説明

変倍機構を有する光学機器

【課題】 光学機器におけるズーミングの操作性を向上させる。
【解決手段】 ズームリング50の外周面に第1の突起部52、第2の突起部53を設ける。第1及び第2の突起部52、53はズームリング50の軸心に沿って延び、周方向に沿って並列する。第1及び第2の突起部52、53の間にスペースSを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学機器のズーム操作部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被観察体や被写体の観察、撮影を行う光学機器にはズーム機構が搭載されている。例えば、双眼鏡においては、左右の望遠光学系のそれぞれにその一部を構成するようズーム光学系が配設される。ズーム光学系の駆動のために、左右の望遠光学系の間に軸心が光軸と平行となるよう操作リングが配置される。操作リングは軸心を中心として回転可能の支持されており、外周面の一部が常に双眼鏡の筐体から露出するよう配設される。ズーム光学系は操作リングの軸心を中心とする回転に連動して駆動される。使用者は、接眼光学系を介して被観察体の状態(合焦状態、像の拡大の程度等)を視認しながら、操作リングを指で回転操作し、被観察体像を希望の大きさに拡大させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
操作リングの外周面には、全周にわたって、比較的小さな凹凸形状からなる滑り止め部が形成され、さらにその外周面から所定量突出するよう形成される指掛り部が設けられている。使用者は、この指掛り部に指を引っ掛けて操作リングを適宜回転させる。指掛り部に指を確実に引っ掛けて操作リングを回転させるためには、指先を回転させようとする方向の反対側の側面にまで位置づけなければならない。従って、保持する手と操作リングを回転させようとする方向との相対的関係に応じて、指の十分に伸ばしたり曲げたりしなければならず、使用者の負担となっている。
【0004】
ズーム光学系の変倍率が最大となる限界位置(最大限界位置)や変倍率が最小となる限界位置(最小限界位置)に操作リングが位置決めされてた状態において、指掛り部は双眼鏡の筐体に近接する。従って、例えば、操作リングが最大限界位置にある状態において最小限界位置へ向かう方向へ回転させる際、上述のように指掛り部に指を確実に引っ掛けるべく、使用者が指先を回転させようとする方向の反対側の側面にまで位置づけることを可能にするためには、最大限界位置における指掛り部と双眼鏡の筐体との間に所定の空間を設けなければならない。操作リングが最小限界位置に位置決めされてた状態において、最大限界位置へ向かう方向へ回転させる場合も同様であり、最小限界位置における指掛り部と双眼鏡の筐体との間に所定の空間を設けなければならない。その結果、光学機器の筐体の設計の自由度を制限してしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の問題を解決するものであり、ズーミングの操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る変倍機構を有する光学機器は、像倍率を変更するための変倍光学系と、変倍光学系の変倍率を調整するための柱状の変倍操作部材とを備え、変倍操作部材は、その軸心に沿って延びる複数の突起部を有し、この複数の突起部は、変倍操作部材の外周面において、周方向に沿って所定の間隔をおいて並列されるよう設けられることを特徴とする。
【0007】
変倍操作部材は、長手方向が光学機器の光軸に沿うよう光学機器の筐体に形成される凹部に配設され、好ましくは、複数の突起部は、変倍光学系の変倍率が最小となる最小限界位置に変倍操作部材が位置づけられたとき、筐体の外面と凹部が交差する第1の段部に近接する第1の突起部と、変倍光学系の変倍率が最大となる最大限界位置に変倍操作部材が位置づけられたとき、筐体の外面と凹部が交差する第2の段部に近接する第2の突起部とを有する。
【0008】
好ましくは、第1の突起部は、変倍操作部材が最大限界位置に位置づけられた状態で使用者が指を容易に引っ掛けることができ、かつ当該指を引っ掛けたまま変倍操作部材を最小限界位置へ向かう方向へ回転させることができるよう設けられ、第2の突起部は、変倍操作部材が最小限界位置に位置づけられた状態で使用者が指を容易に引っ掛けることができ、かつ当該指を引っ掛けたまま変倍操作部材を最大限界位置へ向かう方向へ回転させることができるよう設けられる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、変倍操作部材の外周面には、軸心に沿って延びる複数の突起部が周方向に沿って所定の間隔をおいて並列されている。この各突起部の間の間隔の存在により使用者は各突起部に指を容易に引っ掛けることができる。従って、使用者は、変倍操作部材の回転方向の反対側に指を伸ばしたり曲げたりする必要はない。
【0010】
変倍操作部材が最小限界位置に位置づけられた状態において、第1の段部とは相対的に離れた位置にある第2の突起部に指を引っ掛けることができ、そのまま変倍操作部材を回転させることができるよう設ければ、第1の段部の近傍に指を回り込ませるためのスペースを設ける必要がない。また、変倍操作部材が最大限界位置に位置づけられた状態において、第2の段部とは相対的に離れた位置にある第1の突起部に指を引っ掛けることができ、そのまま変倍操作部材を回転させることができるよう設ければ、第2の段部の近傍に指を回り込ませるためのスペースを設ける必要がない。従って、筐体の設計の自由度を制限することなく変倍操作部材の操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明に係る実施形態が適用される双眼鏡の平面図である。双眼鏡1は2軸連動式の双眼鏡である。筐体10には一対の対物光学系が配設される。一対の接眼ユニット20L、20Rには、それぞれ接眼光学系と像反転光学系が配設される。接眼ユニット20L、20Rの間には視度調整リング30、合焦リング40、ズームリング(変倍操作部材)50が配設される。
【0012】
図2は双眼鏡1を接眼光学系21L、21Rの側から示す図であり、図3は双眼鏡1を対物光学系10L、10Rの側から示す図である。また、図4は合焦リング40及びズームリング50を拡大して示す斜視図である。合焦リング40及びズームリング50は、それぞれ全体として柱状を呈し、筐体10の中央に形成される凹部11に設けられる。すなわち、合焦リング40及びズームリング50は一対の接眼ユニット20L、20Rの間に配設される。凹部11は、その深さが合焦リング40及びズームリング50の直径よりも短くなるよう形成されており、合焦リング40及びズームリング50の外周面の一部は常時露出している。合焦リング40及びズームリング50は軸心を中心に回転可能に支持される。
【0013】
ズームリング50の外周面には、不図示のズーム駆動機構と噛合するギア歯50a(図4参照)が形成されて滑り止め部の機能を有するとともに、その一部には指掛り部51が設けられている。指掛り部51は第1の突起部52と第2の突起部53を有する。第1及び第2の突起部52、53は、ズームリング50の軸心に沿って延び、かつズームリング50の外周面の周方向に沿って並列されている。さらに、第1の突起部52と第2の突起部53は所定の間隔をおいて設けられる。すなわち、第1の突起部52と第2の突起部53との間にはズームリング50の軸心に沿って延びるスペースS(図4参照)が形成されている。
【0014】
ズームリング50は、第1の突起部52の稜線52A(図4参照)が筐体10の上面と凹部11の内壁面が交差する一方の段部11L(第1の段部)に近接する位置と、第2の突起部53の稜線53A(図4参照)が筐体10の上面と凹部11が交差する他方の段部11R(第2の段部)に近接する位置との間で回転する。第1の突起部52の稜線52Aが筐体10の段部11Lと近接する位置でズームリング50が停止するとき、ズーム光学系の変倍率は最小となり、第2の突起部53の稜線53Aが段部11Rと近接する位置でズームリング50が停止するとき、ズーム光学系の変倍率は最大となる。第1の突起部52の稜線52Aが筐体10の段部11Lと近接する位置をズームリング50の最小限界位置と呼び、第2の突起部53の稜線53Aが段部11Rと近接する位置をズームリング50の最大限界位置と呼ぶ。
【0015】
仮に使用者が右手の指でズームリング50を操作する場合を想定すると、ズームリング50が最小限界位置にあるとき、使用者は指を第2の突起部53に引っ掛けることによりズームリング50を図2中の時計周りへ回転させることができる。すなわち、第1の突起部52と段部11Lと間に指先が入り込むよう指を伸ばす必要がない。また、ズームリング50が最大限界位置にあるとき、使用者は指を第1の突起部52に引っ掛けることによりズームリング50を図2中の反時計周りへ回転させることができる。すなわち、第2の突起部53と段部11Rとの間に指先が位置づけられるよう指を曲げる必要がない。これは、使用者が左手の指でズームリング50を操作する場合も同様である。
【0016】
また、ズームリング50が最小限界位置にあるとき、指を第1の突起部52に引っ掛ける必要がないため、段部11Lの近傍に指先を入り込ませるためのスペースを設ける必要がない。同様に、ズームリング50が最大限界位置にあるとき、指を第2の突起部53に引っ掛ける必要がないため、段部11Rの近傍に指先を入り込ませるためのスペースを設ける必要がない。従って、筐体10の設計の自由度が制限されない。
【0017】
通常、使用者は接眼光学系21L、21Rを介して被観察体の状態を視認しながらズームリング50を操作する。本実施形態では、第1の突起部52と第2の突起部53の間にスペースSが設けられているため、指先で触れることにより指掛り部51の位置を確認することができる。すなわち、接眼光学系21L、21Rから目を離すことなく、ズームリング50の回転位置を確認することができるため、おおよその変倍率を確認することができる。
【0018】
尚、本実施形態では、突起部の数は2つであるがこれに限るものではない。ズームリング50の径や露出している外周面の分量に応じて、突起部の数を3つ以上としてもよい。
【0019】
また、本実施形態では双眼鏡を例にとって説明したがこれに限るものではなく、変倍機構を備える他の光学機器にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明に係る実施形態が適用される双眼鏡の平面図である。
【図2】図1の双眼鏡を接眼光学系側から示す図である。
【図3】図1の双眼鏡を対物光学系側から示す図である。
【図4】合焦リングとズームリングとを拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 双眼鏡
10 筐体
10L、10R 対物光学系
11 凹部
20L、20R 接眼ユニット
21L、21R 接眼光学系
30 視度調整リング
40 合焦リング
50 ズームリング
51 指掛り部
52 第1の突起部
53 第2の突起部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
像倍率を変更するための変倍光学系と、
前記変倍光学系の変倍率を調整するための柱状の変倍操作部材とを備え、
前記変倍操作部材は、その軸心に沿って延びる複数の突起部を有し、
前記複数の突起部は、前記変倍操作部材の外周面において、周方向に沿って所定の間隔をおいて並列されるよう設けられることを特徴とする変倍機構を有する光学機器。
【請求項2】
前記変倍操作部材は、長手方向が前記光学機器の光軸に沿うよう前記光学機器の筐体に形成される凹部に配設され、
前記複数の突起部は、前記変倍光学系の変倍率が最小となる最小限界位置に前記変倍操作部材が位置づけられたとき、前記筐体の外面と前記凹部が交差する第1の段部に近接する第1の突起部と、前記変倍光学系の変倍率が最大となる最大限界位置に前記変倍操作部材が位置づけられたとき、前記筐体の外面と前記凹部が交差する第2の段部に近接する第2の突起部とを有することを特徴とする請求項1に記載の変倍機構を有する光学機器。
【請求項3】
前記第1の突起部は、前記変倍操作部材が前記最大限界位置に位置づけられた状態で使用者が指を容易に引っ掛けることができ、かつ当該指を引っ掛けたまま前記変倍操作部材を前記最小限界位置へ向かう方向へ回転させることができるよう設けられ、
前記第2の突起部は、前記変倍操作部材が前記最小限界位置に位置づけられた状態で使用者が指を容易に引っ掛けることができ、かつ当該指を引っ掛けたまま前記変倍操作部材を前記最大限界位置へ向かう方向へ回転させることができるよう設けられることを特徴とする請求項2に記載の変倍機構を有する光学機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−189530(P2006−189530A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105(P2005−105)
【出願日】平成17年1月4日(2005.1.4)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】