説明

変性共役ジエン重合体、その製造方法、変性共役ジエン系重合体組成物、及びタイヤ

【課題】シリカ系無機充填剤等の各種無機充填剤との親和性に優れ、加硫物としたときに、ウェットスキッド特性と低ヒステリシスロス性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性及び破壊強度を満足する変性共役ジエン系重合体を提供する。
【解決手段】ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端に、特定の化合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系重合体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性共役ジエン重合体、その製造方法、変性共役ジエン系重合体組成物、及びその組成物を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の抑制等、環境に対する配慮が社会的要請となっており、自動車に対する低燃費化への要望が高まってきている。このような現状から、自動車用タイヤ、特に地面と接するタイヤトレッドの材料として、転がり抵抗が小さい材料の開発が求められている。
従来、タイヤトレッドの補強性充填剤としては、カーボンブラック、シリカ等が使用されている。補強性充填剤としてシリカを用いると、低ヒステリシスロス性及びウェットスキッド抵抗性の向上が図られるという利点を有している。
一方、疎水性表面のカーボンブラックに対して、親水性表面のシリカは、共役ジエン系ゴムとの親和性が低く、カーボンブラックに比較して分散性が悪いという欠点を有していることから、分散性を改良させたり、シリカ-ゴム間の結合付与を行ったりするため、別途シランカップリング剤を含有させる必要がある。
このようなシリカに関する問題に鑑みて、運動性の高いゴム分子末端部に、シリカとの親和性や反応性を有する官能基を導入することによって、共役ジエン系ゴム材中におけるシリカの分散性を改良し、さらにはゴム分子末端部をシリカ粒子との結合で封じることによって、ヒステリシスロスを低減化する試みがなされている。
【0003】
例えば、グリシジルアミノ基を有する変性剤を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(例えば、特許文献1参照。)や、グリシドキシアルコキシシランを重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(例えば、特許文献2参照。)、さらにはアミノ基を含有するアルコキシシラン類を重合体末端に反応させて得られる変性ジエン系ゴム(例えば、特許文献3、4参照。)、及びこれらとシリカとの組成物についての提案がなされている。
また、多官能アニオン重合開始剤を用いてジエン系ゴムの重合を行い、その後に、グリシジルアミノ基等の変性剤によって変性することにより、官能化された重合体末端数を増加させ、ジエン系ゴムとシリカとにより構成される組成物の性能、すなわちシリカ分散性を向上させ、ヒステリシスロスを低減化させる技術(例えば、特許文献5参照。)の提案もなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開01/23467号パンフレット
【特許文献2】特開平07−233217号公報
【特許文献3】特開2001−158834号公報
【特許文献4】特開2003−171418号公報
【特許文献5】特開2006−306962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年においては、低燃費化の要求のさらなる高まりとともに、一層、ヒステリシスロスを低減化させたゴム組成物の開発が要求されるようになっている。
本発明の課題は、シリカ系無機充填剤を含む加硫物としたときに、低ヒステリシスロス性と、ウェットスキッド抵抗性や低温特性といった安全性に関する特性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性や破壊強度を有し、良好な加工性をも満足する、変性共役ジエン系重合体、その製造方法、変性共役ジエン系重合体組成物、及びその組成物を含むタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記従来技術の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の多官能性アニオン重合開始剤を用いて重合し、重合活性末端を特定の官能基を有する化合物で変性することによって得られる変性共役ジエン系重合体とすることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下のとおりである。
〔1〕
ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比(ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、
共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端に、下記式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又はこれらの縮合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系重合体。
【0007】
【化1】

【0008】
(式(1)において、Aは三級アミン、ピリジン、シアン、イミン、スルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、Rは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。dは1〜3の整数であり、ROが複数ある場合は、各ROは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0009】
【化2】

【0010】
(式(2)において、Rは炭素数1〜12の二価の炭化水素基であり、RおよびRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、R、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよく、eは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。)
【0011】
【化3】

【0012】
(式(3)において、R〜Rの定義は式(2)に同じであり、gは1〜2の整数である。)
【0013】
【化4】

【0014】
(式(4)において、XおよびXは、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R10およびR11は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、AおよびAは、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Aは下記式(5)、(6)、(7)で表される基である。複数の、X、X、R10、R11、A、A又はAが存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。pおよびqは、それぞれ0〜3の整数である。hは0〜20の整数であり、hが2以上の場合、(A−A−A)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、式(4)で表される化合物において、ハロゲン原子の数及び炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は5以上である。)
【0015】
【化5】

【0016】
(式(5)において、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R12は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR12が存在するときは、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。rは0〜2の整数であり、iは0〜20の整数である。iが2以上の場合、(SiX122−r)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、Aが式(5)で表される場合、[p+(h×i×r)+q]は5以上の整数である。)
【0017】
【化6】

【0018】
(式(6)において、R13は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。なお、Aが式(6)で表される場合、(p+q)は5又は6である。)
【0019】
【化7】

【0020】
(式(7)において、Aは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R14は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR14が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。sは0〜3の整数である。なお、Aが式(7)で表される場合、[p+(h×s)+q]は5以上の整数である。)
【0021】
〔2〕
前記ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比が、0.1〜0.45の範囲である前記〔1〕に記載の変性共役ジエン系重合体。
〔3〕
ポリスチレン系ゲル充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定において、最も低分子量側のピーク面積が、クロマトグラム全体の面積の20〜50%である前記〔1〕又は〔2〕に記載の変性共役ジエン系重合体。
〔4〕
ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比(ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物)を0.05〜1.0の範囲で反応させて、
多官能アニオン重合開始剤を調製する工程と、
前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させ、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させて、共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に、下記式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又はこれらの縮合物を反応させる工程と、
を有する変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【0022】
【化8】

【0023】
(式(1)において、Aは三級アミン、ピリジン、シアン、イミン、スルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、Rは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。dは1〜3の整数であり、ROが複数ある場合は、各ROは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0024】
【化9】

【0025】
(式(2)において、Rは炭素数1〜12の二価の炭化水素基であり、RおよびRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、R、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよく、eは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。)
【0026】
【化10】

【0027】
(式(3)において、R〜Rの定義は式(2)に同じであり、gは1〜2の整数である。)
【0028】
【化11】

【0029】
(式(4)において、XおよびXは、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R10およびR11は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、AおよびAは、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Aは下記式(5)、(6)、(7)で表される基である。複数の、X、X、R10、R11、A、A又はAが存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。pおよびqは、それぞれ0〜3の整数である。hは0〜20の整数であり、hが2以上の場合、(A−A−A)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、式(4)で表される化合物において、ハロゲン原子の数及び炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は5以上である。)
【0030】
【化12】

【0031】
(式(5)において、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R12は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR12が存在するときは、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。rは0〜2の整数であり、iは0〜20の整数である。iが2以上の場合、(SiX122−r)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、Aが式(5)で表される場合、[p+(h×i×r)+q]は5以上の整数である。)
【0032】
【化13】

【0033】
(式(6)において、R13は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。なお、Aが式(6)で表される場合、(p+q)は5又は6である。)
【0034】
【化14】

【0035】
(式(7)において、Aは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R14は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR14が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。sは0〜3の整数である。なお、Aが式(7)で表される場合、[p+(h×s)+q]は5以上の整数である。)
【0036】
〔5〕
前記ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比が0.1〜0.45の範囲である前記〔4〕に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
〔6〕
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、シリカ系無機充填剤を0.5〜300質量部を含有する変性共役ジエン系重合体組成物。
〔7〕
前記変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックを0.5〜100質量部、さらに含有する前記〔6〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
〔8〕
前記シリカ系無機充填剤の窒素吸着比表面積が170m/g以上である前記〔6〕又は〔7〕に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
〔9〕
前記〔6〕乃至〔8〕のいずれか一に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤ。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、シリカ系無機充填剤を含む加硫物としたときに、低ヒステリシスロス性と、ウェットスキッド抵抗性や低温特性といった安全性に関する特性とのバランスに優れ、実用上十分な耐摩耗性や破壊強度を有し、良好な加工性をも満足する、変性共役ジエン系重合体、その製造方法、変性共役ジエン系重合体組成物、及びタイヤが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
下記においては、本実施形態の変性共役ジエン系重合体について、その製造方法と併せて説明する。
〔変性共役ジエン系重合体〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比(ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端に式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又はこれらの縮合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系重合体である。
【0039】
〔変性共役ジエン系重合体の製造方法〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の製造方法は、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させて、ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物のモル比が0.05〜1.0の範囲の多官能アニオン重合開始剤を調製する工程と、
前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させ、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させて、共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に、式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又はこれらの縮合物を反応させる工程と、
を有する。
本実施形態の変性共役ジエン系重合体について、使用する材料、及びこれらを作製する条件につき、以下製造工程と併せて説明する。
【0040】
(多官能アニオン重合開始剤)
先ず、上述した共役ジエン系重合体の重合活性末端に、式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物(変性剤)、又はこれらの縮合物によって変性を行う前段階の、共役ジエン系重合体を重合する工程において使用する多官能アニオン重合開始剤について説明する。
多官能アニオン重合開始剤は、ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とを反応させることにより調製できる。
例えば、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法、有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、有機リチウム化合物とモノビニル芳香族化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、共役ジエン化合物及び/又はモノビニル芳香族化合物及びポリビニル芳香族化合物の二者又は三者の存在下で有機リチウム化合物を反応させる方法等が挙げられる。
【0041】
特に、炭化水素溶媒中で、有機リチウム化合物とポリビニル芳香族化合物とを反応させる方法、有機リチウム化合物と共役ジエン化合物とを反応させた後にポリビニル芳香族化合物を反応させる方法、共役ジエン化合物及びポリビニル芳香族化合物の存在下でモノ有機リチウム化合物を反応させる方法で調製された多官能アニオン開始剤が好ましい。
また、多官能アニオン重合開始剤の生成の促進や安定化を図るために、調製の際に、系内にルイス塩基を添加することが好ましい。
【0042】
<ポリビニル芳香族化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いるポリビニル芳香族化合物としては、例えば、o,m及びp−ジビニルベンゼン、o,m及びp−ジイソプロペニルベンゼン、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,2−ビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,3,5−トリビニルナフタレン、2,4−ジビニルビフェニル、3,5,4’−トリビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,5,6−トリビニル−3,7−ジエチルナフタレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
特に、ジビニルベンセン、ジイソプロペニルベンゼンが好ましく、これらのo−,m−,p−の異性体の混合物であってもよい。工業的利用を行う場合には、これら異性体混合物を用いる方が経済的に有利である。
【0043】
<共役ジエン化合物とモノビニル芳香族化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製には、上述したポリビニル芳香族化合物と共に、共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物を用いることもできる。
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。
また、モノビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられ、特に、スチレンが好ましい。
共役ジエン化合物及び/又はモノ芳香族ビニル化合物は、GPC(ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー)で測定した多官能アニオン重合開始剤のポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜20,000の範囲内となるように添加することが好ましく、1,000〜10,000となるように添加することがさらに好ましい。
【0044】
<有機リチウム化合物>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる有機リチウム化合物としては、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−プロピルリチウム、iso−プロピルリチウム、ベンジルリチウム等のモノ有機リチウム化合物;1,4−ジリチオブタン、1,5−ジリチオペンタン、1,6−ジリチオヘキサン、1,10−ジリチオデカン、1,1−ジリチオジフェニレン、ジリチオポリブタジエン、ジリチオポリイソプレン、1,4−ジリチオベンゼン、1,2−ジリチオ−1,2−ジフェニルエタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリリチオ−2,4,6−トリエチルベンゼン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。
特に、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのモノ有機リチウム化合物が好ましい。
【0045】
<炭化水素溶媒>
多官能アニオン重合開始剤の調製に用いる炭化水素溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0046】
<ルイス塩基>
多官能アニオン重合開始剤の調製の際には、系内にルイス塩基を添加することにより、生成の促進や安定化が図られる。
ルイス塩基としては、3級モノアミン、3級ジアミン、鎖状又は環状エーテル等が挙げられる。
3級モノアミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリエチルアミン、N,N−ジメチルホルムアミドジイソプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジシクロヘキシルアセタール等の化合物が挙げられる。
【0047】
3級ジアミンとしては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノメタン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノペンタン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、ジピペリジノペンタン、ジピペリジノエタン等の化合物が挙げられる。
鎖状エーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレンジメチルエーテルが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、1,1−ビス(2−オキソラニル)エタン、2,2−ビス(2−オキソラニル)ブタン、2,2−ビス(5−メチル−2−オキソラニル)プロパン、2,2−ビス(3,4,5−トリメチル−2−オキソラニル)プロパン等の化合物が挙げられる。
【0048】
前記ルイス塩基の中でも、3級モノアミンであるトリメチルアミン、トリエチルアミン、3級ジアミンであるN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、及び環状エーテルであるテトラヒドロフラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパンが好ましい。
前記ルイス塩基は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
多官能アニオン重合開始剤の調製に使用するポリビニル芳香族化合物の量は、有機リチウム化合物1モルに対して0.05〜1.0モルの範囲とする。
これにより、ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物のモル比が0.05〜1.0の範囲の多官能アニオン重合開始剤が得られる。
【0049】
有機リチウム化合物に対してポリビニル芳香族化合物の使用量が多いほど、後述する共役ジエン系重合体の変性反応によって官能基を付与される分子鎖末端の割合が増加し、後述するシリカ系粒子との親和性や反応性の向上が図られ、変性共役ジエン系重合体組成物における低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが良好なものとなり、耐摩耗性、破壊特性の向上も図られる。一方、有機リチウム化合物に対してポリビニル芳香族化合物の使用量が少ない方が組成物混練時などでの加工性を良好なものにする。加工性については配合物ムーニー粘度を指標とすることができる。配合物ムーニー粘度が高すぎる場合、混練時のトルクが上昇して電力消費が増大するなどの悪影響が生じる。また混練後のシーティングの工程で均一なシート作製が難しくなるといったことも生じる。一般に低ヒステリシスロス性を改善する場合、配合物ムーニー粘度が上昇し加工性が悪化する傾向にあるが、あまり高くしないことが実用上重要である。これらのバランスからポリビニル芳香族化合物の量は、有機リチウム化合物1モルに対して0.1〜0.5モルの範囲が好ましく、0.1〜0.45の範囲がより好ましく、0.1〜0.4の範囲がさらに好ましい。
【0050】
また、多官能アニオン重合開始剤を調製する際に、ルイス塩基を添加する場合は、多官能アニオン重合開始剤を調製するときに用いられる前記溶媒に対し30〜50,000ppmの範囲内で添加することが好ましく、200〜20,000ppmの範囲内で添加することが好ましい。
反応促進や安定化の効果を十分に発現するためには30ppm以上の添加が好ましく、後の重合工程でのミクロ構造調整の自由度を確保することや重合後の溶媒を回収し、精製する工程における重合溶媒との分離を考慮すると50,000ppm以下で添加することが好ましい。
【0051】
多官能アニオン重合開始剤を調製する際の温度は、10℃〜140℃の範囲が好ましく、35℃〜110℃の範囲がより好ましい。
生産性の観点から10℃以上であることが好ましく、高温による副反応を抑制するために140℃以下であることが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する反応時間は、反応温度に左右されるが、5分〜24時間の範囲である。
【0052】
(共役ジエン系重合体)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体の変性前の状態である共役ジエン系重合体は、上述した多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合し、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる。
共役ジエン系重合体の重合工程においては、上述した多官能アニオン重合開始剤を、予め所定の反応器で調製しておき、共役ジエン化合物の重合、あるいは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行う反応器に供給して重合反応を行ってもよいし、後述する重合又は共重合を行うための反応器中で多官能アニオン重合開始剤を調製しておいて、この反応器に所定のモノマー類を供給して重合反応を行ってもよい。
重合体の大量生産時の生産性や品質安定性の観点からは、予め所定の反応器で多官能アニオン重合開始剤を調製しておき、これを、必要に応じて重合に使用する反応器に供給して、共役ジエン化合物の重合、あるいは共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合を行うことが好ましい。
また、共役ジエン系重合体の重合は、回分式、又は1個の反応器若しくは2個以上の連結された反応器での連続式等の重合様式により行うことができる。後述する変性反応において、より高い変性率の重合体を得る観点から、回分式の反応器で重合を行うことが好ましい。
【0053】
<極性化合物>
共役ジエン系重合体を製造する際、芳香族ビニル化合物を共役ジエン化合物とランダムに共重合する目的で、また共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤として、更には重合速度の改善等の目的で、下記の極性化合物を少量添加してもよい。
【0054】
極性化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第三級アミン化合物;カリウム−tert−アミラート、カリウム−tert−ブチラート、ナトリウム−tert−ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
これらの極性化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
極性化合物の使用量は、目的と効果の程度に応じて選択されるが、通常、多官能アニオン重合開始剤中のリチウム1モルに対して0.01〜100モルである。
このような極性化合物(ビニル化剤)は、重合体ジエン部分のミクロ構造調節剤として所望のビニル結合量に応じて適量使用できる。
多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整を行うことができる。
ランダム化する方法は特開昭59−140211号公報記載のように、共重合の途中に1.3−ブタジエンの一部を断続的に添加する方法を用いることもできる。
【0056】
<共役ジエン化合物>
共役ジエン系重合体の合成に用いられる共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中で、特に、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
不純物として、アレン類、アセチレン類が含有されていると、後述する変性反応を阻害するため、これらの濃度の合計は、200ppm以下であることが好ましく、100ppm以下であることがより好ましく、50ppm以下であることがさらに好ましい。
【0057】
<芳香族ビニル化合物>
共役ジエン系重合体の合成に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ジフェニルエチレン等が挙げられる。これらの中で、特に、スチレンが好ましく、これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<重合溶媒>
共役ジエン系重合体は所定の溶媒中で重合する。
溶媒としては、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が用いられる。具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。
【0058】
<重合条件>
共役ジエン系重合体の重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であれば特に限定されるものではないが、生産性の観点から0℃以上が好ましく、重合終了後の活性末端へ変性反応量を充分に確保する観点から120℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは20〜100℃の範囲であり、さらに好ましくは30〜85℃の範囲である。
重合温度は、重合が発熱反応であることを考慮に入れ、さらにはモノマー及び溶媒のフィード温度を調節し、モノマー濃度を制御し、反応器外部からの冷却や加熱を行うことによって制御できる。
上述した共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及び重合溶媒は、それぞれ単独で、あるいはこれらの混合液を、予め重合反応に供する前に、不純物であるアレン類やアセチレン類を、有機金属化合物を用いて処理しておくこともできる。これによって、変性反応前の重合体の活性末端量が高濃度となり、より高い変性率を達成できる。
【0059】
<共役ジエン系重合体の構造>
後述する変性共役ジエン系重合体と充填剤とを含有する変性共役ジエン系重合体組成物においてウェットスキッド特性が重視される場合においては、共役ジエン系重合体中の芳香族ビニル単位の含量は、1〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、20〜40質量%がさらに好ましい。
優れたウェットスキッド抵抗性を得る観点から、前記変性前の共役ジエン系共重合体中の芳香族ビニル単位の含量は1質量%以上であることが好ましく、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性の観点からは50質量%以下であることが好ましい。
また、変性前の共役ジエン系重合体の、共役ジエン結合単位中に占める1,2−又は3,4−結合の割合は、10〜80質量%が好ましく、15〜70質量%がより好ましく、25〜65質量%がさらに好ましい。
【0060】
優れたウェットスキッド抵抗性を得る観点からは、上記のように、共役ジエン系重合体の、共役ジエン結合単位中に占める1,2−又は3,4−結合の割合は、10質量%以上であることが好ましく、低ヒステリシスロス性、耐摩耗性の観点から80質量%以下であることが好ましい。
また、共役ジエン−芳香族ビニル共重合体鎖中における共役ジエンと芳香族ビニルとの組成分布については、分子鎖中に均一であっても、また分子鎖中に不均一に分布していてもよく、ブロックとして存在していてもよい。
【0061】
一方において、後述する変性共役ジエン系重合体と充填剤とを含有する変性共役ジエン系重合体組成物において、優れた低温特性を得ることを目的とする場合には、前記共役ジエン−芳香族ビニル共重合体中の芳香族ビニル単位の含量は10質量%以下であることが好ましく、共役ジエンの単独重合体であることがさらに好ましい。また、変性前の共役ジエン系重合体の、共役ジエン結合単位中に占める1,2−又は3,4−結合の割合は、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
それぞれの成分比率が上記範囲内にあるときにガラス転移温度が低く、低温特性に優れた組成物を得ることができる。
【0062】
(変性剤)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体は、変性剤によって重合活性末端が変性されている。
詳細には、上述した多官能アニオン重合開始剤を用いて、上述した共役ジエン化合物を重合し、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合して共役ジエン系重合体を作製し、この共役ジエン系重合体の重合活性末端に特定の化合物を反応させることによって、本実施形態の変性共役ジエン系重合体が得られる。
変性反応に用いる特定の化合物としては、下記式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又は式(1)の縮合物、式(2)の縮合物、式(3)の縮合物あるいは式(4)の縮合物が挙げられる。
ここで、縮合物とは化合物中のアルコキシシリル基(−SiOR)の一部が縮合によりシロキサン(−Si−O−Si−)となったものを表す。
なお、これらの化合物中には活性水素を有しない。活性水素とは、電気陰性度の大きなO、N等に結合した水素原子のことをいう(東京化学同人「化学辞典」)。
【0063】
【化15】

【0064】
(式(1)において、Aは三級アミン、ピリジン、シアン、イミン、スルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、Rは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。dは1〜3の整数であり、ROが複数ある場合は、各ROは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0065】
【化16】

【0066】
(式(2)において、Rは炭素数1〜12の二価の炭化水素基であり、RおよびRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、R、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよく、eは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。)
【0067】
【化17】

【0068】
(式(3)において、R〜Rの定義は式(2)に同じであり、gは1〜2の整数である。)
【0069】
【化18】

【0070】
(式(4)において、XおよびXは、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R10およびR11は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、AおよびAは、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Aは下記式(5)、(6)、(7)で表される基である。複数の、X、X、R10、R11、A、A又はAが存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。pおよびqは、それぞれ0〜3の整数である。hは0〜20の整数であり、hが2以上の場合、(A−A−A)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、式(4)で表される化合物において、ハロゲン原子の数及び炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は5以上である。)
【0071】
【化19】

【0072】
(式(5)において、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R12は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR12が存在するときは、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。rは0〜2の整数であり、iは0〜20の整数である。iが2以上の場合、(SiX122−r)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、Aが式(5)で表される場合、[p+(h×i×r)+q]は5以上の整数である。)
【0073】
【化20】

【0074】
(式(6)において、R13は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。なお、Aが式(6)で表される場合、(p+q)は5又は6である。)
【0075】
【化21】

【0076】
(式(7)において、Aは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R14は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR14が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。sは0〜3の整数である。なお、Aが式(7)で表される場合、[p+(h×s)+q]は5以上の整数である。)
【0077】
ここで、式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)に関して、具体的に説明する。
まず、式(1)に関して説明する。
は三級アミン、ピリジン、シアン、イミン、スルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、三級アミンは環状三級アミン、非環状三級アミンを含む。また、環状三級アミンは、環の一部としてエーテル結合、チオエーテル結合を含み、非環状三級アミンは、N,N−二置換アニリン等のN,N−二置換芳香族を含む。
は単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Rが単結合である場合、ケイ素とAが直接結合した下記式(8)で表すことができる。
【0078】
【化22】

【0079】
(式(8)において、A、R、R、dの定義は、式(1)と同じである。)
【0080】
が炭素数1〜20の二価の炭化水素基である場合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアラルキレン基等が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜20のアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状のものが好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基等が挙げられる。
及びRの炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられる。
【0081】
アルキル基及びアルケニル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロペニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。
また、アリール基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよい。例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
アラルキル基は、芳香環上に低級アルキル基等の置換基を有していてもよい。例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
dは1〜3の整数であり、2又は3であることが好ましい。ROが複数ある場合は、各ROは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0082】
式(1)で表される化合物の具体例を下記に示す。
例えば、Aが環状三級アミンを含む場合、[3−(1−ヘキサメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[(1−ヘキサメチレンイミノ)メチル]トリエトキシシシラン、[2−(1−ヘキサメチレンイミノ)エチル]トリエトキシシラン、[3−(1−ピロリジニル)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ヘプタメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[3−(1−ドデカメチレンイミノ)プロピル]トリエトキシシラン、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール、3−[10−(トリエトキシシリル)デシル]−4−オキサゾリン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0083】
例えば、Aが非環状三級アミンを含む場合、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]]トリエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、[2−(ジメチルアミノ)エチル]トリエトキシシラン、[3−(ジブチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、 [(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0084】
例えば、Aがピリジンを含む場合、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
例えば、Aがシアンを含む場合、2−シアノエチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、11−シアノウンデシルトリエトキシシラン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。これらの中で、3−シアノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0085】
例えば、Aがイミンを含む場合、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0086】
次に、式(2)及び式(3)に関して説明する。
の炭素数1〜12の二価の炭化水素基としては、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜12のアラルキレン基等が挙げられる。これらの中で、炭素数1〜12のアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、直鎖状のものが好ましい。炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
【0087】
及びRの炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられるが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基が好ましい。炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0088】
、R及びRが炭素数1〜20の一価の炭化水素基である場合、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアラルキル基等が挙げられるが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基が好ましい。炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。
また、R、R及びRのうち2つが結合して、それらが結合しているケイ素原子と一緒に環を形成している場合、環は4〜7員環であることが好ましい。
さらに、−SiR基はケイ素が結合している窒素の保護基となっており、変性反応後に脱保護(加水分解)することにより、一級アミノ基とすることができる。保護基としては、アルキルシリル基が挙げられる。アルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、エチルメチルフェニルシリル基等が挙げられる。
【0089】
式(2)で表される化合物の具体例を下記に示す。
N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物、メチルジエトキシシリル化合物、エチルジエトキシシリル化合物、メチルジメトキシシリル化合物、エチルジメトキシシリル化合物等が挙げられる。
式(3)で表される化合物の具体例を下記に示す。
1−トリメチルシリル−2,2−ジエトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン及びこれらのジエトキシシリル化合物に対応するジメトキシシリル化合物、メチルエトキシシリル化合物、エチルエトキシシリル化合物、メチルメトキシシリル化合物、エチルメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0090】
最後に式(4)に関して説明する。
及びXはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。X又はXが複数存在する場合、各々同一であっても異なっていてもよいが、X及びXが同一、即ちいずれもハロゲン原子であるか又はいずれも炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましい。
ハロゲン原子としては、特に限定されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
アルコキシ基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等が挙げられる。これらの中で、活性末端を有する重合体との反応時間を短時間で終了させる観点から、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
10及びR11の炭素数1〜20の一価の炭化水素基としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。
【0091】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。
炭素数3〜6のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルエチル基等が挙げられる。
これらの中でも、炭素数1〜20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましい。これらの中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。なお、これらのアルキル基、アラルキル基、アリール基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。
【0092】
10及びR11は、互いに同一であっても異なっていてもよく、R10又はR11が複数存在する場合、各々同一であっても異なっていてもよい。
及びAは、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、互いに同一であっても異なっていてもよい。A又はAが複数存在する場合、各々同一であっても異なっていてもよい。
又はAが単結合である場合、式(4)はケイ素とAが直接結合した下記式(9)、式(10)、式(11)表すことができる。
【0093】
【化23】

【0094】
【化24】

【0095】
【化25】

【0096】
(式(9)、式(10)、式(11)において、X、X、R10、R11、A、h、p、qの定義は式(4)と同じである。また、式(9)においてA、式(10)においてAは、炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。)
【0097】
及びAが炭素数1〜20の二価の炭化水素基である場合、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルキリデン基、炭素数3〜6のシクロアルキレン基、炭素数6〜20のアリーレン基、炭素数7〜20のアルキルアリーレン基、炭素数7〜20のアリールアルキレン基等が挙げられる。なお、炭素数1〜20のアルキレン基には、炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基、炭素数3〜20の分岐状アルキレン基を含む。
炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基等が挙げられる。
【0098】
炭素数3〜20の分岐状アルキレン基としては、例えばイソプロピレン基等が挙げられる。
炭素数2〜20のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、イソプロピリデン基、ビニリデン基等が挙げられる。
炭素数3〜6のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
炭素数6〜20のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基等が挙げられる。
及びAは単結合又は炭素数1〜20の直鎖状アルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素数1〜6の直鎖状アルキレン基であることがより好ましい。
式(4)において、Aは式(5)、式(6)、式(7)で表される基である。Aが複数存在する場合、各々同一であっても異なっていてもよい。
【0099】
ここで、式(5)、式(6)、式(7)に関して具体的に説明する。
まず、式(5)に関して説明する。
はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、具体例としては、X及びXに関して例示したものと同様のものが挙げられる。
12は炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、具体例としては、R10及びR11に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
なお、X又はR12が複数存在する場合、各々同一であっても異なっていてもよい。
rは0〜2の整数であり、iは0〜20の整数である。iは0〜10の整数であることが好ましく、1〜3の整数であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。iが2以上の場合、−(SiX122−r)−で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、Aが式(5)で表される場合、[p+(h×i×r)+q]は5以上の整数である。
【0100】
次に、式(6)に関して説明する。
13は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。炭素数1〜20の一価の炭化水素基の具体例としては、R10及びR11に関して例示したものと同様のものが挙げられる。なお、Aが式(6)で表される場合、(p+q)は5又は6である。
最後に式(7)に関して説明する。
は単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基である。炭素数1〜20の二価の炭化水素基の具体例としては、A及びAに関して例示したものと同様のものが挙げられる。
はハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、具体例としては、X及びXに関して例示したものと同様のものが挙げられる。
14は炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、具体例としては、R10及びR11に関して例示したものと同様のものが挙げられる。
なお、X又はR14が複数存在する場合、各々同一であっても異なっていてもよい。
sは0〜3の整数である。なお、Aが式(7)で表される場合、[p+(h×s)+q]は5以上の整数である。
【0101】
式(4)において、X及びXがいずれもハロゲン原子である場合に関して説明する。
式(4)において、X及びXがいずれもハロゲン原子である場合、Aは式(5)で表される基であることが好ましい。この場合、式(5)において、Xはハロゲン原子であることが好ましい。即ち、この場合、式(4)で表される変性剤はハロゲン化ケイ素化合物である。
式(4)がハロゲン化ケイ素化合物である場合に関して説明する。
式(4)がハロゲン化ケイ素化合物である場合、1分子中に5〜10のハロゲン原子を有することが好ましく、1分子中に6〜9個のハロゲン原子を有することが特に好ましく、1分子中に6個のハロゲン原子を有することが最も好ましい。
式(4)で表される化合物に含まれるハロゲン原子は、同一であっても異なっていてもよいが、変性反応により副生する塩の処理を容易にする観点から、全てのハロゲン原子が塩素原子であることが特に好ましい。
【0102】
本発明の変性剤として好ましいハロゲン化ケイ素化合物として、下記式(12)が挙げられる。
【0103】
【化26】

【0104】
式(12)において、X及びXはハロゲン原子であり、X又はXが複数存在するときは、各々異なるハロゲン原子であってもよい。
10は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。中でも、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基であることが特に好ましい。
jは0〜20の整数であり、0〜10の整数であることが好ましく、0〜6の整数であることがより好ましく、0〜2の整数であることが特に好ましい。
pは2又は3であり、3であることがより好ましい。
【0105】
式(12)で表される化合物の具体例を下記に示す。
ヘキサクロロジシラン、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5−ビス(トリクロロシリル)ペンタン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン等が挙げられる。
これらのハロゲン化ケイ素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
式(4)において、X及びXがいずれも炭素数1〜20のアルコキシ基である場合に関して説明する。
式(4)において、X及びXがいずれも炭素数1〜20のアルコキシ基である場合、Aは式(5)、式(6)、式(7)で表される基であることが好ましい。
この場合、式(5)において、Xは炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルコキシ基であることがより好ましい。
式(7)において、Xは炭素数1〜20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルコキシ基であることが特に好ましい。
これらの場合、式(4)で表される変性剤は、アルコキシシラン化合物である。
【0107】
式(6)で表される基の具体例としては、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、フェニルイミノ基、ベンジルイミノ基等が挙げられる。
式(7)で表される基の具体例としては、トリメトキシシリルプロピルイミノ基、トリエトキシシリルプロピルイミノ基等が挙げられる。
式(4)がアルコキシシラン化合物である場合に関して説明する。
式(4)がアルコキシシラン化合物である場合、1分子中に5個以上のアルコキシ基を有することが好ましく、5〜10個のアルコキシ基を有することがより好ましく、6〜9個のアルコキシ基を有することが更に好ましく、6個のアルコキシ基を有することが特に好ましい。
【0108】
本発明の変性剤として好ましいアルコキシシラン化合物として、下記式(13)、式(14)、式(15)が挙げられる。
【0109】
【化27】

【0110】
【化28】

【0111】
【化29】

【0112】
式(13)、式(14)、式(15)において、X、X及びXは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、X、X又はXが複数存在する場合、各々同一であっても異なるものであってもよい。
10及びR14は、炭素数1〜20の炭化水素基であり、炭素数1〜6の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜3の炭化水素基であることがより好ましい。
13は炭素数1〜20の炭化水素基であり、炭素数1〜10の炭化水素基であることが好ましい。
〜A11は単結合、炭素数1〜20のポリメチレン基(−(CH)−)、アリーレン基又はシクロアルキレン基である。A〜A11において、メチレン基の数kは、同一であっても異なっていてもよい。また、kは1〜8の整数であることが好ましい。
式(13)、式(14)において、pは2又は3であり、式(15)において、p及びsは、それぞれ0〜3の整数であり、(p+s)は2〜6の整数である。
【0113】
式(13)で表される化合物の具体例を下記に示す。
ヘキサエトキシジシラン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘプタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、ビス(トリエトキシシリル)シクロヘキサン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エタン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0114】
式(14)で表される化合物の具体例を下記に示す。
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)プロピルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ブチルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)フェニルアミン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ベンジルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)メチルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)メチルアミン、ビス(トリエトキシシリルメチル)プロピルアミン、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)プロピルアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0115】
式(15)で表される化合物の具体例を下記に示す。
トリス(トリエトキシシリルメチル)アミン、トリス(2−トリエトキシシリルエチル)アミン、トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物等が挙げられる。
【0116】
(変性反応)
上述した変性剤を用いた共役ジエン系重合体の変性反応について説明する。
上述した変性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上述した変性剤を、共役ジエン系重合体の重合活性末端に反応させる際の、反応温度、反応時間等については、特に制限されるものではないが、0℃以上120℃以下で30秒以上反応させることが好ましい。
上述した変性剤は、添加した変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述した多官能アニオン重合開始剤に含まれるリチウムの合計モル数の1〜5倍の範囲となるように添加することが好ましく、1.5〜3倍の範囲となるように添加することがより好ましく、1.5〜2.5倍の範囲となるように添加することがさらに好ましい。
【0117】
所定の変性率を得て、かつ、変性共役ジエン系分子鎖末端部に1つ以上のアルコキシ基を残存させる観点から、変性剤は、添加した変性剤中のシリル基に結合したアルコキシ基の合計モル数が、上述した多官能アニオン重合開始剤に含まれるリチウムの合計モル数の1倍以上とすることが好ましく、コスト的な観点から5倍以下とすることがより好ましい。
変性共役ジエン系重合体中の官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率は、本実施形態の変性共役ジエン系重合体を用いた組成物を加硫物とした場合において、低ヒステリシスロス性とウェットスキッド抵抗性とのバランスが良好なものとなり、実用上十分な耐摩耗性、破壊特性を得るためには、78質量%以上であることが好ましく、86質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0118】
変性率は、上述した共役ジエン化合物中の不純物であるアレン類、アセチレン類の濃度やこれらの処理方法、及び重合温度を制御することによって、上記のように78質量%以上の変性率を得ることができる。
官能基成分を有する重合体の含有量、すなわち変性率の測定方法としては、官能基含有の変性成分と非変性成分を分離できるクロマトグラフィーによる測定方法が好ましい。
このクロマトグラフィーによる測定方法としては、官能基成分を吸着するシリカ等の極性物質を充填剤としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)カラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法が好適である。
【0119】
本実施形態における変性共役ジエン系共重合体の重量平均分子量(GPC測定:ポリスチレン換算)は、加工性や物性を考慮して10万〜200万が好ましく、20万〜100万がより好ましく、25万〜50万がさらに好ましい。
また、回分式プロセスで共役ジエン系重合体の重合を行った場合には、GPCの分子量分布で複数のピークが見られる。その最も低分子量側のピークは主に、多官能開始剤混合物中の単官能成分により重合が開始して生成した成分と考えられる。多官能成分が多いほど低ヒステリシスロス性、耐摩耗性等の物性に優れる反面、加工性が悪化することから、この場合には、最も低分子量側のピーク面積が20〜50%であることが好ましい。
多官能アニオン重合開始剤を調製する際のポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比と、変性剤の添加量とを、前述した範囲内で調整することで、上記のように最も低分子量側のピーク面積を20〜50%とすることができる。
【0120】
上述した変性剤により、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、重合体溶液中に、必要に応じて反応停止剤を添加してもよい。
反応停止剤としては、通常、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類;ステアリン酸、ラウリン酸、オクタン酸等の有機酸:水等が使用できる。
また、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、必要に応じて、重合体に含まれる金属類を脱灰してもよい。
脱灰の方法としては、例えば、水、有機酸、無機酸、過酸化水素等の酸化剤等を、重合体溶液に接触させて金属類を抽出し、その後水層を分離する方法が用いられる。
また、共役ジエン系重合体の変性反応を行った後、重合体溶液に、酸化防止剤を添加してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤等が挙げられる。
【0121】
本実施形態における変性共役ジエン系重合体を、重合体溶液から取得する方法としては、従来公知の方法を適用できる。
例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押し出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法等が適用できる。
【0122】
〔変性共役ジエン系重合体組成物〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、上記に亘って説明した変性共役ジエン系重合体を、ゴム成分全体を100質量部としたとき、20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、シリカ系無機充填剤が0.5〜300質量部を含有されているものとする。
【0123】
(シリカ系無機充填剤)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物に含有されているシリカ系無機充填剤としては、SiO、又はSiAlを、構成単位の主成分とする固体粒子が使用できる。
例えば、シリカ、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質等が挙げられる。
また、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤や、シリカ系無機充填剤とシリカ系以外の無機充填剤との混合物も使用できる。
これらの中でも、シリカ及びガラス繊維が好ましく、シリカがより好ましい。
シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカ等が使用できるが、中でも破壊特性の改良効果並びにウェットスキッド抵抗性の両立効果が最も顕著である湿式シリカが好ましい。
【0124】
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、170〜300m/gであることが好ましく、200〜300m/gであることがより好ましい。
上記のように、変性共役ジエン系重合体組成物におけるシリカ系無機充填剤の配合量は、変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、0.5〜300質量部であるが、5〜200質量部が好ましく、20〜100質量部がより好ましい。
シリカ系無機充填剤の配合量が0.5質量部未満であると、充填剤の添加効果が発現されず、一方において300質量部を超えると、シリカ系無機充填剤の分散性が劣化し、組成物の加工性が悪化し、かつ機械強度が低下するため好ましくない。
【0125】
(カーボンブラック)
変性共役ジエン系重合体組成物には、シリカ系無機充填剤以外の補強性充填剤として、カーボンブラックを添加してもよい。
カーボンブラックは、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用でき、窒素吸着比表面積が50m/g以上、DBP吸油量が80ml/100gのカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの配合量は、変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、0.5〜100質量部が好ましく、3〜100質量部がより好ましく、5〜50質量部がさらに好ましい。
ドライグリップ性能や導電性等のタイヤ等の用途に求められる性能を発現するためには0.5質量部以上添加することが好ましいが、分散性の観点から100質量部以下とすることが好ましい。
【0126】
(金属酸化物、金属水酸化物)
なお、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、シリカ系無機充填剤やカーボンブラック以外に金属酸化物や金属水酸化物を添加してもよい。
金属酸化物とは、化学式M(Mは金属原子、x、yは各々1〜6の整数)を構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばアルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等を用いることができる。また金属酸化物と金属酸化物以外の無機充填剤の混合物も使用できる。
金属水酸化物とは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化ジルコニウム等である。
【0127】
(シランカップリング剤)
また、本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物においては、シランカップリング剤を含有させたものとしてもよい。
シランカップリング剤は、ゴム成分とシリカ系無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有しており、ゴム成分及びシリカ系無機充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有している。
シランカップリング剤としては、例えば、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−ジスルフィド、ビス−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−テトラスルフィド等が挙げられる。
シランカップリング剤の配合量は、上述したシリカ系無機充填剤100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜15質量部がさらに好ましい。
シランカップリング剤の配合量が、シリカ系無機充填剤100質量部に対して0.1質量部未満であると、有効な配合効果が得られず、30質量部を超えた量は必要ではない。
【0128】
変性共役ジエン系重合体とシリカ系無機充填剤、カーボンブラックやその他の充填剤、及びシランカップリング剤を混合する方法については特に限定されるものではない。
例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。
これらのうち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
また、変性共役ジエン系重合体と各種配合剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0129】
(加硫剤)
本実施形態の変性共役ジエン系共重合体組成物は、加硫剤により加硫処理を施した加硫組成物としてもよい。
加硫剤としては、例えば、有機過酸化物及びアゾ化合物等のラジカル発生剤、オキシム化合物、ニトロソ化合物、ポリアミン化合物、硫黄、硫黄化合物が使用できる。
硫黄化合物には、一塩化硫黄、二塩化硫黄、ジスルフィド化合物、高分子多硫化合物等が含まれる。
加硫剤の使用量は、通常は、変性共役ジエン系重合体を含むゴム成分100質量部に対して0.01〜20質量部であるものとし、0.1〜15質量部が好ましい。
加硫方法としては、従来公知の方法を適用でき、加硫温度は、例えば、120〜200℃、好適には140〜180℃とすることができる。
【0130】
(加硫促進剤、加硫助剤)
また、加硫に際しては、必要に応じて加硫促進剤を用いてもよい。
加硫促進剤としては、従来公知の材料を用いることができ、例えば、スルフェンアミド系、グアニジン系、チウラム系、アルデヒド−アミン系、アルデヒド−アンモニア系、チアゾール系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系等の加硫促進剤が挙げられる。また、加硫助剤としては、亜鉛華、ステアリン酸等を使用できる。
加硫促進剤の使用量は、通常、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対し0.01〜20質量部であるものとし、0.1〜15質量部が好ましい。
【0131】
(ゴム用軟化剤)
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物には、加工性の改良を図るために、ゴム用軟化剤を配合してもよい。
ゴム用軟化剤としては、鉱物油、又は液状若しくは低分子量の合成軟化剤が好適である。
ゴムの軟化、増容、加工性の向上を図るために使用されているプロセスオイル又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれている。本実施の形態において用いるゴム用軟化剤としては、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。
ゴム用軟化剤の配合量は、変性共役ジエン系重合体を含有するゴム成分100質量部に対し0〜100質量部が好ましく、10〜90質量部がより好ましく、30〜90質量部がさらに好ましい。ゴム用軟化剤の配合量が前記ゴム成分100質量部に対して100質量部を超えるとブリードアウトを生じやすく、組成物表面にベタツキを生ずるおそれがあるため好ましくない。
【0132】
(変性共役ジエン系重合体以外のゴム成分)
本実施形態における変性共役ジエン系重合体組成物は、上述した変性共役ジエン系重合体以外のゴム状重合体を変性共役ジエン系重合体と組み合わせ、上記ゴム成分として使用できる。
このようなゴム状重合体としては、例えば、共役ジエン系重合体又はその水添物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのランダム共重合体又はその水添物、共役ジエン系化合物とビニル芳香族化合物とのブロック共重合体又はその水添物、非ジエン系重合体、天然ゴム等が挙げられる。
具体的には、ブタジエンゴム又はその水素添加物、イソプレンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンゴム又はその水素添加物、スチレン−ブタジエンブロック共重合体又はその水素添加物、スチレン−イソプレンブロック共重合体又はその水素添加物等のスチレン系エラストマー、アクリロニトリル−ブタジエンゴム又はその水素添加物等が挙げられる。
【0133】
また、非ジエン系重合体としては、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレン−ブテン−ジエンゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム等のオレフィン系エラストマー、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
上述した各種ゴム状重合体は、官能基を付与した変性ゴムであってもよい。
これらのゴム状重合体は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態における変性共役ジエン系重合体に、上述したゴム状重合体を組み合わせ、上記ゴム成分として使用する場合、これらの比率は、変性共役ジエン系共重合体/上述したゴム状重合体として、20/80〜100/0が好ましく、30/70〜90/10がより好ましく、50/50〜80/20がさらに好ましい。
【0134】
本実施形態における変性共役ジエン系重合体組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、上述した以外の軟化剤や充填剤、さらに、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、滑剤等の各種添加剤を用いてもよい。
充填剤としては、具体的には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等が挙げられる。
目的とする製品の硬さや流動性を調節するために、必要に応じて配合する軟化剤としては、例えば、流動パラフィン、ヒマシ油、アマニ油等が挙げられる。
耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、潤滑剤としては、公知の材料を適用できる。
【0135】
〔タイヤ〕
本実施形態の変性共役ジエン系重合体組成物は、常法に従い加硫成形することにより、タイヤとすることができる。様々なタイヤ部材として使用することができるが、中でもタイヤトレッド材として使用することが好ましい。
【実施例】
【0136】
以下、変性共役ジエン系重合体及びこれを用いた組成物について、具体的な実施例と比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔試料の分析方法〕
後述する試料A〜Iの分析は、下記に示す方法により行った。
(1)結合スチレン量
試料をクロロホルム溶液とし、スチレンのフェニル基によるUV254nmの吸収により、結合スチレン量(質量%)を測定した。測定機器としては、島津製作所製:UV−2450を使用した。
(2)ブタジエン部分のミクロ構造(1,2−ビニル結合量)
試料を二硫化炭素溶液とし、溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600〜1000cm−1の範囲で測定して所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法の計算式に従いブタジエン部分のミクロ構造を求めた。測定機器としては、日本分光(株)製:FT−IR230を使用した。
(3)ムーニー粘度
JISK 6300に従い、100℃で1分間余熱し、4分後の粘度を測定した。指数値が小さいほど粘度が小さいことを示す。
【0137】
(4)分子量及び分子量分布
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結して用いたGPCを使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線により分子量(Mw、Mn)を求め、さらに全ピーク面積に対する最低分子量ピーク面積の比を計算して最低分子量ピーク面積比を計算した。
溶離液としてはテトラヒドロフラン(THF)を使用した。
カラムは、ガードカラム:東ソーTSKguardcolumnHHR−H、カラム:東ソーTSKgel G6000HHR、TSKgel G5000HHR、TSKgel G4000HHRを使用した。
オーブン温度40℃、THF流量1.0mL/分の条件で、RI検出器(東ソー製HLC8020)を用いて分子量の測定を行った。
試料は20mLのTHFに対して10mgを溶解し、200μL注入して測定した。
【0138】
(5)変性率
シリカ系ゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、試料及び分子量5000の標準ポリスチレン(ポリスチレンはカラムに吸着しない)を含む試料溶液を用いて、前記ポリスチレン系ゲルカラムのGPCと、シリカ系カラム(ガードカラム:DIOL4.6×12.5mm 5micron、カラム:ZorbaxPSM−1000S、PSM−300S、PSM−60S、オーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分)のGPC(東ソー製CCP8020シリーズ ビルドアップ型GPCシステム:AS−8020、SD−8022、CCPS、CO−8020、RI−8021)の両クロマトグラムを、RI検出器を用いて測定し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定し変性率を求めた。
試料は、20mLのTHFに対して10mgを標準ポリスチレン5mgとともに溶解し、200μL注入して測定した。
具体的な手順としては、ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2とし、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、サンプルピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、変性率(%)は[1−(P2×P3)/(P1×P4)]×100の計算式により算出した。
【0139】
〔多官能アニオン重合開始剤〕
(多官能アニオン重合開始剤a〜c、e、fの調製)
内容積10Lの撹拌装置及びジャケットを具備するオートクレーブを洗浄乾燥し、窒素置換を行った後、下記表1に示す条件に従い、乾燥処理を施した1,3−ブタジエン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、ジビニルベンゼンを加え、次いでn−ブチルリチウムを加えて75℃で1時間反応し調製した。
多官能アニオン重合開始剤の調製には、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等を含有し、ジビニルベンゼン濃度が57質量%であるジビニルベンゼン混合物(新日鐵化学製)を用いた。
下記表1中のジビニルベンゼン量については、上記市販のジビニルベンゼンが混合物であることから、不純物の含有量を除いて換算したジビニルベンゼン純量を表した。
【0140】
【表1】

【0141】
(多官能アニオン重合開始剤dの調製)
マグネット攪拌子を備えた三方フラスコに、冷却管及び滴下漏斗をセットし、窒素置換を行った後、微加圧した窒素を流通させ、系内をシールした状態で、前記三方フラスコ中に、1.01mol/Lのsec−ブチルリチウムのシクロヘキサン/n−ヘキサン混合溶液99.0mL(100ミリモル)、トリエチルアミン13.9mL(100ミリモル)、及びシクロヘキサン10mLを導入し、20℃で攪拌混合した。
さらに減圧蒸留により精製したm−ジイソプロペニルベンゼン7.91g(50ミリモル)を室温で3時間かけて滴下し、攪拌を15時間継続して行い、調製した。
【0142】
〔スチレン−ブタジエン共重合体:試料A〜Iの製造〕
〔実施例1(試料A)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン777g、スチレン273g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.85gを反応器へ入れ、反応器内の温度を42℃に保持した。
上述のようにして調製した多官能重合開始剤aをリチウム添加量として10.5mmolとなるように反応器に供給した。
反応開始後、重合による発熱で、反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は75℃に達した。
重合反応終了後、反応器にビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミンを5.25mmol添加して、74℃の温度条件で5分間の変性反応を実施した。
この重合体溶液に酸化防止剤(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール:BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料A)を得た。
【0143】
試料Aを分析した結果、結合スチレン量は26質量%、結合ブタジエン量は74質量%であった。
また、試料Aのムーニー粘度は59であった。
赤外分光光度計を用いた測定結果よりハンプトン法に準じて計算して求めたブタジエン部分のミクロ構造の1,2−結合量は57%であった。
また、シリカ系吸着カラムを用いるGPCから求めた変性率は81%であった。
(試料A)の分析結果を下記表2に示す。
【0144】
〔実施例2(試料B)、実施例3(試料C)、実施例5(試料E)、比較例1(試料G)〕
上述した多官能アニオン重合開始剤の種類、これらの添加量、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、及びビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミンの添加量を、下記表2に示すように調整して、製造条件については、上述した(試料A)と同様として、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料B)、(試料C)、(試料E)及び(試料G)を得た。(試料B)、(試料C)、(試料E)及び(試料G)の分析結果を下記表2に示す。
【0145】
〔実施例4(試料D)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン777g、スチレン273g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン1.01gを反応器へ入れ、反応器内の温度を42℃に保持した。
リチウム添加量として6.3mmolの上述した多官能アニオン重合開始剤dと、n−ブチルリチウム4.8mmolとを混合した後、反応器に供給した。
このとき、重合系に添加したポリビニル芳香族化合物とリチウムの比は0.284となった。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は74℃に達した。
重合反応終了後、反応器にビス(3−トリエトキシシリルプロピル)メチルアミンを6.93mmol添加して、73℃の条件下で5分間、変性反応を実施した。
重合体溶液に酸化防止剤(BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施し、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料D)を得た。(試料D)の分析結果を下記表2に示す。
【0146】
〔実施例6(試料F)、比較例2(試料H)〕
上述した〔実施例2(試料B)〕と同様にして多官能アニオン重合開始剤bを用いてスチレン−ブタジエン共重合体を得、その後、下記表2に示すように変性剤の種類を変えて変性を行い、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料F)及び(試料H)を得た。(試料F)、(試料H)の分析結果を下記表2に示す。
【0147】
〔比較例3(試料I)〕
内容積10リットルで、撹拌機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去したブタジエン777g、スチレン273g、シクロヘキサン4800g、極性物質として2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン0.62gを反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
重合開始剤として、n−ブチルリチウム7.5mmolを含むシクロヘキサン溶液を反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、最終的な反応器内の温度は71℃に達した。
重合反応終了後、反応器に3−シアノプロピルトリエトキシシランを4.00mmol添加して70℃で5分間変性反応を実施した。
この重合体溶液に、酸化防止剤(BHT)2.1gを添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、乾燥機により乾燥処理を施して、変性成分を有するスチレン−ブタジエン共重合体(試料I)を得た。(試料I)の分析結果を下記表2に示す。
【0148】
【表2】

【0149】
なお、(試料A〜H)は、n−ブチルリチウムで重合を開始した(試料I)と比べ、コールドフロー抑制効果があった。これは、多官能開始剤を使用することで、変性後の重合体の一部が高分子量化したためである。
【0150】
〔ゴム組成物の製造〕
〔実施例7〜12、比較例4〜6〕
上記表2に示す試料(試料A〜試料I)を原料ゴムとして、下記表3に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有するゴム組成物を得た。
【0151】
【表3】

【0152】
ゴム組成物は、下記の方法により混練を行った。
温度制御装置を具備する密閉混練機(内容量0.3リットル)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数50/57rpmの条件で、原料ゴム(試料A〜試料I、天然ゴム)、充填剤(シリカ、カーボンブラック)、有機シランカップリング剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸を混練した。
このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度(配合物)は155〜160℃でゴム組成物を得た。
【0153】
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により排出温度(配合物)を155〜160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤を加えて混練した。
その後、成型し、160℃で20分間、加硫プレスにて加硫した。
加硫後、ゴム組成物の物性を測定した。
物性測定結果を下記表4に示した。
なお、ゴム組成物の各物性は、下記に示す方法により測定した。
【0154】
<バウンドラバー量>
第2段混練工程の終了後の配合物:約0.2グラムを約1mm角状に裁断し、ハリスかご(100メッシュ金網製)へ入れ、重量を測定した。
その後、トルエン中に24時間浸せき後、乾燥処理を施し、重量を測定した。
非溶解成分の量から充填剤に結合したゴム(変性共役ジエン系重合体+天然ゴム)の量を計算し、最初の配合物中のゴム量に対する充填剤と結合したゴムの割合を求めた。
指数値が大きいほどバウンドラバー量が多いことを示す。
<配合物ムーニー粘度>
ムーニー粘度計を使用し、JIS K6300−1により、第3段混練工程後の配合物を、130℃で予熱を1分間行った後に、ローターを毎分2回転で回転させ4分後の粘度を測定した。指数値が小さいほど粘度が小さく加工性に優れることを示す。
【0155】
<引張強さ>
加硫試験片を、JIS K6251の引張試験法により測定した。指数値が大きいほど耐破壊性に優れることを示す。
<粘弾性パラメータ>
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機(ARES)を使用し、ねじりモードで加硫試験片の粘弾性パラメータを測定した。
0℃において周波数10Hz、ひずみ1%で測定したtanδをウェットグリップ性能の指標とした。指数値が大きいほどウェットグリップ性能が良好であることを示す。
また50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費特性の指標とした。指数値の小さいほど省燃費性能が良好であることを示す。
また、ひずみ0.1%と10%での貯蔵弾性率(G’)の差をΔG’としてペイン効果の指標とした。指数値の小さいほどシリカ等充填剤の分散性が良いことを示す。
【0156】
<耐摩耗性>
アクロン摩耗試験機を使用し、JIS K6264−2に従って、荷重44.1N、1000回転での加硫試験片の摩耗量を測定し、指数化した。
指数値の大きいほど耐摩耗性が優れることを示す。
【0157】
【表4】

【0158】
上記表4に示すように、上述した(試料A〜F)を用いた実施例7〜12の変性共役ジエン系重合体組成物は、試料H、Iを用いた比較例5、6の組成物と比較した場合、シリカ配合組成物においてバウンドラバー量が増加し、ペイン効果が小さくシリカの分散性が優れており、高温のtanδが大幅に低減されたことからヒステリシスロスが少なく、タイヤの低転がり抵抗性が実現されており、低燃費性に優れていることが分かった。
また低温のtanδが高いことからウェットスキッド抵抗が良好で、低燃費性とウェットスキッド抵抗性のバランスが良好であることが分かった。
また、耐摩耗性も大きく改良され、引張強さも良好であった。
【0159】
さらに、(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)比が本発明の範囲より高い多官能開始剤で重合した重合体である試料Gを用いた比較例4の組成物は、配合物粘度が高く、加工性が悪化した。また、加工性悪化による混練不良により低燃費性や耐摩耗性、引張強さが、(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)比が本発明の範囲内にある実施例の場合よりも劣る結果となった。従って、(ポリビニル芳香族化合物/リチウム)比が加工性、性能のバランスに大きな影響を与えることが分かった。
以上のことから、本発明の変性共役ジエン系重合体は公知技術で得られるポリマーを凌ぐ性能バランスを有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明の変性共役ジエン系重合体を無機充填剤と組み合わせた組成物は、自動車の内装・外装品、防振ゴム、ベルト、はきもの、発泡体、各種工業部品、タイヤ用途等の分野において産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比(ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物)が0.05〜1.0の範囲で調製された多官能アニオン重合開始剤を用いて、
共役ジエン化合物を重合、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合することによって得られる共役ジエン系重合体の重合活性末端に、下記式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又はこれらの縮合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系重合体。
【化1】

(式(1)において、Aは三級アミン、ピリジン、シアン、イミン、スルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、Rは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。dは1〜3の整数であり、ROが複数ある場合は、各ROは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化2】

(式(2)において、Rは炭素数1〜12の二価の炭化水素基であり、RおよびRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、R、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよく、eは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。)
【化3】

(式(3)において、R〜Rの定義は式(2)に同じであり、gは1〜2の整数である。)
【化4】

(式(4)において、XおよびXは、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R10およびR11は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、AおよびAは、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Aは下記式(5)、(6)、(7)で表される基である。複数の、X、X、R10、R11、A、A又はAが存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。pおよびqは、それぞれ0〜3の整数である。hは0〜20の整数であり、hが2以上の場合、(A−A−A)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、式(4)で表される化合物において、ハロゲン原子の数及び炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は5以上である。)
【化5】

(式(5)において、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R12は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR12が存在するときは、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。rは0〜2の整数であり、iは0〜20の整数である。iが2以上の場合、(SiX122−r)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、Aが式(5)で表される場合、[p+(h×i×r)+q]は5以上の整数である。)
【化6】

(式(6)において、R13は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。なお、Aが式(6)で表される場合、(p+q)は5又は6である。)
【化7】

(式(7)において、Aは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R14は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR14が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。sは0〜3の整数である。なお、Aが式(7)で表される場合、[p+(h×s)+q]は5以上の整数である。)
【請求項2】
前記ポリビニル芳香族化合物とリチウムとのモル比が、0.1〜0.45の範囲である請求項1に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項3】
ポリスチレン系ゲル充填カラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィー測定において、最も低分子量側のピーク面積が、クロマトグラム全体の面積の20〜50%である請求項1又は2に記載の変性共役ジエン系重合体。
【請求項4】
ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比(ポリビニル芳香族化合物/有機リチウム化合物)を0.05〜1.0の範囲で反応させて、
多官能アニオン重合開始剤を調製する工程と、
前記多官能アニオン重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を重合させ、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させて、共役ジエン系重合体を得る工程と、
前記共役ジエン系重合体の重合活性末端に、下記式(1)、式(2)、式(3)もしくは式(4)で表される化合物、又はこれらの縮合物を反応させる工程と、
を有する変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【化8】

(式(1)において、Aは三級アミン、ピリジン、シアン、イミン、スルフィドの中から選ばれる少なくとも一種の官能基を有する一価の基であり、Rは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、R及びRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。dは1〜3の整数であり、ROが複数ある場合は、各ROは互いに同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合は、各Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【化9】

(式(2)において、Rは炭素数1〜12の二価の炭化水素基であり、RおよびRは各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、R、RおよびRは、各々独立に炭素数1〜20の一価の炭化水素基であるか、又はそれらの2つは互いに結合してそれらが結合しているケイ素原子と一緒になって環を形成してもよく、eは1〜2の整数であり、fは1〜10の整数である。)
【化10】

(式(3)において、R〜Rの定義は式(2)に同じであり、gは1〜2の整数である。)
【化11】

(式(4)において、XおよびXは、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基であり、R10およびR11は、それぞれ、炭素数1〜20の一価の炭化水素基であり、AおよびAは、それぞれ、単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Aは下記式(5)、(6)、(7)で表される基である。複数の、X、X、R10、R11、A、A又はAが存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。pおよびqは、それぞれ0〜3の整数である。hは0〜20の整数であり、hが2以上の場合、(A−A−A)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、式(4)で表される化合物において、ハロゲン原子の数及び炭素数1〜20のアルコキシ基の数の合計は5以上である。)
【化12】

(式(5)において、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R12は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR12が存在するときは、それらは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。rは0〜2の整数であり、iは0〜20の整数である。iが2以上の場合、(SiX122−r)で表される複数の繰り返し単位は、相異なるものであってもよい。なお、Aが式(5)で表される場合、[p+(h×i×r)+q]は5以上の整数である。)
【化13】

(式(6)において、R13は水素原子又は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。なお、Aが式(6)で表される場合、(p+q)は5又は6である。)
【化14】

(式(7)において、Aは単結合又は炭素数1〜20の二価の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルコキシ基である。R14は炭素数1〜20の一価の炭化水素基である。複数のX又はR14が存在するときは、それらは、各々同一であっても異なっていてもよい。sは0〜3の整数である。なお、Aが式(7)で表される場合、[p+(h×s)+q]は5以上の整数である。)
【請求項5】
前記ポリビニル芳香族化合物と有機リチウム化合物とのモル比が0.1〜0.45の範囲である請求項4に記載の変性共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、シリカ系無機充填剤を0.5〜300質量部を含有する変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項7】
前記変性共役ジエン系重合体を20質量部以上含有するゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックを0.5〜100質量部、さらに含有する請求項6に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項8】
前記シリカ系無機充填剤の窒素吸着比表面積が170m/g以上である請求項6又は7に記載の変性共役ジエン系重合体組成物。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれか一項に記載の変性共役ジエン系重合体組成物を含むタイヤ。

【公開番号】特開2011−219701(P2011−219701A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93404(P2010−93404)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】