説明

変流器

【課題】製造が容易で高い検出精度が安定に得られる変流器を提供する。
【解決手段】本発明の変流器は、L字状の板磁片を積層してなる2つのコア芯材10a、10bを全体として矩形環をなすよう組み合わせたコア部と、前記2つのコア芯材に巻回された二次巻線とを備えたものであり、特に、電線(一次導体)を挟み込んで該電線に流れる電流(負荷電流、漏電電流、地絡電流等)を測定する分割型の変流器に適用して好適なるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変流器に関し、特に、電線を挟み込んで該電線に流れる電流(負荷電流、漏電電流、地絡電流等)を測定する分割型の変流器に適用して好適なるものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、半円形の板磁片を積み重ねたコア芯材に二次巻線(コイル)を均等に巻回してこれらをドーナッツ状に組み合わせた分割型変流器がある。ドーナッツ状のコア部は一次導体貫通部の位置差が少なく、外部磁界に対しても誘導される電圧が少ないため、高い測定精度が得られる。しかし、半円形の板磁片は部品取りの効率が低いため、部品コストが高くなる。また、コイルは円弧に沿って均等に巻く必要があるため、特別な機械が必要となり、巻線コストが高くなる。
【0003】
この点、従来は、短冊状の板磁片を積み重ねたコア芯材に対して、予めコイルを巻回したボビン組体を嵌挿し、こうして得られた4つのコア部を矩形状に組み合わせて構成した分割型変流器が知られている(特許文献1、2)。短冊状の板磁片は部品取りの無駄が少ないため、部品コストが低い。またボビンは湾曲していないのでコイルを巻き易い、等の利点がある。
【特許文献1】実用新案登録第3099308号公報
【特許文献2】特開2000−91545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記短冊状の板磁片を積み重ねた場合は、コア芯材の接合箇所が4ヶ所もあるため、磁気抵抗が増すと共に、接合状態のバラツキや変動によって磁気抵抗が大きく変動し、測定精度の低下を招く。またコア数が4つと多いため、部品数や巻線作業による製造コストが増す。また、コア芯材の接合箇所が多いため外部磁界の影響を受けやすい。
【0005】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、製造が容易で高い検出精度が安定に得られる変流器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の第1の態様による変流器は、L字状の板磁片を積層してなる2つのコア芯材を全体として矩形環をなすよう組み合わせたコア部と、前記2つのコア芯材に巻回された二次巻線とを備えたものである。
【0007】
本発明によれば、L字状のコア芯材は接合箇所が2ヶ所と少ないため、磁気抵抗が少ないと共に、接合状態のバラツキや変動も少なく、高い測定精度を安定に保持できる。またL字状板磁片は枚数が少ないうえ、板取り(材料から部品の取れる率)も良好なため部品コストが低い。また、L字状板磁片は積層時の位置あわせが容易である上、二次巻線を直線状に巻けるため製造コストが低い。また、L字状のコア芯材は接合部が少ないので、外部磁界の影響を受け難い。
【0008】
本発明の第2の態様では、前記板磁片は長い辺に対応する長辺部と短い辺に対応する短辺部とを有し、前記コア芯材は板磁片の積層方向に前記長辺部と短辺部とが交互に積層されていると共に、前記コア部は2つのコア芯材の長辺部同士が板磁片の積層方向に互いに噛み合うよう組み合わされる。
【0009】
本発明によれば、L字状のコア芯材は接合箇所が2箇所と少ない上、各接合部では板磁片間の辺接触と面接触とにより常に安定な磁路を形成できるため、高い測定精度を維持できる。
【0010】
本発明の第3の態様では、前記板磁片の長辺部の長さをa、短辺部の長さをb、板幅をcとするときに、a=b+cの関係がある。本発明によれば、コア部を同一サイズの板磁片で構成できるため、部品コストが低い。なお、この場合のコア芯材は正方形の環を構成する。
【0011】
本発明の第4の態様では、前記二次巻線は2つのコア芯材に対称に巻回されている。本発明によれば、コア芯材と二次巻線巻とからなる構造が一次導体の周りで対称であるため、一次電流により生成される磁束は各二次巻線と対称に鎖交することで、該一次電流を適正に検出できる。また外部磁界による影響は各二次巻線間で打ち消し合うことになり、外部磁界の影響を受け難い。
【0012】
本発明の第5の態様では、前記二次巻線は2つのコア芯材の少なくとも各1箇所に巻回されている。本発明では、二次巻線が最小2つあれば良いため、高い測定精度を維持しつつ部品コスト及び巻線コストを低減できる。
【0013】
本発明の第6の態様では、前記2つのコア芯材の両接合部を境にして該何れかの接合部に対応する軸を支点に2分割可能な第1、第2の外部ケースを備え、前記各コア芯材は該第1、第2の外部ケースによってそれぞれ支持されている。本発明によれば、コア芯材は板磁片のみで構成され、分割に関する機構を設けないで良いため、安定な磁気特性を保持できる。
【0014】
本発明の第7の態様では、前記コア芯材を嵌入して保持するボビンを備え、該ボビンは前記第1、第2の外部ケースの内壁にそれぞれ一体して設けられた凸ピンにより支持される。本発明によれば、外部ケースを基準としてボビン(二次巻線)とコア芯材を正確に支持・固定できるため、この種の分割型変流器は製造容易であると共に、コア芯材と二次巻線の組立精度を容易に維持できる。
【発明の効果】
【0015】
以上述べた如く、本発明による変流器は製造が容易で高い検出精度が安定に得られるため、変流器の検出精度及び信頼性の向上に寄与するところが大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明による実施の形態を詳細に説明する。図1は実施の形態による変流器のコア部の構造を説明する図である。このコア部10はL字状の板磁片を積層してなる2つのコア芯材10a、10bを全体として矩形環をなすように組み合わせて構成される。板磁片としては、例えばパーマロイの他、電磁軟鉄、珪素鋼板等を使用できる。好ましくは、同一サイズの板磁片を積層することによりコア芯材10a、10bを構成する。以下、具体的に説明する。
【0017】
板磁片1の長辺部の長さをa、短辺部の長さをb、板幅をcとするときに、a=b+cの関係がある。この板磁片1を補助線Pの周りで180°反転させると、板磁片2が得られ、この板磁片2に前記板磁片1を重ねると、該板磁片1の長辺部aは板磁片2の短辺部bよりも板幅cだけ長く、また板磁片1の短辺部bは板磁片2の長辺部aよりも板幅cだけ短い。板磁片3と4についても同様であり、これらの板磁片1〜4をZ軸方向に積層することでコア芯材10aが得られる。
【0018】
一方、板磁片1をZ軸の周りに180°回転させると板磁片5が得られる。この板磁片5を補助線Qの周りに180°反転させると板磁片6が得られ、この板磁片6に前記板磁片5を重ねると、該板磁片5の長辺部aは板磁片6の短辺部bよりも板幅cだけ長く、また板磁片5の短辺部bは板磁片6の長辺部aよりも板幅cだけ短い。板磁片7と8についても同様であり、これらの板磁片5〜8をZ軸方向に積層することでコア芯材10bが得られる。こうして、同一サイズの板磁片を積み重ねることにより2つのコア心材10a、10bが得られる。
【0019】
更に、2つのコア芯材10a、10bを全体として矩形環をなすように組み合わせ、2箇所の接合部11a、11bで着脱自在に接合する。この状態では、板磁片1の両端部1a、1bが板磁片5の両端部5b、5aとそれぞれの辺で接触し、磁路を形成する。板磁片2と6についても同様である。また、同時に板磁片1の端部1aの裏面と板磁片6の端部6aの表面とが面接触し、また板磁片5の端部5aの裏面と板磁片2の端部2aの表面とが面接触する。板磁片3、4と板磁片7、8についても同様である。こうして、2つのコア芯材10a、10bの間には、板磁片の辺接触と面接触とにより常に密で安定な磁路が形成される。
【0020】
本実施の形態によれば、L字状のコア芯材10a、10bは接合箇所が2ヶ所と少ないため磁気抵抗が少ないと共に、接合状態のバラツキや変動も少なく、高い測定精度を安定に保持できる。またL字状板磁片は枚数が少ないうえ、板取りも良好なため部品コストが低い。特に同一サイズの板磁片を使用することで、部品コストを大幅に削減できる。また、L字状板磁片は積層時の位置あわせが容易である上、二次巻線を直線状に巻けるため製造コストが低い。また、L字状のコア芯材は接合部が少ないので、外部磁界の影響を受け難い。
【0021】
図2は実施の形態によるコア部の巻線方法を説明する図で、コア部10に二次巻線(以下、コイルとも呼ぶ)15を巻いた状態の概念構成図を示している。挿入図(a)、(b)にコア芯材10a、10bの上下側面図を示す。ここで、11a、11bはコア芯材10aと10bの接合部である。本実施の形態では2つのコイル15a、15bをコア部10の左右にそれぞれ1000T(ターン)ずつ巻回すると共に、該コイル15a、15b間を直列に接続している。
【0022】
本実施の形態では、コア芯材10a、10bとコイル15a、15bとからなる巻線構造が、一次導体(Z軸)の周りで対称であるため、一次電流の検出信号は左右のコイル15a、15bで加算されると共に、一次電流による磁束はL字状コア芯材を介して漏れなく各コイルと対称(公平)に鎖交するため、一次電流を適正に検出できる。また外部磁界による影響は各コイル15a、15b間で打ち消し合うことになり、外部磁界の影響を受け難い。
【0023】
図3は他の実施の形態による巻線方法を示す図で、巻線を対称に行う他の例を示している。図3(A)は巻線を上下対称とした場合を示し、2つのコイル15c、15dをコア部10の上下にそれぞれ1000Tづつ巻回すると共に、該コイル15c、15d間を直列に接続している。上記同様にして、コア芯材10a、10bとコイル15c、15dとからなる巻線構造は、一次導体の周りで対称であるため、一次電流の検出信号は上下のコイル15c、15dで加算されると共に、一次電流による磁束はL字状コア芯材を介して漏れなく各コイルと対称に鎖交するため、一次電流を適正に検出できる。また外部磁界による影響は各コイル15c、15d間で打ち消し合うことになり、外部磁界の影響を受け難い。
【0024】
図3(B)は巻線を四方に対称とした例を示し、2つのコア芯材10a、10bの4辺にコイル15a〜15dを例えば500Tづつ巻回すると共に、各コイル15a〜15d間をそれぞれ直列に接続している。従って、上記同様にして一次電流を適正に検出できると共に、外部磁界の影響を受け難い。また、巻線を四方に巻くため、一層対称性が向上する。
【0025】
なお、本発明者は、上記2つのL字状コア芯材に2つのコイルを対称に巻く構成であっても、外部磁界による影響を所要以下に抑制できることを以下の実験により確かめた。以下、これを説明する。図4はコア部に対する外部磁界の影響を測定する試験方法の説明図である。図4(A)において、101は円筒状のボビン、102はボビン101に巻回したコイル、103はコイル102に交流信号(60Hz)を印加する信号源、105は増幅度(=100)に設定した増幅回路である。
【0026】
ボビン101の内部に400AT/mの交番磁界Hを発生すると共に、この中に本実施の形態と比較例のコア組体(コア芯材に巻線を施したもの)を配置して外部磁界によりコイルに誘起される信号をシールド線104を介して外部に取り出し、増幅後の信号波形を測定した。本実施の形態によるコア組体としては、2つのL字状コア芯材に2つのコイルを対称に巻いたものを使用し、また比較例のコア組体としては、4つの短冊状コア芯材に4つのコイルを対称に巻いたものを使用した。
【0027】
図4(B)に外部磁界の印加方法を示す。図の(a)はコア組体をその中心軸(Z軸に相当)が磁界Hと平行になるように載置した場合(以下、同軸と呼ぶ)を示しており、該コア組体をZ軸の周りに回転させた場合に、信号振幅が最も大きくなる状態の波形を取得した。図の(b)はコア組体をその中心軸が磁界Hと垂直になるように載置した場合(以下、直交と呼ぶ)を示しており、該コア組体をX軸の周りに回転させた場合に、信号振幅が最も大きくなる状態の波形を取得した。
【0028】
外部磁界による影響の実用的な目標値は、増幅前で0.1[mV](rms)程度であり、増幅後の大きさでは10[mV](rms)程度となる。なお、取得波形にはノイズが乗っているため基本波(60Hz)の大きさを見る必要がある。
【0029】
図5は実施の形態によるコア組体10に対する外部磁界の影響を示すグラフ図であり、図はノイズ信号を含む測定信号(増幅後)のスケッチ図を示している。図5(A)は同軸の測定結果を示しており、60Hzの信号成分は約1[mV](rms)である。図5(B)は直交の測定結果を示しており、60Hzの信号成分は約5[mV](rms)である。
【0030】
図6は比較例のコア組体に対する外部磁界の影響を示すグラフ図である。図6(A)は同軸の場合の測定結果を示しており、60Hzの信号成分は約5[mV](rms)である。図6(B)は直交の場合の測定結果を示しており、60Hzの信号成分は約4[mV](rms)である。
【0031】
以上のように、本実施の形態では2つのL字状コア心材に2つのコイルを対称に巻いた簡単な構成であっても、外部磁界による影響は実用上の目標値10[mV](rms)を大幅に下回っていると共に、従来の比較例と比べても遜色が無いものであった。
【0032】
<実施例>
以下、本発明のコア部(L字状コア芯材)を分割型変流器に適用した場合の実施例を詳細に説明する。図7は実施例の分割型変流器のコア部の斜視図である。多数のL字状板磁片を上記図1で述べたと同様に交互に束ねてテープにより仮止めし、2つのコア芯材10a、10bを作成する。L字状のコア磁片では2辺が直交しているため、複数枚を重ねて直交部(角部)を揃えるだけで、両端部の櫛状接合部11a、11bを容易に整列させることができる。こうして得られたコア芯材10a、10bは、それぞれの接合部11a、11bで長辺部同士が面接触する様に噛み合わさることで、全体として矩形環をなすよう着脱自在に組み合わされる。
【0033】
図8は実施例の分割型変流器の二次巻線(コイル)実装状態の斜視図である。コア芯材10a、10bの4辺に樹脂で形成されたボビン20a〜20dを嵌装する。各ボビン20は矩形筒状のボディー21と、両端部のフランジ部22とを備え、ボディー21の内周面によりコア芯材10a、10bの積層状態を安定に保持(固定)できる。
【0034】
この例では、左右のボビン20a、20bにのみコイル(二次巻線)15a、15bが巻かれており、上下のボビン20c、20dにはコイルが巻かれていない。コイル15a、15bは予め外部で巻かれており、該コイルの上から絶縁テープが貼られている。コイル15aの両端部にはリード線16が接続されており、このリード線16はフランジ部22に設けた切り欠き部24から外部に取り出される。コイル15bについても同様である。そして、各コイル間の接続は各リード線16の間を接続することで行われる。
【0035】
また、このフランジ部22には、後述の樹脂からなる外部ケース40a、40bの内壁に立設された凸ピンを嵌入させることでボビン20a〜20dの位置決め及び固定を一括で行うための孔23が設けられている。こうして、2つのL字状コア芯材と二次巻線とからなる2つのコア組体30a、30bが得られる。また、これらが矩形環をなすように接合するとコア組体30が得られる。
【0036】
図9は実施例の分割型変流器のシールド実装状態の斜視図である。本実施例では、L字状のコア組体30a、30bには同じくL字状のシールド部材25a、25bを被せることで、コア組体30の全体を効率よくシールドできる。以下、シールドしたコア組体をコア組体30Aとも呼ぶ。L字状のシールド部材は、部品点数も少なく、シールド特性の良いものを容易に作成できる。例えば、挿入図(a)に示すように、例えばパーマロイの板部材を図示の如く型抜きし、点線の位置で折り曲げることにより容易に形成できる。またL字状のシールド部材25a、25bは2箇所で接合すれば良いため、簡単な作業でコア組体30を外部磁界から有効に遮断できる。更に、各シールド部材25a、25bにはそれぞれ8つの貫通孔26が設けられており、該貫通孔26はコア組体30a、30bの各フランジ孔23と連通するようになっている。なお、孔27はリード線16を外部に取り出すための孔である。
【0037】
図10は実施例の分割型変流器の外部ケースの組立斜視図である。外部ケース40は樹脂製の成型物からなり、前側の表ケース40aと裏側の裏ケース40bとからなる。表ケース40aの中央部には一次導体を貫通させるための開口部41aが設けられ、裏ケース40bの対応する位置には開口部41bが設けられている。
【0038】
また、この表ケース40aは斜線Aのところで上半部45aと下半部46aとに分割されており、該上半部45aの右下部に固定された回動軸49aが下半部46aの対応する位置に固定された軸受部48aの内周面で回動することにより、該軸受部48aを支点として上半部45aと下半部46aとを開閉可能に軸支する。裏ケース40bについても同様であり、上半部45bに固定された回動軸49bが下半部46bに固定された軸受部48bの内周面で回動することにより、該軸受部48bを支点として上半部45bと下半部46bとを開閉可能に軸支する。
【0039】
さらに、この表ケース40aにおいて、上半部45aの左上上面部にはユーザが変流器の開閉時に指で操作をする操作部50aが設けられ、また左上前面部にはこの開閉時における内部のコア接合部11aを外部導体との接触から保護するための保護部材53aが固定されている。一方、下半部46aの左上部には前記操作部50aの先端の爪部を受け止めて係止するための係止部51aが固定されており、また右下前面部には一次導体の噛み込みを防止するための噛込防止部材52aが固定されている。裏ケース40bについても同様であり、これらは表ケース40aとは対称の位置に設けられている。なお、これら部材の作用については後述する。
【0040】
また、表ケース40aの外周4面にはその先端部に内向きの爪部を有する8個の腕部42が設けられており、裏ケース40bの各対応する位置には該腕部42と嵌合して先端の爪部を受け止め係止する溝部43が設けられている。また、前記同様の腕部42と溝部43とが前面の開口部41aと裏面の開口部41bにも設けられている。更に、裏ケース40bの内壁にはシールド部材25の8つの貫通孔26と各対応する位置に8つの凸ピン44が立設されている。表ケース40aについても同様である。
【0041】
このような分割型変流器の組立時には、まずシールド部材25を被せた状態のコア組体30Aを裏ケース40bの内側に載置する。このとき、裏ケース40bの開口部41bがコア組体30Aの開口部に嵌入し、また8つの凸ピン44がシールド部材25の裏面の8つの貫通孔26をそれぞれ貫通して内部のコア組体30a、30bのフランジ孔23に嵌入する。作業者がこの状態を確認して、コア組体30Aを更に押し込むと、コア組体30Aが裏ケース40bに固定される。この状態では、シールド部材25及びコア組体30のボビン20a〜20dが適正に位置決めされ、裏ケース40bによって実質的に固定される。なお、コア組体30a、30bの各接合部11a、11bは着脱自在に接合している。
【0042】
次に、上から表ケース40aを被せ、位置を確認して表ケース40aを押し込むと、裏面内壁の8つの凸ピン44がシールド部材25の貫通孔26を貫通して内部のフランジ孔23に嵌入すると共に、表ケース40aの4つの外周面と開口部41aに設けられた各腕部42がそれぞれ対応する位置の溝部43と嵌合して各先端の爪部が溝部43の背面に係合する。こうして、内部のコア組体30Aが外部ケース40により適正な状態で保持・固定されると共に、この状態では、外部ケース40の上半部45a、45bと下半部46a、46bとがそれぞれの腕部により表裏で一体化されており、以後は、上半部45と下半部46とが表裏一体して開閉動作する。
【0043】
図11に実施例の分割型変流器60の外観斜視図を示す。この変流器60を一次導体に装着する際には、使用者が操作部50の先端部を指で跳ね上げるだけのワンタッチ操作により、上半部45と下半部46とに容易に分割できる。
【0044】
図12は実施例の分割型変流器の分割状態の外観斜視図である。変流器の上半部45と下半部46とが軸受部48と回動軸49とからなる構造を支点にして口を開いており、中央の開口部41で一次導体(不図示)を挟み込むことが可能である。その際には、コア芯材10aの端部(接合部11aに相当)が一次導体と触れないように保護部材53a、53bで保護する。またコア芯材10bの端部が一次導体と触れないように保護凸片54a、54bで保護する。
【0045】
こうして、一次導体を開口部41の内側に挟み込んで後、この変流器60を閉じる際には、噛込防止部材52a、52bの先端部が一次導体の腹部と当接することで、該一次導体を噛み込まないように保護する。更に、保護部材53の内側面が保護凸片54の外側面上を摺動することで、コア芯材10aの端部とコア芯材10bの端部との噛み合わせ接合を確実に案内する。こうして、本変流器60を完全に閉じると、操作部50の爪部が係止部51に係合する。
【0046】
なお、上記各実施の形態ではコア部の正面視形状を正方形としたが、これに限らない。コア部の正面視形状は任意サイズの長方形でも良い。
【0047】
また、上記実施例ではL字状コア芯材の分割型変流器への適用例を述べたが、これに限らない。L字状コア芯材の接合部11a、11bを接合後、固定するよう設けることで、非分割型の変流器として使用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施の形態による変流器のコア部の説明図である。
【図2】実施の形態によるコア部の巻線方法を示す図である。
【図3】他の実施の形態によるコア部の巻き線方法を示す図である。
【図4】コア部に対する外部磁界の影響を測定する試験方法の説明図である。
【図5】実施の形態によるコア部の測定結果のグラフ図である。
【図6】比較例のコア部の測定結果のグラフ図である。
【図7】実施例の分割型変流器のコア部の斜視図である。
【図8】実施例の分割型変流器の二次巻線実装状態の斜視図である。
【図9】実施例の分割型変流器のシールド実装状態の斜視図である。
【図10】実施例の分割型変流器の外部ケースの組立斜視図である。
【図11】実施例の分割型変流器の外観斜視図である。
【図12】実施例の分割型変流器の分割状態の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
10 コア芯材
11 接合部
15 二次巻線(コイル)
20 ボビン
22 フランジ部
23 孔
25 シールド部材
26 貫通孔
30 コア組体
40 外部ケース
41 開口部
42 腕部
43 溝部
44 凸ピン
48 軸受部
49 回動軸
50 操作部
51 係止部
52 噛込防止部材
53 保護部材
54 保護凸片
60 分割型変流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L字状の板磁片を積層してなる2つのコア芯材を全体として矩形環をなすよう組み合わせたコア部と、
前記2つのコア芯材に巻回された二次巻線とを備えたことを特徴とする変流器。
【請求項2】
前記板磁片は長い辺に対応する長辺部と短い辺に対応する短辺部とを有し、前記コア芯材は板磁片の積層方向に前記長辺部と短辺部とが交互に積層されていると共に、前記コア部は2つのコア芯材の長辺部同士が板磁片の積層方向に互いに噛み合うよう組み合わされることを特徴とする請求項1記載の変流器。
【請求項3】
前記板磁片の長辺部の長さをa、短辺部の長さをb、板幅をcとするときに、a=b+cの関係があることを特徴とする請求項2記載の変流器。
【請求項4】
前記二次巻線は2つのコア芯材に対称に巻回されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の変流器。
【請求項5】
前記二次巻線は2つのコア芯材の少なくとも各1箇所に巻回されていることを特徴とする請求項4記載の変流器。
【請求項6】
前記2つのコア芯材の両接合部を境にして該何れかの接合部に対応する軸を支点に2分割可能な第1、第2の外部ケースを備え、前記各コア芯材は該第1、第2の外部ケースによってそれぞれ支持されていることを特徴とする請求項4又は5記載の変流器。
【請求項7】
前記コア芯材を嵌入して保持するボビンを備え、該ボビンは前記第1、第2の外部ケースの内壁にそれぞれ一体して設けられた凸ピンにより支持されることを特徴とする請求項6記載の変流器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−56422(P2010−56422A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221898(P2008−221898)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】