説明

変性アルミノケイ酸塩繊維を含む低熱膨張係数材料および製造方法

アルミノケイ酸塩組成構造を持つ複数の繊維から成る繊維状セラミック材料(すんわちx(R0) y(Al203) z(Si02)またはw(MO)-x(RO)-y(Al2O3)-z(SiO2)。)本繊維状セラミック材料は2つ以上のx(R0) y(Al203) z(Si02)またはw(MO) x(RO) y(Al2O3) z(SiO2)前駆体を組み合わせることにより形成され、2つ以上のその前駆体の少なくとも1つは繊維形状である。結果得られる繊維状セラミック材料は、低い熱膨張係数を持つ(すなわち<4.7×10−6/℃)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に繊維状セラミック材料に関連し、さらに具体的には、複数の変性アルミノケイ酸塩繊維を含む低熱膨張係数繊維状材料およびその繊維状材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
改良セラミック材料は一般に、自動車エンジン(触媒コンバーターなど)、航空宇宙用途(スペースシャトルタイルなど)、耐熱性業務(耐火れんがなど)および電子機器(コンデンサ、絶縁体など)など、過酷な環境の場所にあるシステムで使用される。多孔質セラミック体はフィルターとしてこれらの環境で特に使用される。例えば、今日の自動車産業では、触媒酸化と排気ガスの低減のため、また排出粒子状物質をろ過するために、セラミックハニカム基質(すなわち多孔質セラミック体)が使用される。セラミックハニカム基質は、ろ過のための高い比表面積を提供し、触媒反応を支援すると同時に、安定しており、自動車エンジン環境に伴う高い使用温度で構造的に十分信頼性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、アルミノケイ酸ベースのセラミックなどのセラミック材料は、不活性材料であり、高温環境下で良い性能を示す。しかし、セラミック材料は、周囲温度用途と高温用途の間での循環により生じるストレスなどの熱応力に影響されないわけではない。従って、セラミックフィルターは、劣化して現在の用途に対しては非効率・無効となることが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、本書に記載の実施例は、自動車エンジン環境でのフィルターを含む、さまざまな用途で使用できる繊維状セラミック材料を取り上げる。本繊維状セラミック材料には、複数の変性アルミノケイ酸塩繊維(すなわち、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)の組成構造を持つ繊維で、ここでxは0よりも大きく、ROはBaO、SrO、Li2O、K2Oから成るグループから選択された酸化物である)。本書に記載の実施例はまた、本繊維状セラミック材料の製造方法も取り上げる。具体的には、1つの実施例では、繊維状セラミック材料は、2つ以上の前駆体材料間の反応によって変性アルミノケイ酸塩繊維を形成することにより製造され、ここで2つ以上の前駆体材料の少なくとも1つは繊維形状である。アルミノケイ酸塩繊維の化学的組成を変えることにより、低い熱膨張係数(CTE)を達成することができると考えられている。すなわち、x、y、z、Rを変えることにより、化学的組成および結晶構造が変化する。組成および構造変化の結果として、材料のCTE値を特定の用途のために調整することができる(1つ以上の格子方向で、CTE値を減少させることができる)。CTEの低減により、高温で亀裂および膨張がごく小さい多孔質繊維状セラミック体を形成することができる。
【0005】
一部の実施例では、繊維状セラミック材料のCTE値を、繊維の配向によってさらに低減できる。反応で作られる複数の変性アルミノケイ酸繊維は、押出しまたは他の方法で繊維体に成形できる。押出しまたは成形中に、繊維体の少なくとも1つの方向での熱膨張係数(CTE)の減少により、繊維の整列が起こると考えられている。
【0006】
本発明の一形態で、本開示に記載の実施例は、繊維状材料の製造方法に関するものであり、ここで、繊維材料中のすべての繊維の少なくとも約5%はx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持ち、RはBa、Sr、Li、Kから成るグループから選択される。本方法は、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して、混合物を形成すること(その少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体の1つ以上は繊維形状である)、その混合物を押出して繊維体を作ること、およびその繊維体を熱処理して繊維状材料を形成することを含む。
【0007】
この形態の実施例には、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。一部の実施例では、繊維体の熱処理後、そのすべての繊維の少なくとも約25%はx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。すなわち、約25%(例えば、30%、35%、45%、55%、65%またはそれ以上)の前駆体繊維が反応して、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維を形成したということである。特定の実施例では、前駆体材料は、ムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、Li2O粒子、コロイドシリカ、SrCO3粒子から成るグループから選択することができる。一部の実施例では、本混合物はさらに、液体、バインター、造孔剤から成るグループから選択された1つ以上の添加剤を含み得る。その1つ以上の添加剤は、繊維体を加熱することによって実質的に除去できる。
【0008】
別の形態では、本公開に記載の実施例は、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ変性アルミノケイ酸塩繊維を含む繊維体の製造方法に関するものであり、ここで、RはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択される。本方法は、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して混合物を形成すること(ここでその少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上は繊維形状である)、その少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を反応させて混合物内にx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ複数の繊維を形成すること、および混合物を繊維体に成形することを含むが、ここで繊維体内のすべての繊維の少なくとも約5%はx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。
【0009】
この形態の実施例には、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。一部の実施例では、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料と反応後、繊維体中のすべての繊維の少なくとも約25%が、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。すなわち、前駆体の反応後、繊維体中のすべての繊維の少なくとも25%(例えば、35%、45%、55%、65%、75%、85%、95%)がx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。繊維は、繊維体中のすべての繊維の少なくとも約20%が共通方向に整列するように整列され得る。一部の実施例では、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料は、ムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、Li2O粒子、コロイドシリカ、SrCO3粒子から成るグループから選択される。上記の混合物はさらに、液体、バインター、造孔剤から成るグループから選択された1つ以上の添加剤を含み得る。これらの添加剤は、繊維体を加熱することによって実質的に除去できる。
【0010】
別の形態では、実施例は多孔質ハニカム基質の製造方法に関する。本方法は、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して混合物を形成すること(ここでその少なくとも2つの前駆体材料の1つ以上は繊維形状であり、RはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択される)、混合物を押出して少なくとも約20%の空隙率を持つハニカム基質を形成すること、および、ハニカム基質中のすべての繊維の少なくとも約5%がx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つようにするために、ハニカム基質を熱処理して少なくとも2つの前駆体と反応させてx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2) 組成構造を持つ複数の繊維を形成することを含む。
【0011】
この形態の実施例には、以下の特徴の1つ以上が含まれる。一部の実施例では、ハニカム基質の熱処理後、すべての繊維の少なくとも約25%はx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。上記の方法で使用される前駆体材料は、ムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、Li2O粒子、コロイドシリカ、SrCO3粒子から成るグループから選択することができる。上記の方法で形成される混合物はさらに、流体、バインター、造孔剤から成るグループから選択された1つ以上の添加剤を含み得る。その1つ以上の添加剤は、ハニカム基質を加熱することによって実質的に除去できる。
【0012】
本発明のさらなる形態では、実施例は変性アルミノケイ酸塩繊維状ハニカム体に関する。本体は、隣接壁間の経路を規定するハニカムの一連の壁を含み、壁は、結合して孔の開放ネットワークを持つ多孔質構造を形成する複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維から成るが、ここでRはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択される。一部の実施例では、壁のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維中の繊維は、共通の方向に整列している。
【0013】
この形態の実施例には、以下の特徴の1つ以上を含むことができる。ハニカム体の壁は、少なくとも約20%(例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%)の空隙率を持ち得る。壁の繊維は、1より大きく2,000以下のアスペクト比を持ち得る。一部の実施例では、触媒コーティングが複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維上に配置される。
【0014】
本発明の別の形態では、実施例はフィルターに関する。フィルターには、入口と出口を持つハウジングを含む。変性アルミノケイ酸塩繊維状ハニカム体は、入口と出口の間に配置される。本体は、隣接壁間の経路を規定するハニカムの一連の壁を含み、壁は、結合して孔の開放ネットワークを持つ多孔質構造を形成する複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維から成るが、ここでRはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択される。一部の実施例では、壁のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維中の繊維は、共通の方向に整列している。特定の実施例では、少なくとも1つの触媒が、複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維に蒸着する。
【0015】
また別の形態では、実施例は、繊維状材料中のすべての繊維の少なくとも約5%がw(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ繊維状材料の製造方法に関するものであり、ここでRはBa,Sr,K,Liから成るグループから選択される。本方法は、少なくとも2つのw(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して混合物を形成すること(ここでその少なくとも2つの前駆体材料の1つ以上は繊維形状である)、混合物を押出して繊維体を生成すること、繊維体を熱処理して繊維状材料を形成することを含む。一部の実施例では、w(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造のMは、NaおよびCaから成るグループから選択される。特定の実施例では、繊維体の熱処理後、すべての繊維の少なくとも約50%(例えば75%や95%)は、w(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図では、異なる図の全体を通して、類似の参照文字は一般的に同じ部分を指す。また、図は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の理論の図示では代わりに強調が行なわれている。
【図1】図1は、本開示の実施例に従った繊維状材料の形成方法を示すフローチャートである。
【図2】図2は、図1の方法に従って形成された繊維状材料の一部の拡大写真である。
【図3A】図3Aと3Bは、それぞれ、熱処理の前と後の造孔剤およびバインダーの存在と不在を示す、断面略図である。
【図3B】図3Aと3Bは、それぞれ、熱処理の前と後の造孔剤およびバインダーの存在と不在を示す、断面略図である。
【図4】図4は、本開示の実施例に従った繊維状材料の別の形成方法を示すフローチャートである。
【図5】図5は、ハニカム体を示す斜視図の略図である。
【図6】図6は、接合してより大きな物体を形成する複数のハニカム体を示す斜視図の略図である。
【図7】図7は、図5のハニカム体を含むフィルターの断面略図である。
【図8】図8は、本開示の実施例に従ったハニカム体の形成方法を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、セラミック材料のCTE値を低減することによって、熱応力による亀裂を最小化することができる。下記のセラミック材料は低いCTE値を持つ。本書に記載のセラミック材料は、セラミック材料の組成構造の調整を通して格子パラメーターの1つ以上を操作することにより、低いCTEを達成したと考えられている。さらに、一部の実施例では、セラミック材料の繊維整列により、さらなるCTEの低減が達成される場合がある。
【0018】
本書に記載のセラミック材料は、ディーゼル用途のフィルターなどを含むがこれに限定されない、多くの用途に使用できる。ディーゼル自動車用途では、触媒フィルター中に高い熱膨張係数を持つセラミック材料を使用すると、性能および/または設計の柔軟性が悪化または低下する可能性がある。具体的には、ディーゼルフィルターは再生(すなわち、フィルターに捕捉された粒子状物質を燃やし尽くすために使用される高温サイクル)中に亀裂を生じやすい。従って、ディーゼルフィルターに使用されるセラミック材料の熱膨張係数を最小化することは有利である。さらに、熱衝撃パラメーター(TSP)値の増加と共に、ディーゼルフィルターの性能は増加する。熱衝撃パラメーターは以下のように定義される。TSP = 破壊係数 (MOR) /ヤング率と熱膨張係数(CTE)の積。結果として、低い熱膨張係数を持つセラミック材料はより高い性能を持つ。
【0019】
ここで図1を参照するが、繊維状セラミック材料の製造方法100が示されている。この方法を使用して形成された繊維状セラミック材料は、そのすべての繊維の少なくとも約5%が変性アルミノケイ酸塩(すなわちx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2))組成構造を持つ究極的または最終構造(すなわち、図1に示される、本方法の完了後の構造)を持ち、ここでxは0より大きく、RはBa、Sr、Li、Kから成るグループから選択される。最終構造中の繊維は、流体(気体など)が通り抜けられる三次元多孔質構造を形成するように連結している。本方法は、混合物120を形成するための第一の前駆体105および第二の前駆体107など、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合することを含む。(図1は2つの前駆体を示すが、2以上の任意の数の前駆体を使用することができる。)x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体は、他の材料と反応した時、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造の一部を形成する材料である。例えば、ひとつの潜在的x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体はムライト(すなわち、アルミニウムと酸化シリコンの両方を含む繊維)であり、別の潜在的前駆体はAl2O3粉末であり、もう1つの潜在的前駆体はR、Alおよび/またはSiを含む任意の材料のゾルであり、さらにもう1つの前駆体はLi2O粒子であり、ここでx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)のRはLiを示す。前駆体105および107は多くの形状であり得る。例えば、前駆体は繊維ベース、コロイドベース、粒子/粉末ベース、または液体溶液ベースであり得る。しかし、混合物120が繊維ベース材料になるように、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体(すなわち105と107)の1つ以上は、繊維形状である。すなわち、前駆体105および前駆体107の少なくとも1つは、例えばムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、アルミナ繊維、またはケイ酸塩繊維などの繊維形状である。
【0020】
随意に、例えば、バインダー、レオロジー調節剤(流体など)、造孔剤などの添加剤110を、混合物120に導入することができる。これらの添加剤110は、後の形状成形プロセスを補助するために、混合物120の稠度を変化または操作するために使用できる。さらに、これらの添加剤110は孔位置ホルダーとして使用され得る。すなわち、これらの添加剤は、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体に対しては不活性で、形状成形プロセス後、混合物120から除去でき、そのため究極形状の空隙率を増加させることができる。
【0021】
x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体(すなわち、105と107)を任意の選択的添加剤110と混合・均質化した後、混合物120を形状に成形130する。1つの実施例では、成形130は、混合物120の押出しによって行ない得る。いかなる理論にも制約されることを望むものでないが、混合物120などの繊維状混合物の押出しは、繊維を実質的に整列させると考えられる。例えば、繊維状混合物中の繊維の少なくとも約20%は、押出し後、実質的に共通の方向に整列していると考えられる。図2は、形状のすべての繊維の平均約70〜80%がそこに示される線a-aに沿って整列している、押出し繊維状構造175を示す。押出し中に混合物に働くせん断力は、繊維を押出し方向に向ける傾向がある。当然ながら、押出し設計、混合レオロジー、繊維の内容および繊維の剛性は、押出された混合物の配向挙動に影響し得る。
【0022】
押出し以外の他の成形プロセス130も、形状を生成するために使用できる。他の成形プロセスの例には、射出成形などの成形、および鋳造を含む。これらの成形プロセスでは、繊維の整列の程度が押出しの場合より小さいことがある。
【0023】
一旦、成形されると、エネルギーが形状に加えられて前駆体105と107の間の反応140が開始される。例えば、約l,300°C未満の温度で数時間形状を焼成して、2つ以上のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体の間の反応を生じさせることができる。この反応の結果、形状中のすべての繊維の少なくとも5%は、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維に変換される。
【0024】
エネルギー(熱など)を与えることによっても、繊維間の結合を生成することができる。熱を加えると(例えば、炉の場合は直接的、またRF源を使用する場合は誘導的)、水および他の添加剤は除去または低減されて、繊維同士が接触する。(それぞれ、造孔剤305およびバインダー310の存在と除去の結果として繊維300の相互作用を示す図3Aおよび3Bを参照)。当然ながら、これらの繊維同士の接触部分では、いくつかの方法で結合が形成され得る。例えば、多くの種類の焼結メカニズムを使用でき、これには液体支援焼結、固体焼結、反応相焼結などが含まれるがこれに限定されず、ここでは化学反応は繊維同士の接触部分で起こる。繊維結合形成の結果、方法100を使用して形成されたセラミック材料は、連結した繊維を持つ繊維状材料となり、ここではすべての繊維の少なくとも5%はx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2) 組成構造を持つ。
【0025】
選択的ステップとして、図1のステップ150に示されるように、繊維状形状をさらに処理し得る。さらなる処理ステップには以下を含む。(a)繊維間のさらなる結合を生成するため、または造孔剤、有機バインダー、水などの流体などの添加剤を除去するための追加的熱処理、(b)例えば繊維上の触媒コーティングなどのコーティングの塗布、(c)機械的処理(通路の掘削またはキャッピング/充填)によるさらに高い空隙率の導入または方向性流路の生成、(d) フィルターまたは他の装置への繊維状材料の組み込み。
【0026】
別の実施例では、図4に示されるように、繊維体の形成方法200は、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体(205と207)を任意の選択的添加剤210と混合して、混合物220を形成することを含む。一般的に、RはLi、K、Sr、Baなどの金属である。少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体205および207のうち1つ以上は、繊維形状である。熱または光などのエネルギーを混合物に加えて、2つ以上のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体の間で反応230を開始させる。選択的添加物210は、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体205および207に対しては不活性で、その結果、反応には関与しない。反応した混合物230はその後、押出し、鋳造、または他の成形技術によって、繊維体に成形240される。例えば、選択的添加物210を除去または量を低減するための繊維体の熱処理、繊維間の結合を生成するための繊維体の焼結、繊維体へのさらに高い空隙率または方向性流路の導入、コーティングの蒸着、および/または繊維材料のフィルターまたは他の装置への組み込みなどの選択的処理ステップ250は、繊維体の成形240後に実施し得る。
【0027】
方法100および200で使用されるx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体は、さまざまな形状で供給され得る。上述のように、結果得られるx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体の混合物が繊維ベース材料となるには、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体の1つ以上が繊維形状である。繊維形状のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体の例には以下が含まれるがこれに限定されない:例えばムライト繊維、アルミノケイ酸塩H95C繊維、ストロンチウム・アルミニウム・ケイ酸塩繊維、リチウム・アルミニウム・ケイ酸塩繊維、アルミノホウ素ケイ酸塩繊維などのアルミノケイ酸塩繊維、Al2O3繊維、SiO2繊維。一般的に、これらの繊維は1より大きなアスペクト比(すなわち、繊維の長さを繊維の直径で割った比)を持つ。本書で使用される場合、繊維の「直径」では簡素化のため繊維の断面形状が円であると仮定しており、実際の断面形状(正方形、三角形など)にかかわらずこの簡素化の仮定が適用される。特定の実施例では、繊維は2,000以下のアスペクト比を持つ。すなわち、特定の実施例では、繊維はミクロンまたはサブミクロンの範囲(例えば1ミクロン)の直径を持つ一方、繊維の長さは数ミリメートル(例えば2ミリメートル)である。一般的に、繊維は約100 nmから約100ミクロンの範囲の直径を持ち得る。しかし、特定の実施例では、繊維は約100 nmから約10ミクロンの範囲内の直径を持ち、一部の実施例では、繊維は約2ミクロンから約10ミクロンの範囲内の直径を持つ。
【0028】
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体は、すべて繊維形状またはそうでなければ、前駆体は繊維と他の形状の任意の組み合わせであり得る。繊維形状でない他のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)には、以下を含むがこれに限定されない:コロイドシリカ、シリカ粒子、Al2O3粒子、Al、またはSiを含む任意の材料のゾル、SrCO3(RはSr)、K2O粒子(RはK)、Li2O粒子(RはLi)、BaO粒子(RはBa)。上記の前駆体は例示目的のみであり、決して排他的ではない。すなわち、他の成分と反応した時、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維の一部を形成する任意の前駆体材料を、方法100および200で使用し得る。
【0029】
特定のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体および使用される前駆体の量は、標的とする繊維の化学的性質および結晶構造に従って選択される。すなわち、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体105/205の量と種類、およびx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体107/207の量と種類は、標的とする繊維の化学的性質と結晶構造に基づいて選択される。例えば、(Li2O) (Al2O3) 4(SiO2)、s-リシア輝石が標的とする化学的性質の場合、以下の量の前駆体を混合して繊維状材料を形成することができる:アルミノケイ酸塩繊維78.1グラム、Li2O粒子4.3グラム、コロイドシリカ55.1グラム。しかし、標的とする化学的性質が(Li2O) (Al2O3) 2(SiO2)、s-ユークリプタイトの場合、以下の量の前駆体を使用してこの特定の化学的組成を形成する:アルミノケイ酸塩繊維78.1グラム、Li2O粒子8.0グラム、コロイドシリカ14グラム。すなわち、反応に利用できるSiの量を少なくすることにより、標的とする化学的性質および結晶構造(格子パラメーターなど)が変化する。結果として、前駆体の種類だけでなく、お互いの相対量を選択することによって、繊維状材料の材料特性を変更または修正することができる。
【0030】
結果として得られる繊維の結晶構造の決定に加えて、少なくとも2つの前駆体の相対量も、反応140/230に関与する前駆体繊維の量に影響する。すべての前駆体材料が反応140/230に関与するためには、前駆体の相対量は、特定の結晶構造を持つ特定の固体溶液に対するその溶解限度に実質的に等しくなければならない。相対量は溶解限度とは異なるが、特定の結晶構造を形成する範囲内である場合、反応は1つ以上の要素の不足により制限され得る。結果として、すべての前駆体繊維が反応に関与するわけではなく、そのため一部の前駆体繊維は、反応140/230が起こった後も繊維体中に留まる。従って、繊維体は100%未満のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維を含み得る。例えば、アルミノケイ酸塩繊維91.6%:コロイドシリカ7.8%:Li2O粒子 0.6%が混合された時、繊維体の繊維の5%がs-リシア輝石、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)繊維に変換されるが、アルミノケイ酸塩繊維56.8%:コロイドシリカ40.1%:Li2O粒子3.1%を使用した場合は、約50%の変換が起き、アルミノケイ酸塩繊維40.6%:コロイドシリカ55.1%:Li2O 粒子4.3%を使用した場合、約95〜100%の変換が起こる。
【0031】
繊維の化学的性質および結晶構造が制御できると、低いCTE値を持つように繊維状材料を調整できる。例えば、アルミノケイ酸塩は比較的低い平均CTE値(4.6 x 10-6/°C)を持つことが知られている。しかし、アルミノケイ酸塩の化学的性質を、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)のより低いCTE値に変更することにより、特に特定の格子方向を達成し得る。さらに、特定の実施例では、繊維状材料の繊維を整列させることによって、さらに材料のCTE値を調整することができる。
【0032】
方法100および200から得られる繊維状材料は、多孔質ハニカム基質または体に成形することができ、これはフィルター、特に自動車用途のフィルターとして使用され得る。
【0033】
ここで図5を参照するが、多孔質ハニカム体510を示す。ハニカム体510は、隣接する壁515の間の経路520を規定する一連の壁515を持つ。壁515は上述の繊維状材料から成る。すなわち、壁515は、結合して多孔質構造を形成する複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維を含む。多孔質構造は少なくとも20%の空隙率を持ち、流体が構造を通って流れることができるように、一般的に孔の開放ネットワークを持つ。壁515のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維の少なくとも20%(例えば、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%)は整列している。結果として、熱膨張係数など方向性値を持つ材料特性は、特定の方向のより低い値を提供するためにさらに操作ができる可能性がある。すなわち、最も低いCTE値を持つ格子パラメーター(a、b,またはc)など、繊維を特定の格子方向に沿って整列させ得る。例えば、特定の材料がc方向に沿って最低のCTEを持つ場合、繊維の少なくとも20%が実質的にc方向に沿って整列するように、繊維を押出しまたは他の方法で成形できる。次に、整列繊維のc方向が壁515の面に含まれるように、ハニカム体510の壁を形成し得る。結果として、熱にさらされた時、壁には最低量の膨張が起こる。同様に、材料中の繊維は、繊維の20%以上が最高のCTE値を持つ方向に沿って整列するように、整列させることができる。この実施例では、ハニカム体510の壁515は、熱によって最も影響される部分が、構造的影響が最少になるように配置されるようにするため、整列した繊維が壁515の最小の範囲(すなわち奥行き)を形成するように形成される。
【0034】
繊維状材料のCTE値のいくらかの低減は、繊維の整列によって実現し得るが、繊維の組成および結晶構造の調整が、低いCTE値の達成に直接関係すると考えられている。例えば、アルミナシリカ繊維をLiO2粒子およびコロイドシリカと変性させて、s-ユークリプタイトを形成することにより、約4.6x10-6/°C から0.1x10-6/°CへとCTEを減少させることができる。
【0035】
ハニカム体510は、例えば円筒形(図5に示す)、パイ状のくさび、またはやや円筒形の部分、長方形(図6に示す)、またはひし形などの任意の数の形状に加工し得る。これらのハニカム体510は、図6に示すように、一緒に接着してセグメント体を形成し得る。体を一緒に接着する結果として、任意のサイズ、形状または寸法のハニカム形状を生成することができる。熱膨張係数の低い多孔質繊維状材料では、隣接する小セグメントにヤング係数の低い糊/接着剤を使用して大きな形状を形成することなく、押出し、または他の方法で幅の広い(例えば5.66インチ〜14インチの間の直径)形状(円筒形など)を形成することが可能である。押出しまたは大きな幅を形成する能力は、製造技術の柔軟性および大量生産でのコスト低減の可能性を提供する。
【0036】
図7は、図5の多孔質ハニカム体510を使用したフィルター700の断面図を示す。フィルター700は、多孔質ハニカム体510を取り囲むハウジング720を含む。ハウジングは、排出ガスなどの気体が通る入口705および出口707を含む。ハウジング720とハニカム体510の間には、ハウジング720とハニカム体510の間の気密シールを支持および形成するマット730がある。ハニカム体510は、出口ブロック760および入口ブロック770を持つ交互の経路を選択的に塞ぎ、それぞれ複数の入口経路740および出口経路750を形成することにより、壁流形態に構成される。この実施例では、壁515の孔の開放ネットワークは、入口と出口経路740、750の間の壁515を通しての流れを可能にするために十分な空隙率と透過性を提供する。結果として、粒子状物質が入口経路の壁740表面に蓄積し、フィルター700で気体流から除去され得る。触媒コーティングまたは他の反応性コーティングなどのコーティングを、壁515に沿って蒸着させ、壁515によって捕獲される粒子濃度を増加せることができる。例えば、ディーゼル自動車環境で使用されるフィルターでは、蓄積した煤煙の酸化を促進し、害のより少ない成分への排気ガスの変換を加速する触媒コーティングで壁515を被覆し得る。基質および多孔質体への触媒コーティングおよび他の種類のコーティングの適用技術は、本技術分野では良く知られている。
【0037】
図8は、図5のハニカム体510などの、ハニカム体の形成方法を示す。まず、ステップ810に示されるように、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体(ここで、前駆体の1つ以上は繊維形状で、RはBa、Li、K、Srから成るグループから選択される)を合わせて混合物を形成する。混合物の効率的な押出しまたは成形を可能にするために、流体、造孔剤、またはバインダーなどのレオロジー剤も混合物に添加することができる。望ましい稠度が得られた後、混合物は、少なくとも20%の空隙率を持つハニカム体に押出され(ステップ820)、その後加熱して少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体を反応させ、選択的添加剤(すなわち、流体、造孔剤、バインダー)を実質的に排除または除去する(ステップ830)。ハニカム体中のすべての繊維の少なくとも5%は、変換されてx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ。繊維間(すなわち、ステップ830で形成されるx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維と任意の未反応繊維の間)の結合は、ハニカム体の焼結840を通して形成される。一部の実施例では、ステップ830および840は1つの加熱処理プロセス中に起こる。他の実施例では、複数の加熱処理プロセスを使用してx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体を反応させ、選択的添加剤を実質的に排除し、繊維を焼結する。ハニカム体が繊維である実施例では、入口および出口ブロック(例えば、図7の740、750)が挿入され、フィルターを通した流路を生成する(選択的ステップ850)。さらに、触媒コーティングをフィルターに塗布して、例えば、ディーゼル粒子状物質フィルターに捕獲された煤塵の酸化を促進する(任意段階960)ためなど、意図する用途での反応性機能を持つフィルターを提供する。
【0038】
本書に記載されたもの変化、変更、および他の実施は、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく考え付く。例えば、繊維状材料がフィルター(特にディーゼル用途のフィルター)として使用される多くの実施例が記載されているが、例えば、航空宇宙産業、液体ろ過、クロスフローろ過、溶融金属ろ過、固定床化学反応器、ハニカム高表面積吸着剤、高温反応器など、低い熱膨張係数が望ましい任意の用途で、本繊維性材料を使用し得る。
【実施例】
【0039】
以下の例は本開示をさらに図解し、その理解を助けるために提供される。これらの特定例は、本開示の例示目的であり、限定目的ではない。
【0040】
標的とする繊維の化学的性質がs-ユークリプタイト、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)である最初の説明的例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維80グラム、Li2O粒子5.0グラム、コロイドシリカ14.0グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース(有機バインダーおよびレオロジー調整剤)、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレードで造孔剤として使用される)、および混合流体としての50グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波 (RF) 乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,200 °Cで2時間焼結して、約67%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのムライト繊維の約99%が、反応してs-ユークリプタイト繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は0.1 x 10-6/°Cである。
【0041】
標的とする繊維の化学的性質がs-ユークリプタイト、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)である第二の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:ムライト繊維29.1グラム、Li2O粒子2.9グラム、コロイドシリカ38.2グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および40グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波 (RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,200 °Cで2時間焼結して、約69%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのムライト繊維の約99%が、反応してs-ユークリプタイト繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は0.12 x 10-6/°Cである。
【0042】
標的とする繊維の化学的性質がs-リシア輝石、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)である第三の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維40.6グラム、Li2O粒子4.3グラム、コロイドシリカ55.1グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および40グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波 (RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,200 °Cで2時間焼結して、約79%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミノケイ酸塩繊維の約99%が、反応してs-リシア輝石繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は0.90 x 10-6/°Cである。
【0043】
標的とする繊維の化学的性質がs-リシア輝石、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)である第四の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維56.8グラム、Li2O粒子3.1グラム、コロイドシリカ40.1グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および45グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波 (RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,200 °Cで2時間焼結して、約78%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミノケイ酸塩繊維の約50%が、反応してs-リシア輝石繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は2.75 x 10-6/°Cである。
【0044】
標的とする繊維の化学的性質がs-リシア輝石、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)である第五の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維80.2グラム、Li2O粒子1.4グラム、コロイドシリカ18.4グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および55グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波(RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,200 °Cで2時間焼結して、約65%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミノケイ酸塩繊維の約25〜35%が、反応してs-リシア輝石繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は3.90 x 10-6/°Cである。
【0045】
標的とする繊維の化学的性質がs-リシア輝石、(Li2O)・(Al2O3)・2(SiO2)である第六の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維91.6 グラム、Li2O粒子0.6グラム、コロイドシリカ 7.8グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および55グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波(RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,200 °Cで2時間焼結して、約65%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミノケイ酸塩繊維の約5〜10%が、反応してs-リシア輝石繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は4.70 x 10-6/°Cである。
【0046】
標的とする繊維の化学的性質が、SASとして知られる(SrO)・(Al2O3)・2(SiO2)である第七の説明的例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維52.6グラム、 SrCO3 粒子38.1グラム、コロイドシリカ9.4グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および70グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波 (RF) 乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,100 °Cで2時間焼結して、約89%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミケイ酸塩繊維の約99%が、反応してSAS繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は2.7 x 10-6/°Cである。
【0047】
標的とする繊維の化学的性質が、SASとして知られる(SrO)・(Al2O3)・2(SiO2)である第八の説明的例では、以下の前駆体が一緒に混合される:ムライト繊維30.1グラム、SrCO3粒子32.6グラム、コロイドシリカ37.4グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および35グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波(RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,100 °Cで2時間焼結して、約89%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのムライト繊維の約99%が、反応してSAS繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は2.95 x 10-6/°Cである。
【0048】
標的とする繊維の化学的性質がNa2O変性s-リシア輝石、(Na2O)・(Li2O)・(Al2O3)・(SiO2)である第九の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維37.2グラム、Li2O粒子4.3グラム、コロイドシリカ55.1グラム、Na2CO3粒子3.4グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および40グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波(RF)乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,250 °Cで2時間焼結して、約89%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミノケイ酸塩繊維の少なくとも95%が、反応してNa2O変性s-リシア輝石繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は1.9 x 10-6/°Cである。
【0049】
標的とする繊維の化学的性質がCa2O変性s-リシア輝石、(Ca2O)・(Li2O)・(Al2O3)・(SiO2)である第十の例では、以下の前駆体が一緒に混合される:アルミノケイ酸塩繊維37.2グラム、Li2O粒子4.3グラム、コロイドシリカ55.1グラム、Ca2CO3粒子3.6グラム。以下の添加剤も、押出し可能混合物を形成するために添加される:16グラムのヒドロキシプロピル・メチルセルロース、20グラムの炭素粒子(-45ミクロンメッシュグレード)、および40グラムの脱イオン水。材料は押出可能混合物に混ぜ込まれ、押出しによって直径1インチのハニカム基質に成形される。基質は、高周波 (RF) 乾燥設備を使用して乾燥され、その後1,250 °Cで2時間焼結して、約89%の空隙率を持つ多孔質ハニカム構造を形成する。押出可能混合物に使用されたすべてのアルミノケイ酸塩繊維の少なくとも95%が、反応してCa2O変性s-リシア輝石繊維を形成した。この実施例では、多孔質セラミック体の熱膨張係数は0.8 x 10-6/°Cである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状材料中のすべての繊維の少なくとも約5%が x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ繊維状材料の製造方法で、ここでRはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択され、本方法は以下から成る:
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して、混合物を形成すること(ここで少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上は繊維形状である)、
混合物を押出して繊維体を生成すること、
繊維体を熱処理して繊維状材料を形成すること。
【請求項2】
.熱処理後、繊維体中のすべての繊維の少なくとも約25%がx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ、請求項1の方法。
【請求項3】
.少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上が、ムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、Li2O粒子、コロイドシリカ、SrCO3粒子から成るグループから選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
混合物がさらに、流体、バインター、造孔剤から成るグループから選択された1つ以上の添加剤から成る、請求項1の方法。
【請求項5】
1つ以上の添加剤が、繊維体の加熱によって実質的に除去される、請求項4の方法。
【請求項6】
x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ変性アルミノケイ酸塩繊維を含む繊維体の製造方法で、ここで、RはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択され、本方法は以下から成る:
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して、混合物を形成すること(ここで 少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上は繊維形状である)、
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を反応させて、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ混合物中の複数の繊維を形成すること、
混合物を繊維体に成形すること(ここで、繊維体中のすべての繊維の少なくとも約5%がx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ)。
【請求項7】
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料と反応後、繊維体中のすべての繊維の少なくとも約25%が、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2) 組成構造を持つ、請求項6の方法。
【請求項8】
繊維体中のすべての繊維の少なくとも約20%が共通の方向に整列している、
請求項6の方法。
【請求項9】
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上が、ムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、Li2O粒子、コロイドシリカ、SrCO3粒子から成るグループから選択される、請求項6の方法。
【請求項10】
混合物がさらに、流体、バインター、造孔剤から成るグループから選択された1つ以上の添加剤から成る、請求項6の方法。
【請求項11】
1つ以上の添加剤が、繊維体の加熱によって実質的に除去される、請求項10の方法。
【請求項12】
多孔質ハニカム基質の形成方法で、
本方法は以下から成る:少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して、混合物を形成すること(ここで、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上は繊維形状で、RはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択される)、
混合物を押出して、少なくとも約20%の空隙率を持つハニカム基質を形成すること、
ハニカム基質を熱処理して、少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料と反応させ、ハニカム高造中のすべての繊維の少なくとも約5%がx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つように、x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ複数の繊維を形成すること。
【請求項13】
ハニカム基質の熱処理後、すべての繊維の少なくとも約25%がx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ、請求項12の方法。
【請求項14】
少なくとも2つのx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上が、ムライト繊維、アルミノケイ酸塩繊維、Li2O粒子、コロイドシリカ、SrCO3粒子から成るグループから選択される、請求項12の方法。
【請求項15】
混合物がさらに、流体、バインター、造孔剤から成るグループから選択された1つ以上の添加剤から成る、請求項12の方法。
【請求項16】
1つ以上の添加剤が、ハニカム基質の加熱によって実質的に除去される、請求項15の方法。
【請求項17】
以下から成る変性アルミノケイ酸塩繊維ハニカム体:
隣接する壁の間の経路を規定するハニカムの一連の壁、
その壁は、結合して孔の開放ネットワークを持つ多孔質構造を形成する複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維から成り、ここでRはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択され、壁の複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維の少なくとも約20%は共通の方向に整列している。
【請求項18】
壁が少なくとも約20%の空隙率を持つ、請求項17の変性アルミノケイ酸塩繊維ハニカム体。
【請求項19】
複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維が、1よりも大きく2,000以下のアスペクト比を持つ、請求項17の変性アルミノケイ酸繊維状ハニカム体。
【請求項20】
さらに複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維状の触媒コーティングから成る、請求項17の変性アルミノケイ酸繊維状ハニカム体。
【請求項21】
以下から構成されるフィルタ:
入口および出口を含むハウジング、
入口と出口の間に配置される、請求項17の変性アルミノケイ酸塩繊維状ハニカム体。
【請求項22】
壁の複数のx(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)繊維上に蒸着した、さらに少なくとも1つの触媒から成る、請求項21のフィルター。
【請求項23】
.繊維状材料中のすべての繊維の少なくとも約5%がw(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ繊維状材料の製造方法で、ここでRはBa、Sr、K、Liから成るグループから選択され、本方法は以下から成る:
少なくとも2つのw(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料を混合して混合物を形成すること(ここで、少なくとも2つのw(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)前駆体材料の1つ以上は繊維形状である)、
混合物を押出して繊維体を生成すること、
繊維体を熱処理して繊維状材料を形成すること。
【請求項24】
NaとCaから成るグループからMが選択される、請求項23の方法。
【請求項25】
熱処理後、繊維体中のすべての繊維の少なくとも約95%が w(MO)・x(RO)・y(Al2O3)・z(SiO2)組成構造を持つ、請求項23の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−519334(P2011−519334A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505106(P2011−505106)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/040243
【国際公開番号】WO2009/129150
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(507280435)ジーイーオー2 テクノロジーズ,インク. (12)
【Fターム(参考)】