説明

変形装飾構造を備えた玩具

【課題】 パーツを変更することなく、簡単に玩具の装飾を変形して玩具の外観を変えることができる変形装飾構造を備えた玩具を提供する。
【解決手段】 複数の装飾片15a乃至15dを開口部14に沿って配置する。複数の装飾片15a乃至15dは、それぞれ装飾片が第1の角度位置あるときに開口部14から突出する第2の部分23と、装飾片が第2の角度位置にあるときに開口部14から突出する第1の部分21とを備えている。複数の装飾片は、第1及び第2の角度位置にあるときに、装飾片に設けた係合部29と壁部17に設けた突出部(被係合部)31とが係合状態になって、その位置に保持される。スライド部材5を複数の装飾片15a乃至15dが並ぶ方向にスライドさせて、スライド部材5に設けた印加部材43から装飾片15a乃至15dの第1又は第2の部分に力を加えることにより、複数の装飾片15a乃至15dを開口部14から出したり引っ込めたりして、外観を変える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玩具本体に変形装飾構造を備えた玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
実開平6−80494号公報(特許文献1)に示された武器玩具では、複数のパーツの組み合わせを変えることにより、武器の外観を変えて武器の種類を変更している。
【特許文献1】実開平6−80494号公報 図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら複数のパーツを組み合わせて異なる種類の武器に変更することは、玩具で遊んでいる際に、変形を必要とするたびに遊びを中断しなければならない問題がある。
【0004】
本発明の目的は、パーツを変更することなく、簡単に玩具の装飾を変形して玩具の外観を変えることができる変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0005】
本発明の他の目的は、耐久性のある変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、少ない部品点数で且つ簡単な構造で耐久性のある変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、スライド動作をすることにより、玩具の装飾を簡単に変更をすることができる変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、1回のスライド動作で2つの変形装飾構造を動作せることができる変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、並んだ複数の装飾片が必ず順番にしか変形することがない変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、変形した装飾片によって作られる外観が簡単に崩れることがない変形装飾構造を備えた玩具を提供することにある。
【0011】
本発明のその他の目的は、変形装飾構造を備えた刀の構造をなす玩具を提供することある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、中空の玩具本体に1以上の変形装飾構造が設けられている玩具を対象とする。本発明の玩具で用いる変形装飾構造は、玩具本体の外壁部に設けられた開口部と、開口部から一部が突出するように並んで配置された複数の装飾片と、玩具本体の内部に、開口部の両側に位置するように設けられて、複数の装飾片が並ぶ方向に延びる一対の対向する壁部とを備えている。なお開口部は、複数の装飾片に対して細長い開口部を1つ設けてもよいが、複数の装飾片のそれぞれに対応して複数の開口部を設けてもよいのはもちろんである。
【0013】
各装飾片は、少なくとも第1の部分と第2の部分とを備えている。複数の装飾片のそれぞれは、装飾片の第1の部分が玩具本体の内部に収納され且つ装飾片の第2の部分が開口部から突出した状態になる第1の角度位置と、装飾片の第2の部分が開口部の内部に収納され且つ装飾片の第1の部分が開口部から突出した状態になる第2の角度位置との間を回動中心を中心にして回動し得るように、一対の対向する壁部の少なくとも一方に回動可能に取り付けられている。そして装飾片が第1の角度位置にあるとき及び第2の角度位置にあるときに、それぞれ係合状態になって装飾片を第1の角度位置または第2の角度位置に保持する係合部及び被係合部のうち、係合部が装飾片に設けられ、被係合部が一対の対向する壁部の少なくとも一方に設けられている。
【0014】
そして、開口部から突出する第1の部分に外側から開口部内に向かう方向の外力が加えられると第1の部分が回動中心を中心にして回転しながら開口部内に入り、同時に第2の部分が回動中心を中心にして回転しながら開口部から突出し、開口部から突出する第2の部分に外側から開口部内に向かう方向の外力が加えられると第2の部分が回動中心を中心にして回転しながら開口部内に入り、同時に第1の部分が回動中心を中心にして回転しながら開口部から突出するように、第1の部分と前記第2の部分の形状と位置とが定められている。
【0015】
また前述の係合部及び被係合部は、装飾片が第1の角度位置にあるときに第2の部分に所定以上の外力が加わると係合が離脱し、装飾片が第2の角度位置にあるときに第1の部分に所定以上の外力が加わると係合が離脱するように構成されている。
【0016】
本発明で用いる変形装飾構造では、開口部から突出する装飾片の第1の部分または第2の部分に外力を加えることによって、各装飾片を簡単に開口部から突出させたり、開口部に収納することができる。したがって本発明によれば、部品の分解をしたり、パーツの組み合わせを変更したりすることなく、複数の装飾片を開口部から出したり、引っ込めたりすることにより、玩具本体の外観を変更することができる。
【0017】
複数の装飾片を、それぞれ回動中心を基準として複数の装飾片が並ぶ方向の一方の方向に第1の部分が存在し、複数の装飾片が並ぶ方向の他方の方向に第2の部分が存在するように並べると、例えば第1の部分または第2の部分に外力を与えるための印加手段を、複数の装飾片の第1の部分または第2の部分に接触させながら、複数の装飾片に沿って一方向に移動させること(スライド動作)により、複数の装飾片を順番に開口部から出したり、引っ込めたりすることができる。したがってこのようにすると、スライド動作を行うことにより、すばやく玩具の外観を変形することができる。なお印加手段として、例えば遊戯者の手の指や掌を用いてもよいが、後に説明するように、専用の印加部材を設けてもよい。
【0018】
なお複数の装飾片は、複数の装飾片の第1の部分がすべて第1の角度位置にあるときには、隣り合う二つの装飾片が第1の種類の係合構造を介して係合している。また複数の装飾片の第1の部分がすべて第2の角度位置にあるときには、隣り合う二つの装飾片が第2の種類の係合構造を介して係合している。第1の種類の係合構造は、第1の部分が位置する方向に位置する装飾片から順番に第1の部分を第1の角度位置から第2の角度位置に変位させる場合にのみ隣り合う二つの装飾片の係合状態が解除可能になるように構成されている。また第2の種類の係合構造は、第2の部分が位置する方向に位置する装飾片から順番に第1の部分を第2の角度位置から第1の角度位置に変位させる場合にのみ隣り合う二つの装飾片の係合状態が解除可能になるように構成されている。具体的には、第1の種類の係合構造は、装飾片の第1の部分が第1の角度位置から第2の角度位置に変位する過程で解除状態となり、装飾片の第1の部分が第2の角度位置から第1の角度位置に変位する過程で係合状態となるように構成されている。また第2の種類の係合構造は、装飾片の第1の部分が第2の角度位置から第1の角度位置に変位する過程で解除状態となり、装飾片の第1の部分が第1の角度位置から第2の角度位置に変位する過程で係合状態となるように構成されている。このような第1の種類の係合構造と第2の種類の係合構造を用いて、隣り合う装飾片を関係付けると、並んでいる複数の装飾片を必ず一方の方向または他方の方向から順番に変形させる場合にしか、各装飾片の姿勢を変えることができなくなる。その結果、僅かな一部の装飾片に外力を加えるだけで、変形した外観が簡単に崩れてしまうといった事態が発生するのを防止することができて、耐久性のある変形態様を確保できる。
【0019】
なお装飾片が第1の角度位置に達すると装飾片の一部と当接して装飾片の更なる変位を規制する第1のストッパ部と、装飾片が第2の角度位置に達すると装飾片の一部と当接して装飾片の更なる変位を規制する第2のストッパ部とを更に設けておくのが好ましい。このようなストッパ部を設けることにより、必要以上の外力が第1の部分及び第2の部分に加えられたとしても、装飾片の取付構造が壊れたり、装飾片自身が壊れたりするのを防止できる。
【0020】
なお複数の装飾片のうち、複数の装飾片が並ぶ方向の前記一方の方向の端部に位置する装飾片を除いて、他の装飾片に第2のストッパ部を形成することができる。また複数の装飾片のうち、複数の装飾片が並ぶ方向の他方の方向の端部に位置する装飾片を除いて、他の装飾片に第1のストッパ部を形成してもよい。このようにすると、装飾片の数が幾つあっても、個々の装飾片に対するストッパ部を設ける位置を考慮する必要がなくなるので、設計が容易になる。また玩具本体側の構造がシンプルになる利点もある。
【0021】
玩具本体の外側には、複数の装飾片が並ぶ方向に沿って一方の方向と他方の方向にスライドするスライド部材を取り付けることができる。そしてこのスライド部材には、スライド部材が一方の方向にスライドする過程で第1の部分に外力を加え、スライド部材が他方の方向にスライドする過程で第2の部分に外力を加える印加部材を設けることができる。このようにするとスライド部材をスライド動作させることにより、複数の装飾片を順番に開口部から出したり、開口部内に引っ込めたりすることができる。スライド部材を用いると、手の指等を印加手段として用いる必要がなくなるため、年齢層の低い遊戯者でも、簡単に変形を楽しむことができる。
【0022】
なお印加部材は、スライド部材がスライド動作を行っている過程で、装飾片の第1の部分及び第2の部分の開口部から露出する露出面と接触する接触面を備えている。印加部材は、スライド部材に設けられた回動中心を中心にして回動し得る構造を有しているのが好ましい。この場合、接触面の形状は、スライド部材が一方の方向にスライドする際には第1の部分の露出面と常時接触し、スライド部材が他方の方向にスライドする際には第2の部分の露出面と常時接触し得るように定める。このように印加部材を回動し得る構造にして、しかも接触面の形状を特定すると、印加部材の接触面をスムーズに装飾片の第1及び第2の部分と接触させることができて、スライド部材の操作を楽に行える。
【0023】
前述の係合部と被係合部の構造は、係合が解除可能なものであればどのような構造であってもよい。例えば、係合部を、横断面形状が円形をなす孔部または凹部から構成し、被係合部を係合状態にあるときに孔部または凹部の内部に嵌合される半球状の突出部から構成してもよい。この場合には、装飾片の取付構造は、所定以上の外力が装飾片に加わったときに孔部または凹部と突出部との係合が解除されるように定めればよい。このような構造にすると、簡単な構造で係合の解除が容易な係合構造を構成することができる。
【0024】
なお玩具本体には、対向する一対の側壁部に、変形装飾構造がそれぞれ1つずつ設けることができる。この場合には、スライド部材に、2つの変形装飾構造に対応して2つの印加部材を設ければよい。そして2つの変形装飾構造と2つの印加部材は、スライド部材をスライドするときに、同時に変形動作を行う位置関係をもって配置すればよい。このようにすると2つの変形装飾構造に、1つのスライド部材を用いて同時に変形動作させることができる。
【0025】
また玩具本体が刀身部を構成し、スライド部材が鍔部を構成し、玩具本体の長手方向の一端にグリップ部が設けられて刀の構造をなす玩具に本発明を適用してもよいのは勿論である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、部品の分解をしたり、パーツの組み合わせ変更したりすることなく、複数の装飾片を開口部から出したり、引っ込めたりすることにより、玩具本体の外観を変更することができる利点が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の変形装飾構造を備えた玩具を実施するための最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1(A)及び(B)は、外観が変わる刀玩具に本発明を適用した実施の形態の一例の斜視図である。この刀玩具は、遊戯者が手で握るグリップ部1と、刀身を構成する玩具本体3と、鍔部を構成するスライド部材5と、2つの変形装飾構造7及び9とを備えている。なおこの玩具では、玩具本体3の基部に、図示しないボール状の認識パーツを嵌合する嵌合用凹部11を有し、認識パーツの内部の可動部材を駆動するためのモータを内蔵した制御部13を備えている。図1に示した状態は、スライド部材5を玩具本体3の先端側にスライドさせて、2つの変形装飾構造7及び9を突出変形させた状態を示している。2つの変形装飾構造7及び9は、玩具本体3の幅方向の両側壁にそれぞれ対称的に配置されている。またスライド部材5は、玩具本体3の刀身部の外壁上を玩具本体3の長手方向にスライド可能に嵌合されている。
【0028】
図2(A)乃至(D)は、変形装飾構造7及び9が非突出状態から突出状態に変化する過程(スライド部材5が制御部13から先端部に向かって移動する過程)を順番に示すために玩具の玩具本体3の一部を半割り状態にして示した図であり、図3(A)及び(B)は変形の過程の要部を拡大して示した斜視図である。2つの変形装飾構造7及び9は、対称的な形状を有しているため、一方の変形装飾構造7について図2及び図3を参照して説明する。
【0029】
変形装飾構造7は、玩具本体3の外壁部に設けられた開口部14と、開口部14から一部が突出するように並んで配置された4つの装飾片15a乃至15dと、玩具本体3の内部に、開口部14の両側に位置するように設けられて、4つの装飾片15a乃至15dが並ぶ方向に延びる一対の対向する壁部17及び19(図3には一方の壁部17だけを示してある)とを備えている。この例の開口部14は、4つの装飾片15a乃至15dに対して1つだけ設けられた細長い開口部である。
【0030】
図3に示すように、装飾片15a乃至15dは、開口部14から露出する第1の部分21及び第2の部分23とをそれぞれ備えている。装飾片15a乃至15dは、それぞれ回動中心を中心にして回動し得るように、一対の対向する壁部17及び19のうちの一方の対向する壁部17に回動可能に取り付けられている。回動中心を有する回動構造の構成は任意であるが、この例では、壁部17の内壁に固定軸25を設け、この固定軸25に装飾片15a乃至15dに設けた貫通孔27を嵌合した回動構造を備えている。したがって固定軸25の軸線が回動中心となる。この例では、他方の壁部19が、装飾片15a乃至15dと所定の間隙を介して対向して、装飾片15a乃至15dが固定軸25から外れるのを阻止する機能をはたしている。
【0031】
この例では、装飾片15a乃至15dのそれぞれは、第1の部分21が玩具本体3の内部に収納され且つ装飾片15a乃至15dの第2の部分23が開口部14から突出した状態になる第1の角度位置と、装飾片15a乃至15dの第2の部分23が開口部14の内部に収納され且つ装飾片15a乃至15dの第1の部分21が開口部14から突出した状態になる第2の角度位置との間を固定軸25を中心にして回動する。図3(B)において、装飾片15b及び15cが、第1の角度位置にあり、装飾片15aが第2の角度位置にある。
【0032】
装飾片15a乃至15dは、各装飾片が第1の角度位置にあるとき及び第2の角度位置にあるときに、それぞれ係合状態になって装飾片を第1の角度位置または第2の角度位置に保持する係合部29を備えている。本例では、係合部29が、固定軸25を中心とする仮想円弧上に中心が位置するように形成された孔部によって構成されている。そして壁部17には、図3(B)に示されるように、係合部29を構成する孔部が嵌合される半球状の突出部31からなる2つの被係合部が設けられている。被係合部は、回転軸25を中心とする仮想円弧上に半球状の二つの突出部31の中心が位置し、二つの突出部31の間に円弧状のガイド溝33が形成された構造を有している[図3(B)参照]。このガイド溝33には、係合部29を構成する孔部の周囲から壁部17側に突出する図示しない筒部が嵌合されている。図示しない筒部がガイド溝33内をスライド移動し、係合部29を構成する孔部に突出部31が嵌合されると、装飾片は第1の角度位置または第2の角度位置に保持された状態になる。このように構成することにより、装飾片15a乃至15dが第1の角度位置にあるときに第2の部分23に所定以上の外力が加わると係合が離脱し、装飾片15a乃至15dが第2の角度位置にあるときに第1の部分21に所定以上の力が加わると係合が離脱するように、係合部29及び被係合部を構成する突出部31が構成されることになる。
【0033】
前述の第1の部分21及び第2の部分23の形状と固定軸25に対する位置は、それぞれ開口部14から突出する第1の部分21に外側から開口部14内に向かう方向の外力が加えられると第1の部分21が回動中心(固定軸25)を中心にして回転しながら開口部14内に入り、同時に第2の部分23が回動中心(固定軸25)を中心にして回転しながら開口部14から突出し、開口部14から突出する第2の部分23に外側から開口部14内に向かう方向の外力が加えられると第2の部分23が回動中心(固定軸25)を中心にして回転しながら開口部14内に入り、同時に第1の部分21が回動中心を中心にして回転しながら開口部14から突出するように定められている。その結果、この変形装飾構造7では、開口部14から突出する装飾片15a乃至15dの第1の部分21または第2の部分23に外力を加えることによって、各装飾片15a乃至15dを簡単に開口部14から突出させたり、開口部14内に収納することができる。したがって本実施の形態によれば、部品を分解したり、パーツの組み合わせ変更をすることなく、複数の装飾片15a乃至15dを開口部14から出したり、引っ込めたりすることにより、玩具本体3の外観を変更することができる。
【0034】
なお本実施の形態では、装飾片15a乃至15dが、第1の角度位置に達すると装飾片の一部(突出部35)と当接して装飾片の更なる変位を規制する第1のストッパ部(凹部37)と、装飾片15a乃至15dが第2の角度位置に達すると装飾片の一部(突出部39)と当接して装飾片の更なる変位を規制する第2のストッパ部(41)とを備えている。この例では、4つの装飾片15a乃至15dのうち装飾片が並ぶ方向の他方の方向(先端方向)の端部に位置する装飾片15dを除いて、3つの装飾片15a乃至15cには第1のストッパ部(37)に当たる突出部35が一体に形成されている。そして装飾片が並ぶ方向の一方の方向(グリップ部に向かう方向)の端部に位置する装飾片15aを除いて、他の装飾片15b乃至15dには第1のストッパ部を構成する凹部37が形成されている。また4つの装飾片15a乃至15dのうち、装飾片が並ぶ方向の一方の方向の端部に位置する装飾片15aを除いて、他の装飾片15b乃至15dには第2のストッパ部(41)に当接する突出部39が形成されている。そして装飾片が並ぶ方向の他方の方向(先端に向かう方向)の端部に位置する装飾片15dを除いて、他の装飾片15a乃至15cには第2のストッパ部を構成する凹部41が形成されている。なおこの例では、装飾片15dに凹部41と同様の凹部が形成されているが、この凹部は第2のストッパ部としては機能しないのでストッパ部ではない。このように第1及び第2のストッパ部37及び41を設けると、装飾片の数が幾つあっても、個々の装飾片に対するストッパ部を設ける位置を考慮する必要がなくなるので、設計が容易になる。また玩具本体3側の構造がシンプルになる利点もある。
【0035】
特に、本実施の形態では、それぞれ固定軸(回動中心)25を基準として、装飾片15a乃至15dが並ぶ方向の一方の方向(グリップ部側に向う方向)に第1の部分21が存在し、装飾片15a乃至15dが並ぶ方向の他方の方向(先端に向かう方向)に第2の部分23が存在するように、装飾片15a乃至15dを並べている。その上で、本実施の形態では、玩具本体3の外側には、装飾片15a乃至15dが並ぶ方向に沿って一方の方向(グリップ部に向かう方向)と他方の方向(先端に向かう方向)にスライドするスライド部材5を取り付けている。そしてこのスライド部材5には、スライド部材5が一方の方向にスライドする過程で、装飾片15a乃至15dの第1の部分21に外力を加え、スライド部材5が他方の方向にスライドする過程で、装飾片15a乃至15dの第2の部分23に外力を加える印加部材43を設けている。
【0036】
本実施の形態で用いている印加部材43は、スライド部材5がスライド動作を行っている過程で、装飾片15a乃至15dの第1の部分21及び第2の部分23の開口部14から露出する露出面と接触する接触面45を備えている。そして印加部材43は、スライド部材5に設けられた軸(回動中心)47を中心にして、所定の角度範囲内で回動し得る構造を有している。このとき、印加部材43は、印加部材43に設けた板状部48により回転範囲が規制されるように構成してもよい。接触面45は、軸47を中心とする円弧面にはなっていない。この接触面45の形状は、スライド部材5が一方の方向(グリップ部に向かう方向)にスライドする際には第1の部分21の露出面と常時接触し、スライド部材5が他方の方向(先端に向かう方向)にスライドする際には第2の部分23の露出面と常時接触し得るように定められている。このように印加部材43を回動し得る構造にして、しかも接触面45の形状を特定すると、印加部材43の接触面をスムーズに装飾片15a乃至15dの第1及び第2の部分21及び23と接触させることができて、スライド部材5の操作を楽に行える。
【0037】
図3に示すように、スライド部材5を先端側に向かってスライドさせると、印加部材43が第2の部分23に図3で見て時計回り方向の力を与えることになり、装飾片は時計回り方向に回動する。印加部材43から第2の部分23に加えられる力が、装飾片が第1の角度位置にある状態から係合部29を構成する孔部と下側に位置する半球状の突出部(被係合部)31との係合を解除することができて、しかも図3(B)に示すように装飾片が第2の角度位置に達する際に、係合部29を構成する孔部に上側に位置する半球状の突出部(被係合部)31が嵌り込むことを可能にする程度の力になるように、印加部材43の接触面45の形状が定められている。スライド部材5が更にスライドしても、係合部29と突出部(被係合部)31との係合により、装飾片15a乃至15dは自然に落下することはない。
【0038】
図4及び図5に示すように、スライド部材5を玩具本体3の先端側からグリップ部1側にスライドするときには、印加部材43が第1の部分21に、図5で見て反時計回り方向の力を与えることになり、装飾片は反時計回り方向に回動する。印加部材43から第1の部分21に加えられる力が、装飾片が第2の角度位置にある状態から係合部29を構成する孔部と上側に位置する半球状の突出部(被係合部)31との係合を解除することができて、しかも装飾片が第1の角度位置に達する際に、係合部29を構成する孔部に下側に位置する半球状の突出部(被係合部)31が嵌りこむことを可能にする程度の力になるように、印加部材43の接触面45の形状が定められている。開口部14内に入った装飾片15a乃至15dは、第2の角度位置まで到達することによって、係合部29を構成する孔部に下側に位置する半球状の突出部(被係合部)31が嵌り込むことによって、第2の角度位置に保持された状態になる。したがって遊戯者が意図的に第2の部分23を押さない限り、玩具を振り回しても開口部14内に入った装飾片15a乃至15dが、自然に開口部14から飛び出すことはない。
【0039】
特に、本実施の形態では、凹部37と突出部35とが第1の種類の係合構造を構成している。また凹部41と突出部39とが第2の種類の係合構造を構成している。第1の種類の係合構造(35,37)は、第1の部分21が位置する方向に位置する装飾片から順番に第1の部分21を第2の角度位置に変位させる場合にのみ隣り合う二つの装飾片の係合状態が解除可能になるように構成されている。また第2の種類の係合構造(39,41)は、第2の部分23が位置する方向に位置する装飾片から順番に第1の部分21を第2の角度位置から第1の角度位置に変位させる場合にのみ隣り合う二つの装飾片の係合状態が解除可能になるように構成されている。具体的には、第1の種類の係合構造(35,37)は、装飾片の第1の部分21が第1の角度位置から第2の角度位置に変位する過程で解除状態となる。また第1の種類の係合構造(35,37)は、装飾片の第1の部分21が第2の角度位置から第1の角度位置に変位する過程で係合状態となる。そして第2の種類の係合構造(39,41)は、装飾片の第1の部分21が第2の角度位置から第1の角度位置に変位する過程で解除状態となる。また第2の種類の係合構造(39,41)は、装飾片の第1の部分21が第1の角度位置から第2の角度位置に変位する過程で係合状態となる。このような第1の種類の係合構造(35,37)と第2の種類の係合構造(39,41)を用いて、隣り合う装飾片を関係付けると、一列に並んでいる複数の装飾片15a乃至15dを必ず一方の方向または他方の方向から順番に変形させる場合にしか、各装飾片の姿勢を変えることができなくなる。すなわち並んでいる複数の装飾片15a乃至15dの中間位置にある装飾片に外力が加わっても、その装飾片の姿勢(角度位置)が変わることはない。その結果、変形した外形が容易に崩れることがないといった効果が得られる。
【0040】
複数の装飾片15a及至15dすべてが第1の角度位置となっているときには、係合部29を構成する貫通孔に下側に位置する突出部31が嵌り込んで、その嵌合が保持された状態になっており、また第1の種類の係合構造(35,37)も係合状態になっている。したがって、各装飾片の第2の部分23に一方の方向(グリップ部に向かう方向)から他方の方向(先端方向)へ順番に外力を加えない限り、各装飾片の姿勢が変わることはなく、変形した外形が維持される。また、複数の装飾片15a及至15dすべてが第2の角度位置となっているときには、係合部29を構成する貫通孔に上側に位置する突出部31が嵌り込んで、その嵌合が保持された状態になっており、また第2の種類の係合構造(39,41)も係合状態になっている。したがって、各装飾片の第1の部分21に他方の方向(先端方向)から一方の方向(グリップ部に向かう方向)へ順番に外力を加えない限り、各装飾片の姿勢が変わることはなく、変形した外形が維持される。その結果、変形が完成した状態の玩具の外観が簡単に崩れることがないにもかかわらず、スライド動作をすることにより簡単に玩具の外観を変えることができる。
【0041】
本実施の形態では、スライド部材5をスライド動作することにより、4つの装飾片15a乃至15dを順番に開口部14から出したり、開口部14内に引っ込めたりすることができる。その結果、スライド部材5のスライド動作を行うだけで、すばやく玩具の外観を変形することができる。なお本実施の形態では、スライド部材5を設けているが、専用のスライド部材を設けずに、例えば遊戯者の手の指や掌を印加手段として用いることができるのは勿論である。
【0042】
また本実施の形態では、刀玩具に本発明を適用したが、本発明は刀玩具に適用する場合にのみ限定されるものではない。例えば、怪獣玩具や魚形状の玩具の背びれ部分や尾びれ部分等にも、本発明を適用することができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(A)及び(B)は、外観が変わる刀玩具に本発明を適用した実施の形態の一例の斜視図である。
【図2】(A)乃至(D)は、変形装飾構造が非突出状態から突出状態に変化する過程を順番に示すために玩具の玩具本体の一部を半割り状態にして示した図である。
【図3】(A)及び(B)は、図2における変形の過程の要部を拡大して示した斜視図である。
【図4】(A)乃至(D)は、変形装飾構造が突出状態から非突出状態に変化する過程を順番に示すために玩具の玩具本体の一部を半割り状態にして示した図である。
【図5】図4における変形の過程の要部を拡大して示した斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
1 グリップ部
3 玩具本体
5 スライド部材
7,9 変形装飾構造
13 制御部
14 開口部
15a乃至15d 装飾片
17,19 壁部
21 第1の部分
23 第2の部分
25 固定軸(回転中心)
29 係合部
31 突出部(被係合部)
33 ガイド溝
37 凹部(第1のストッパ部)
41 凹部(第2のストッパ部)
43 印加部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の玩具本体に1以上の変形装飾構造が設けられている玩具であって、
前記変形装飾構造は、
前記玩具本体の外壁部に設けられた開口部と、
前記開口部から一部が突出するように並んで配置された複数の装飾片と、
前記玩具本体の内部に、前記開口部の両側に位置するように設けられて前記開口部に沿って延びる一対の対向する壁部とを備え、
前記装飾片の第1の部分が前記玩具本体の内部に収納され且つ前記装飾片の第2の部分が前記開口部から突出した状態になる第1の角度位置と、前記装飾片の前記第2の部分が前記開口部の内部に収納され且つ前記装飾片の第1の部分が前記開口部から突出した状態になる第2の角度位置との間を回動中心を中心にして回動し得るように、前記複数の装飾片のそれぞれが、前記一対の対向する壁部の少なくとも一方に回動可能に取り付けられており、
前記装飾片が前記第1の角度位置にあるとき及び前記第2の角度位置にあるときに、それぞれ係合状態になって前記装飾片を前記第1の角度位置または第2の角度位置に保持する係合部及び被係合部のうち、前記係合部が前記装飾片に設けられ、前記被係合部が前記一対の対向する壁部の少なくとも一方に設けられており、
前記開口部から突出する前記第1の部分に外側から前記開口部内に向かう方向の外力が加えられると前記第1の部分が前記回動中心を中心にして回転しながら前記開口部内に入り、同時に前記第2の部分が前記回動中心を中心にして回転しながら前記開口部から突出し、前記開口部から突出する前記第2の部分に外側から前記開口部内に向かう方向の外力が加えられると前記第2の部分が前記回動中心を中心にして回転しながら前記開口部内に入り、同時に前記第1の部分が前記回動中心を中心にして回転しながら前記開口部から突出するように、前記第1の部分と前記第2の部分の形状と位置とが定められており、
前記係合部及び前記被係合部は、前記装飾片が第1の角度位置にあるときに前記第2の部分に所定以上の前記外力が加わると係合が離脱し、前記装飾片が第2の角度位置にあるときに前記第1の部分に所定以上の前記外力が加わると係合が離脱するように構成されていることを特徴とする変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項2】
前記複数の装飾片は、前記回動中心を基準として複数の装飾片が並ぶ方向の一方の方向に前記第1の部分が存在し、前記複数の装飾片が並ぶ方向の他方の方向に第2の部分が存在するように並んでいることを特徴とする請求項1に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項3】
前記複数の装飾片は、前記複数の装飾片の第1の部分がすべて前記第1の角度位置にあるときには、隣り合う二つの前記装飾片が第1の種類の係合構造を介して係合しており、
前記複数の装飾片の第1の部分がすべて前記第2の角度位置にあるときには、隣り合う二つの前記装飾片が第2の種類の係合構造を介して係合しており、
前記第1の種類の係合構造は、前記第1の部分が位置する方向に位置する前記装飾片から順番に前記第1の部分を前記第1の角度位置から前記第2の角度位置に変位させる場合にのみ前記隣り合う二つの前記装飾片の係合状態が解除可能になるように構成されており、
前記第2の種類の係合構造は、前記第2の部分が位置する方向に位置する前記装飾片から順番に前記第1の部分を前記第2の角度位置から前記第1の角度位置に変位させる場合にのみ前記隣り合う二つの前記装飾片の係合状態が解除可能になるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項4】
前記第1の種類の係合構造は、前記装飾片の前記第1の部分が前記第1の角度位置から前記第2の角度位置に変位する過程で解除状態となり、前記装飾片の前記第1の部分が前記第2の角度位置から前記第1の角度位置に変位する過程で係合状態となるように構成されており、
前記第2の種類の係合構造は、前記装飾片の前記第1の部分が前記第2の角度位置から前記第1の角度位置に変位する過程で解除状態となり、前記装飾片の前記第1の部分が前記第1の角度位置から前記第2の角度位置に変位する過程で係合状態となるように構成されている請求項3に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項5】
前記玩具本体の外側には、前記複数の装飾片が並ぶ方向に沿って前記一方の方向と前記他方の方向にスライドするスライド部材が取り付けられており、
前記スライド部材には、前記スライド部材が前記一方の方向にスライドする過程で前記第1の部分に前記外力を加え、前記スライド部材が前記他方の方向にスライドする過程で前記第2の部分に前記外力を加える印加部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項6】
前記印加部材は、前記スライド部材がスライド動作を行っている過程で、前記装飾片の前記第1の部分及び第2の部分の前記開口部から露出する露出面と接触する接触面を備えており、
前記印加部材は前記スライド部材に設けられた回動中心を中心にして回動し得る構造を有しており、
前記接触面の形状は、前記スライド部材が前記一方の方向にスライドする際には前記第1の部分の前記露出面と常時接触し、前記スライド部材が前記他方の方向にスライドする際には前記第2の部分の前記露出面と常時接触し得るように定められていることを特徴とする請求項5に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項7】
前記係合部は、横断面形状が円形をなす孔部または凹部から構成され、前記被係合部は係合状態にあるときに前記孔部または凹部の内部に嵌合される半球状の突出部から構成され、
前記装飾片の取付構造は、所定以上の前記外力が前記装飾片に加わったときに前記孔部または凹部と前記突出部との係合が解除されるように定められている請求項1に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項8】
前記玩具本体には、対向する一対の側壁部に、前記変形装飾構造がそれぞれ1つずつ設けられており、
前記スライド部材には、2つの前記変形装飾構造に対応して2つの前記印加部材が設けられており、
2つの前記変形装飾構造と2つの前記印加部材は、前記スライド部材をスライドするときに、同時に変形動作を行う位置関係を持って配置されている請求項6に記載の変形装飾構造を備えた玩具。
【請求項9】
前記玩具本体が刀身部を構成し、前記スライド部材が鍔部を構成し、前記玩具本体の複数の装飾片が並ぶ方向の一端にグリップ部が設けられて刀の構造をなしている請求項5,6及び8に記載の変形装飾構造を備えた玩具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−44447(P2007−44447A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−245725(P2005−245725)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(506113602)株式会社コナミデジタルエンタテインメント (1,441)
【Fターム(参考)】