説明

変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物及びその製造方法

【課題】本発明は、ポリオレフィン系基材に対して優れた付着性を有し、且つ、同時に付着性を発現させることが困難であったポリスチレンなどのプラスチック基材への付着力を発現させることが可能な変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を提供することにある。
【解決手段】変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、および不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子を有する、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物、並びに、変性ポリオレフィン樹脂(a)とモノマー(b)及び(c)とを共重合させる、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンをはじめとするポリオレフィン系樹脂からなる基材(以下、ポリオレフィン系基材)に対して優れた付着性を有し、且つ同時に付着性を発現させることが困難であったポリスチレンなどのプラスチックへの付着力を発現させることが可能な、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物に関する。本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、接着剤用途、粘着剤用途、プライマー(バインダー)用途、及びインキ用途に適している。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂は、熱可塑性の汎用樹脂であり、安価で成形性、耐薬品性、耐候性、耐水性、電気特性など多くの優れた性質を有するため、従来からシート、フィルム、成形物等として、幅広い分野で使用されている。しかし、これらポリオレフィン系基材は、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、金属等の極性材料とは異なり、極性が低く(非極性)、且つ結晶性であるため、難付着性基材として知られ、同種及び異種基材同士の接着や塗装が困難であるという欠点を有する。
【0003】
これに対して、不飽和カルボン酸及び/またはその無水物で変性された酸変性プロピレン系ランダム共重合体や塩素化プロピレン系ランダム共重合体は、環境に配慮した水系樹脂組成物として用いることができ、該組成物は、ポリオレフィン系基材に付着性を有することが開示され(特許文献1及び特許文献2)。しかし、これらの共重合体にポリオレフィン系基材以外の基材への付着性を同時に発現させるのは困難であった。
【0004】
また、ポリスチレンなどのプラスチックへの付着力のある水系樹脂組成物として、天然ゴム系、イソプレンゴム系、ブタジエンゴム系、スチレン−ブタジエンゴム系、アクリロニトリル−ブタジエンゴム系、酢酸ビニル樹脂系、エチレン−酢酸ビニル樹脂系、エポキシ樹脂系、水性高分子−イソシアネート系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、水性高分子系などの種類があるが、何れもポリオレフィン系基材への付着性は実用的でない。また、水系樹脂組成物以外のポリスチレンなどのプラスチックへの付着力を発現できる接着剤として、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体のような熱可塑性エラストマーが公知であるが、ポリオレフィン系基材への付着は困難であった。
【0005】
更に、特許文献3には、変性ポリオレフィン樹脂とアクリル系重合体を含むエマルション組成物が記載され、ポリオレフィン系基材と、ポリアクリル、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチックへの付着力をある程度改善できることが提案されているが、更なる付着力の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−256556号公報
【特許文献2】特開平6−256592号公報
【特許文献3】特開2001−179909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリオレフィン系基材に対して優れた付着性を有し、且つ、同時に付着性を発現させることが困難であったポリオレフィン系基材以外の基材、例えば、ポリスチレンなどのプラスチック基材への付着力を発現させることが可能な変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)及び不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーであって共役ジエン系のモノマーとモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子を水中に分散させた水分散組成物が、各種基材に対し優れた付着性を有することを見出した。さらに、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液に、上記モノマー(b)、モノマー(c)及び重合開始剤(d)を添加して、モノマー(b)と前記モノマー(c)を共重合させることにより、上記水分散組成物を効率よく製造できることをも見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は以下の〔1〕〜〔7〕を提供する。
〔1〕変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、および不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子を有する、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
〔2〕前記変性ポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対する、前記共重合体の重量比率が、10〜150重量部である、上記〔1〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
〔3〕前記モノマー(b)100重量部に対する、前記モノマー(c)の重量比率が、30〜900重量部である、上記〔1〕または〔2〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
〔4〕前記モノマー(b)が、1,3−ブタジエンである、上記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
〔5〕前記モノマー(c)が、ビニル基および/または芳香族基を有するモノマーである、上記〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
〔6〕変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中に、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)、および重合開始剤(d)を添加し、前記モノマー(b)と前記モノマー(c)を共重合させる、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造方法。
〔7〕上記〔6〕に記載の製造方法で製造される、上記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、ポリオレフィン系基材への付着性を有し、且つ同時に付着性を発現させることが困難であったポリスチレンなどのプラスチック基材への付着力を発現可能な変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物、及び係る組成物の効率よい製造の多芽の製造方法が提供される。本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、接着剤用途、粘着剤用途、プライマー(バインダー)用途、及びインキ用途に適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の形態を、一例を挙げて模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、従来の水分散組成物の形態を模式的に示す説明図である。
【図3】図3は、ポリプロピレン基材への付着強度に対する、組成物に占めるモノマーの合計重量及びモノマー(c)の影響を示すグラフである。
【図4】図4は、ポリスチレン基材への付着強度に対する、組成物に占めるモノマーの合計重量及びモノマー(c)の影響を示すグラフである。
【符号の説明】
【0012】
A 粒子
B 水
(a) 変性ポリオレフィン樹脂
(e) 共役ジエン系のモノマーと不飽和二重結合を有するモノマーの共重合体
(f) 共役ジエン系のモノマーの単独重合体
(g) 不飽和二重結合を有するモノマーの単独重合体
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、ポリオレフィン樹脂水分散組成物を構成する粒子中に、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、および不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)の共重合体とが混在していることが重要である。なお、以下、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)を、それぞれ単に、モノマー(b)、モノマー(c)と略記することがある。
【0015】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の形態について、図1〜図2を参照して説明する。図1は本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の形態を模式的に示す図である。図2は従来のポリオレフィン樹脂水分散組成物の形態を模式的に示す図である。変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は通常、樹脂成分が水中で粒子状に分散する形態を取る。図1に示すように、本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物では、水Bに分散するそれぞれの粒子Aにおいて、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及び(c)の共重合体(e)とが含まれている。一方従来の水分散組成物では、図2に示すように、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共重合体(e)、モノマー(b)の単独重合体(f)、モノマー(c)の単独重合体(g)とが、別々に含まれている。
【0016】
本発明において、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体を、ポリオレフィン樹脂水分散組成物を構成する粒子中に混在させることで優れた効果が発現するのは、次のように推測される。
【0017】
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン系基材に優れた付着性を有する材料を用い、共役ジエン系の共重合可能なモノマー及び不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーの共重合体は、ポリスチレンなどのプラスチック基材に対し優れた付着性を有する材料として知られている。よって、変性ポリオレフィン樹脂と、共役ジエン系の共重合可能なモノマー及び不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマーの共重合体とを含有する組成物は、ポリオレフィン系基材に対する付着性も、ポリスチレンなどのプラスチック基材に対する付着性も、両方発揮できるものと期待される。
【0018】
しかし、図2に模式的に示すように、それぞれの樹脂成分が単に別々に存在する組成物の場合、変性ポリオレフィン樹脂と共重合体との親和性が低く、反発しあうため、それぞれが有する凝集力(付着力)を十分に発現することが出来ない。これに対して、図1に一例を模式的に示すように、本発明のポリオレフィン樹脂水分散組成物は、相互に親和性の低い変性ポリオレフィン樹脂と共重合体とを、水中に分散する粒子中に混在させることにより、粒子同士の親和性を高く保つことができるので、ポリオレフィン系基材やその他のプラスチック(ポリスチレンなど)基材など各種基材に対して高い凝集力(付着性)が発現すると推測される。
【0019】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を構成する粒子中に、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体が含まれていることの証明は、組成物の粒子径分布を取り、2つのピークがないことを確認することにより、可能である。2つのピークが残っていれば、モノマーが粒子中に含まれずに残っていると推測されるからである。また、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の塗膜を作製し、塗膜が白濁していることを確認することによっても、同様の証明が可能である。変性ポリオレフィン樹脂単独で作製された塗膜は透明だからである。なお、本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の粒子中には、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体が含まれていればよく、それらのほかに、モノマー(b)の重合体および/またはモノマー(c)の重合体が含有されていても構わない。
【0020】
また、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の粒子中において、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体の存在形態は特に限定されない。例えば、変性ポリオレフィン樹脂(a)と前記共重合体とがそれぞれ独立して存在していても、両者が物理的あるいは化学的に結合していても構わない。また、前記粒子中にさらに、モノマー(b)の単独重合体および/またはモノマー(c)の単独重合体が含まれている場合も、これらの重合体、変性ポリオレフィン樹脂(a)及び前記共重合体の存在形態は特に限定されず、例えば、変性ポリオレフィン樹脂(a)、前記共重合体、前記モノマー(b)の単独重合体および前記モノマー(c)の単独重合体がそれぞれ独立して存在していてもよいし、これらの中から選ばれる少なくとも2つが物理的或いは化学的に結合していても構わない。
【0021】
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、ポリオレフィン樹脂を変性させて得られる樹脂を意味する。原料であるポリオレフィン樹脂としては、エチレン及びα−オレフィンから選ばれる1種を重合又は2種以上を共重合して得られるポリオレフィン樹脂が挙げられる。具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などから選ばれる樹脂を例示することができる。これらの樹脂は、単独で用いても良いし、複数の樹脂を混合して用いても良い。
【0022】
ポリオレフィン樹脂の成分組成は、特に限定されるものではないが、プロピレン成分が60モル%以上のものが好ましい。60モル%未満のものを用いた場合、ポリオレフィン系基材に対する接着性が低下するおそれがある。
【0023】
ポリオレフィン樹脂としては、示差走査型熱量計(DSC)による融点(Tm)が60℃〜165℃のものが好ましく、60℃〜130℃のものがより好ましい。本発明におけるDSCによるTmの測定は、例えば以下の条件で行うことができる。DSC測定装置(セイコー電子工業製)を用い、約10mgの試料を200℃で5分間融解後、−60℃まで10℃/minの速度で降温して結晶化した後に、更に10℃/minで200℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価する。尚、後述の実施例におけるTmは前述の条件で測定されたものである。
【0024】
ポリオレフィン樹脂の分子量は、特に限定されない。しかし、後述するように変性ポリオレフィン樹脂(a)の重量平均分子量は、15,000〜200,000、より好ましくは、50,000〜150,000である。このため、原料であるポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が200,000より大きい場合は、得られる変性ポリオレフィン樹脂(a)の重量平均分子量が上述の範囲となるように、熱やラジカルの存在下で減成して、分子量を適当な範囲、例えば200,000以下となるように調整することが好ましい。尚、実施例を含む本発明における重量平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準物質:ポリスチレン)によって測定された値である。
【0025】
ポリオレフィン樹脂としては、前記樹脂の中でも重合触媒としてメタロセン触媒を用いて製造したポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−ブテン共重合体(以下、これらを併せてプロピレン系ランダム共重合体ということがある)から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0026】
ポリオレフィン樹脂の重合触媒は特に限定されない。重合触媒としてはチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒が例示され、中でもメタロセン触媒が好ましい。メタロセン触媒としては、公知のものが使用できる。具体的には以下に述べる成分(1)及び(2)、さらに必要に応じて(3)を組み合わせて得られる触媒が望ましい。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体。
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩。
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
【0027】
メタロセン触媒を用いて合成したポリオレフィン樹脂は、分子量分布が狭い、ランダム共重合性に優れ組成分布が狭い、共重合しうるコモノマーの範囲が広いといった特徴があり、本発明で変性ポリオレフィン樹脂(a)の原料として用いるポリオレフィン樹脂として好ましい。
【0028】
変性ポリオレフィン樹脂(a)は、上述のポリオレフィン樹脂を変性させて得られるものであり、変性の際には極性付与剤を用いることができる。極性付与剤としては、(i)塩素、(ii)不飽和カルボン酸、その誘導体及び無水物から選ばれる不飽和カルボン酸系化合物並びに(iii)ラジカル重合性モノマー、からなる群から選ばれる一種以上を用いることが好ましい。これら極性付与剤は、(i)塩素、(ii)不飽和カルボン酸系化合物及び(iii)ラジカル重合性モノマーからなる群から選ばれる二種或いは三種全てを組み合わせて用いてもよい。
【0029】
上記極性付与剤を複数種用いる場合は、(i)塩素と、(ii)不飽和カルボン酸系化合物との組み合わせ;(i)塩素と、(ii)不飽和カルボン酸系化合物と、(iii)ラジカル重合性モノマーとの組み合わせ;(ii)不飽和カルボン酸系化合物と、(iii)ラジカル重合性モノマーの組み合わせが好ましい。
【0030】
一方、環境的側面からは、塩素以外の各化合物から選択して用いることが好ましい。すなわち、(ii)不飽和カルボン酸系化合物のみ;(ii)不飽和カルボン酸系化合物と(iii)ラジカル重合性モノマーの組み合わせ、が好ましい。これらの中でも、(ii)不飽和カルボン酸系化合物と(iii)ラジカル重合性モノマーの組み合わせが特に好ましい。
【0031】
以下の記述においては、ポリオレフィン樹脂を、極性付与剤を用いて変性させるにあたり、極性付与剤として少なくとも塩素を用いる場合に得られる樹脂は、塩素化変性ポリオレフィン樹脂とし、極性付与剤として塩素を用いる場合に獲られる樹脂は、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂とする。また、極性付与剤として塩素を用いる用いないにかかわらず、ポリオレフィン樹脂を極性付与剤で変性して得られる樹脂を、総じて変性ポリオレフィン樹脂とする。
【0032】
塩素化変性ポリオレフィン樹脂中の塩素含有量は、特に限定されるものではないが、好ましくは2〜35重量%で、特に好ましくは、4〜25重量%である。2重量%より少ないと、ポリオレフィン系基材等の各種非極性基材への接着性は良くなるが、融点、結晶性等が高くなり、他樹脂との相溶性の低下のおそれや、水分散時に乳化し難くなるおそれがある。又、35重量%より多いと、各種非極性基材への接着性が低下するおそれがある。
【0033】
尚、塩素含有率はJIS−K7229に準じて測定することができる。すなわち、塩素含有樹脂を酸素雰囲気下で燃焼させ、発生した気体塩素を水で吸収し、滴定により定量する「酸素フラスコ燃焼法」を用いて測定することができる。
【0034】
極性付与剤として用いうる不飽和カルボン酸系化合物は、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体及び不飽和カルボン酸の無水物から選ばれる化合物である。本発明における不飽和カルボン酸とは、カルボキシル基を含有する不飽和化合物を意味し、不飽和カルボン酸の誘導体とは該不飽和化合物のモノ又はジエステル、アミド、イミド等を意味し、不飽和カルボン酸の無水物とは該不飽和化合物の無水物を意味する。不飽和カルボン酸化合物、その誘導体及び無水物としては例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、ナジック酸及びこれらの無水物、フマル酸メチル、フマル酸エチル、フマル酸プロピル、フマル酸ブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸エチル、マレイン酸プロピル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N−フェニルマレイミド等が挙げられる。このうち不飽和カルボン酸の無水物が好ましく、より好ましくは無水イタコン酸、無水マレイン酸である。不飽和カルボン酸系化合物は、上述の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の誘導体及び不飽和カルボン酸の無水物から選ばれる化合物を単独で或いは2種以上を混合して使用することができ、2種以上を混合する場合にはそれぞれの混合割合を自由に設定し得る。
【0035】
変性ポリオレフィン樹脂中の不飽和カルボン酸系化合物のグラフト重量は、0.1〜20重量%が好ましく、特に好ましくは、0.5〜12重量%である。なお、極性付与剤として塩素を用いていない場合、すなわち、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂中での不飽和カルボン酸系化合物のグラフト重量は、0.5〜20重量%が好ましく、特に好ましくは、1〜10重量%である。
【0036】
極性付与剤として、不飽和カルボン酸系化合物のみを用いた場合は、上記の好ましい範囲よりもグラフト重量が少ないと、変性ポリオレフィン樹脂を水分散させる際に、乳化し難くなるおそれがある。又、逆に多すぎると未反応物が多く発生し、各種性能が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0037】
不飽和カルボン酸系化合物のグラフト重量%は、アルカリ滴定法或いはフーリエ変換赤外分光法により求めることができ、後述の実施例において示す数値は本方法にて測定された数値である。
【0038】
本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル化合物、ビニル化合物が例示される。(メタ)アクリル化合物とは、分子中に(メタ)アクリロイル基((メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及び/又はメタアクリロイル基を意味する。)を少なくとも1個含む化合物である。ラジカル重合性モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸((メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸)は、メタアクリレート(メタアクリル酸)及び/又はアクリレート(アクリル酸)を意味する。)、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、n−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル等が挙げられる。特に、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートが好ましく、中でもメチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、シクロヘキシルメタアクリレート、ラウリルメタアクリレートがより好ましい。ラジカル重合性モノマーとしては、これらの中から単独、或いは2種以上を混合して使用することができ、その混合割合を自由に設定することができる。
【0039】
(メタ)アクリル化合物としては、下記一般式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上の化合物を、20重量%以上含むものも好ましい。前記(メタ)アクリル化合物を用いると、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を狭くすることができ、変性ポリプロピレン樹脂(a)の溶剤溶解性や他樹脂との相溶性をより向上させることができる。
CH2=CR1COOR2・・・(I)
(式(I)中、R1=H又はCH3、R2=Cn2n+1を意味する。)
【0040】
尚、上記一般式(I)中のnは、1〜18の整数であるが、より好ましくは、8〜18の整数である。
【0041】
ラジカル重合性モノマーの変性ポリオレフィン樹脂(a)中のグラフト重量は、0.1〜30重量%が好ましく、特に好ましくは、0.5〜20重量%である。極性付与剤としてラジカル重合性モノマーのみを用いた場合は、0.1重量%よりもグラフト重量が少ないと、変性ポリオレフィン樹脂(a)の他樹脂との相溶性、接着力が低下するおそれがある。又、30重量%より多いと、反応性が高い為に超高分子量体を形成して乳化性が悪化したり、ポリオレフィン骨格にグラフトしないホモポリマーやコポリマーの生成量が増加し、各種性能が低下するおそれがあるため好ましくない。
【0042】
極性付与剤として塩素を用いない場合、すなわち、非塩素化変性ポリオレフィン樹脂中での、ラジカル重合性モノマーのグラフト重量は、0.5〜30重量%が好ましく、特に好ましくは1〜20重量%である。
【0043】
本発明においては、塩素化する場合でもしない場合でも、上述した極性付与剤のうち、不飽和カルボン酸無水物または/及びメタアクリル酸エステルの組み合わせが最も好ましい。
なお、ラジカル重合モノマーのグラフト重量は、フーリエ変換赤外分光法あるいはH−NMRにより求めることができ、後述の実施例において示す値は本方法にて測定した数値である。
【0044】
ポリオレフィン樹脂を、不飽和カルボン酸系化合物またはラジカル重合性モノマーを極性付与剤として用いて変性し、変性ポリオレフィン樹脂を得る方法は特に限定されない。極性付与剤をポリオレフィン樹脂にグラフト重合し、変性ポリオレフィン樹脂を得るには、公知の方法で行うことが可能である。例えば、ポリオレフィン樹脂および極性付与剤の混合物を、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を含む有機溶剤などの、該混合物が溶解可能な溶剤に加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の装置に、ポリオレフィン樹脂、極性付与剤、および必要に応じて用いられる後述のラジカル発生剤などの材料を添加し混練する溶融法(溶融混練法)、等が挙げられる。溶液法や溶融法による際の極性付与剤の系内への添加は、一括添加であっても、逐次添加であってもよい。
【0045】
また、ポリオレフィン樹脂に対し、極性付与剤をグラフト重合させる際の順序は特に問わない。
【0046】
極性付与剤をポリオレフィン樹脂にグラフト重合する反応においては、ラジカル発生剤を用いることができる。ラジカル発生剤は、公知のものの中より適宜選択することができる。特に有機過酸化物系化合物が好ましい。例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等が挙げられる。このうち、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドが好ましい。ラジカル発生剤のポリオレフィン樹脂に対する添加量は、極性付与剤の重量に対し、1〜50重量%が好ましく、特に好ましくは、3〜30重量%である。この範囲よりも添加量が少ない場合は、グラフト率が低下するおそれがあり、超える場合は、不経済である。
【0047】
極性付与剤として不飽和カルボン酸系化合物並びにラジカル重合性モノマーから選ばれる化合物を用いる場合は、グラフト重合の際反応助剤を用いうる。反応助剤としては、スチレン、o−、p−、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン等が例示される。
【0048】
極性付与剤として、塩素と、不飽和カルボン酸系化合物並びにラジカル重合性モノマーから選ばれる一種以上の化合物とを併用する場合は、それらをポリオレフィン樹脂にグラフト重合させる順序は問わないが、塩素化する工程を最後にすることが好ましい。すなわち、前述の溶液法または溶融混練法にて、ポリオレフィン樹脂に、不飽和カルボン酸系化合物並びにラジカル重合性モノマーから選択される1種以上の化合物をグラフト重合させた後に、後述の方法で塩素化する方法が好ましい。塩素化の工程を、不飽和カルボン酸、その誘導体及び無水物、並びにラジカル重合性モノマーから選択される1種以上の化合物とのグラフト重合前に行う場合には、グラフト重合を低温の溶液法で行うことにより、グラフト重合による脱塩酸を防ぐことができる。
【0049】
尚、ラジカル重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸エステル等のエステルを含有する化合物を用いる場合は、塩素化の工程後に前記エステルをグラフト重合することにより、塩素化によるエステルの分解を防ぐことができる。
【0050】
塩素化する方法としては、例えば、塩素以外の極性付与剤をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂をクロロホルム等の溶媒に溶解した後、紫外線を照射しながら、或いは上記ラジカル発生剤の存在下、ガス状の塩素を吹き込むことにより塩素化変性ポリオレフィン樹脂を得る方法が好ましい。塩素含有量(塩素の導入率)は、ポリオレフィン樹脂の種類、反応スケール、反応装置等の要素の違いにより変化するため、塩素含有量の調節は、塩素の吹き込み量や時間を、モニタリングしながら行うことができる。
【0051】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂(a)の融点は20℃〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは60℃〜90℃である。
【0052】
本発明において、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)とは、その化学構造中に共役ジエンを含み、かつ、不飽和二重結合を有するモノマー(すなわち例えば、モノマー(c))と共重合可能なモノマーを意味する。モノマー(b)としては、特に限定されるものではないが、例えば1,3−ブタジエンや、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,3−トリシクロデカジエン、ミルセン及びその誘導体などが挙げられる。また、モノマー(b)としては、例示の化合物を単独、或いは2種以上を組み合わせて使用することができ、2種以上の場合はそれらの配合割合を自由に設定することができる。これらのモノマーとしては、入手性、コスト面から1,3−ブタジエンを用いることが好ましい。
【0053】
本発明において、不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)とは、その化学構造中に不飽和二重結合を一つ以上含み、かつ、共役ジエン系のモノマー(すなわち例えば、モノマー(b))と共重合可能なモノマーを意味する。モノマー(c)としては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、アクリロニトリルのほか、前述した不飽和カルボン酸系化合物の具体例のうち、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などの不飽和二重結合を1つ以上持つ化合物が挙げられる。不飽和カルボン酸系化合物の具体例のうち不飽和二重結合を1つ以上持つ化合物としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、n−ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが例示される。また、モノマー(c)としては、例示の化合物を単独、或いは2種以上組み合わせて使用することができ、2種以上の場合はそれらの配合割合を自由に設定することができる。
【0054】
モノマー(c)としては、付着させたい基材の組成に近いモノマー、例えばポリスチレン基材に付着させたいのであれば、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレンなどのモノマーを選択することが好ましい。
【0055】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物における各成分の配合割合は特に限定されない。一例を挙げると、変性ポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対し、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体の重量比率が、10〜150重量部であることが好ましく、より好ましくは、20〜120重量部である。変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物がモノマー(b)の単独重合体及び/又はモノマー(c)の単独重合体とを含む場合には、変性ポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対する、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体、並びにモノマー(b)の単独重合体及び/又はモノマー(c)の単独重合体の重量比率が、10〜150重量部であることが好ましく、より好ましくは、20〜120重量部である。
【0056】
モノマー(b)とモノマー(c)の共重合体の重量比率が10重量部以下であると、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物はポリオレフィン系基材への付着性は優れているものの、ポリスチレンなどの異種基材への付着力を発現させることが困難となるおそれがある。また、共役ジエン系の共重合可能なモノマー(b)と不飽和二重結合を有する共重合可能なモノマー(c)の共重合体の固形分の重量比率が150重量部を超えると、ポリスチレンなどのプラスチック基材への付着力は発現するものの、ポリオレフィン系基材への付着性を発現させることが困難となったり、重合反応時に凝集体が生じやすくなり、バインダー(プライマー)用途、塗料用途など、他の材料と混合使用する用途には不適当となるおそれがある。なお、変性ポリオレフィン樹脂(a)に対する共重合体の重量比率は、製造の際に使用する変性ポリオレフィン樹脂(a)、モノマー(b)、及びモノマー(c)のそれぞれの重量や、重合率(残モノマーの量)などを総合して特定可能である。
【0057】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の、モノマー(b)とモノマー(c)との重量比率は、モノマー(b)/モノマー(c)100重量部/30〜900重量部であることが好ましく、100重量部/50〜300重量部であることがより好ましい。
【0058】
モノマー(b)の重量を100重量部としたときに、モノマー(c)の重量が30重量部未満あるいは900重量部以上であると、ポリスチレンなどの異種基材への付着力は発現できないおそれがある。
【0059】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子を有すればよく、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、造膜助剤、界面活性剤、両親媒性溶媒、架橋剤、塩基性物質などを挙げることができる。
【0060】
変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物をポリオレフィン系基材に塗布して乾燥するときの温度(以下「焼付け温度」ということがある)が、変性ポリオレフィン樹脂(a)の融点よりも低い場合は、造膜助剤を用いることにより、乾燥後の塗膜の物性を良好にすることができる。造膜助剤としては例えば、エチレングリコール−モノ−n−エチルエーテル、エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコール−モノ−エチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−エチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0061】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、変性ポリオレフィン樹脂(a)を含む粒子が水に分散した状態を呈しているが、界面活性剤あるいは両親媒性溶媒を含むことにより、良好な保存安定性を保つことができる。
【0062】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤などが例示され、本発明ではこれらの何れも使用できる。このうち、ノニオン界面活性剤は、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の耐水性をより良好なものとすることができる点で好ましい。
【0063】
ノニオン界面活性剤としては例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等が挙げられる。
【0064】
アニオン界面活性剤としては例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩等が挙げられる。
【0065】
カチオン界面活性剤としては例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類などが挙げられる。
【0066】
両性界面活性剤としては例えば、アルキルベタイン、アミンオキサイド、イミダゾリニウムベタインなどが挙げられる。
【0067】
界面活性剤の添加量は、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物中のモノマー(b)及び(c)の合計重量に対する固形分重量比が0.1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。30重量%を超える場合は、水分散組成物を形成する量以上の過剰な乳化剤により、付着性や耐水性を著しく低下させ、又、乾燥被膜とした際に可塑効果、ブリード現象を引き起こし、ブロッキングが発生し易いため、好ましくない。
【0068】
両親媒性溶媒とは、水にも油にも溶解しやすい溶媒のことである。その例としては、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、n−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−メトキシプロパノール、2−エトキシプロパノール、ジアセトンアルコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸セロソルブなどが挙げられる。
【0069】
界面活性剤あるいは両親媒性溶媒は、いずれも、単独で使用することも可能であるし、相溶性、その他の性能を悪化させない限り、2種以上を組み合わせて使用することができ、その混合割合を自由に設定することができる。また、界面活性剤及び両親媒性溶媒の両方を使用してもよい。
【0070】
また、両親媒性溶媒は、有機溶剤でもあることが一般的であるが、変性ポリオレフィン水分散組成物を最終形態とするにあたり、通常は有機溶剤が取り除かれる。よって、両親媒性溶媒として有機溶剤でもある化合物を用いる場合には、これを取り除いた状態でも、乳化した変性ポリオレフィン樹脂が安定した水分散状態を保つことができるよう、種類や添加量等を検討しておくことが望ましい必要がある。
【0071】
架橋剤とは、変性ポリオレフィン樹脂、界面活性剤、塩基性物質等に存在する水酸基、カルボキシル基、アミノ基等と反応し、架橋構造を形成する化合物を意味する。架橋剤自体が水溶性のものを用いることができ、又は何らかの方法で水に分散されているものを用いることもできる。具体例として、ブロックイソシアネート化合物;脂肪族又は芳香族のエポキシ化合物、アミン系化合物;アミノ樹脂等が挙げられる。
【0072】
塩基性物質とは、変性ポリオレフィン樹脂中の酸性成分を中和し水に分散させることを目的として用いるものである。塩基性物質の具体例として好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、モルホリンなどが挙げられる。
【0073】
変性ポリオレフィン樹脂(a)には、必要に応じてさらにその他の成分、例えば、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類、防腐剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、金属塩、酸類、ハジキ防止剤、粘着付与剤、硬度付与剤、増粘剤、凍結防止剤、分散剤等を配合できる。
【0074】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、接着剤、粘着剤、バインダー(プライマー)、インキ等の各用途において利用できる。本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、変性ポリオレフィン(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体を含有する粒子を有するが、係る粒子の平均粒子径については、製造過程において凝集が生じる等の理由で大きくなることはあるが、特に制限はなく、用途に応じ適宜調整され得る。通常は10〜500nm、好ましくは10〜200nm、さらに好ましくは10〜100nmである。バインダー(プライマー)用途やインキ用途など、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を顔料などと同量前後の割合で混合して使用する場合には、該水分散組成物の粒子径は小さい方が付着性や他樹脂との相溶性を高く維持することができる。なお、水分散組成物を製造する過程での凝集は、該水分散組成物中の固形分(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a))を100重量部とした場合、モノマー(b)とモノマー(c)との合計の重量比が150重量部を超えると、凝集しやすくなる傾向がある。
【0075】
本発明は変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造方法も提供する。すなわち、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造方法としては、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中に、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)、および重合開始剤(d)を添加し、モノマー(b)とモノマー(c)を共重合させる、製造方法であることが好ましい。係る製造方法により、ポリオレフィン系基材とポリスチレンなどのプラスチック基材への付着力を同時に発現し得る変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を簡便かつ収率よく製造することができる。本発明の製造方法は、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、および不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子を有する、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造方法として、好適である。
【0076】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液は、変性ポリオレフィン樹脂(a)が水中に分散している状態の液体を意味する。変性ポリオレフィン樹脂(a)については、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物について既に説明したとおりである。ここで、水分散液中の変性ポリオレフィン樹脂(a)の平均粒子径は、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下である。300nmを超えると、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の貯蔵安定性や他樹脂との相溶性が悪化し、更に、基材への付着性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等の被膜物性が低下するおそれがある。又、粒子径の下限は特には限定されないが、この場合、一般的には乳化剤の添加量が多くなり、基材への付着性、耐水性、耐溶剤性等、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の被膜物性が低下する傾向が現れ易くなる。そのため、一般には、50nm以上であることが好ましい。尚、本発明における平均粒子径は光拡散法を用いた粒度分布測定により測定することができ、後述の実施例中の数値はこの方法で得られたものである。粒子径の調整は、乳化剤の添加量、種類、水中で樹脂を乳化する際の撹拌力等を適宜選択することにより行うことができる。
【0077】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液の調製は、変性ポリオレフィン樹脂(a)を水分散させればよく、特に限定されない。変性ポリオレフィン樹脂(a)の水への分散方法は例えば、強制乳化法、転相乳化法、D相乳化法、ゲル乳化法等の公知の方法によって行うことができる。また、分散の際には攪拌羽根、ディスパー、ホモジナイザー等による単独攪拌及びこれらを組み合わせた複合攪拌、サンドミル、多軸押出機等の機器の使用が可能である。しかしながら、水分散液中の変性ポリオレフィン樹脂(a)の平均粒子径を、上述の好ましい範囲、すなわち300nm以下にするためには、転相乳化法或いは高いシェア力を持つ複合攪拌、サンドミル、多軸押出機等を用いる方法が好ましい。
【0078】
モノマー(b)及びモノマー(c)については、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の説明において既に説明したとおりである。
【0079】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液と、モノマー(b)及びモノマー(c)との配合割合は、変性ポリオレフィン樹脂(a)(すなわち、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中の固形分)を100重量部としたときに、モノマー(b)及びモノマー(c)の合計の重量比率が、10〜150重量部であることが好ましく、より好ましくは、20〜120重量部である。10重量部以下であると、得られる水分散組成物はポリオレフィン系基材への付着性は優れているものの、ポリスチレンなどの異種基材への付着力を発現させることが困難となるおそれがある。また、150重量部を超えると、得られる水分散組成物は、ポリスチレンなどのプラスチック基材への付着力は発現するものの、ポリオレフィン系基材への付着性を発現させることが困難となったり、重合反応時に凝集体が生じやすくなり、バインダー(プライマー)用途、塗料用途など、他の材料と混合使用する用途には不適当となるおそれがある。
【0080】
また、モノマー(b)の重量/モノマー(c)の重量が100重量部/30〜900重量部であることが好ましく、100重量部/50〜300重量部であることがより好ましい。この範囲を外れるとポリスチレンなどの異種基材への付着力は発現できないおそれがある。
【0081】
なお、変性ポリオレフィン樹脂(a)を100重量部とした場合のモノマー(b)とモノマー(c)との合計の重量比率が150重量部を超えると、水に分散する粒子が凝集しやすくなる傾向があり、その結果水分散組成物中の粒子径が大きくなる傾向にある。
【0082】
変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造においては、重合開始剤(d)を用いることにより、モノマー(b)及びモノマー(c)の重合反応を円滑に開始させることができる。
【0083】
本発明において、重合開始剤(d)としては、特に限定されるものではなく、公知のものの中より適宜選択することができる。代表的なものを挙げると、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩;ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート等の有機化酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;過酸化水素;レドックス系の開始剤などが挙げられ、これらの1種類もしくは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0084】
重合開始剤の使用量は、モノマー(b)とモノマー(c)の合計重量に対して、0.05〜10重量部(有効成分)が好ましく、特に好ましくは、0.1〜5重量部(有効成分)である。この範囲よりも添加量が少ない場合は、これらのモノマーが重合反応を開始できない恐れがあり、一方、超える場合は、反応をコントロールできなくなる恐れがある。
【0085】
本発明においては、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中に、モノマー(b)、モノマー(c)、および重合開始剤(d)を添加し、前記モノマー(b)と前記モノマー(c)を共重合させる工程を含む。前記工程において、前記水分散液へのモノマー(b)、モノマー(c)及び前記重合開始剤(d)の添加の方法、重合の方法、条件については、特に限定する必要はないが、一例を挙げると以下の通りである。ウォーターバスに浸したオートクレーブに、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液とモノマー(b)とモノマー(c)と重合開始剤(d)とを、反応開始前から一括で仕込み、必要に応じて撹拌しながら、液中および気相部の酸素を窒素で置換する。その後に、重合開始剤(d)が分解しかつラジカルが発生する温度までウォーターバスを昇温する方法が考えられる。また、目的の温度まで昇温した後は、その温度で保持した方が残存するモノマーは少なくなるので好ましい。反応温度、反応時間は特に限定されず、重合開始剤の種類等の他の反応条件に応じて適宜選択され得る。
【0086】
上記工程においては、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中に、必要に応じて助剤を添加することもできる。助剤とは、例えば分子量調節剤、連鎖移動剤、pHを調整するための酸性化合物、塩基性化合物が挙げられる。またその他の助剤としては、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物が含有してもよい成分として例示した造膜助剤、界面活性剤、両親媒性溶媒、架橋剤、塩基性物質、界面活性剤、硬化剤、消泡剤、ハジキ防止剤、レベリング剤、粘着付与剤、硬度付与剤、防腐剤、増粘剤、凍結防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、分散剤、染料、顔料、水性アクリル樹脂、水性ウレタン樹脂、低級アルコール類、低級ケトン類、低級エステル類などを挙げることができる。
【0087】
これらの助剤の添加時期は特に限定されない。例えば、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中にモノマー(b)及び(c)、並びに重合開始剤(d)を仕込んだ後、昇温する前に添加することができる。
【0088】
分子量調節剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類;アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸及びこれらのナトリウム塩などのアリル化合物など、が例示される。連鎖移動剤としては、α−メチルスチレンダイマー、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどが例示される。これらの助剤の添加量は、本来の目的、用途を阻害しない範囲で適宜決めることができ、また、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物が含有してもよい成分のうち界面活性剤の添加量は、該組成物の説明において示した好ましい添加量が、同様に適用される。
【0089】
変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)およびモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子径は、変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中における粒子径とほぼ同じである。このことから、水分散組成物中において、モノマー(b)とモノマー(c)とが変性ポリオレフィン樹脂(a)の中で共重合しているものと推測される。
【実施例】
【0090】
次に本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。別表に実施例を記す。
【0091】
[変性ポリオレフィン樹脂水分散液1の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したポリプロピレン(プロピレン成分100モル%、重量平均分子量90,000、Tm=90℃)100重量部、無水マレイン酸2重量部、メチル(メタ)アクリレート1.5重量部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.5重量部をあらかじめ十分に混合し、バレル温度170℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去した。得られた非塩素化変性ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が77,000、無水マレイン酸のグラフト重量が1.7重量%、メチル(メタ)アクリレートのグラフト重量が1.3重量%、融点は90℃であった。
【0092】
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付け4つ口フラスコ中に、得られた非塩素化変性ポリオレフィン樹脂100g、界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)20g、25%−アンモニア水(中和剤)10g、トルエン(溶剤)20gを添加し、120℃で30分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを90分かけて添加した。引き続き、溶剤を減圧化にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却した。得られた非塩素化変性ポリオレフィン樹脂の水分散液は、樹脂の平均粒子径が93nmであった。ここで得られた、変性ポリオレフィン樹脂の水分散液を、以下、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1とする。
【0093】
[変性ポリオレフィン樹脂水分散液2の製造]
メタロセン触媒を重合触媒として製造したプロピレン系ランダム共重合体(プロピレン成分96モル%、エチレン成分4モル%、重量平均分子量100,000、Tm=125℃)を350℃に設定した二軸押出機に供給して熱減成を行いプロピレン系ランダム共重合体を得た。減成プロピレン系ランダム共重合体100重量部、無水マレイン酸4重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部をあらかじめ十分に混合し、180℃に設定した二軸押出機を用いて混練反応した。押出機内にて減圧脱気を行い、残留する未反応物を除去し、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂を得た。この樹脂2kgをグラスライニングされた50L容反応釜に投入し、20Lのクロロホルムを加え、2kg/cm2、の圧力下、紫外線を照射しながらガス状の塩素を反応釜底部より吹き込み塩素化し、塩素含有率18重量%のサンプルを得た。次いで、溶媒であるクロロホルムをエバポレーターで留去し、固形分30重量%に調整した。このクロロホルム溶液に安定剤(t−ブチルフェニルグリシジルエーテル)を対樹脂1.5重量%加えた後、バレル温度90℃に設定した二軸押出機にて固形化を行いた。得られた塩素化ポリオレフィン樹脂は、重量平均分子量が92,000、無水マレイン酸のグラフト重量が3.5重量%、塩素含有率が15.5重量%、融点は85℃であった。
【0094】
撹拌機、冷却管、温度計、ロートを取り付け4つ口フラスコ中に、得られた塩素化変性ポリオレフィン樹脂100g、界面活性剤(N,N−ポリオキシアルキレン−アルキルアミン)20g、25%−アンモニア水(中和剤)18g、トルエン(溶剤)25gを添加し、120℃で30分混練した。その後、90℃の脱イオン水290gを60分かけて添加した。引き続き、溶剤を減圧化にて除去後、室温まで撹拌しながら冷却した。得られた塩素化変性ポリオレフィン樹脂の水分散液の樹脂の平均粒子径は105nmであった。ここで得られた、塩素化変性ポリオレフィン樹脂の水分散液を、以下、変性ポリオレフィン樹脂水分散液2とする。
【0095】
[実施例1]
オートクレーブ中に、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1と、水分散液1の固形分100重量部に対して、1,3−ブタジエンモノマー38重量部とスチレンモノマー38重量部とを添加し、さらに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を、添加したモノマー全量に対して2重量部添加した。次に、オートクレーブ中を窒素置換しながら攪拌を行った後、オートクレーブ中の温度を2時間かけて70℃まで上昇させ、70℃で8時間保持し、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0096】
[実施例2]
実施例1において、1,3−ブタジエンモノマー10重量部、スチレンモノマー10重量部にした以外は、同様の操作を行い、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0097】
[実施例3]
実施例1において、1,3−ブタジエンモノマー60重量部、スチレンモノマー60重量部にした以外は、同様の操作を行い、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0098】
[実施例4]
実施例1において、1,3−ブタジエンモノマー50重量部、スチレンモノマー26重量部にした以外は、同様の操作を行い、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0099】
[実施例5]
実施例1において、1,3−ブタジエンモノマー20重量部、スチレンモノマー56重量部にした以外は、同様の操作を行い、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0100】
[実施例6]
オートクレーブ中に、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1と、水分散液1の固形分100重量部に対して、1,3−ブタジエンモノマー60重量部とスチレンモノマー60重量部を添加し、さらに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を該モノマーに対して2重量部添加した。次に、オートクレーブ中を窒素置換しながら6時間ほど攪拌を行った後に、界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)を該モノマーに対して固形分重量比で2重量部添加し、オートクレーブ中の温度を2時間かけて70℃まで上昇させ、70℃で8時間保持し、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0101】
[実施例7]
オートクレーブ中に、変性ポリオレフィン樹脂水分散液2と、水分散液2の固形分100重量部に対して、1,3−ブタジエンモノマー38重量部とスチレンモノマー38重量部とを添加し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を、添加した全モノマーに対して2重量部添加した。次に、オートクレーブ中を窒素置換しながら攪拌を行った後、オートクレーブ中の温度を2時間かけて70℃まで上昇させ、70℃で8時間保持し、共役ジエン系共重合体を含む変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0102】
[比較例1]
変性ポリオレフィン樹脂水分散液1を単独で用いた。
【0103】
[比較例2]
変性ポリオレフィン樹脂水分散液2を単独で用いた。
【0104】
[比較例3]
オートクレーブ中に、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1と、水分散液1の固形分100重量部に対して、1,3−ブタジエンモノマー38重量部を添加し、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を、該モノマー量に対して2重量部添加した。次に、オートクレーブ中を窒素置換しながら攪拌を行った後、オートクレーブ中の温度を2時間かけて70℃まで上昇させ、70℃で8時間保持し、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0105】
[比較例4]
オートクレーブ中に、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1と、水分散液1の固形分100重量部に対して、スチレンモノマー38重量部を添加し、さらに、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を、該モノマー全量に対して2重量部添加した。次に、オートクレーブ中を窒素置換しながら攪拌を行った後、オートクレーブ中の温度を2時間かけて70℃まで上昇させ、70℃で8時間保持し、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0106】
[比較例5]
オートクレーブ中に、1,3−ブタジエンモノマー50重量部と、スチレンモノマー50重量部とを添加し、さらに、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)と2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を、添加したモノマー全量に対して2重量部添加した。次に、オートクレーブ中を窒素置換しながら攪拌を行った後、オートクレーブ中の温度を2時間かけて70℃まで上昇させ、70℃で8時間保持し、スチレン−ブタジエン共重合体水分散組成物を得ることができた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0107】
[比較例6]
前記変性ポリオレフィン樹脂水分散液1と、比較例5で製造したスチレン−ブタジエン共重合体水分散組成物とを、水分散液1の固形分100重量部に対して、比較例5で水分散組成物の固形分76重量部となるように混合して用いた。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0108】
〔物性評価〕
(粒子径測定)
粒子径測定には、動的光散乱法を利用した測定装置である、ゼータサイザー3000HS(Malvern Instruments Ltd社製)を使用した。
【0109】
(各基材への付着力の評価)
実施例1〜7、比較例1〜6の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を30wt%に調整後、以下の方法で試験片を得た。
【0110】
1.サンプル作製
該水分散組成物の乾燥塗膜が8〜10μm厚みとなるように、イソプロピルアルコール(以下IPA)で脱脂したアルミ箔(AIH−H−20S/日本金属箔工業(株)製/20μm厚)の表面に塗工を行い、送風乾燥機で150℃2分間乾燥を行った。尚、アルミ箔への塗工には、マイヤーバーを用いた。
【0111】
次に、超高剛性ポリプロピレン板(以下PP基材)またはポリスチレン板(以下PS基材)の表面をIPAで脱脂し、前記方法において塗工を行ったアルミ箔上の塗工層が、IPAで脱脂した基材表面と接触するように貼合を実施した。
【0112】
貼合にはラミネーターを使用し(大成ラミネーター製/VAII−900)、ロール温度(上下)=120℃、ロール速度=1m/分、基材に対する線圧=25kg/cm、ロール=耐熱シリコーンゴム、Hs硬度=60°の条件で行った。
【0113】
2.付着力測定
付着力測定にはテンシロン(オリエンテック(株)製/RIG−1210)を使用した。
【0114】
貼合したサンプル(構成=アルミ箔/塗工層/基材)を15mm幅に裁断し、基材への付着強度測定を行った。剥離条件は、剥離角度=180°、剥離速度=100mm/分、サンプル幅は15mm幅にして、アルミ箔/塗工層を引っ張り、塗工層と基材の付着強度を測定した。
【0115】
表1に実施例1〜7、比較例1〜4の水分散組成物の組成を、表2に得られた水分散組成物の粒子径とPP基材およびPS基材へのラミネート試験による付着力測定結果を、それぞれ示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
表1及び表2より以下のことが明らかである。実施例1〜7の水分散組成物は、比較例1〜6の水分散組成物と比較していずれも、PP基材に対する付着性とPS基材に対する付着性を同時にバランス良く発現できていた。特に、比較例6の組成物と実施例1〜7の組成物との比較から明らかなように、変性ポリオレフィン樹脂(a)と、モノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体とが一つの粒子中に存在せず、別個に分散する比較例6の組成物と比較して、実施例1〜7の組成物は、変性ポリオレフィン樹脂(a)とモノマー(b)及びモノマー(c)の共重合体とが共に粒子を形成することにより、相互の親和性の低さをカバーし、それぞれが有する凝集力(付着力)を発揮しているものと推測される。
【0119】
PP基材に対する付着性の実用的な許容範囲は、上記評価においては500g/15mm以上である。PP基材に対する付着性は、いずれの実施例の組成物も優れていた。
【0120】
一方、PS基材に対する付着性の実用的な許容範囲は、上記評価においては50g/15mm以上であり、200g/15mmを超えるとかなり優れると言える。PS基材に対する付着性も、実施例の組成物はいずれも良好であり、付着強度に応じた用途への応用が期待されるものであった。すなわち、実施例2〜6の組成物、中でも実施例4〜6の組成物は粘着剤用途として有用であり、実施例1及び実施例7の組成物は非常に高いPS基材への付着性を示したことから、接着剤用途として有用であることが明らかとなった。
【0121】
従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物は、ポリプロピレン等のポリオレフィン系基材だけでなく、ポリスチレン等のプラスチック基材に対し広く、かつバランスの取れた接着性を示すので、接着剤用途、粘着剤用途、プライマー(バインダー)用途、及びインキ用途に適し、優れた物性を発現する。
【0122】
実施例8
実施例1において、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1の固形分100重量部に対する1,3−ブタジエンモノマーとスチレンモノマーの合計量が50重量部となるように調整しつつ、スチレンモノマーの添加量を変化させた他は、実施例1〜7と同様の操作を行い、スチレンモノマー濃度の異なる複数の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得た。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。

【0123】
実施例9
実施例8において、1,3−ブタジエンモノマーとスチレンモノマーの合計量を75重量部とした以外は、同様の操作を行い、スチレンモノマー濃度の異なる複数の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物を得た。なお、残モノマーの量は添加したモノマーに対して1重量%以下であった。
【0124】
比較例7
実施例8において、変性ポリオレフィン樹脂水分散液1を添加せず、1,3−ブタジエンモノマーとスチレンモノマーのみを添加して、スチレンモノマーの添加量を変化させた他は、同様の操作を行い、スチレンモノマー濃度の異なる複数のスチレン−ブタジエン共重合体水分散組成物を得た。
【0125】
実施例8、実施例9及び比較例7で得られた各組成物について、前述の付着力測定用のサンプル作製において、乾燥塗膜が3〜5μm厚みとなるようにした他は同様の条件でサンプルを作製し、PP基材およびPS基材に対する付着力を前述の測定条件と同様にして測定した。PP基材に対する付着強度を図3に、PS基材に対する付着強度を図4に、それぞれ示す。
【0126】
図3及び図4から明らかなように、比較例7で得られた組成物と比較して、実施例8及び実施例9で得られた組成物はいずれも、PP基材に対する付着性とPS基材に対する付着性を同時に発現できることが可能であることが分かる。
【0127】
また、図4の実施例8及び実施例9の結果から、変性ポリオレフィン樹脂に対するモノマーの合計比率を高めに調整すればPS基材への付着力を接着剤用途として問題ないレベルまで強くすることが可能であり、また、同合計比率を低めに調整すれば、PS基材に対する付着力は低いレベルとし、粘着剤用途に適した組成物とできることが明らかである。さらに、モノマー中の(c)モノマー濃度を高めに調整すれば、PP基材に対する付着力を抑え、粘着剤用途に適した組成物とできることがわかる。このように本発明の組成物は、(a)、(b)及び(c)の成分比率を調整して、PP基材及び/またはPS基材に対する接着剤、或いは粘着剤に最適な特性を備える組成物とされ得ることが証明された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリオレフィン樹脂(a)と、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、および不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)の共重合体とを含有する粒子を有する、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
【請求項2】
前記変性ポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対する、前記共重合体の重量比率が、10〜150重量部である、請求項1に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
【請求項3】
前記モノマー(b)100重量部に対する、前記モノマー(c)の重量比率が、30〜900重量部である、請求項1または2に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
【請求項4】
前記モノマー(b)が、1,3−ブタジエンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
【請求項5】
前記モノマー(c)が、ビニル基および/または芳香族基を有するモノマーである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。
【請求項6】
変性ポリオレフィン樹脂(a)の水分散液中に、共役ジエン系のモノマーであって不飽和二重結合を有するモノマーと共重合可能なモノマー(b)、不飽和二重結合を有するモノマーであって共役ジエン系のモノマーと共重合可能なモノマー(c)、および重合開始剤(d)を添加し、前記モノマー(b)と前記モノマー(c)を共重合させる、変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法で製造される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂水分散組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−94047(P2011−94047A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249946(P2009−249946)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(502368059)日本製紙ケミカル株式会社 (86)
【Fターム(参考)】