説明

変流器

【課題】第1ケースと第2ケースに囲まれる電線貫通スペースに電線を挿入する際に、第1ケースと第2ケースの双方の開口端で電線を挟持しない変流器を提供する。
【解決手段】内部に第1コア5が収容され、両側の開口端2a,2bより第1コア5の端部5aがそれぞれ露出された第1ケース2と、内部に第2コア7が収容され、両側の開口端3a,3bより第2コア7の端部7aがそれぞれ露出された第2ケース3とを備え、第1ケース2と第2ケース3は、互いに対向する双方の開口端2a,2b,3a,3bが離間する開放位置と互いに対向する双方の開口端2a,2b,3a,3bが当接する閉塞位置との間で回転自在に連結された変流器1において、第1ケース2には、電線貫通スペース10から内側開口隙間12に電線Wが侵入するのを規制する規制部20が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアがそれぞれ内蔵され、互いに一端側が回転自在に連結された2つのケースを有し、2つのケースで囲まれる電線貫通スペースに電線を容易に貫通させたり、電線貫通スペースから電線を取り外したりできる変流器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より分離型の変流器は、種々提案されている(例えば特許文献1参照)。かかる分離型の変流器の一従来例が図9〜図11に示されている。
【0003】
図9及び図10において、変流器100は、第1ケース101と第2ケース102を有し、これら第1ケース101と第2ケース102が互いの一端側で回転支持部103によって回転自在に連結されている。第1ケース101内には第1コア104が、第2ケース102内には第2コア105がそれぞれ収容されている。第1コア104及び第2コア105は、共に複数の積層されたL字状の強磁性材の板より構成されている。第1コア104と第2コア105の両端部は、それぞれ第1ケース101と第2ケース102の両側の開口端101a,101b,102a,102bより外部に露出されている。第1コア104と第2コア105の外周にはコイル(図示せず)がそれぞれ巻装されている。第1ケース101には、コイルに流れる電流を取り出すための電線120が引き出されている。
【0004】
第1ケース101と第2ケース102は、互いに対向する双方の開口端101a,101b,102a,102bが離間する開放位置(図9の状態)と互いに対向する双方の開口端101a,101b,102a,102bが当接する閉塞位置(図10の状態)との間で回転によって変移する。
【0005】
開放位置では、図9に示すように、第1ケース101と第2ケース102の回転支持部103より近い側の双方の開口端101a,102aの間に内側開口隙間110が形成されると共に、第1ケース101と第2ケース102の回転支持部103より遠い側の双方の開口端101b,102bの間に電線出入口用隙間111が形成される。電線出入口用隙間111より第1ケース101と第2ケース102で囲まれる電線貫通スペース113に電線Wを挿入したり、電線貫通スペース113の電線Wを外部に外したりできる。
【0006】
閉塞位置では、図10に示すように、第1ケース101と第2ケース102で囲まれる電線貫通スペース113が閉塞され、且つ、第1コア104と第2コア105の両端部が嵌合によって接続して方形状の閉塞磁路が形成される。
【0007】
また、第1ケース101と第2ケース102の回転支持部103より遠い側の双方の開口端101b,102b側で、且つ、第1ケース101と第2ケース102の両側面には、図11に詳しく示すように、閉塞位置で係止される一対のロック手段106が設けられている。各ロック手段106は、弾性ロックアーム107とこれが係止する被ロック部108とからなる。
【0008】
次に、前記変流器100を用いて、分電盤等内に配置された電線120の漏れ電流を測定する手順を説明する。変流器100を図9の開放位置とし、電線出入口用隙間111より測定対象の電線(図示せず)を電線貫通スペース113に挿入する。電線を電線貫通スペース113に挿入すると、第1ケース101と第2ケース102を回転支持部103を支点として相対回転させ、変流器100を図10の閉塞位置とする。閉塞位置では、一対のロック手段106が共にロックされ、閉塞位置に保持される。
【0009】
電線に漏れ電流が流れると、第1コア104及び第2コア105からなる閉塞磁路に電流に比例した磁束が発生し、この磁束に比例した電流がコイルに流れることから漏れ電流を測定できる。測定が終了すると、一対のロック手段106のロックを解除し、第1ケース101と第2ケース102を開放位置に相対回転し、電線貫通スペース113の電線を電線出入口用隙間111より外部に外す。
【特許文献1】特開2001−307934号公報
【特許文献2】特開平11−251167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の変流器100では、第1ケース101と第2ケース102を開放位置として電線を電線貫通スペース113に挿入する際に、第1ケース101と第2ケース102の回転支持部103より遠い側の双方の開口端101b,102bの間に電線出入口用隙間111が形成されると共に第1ケース101と第2ケース102の回転支持部103より近い側の双方の開口端101a,102aの間に内側開口隙間110が形成される。従って、電線貫通スペース113に挿入しようとした電線が内側開口隙間110の位置まで挿入され、この状態で第1ケース101と第2ケース102を閉塞位置とするべく相対回転すると、第1ケース101と第2ケース102の双方の開口端101a,102aで電線を挟持する怒れがある。このように双方の開口端101a,102aで電線を挟持する、電線に損傷(ダメージ)を与える恐れがある、第1コア及び第2コアの端部に損傷(ダメージ)を与える恐れがある、スムーズな測定作業ができない等の不具合が発生する。
【0011】
そこで、本発明は、第1ケースと第2ケースに囲まれる電線貫通スペースに電線を挿入する際に、第1ケースと第2ケースの双方の開口端で電線を挟持されることに起因する種々の不具合を防止した変流器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の本発明の特徴は、内部に第1コアが収容され、両側の開口端より第1コアの端部がそれぞれ露出された第1ケースと、内部に第2コアが収容され、両側の開口端より第2コアの端部がそれぞれ露出された第2ケースとを備え、第1ケースと第2ケースは、互いに対向する双方の開口端が離間する開放位置と互いに対向する双方の開口端が当接する閉塞位置との間で回転自在に連結され、開放位置では、第1ケースと第2ケースの回転支持部より近い側の双方の開口端の間に内側開口隙間が形成されると共に、第1ケースと第2ケースの回転支持部より遠い側の双方の開口端の間に電線出入口用隙間が形成され、電線出入口用隙間より第1ケースと第2ケースで囲まれる電線貫通スペースに電線の挿入・引き出しを行うことができ、閉塞位置では、内側開口隙間と電線出入口用隙間が共に閉じ、且つ、第1コアと第2コアの両端部が接続されて第1コアと第2コアによって所定の磁路が形成される変流器において、第1ケースと第2ケースの少なくともいずれか一方には、電線貫通スペースから内側開口隙間に電線が侵入するのを規制する規制部が設けられたことを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の変流器であって、規制部は、第1ケースと第2ケースの内で、電線が引き出されているケース側に設けられ、且つ、相手側ケースの外面に沿って移動するよう配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の変流器であって、規制部の外周端の形状は、相手側ケースの開口端の最外周位置の移動軌跡に沿った円弧状であることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の変流器であって、第1ケースと第2ケースの回転支持部より遠い側の双方の開口端には、第1コアと第2コアの突出した端部よりも突出するガード部がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4に記載の変流器であって、第1ケースのガード部と第2ケースのガード部は、第1ケースと第2ケースの開放位置と閉塞位置との間の移動過程で、双方が相対的に適正な移動軌跡に沿って移動するべくガイドすることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の変流器であって、第1ケースと第2ケースの回転支持部より遠い側の双方の開口端側で、且つ、第1ケースと第2ケースの各背面には、閉塞位置で係止される単一のロック手段が設けられ、ロック手段は、弾性ロックアームと被ロック部から構成され、弾性ロックアームは、第1ケースと第2ケースの閉塞位置から開放位置への回転方向がロック解除方向とされていることを特徴とする。
【0018】
請求項7の発明は、請求項6に記載の変流器であって、弾性ロックアームは、第1ケースと第2ケースの内で、電線が引き出されていないケース側に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1の本発明によれば、第1ケースと第2ケースを開放位置として電線を電線貫通スペースに挿入する際に、電線が内部側隙間に進入しようとしても、その進入が規制部によって阻止される。従って、電線が第1ケースと第2の双方の開口端で挟持されることに起因する種々の不具合を防止できる。具体的には、電線に損傷(ダメージ)を与える恐れがなく、第1コア及び第2コアの端部に損傷(ダメージ)に与える恐れがなく、スムーズな測定作業が可能である。
【0020】
第2の本発明によれば、作業者は電線が引き出されているケース側を固定し、電線が引き出されていないケース側を回転操作する方が回転操作し易く、このような操作形態では規制部も固定側となり、作業者が規制部を保持している場合にもケース間の相対的回転を行うことができるため、操作性が良い。
【0021】
第3の本発明によれば、相手側ケースのあらゆる移動位置にあって、その開口端の最外周位置が規制部によって規制されるため、電線の内側開口隙間への進入を確実に阻止することができる。
【0022】
第4の本発明によれば、第1ケースと第2ケースを開放位置として電線を電線貫通スペースに挿入する際や、電線貫通スペースの電線を外部に外す際に、第1コアや第2コアの端部に電線が接触する前にガード部に接触するため、電線が第1コアや第2コアの端部に損傷(ダメージ)を与える事態を防止できる。
【0023】
第5の本発明によれば、双方のガード部のガイドによって第1コアと第2コアが適正な位置で接続されるため、漏れ磁束を極力防止でき、極力適正な測定ができる。特に、第1コアの端部と第2コアの端部が積層された強磁性材の隙間に嵌合することによって接続されるものにあっては、確実に嵌合させることができる。
【0024】
第6の本発明によれば、第1ケースと第2ケースが閉塞位置にあって、単一の弾性ロックアームをロック解除方向に操作すれば、第1ケースと第2ケースを閉塞位置から開放位置に移動させることができるため、作業者は片手での操作が可能となり、操作性が良い。
【0025】
第7の本発明によれば、作業者は電線が引き出されているケース側を固定し、電線が引き出されていないケース側を回転操作する方が回転操作し易く、このような操作形態によってロック解除できるため、更に操作性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図8は本発明の実施の形態を示し、図1は変流器の開放状態の斜視図、図2は第1ケースと第2ケースが閉塞位置である変流器の正面図、図3は第1ケースと第2ケースが開放位置である変流器の正面図、図4は第1ケースと第2ケースの回転支持部より近い側の双方の開口端の周辺を示す要部斜視図、図5は第1ケースの回転支持部より遠い側の開口端に周辺を示す要部斜視図、図6は第2ケースの回転支持部より遠い側の開口端に周辺を示す要部斜視図、図7は双方のガード部が互いにガイドしている状態を示す要部平面図、図8は変流器の使用状態を示す斜視図である。
【0028】
図1〜図3に示すように、変流器1は、第1ケース2と第2ケース3とを有する。この第1ケース2と第2ケース3は、互いの一端側が回転支持部4によって回転自在に連結されている。第1ケース2と第2ケース3は、図示されていないが、それぞれ2つの分割ケース部材が組み付けされることによって構成されている。第1ケース2と第2ケース3は、互いに対向配置される面に半円弧状の窪み面2c,3cを有し、この双方の半円弧状の窪み面2c,3cに囲まれて、下記する電線貫通スペース10が形成される。又、第1ケース2と第2ケース3は、互いに対向配置される面で、且つ、半円弧状の窪み面2c,3cの両側に開口端2a,2b,3a,3bを有し、この両側の開口端2a,2b,3a,3bより第1ケース2と第2ケース3の内部がそれぞれ開口されている。
【0029】
第1ケース2の内部には、第1コア5とこれの三方面を被う第1シールド板6とが配置されている。第2ケース3の内部にも、第2コア7とこれの三方面を被う第2シールド板8が配置されている。第1コア5及び第2コア7は、積層された複数のL字状の強磁性材の板によってそれぞれ構成されている。第1コア5と第2コア7の両端部5a,7aは、図3〜図5に示すように、積層された強磁性材の板の両端位置が交互に突出位置と退出位置を繰り返すことによって櫛刃状に設けられている。第1コア5の櫛刃状の両端部5aは、第1ケース2の両側の開口端2a,2bよりそれぞれ突出状態で露出されている。第2コア7の櫛刃状の両端部7aは、第2ケース3の両側の開口端3a,3bよりそれぞれ突出状態で露出されている。そして、第1コア5の櫛刃状の端部5aとこれに対向する第2コア7の櫛刃状の端部7aは、適正な位置で配置されると互いの強磁性材板同士が噛み合うよう設定されている。
【0030】
又、第1コア5と第2コア7の外周にはコイル(図示せず)がそれぞれ巻き付けされている。これらコイルの両端には、コイル内に流れる電流を導くための電線9が接続され、この電線9が第1ケース2の電線引き出し部11より引き出されている。
【0031】
第1ケース2と第2ケース3は、互いに対向する双方の開口端2a,2b,3a,3bが離間する開放位置(図1、図3の状態)と互いに対向する双方の開口端2a,2b,3a,3bが当接する閉塞位置(図2の状態)との間で回転によって変移する。
【0032】
開放位置では、図1、図3に示すように、第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より近い側の双方の開口端2a,3aの間に内側開口隙間12が形成されると共に、第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より遠い側の双方の開口端2b,3bの間に電線出入口用隙間13が形成される。電線出入口用隙間13より第1ケース2と第2ケース3で囲まれる電線貫通スペース10に電線Wを挿入したり、電線貫通スペース10の電線Wを外部に外したりできる。
【0033】
閉塞位置では、図2に示すように、第1ケース2と第2ケース3で囲まれる電線貫通スペース10が閉塞され、且つ、第1コア5と第2コア7の両端部5a、7aが嵌合によって接続される。これによって、第1コア5と第2コア7によって閉塞磁路が形成される。この閉塞磁路は、その内周面を除く全周面が第1シールド板6と第2シールド板8で遮蔽される。
【0034】
図1、図4に詳しく示すように、第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より近い側の双方の開口端2a,3aの周辺には、電線貫通スペース10から内側開口隙間12に電線Wが侵入するのを規制する一対の規制部20が設けられている。一対の規制部20は、電線引き出し部11を有する第1ケース2に設けられている。一対の規制部20は、第2ケース3の外面に沿って移動するよう配置されている。各規制部20の外周端20aの形状は、第2ケース3の開口端3aの最外周位置の移動軌跡に沿った円弧状である。
【0035】
図5及び図6に詳しく示すように、第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より遠い側の双方の開口端2b,3bには、一対の第1ガード部21と一対の第2ガード部22が設けられている。一対の第1ガード部21と一対の第2ガード部22は、第1ケース2と第2ケース3にそれぞれ設けられている。一対の第1ガード部21と一対の第2ガード部22は、正面から見た場合、各第1コア5と第2コア7の突出した端部5a,7aよりもそれぞれ突出されている(図3参照)。しかし、開放位置における第1ガード部21と第2ガード部22の最小幅D2は、電線貫通スペース10の直径D1(図2に示す)より大きな寸法に設定されている。又、一対の第1ガード部21と一対の第2ガード部22は、図7に示すように、第1ケース2と第2ケース3の開放位置と閉塞位置との間の回転過程で、双方が相対的に適正な移動軌跡に沿って移動するべく互いにガイドするように設定されている。より詳細には、第1及び第2ガード部21,22は、そのオーバーラップする回転過程では、一対の第1ガード部21の外面に一対の第2ガード部22の内面が摺動する。
【0036】
図5及び図6に詳しく示すように、第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より遠い側の双方の開口端2b,3b側には、単一のロック手段23が設けられている。単一のロック手段23は、第2ケース3の背面側に設けられた弾性ロックアーム24と、第1ケース2の背面側に設けられ、弾性ロックアーム24が係止する被ロック部25とから構成されている。弾性ロックアーム24は、第2ケース3の閉塞位置から開放位置への回転方向R1がロック解除方向Fとされている。弾性ロックアーム24は、電線引出し部11が設けられていない第2ケース3に設けられている。
【0037】
次に、前記変流器1を用いて、分電盤等内に配置された電線Wの漏れ電流を測定する手順を説明する。電線Wは、図8に示すように、通常では分電盤等の内部で縦方向に配策されている。
【0038】
変流器1を図1、図3の開放位置とし、電線出入口用隙間13より測定対象の電線Wを電線貫通スペース10に挿入する。電線Wを電線貫通スペース10に挿入すると、第1ケース2と第2ケース3を回転支持部4を支点として相対回転させ、変流器1を図2の閉塞位置とする。閉塞位置では、単一のロック手段23の弾性ロックアーム24が撓み復帰変形することによってロックされ、閉塞位置に保持される(図8参照)。
【0039】
電線Wに漏れ電流が流れると、第1コア5及び第2コア7からなる閉塞磁路に電流に比例した磁束が発生し、この磁束に比例する電流がコイル(図示せず)に流れることから漏れ電流を測定できる。測定が終了すると、作業者が単一のロック手段23のロックを解除し、第1ケース2と第2ケース3を開放位置に相対回転し、電線貫通スペース10の電線Wを電線出入口用隙間13より外部に外す。
【0040】
本変流器1は、受電変圧器の低圧側電路における対地絶縁抵抗を該電路と大地を介してB種接地線に環流する漏れ電流により監視する絶縁監視装置に適用できる。
【0041】
以上、前記変流器1では、第1ケース2には、電線貫通スペース10から内側開口隙間12に電線Wが侵入するのを規制する一対の規制部20が設けられている。従って、第1ケース2と第2ケース3を開放位置として電線Wを電線貫通スペース10に挿入する際に、電線Wが内側開口隙間12に進入しようとしても、その進入が規制部20によって阻止される。従って、電線Wが第1ケース2と第2ケース3の双方の開口端2a,3aで挟持されることに起因する種々の不具合を防止できる。具体的には、電線Wに損傷(ダメージ)を与える恐れがなく、第1コア5及び第2コア7の端部5a,7aに損傷(ダメージ)を与える恐れがなく、スムーズな測定作業が可能である。
【0042】
又、一対の規制部20は、内側開口隙間12へのゴミ等の侵入を阻止する機能をも有するため、ゴミ等による第1コア5と第2コア7間の接続部、つまり、端部5a,7aの漏れ磁束を極力防止できる。特に、図8に示すように、電線Wが垂直に配策されている場合にゴミ等の侵入防止に役立つ。
【0043】
一対の規制部20は、電線Wが引き出されている第1ケース2に設けられ、且つ、相手側の第2ケース3の外面に沿って移動するよう配置されている。従って、作業者は電線Wが引き出されている第1ケース2側を固定し、電線Wが引き出されていない第2ケース3側を回転操作する方が回転操作し易く、このような操作形態では規制部20も固定側となり、作業者が規制部20を保持している場合にも第1ケース2と第2ケース3間の相対的回転を行うことができるため、操作性が良い。
【0044】
尚、一対の規制部20は、第2ケース3に設けても良く、又、第1ケース2と第2ケース3に双方に設けても良い。
【0045】
各規制部20の外周端20aの形状は、第2ケース3の開口端3aの最外周位置の移動軌跡に沿った円弧状である。従って、第2ケース3のあらゆる移動位置にあって、その開口端3aの最外周位置が規制部20によって規制されるため、電線Wの内側開口隙間12への進入を確実に阻止することができる。
【0046】
第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より遠い側の双方の開口端2b,3bには、第1コア5と第2コア7の突出した端部5a,7aよりも突出する第1及び第2ガード部21,22がそれぞれ設けられている。従って、第1ケース2と第2ケース3を開放位置として電線Wを電線貫通スペース10に挿入する際や、電線貫通スペース10の電線Wを外部に外す際に、第1コア5や第2コア7の端部5a,7aに電線Wが接触する前に第1及び第2ガード部21,22に接触するため、電線Wが第1コア5や第2コア7の端部5a,7aに損傷(ダメージ)を与える事態を防止できる。
【0047】
第1ケース2の第1ガード部21と第2ケース3の第2ガード部22は、第1ケース2と第2ケース3の開放位置と閉塞位置との間の回転過程で、双方が相対的に適正な移動軌跡に沿ってガイドしつつ移動するよう構成されている。従って、第1及び第2ガード部21,22のガイドによって第1コア5と第2コア7が適正な位置で接続されるため、漏れ磁束を極力防止でき、極力適正な測定ができる。特に、第1コア5と第2コア7が強磁性材の板を交互に位置ずれされた状態で積層されたものであり、第1コア5の端部5aと第2コア7の端部7aが積層された強磁性材の隙間に嵌合することによって接続されるものにあっては、確実に嵌合させることができる。
【0048】
又、第1ガード部21及び第2ガード部22は、電線出入口用隙間13へのゴミ等の侵入を阻止する機能をも有するため、ゴミ等による第1コア5と第2コア7間の接続部、つまり、端部5a,7aの漏れ磁束を極力防止できる。特に、図8に示すように、電線Wが垂直に配策されている場合にゴミ等の侵入防止に役立つ。
【0049】
第1ケース2と第2ケース3の回転支持部4より遠い側の双方の開口端2b,3b側で、且つ、第1ケース2と第2ケース3の各背面には、閉塞位置で係止される単一のロック手段23が設けられ、ロック手段23は、弾性ロックアーム24と被ロック部25から構成され、弾性ロックアーム24は、第1ケース2と第2ケース3の閉塞位置から開放位置への回転方向R1がロック解除方向Fとされている。従って、第1ケース2と第2ケース3が閉塞位置にあって、単一の弾性ロックアーム24をロック解除方向Fに操作すれば、第1ケース2と第2ケース3を閉塞位置から開放位置に移動させることができるため、作業者は片手での操作が可能となり、操作性が良い。
【0050】
弾性ロックアーム24は、電線9が引き出されていない第2ケース3に設けられている。従って、作業者は電線9が引き出されている第1ケース2側を固定し、電線9が引き出されていない第2ケース3側を回転操作する方が回転操作し易く、このような操作形態によってロック解除できるため、更に操作性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態を示し、変流器の開放状態の正面図である。
【図2】本発明の実施形態を示し、第1ケースと第2ケースが閉塞位置である変流器の正面図である。
【図3】本発明の実施形態を示し、第1ケースと第2ケースが開放位置である変流器の正面図である。
【図4】本発明の実施形態を示し、第1ケースと第2ケースの回転支持部より近い側の双方の開口端の周辺を示す要部斜視図である。
【図5】本発明の実施形態を示し、第1ケースの回転支持部より遠い側の開口端に周辺を示す要部斜視図である。
【図6】本発明の実施形態を示し、第2ケースの回転支持部より遠い側の開口端に周辺を示す要部斜視図である。
【図7】本発明の実施形態を示し、双方のガード部が互いにガイドしている状態を示す要部平面図である。
【図8】本発明の実施形態を示し、変流器の使用状態を示す斜視図である。
【図9】従来例を示し、第1ケースと第2ケースが開放位置である変流器の正面図である。
【図10】従来例を示し、第1ケースと第2ケースが閉塞位置である変流器の正面図である。
【図11】従来例の一対のロック手段を示す側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 変流器
2 第1ケース
2a,2b 開口端
3 第2ケース
3a,3b 開口端
4 回転支持部
5 第1コア
7 第2コア
10 電線貫通スペース
12 内側開口隙間
13 電線出入口隙間
W 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に第1コアが収容され、両側の開口端より前記第1コアの端部がそれぞれ露出された第1ケースと、
内部に第2コアが収容され、両側の開口端より前記第2コアの端部がそれぞれ露出された第2ケースとを備え、
前記第1ケースと前記第2ケースは、互いに対向する双方の開口端が離間する開放位置と互いに対向する双方の開口端が当接する閉塞位置との間で回転自在に連結され、
開放位置では、前記第1ケースと前記第2ケースの回転支持部より近い側の双方の開口端の間に内側開口隙間が形成されると共に、前記第1ケースと前記第2ケースの回転支持部より遠い側の双方の開口端の間に電線出入口用隙間が形成され、前記電線出入口用隙間より前記第1ケースと前記第2ケースで囲まれる電線貫通スペースに電線の挿入・引き出しを行うことができ、
前記閉塞位置では、前記内側開口隙間と前記電線出入口用隙間が共に閉じ、且つ、前記第1コアと前記第2コアの両端部が接続されて前記第1コアと前記第2コアによって所定の磁路が形成される変流器において、
前記第1ケースと前記第2ケースの少なくともいずれか一方には、前記電線貫通スペースから前記内側開口隙間に電線が侵入するのを規制する規制部が設けられたことを特徴とする変流器。
【請求項2】
請求項1に記載の変流器であって、
前記規制部は、前記第1ケースと前記第2ケースの内で、電線が引き出されているケース側に設けられ、且つ、相手側ケースの外面に沿って移動するよう配置されていることを特徴とする変流器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の変流器であって、
前記規制部の外周端の形状は、相手側ケースの開口端の最外周位置の移動軌跡に沿った円弧状であることを特徴とする変流器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の変流器であって、
前記第1ケースと前記第2ケースの回転支持部より遠い側の双方の開口端には、前記第1コアと前記第2コアの突出した端部よりも突出するガード部がそれぞれ設けられていることを特徴とする変流器。
【請求項5】
請求項4に記載の変流器であって、
前記第1ケースの前記ガード部と前記第2ケースの前記ガード部は、前記第1ケースと前記第2ケースの開放位置と閉塞位置との間の移動過程で、双方が相対的に適正な移動軌跡に沿って移動するべくガイドすることを特徴とする変流器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の変流器であって、
前記第1ケースと前記第2ケースの前記回転支持部より遠い側の双方の開口端側で、且つ、前記第1ケースと前記第2ケースの各背面には、閉塞位置で係止される単一のロック手段が設けられ、前記ロック手段は、弾性ロックアームと被ロック部から構成され、前記弾性ロックアームは、前記第1ケースと前記第2ケースの閉塞位置から開放位置への回転方向がロック解除方向とされていることを特徴とする変流器。
【請求項7】
請求項6に記載の変流器であって、
前記弾性ロックアームは、前記第1ケースと前記第2ケースの内で、電線が引き出されていないケース側に設けられたことを特徴とする変流器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−56425(P2010−56425A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221931(P2008−221931)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】