説明

変性アルコキシメタル組成物を用いたホログラム記録層形成用組成物、並びに該組成物を用いたホログラム記録媒体

【課題】 耐環境性、耐久性と、高い記録性能を兼ね備えた有機−無機ハイブリッドマトリックスからなるホログラム記録層を提供する。
【解決手段】 下記(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料から形成されたものである金属酸化物含有マトリックスと、光活性化合物とを含む記録層を備えるホログラム記録媒体であって、該記録層の揮発分が5%以下であることを特徴とする、ホログラム記録媒体。
(A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低熱膨張係数および耐久性向上に効果のある変性アルコキシメタルを含むホログラム記録層形成用組成物、並びに該組成物を用いたホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体のさらなる大容量化、高密度化に向けて、光の干渉による光強度分布に応じて記録層の屈折率を変化させ、ホログラムとして情報を記録するホログラム方式の光記録媒体が開発されている。
ホログラム作製に関する一般的原理は、いくつかの文献や専門書などに記載されている。これらによれば、2光束のコヒーレントなレーザー光の一方を記録対象物に照射し、その光を受け取れる位置に感光性のホログラム記録材料が置かれる。ホログラム記録材料には、対象物からの光の他に、もう一方のコヒーレントな光が、対象物に当たらずに直接照射される。対象物からの光を物体光、また直接記録材料に照射される光を参照光といい、参照光と物体光との干渉縞が画像情報として記録される。次に処理された記録材料に参照光と同じ光(再生光)を照射すると、記録の際に対象物から記録材料に最初に到達した反射光の波面を再現するようにホログラムによって回折され、その結果、対象物の実像とほぼ同じ物体像を3次元的に観測することができる。参照光と物体光を同じ方向からホログラム記録材料に入射させて形成されるホログラムを透過型ホログラム、参照光と物体光を反対側から入射させて形成したホログラムを反射型ホログラムという。干渉縞間隔に対して膜厚が十分に厚い(通常は干渉縞間隔の5倍以上、または1μm以上程度の膜厚を言う)ホログラムを体積型ホログラムといい、膜厚方向に記録を行えるために、膜厚が大きいほうが高密度での記録が可能である。
【0003】
公知の体積位相型ホログラム記録材料の例としては、湿式処理や漂白処理が不要なライトワンス形式があり、その組成としては、樹脂マトリックスに光活性化合物を相溶させたものが一般的である。例えば、樹脂マトリックスに、ラジカル重合やカチオン重合可能なモノマーを組み合わせたフォトポリマー方式が挙げられる(特許文献1〜4参照)。
情報の記録時は、物体光と参照光が照射されると、記録層には明部と暗部からなる干渉縞が形成される。例えば、光活性化合物がラジカル重合性化合物である場合、明部では、光重合開始剤が光を吸収してラジカル活性種へと変化する。このラジカル活性種は近隣のラジカル重合性化合物に付加反応し、その付加生成物はラジカル活性種へと変化する。さらに、このラジカル活性種となった付加生成物は近隣のラジカル重合性化合物に付加反応する。この一連の光重合反応が繰り返し起こることで記録層に明部のポリマーが生成される。一方、明部の重合反応にともなってラジカル重合性化合物の濃度勾配ができ、記録層中の暗部にあるラジカル重合性化合物は明部へと拡散移動し、反対に、明部にある他の成分は暗部へと拡散移動する。これにより、干渉縞の明部と暗部は異なる化合物により構成されて、異なる屈折率を持つようになる。その結果、ホログラム光記録媒体は、この屈折率差を情報として保持する。屈折率差が大きいほど回折効率が大きくなるため、屈折率差を持たせるために、樹脂マトリックスまたはモノマーのどちらか一方に、芳香環、ヘテロ環、塩素、臭素などを有する化合物を用いるなどの工夫がなされている。
【0004】
フォトポリマー方式は一般的に樹脂マトリックス、光活性化合物、光重合開始剤の基本組成からなり、高回折効率と乾式処理を両立できうる実用的で有望な方式であるが、記録に際しての高い感度、十分な回折効率、高S/N比を有し、高い多重度を達成するものが求められており、さらに記録信号の安定性や信頼性に優れるものが望まれている。それらを達成するために記録用組成物の組成や媒体の製法について種々検討がなされている。
【0005】
特に、フォトポリマー方式の材料は、有機材料のみで構成されており、耐環境性、耐久性等において問題がある可能性が高い。
そこで、これを解決するために有機−無機ハイブリッドマトリックス等が検討されている。無機材料は機械的強度、環境安定性に優れることで知られている。ところで、有機−無機ハイブリッド材料を作成する方法としては、従来より種々の方法が知られており、一般的には各種有機材料に対して、金属アルコキシド化合物の加水分解縮合反応を利用し、有機−無機をハイブリッドさせるものであるが、通常溶剤を必要としており、また、縮合時に低分子物質(水、アルコール等)も脱離・生成されることから、硬化物中にボイド(気泡)や反り、クラックなどが発生しやすく、長時間のプロセスが必要であり、さらに厚膜での硬化は非常に困難である。
【0006】
また、ホログラム記録材料においては、有機−無機ハイブリッドマトリックスの耐環境性、耐久性と、光活性化合物の易動度とのバランスをとることが難しい。すなわち、耐環境性、耐久性を高めるためには、マトリックスの機械的強度を出来るだけ高めなければならないが、一方で、記録信号の十分な変調度を確保するためには、光活性化合物がマトリックス中を速やかに拡散(易動)しなければならず、このことはマトリックスの高強度という要求と矛盾する。
【0007】
そこで、特許文献5参照には、環状エーテル基含有金属アルコキシド化合物、又はその多量体を含むマトリックス材料から形成されたホログラム記録材料が開示されている。金属アルコキシド化合物の加水分解縮合による金属間の架橋(金属−酸素−金属結合による架橋)と、環状エーテルのカップリング反応による架橋からなるマトリックスは、耐環境性、耐久性と、光活性化合物の易動度とのバランスがとれるとされているが、性能が未だ不十分であり改良が望まれている。また、記録層の作成には溶剤を必要としており、乾燥時ボイド(気泡)の発生などにより記録層が不均一になりやすく、工業的に製造するには好ましくない。また、透明基板をスペーサーを介して張り合わせた形の注入方式の記録層を作成するのは困難である。更に、マトリックス内に残存する溶剤や、縮合時に脱離する水、アルコール等により、記録層が白濁したり、不均一になったり、記録済みの信号の保存安定性が悪化するなどの問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3737306号
【特許文献2】特開2005−43862号公報
【特許文献3】特表2005−502918号公報
【特許文献4】特開2004−158117号公報
【特許文献5】特開2008−90027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の有機−無機ハイブリッドマトリックスを用いたホログラム記録材料では、耐環境性、耐久性と、記録性能の両立が未だ不十分であり、また、記録層の作成には通常溶剤を必要としており、乾燥時ボイド(気泡)の発生などにより記録層が不均一になりやすく、工業的に製造するには好ましくない。更に、マトリックス内に残存する溶剤や、縮合時に脱離する水、アルコール等により、記録層が白濁したり、不均一になったり、記録後の信号の保存安定性が悪化するなどの問題があり、改良が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐環境性、耐久性と、高い記録性能を兼ね備えた有機−無機ハイブリッドマトリックスからなるホログラム記録
層を提供することにある。更には、無機成分の加水分解縮合時に脱離する水やアルコールなどの低分子物質の系外への放出を抑制し、溶剤を使用せずに有機−無機ハイブリッドマトリックスを作成する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、下記(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料から形成されたものである金属酸化物含有マトリックスと、光活性化合物とを含む記録層を備え、該記録層の揮発分が5%以下であるホログラム記録媒体が、耐環境性、耐久性と、高い記録性能を兼ね備えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
下記(A1)および/または(A2)を用いることにより、無機成分の加水分解縮合時に脱離・生成する水やアルコールなどの低分子物質の系外への放出を抑制し、溶剤を使用せずに有機−無機ハイブリッドマトリックスを作製することができ、良好なホログラム記録媒体が得られる。
(A1):下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体
すなわち、無機成分の加水分解縮合時に脱離・生成する水やアルコールなどの低分子物質の系外への放出を抑制し、溶剤を使用せずに有機−無機ハイブリッドマトリックスを作成するために、加水分解時に脱離するユニットに反応性基を導入することにより、加水分解時の低分子物質の系外への放出を抑制できないか検討した。
【0013】
特にエポキシ樹脂に無機成分をハイブリッドするための前駆体として、(A1)および/または(A2)を用いた場合、(A1)および/または(A2)の加水分解時に脱離する、環状エーテル基と水酸基を有する化合物を単独で、あるいは他エポキシ化合物共存下で、開環重合させることにより有機部であるエポキシ樹脂を形成し、同時に加水分解された(A1)および/または(A2)の縮合によって無機部を形成することにより、溶剤を用いずに有機−無機ハイブリッドマトリックスを作成できることを見出した。
【0014】
また、有機部と無機部が適度に相溶したモルフォロジーを有するマトリックスが形成されるため、耐環境性、耐久性と、光活性化合物の易動度とのバランスがとれたホログラム記録層がえられることを見出した。
即ち本発明は以下を要旨とする。
[1]下記(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料から形成されたものである金属酸化物含有マトリックスと、光活性化合物とを含む記録層を備えるホログラム記録媒体であって、
該記録層の揮発分が5%以下であることを特徴とする、ホログラム記録媒体。
( A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表
し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体
[2]Rが有する環状エーテル基がエポキシ基、及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]に記載のホログラム記録媒体。
【0015】
[3](A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料が更に、
「炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する」化合物(B)を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載のホログラム記録
媒体。
[4]上記「炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する化合物(B)」の環状エーテル基が、エポキシ基、及びオキセタニル基か
らなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、[3]に記載のホログラム記録媒体。
【0016】
[5](A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料が更に、脂環式の環状エーテル基を有する化合物(C)を含むことを特徴とする、[1]〜[4]のいずれ
かに記載のホログラム記録媒体。
[6]上記「脂環式の環状エーテル基を有する化合物(C)」の環状エーテル基が、エ
ポキシ基、及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、[5]に記載のホログラム記録媒体。
【0017】
[7]上記記録層の金属Mの含有量が15wt%以下であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載のホログラム記録媒体。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載のホログラム記録媒体に使用されるホログラム記録層形成用組成物であって、下記(A1)および/または(A2)、光活性化合物、光重合開始剤を少なくとも含み、組成物中の溶剤が50%以下であることを特徴とするホログラム記録層形成用組成物。
【0018】
(A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体
【発明の効果】
【0019】
本発明により、低熱膨張係数および耐久性向上に効果のある変性アルコキシメタルを含むホログラム記録層形成用組成物、および該組成物を用いたホログラム記録媒体が提供される。
該組成物はホログラム記録材料として、特に有用であり、これを用いることにより、耐
環境性、耐久性と高い記録性能を兼ね備えた高性能なホログラム記録媒体を実現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について説明する。尚以下の説明は本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本発明の形態を説明するために使用するものであり、実際の大きさを現すものではない。
【0021】
I.ホログラム記録媒体
本発明のホログラム記録媒体は、
下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物(A1)および/または金属アルコキシド多量体(A2)を含むマトリックス形成材料から形成されたものである金属酸化物含有マトリックスと、光活性化合物とを含む記録層を備え、該記録層の揮発分が5%以下であることを特徴とする。
【0022】
[I−1.マトリックス形成材料]
上記マトリックス形成材料には、金属アルコキシド化合物(A1)および/または金属アルコキシド多量体(A2)の何れか一種を単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体
[I−1−1.一般式(I)について]
以下、一般式(I)について、詳細に説明する。
【0023】
[I−1−1−(i).R]
一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表す。複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。
【0024】
<アルキル基>
ここでアルキル基とは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、n−オクチル基などの炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキル基を言う。
【0025】
<アリール基>
アリール基とは、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インダセニル基、アセナフチル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、アントラセ
ニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、テトラフェニル基、ナフタセニル基などの炭素数6〜20、好ましくは6〜10の単環または縮合環からなるアリール基を言う。
【0026】
<アルキル基およびアリール基が有していてもよい置換基>
これらのアルキル基及びアリール基は、更に置換基を有していてもよい。アルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;任意の有機基などを挙げることができる。
その任意の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜18のシクロアルキル基、ビニル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数3〜18のシクロアルケニル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基、フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基等の炭素数6〜18のアルキル基で置換されていてもよいアリール基、ベンジル基、フェネチル基等の炭素数7〜18のアラルキル基、ビニルオキシ基、プロペニルオキシ基、ヘキセニルオキシ基等の炭素数2〜18の直鎖又は分岐のアルケニルオキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0027】
<環状エーテル基を含有する有機基>
環状エーテル基を含有する有機基が有する環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルであり、具体的にはエポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフルフリル基等が挙げられるが、反応性の点から、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる群から選ばれる基が含まれることが好ましい。即ち、Rは環状エーテル基を含有する有機基を少なくとも1種有し、更にその環状エーテル基を含有する有機基には、エポキシ基、オキセタニル基からなる群から選ばれる基を少なくとも1種含むことが好ましい。
【0028】
一般式(I)において全Rに占める環状エーテル基を含有する有機基の割合は高いほど好ましい。アルコキシ基等の比率が高いと、加水分解時に低級アルコールが多く生成し、硬化物が白濁したり、気泡や反り、クラックなどを生じやすくなったり、記録済みの保存安定性が悪化するからである。一般式(I)において全Rに占める環状エーテル基を含有する有機基の割合(置換率)は好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。上限としては高いほど好ましいが、通常90%以下程度である。
【0029】
上記環状エーテル基は−ORのOに直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。このような連結基としては、O原子と環状エーテル基を結ぶ2価の有機基であれば特に制限はないが、具体的には炭素数1〜10、好ましくは1〜6の、分岐、もし
くはO、S、C=Oなどの中断を有してもよい鎖状もしくは環状のアルキレン基、炭素数6〜
20、好ましくは6〜10のアリーレン基、炭素数4〜10、好ましくは4〜5の2価のヘテロ環基、およびこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0030】
ここで分岐、置換基、もしくはO、S、C=Oなどの中断を有してもよいアルキレン基とは、メチレン、エチレン、n−プロピレン、i−プロピレン、n−ブチレン、i−ブチレン、t−ブチレン、n−ペンチレン、i−ペンチレン、ネオペンチレン、n−ヘキシレン、i−ヘキシレン、n−オクチレン基、メチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、メチレンチオ基、プロピレンチオ基、メチレンカルボニル基、エチレンカルボニル基、などの炭素数1〜10、好ましくは1〜4のアルキレン基を言う。
【0031】
アリーレン基とは、フェニレン基、インデニレン基、ナフチレン基、テトラヒドロナフ
チレン基、インダセニレン基、アセナフチレン基、アセナフテニレン基、フェナントレニレン基、アントラセニレン基、トリフェニレニレン基、ピレニレン基、クリセニレン基、テトラフェニレン基、ナフタセニレン基などの炭素数6〜20、好ましくは6〜10の単環または縮合環からなるアリーレン基を言う。
【0032】
2価のヘテロ環基とは、ピロール環、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピペリジン環、ピラン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾオキサゾール環、ジベンゾチアゾール環などの構造を含む炭素数4〜10、好ましくは4〜5の単環または縮合環からなる2価のヘテロ環基を言う。
なお、上記連結基は更に置換基を有していてもよい。このような置換基としては、前述のアルキル基およびアリール基が有していてもよい置換基の具体例が挙げられる。
これらの連結基の中では一般式(I)で示される化合物中における(OR)の占める割合
を過剰に大きくしないという点で、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチレンオキシ基、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基などが特に好ましい。・
【0033】
[I−1−1−(ii).M]
Mは金属を表す。具体的には、Si,Ti、Ta,Zr,Ge,Sn,Al及びZnからなる群から選ばれる金属である。アルコキシメタル(a1)の入手の容易さの点で、好ましくはSi,Tiである。
[I−1−1−(iii).n]
nは金属Mの価数以下の自然数を表す。
nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。
【0034】
<金属Mが有していてもよい置換基>
金属Mは、本発明の効果を損なわない限り、前記のOR、以外に任意の置換基を有していてもよい。具体的には、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、環状エーテル基を含有する有機基などが挙げられる。アルキル基、アリール基、環状エーテル基を含有する有機基の具体例としては、Rの具体例が挙げられる。
【0035】
アルキル基、アリール基が有していてもよい置換基としては、Rのアルキル基、アリール基が有していてもよい置換基のほか、メルカプト基、アミノ基などでもよい。
また、環状エーテル基を含有する有機基の環状エーテル基が連結基を介してMに結合している場合、該連結基は置換基を有していてもよい。該連結基が有していてもよい置換基としては、Rのアルキル基、アリール基が有していてもよい置換基の具体例が挙げられる。
【0036】
なお、金属MがOR以外に環状エーテル基を含有する有機基を有していると、該環状エーテル基と反応可能な官能基を有する、本化合物とは別個のマトリックス形成成分を共存させることによりそれらの化合物間に共有結合を結ぶことが可能となる。この場合、金属M由来の成分とマトリックス有機成分との相互作用が強化され、両成分をより均一に分布させることが容易になることが期待されることから、このような様態も好ましいと考えられる。
【0037】
[I−1−2.(A1)および(A2)の合成方法]
本発明において、金属アルコキシド化合物(A1)および金属アルコキシド多量体(A2)の合成方法に特に制限はなく、公知の種々の方法を用いることができる。
例えば、下記一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)及び/又は 上記一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)の有する金属M同士が−O−を介して相
互に結合することによって形成されたアルコキシメタル多量体(a2)に、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)を反応させる方法が挙げられる。
【0038】
M(OR’) 式(Ia)
(ここで、R’は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表し、Mは金属を表し、jは金属Mの価数以下の自然数である。jが2以上である場合、複数のR’は同一であっても異なっていてもよい。jが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
以下、該合成方法について詳述する。
【0039】
[I−1−2−(i)]アルコキシメタル(a1)およびアルコキシメタル多量体(a2)について
本発明において、アルコキシメタル(a1)は、上記一般式(Ia)で表される。アルコキシメタル多量体(a2)は、アルコキシメタル(a1)の有する金属M同士が−O−
を介して相互に結合することによって形成されている。
【0040】
以下、一般式(Ia)の各成分について説明する。
<M>
Mは金属であり、一般式(I)におけるMと同義である。
<R’>
R’は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。R’の具体例としては、前記一般式(I)におけるRの具体例が挙げられる。
【0041】
<jについて>
一般式(Ia)において、jは金属Mの価数以下の自然数を表す。
jが2以上である場合、複数のR’は同一であっても異なっていてもよい。また、jが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。金属Mが更に有していてもよい置換基としては、前記一般式(I)における、金属Mが有していてもよい置換基の具体例が挙げられる。
【0042】
<分子量>
本発明の一般式(Ia)で表される化合物(a1)の分子量は、通常3000以下、好ましくは1000以下である。
<(a1)の具体例>
アルコキシメタル(a1)およびアルコキシメタル多量体(a2)の具体例を、以下に例示するが、本発明の要旨を超えない限り以下のものに限定されるものではない。
【0043】
金属MがSiである場合の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等及びその多量体等が、金属MがSi以外である場合の具体例としては、ペンタエトキシタンタル、テトラt−ブトキシジルコニウム、チタンブトキシド等及びその多量体等が挙げられる。
<アルコキシメタル多量体(a2)の合成方法>
アルコキシメタル(a1)の金属MがSiである場合、例えばケイ素とアルコールとの反応、ケイ素ハロゲン化物とアルコールとの反応、あるいはアルコキシシランのエステル交換反応等により得られる。アルコキシメタル多量体(a2)を得るための部分加水分解・縮合は、必要に応じて、有機酸等の触媒、有機溶剤を用い、部分加水分解・縮合反応により生成したアルコールを留出させながら行う。
【0044】
[I−1−2−(ii)]環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)について
一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)及び/又は一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)の有する金属M同士が−O−を介して相互に結合すること
によって形成されたアルコキシメタル多量体(a2)と反応させる、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)としては、環状エーテル基と水酸基を有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、反応性の点から分子量が80以上1000未満であるものが好ましい。
【0045】
ここで、環状エーテル基とは、前述一般式(I)におけるRが有する環状エーテル基に同義であり、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルであるが、反応性の点からエポキシ基、及びオキセタニル基から選ばれることが好ましい。
<(a3)の具体例>
本発明において、一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)及び/又は一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)の有する金属M同士が−O−を介して相
互に結合することによって形成されたアルコキシメタル多量体(a2)と反応させるのに好適な、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)の具体例を、以下に例示するが、本発明に用いる環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)は、その要旨を超えない限り以下のものに限定されるものではない。
【0046】
例えば、グリシドール、グリセロールジグリシジルエーテル、3−メチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが挙げられ、なかでもグリシドール、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンが好ましい。
[I−1−2−(iii)](A1)および(A2)の反応条件
金属アルコキシド化合物(A1)および金属アルコキシド多量体(A2)は、一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)及び/又は一般式(Ia)で表されるアルコキシメタル(a1)の有する金属M同士が−O−を介して相互に結合することによって形成されたアルコキシメタル多量体(a2)と、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)を反応させることにより得られる。アルコキシメタル(a1)及び/またはアルコキシメタル多量体(a2)と、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)の使用割合は、アルコキシメタル(a1)及び/またはアルコキシメタル多量体(a2)の有するアルコキシ基のより多くが、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)の有する水素原子を除いた残基が置換されたものとなるようにする。
【0047】
アルコキシメタル(a1)及び/またはアルコキシメタル多量体(a2)の有するアルコキシ基が、環状エーテル基と水酸基を有する化合物(a3)の有する水素原子を除いた残基に置換されている率(置換率)が小さいと、加水分解時に低級アルコールが多く生成し、硬化物が白濁したり、気泡や反り、クラックなどを生じやすくなったり、記録済みの保存安定性が悪化するため、好ましくは50%、より好ましくは60%、さらに好ましくは70%以上が置換されていることが好ましい。
【0048】
金属アルコキシド化合物(A1)および金属アルコキシド多量体(A2)の製造は、例えば、前記各成分を仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながら脱アルコール縮合反応することにより行われる。反応温度は50〜250℃程度、好ましくは80〜200℃程度であり、全反応時間は1〜15時間程度である。この反応は、アルコキシメタル(a1)の重縮合反応を防止するため、および生成物が着色するのを防止するため実質的に無水条件下で行うのが好ましい。
【0049】
また、上記の脱アルコール縮合反応は、触媒を使用しても使用しなくてもよい。具体的には、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫などが挙げられる。
また、上記反応は溶剤中でも、無溶剤でも行うこともできるが、本発明のホログラム記録媒体の記録層に用いる場合、溶媒の乾燥工程が入らない方が厚膜形成などの点で有利であるため、無溶剤で行うことが好ましい。溶剤を使用する場合は、各成分を溶解し、且つこれらに対し非活性である有機溶剤であれば特に制限はない。このような有機溶剤として
は、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶剤、或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
なお、これらの溶剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0050】
[I−1−2−(iv).(A1)および(A2)の具体例]
金属アルコキシド化合物(A1)および金属アルコキシド多量体(A2)の具体例としては、テトラメトキシシランまたはその多量体にグリシドールを付加させた化合物、テトラメトキシシランまたはその多量体にオキセタンアルコールを付加させた化合物などが挙げられる。
【0051】
[I−1−2−(v).(A1)および(A2)の分子量]
(A1)は、金属Mを除くOR部分、金属MがOR以外に置換基を有する場合はその置換基も含めて、通常分子量100以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下である。
(A2)は何量体であってもかまわないが、通常3〜10量体であり、3〜8量体が好ましい。分子量は通常200以上、好ましくは300以上であり、通常5000以下、好ましくは3000以下である。
【0052】
[I−1−2−(vi).(A1)および(A2)の使用量]
このようにして得られた金属アルコキシド化合物(A1)および金属アルコキシド多量体(A2)は低熱膨張率および耐久性向上に優れるものであり、特にホログラム記録媒体の記録層のマトリックス形成材料に用いた場合に、耐環境性、耐久性と高い記録性能を兼ね備えた高性能なホログラム記録媒体を実現することを可能とする特徴を有するものである。
【0053】
特に、低熱膨張率を向上させるため、金属アルコキシド化合物(A1)および金属アルコキシド多量体(A2)の使用量は、記録層中に5wt%以上、好ましくは10wt%以上、更に好ましくは20wt%以上である。また、金属Mの含有量が多くなり過ぎると光活性化合物が移動しにくくなり、記録しにくい場合があるため、通常95wt%以下、好ましくは90wt%以下である。
なお、本発明のホログラム記録媒体の記録層中の金属Mの含有量は15wt%以下、好
ましくは10wt%以下である。金属Mの含有量は、公知の種々の分析手法を用いて評価することが可能である。仕込組成が既知の場合、縮合が完全に進み、脱離アルコールが全て揮発した等の仮定のもと、計算することも可能である。
【0054】
[I−1−3.マトリックス形成反応]
上述のA1および/またはA2は、系内の微量水分などをきっかけとして、系内に共存する酸、またはアミン類などの塩基などの触媒により、加水分解−脱水縮合を繰り返し、無機部を形成する。一方、A1および/またはA2の加水分解によって脱離した環状エーテル基を有するアルコールは、系内に硬化剤や重合開始剤を共存させることにより環状エーテル基が反応して有機部を形成する。
【0055】
硬化剤としてはアミン類などの塩基、チオール類、フェノール類、酸無水物など、重合
開始剤としては、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤など、公知のものを任意に用いることができるが、反応のしやすさ、他成分への影響等の理由からカチオン重合開始剤が好ましい。
以下にアミン、チオール、フェノール、酸無水物について説明する。
【0056】
<アミン>
アミンとしては、第一級アミン基または第二級アミン基を含むものを用いることができる。このようなアミン類の例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等やその誘導体等の脂肪族ポリアミン、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N−アミノエチルピペラジン等やその誘導体等の脂環族ポリアミン、m−キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等やその誘導体等の芳香族ポリアミン、ダイマー酸等のジカルボン酸と上述のポリアミンとの縮合物等のポリアミド、2−メチルイミダゾール等やその誘導体等のイミダゾール化合物、これら以外にジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジッド等を挙げられることができる。
【0057】
<チオール>
チオールとしては、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、2,3−ブタンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,2−エタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,9−ノナンジチオール等や、エポメートQX10(ジャパンエポキシレジン社製)、エポメートQX11(ジャパンエポキシレジン社製)等のジチオール、チオコール(東レ・ファインケミカル社製)、カップキュア3−800(ジャパンエポキシレジン社製)、エピキュアQX40(ジャパンエポキシレジン社製)等のポリチオール等のチオール化合物が挙げられる。中でも、エポメートQX10、エポメートQX11、カップキュア3−800、エピキュアQX40等の市販の速硬化性ポリチオールが好適に用いられる。
【0058】
<フェノール>
フェノールとしてビスフェノールA、ノボラック型のフェノール樹脂、レゾール型のフェノール樹脂等が挙げられる。
<酸無水物>
酸無水物としては、一官能性の酸無水物として、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸等やその誘導体等、二官能性の酸無水物等として無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその誘導体等が挙げられる。
【0059】
<アミン、チオール、フェノール、酸無水物の使用量>
アミン、チオール、フェノール、酸無水物の使用量は、環状エーテル基のモル数に対する割合で、通常0.1当量以上、中でも0.7当量以上、また、通常2.0当量以下、中でも1.5当量以下の範囲が好ましい。マトリックス形成材料に後述のエポキシ化合物(B)(C)を含む場合には、(B)(C)の有するエポキシ基のモル数との和に対して、上記範囲内とする。アミン、チオール、フェノール、酸無水物の使用量が少な過ぎても多過ぎても、未反応の官能基数が多く、保存安定性を損なってしまう場合がある。
【0060】
<重合開始剤>
触媒として、硬化温度や硬化時間に応じてアニオン重合開始剤とカチオン重合開始剤を使用することができる。
アニオン重合開始剤は、熱または活性エネルギー線照射によってアニオンを発生するものであり、例としてはアミン類等が挙げられる。アミン類の例としては、ジメチルベンジルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のアミノ基含有化合物、およびこれらの誘導体;イミダゾール、2−メチ
ルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、およびその誘導体等が挙げられる。硬化温度や硬化時間に応じて1種あるいは複数使用しても良い。
【0061】
カチオン重合開始剤は、熱または活性エネルギー線照射によってカチオンを発生するものであり、例としては芳香族オニウム塩等が挙げられる。具体例としては、SbF、BF、AsF、PF、CFSO、B(C等のアニオン成分と、ヨウ素、硫黄、窒素、リン等の原子を含む芳香族カチオン成分とからなる化合物が挙げられる。中でも、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩等が好ましい。硬化温度や硬化時間に応じて1種あるいは複数使用しても良い。
【0062】
これらの開始剤の使用量は、マトリックス樹脂に対して、通常0.001重量%以上、中でも0.01重量%以上、また、通常50重量%以下、中でも10重量%以下の範囲が好ましい。これらの開始剤の使用量が過度に少ないと、開始剤の濃度が低過ぎるため、重合反応に時間がかかり過ぎる場合がある。一方、開始剤の使用量が過度に多いと、重合反応として、連続的な開環反応を生じなくなる場合がある。
【0063】
[I−1−4.炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する化合物(B)]
本発明のホログラム記録媒体の記録層にはさらに、光活性化合物の易動度を調整し記録速度を確保する目的で炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する化合物(B)を含んでいてもよい。化合物(B)は、炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0064】
ここで、アルキレンオキシド基は、炭素数4以上10以下、好ましくは4以上8以下である。炭素数が多すぎると分子の極性が低くなるために、光活性化合物、重合開始剤、触媒等との相溶性が悪くなったり、光学的な不均一性を生じたり、結晶化を生じ易くなるために記録速度が低下したりする場合がある。逆に炭素数が少なすぎると、光活性化合物が易動しにくくなり、記録が出来ない場合がある。化合物(B)の使用量は、記録層中に5
wt%以上、好ましくは10wt%以上、更に好ましくは20wt%以上である。使用量が少なすぎると、光活性化合物の易動度が低下し、記録速度が低下したりする場合がある。
【0065】
炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド鎖の例としては、炭素原子を含有する置換基を有するオキセタンを開環してなるアルキルトリメチレンオキシド鎖、テトラハイドロフランを開環してなるテトラメチレンオキシド鎖などが挙げられる。中でも、疎水性と相溶性やガラス転移温度とのバランスの観点から、テトラメチレンオキシド鎖が好ましい。
【0066】
また、環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルであるが、反応性の点からエポキシ基、及びオキセタニル基から選ばれることが好ましい。
上記条件を満たす化合物は、公知の方法で合成できる。一般的には、炭素数が4以上のアルキレンオキシド鎖を有するグリコールと、エピクロロヒドリンとを用いて合成することが可能である。
具体的にはポリテトラメチレンオキシド鎖を有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0067】
[I−1−5.脂環式の環状エーテル基を有する化合物(C)]
本発明のホログラム記録媒体の記録層にはさらに、光活性化合物の易動度を調整し記録速度を確保する目的で脂環式の環状エーテル基を有する化合物(C)を含んでいてもよい
。化合物(C)は、脂環式の環状エーテル基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
【0068】
また、環状エーテル基とは、環状の炭化水素の炭素を酸素で置換したエーテルであるが、反応性の点からエポキシ基、及びオキセタニル基から選ばれることが好ましい。
脂環式の環状エーテル基を有する化合物の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート等の化合物が挙げられる。
【0069】
化合物(C)の使用量は、記録層中に1wt%以上、好ましくは5wt%以上、更に好
ましくは10wt%以上である。使用量が少なすぎると、記録層の硬化性が悪化し、記録が出来ない場合がある。化合物(C)を使用することにより硬化性の向上を図ることが可
能となる。
【0070】
[I−1−6.化合物((A1)+(A2))/化合物(B)/化合物(C)の配合比]
本発明のホログラム記録媒体の記録層中の化合物(A)/化合物(B)/化合物(C)の
配合比は、化合物((A1)+(A2))/化合物(B)/化合物(C)=5〜80/5〜
80/1〜50(重量部)、好ましくは化合物((A1)+(A2))/化合物(B)/化合物(C)=10〜70/10〜70/3〜40(重量部)である。配合比によっては、
記録層が十分に硬化しなかったり、相溶性が悪く白濁したりする場合がある。
【0071】
I−6.その他成分
[I−2.光活性化合物]
本発明のホログラム記録媒体の記録層に使用される光活性化合物の種類は特に限定されず、公知の化合物の中から適宜選択することが可能であるが、通常は、重合性を有するモノマーが用いられる。重合性モノマーの例としては、カチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマー等が挙げられる。
【0072】
カチオン重合性モノマーの例としては、オキシラン環を有する化合物、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、ビニルエーテル類、N−ビニル化合物、オキセタン環を有する化合物等を挙げることができる。
アニオン重合性モノマーの例としては、炭化水素モノマー、極性モノマー等が挙げられる。
【0073】
ラジカル重合性モノマーとは、1分子中に1つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物であり、例としては、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリルアミド類、ビニルエステル類、ビニル化合物、スチレン類等が挙げられる。
上記例示したカチオン重合性モノマー、アニオン重合性モノマー、ラジカル重合性モノマーは、何れを使用することもでき、また、二種以上を併用してもよい。
【0074】
本発明のホログラム記録媒体の記録層に用いる光活性化合物は、光照射時の架橋に伴う収縮率低減の点および記録層中の移動度の確保という観点などから、通常分子量200以上、中でも300以上、通常分子量2500以下、中でも2000以下であることが好ましい。
また、該光活性化合物は、記録媒体等の保存安定性を向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下であることを言う。
【0075】
光活性化合物の使用量は、記録層中に0.1wt%以上30wt%以下、好ましくは0.5wt%以上20wt%以下、更に好ましくは1wt%以上10wt%以下である。光活性化合物の使用量が少なすぎると、屈折率の変化が小さく、記録効率が低くなる場合があり、光活性化合物の使用量が多すぎると、未反応の光活性化合物が多く残り、記録層からブリードアウトしたり、記録の保存性が悪くなる場合がある。
【0076】
[I−3.光重合開始剤]
前記光活性化合物の光重合に用いる光重合開始剤は、公知の光ラジカル重合開始剤であれば、何れを用いることも可能である。例としては、アゾ系化合物、アジド系化合物、有機過酸化物、有機硼素酸塩、オニウム塩類、ビスイミダゾール誘導体、チタノセン化合物、ヨードニウム塩類、有機チオール化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体等が用いられる。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。中でも、光重合開始剤としては、可視光領域で重合反応が生じるという理由から、チタノセン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、オキシムエステル化合物等が好ましい。
【0077】
上記の各種の光重合開始剤は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
光重合開始剤の使用量は、記録層中に0.05wt%以上10wt%以下、好ましくは0.1wt%以上5wt%以下である。光重合開始剤の使用量が少なすぎると、ラジカルの発生量が少なくなるため、光重合の速度が遅くなり、ホログラム記録感度が低くなる場合があり、光重合開始剤の使用量が多すぎると、光照射により発生したラジカル同士が再結合したり、不均化を生じたりするため、光重合に対する寄与が少なくなり、やはりホログラム記録感度が低くなる場合がある。
【0078】
[I−4.添加剤]
本発明のホログラム記録媒体の記録層には、本発明の主旨に反しない限りにおいて、上述の成分の他に、その他の成分を含有していてもよい。
更に、例えば、増感体の励起波長や励起エネルギーの制御、反応の制御、特性の改良等の必要に応じて、任意の添加剤を配合することができる。そのような添加剤の例としては、以下の化合物が挙げられる。
増感体の励起を制御する化合物の例としては、増感剤、増感補助剤等が挙げられる。
また、上記以外の添加剤として、反応効率の向上や記録層の物性調整のための可塑剤、記録層の吸水率制御のためなどの添加剤などを用いることができる。
【0079】
可塑剤の例としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシルなどのフタル酸エステル類、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジ−n−ブチルなどのアジピン酸エステル類、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどのセバシン酸エステル類、リン酸トリクレシルなどのリン酸エステル類、アセチルクエン酸トリブチルなどのクエン酸エステル類、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル類、エポキシ化大豆油、塩素化パラフィン、アセトキシメトキシプロパンなどのアルコキシ化(ポリ)アルキレングリコールエステル、ジメトキシポリエチレングリコールなどの末端アルコキシ化ポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
更に、反応の制御に使用する化合物を添加することもできる。この場合の例としては、重合開始剤、連鎖移動剤、重合停止剤、相溶化剤、反応補助剤等が挙げられる。
【0080】
これらの具体例としては、トリエチルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、アニリンなどのアミン化合物、p-メトキシフェノール、2,6−ジーt−ブチルーp−クレゾール、2,4,6−トリメチルフェノール、ベンジルアミノフェノール、ジヒドロキシベンゼン、ピロガロール、レゾルシノールなどのフェノール
類、ベンゾキノン、ヒドロキノン、などのキノン類、ニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼンなどのニトロ化合物、酢酸アリル、ブタン酸アリル、、ジアリルマロン酸ジエチル、アリルベンゼン、アリルアルコール、アリルアミンなどのアリル化合物、ベンゼンチオール、ベンジルメルカプタン、ドデカンチオールなどのチオール類、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド、ブチルジスルフィドなどのスルフィド類、テルピノレン、α―テルピネンなどのテルペノイド、1,4−シクロヘキサジエンなどの1,4−ジエン類などが挙げられる。
【0081】
その他、特性改良上必要とされ得る添加剤の例としては、分散剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの添加剤は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
添加剤の使用量は、記録層中に0.05wt%以上10wt%以下、好ましくは0.1wt%以上5wt%以下である。添加剤の使用量が少なすぎると効果が得られにくく、添加剤の使用量が多すぎると、ホログラム記録性能が悪くなる場合がある。
【0082】
[I−6.ホログラム光記録媒体]
本発明のホログラム光記録媒体におけるその他の具体的な構成に制限は無く、任意である。以下、本発明の一実施形態に係るホログラム光記録媒体(これを「本実施形態の光記録媒体」という場合がある。)について詳しく説明する。
本実施形態の光記録媒体は、少なくとも前述の(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料、光活性化合物、光重合開始剤を含むホログラム記録層形成用組成物(以下、ホログラム記録層形成用組成物という)を用いて形成された記録層を備えて構成される。また、本実施形態の光記録媒体は、必要に応じて、支持体及びその他の層を備えて構成される。
【0083】
なお、後述の記録方法の項に詳述するとおり、該記録層中に含まれる光活性化合物は、ホログラム記録などによってその一部が重合等の化学的な変化を生じるものである。従って、記録後のホログラム記録媒体においては、光活性化合物の一部が消費され、重合体など反応後の化合物として存在する。該光活性化合物の消費量は、記録情報量によっても変動すると考えられるが、データ記録後に、記録部分に一様な光を当てて、残存する光活性化合物をあえて消費させる、いわゆる「後露光」のような工程を経る場合には、該光活性化合物の大半が反応後の化合物に変化するものである。
【0084】
[I−6−1:記録層]
記録層は、情報が記録される層である。情報は通常、ホログラムとして記録される。本実施形態のホログラム記録媒体においては、記録層の厚みにも特に制限は無く、記録方法等を考慮して適宜定めればよいが、一般的には、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常2cm以下、好ましくは1.5cm以下の範囲である。記録層が厚過ぎる
と、光記録媒体における多重記録の際、各ホログラムの選択性が低くなり、多重記録の度合いが低くなる場合がある。また、記録層が薄過ぎると、記録層全体を均一に成形することが困難であり、各ホログラムの回折効率が均一で且つS/N比の高い多重記録が難しくなる場合がある。
【0085】
[I−6−2:支持体]
通常、ホログラム記録媒体は支持体を有し、記録層やその他の層は、この支持体上に積層されてホログラム記録媒体を構成する。ただし、記録層又はその他の層が必要な強度や耐久性を有する場合には、ホログラム記録媒体は支持体を有していなくてもよい。
支持体は、必要な強度及び耐久性を有しているものであれば、その詳細に特に制限はなく、任意の支持体を使用することができる。
【0086】
具体的に、支持体の形状に制限は無いが、通常は平板状又はフィルム状に形成される。
また、支持体を構成する材料にも制限は無く、透明であっても不透明であってもよい。支持体の材料として透明なものを挙げると、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフトエート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモルファスポリオレフィン、ポリスチレン、酢酸セルロースなどの有機材料;ガラス、シリコン、石英などの無機材料が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート、アクリル、ポリエステル、アモルファスポリオレフィン、ガラスなどが好ましく、特に、ポリカーボネート、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ガラスがより好ましい。
【0087】
一方、支持体上の材料として不透明なものを挙げると、アルミ等の金属;前記の透明支持体上に金、銀、アルミ等の金属、又は、フッ化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の誘電体をコーティングしたものをなどが挙げられる。
支持体の厚みにも特に制限は無いが、通常は0.1mm以上、1cm以下の範囲とすることが好ましい。支持体が薄過ぎると光記録媒体の機械的強度が不足し基板が反る場合があり、厚過ぎると光の透過量が減りさらにコストが高くなる場合がある。
【0088】
また、支持体の表面に表面処理を施してもよい。この表面処理は、通常、支持体と記録層との接着性を向上させるためになされる。表面処理の例としては、支持体にコロナ放電処理を施したり、支持体上に予め下塗り層を形成したりすることが挙げられる。ここで、下塗り層の組成物としては、ハロゲン化フェノール、又は部分的に加水分解された塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0089】
更に、表面処理は、接着性の向上以外の目的で行なってもよい。その例としては、例えば、金、銀、アルミ等の金属を素材とする反射コート層を形成する反射コート処理;フッ化マグネシウムや酸化ジルコニウム等の誘電体層を形成する誘電体コート処理などが挙げられる。また、これらの層は、単層で形成してもよく、2層以上を形成してもよい。
また、支持体は、本発明のホログラム記録媒体の記録層の上側及び下側の何れか一方にのみ設けてもよく、両方に設けてもよい。但し、記録層の上下両側に支持体を設ける場合、支持体の少なくとも何れか一方は、活性エネルギー線(励起光、参照光、再生光など)を透過させるように、透明に構成する。
【0090】
記録層の片側又は両側に透明支持体を有するホログラム記録媒体の場合、透過型又は反射型のホログラムが記録可能である。また、片側に反射特性を有する支持体を用いる場合は、反射型のホログラムが記録可能である。
更に、支持体にデータアドレス用のパターニングを設けてもよい。パターニング方法に制限は無いが、例えば、支持体自体に凹凸を形成してもよく、反射層(後述する)にパターンを形成してもよく、これらを組み合わせた方法により形成してもよい。
本実施形態のホログラム記録媒体には、上述した記録層及び支持体以外に、その他の層を設けてもよい。その他の層の例としては、保護層、反射層、反射防止層(反射防止膜)等が挙げられる。
【0091】
[I−6−3:保護層]
保護層は、酸素や水分による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための層である。保護層の具体的構成に制限は無く、公知のものを任意に適用することが可能である。例えば、水溶性ポリマー、有機/無機材料等からなる層を保護層として形成することができる。
【0092】
[I−6−4:反射層]
また、反射層は、ホログラム記録媒体を反射型に構成する際に形成される。反射型のホ
ログラム記録媒体の場合、反射層は支持体と記録層との間に形成されていてもよく、支持体の外側面に形成されていてもよいが、通常は、支持体と記録層との間にあることが好ましい。
【0093】
更に、透過型及び反射型の何れのホログラム記録媒体についても、記録光及び読み出し光が入射及び出射する側や、或いは記録層と支持体との間に、反射防止膜を設けてもよい。反射防止膜は、光の利用効率を向上させ、かつゴースト像の発生を抑制する働きをする。
【0094】
[I−6−5:製造方法]
本実施形態のホログラム記録媒体の製造方法に特に制限は無く、任意の方法で製造することが可能である。
例としては、本発明のホログラム記録層形成用組成物に、必要に応じて光分散剤や色材等の各種添加剤などを添加したホログラム記録材料を支持体に塗布し、記録層を形成して製造することができる。この際、塗布方法としては任意の方法を使用することができる。具体例を挙げると、スプレー法、スピンコート法、ワイヤーバー法、ディップ法、エアーナイフコート法、ロールコート法、及びブレードコート法、ドクターロールコート法等が挙げられる。 また、特に膜厚の厚い記録層を形成する場合には、ホログラム記録材料を
型に入れて成型する方法や、離型フィルム上に塗工して型を打ち抜く方法を用いて、記録層を形成することもできる。
【0095】
ここで、ホログラム記録材料に溶剤が多量に含まれる場合、溶剤を乾燥して記録層を作成する際に、ボイド(気泡)の発生などにより記録層が不均一になったり、白化したり、また、記録層に残存する溶剤によって記録後の信号の保存安定性が悪化するなどの問題が生じると考えられる。そのため本発明に用いるホログラム記録層形成用組成物中の溶剤の重量は50wt%以下、好ましくは、40wt%以下、更に好ましくは30wt%以下、特に好ましくは10wt%以下、中でも5wt%以下である。本発明の効果発現のためには実質溶媒を含まないことが最も好ましい。
【0096】
溶剤が含まれる場合、その種類に特に制限はないが、通常は、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与え、且つ、支持体を侵さないものを使用することが好ましい。
溶剤の例を挙げると、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
【0097】
なお、これらの溶剤は、何れか一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
ホログラム記録材料に溶剤が少ない場合は、ホログラム記録材料を、例えば、射出成形法やホットプレス法などによって成形して製造することができる。この場合、成形体が十分な厚み、剛性、強度などを有する場合には、当該成形体をそのまま本実施形態のホログ
ラム記録媒体とすることができる。
【0098】
[I−6−6:情報の記録及び再生方法]
本実施形態のホログラム記録媒体に対する情報の書き込み(記録)及び読み出し(再生)は、何れも光の照射によって行なわれる。
まず、情報の記録時には、光活性化合物の重合及び濃度変化を生じさせることが可能な光を、物体光(記録光とも呼ばれる。)として用いる。特に、本実施形態のホログラム記録媒体では、情報をホログラムとして記録するため、物体光を参照光と共に記録層に対して照射し、記録層において物体光と参照光とを干渉させるようにする。これによってその干渉光が、記録層内の光活性化合物の重合及び濃度変化を生じさせ、その結果、干渉縞が記録層内に屈折率差を生じさせ、前記の記録層内に記録された干渉縞により、記録層にホログラムとして記録されるのである。
【0099】
一方、記録層に記録されたホログラムを再生する場合は、所定の再生光(通常は、参照光)を記録層に照射する。照射された再生光は前記干渉縞に応じて回折を生じる。この回折光は前記記録層と同様の情報を含むものであるので、前記回折光を適当な検出手段によって読み取ることにより、記録層に記録された情報の再生を行なうことができる。
なお、記録光、再生光及び参照光は、その波長領域はそれぞれの用途に応じて任意であり、可視光領域でも紫外領域でも構わない。これらの光の中でも好適なものとしては、例えば、ルビー、ガラス、Nd−YAG、Nd−YVO4等の固体レーザー;GaAs、I
nGaAs、GaN等のダイオードレーザー;ヘリウム−ネオン、アルゴン、クリプトン、エキシマ、CO2等の気体レーザー;色素を有するダイレーザー等の、単色性と指向性に優れたレーザーなどが挙げられる。
【0100】
また、記録光、再生光及び参照光の照射量には何れも制限は無く、記録及び再生が可能な範囲であればその照射量は任意である。但し、極端に少ない場合には光活性化合物の化学変化が不完全過ぎて記録層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない虞があり、逆に極端に多い場合は、記録層の成分(本発明のホログラム記録材料)が劣化を生じる虞がある。したがって、記録光、再生光及び参照光は、記録層の形成に用いた本発明のホログラム記録材の組成や、重合開始剤の種類、及び配合量等に合わせて、通常1mJ/cm2以上 、20J/cm2以下の範囲で照射する。
また、ホログラム記録方式としては、偏光コリニアホログラム記録方式、参照光入射角多重型ホログラム記録方式等があるが、本発明のホログラム記録媒体を使用する場合にはいずれの記録方式でも良好な記録品質を提供することが可能である。
【0101】
[I−6−7:性能]
本発明のホログラム記録媒体は、耐環境性および耐久性に優れ、高いホログラム記録性能を有するという特徴を有する。本発明のホログラム記録媒体の記録層は、金属アルコキシド化合物(A1)および/または金属アルコキシド多量体(A2)を含むマトリックス形成材料を用いることにより、加水分解等に伴う低分子量アルコール等の揮発を最低限に抑えながら無機部を形成することが可能となり、同時に、有機部と無機部が適度に相溶したモルフォロジーを有するマトリックスとなる。このため、記録層全体に占める金属Mの割合が低めであっても、適度な無機部の存在によって低収縮、低熱膨張、高耐久性を達成することが出来、同時に有機部の存在により光活性化合物の易動度が確保されるため、高い記録性能が達成されるものと考えられる。
ここで耐環境性および耐久性にすぐれるとは、ホログラム記録層の揮発分が5重量%以下であり、熱膨張係数が小さいことを言い、高いホログラム記録性能を有するとは記録密度の指標であるM/#が高く、記録に伴う収縮率が低いことを言う。
【0102】
[I−6−7−1.揮発分]
本発明のホログラム記録媒体の記録層の揮発分について説明する。
揮発分は次のようにして求めた。即ち、本発明のホログラム記録媒体の記録層をサンプル重量が5mg程度になるよう適当な大きさにに切り出し、それをそのままTG−DTA(Thermogravimetry−Differetial Thermal Analysis、セイコーナノテクノロジーズ社製 TG/DTA−6200)の測定に供し、下記条件で測定した時の200℃での重量減少率として現れるものとした。本発明における記録層の揮発分は5%以下である。
【0103】
<TG−DTA測定条件>
昇温速度:10℃/分
キャリアガス及び流量:窒素、200ml/分
試料量:5mg
尚、測定雰囲気を空気から窒素へ十分置換するために、25℃において窒素を200ml/分で20分流した後の重量を基準にした重量減少を測定することとする。
【0104】
記録層中の揮発分は、溶剤や記録層を形成する低分子物質、無機成分の加水分解縮合時に脱離・生成する水やアルコール等が考えられるが、これらの物質が記録層中に多量に残存していると、記録層が白濁したり、不均一になったり、記録後の信号の保存安定性が悪化するなどの問題があるため、できるだけ少ない方が好ましい。本発明における記録層の揮発分は5%以下であり、さらに好ましくは3%以下である。
【0105】
[I−6−7−2.M/#(エムナンバー)]
ホログラム記録によって生じる記録部と未記録部の屈折率の差は、投入する露光エネルギーごとの回折効率となって測定される。投入する露光エネルギーは多重に記録する手順により測定される。多重の方法は、角度の固定された交差する光を入射角を変えながら行う角度多重、入射角度は変えずに場所を異動させながら行うシフト多重、波長を変えながら行う波長多重といった方法により行われるが、角度多重が簡便であり、これにより材料や各成分の性能を把握することができる。
【0106】
多重に記録することで得られた回折効率の和であるM/#(エムナンバー)は、記録の容量の目安になる数値であるから、大きい方が媒体として良い性能であるといえる。
一般的に光活性化合物の含有率が高いほど回折効率は大きくなり、M/#も大きくなる。
本実施の形態のホログラム記録媒体の記録層のM/#は、500μm厚の記録層として評価した場合、通常5以上、好ましくは10以上である。
【0107】
なお、上述の通り、M/#の値は大きいほど好ましく、明確な上限は存在しないが、例えば記録容量1TBを達成するためにはM/#100程度の値が必要となる。
なお、上述の如く、本発明に係る記録層のM/#(エムナンバー)は、厚さ500μmの記録層について評価した値である。
即ち、あるホログラム記録媒体について設けてある記録層を厚さ500μmとしたこと以外は同様にして後述の実施例の項に示す評価用の媒体を作製し、この評価用の媒体がM/#(エムナンバー)5以上、中でも10以上となるものであれば、本発明に好適なホログラム記録媒体と言うことができる。
【0108】
このM/#(エムナンバー)は、後述の実施例の項に示す方法で測定される。
或いは、記録層膜厚が500μmではない記録媒体の場合、その媒体について同様の方法でM/#を評価し、記録層膜厚500μmでの値に換算した結果が、5以上、中でも10以上となるものであれば、本発明に好適なホログラム記録媒体と言うことができる。
M/#は、一般に記録層膜厚が大きくなるにつれ、値が大きくなる傾向がある。
【0109】
記録層膜厚200〜700μmにおいては記録層膜厚とM/#とはほぼ比例関係を示すので、この膜厚範囲内の記録層を有する媒体について評価した結果は、比例換算で膜厚補正することで対比することが可能となる。
一方、記録層膜厚が1000μmを超える範囲については記録層膜厚に対するM/#の増加は緩やかとなり、単純に比例計算で膜厚補正したのでは、対比が難しい。この場合には、500μm厚において上記数値範囲となることが予め判っている記録層組成を選び、500μm厚と、評価対象である実際の媒体の記録層厚みに相当する膜厚とで媒体を作製し、この両者の相関に基づいて、実際の媒体のM/#値を500μm厚でのM/#値に換算することが可能となる。
また、基板や保護層、反射層など、ホログラム記録媒体を構成する記録層以外の層は、M/#の値に大きく影響しないので、記録層以外の層構成が異なる媒体についても、M/#の直接の対比が可能である。
【0110】
[I−6−7−3.収縮率]
少ない角度多重記録を行った後で、残存する光活性化合物を一括露光などの方法により反応させて消費させたとき、角度を再度測定することで一括露光による収縮率を測定することができる。角度の変化が少ない方が、即ち収縮率の小さい方が媒体として良い性能であるといえる。
【0111】
本実施の形態のホログラム記録媒体に設けられた記録層は、例えば記録層膜厚500μmとして評価した場合に、通常一括露光による収縮率(以下、単に収縮率ということがある)が、0.25%以下、好ましくは0.20%以下、特に好ましくは0.15%以下である。また、収縮率はモノマーのパッキング性が高く重合すると逆に膨れるような場合、あるいは反応が開環反応の様な膨張を伴う場合、逆にマイナスの値を示すことも予測されるが、この場合も収縮同様媒体としての性能はよくないことが予想される。よって、収縮率の値はゼロに近いほどよく、ゼロであることが最も好ましい。この収縮率は具体的には後述の実施例に記載した方法で測定される。尚、一括露光による収縮率は一般に、記録層膜圧が厚くなっても変化しないはずであり、記録層膜厚200〜700μmにおいては、概ね同じ値を示す。したがって、この範囲内であれば、記録層膜厚が500μmでない記録媒体についても、収縮率を直接対比することができる。
【0112】
一方、光透過率と同様に1000μmを超える範囲については、記録膜厚に対する光透過率が100%である場合を除き、記録層膜厚200〜700μmにおける収縮率より小さくなる。
尚、基板や保護層、反射層など、ホログラム記録媒体を構成する記録層媒体の層は、前記の方法で評価する限り、収縮率の値に大きく影響しないので、記録層以外の層構成が異なる媒体についても、収縮率の直接の対比が可能である。
【0113】
[I−6−7−4.熱膨張率]
熱膨張率は、収縮率と同様の考え方で算出することができる。即ち、収縮率測定と同様に少ない角度多重でホログラム記録を行った後、一様露光を実施し、その後、同サンプルを異なる温度雰囲気下に置き、サンプル温度が雰囲気温度と十分同等とみなされるようになった時点で、もとの記録との角度ずれを測定する。異なる温度数点について同様の測定を繰り返し、各温度における角度ずれから、収縮率測定の際に用いた角度ずれと収縮率の関係式を用いて、その温度における膨張率を算定する。これらから温度と収縮率の相関が得られ、その傾き(温度1度上昇あたりの熱膨張率)を熱膨張率とする。
【0114】
本実施の形態のホログラム記録媒体に設けられた記録層は、例えば記録層膜厚500μmとして、25℃〜40℃の間で評価した場合に、熱膨張率が0.075(%/℃)以下、好ましくは0.070(%/℃)以下である。熱膨張率が大きいと、ホログラムの記録・再生が温度の影響を受けやすくなり、耐環境性がよくないと考えられる。
尚、この熱膨張率は具体的には後述の実施例に記載した方法で測定される。
【0115】
[I−6−7−5.耐久性(M/#変化率)]
耐久性は、M/#測定を行った多重記録後のサンプルを、加速劣化条件下に保存した後、M/#を再測定し、M/#初期値(100%)に対する比(M/#変化率)として評価することができる。
本発明のホログラム記録媒体に設けられた記録層は、加速劣化条件を80℃環境下48時間保存とした場合に、上記M/#変化率が通常70%以上、好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上である。
【0116】
II.ホログラム記録層形成用組成物
本発明のホログラム記録層形成用組成物は、前述の本発明のホログラム記録媒体に使用されるホログラム記録層形成用組成物であって、下記(A1)および/または(A2)、光活性化合物、光重合開始剤を少なくとも含み、組成物中の溶剤が50%以下であることを特徴とするホログラム記録層形成用組成物である。
【0117】
(A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体
【0118】
ホログラム記録層形成用組成物には、上述の化合物(A1)および/または(A2)、光活性化合物、および光重合開始剤の他、化合物(B)、(C)が含まれていてもよい。更に必要に応じて、添加剤、溶剤等を含むものとしてもよい。上記において、化合物(A1)、(A2)、(B)、及び(C)とは、何れもI−1.マトリックス形成材料の項において説明した化合物(A1)、(A2)、(B)、及び(C)と同義であり、その好ましい範囲、具体例とも上記記載に一致する。但し、上記各成分の使用量については、I−1.マトリックス形成材料の項において「記録層中に」とある記載を、「ホログラム記録層形成用組成物の固形分中に」と読み替える。
【0119】
ここで、本発明のホログラム記録層形成用組成物は、本発明の効果発現のためには、実質溶媒を含まないことが最も好ましいが、ホログラム記録層形成用組成物に溶剤を含む場合、全組成物中の溶剤の重量は50wt%以下、好ましくは、40wt%以下、更に好ましくは30wt%以下、特に好ましくは10wt%以下、中でも5wt%以下である。溶剤の量が50wt%より多いと、溶剤を乾燥して記録層を作成する際に、ボイド(気泡)の発生などにより記録層が不均一になったり、白化したり、また、記録層に残存する溶剤によって記録後の信号の保存安定性が悪化するなどの問題が生じると考えられる。
【0120】
溶剤の種類には特に制限はなく、例を挙げると、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶剤;ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ
−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の高極性溶剤;n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の環状炭化水素系溶剤;或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
【実施例】
【0121】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[合成例1]
攪拌機、温度計及び蒸留装置を取り付けた100mLの四つ口ガラスフラスコに、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東京化成株式会社製) 29.7g、MKCシリケートMS51(テトラメトキシシランオリゴマー、三菱化学社製) 5g、ジブチル錫ジラウレート 0.036gを仕込み、80℃〜130℃のオイルバスで加熱攪拌し、メタノールを留出させながら20時間反応させて、反応物1を得た。収量は11gであった。
【0122】
得られた反応物1の同定はプロトンNMRにより行った。
H−NMR(ppm)δ:0.9-0.92(t)、1.72-1.76(m)、3.48-3.61(m)、3.79-3.94(m)、4.36-4.47(m)
3.79-3.94ppmのピークは反応したオキセタンアルコールのα位メチレンプロトンを示し、3.48-3.61ppmのピークはテトラメトキシシランオリゴマーのメトキシ基のメチルプロトンを示している。
これから、反応生成物中にオキセタン骨格が導入されたことが確認でき、さらに3.48-3.61ppmと3.79-3.94ppmのピーク面積比からオキセタンアルコールの置換率は73%であることが確認された。
【0123】
[実施例1]
カチオン重合開始剤としてサンエイドSI−45(三新化学社製)0.008g及びアルミニウムトリスアセチルアセトナート 0.004g、光重合開始剤としてIRGACURE819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、チバスペシャリティ社製) 0.012g、光活性化合物として2,4-ビス(4-ジベンゾチオフェニル)フェニルアクリレート 0.124g、化合物(A2)として合成例1で得られた反応物1 2g、化合物(B)として分子量650のポリテトラメチレンエーテルグリコールにエピクロルヒドリンを反応させて得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールのグリシジルエーテル 1.2g、化合物(C)として3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 0.8gを秤量し、各成分が溶解するまで混合し、その後脱気した。スペーサーとして厚さ500μmのテフロン(登録商標)シートを2方の端にのせたスライドガラスの上に先に脱気した液体を流し込み、その上にさらにスライドガラスをかぶせ、クリップで周辺を固定して60℃で15時間加熱して記録層を作製し、全体として測定用の光学媒体とした。この測定用ホログラム媒体は、図2に示すように、カバー層21,23としてのスライドガラス間に、厚さ500μmの記録層が形成されたものである。
【0124】
[比較例1]
光重合開始剤として構造式Xの化合物 0.009g、光活性化合物として2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート 0.188gをヘキサメチレンジイソシアネート 2.424gに溶解したA液と、GP−1000(平均分子量1000のポリプロピレングリコールトリオール、三洋化成社製) 2.0gと2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 1.66gおよびジオクチル錫ジラウレート 0.002gを混合溶解し脱気したB液を調製し、両液を加えてよく攪拌した後、さらに脱気した。得られた記録層形成用組成物を用い、実施例1記載の媒体の作製条件に従い記録層を作製し、測定用の記録媒体とした。
【0125】
【化1】

【0126】
(構造式X)
[比較例2]
カチオン重合開始剤としてサンエイドSI−45(三新化学社製) 0.0125g、光重合開始剤としてIRGACURE819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−、チバスペシャリティ社製) 0.0155g、光活性化合物として2,4−ビス(4−ジベンゾチオフェニル)フェニルアクリレート 0.155gを、分子量650のポ
リテトラメチレンエーテルグリコールにエピクロルヒドリンを反応させて得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールのグリシジルエーテル 3g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 2gに溶解した後、さらに脱気した。得られた記録層形成用組成物を用い、実施例1記載の媒体の作製条件に従い記録層を作製し、測定用の記録媒体とした。
【0127】
[比較例3]
特許文献5の実施例に記載の下記手順に従って評価用の記録媒体を作成した。
<マトリックス材料の合成>
2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン 3.0g、ジフェニルジメトキシシラン 3.0g、チタンブトキシドテトラマー 7.2gとを、1−メトキシ−2−プロパノール溶媒 40ml中で混合し、金属アルコキシド溶液とした。
【0128】
水2.1ml、1N塩酸水溶液0.3ml、及び1−メトキシ−2−プロパノール5mlからなる溶液を、前記金属アルコキシド溶液に攪拌しながら室温で滴下し、2時間攪拌を続け加水分解反応を行った。ついで、ビスフェノールA型エポキシモノマー0.9g、及び硬化剤としてメチルテトラヒドロフタル酸無水物0.1gを反応系に加え、さらに2時間攪拌し、ゾル液を得た。
【0129】
<光活性化合物>
光活性化合物としてポリエチレングリコールジアクリレート(NK ESTER A400、新中村化学社製)100重量部に、光重合開始剤としてIRGACURE907(チバスペシャリティ社製)3重量部と、光増感剤として2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン0.3重量部とを加え、光活性化合物を含む混合物とした。
【0130】
<ホログラム記録材料>
マトリックス材料(不揮発分として)の割合が67重量部、光活性化合物の割合が33重量部となるように、前記ゾル溶液と光活性化合物の混合物とを室温にて混合し、ほぼ透明なホログラム記録材料を得た。
テフロン(登録商標)性のスペーサーの枠をのせたスライドガラスの上に、得られたホログラム記録材料を流し込み、40℃で24時間乾燥し、溶媒を揮発させ、厚さ約500μmの記録層を作成し、その上にさらにスライドガラスをかぶせ、全体として測定用の光学媒体とした。
得られた実施例1、比較例1〜3のホログラム記録媒体(測定用の光学媒体)を使用し、以下に説明する手順で揮発分の評価を行った。
【0131】
[揮発分]
ホログラム記録媒体から基板であるスライドガラスをはがし取り、単離した記録層を5mg大に切り出し、TG−DTA(Thermogravimetry−Differetial Thermal Analysis)により下記条件で測定した時の200℃での重量減少率として評価した。
【0132】
<TG−DTA測定条件>
昇温速度:10℃/分
キャリアガス及び流量:窒素、200ml/分
試料量:5mg
尚、測定雰囲気を空気から窒素へ十分置換するために、25℃において窒素を200ml/分で20分流した後の重量を基準にした重量減少を測定した。
【0133】
[金属Mの含有量]
縮合が完全に進み脱離アルコールが全て揮発したものと仮定し、仕込組成から算出した。
[ホログラム記録評価]
得られた実施例1、比較例1〜3のホログラム記録媒体を使用し、以下に説明する手順でホログラム記録を実施した。
波長405nmの半導体レーザを用いて、ビーム1本あたりの露光パワー密度6.0mW/cmで図1の如き露光装置を使用して二光束平面波のホログラム記録を行った。媒体を−30度から30度まで1度おきに同一箇所に61多重記録し、その時の回折効率の平方根の合計をM/#(エムナンバー)とする。また上記の記録前後で記録波長での光透過率を測定した。以下、詳細に説明する。
【0134】
図1(a)は、ホログラム記録に用いた装置の概要を示す構成図であり、図1(b)はLEDユニットの表面を示す構成図であり、図1(c)は、LEDユニット表面のLEDの配列を示す構成図である。
図1中、Sはホログラム記録媒体のサンプルを示し、M1〜M3は何れもミラーを示し、PBSは偏光ビームスプリッタを示し、L1は波長405nmの光を発する記録光用レーザ光源(405nm付近の光が得られるソニー製シングルモードレーザーダイオードを用いた(図1の中「L1」))を示し、L2は波長633nmの光を発する再生光用レーザ光源を示し、PD1、PD2はフォトディテクタを示す。また、1はLEDユニットを示し、2はアームを示し、3は支柱を示す。
【0135】
通常の記録、再生の場合、LEDユニットは実線の位置にあり、一様露光の場合、破線で示すように、支柱3が回転して取り付けられたアーム2とLEDユニット1のLEDがサンプルSの記録部分の前面側に移動した後、LEDが一定時間点灯する。LED1Bは、図1(c)に示すように、LEDユニット表面1Aにさいころの5の目の様に配列されている。光源L1、L2、フォトディテクタPD1、PD2、LEDユニット1には電源が接続されている。
【0136】
図1に示すように、405nmの光を偏光ビームスプリッタ(図中「PBS」)により分割し、2本のビームのなす角が50.00度になるように記録面上にて交差させた。このとき、2本のビームのなす角の2等分線が記録面に対して垂直になるようにし、更に、分割によって得られた2本のビームの電場ベクトルの振動面は、交差する2本のビームを含む平面と垂直になるようにして照射した。
【0137】
ホログラム記録後、He−Neレーザで633nmの光を得られるもの(メレスグリオ社製V05−LHP151:図中「L2」)を用いて、その光を記録面に対し30.19度の角度で照射し、回折された光をパワーメータおよびディテクタ(ニューポート社製2930−C、918−SL:図中「PD1」および「PD2」)を用いて検出することにより、ホログラム記録が正しく行なわれているか否かを判定した。ホログラムの回折効率は、回折された光の強度の透過光強度と回折光強度の和に対する比で与えられる。
【0138】
<M/#の測定>
M/#は多重記録の目安とする値であるので、記録1回ごとの回折効率では大きすぎない方がよく、余りに小さいと記録ができない。よって1回の記録の回折効率を概ね数%とし、できるだけ多くの多重度で記録することにより得られたM/#を求めることで妥当な多重記録の目安となりうる。多重の方式には角度、シフトなどがあるが、角度多重が簡便といえるので材料の実力を知る上で適当な方式と言える。サンプルを光軸に対して動かす角度(二光束、すなわち図1のミラーM1およびM2からの入射光が交わる点における内角の二等分線とサンプルからの法線とがなす角度)を−20度から20度まで1度刻みで記録すれば41多重、−30度から30度まで0.5度刻みで記録すれば121多重とすることができる。回折効率には入射光と回折光の比(外部回折効率ともいう。)と透過光と回折光の和と回折光の比(内部回折効率ともいう。)の2つの表現がある。本発明においてはサンプル表面の反射やサンプル内部の拡散を無視でき材料の記録性能を問える内部回折効率を回折効率とする。ここでは−30度から30度まで1度刻みで61多重の記録を行い、得られた回折効率の平方根を多重記録全域にわたって合計したものをM/#とした。
【0139】
具体的には、各実施例ごとに、始めに複数用意した光学記録媒体の1つを用いて、二光束が交わる点における内角の二等分線と媒体の法線がなす角度がゼロの状態で、回折効率が一定になるまで二光束すなわち図1におけるミラーM1およびM2からの入射光405nmを照射し、一定になった最小のエネルギーを測定する(この際、回折効率の評価はミラーM3からの光633nmを用いて行なう)。
【0140】
次いで別の媒体について、先に求めた最少エネルギーの値を61回多重記録の際の合計照射エネルギーの目安として、多重記録を行う。この際、照射エネルギーは記録回数に応じて適宜調整しながら、記録ごとの回折効率数%を維持するようにする。61回多重記録後、引き続き図1におけるミラーM1からの光(405nm)を照射し、角度−30から30度までの回折効率を計測し、各角度の回折効率の平方根の合計をM/#とする。
【0141】
ここで、合計照射エネルギーの量が少なすぎるとモノマーが残存してしまい、記録回数が若い段階で照射エネルギーが多すぎると多重記録ができないため、何れもM/#を過少評価する可能性がある。そのため、サンプルを変えて、記録初期の照射エネルギーの増減、合計照射エネルギーの増減など、照射エネルギー条件を変えた複数回の評価を行い、記録1回ごとに数%以上の回折効率を維持しつつ、61回記録までに含有モノマーをほぼ消費しつくす(61回記録までにM/#がほぼ平衡に達する)条件を模索し、M/#として最大値が得られるようにした。そして、得られた最大値をその媒体のM/#とした。なお、M/#の値は厚みやサンプルの構成による影響を別途受けることとなる。厚みは実験作業上、自由に変えることができるが、ここでは記録層の厚みが500μmである時の実測値をもって比較することとする。
【0142】
<収縮率>
収縮率は、ホログラム記録によって生成する回折面の角度ずれから次のように算出した。サンプルを光軸に対して回転させることにより、二光束が交わる点における内角の二等分線と媒体の法線とがなす角を-28度から28度まで、4度刻みで動かし、つど一回の回折効率が0.1%以下となるように、計15多重のホログラム記録を行う。LED(波長400nm、6mW/cm2)により5分間一様露光を行い、一様露光前後での回折効率の角度選択性をプロットし、それぞれの記録角度に対し元に記録した角度位置からのずれを測定した。角度ずれと収縮率の関係式(Applied Physics Letters 73巻、10号、1337ページ-1339ページ(1998年)に示されている。)から収縮率を算出した。この際、収縮前の屈折率n0としては、1.51を用い、収縮によるマトリックスの屈折率変化は0と仮定して計算した。
【0143】
<熱膨張係数>
熱膨張係数は、収縮率と同様の考え方で熱膨張率を算出しその値から求めた。即ち、収縮率測定と同様に15多重のホログラム記録を行った後、LEDによる一様露光を実施する。
その後、同サンプルを異なる温度雰囲気下(25〜40℃の間で数点)に置き、サンプル温度が雰囲気温度と十分同等とみなされるようになった時点で、もとの記録との角度ずれを測定した。異なる温度数点について同様の測定を繰り返し、各温度における角度ずれから、収縮率測定の際に用いた角度ずれと収縮率の関係式を用いて、その温度における膨張率を算定した。これらから温度と収縮率の相関が得られ、その傾き(温度1度上昇あたり
の熱膨張率)を熱膨張係数とした。
【0144】
<耐久性>
多重記録したサンプルを80℃の環境下に48時間保存し、M/#の測定を再度行った。
初期のM/#と、保存後のM/#から変化率を求め、M/#の変化率を耐久性とした。
M/#変化率[%]=(80℃×48時間保存後のM/#)/(初期M/#)×100
実施例1、比較例1〜3のホログラム記録媒体について評価した結果を、表−2にまとめた。
【0145】
【表1】

実施例1のホログラム記録媒体は、記録層の揮発分は1.0%と小さく、M/#8.7、収縮率0.1%、熱膨張係数0.068%/℃であるのに対し、比較例1および2のホログラム記録媒体は、記録層の揮発分は0.6%以下であるが、いずれも熱膨張係数は0.088%/℃以上であり、収縮率も0.14以上であった。また、特許文献5の実施例記載に従って作成した比較例3のホログラム記録媒体は、熱膨張係数は0.066%/℃と小さいが、収縮率は3.5%と非常に大きかった。また、耐久性の評価では、80℃48時間保存後、記録層に細かいヒビが多数生じ、M/#を測定することが出来なかった。
【0146】
なお、比較例3では記録層中に含まれる金属Mは34.8wt%であるのに対し、実施例1においては5.8wt%とM量が少なかった。
比較例1および比較例2においてマトリックスはそれぞれウレタン樹脂およびエポキシ樹脂といった有機成分で形成されており、そのためいずれも熱膨張係数は0.8〜0.9と大きな値を示している。一方、実施例1および比較例3においては、有機成分に無機成分を導入したマトリックスのために熱膨張係数が低減されていることがわかる。ただし、比較例3では耐久性に劣り、耐久試験後はホログラム測定ができなかった。無溶媒で作成した実施例1、比較例1,2に対して、比較例3の記録層には記録層形成用組成物由来の残存溶媒が含まれること、またマトリックス形成に用いられる金属アルコキシド化合物の加水分解によってメタノール脱離が起こること等によって、揮発分が多くなり、収縮率増大、耐久性劣化に働いたものと考える。
なお、記録層中に含まれる金属M(Si)量が少ない実施例1において上記性能が達成されるのは、本発明のホログラム記録媒体の記録層が、金属アルコキシド化合物(A1)および/または金属アルコキシド多量体(A2)を含むマトリックス形成材料を用いることにより、加水分解等に伴う低分子量アルコール等の揮発を最低限に抑えながら無機部を形成することが可能となり、同時に、有機部と無機部が適度に相溶したモルフォロジーを有するマトリックスとなるためと考えられる。このため、記録層全体に占める金属Mの割合が低めであっても、適度な無機部の存在によって低収縮、低熱膨張、高耐久性を達成することが出来、同時に有機部の存在により光活性化合物の易動度が確保されるため、高い記録性能が達成されるものと考える。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明は産業上の任意の分野に使用することができ、種々の光学製品に適用可能である。本発明により提供される、変性アルコキシメタル組成物用いたホログラム記録媒体は、低熱膨張係数および耐久性向上に優れた特性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料から形成されたものである金属酸化物含有マトリックスと、光活性化合物とを含む記録層を備えるホログラム記録媒体であって、
該記録層の揮発分が5%以下であることを特徴とする、ホログラム記録媒体。
(A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体
【請求項2】
Rが有する環状エーテル基がエポキシ基、及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のホログラム記録媒体。
【請求項3】
(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料が更に、
「炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する」化合物(B)を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のホログラム記録媒
体。
【請求項4】
上記「炭素数が4以上10以下のアルキレンオキシド基を有し、さらに環状エーテル基を有する化合物(B)」の環状エーテル基が、エポキシ基、及びオキセタニル基からなる
群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項3に記載のホログラム記録媒体。
【請求項5】
(A1)および/または(A2)を含むマトリックス形成材料が更に、脂環式の環状エーテル基を有する化合物(C)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に
記載のホログラム記録媒体。
【請求項6】
上記「脂環式の環状エーテル基を有する化合物(C)」の環状エーテル基が、エポキシ
基、及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項5に記載のホログラム記録媒体。
【請求項7】
上記記録層の金属Mの含有量が15wt%以下であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のホログラム記録媒体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のホログラム記録媒体に使用されるホログラム記録層形成用組成物であって、下記(A1)および/または(A2)、光活性化合物、光重合開始剤を少なくとも含み、組成物中の溶剤が50%以下であることを特徴とするホログラム記録層形成用組成物。
(A1): 下記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物
M(OR) (I)
(一般式(I)において、Rは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、および環状エーテル基を含有する有機基のいずれかを表
し、
Mは金属を表し、nは金属Mの価数以下の自然数を表す。nが2以上である場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよいが、一般式(I)のRの少なくとも1つは環状エーテル基を含有する有機基である。nが金属Mの価数より小さい場合、金属Mは更に置換基を有していてもよい。)
(A2): 上記一般式(I)で表される金属アルコキシド化合物の金属M同士が−O
−を介して相互に結合することによって形成された金属アルコキシド多量体

【公開番号】特開2010−243673(P2010−243673A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90536(P2009−90536)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】