先して破損し易い溶接熱影響部における周方向の変位を、長手方向の広い範囲に亘って的確に検知できる。このとき、誘電板材をセラミックスとし、接着剤がセラミックス系又は金属系の接着剤であれば、耐熱性が良好なので、高温流体が通過する配管など、高温条件に曝される構造物の変位も検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の変位検知装置を設置した配管の斜視図である。
【図2】実施例1の変位検知装置を設置した配管の要部拡大断面図である。
【図3】実施例1の変位検知装置において、ライン間隔変化に伴う伝送ラインのインピーダンス変化率を示すグラフである。
【図4】実施例1の変位検知装置において、伝送ライン上の特定部位におけるライン間隔とインピーダンス変化率との関係を示すグラフである。
【図5】実施例2の変位検知装置を設置した配管の要部拡大断面図である。
【図6】実施例2の変位検知装置において、ライン間隔変化に伴う伝送ラインのインピーダンス変化率を示すグラフである。
【図7】実施例2の変位検知装置において、伝送ライン上の特定部位におけるライン間隔とインピーダンス変化率との関係を示すグラフである。
【図8】クロストークが生じていない状態の電界分布を示す模式図である。
【図9】クロストークが生じている状態の電界分布を示す模式図である。
【図10】実施例3の変位検知装置を設置した配管の要部拡大断面図である。
【図11】実施例3の変位検知装置におけるコンデンサの模式図である。
【図12】実施例3の変位検知装置において、ライン間隔変化に伴う伝送ラインのインピーダンス変化率を示すグラフである。
【図13】実施例3の変位検知装置において、伝送ライン上の特定部位におけるライン間隔とインピーダンス変化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、図面を参照しながら本発明に係る変位検知装置の実施の形態について説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。本発明の変位検知装置は、長尺状構造物の変位検知用として好適である。長尺状構造物としては、幅若しくは径方向寸法に対して長さ方向の寸法が十分に大きいものであれば特に限定されず、板状、筒状、柱状のいずれの構造物に対しても適用できる。特に、例えば火力発電所の蒸気管など、600℃以上の高温条件に晒されて熱影響を受けやすい各種配管の溶接部(厳密には溶接熱影響部)の変位(歪)を検知するのに好適である。そこで、以下には、配管に設置した場合を例に挙げて説明する。
【0026】
(実施例1)
変位検知対象である配管1は、高クロム鋼(例えば9%クロム含有鋼)などの金属製であり、図1に示すように、長尺な円筒形に形成されている。配管1の周壁の一部は、長手方向両端に亘って溶接加工されていることで、長手方向に沿ったライン状の溶接部3が形成されている。この場合、配管1には溶接加工時の熱の影響により配管1が変性した2本の溶接熱影響部2・2が溶接部3に沿って生じている。当該溶接熱影響部2・2は、配管1が内部の高温・高圧流体によって熱や内部圧力の影響を受けると、周方向へ優先的に局所変形して亀裂が発生しやすい。そこで、変位検知装置のセンサ部10を各溶接熱影響部2・2上に設置して、溶接熱影響部2における局所変形を検知できるように構成されている。
【0027】
変位検知装置は、配管1の表面に長手方向に沿って配されるパルス波伝送ライン(以下、伝送ラインと称す)からなるセンサ部10と、伝送ラインの一端から電気パルス波を入射し、その反射波を検知する電気的時間領域反射装置(ETDR)11と、ETDR11によって検知された検知信号から、センサ部10のインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置12と、インピーダンス計測装置12による計測結果を表示する表示装置13とを有する。インピーダンス計測装置12としては、デジタイジングオシロスコープを使用できる。表示装置13の代表例としては、モニタである。詳しくは、図1及び図2に示すように、センサ部10は、溶接熱影響部2を挟んで互いに平行に対向配置された左右2本の伝送ライン10L・10Rによって構成されている。なお、配管1は導電性を有しており、下部電極(グランド面)として伝送ラインの一部として利用できる。両伝送ライン10L・10Rには、ETDR11からコネクタ14を介して同時に同じタイミングで電気パルス波が入射される。両伝送ライン10L・10Rは、電気パルス波の入射に伴う互いの電界が結合したクロストークが生じる間隔で配されている。
【0028】
各伝送ライン10L・10Rは、配管1の表面に接着剤15によって接着される長尺状の誘電板材(バルク板材)16と、各誘電板材16上に積層される金属電極17とからなる。電極17は、AgやCuなどの導電性が良好な金属からなり、誘電板材16の長手方向両端に亘ってライン状に形成されている。また、金属電極17は、各誘電板材16の対向面側一側縁に沿って形成されている。金属電極17は、印刷、塗布、蒸着等によって積層できる。誘電板材16の長さはできるだけ長い方が好ましい。誘電板材16の長さが、溶接熱影響部2の変位を検知できる範囲となるからである。最も好ましくは、溶接部3の長さと同じにする。誘電板材16は、両伝送ライン10L・10Rの対向面側と反対側の側縁において接着されている。誘電板材16は、接着剤15の厚み分、配管1の表面から浮いている。
【0029】
誘電板材16はセラミックス製である。具体的には、MgO、Al23、SiO2などの酸化物系、AlN、SiNなどの窒化物系、SiCなどの炭化物系などが挙げられ、温度変化による誘電率変化が小さいセラミックスを使用する。誘電率の温度依存性が大きいと、配管1に変位が生じていなくても、配管温度の変動によりインピーダンスが変化し得るからである。中でも、600℃以上の耐熱性と誘電率の安定性に優れるMgOが好ましい。
【0030】
また、接着剤15にもセラミックス系の接着剤を使用している。具体的には、MgO系接着剤、Al23系接着剤などを使用できる。中でもMgO系接着剤が好ましい。配管を下部電極として利用する場合、この接着層も誘電層として機能するため、比誘電率の温度安定性が必要とされるためである。
【0031】
次に、このような変位検知装置を使用して、溶接熱影響部2の変位を検知する方法(作用)について説明する。配管1に変位が生じていない初期状態において、センサ部10を構成する左右の伝送ライン10L・10Rには、これらの一端(入射端)に設けられたコネクタ14を介してETDR11から同じタイミングの電気パルス波が入射されている。これにより、両伝送ライン10L・10Rの周囲には電界が発生しているが、両伝送ライン10L・10R同士が当接ないし近接していることでクロストークが生じている。各伝送ライン10L・10Rに入射された電気パルス波は、伝送ラインのインピーダンス分布に応じて反射し、当該反射パルス波がETDR11によって検知される。すると、ETDR11からの検知信号に基づいて、インピーダライン10L・10Rのトータルインピーダンス)を計測し、その結果が表示装置13に表示される。このときのインピーダンスが、溶接熱影響部2の変位を検知する基準となる。
【0032】
配管1の内部を高温・高圧流体が流動すると、配管1は熱されながら内部流体からの圧力を受ける。このとき、火力発電所などでは配管1内を600℃以上の高温流体が流動し得るが、誘電板材16がセラミックス系の接着剤15によって接着されているので、センサ部10が剥離することはない。また、誘電板材16自体も、誘電率の温度依存性が小さく、且つ耐熱性が良好なセラミックス製なので、センサ部10が破損したり配管1に変位が生じる前からインピーダンスが変化することもない。配管1が熱及び圧力の影響を受けると、これに伴い金属製の配管1には周方向への引張応力が作用するが、周壁の一部が溶接されていることで、溶接熱影響部2において優先的に局所変形する場合がある。すると、当該溶接熱影響部2を挟んで対向配置された左右の伝送ライン10L・10R同士の距離が大きくなることでクロストークの影響が小さい電界分布となり、センサ部10のインピーダンスが変化(低下)する。そして、このようなセンサ部10のインピーダンス変化を表示装置13によって監視することで、又は初期状態の基準インピーダンスが変化したときに警告が表示装置13に表示されたり、警報が鳴ることで、溶接熱影響部2の局所変形を検知することができる。溶接熱影響部2における長手方向の一部のみに変位が生じた場合は、表示装置13には当該箇所に相当するインピーダンスンス計測装置12が所定のプログラムによってセンサ部10のインピーダンス(両伝送のみが変化したインピーダンスライン形状が表示装置13に表示されるので、変位箇所を特定できる。また、ETDR11の検知信号からインピーダンス計測装置12によって変位箇所、変位方向、変位量等を診断することもできる。なお、この配管の検査方法として、配管1内に高温流体が流れている実稼動状態での検査のみでなく、定期点検時に配管1への流体を止めて室温とした状態において、インピーダンスを計測することも可能である。
【0033】
次に、実施例1の変位検知装置を使用した変位検知試験について説明する。模擬構造物として、長さ70mm、幅220mm、厚み10mmのSUS430製金属板からなる試験片を使用した。当該試験片の下面の幅方向中央を、長さ方向の両端に亘って幅5mmで切削し、長さ方向に沿ってライン状に延びる厚み0.5mmの薄肉部を形成した。当該薄肉部は、試験片の左右両端から引っ張り応力を作用させた際に応力集中によって優先的に変位する部位であり、配管における模擬溶接部となる。当該試験片の上面に、薄肉部を挟んで2本の伝送ラインを平行に対向配置した。誘電層(誘電板材)としては、長さ70mm、幅10mm、厚み1mmのMgO板(ニッカトー社製、MG−12)を接着した。両MgO板の上面に、金属電極としてAgを印刷して530℃で焼き付けた。Ag電極は、両MgO板の対向面側縁に沿って、長さ方向両端に亘る幅1mmのライン状に印刷した。接着剤としては、誘電板材と同じ素材のMgO系セラミックス接着剤(AREMCO社製、571)を使用した。試験前の初期状態では、左右の両MgO板同士が薄肉部の幅方向中央にて当接している状態で接着した。
【0034】
そして、この試験片の幅方向両端をグリップして油圧式の引張試験装置へ設置し、両伝送ラインとSUS430板にSMAコネクタを介してETDRによって電気パルス波を入射しながら、両伝送ライン同士の距離が徐々に増加するように引張応力を与え、両伝送ライン同士の距離が40μm増加する毎に、デジタイジングオシロスコープによって両伝送ラインのトータルインピーダンスを計測した。伝送ライン同士の距離(変位量)は、CCDカメラを用いた光学顕微鏡(KEYENCE社製、VH−8000)により計測した。各間隔における伝送ラインのインピーダンス変化率を図3に示す。インピーダンス変化率とは、伝送ライン間隔変化に伴うインピーダンスの変化量ΔZを初期状態でのインピーダンスZ0で除した値である。図3における距離(x軸)とは、伝送ラインの入射端(SMAコネクタ)からの距離位置である。また、伝送ライン上の入射端から28mmの位置におけるライン間隔とインピーダンス変化率との関係を図4に示す。
【0035】
試験片の両端から引張応力を作用させると、応力集中により薄肉部分が優先的に局所変形する。これに伴い、両伝送ライン同士が徐々に離れていくことで、図3及び図4の結果のように、インピーダンスが低下していく。これは、初期状態では両伝送ラインの間でクロストークが発現していたが、ライン間隔が広がるにつれてクロストークによって高められていたインピーダンスが次第に低下していくことで理解できる。当該実施例1によれば、例えばライン間隔が250μmに広がるとインピーダンスは約2%低下し、ライン間隔が500μmではインピーダンスが約4%低下することがわかる。このようなインピーダンス変化を観測することで、溶接熱影響部における局所変位を検知することができる。
【0036】
(実施例2)
上記実施例1では、金属電極17を誘電板材16の上面のみに設けたが、金属電極を誘電板材16の下面にも設けることが好ましい。すなわち、本実施例2では、図5に示すように、誘電板材16の下面にも、当該誘電板材16の長手方向両端に亘って金属電極18が設けられている。当該誘電板材16下面の金属電極18は、誘電板材16の下面全体に設けられている。なお、下面の金属電極18の幅は、上面の金属電極16と同じ幅としてもよいし、異ならせてもよい。また、下面の金属電極18には、上面の金属電極16と同じものを使用すればよい。下面の金属電極18をグランド面として機能させるため、この電極構造とすることにより、設置する構造体には導電性を必要としない。その他の基本構成や作用は実施例1と同様なので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0037】
当該実施例2の変位検知装置によっても、実施例1における評価試験と同じ条件及び手順でインピーダンス変化を評価した。なお、接着剤15にはAgを使用した。その結果を図6及び図7に示す。図6は、各間隔における伝送ラインのインピーダンス変化率を示す。図7は、伝送ライン上の入射端から28mmの位置におけるライン間隔とインピーダンス変化率との関係を示す。図6及び図7の結果から、薄肉部分の局所変形に伴い両伝送ライン同士が徐々に離れていくことで、実施例1と同様にインピーダンスが低下していく。しかし、当該実施例2によれば、例えばライン間隔が250μmに広がるとインピーダンスは約3%低下しており、実施例1と比べて1.5倍の変化率があった。
【0038】
(実施例3)
図10に、実施例3の変位検知装置を設置した配管の要部拡大断面図を示す。実施例3の変位検知装置でも、センサ部10を各溶接熱影響部2・2上に設置して、溶接熱影響部2における局所変形を検知できるように構成されている。すなわち、実施例3の変位検知装置も、配管1の表面に長手方向に沿って配される伝送ラインからなるセンサ部10と、伝送ラインの一端からコネクタ14を介して電気パルス波を入射し、その反射波を検知するETDR11と、ETDR11によって検知された検知信号から、センサ部10のインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置12と、インピーダンス計測装置12による計測結果を表示する表示装置13とを有する(図1参照)。図10に示すように、センサ部10を構成する左右の誘電板材16L・16Rは、溶接熱影響部2を挟んで互いに平行に対向配置されている。伝送ライン10は、それぞれ配管1の表面に接着剤15によって接着される長尺状の誘電板材16L・16Rと、それらの長手方向両端に亘ってライン状に積層される金属電極17とからなる。
【0039】
そのうえで、実施例1や実施例2と異なる点は、両誘電板材16L・16Rのうち、一方(図10の左側)の誘電板材16Lの幅方向一側面(右側の誘電板材16Rとの対向面)は、下方から上方にかけて徐々に薄肉となる傾斜面16Laとなっている。一方、他方(図10の右側)の誘電板材16Rの幅方向一側面(左側の誘電板材16Lとの対向面)は、上方から下方にかけて徐々に薄肉となる傾斜面16Raとなっている。金属電極17は、各誘電板材16L・16Rの傾斜面16La・16Raの裏面に積層されておいる。金属電極17は、それぞれ傾斜面16La・16Raの幅以上の幅とする。両誘電板材16L・16Rの傾斜面16La・16Raは互いに平行であり、両誘電板材16L・16Rは、傾斜面16La・16Ra同士が対向するように配されている。これにより、上下の金属電極17・17の間で各誘電板材16L・16Rの傾斜面16La・16Raが上下に重なり、コンデンサが形成される。なお、それぞれ平行な傾斜面16La・16Raを有する誘電板材16L・16Rを製造するには、1枚の誘電板材の幅方向中央部分を斜めにカットするだけで容易に製造できる。
【0040】
このような構成となっていると、配管1の溶接熱影響部2が周方向に変位することに伴い、両誘電板材16L・16R間の距離が広がって、図11の左図に示すように両傾斜面16La・16Raの間に空気層が形成される。この状態では、図11の右図に示すように、左側誘電板材16LのコンデンサC誘電層と、空気層のコンデンサCairと、右側誘電板材16RのコンデンサC誘電層とが上下に並んだ状態となる。ここで、例えば誘電板材16がMgOであれば、当該MgOの比誘電率εrは10であり、空気層の比誘電率εrは1である。したがって、溶接熱影響部2の変位に伴い空気層の厚みが増大することで全体的なコンデンサ静電容量が減少して、インピーダンスが増大することになる。その他は、実施例1や実施例2と同様である。
【0041】
当該実施例3の変位検知装置によっても、実施例1における評価試験と同じ条件及び手順でインピーダンス変化を評価した。このとき、傾斜面及び金属電極の幅は、それぞれ1mmとした。その結果を図12及び図13に示す。図12は、各間隔における伝送ラインのインピーダンス変化率を示す。図13は、伝送ライン上の入射端から25mmの位置におけるライン間隔とインピーダンス変化率との関係を示す。図12及び図13の結果から、薄肉部分の局所変形に伴い両伝送ライン同士が徐々に離れていくことで、実施例1とは逆にインピーダンスが増大していく。当該実施例3によれば、例えばライン間隔が250μmに広がるとインピーダンスは約17%増大しており、実施例1と比べて約9倍の変化率があった。
【0042】
(変形例)
なお、上記実施例1〜3における評価試験では、初期状態において伝送ライン同士を当接させたが、初期状態においてある程度(実施例1及び実施例2ではクロストークが発現する範囲で)離しておけば、構造物が圧縮変形した場合に、実施例1及び実施例2ではインイーダンスの増加として、実施例3ではインピーダンスの低下として検知できる。
【0043】
上記実施例1〜3では、変位検知装置を円筒形の配管に配して、溶接熱影響部における周方向への変位を検知する構成としたが、これに限らず、変位検知装置を板状や角状の長尺構造物へ配して、長手方向と直交する方向への変位を検知するようにすることもできる。なお、ライン間隔に伴うインピーダンス変化率の顕著性から、上記実施例3の構成が最も好ましく、上記実施例2の構成が次いで好ましい。
【符号の説明】
【0044】
1 配管(長尺状構造物)
2 溶接熱影響部
3 溶接部
10 センサ部
11 電気的時間領域反射装置(ETDR)
12 インピーダンス測定装置
13 表示装置
15 接着剤
16 誘電板材(誘電層)
16a 傾斜面
17・18 金属電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状構造物の変位を検知する変位検知装置であって、
前記長尺状構造物の表面に、該長尺状構造物の長手方向に沿って互いに平行に配される左右2本のパルス波伝送ラインと、
前記2本のパルス波伝送ラインの一端からそれぞれ電気パルス波を入射し、その反射波を検知する電気的時間領域反射装置と、
前記電気的時間領域反射装置によって検知された検知信号から、前記パルス波伝送ラインのインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置とを有し、
前記2本のパルス波伝送ラインは、電気パルス波が入射された際に、互いの電界が結合したクロストークが生じる間隔で配されており、
前記長尺状構造物が、これの長手方向と直交する方向へ変位したとき、これに伴い前記2本のパルス波伝送ライン間の距離が変化することでクロストークによる電界分布が変化して、インピーダンス変化として検知されることを特徴とする、変位検知装置。
【請求項2】
前記長尺状構造物は導電性を有し、
前記パルス波伝送ラインは、前記長尺状構造物を下部電極として、該長尺状構造物の表面に接着剤によって接着される長尺状の誘電板材と、
前記誘電板材上に、該誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される金属電極とからなることを特徴とする、請求項1に記載の変位検知装置。
【請求項3】
前記パルス波伝送ラインは、前記長尺状構造物の表面に接着剤によって接着される長尺状の誘電板材と、
前記誘電板材の上面及び下面に、該誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される上下の金属電極とからなることを特徴とする、請求項1に記載の変位検知装置。
【請求項4】
前記長尺状構造物は円筒形の金属製配管であり、
前記配管は、周壁の一部に、長手方向にライン状の溶接部を有し、前記溶接部に沿い溶接加工時の熱の影響により前記配管が変性した溶接熱影響部が生じており、
前記2本のパルス波伝送ラインは、前記配管の溶接熱影響部を挟んで対向配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の変位検知装置。
【請求項5】
長尺状構造物の変位を検知する変位検知装置であって、
前記長尺状構造物の表面に、該長尺状構造物の長手方向に沿って配される1本のパルス波伝送ラインと、
前記パルス波伝送ラインの一端から電気パルス波を入射し、その反射波を検知する電気的時間領域反射装置と、
前記電気的時間領域反射装置によって検知された検知信号から、前記パルス波伝送ラインのインピーダンスを計測するインピーダンス計測装置とを有し、
前記パルス波伝送ラインは、それぞれ前記長尺状構造物の表面に接着剤によって接着され、前記長尺状構造物の長手方向に沿って平行に対向配置される左右2つの長尺状の誘電板材を含み、
両誘電板材の対向面同士は、上下に重なることができるよう互いに平行な傾斜面となっており、
前記パルス波伝送ラインは、前記左右2つの誘電板材と、各誘電板材の傾斜面の裏面に、それぞれ誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される上下の金属電極とからなり、
前記長尺状構造物が、これの長手方向と直交する方向へ変位したとき、これに伴い前記2つの誘電板材の傾斜面間の距離が変化することでコンデンサ静電容量が変化して、インピーダンス変化として検知されることを特徴とする、変位検知装置。
【請求項6】
前記金属電極は、それぞれ前記誘電板材の傾斜面の幅以上の幅を有することを特徴とする、請求項5に記載の変位検知装置。
【請求項7】
前記長尺状構造物は円筒形の金属製配管であり、
前記配管は、周壁の一部に、長手方向にライン状の溶接部を有し、前記溶接部に沿い溶接加工時の熱の影響により前記配管が変性した溶接熱影響部が生じており、
前記2本のパルス波伝送ラインは、前記配管の溶接熱影響部を挟んで対向配置されていることを特徴とする、請求項5または請求項6に記載の変位検知装置。
【請求項8】
前記誘電板材がセラミックスからなり、
前記接着剤がセラミックス系又は金属系の接着剤であることを特徴とする、請求項2ないし請求項7のいずれかに記載の変位検知装置。
【請求項9】
前記パルス波伝送ラインにおけるインピーダンス変化が、該パルス波伝送ラインの入射端からの距離の関数として検出されることを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の変位検知装置。
【請求項10】
円筒形金属配管の周方向に作用する力による変位を検知する、配管の変位検知方法であって、
前記配管の表面に、互いの電界が結合したクロストークが生じる間隔で、前記配管の長手方向に沿って互いに平行に配した左右2本のパルス波伝送ラインの一端から、電気的時間領域反射装置によってそれぞれ電気パルス波を入射し、その反射波からインピーダンス計測装置によってパルス波伝送ラインのインピーダンスを計測して、
前記配管における周方向の変位を、これに伴う前記2本のパルス波伝送ライン間の距離の変化による電界分布の変化に基づくインピーダンス変化として検知することを特徴とする、配管の変位検知方法。
【請求項11】
前記配管は、周壁の一部に、長手方向にライン状の溶接部を有し、前記溶接部に沿い溶接加工時の熱の影響により前記配管が変性した溶接熱影響部が生じており、
前記2本のパルス波伝送ラインを、前記配管の溶接熱影響部を挟んで対向配置して、該溶接熱影響部における周方向の変位を検知することを特徴とする、請求項10に記載の配管の変位検知方法。
【請求項12】
円筒形金属配管の周方向に作用する力による変位を検知する、配管の変位検知方法であって、
前記配管の表面に、該配管の長手方向に沿って平行に対向配置され、互いに平行な傾斜面とされた対向面同士が上下に重なりあう左右2つの誘電板材と、各誘電板材の傾斜面の裏面に、それぞれ誘電板材の長手方向両端に亘ってライン状に積層される上下の金属電極とによってコンデンサを形成する1本のパルス波伝送ラインの一端から、電気的時間領域反射装置によって電気パルス波を入射し、その反射波からインピーダンス計測装置によってパルス波伝送ラインのインピーダンスを計測して、
前記配管における周方向の変位を、これに伴う前記2つの誘電板材の傾斜面間の距離の変化による静電容量変化に基づくインピーダンス変化として検知することを特徴とする、配管の変位検知方法。
【請求項13】
前記配管は、周壁の一部に、長手方向に沿うライン状の溶接部を有し、前記溶接部に沿い溶接加工時の熱の影響により前記配管が変性した溶接熱影響部が生じており、
前記2つの誘電板材を、前記配管の溶接熱影響部を挟んで対向配置して、該溶接熱影響部における周方向の変位を検知することを特徴とする、請求項12に記載の配管の変位検知方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−237064(P2010−237064A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85949(P2009−85949)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000173522)財団法人ファインセラミックスセンター (147)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】