説明

変位測定装置

【課題】建造物の変位を高精度に測定することができる。
【解決手段】構造物に設けられて、構造物の変位を測定する変位測定装置1であって、構造物に取り付けられる支持部2と、支持部2によって水平方向に移動可能に支持される支持体3と、支持体3に設けられたアノトペン(絶対変位算出部)5と、支持部2に設けられた基準板(絶対変位算出部)6とを備える。支持部2には支持体3の移動方向に延びて粘性体32が収容された溝部31が形成されていて、支持体3には溝部31の粘性体32内に挿入された減衰部材33が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の変位を測定する変位測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば建物などの構造物の変位を測定する種々の変位測定装置が利用されている。
これら変位測定装置の中には、建物に固定されて建物とともに振動する感震器と、この感震器に連結されたスリット板と、このスリット板を挟んで対向配置された発光部及び受光部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この変位測定装置は、建物が振動すると、感震器を介してスリット板が振動し、発光部から発せられた光がスリットを介して受光部に到達したり、遮られたりする。受光部は、この断続光を受光すると共に、この受光した光パルスを電気信号に変換して出力する。
そして、一定時間あたりの光パルスから最大振動速度値を求め、変位量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−101278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような特許文献1に記載の変位測定装置では、スリット板、発光部及び受光部が建物とともに振動してしまうため、建物の応答速度を精度よく測定できず、その結果、建物の応答変位を精度よく測定することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、建造物の変位を高精度に測定することができる変位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、構造物に設けられて、前記構造物の変位を測定する変位測定装置であって、 前記構造物に取り付けられる支持部と、前記支持部によって水平方向に移動可能に支持される支持体と、前記支持体と前記構造物又は前記支持部とに設けられ、前記構造物の前記水平方向の絶対変位を算出する絶対変位算出部とを備え、前記支持部には前記支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された溝部が形成されていて、前記支持体には前記溝部の前記粘性体内に挿入された減衰部材が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明では、構造物に取り付けられる支持部と、支持部によって水平方向に移動可能に支持される支持体と、支持体と構造物又は支持部とに設けられ、構造物の水平方向の絶対変位を算出する絶対変位算出部とを備えていることにより、構造物に水平方向の振動が生じても、支持体自体を水平方向における所定の固定点にとどめることができ、この所定の固定点を中心として構造物の絶対変位を測定することができる。そして、支持部には支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された溝部が形成されていて、支持体には溝部の粘性体内に挿入された減衰部材が設けられていることにより、減衰部材と粘性体との摩擦により支持体の変位速度が減衰されるので、支持体の変位が抑制され確実に支持体を固定点に留めることができる。
【0008】
また、本発明は、前記支持部が、前記水平方向に延在する支持面と、前記支持面に載置される球状体とを備え、前記支持体が、前記球状体の上に載置されることを特徴とする。
【0009】
本発明では、支持部が、水平方向に延在する支持面と、支持面に載置される球状体とを備え、支持体が、球状体の上に載置されることにより、変位の測定精度を高めることができる。
【0010】
また、本発明は、前記支持部に、前記水平方向に延びる溝が形成され、前記支持体に、凹部が形成され、前記溝と前記凹部とが鉛直方向に対向して配置されており、前記球状体が、前記溝と前記凹部との間に配されることを特徴とする。
【0011】
本発明では、支持部に、水平方向に延びる溝が形成され、支持体に、凹部が形成され、溝と凹部とが鉛直方向に対向して配置されており、球状体が、溝と凹部との間に配されることにより、支持部を支持体に安定的に載置することができると共に、確実に支持体を固定点に留めることができる。
【0012】
また、本発明は、前記溝及び前記凹部の断面が円状に形成されており、前記断面の曲率が、前記球状体の曲率よりも小さくなっていることを特徴とする。
【0013】
本発明では、溝及び凹部の断面が円状に形成されており、断面の曲率が、球状体の曲率よりも小さくなっていることにより、溝及び凹部と球状体との間の摩擦を小さくすることができ、支持体を固定点に留めることができる。
【0014】
また、本発明は、前記支持部の溝が、下方に湾曲していることを特徴とする。
【0015】
本発明では、支持部の溝が、下方に湾曲していることにより、構造物に振動が生じていない場合に支持体を自重により湾曲している最深部の位置に保持させることができる。そして、この最深部を固定点とすることで、支持体は固定点の位置に保持されることになる。
【0016】
また、本発明は、前記支持部が、前記構造物に取り付けられる取付支持部と、前記取付支持部に前記水平方向と異なる他の水平方向に移動可能に支持される移動支持部とを備え、前記移動支持部が、前記水平方向に移動可能に前記支持体を支持していて、前記取付支持部には前記移動支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された第一の溝部が形成されていて、前記移動支持部には前記第一の溝部の前記粘性体内に挿入された第一の減衰部材が固定されて、前記移動支持部には前記支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された第二の溝部が形成されていて、前記支持体には前記第二の溝部の前記粘性体内に挿入された第二の減衰部材が固定されていることを特徴とする。
【0017】
本発明では、支持部が、構造物に取り付けられる取付支持部と、取付支持部に水平方向と異なる他の水平方向に移動可能に支持される移動支持部とを備え、移動支持部が、水平方向に移動可能に支持体を支持していて、取付支持部には移動支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された第一の溝部が形成されていて、移動支持部には第一の溝部の粘性体内に挿入された第一の減衰部材が固定されて、移動支持部には支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された第二の溝部が形成されていて、支持体には第二の溝部の粘性体内に挿入された第二の減衰部材が固定されていることにより、一の水平方向および一の水平方向と異なる他の水平方向における固定点に支持体がとどまるので、高精度に構造物の絶対変位を測定することができる。
【0018】
また、本発明は、前記支持部が、前記構造物の床の下面側に取り付けられることを特徴とする。
【0019】
本発明では、支持部が、構造物の床の下面側に取り付けられることにより、構造物の居住空間や収納空間などに影響しない位置に支持部を設置することができる。そのため、構造物が複数階の建物である場合には、各階に設置することで測定精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、建造物とともに支持部が水平方向に振動しても、支持体は慣性および支持部と粘性体との摩擦による変位の減衰力により水平方向にほとんど変位しないことから、支持体を基準として建造物の変位を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る変位測定装置の第1の実施形態を示す図であって、建物に設置された様子を示す説明図である。
【図2】図1の変位測定装置を水平方向から見たときの様子を示す断面図である。
【図3】図2のA−A’線矢視断面図である。
【図4】図2の長溝が下方に湾曲している様子を示す説明図である。
【図5】本実施形態における支持体が、建物の振動に対して変位しない様子を示す説明図である。
【図6】本実施形態における支持体が、建物の振動に対して変位しない様子を示す説明図である。
【図7】本発明に係る変位測定装置の第2の実施形態を示す平面図である。
【図8】図7のB−B’線矢視断面図である。
【図9】図7のC−C’線矢視断面図である。
【図10】本実施形態における変位測定装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態における変位測定装置について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、変位測定装置1は、建物(構造物)Kに取り付けられて、地震や風などによって生じる建物Kの絶対変位を測定するものである。
変位測定装置1は、図2及び図3に示すように、角筒状に延びる支持部2と、この支持部2内に配された矩形板状の支持体3とを備えている。
【0023】
支持部2は、板状に延びる基板部22と、この基板部22に一体に設けられた角筒部23とを備えている。
基板部22と角筒部23との長手寸法は等しくなっており、短手寸法は角筒部23の方が短くなっている。そして、角筒部23は、基板部22の短手方向の中央に配置されている。
基板部22は、建物KのスラブSの下面側に、接着剤や固定ねじなどにより固定されている。すなわち、基板部22は、水平方向の一方向(水平方向h1)に延ばされている。
基板部22の下面のうち、基板部22と角筒部23との差分領域22aには、データの記憶や送受信を行う通信部4が設けられている。
【0024】
角筒部23の内周面のうちの下面(支持面)23aには、水平方向h1(長手方向)に直線状に延びる一対の長溝23bが形成されている。長溝23bの横断面は、円状に形成されている。
これら一対の長溝23bは、図4に示すように、下方に緩やかに湾曲している。そして、長溝23bの最深部P2が、角筒部23の長手方向の中心位置に設定されている。
長溝23b内には、球状のベアリング(球状体)24が載置されている。そして、ベアリング24は、長溝23b内を水平方向h1に転がるようになっている。また、図2に示すように、長溝23bの曲率は、ベアリング24の曲率よりも小さくなっており、ベアリング24が長溝23b内を転がるときの摩擦が小さくなるようになっている。
ベアリング24の上には、支持体3が載置されている。
【0025】
支持体3の下面には、断面円形状の凹部3aが形成されている。凹部3aは、支持体3の下面の四つの角部に対応して四つ形成されている。また、支持体3を側面視した場合の凹部3aの断面は、長溝23bと同形状に形成されており、支持体3がベアリング24の上に載置された状態で、凹部3aが長溝23bに鉛直方向vに対向配置されるようになっている。すなわち、凹部3aの開口部と長溝23bの開口部とが、鉛直方向vに対向配置されており、これら凹部3aと長溝23bとの間に、ベアリング24が配されている。なお、凹部3aの曲率も、ベアリング24の曲率よりも小さくなっている。
支持体3の上面には、上方に向けられたアノトペン(変位算出部)5が設けられている。アノトペン5は、アノトパターンのドットを読み取るセンサ(不図示)と、このセンサからの出力により、絶対変位を算出する算出部(不図示)とを備えている。また、角筒部23の内周面のうちの上面には、アノトパターンが印刷された基準板(絶対変位算出部)6が貼り付けられている。そして、角筒部23とともに基準板6が水平方向h1に振動すると、アノトペン5が基準板6のドットを読み取り、絶対変位を算出するようになっている。
【0026】
図2および図4に示すように、支持部2の角筒部23の下面23aには、一対の長溝23bの間に長溝23bの延在方向に延びる溝部31が形成されている、溝部31には粘性体32が収容されている。粘性体32には、例えば、所定の粘性を有するシリコンオイルなどが採用される。
支持体3の下面には、この下面から突出する板状の減衰部材33が固定されている。減衰部材33は、支持体3が支持部2に設置された際に、先端33a側が溝部31内に挿入され、粘性体32内に浸るように支持体3に固定されている。支持体3が水平方向h1に移動することにより、減衰部材33は溝部31の粘性体32内を水平方向h1に移動する。
【0027】
このように、減衰部材33が粘性体32内に浸ることにより、減衰部材33が粘性体32内を変位するときには減衰部材33の表面と粘性体32との間に摩擦力が生じるので、減衰部材33が固定された支持部3の変位速度が減衰される。
なお、減衰部材33は板状の部材としているが、水平断面形状が舟形の柱状部材としてもよく、このほかの形状としてもよい。
そして、減衰部材33の形状や、減衰部材33と粘性体と32の接触面積、また粘性体32の粘度などを調整することで、支持体3の変位速度に対する減衰力を調整する。
【0028】
また、角筒部23の内周面のうちの側面には、支持体3の動作を検出する動作検出部7が設けられている。動作検出部7は、例えば機械式スイッチなどからなり、支持部2が支持体3に対して水平方向h1に移動すると、スイッチがオンされて、駆動信号を制御部8に出力する。
制御部8は、動作検出部7と、アノトペン5の不図示の制御部と、通信部4とに接続されている。そして、制御部8は、動作検出部7から出力された駆動信号を受けて、アノトペン5を駆動し、またアノトペン5の検出結果を、通信部4を介して外部機器に出力する。
なお、本実施の形態では制御部8を設けているが、制御部8を設けずに、動作検出部7から出力された駆動信号が直接アノトペン5の不図示の制御部と、通信部4に伝達されるシステムとしてもよい。
【0029】
次に、このように構成された本実施形態における変位測定装置1の動作について説明する。
地震などにより、建物Kに水平方向h1の振動が生じると、スラブSを介して、支持部2が水平方向h1に振動する。このとき、図5及び図6に示すように、支持体3が、ベアリング24上に載置されていることから、支持部2が水平方向h1に移動しても、ベアリング24が転がることにより、支持体3は水平方向h1にほとんど変位しない。特に、長溝23bと凹部3aの曲率がベアリング24の曲率よりも小さくなっていることから、長溝23b及び凹部3aとベアリング24との接触面積が微小に抑制され、それら長溝23b及び凹部3aとベアリング24との間の摩擦が極めて小さくなっている。そのため、支持部2が水平方向h1に変異しても、支持体3は、ほとんど変位せず慣性により水平方向h1の一点(固定点P1)に留まることになる。
【0030】
更に、支持体3に固定された減衰部材33は、支持部2の溝部31に収容された粘性体32内に挿入されているので、支持体3が変位した際にも粘性体32との摩擦により粘性体32内での変位速度が減衰される。そのため、支持体3の変位が抑制される。
【0031】
このとき、支持部2が支持体3に対して水平方向h1に変位することから、支持体3を介して機械式スイッチがオンされ、動作検出部7から駆動信号が出力される。制御部8は、その駆動信号を読み出すと、アノトペン5を駆動する。アノトペン5は、慣性により固定点P1に固定されるのに対して、上方の基準板6は支持部2を介して水平方向h1に移動する。そして、アノトペン5は、水平方向h1に移動する基準板6のドットを読み取り、基準板6の変位を建物Kの絶対変位として算出する。アノトペン5は、算出結果を絶対変位情報として制御部8に出力し、制御部8は、絶対変位情報と不図示の計時部から出力された時刻情報とを通信部4を介して外部機器に送信する。
【0032】
また、地震が終わって、建物Kの振動が治まった場合、図4に示すように、長溝23bが下方に湾曲していることから、ベアリング24が自重により最深部P2に向かって転がる。そして、支持体3の水平方向h1における中心点P1が最深部P2と鉛直線上に配された状態で、ベアリング24が停止する。すなわち、建物Kに振動が生じていない場合、支持体3は、常に支持部2の長手方向の中心位置に自重により保持される。
そして、ベアリング24が自重により最深部P2に向かって転がり、支持体3が支持部2の長手方向の中心位置に移動する際にも、減衰部材33が粘性体32内を移動するので支持体3の移動速度が減衰され、移動する支持体3が慣性により必要以上に移動することが抑制される。
【0033】
以上より、本実施形態における変位測定装置1によれば、建物Kに振動が生じても、支持体3自体を、水平方向h1における固定点Pに留めることができることから、固定点Pを中心として建物Kの絶対変位を高精度に測定することができる。
また、支持体3をベアリング24に載置するという簡易な構成により、測定精度を向上させることができる。
また、長溝23b及び凹部3aが鉛直方向vに対向して配置されその間にベアリング24が配されていることから、簡易な構成により確実に支持体3を固定点Pに留めることができる。
また、長溝23b及び凹部3aの曲率がベアリング24の曲率よりも小さくなっていることから、長溝23b及び凹部3aとベアリング24との間の摩擦を小さくすることができ、支持体3を固定点P1に留めることができる。
また、減衰部材33が粘性体32内に挿入されていることから、減衰部材33と粘性体32との摩擦により支持体3の変位速度が減衰されるので、支持体3の変位を抑制し支持体3を固定点P1に留めることができる。
【0034】
さらに、長溝23bが下方に湾曲していることから、建物Kに振動が生じていない場合に、支持体3を自重により最深部P2の位置に保持させることができる。
また、支持部2がスラブSの下面に取り付けられるようになっていることから、建物K内の人間の生活空間や仕事空間などに影響されない位置に支持部2を取り付けることができ、そのため、各階に複数設置することにより、測定精度をさらに向上させることができる。
【0035】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7から図9は、本発明の第2の実施形態を示したものである。
図7から図9において、図1から図6に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは主として異なる点について説明する。
【0036】
図7乃至図9に示すように、本実施形態における支持部2Aは、スラブS(図8、図9参照)に取り付けられる取付支持部25と、この取付支持部25に支持される移動支持部26とを備えている。
取付支持部25は、スラブSの下方にスラブSと間隔をあけて配設され、一の水平方向h1に延びる長尺の部材で、その両端部が固定部材27によってスラブSに固定されている。取付支持部25は、上面に長手方向全長にわたって延びる一対の長溝25aが形成されている。一対の長溝25a内には、それぞれ2つずつベアリング24aが配されている。
取付支持部25の下面には通信部4が設けられている(図8、9参照)。
【0037】
移動支持部26は、一の水平方向h1に直交する他の水平方向h2に延びる長尺の部材で、下面の長手方向中央にはベアリング24aに対応する4つの断面円形状の凹部26aが形成されている。移動支持部26は、ベアリング24aを介して取付支持部25の上部に設置されていて、ベアリング24aは取付支持部25の長溝25aと移動支持部26の凹部26aとの間に配されている。このような移動支持部26は取付支持部25上を水平方向h1に移動可能である。
長溝25aおよび凹部26aの曲率は、ベアリング24aの曲率よりも小さくなっており、ベアリング24aが長溝25a内を転がるときの摩擦が小さくなるようになっている。
また、移動支持部26は、上面に長手方向全長にわたって延びる一対の長溝26bが形成されている。一対の長溝26b内には、それぞれ2つずつベアリング24bが配されている。
【0038】
支持体3は、第1の実施の形態と同様に下面に断面円形状の凹部3aが形成されていて、ベアリング24bを介して移動支持部26の上部に設置されている。ベアリング24bは移動支持部26の長溝26bと支持体3の凹部3aとの間に配されている。このような支持体3は移動支持部26上を水平方向h2に移動可能である。
長溝26bおよび凹部3aの曲率は、ベアリング24bの曲率よりも小さくなっており、ベアリング24bが長溝26b内を転がるときの摩擦が小さくなるようになっている。
支持体3の上面には、上方に向けられたアノトペン(変位算出部)5が設けられていて、アノトペン5がスラブSの下面に設置された基準板6のドットを読み取り、絶対変位を算出するようになっている。
【0039】
取付支持部25の上面には、一対の長溝25aの間に長溝25aの延在方向に延びる第一の溝部41が形成されている、第一の溝部41には粘性体32が収容されている。そして、移動支持部26の下面の長手方向および短手方向の中央部には、この下面から突出する板状の第一の減衰部材42が固定されている。第一の減衰部材42は、移動支持部26下面の凹部26aに囲まれた位置に固定されている。
第一の減衰部材42は、移動支持部26が取付支持部25上に設置された際に、先端42a側が第一の溝部41内に挿入され、粘性体32内に浸るように設置されている。
【0040】
また、移動支持部26の上面には、一対の長溝26bの間に長溝26bの延在方向に延びる第二の溝部43が形成されている、第二の溝部43には粘性体32が収容されている。そして、支持体3の下面には、凹部3aに囲まれる位置にこの下面から突出する第二の減衰部材44が固定されている。第二の減衰部材44は、支持体3が移動支持部26上に設置された際に、先端44a側が第二の溝部43内に挿入され、粘性体32内に浸るように設置されている。
【0041】
このように、第一および第2の減衰部材41、43が粘性体32内に浸ることにより、第一および第2の減衰部材41、43が粘性体32内を変位するときには第一および第2の減衰部材41、43の表面と粘性体32との間に摩擦力が生じるので、第一の減衰部材41が固定された移動支持部26および第二の減衰部材43が固定された支持部3の変位速度が減衰される。
なお、第一および第2の減衰部材41、43は板状の部材としているが、水平断面形状が舟形の柱状部材としてもよく、このほかの形状としてもよい。
そして、第一および第2の減衰部材41、43の形状や、第一および第2の減衰部材41、43と粘性体と32の接触面積、また粘性体32の粘度などを調整することで、移動支持部26および支持体3の変位速度に対する減衰力を調整する。
【0042】
このような構成のもと、建物Kが水平方向h1,h2に振動すると、スラブSとともに、取付支持部25が水平方向h1,h2に振動する。このとき、ベアリング24aと長溝25aおよび凹部26aとの間の摩擦が小さくなっていることから、移動支持部26および支持体3は慣性により水平方向h1にはほとんど変位せず固定点Pに固定される。同様に、ベアリング24bと長溝26b及び凹部3aとの間の摩擦も小さくなっていることから、支持体3は慣性により水平方向h2にもほとんど変位せず固定点Pに固定される。
更に、移動支持部26に固定された第一の減衰部材42が第一の溝部41の粘性体32内に挿入されているので、粘性体32と第一の減衰部材42との摩擦により第一の減衰部材42の変位が減衰され、移動支持部25の変位が抑制される。また、支持体3に固定された第二の減衰部材44が第二の溝部44の粘性体32内に挿入されているので、粘性体32と第二の減衰部材44との摩擦により第二の減衰部材44の変位が減衰され、支持体3を固定点Pに留めることができる。すなわち、アノトペン5が固定点Pに固定された状態で、基準板6が変位する。
これにより、アノトペン5を介して建物Kの絶対変位が算出される。
【0043】
以上より、本実施形態における変位測定装置1Aによれば、上記第1の実施形態と同様の効果を奏することができるだけでなく、水平方向h1,h2の2方向においてアノトペン5が固定されることから、さらに高精度に建物Kの絶対変位を測定することができる。
【0044】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、変位測定装置1,1AがスラブSの下面に設けられるとしたが、これに限ることはなく、図10に示すように、スラブSの上面に設けてもよい。すなわち、支持部2AをスラブSの上面に固定することができる。
【0045】
また、動作検出部7が機械式スイッチからなるものとしたが、これに限ることはなく、電磁気式スイッチや光学式スイッチなどのように適宜変更可能である。
また、動作検出部7の駆動信号によりアノトペン5を駆動するものとしたが、これに限ることはなく、アノトペン5を常時駆動しておいてもよい。
また、絶対変位算出部としてアノトペン5が設けられるとしたが、これに限ることはなく、例えばバーコードリーダーや光の透過・反射を利用した光学式の読取部、光学式マウスなどであってもよい。
また、必ずしもベアリングおよび各長溝を設ける必要はないが、ベアリングおよび長溝を設けた方が支持体3を安定的に支持できる点で好ましい。
また、必ずしも長溝を湾曲状に形成しなくてもよいが、湾曲状にした方が支持体3の固定位置を一定にすることができる点で好ましい。
また、長溝や凹部の曲率がベアリング24の曲率よりも小さくなっているものとしたが、これに限ることはなく、曲率を同じにしてもよい。
また、ベアリング24や長溝、凹部の数は適宜設定してもよい。
また、ベアリング24を設けずに、ベアリング24に代わって例えば車輪などを採用してもよい。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1,1A変位測定装置
2,2A支持部
3 支持体
3a 凹部
23b,261a 長溝(溝)
5 アノトペン(絶対変位算出部)
6 基準板(絶対変位算出部)
23a 下面(支持面)
24 ベアリング(球状体)
25 取付支持部
26 移動支持部
31 溝部
32 粘性体
33 減衰部材
41 第一の溝部
42 第一の減衰部材
43 第二の溝部
44 第2の減衰部材
h1,h2 水平方向
K 建物(構造物)
v 鉛直方向



【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設けられて、前記構造物の変位を測定する変位測定装置であって、
前記構造物に取り付けられる支持部と、
前記支持部によって水平方向に移動可能に支持される支持体と、
前記支持体と前記構造物又は前記支持部とに設けられ、前記構造物の前記水平方向の絶対変位を算出する絶対変位算出部とを備え、
前記支持部には前記支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された溝部が形成されていて、前記支持体には前記溝部の前記粘性体内に挿入された減衰部材が設けられていることを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記支持部が、前記水平方向に延在する支持面と、前記支持面に載置される球状体とを備え、
前記支持体が、前記球状体の上に載置されることを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記支持部に、前記水平方向に延びる溝が形成され、
前記支持体に、凹部が形成され、
前記溝と前記凹部とが鉛直方向に対向して配置されており、
前記球状体が、前記溝と前記凹部との間に配されることを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記溝及び前記凹部の断面が円状に形成されており、
前記断面の曲率が、前記球状体の曲率よりも小さくなっていることを特徴とする請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記支持部の溝が、下方に湾曲していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記支持部が、前記構造物に取り付けられる取付支持部と、前記取付支持部に前記水平方向と異なる他の水平方向に移動可能に支持される移動支持部とを備え、前記移動支持部が、前記水平方向に移動可能に前記支持体を支持していて、前記取付支持部には前記移動支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された第一の溝部が形成されていて、前記移動支持部には前記第一の溝部の前記粘性体内に挿入された第一の減衰部材が固定されて、前記移動支持部には前記支持体の移動方向に延びて粘性体が収容された第二の溝部が形成されていて、前記支持体には前記第二の溝部の前記粘性体内に挿入された第二の減衰部材が固定されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の変位測定装置。
【請求項7】
前記支持部が、前記構造物の床の下面側に取り付けられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の変位測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−203208(P2011−203208A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73267(P2010−73267)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【Fターム(参考)】