説明

変異体ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス

本発明は、Eタンパク質中の保存されているシステインが欠失しているか、あるいは非システイン残基に変更されているように改変された遺伝的に改変されたPRRSウイルスと、それをコードするポリヌクレオチドとを提供する。上記遺伝的に改変されたウイルスおよびポリヌクレオチドを含むワクチンも提供する。
【図1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝的に改変されたPRRSウイルスおよびそれをコードするポリヌクレオチドを提供する。上記遺伝的に改変されたウイルスおよびポリヌクレオチドを含むワクチンも提供する。
【背景技術】
【0002】
ブタ生殖器呼吸器症候群(PRRS)は、成熟したメスブタおよび未成熟のメスブタにおける流産、死産、および他の生殖上の問題、ならびに若いブタの呼吸器疾患を特徴とする。原因物質は、アルテリウイルス科およびニドウイルス目の一員であるPRRSウイルスである。このウイルスの2つの異なった遺伝子型が、北米およびヨーロッパで、1980年代後半にほぼ同時に現れた。PRRSウイルスは、現在、ほとんどすべてのブタ産出国で風土病となっており、全世界のブタ肉産業に影響を与えている経済的に最も重要な疾患の1つであると考えられている。
【0003】
現在、PRRSに対する市販のワクチンには、改変生ワクチンおよび死菌(不活性化)ワクチンが含まれる。死菌ワクチンは、異種系統のPRRSウイルスに対しては活発な免疫を誘導しないことが批判されている。改変生ワクチンは、病原力がなくなるまで、細胞培養における連続継代によって弱毒化されている。改変生ワクチンは、死菌ワクチンより広範な防御を誘発するが、残留病原力、非接種のブタへの伝搬、および病原性への遺伝的復帰を含めた、いくつかの安全性に関する懸念を与えることがある。弱毒化の過程で起こる抗原性の変化のため、そのようなワクチンは、病原性の強い野生株のPRRSウイルスに対する防御能力の一部を失うこともある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、PRRSから防御するための新規かつ改善された改変生ワクチンに対する緊急な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
配列の簡単な説明
配列番号1 シャトルプラスミドPTB−Shuttle−PRRSV−3997の順方向シャトルプライマー
配列番号2 シャトルプラスミドPTB−Shuttle−PRRSV−3997の逆方向シャトルプライマー
配列番号3 変異原性プライマー2b−C54s−Forward
配列番号4 変異原性プライマー2b−C54s−Forward
配列番号5 PRRSV P129のEタンパク質
配列番号6 PRRSV 129Eタンパク質のcDNA
配列番号7 変異導入されたORF2b
配列番号8 変異導入されたORF2bのペプチド
配列番号9、11、15、19、23、27 様々なC54s変異−ヌクレオチド配列
配列番号10、12、16、20、24、28 様々なC54s変異−ペプチド
配列番号13、14、17、18、21、22、25、26、29、30 C54s変異の順方向(F)および逆方向(R)変異原性プライマー
【0006】
本発明は、Eタンパク質中の保存されているシステインが欠失しているか、あるいは非システイン残基に変更されているように改変された遺伝的に改変されたPRRSウイルスを提供する。
【0007】
本発明は、Eタンパク質中の保存されているシステインが欠失しているか、あるいは非システイン残基に変更されているように改変されており、ただし、上記非システイン残基はチロシンではない遺伝的に改変されたPRRSウイルスをさらに提供する。
【0008】
本発明は、上述の遺伝的に改変されたウイルスをコードする感染性RNA分子をさらに提供する。
【0009】
本発明は、上述の感染性RNA分子をコードするDNA配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子をさらに提供する。
【0010】
本発明は、上述のウイルスの生物学的に純粋な培養物(すなわち他のウイルスを実質的に含まない)をも提供する。
【0011】
本発明は、上述の遺伝的に改変されたPRRSウイルスをコードする感染性RNA分子をコードするDNA配列を含むウイルスベクターをさらに提供する。
【0012】
本発明は、前述のウイルス、感染性RNA分子、単離されたポリヌクレオチド、または上述のウイルスベクターのいずれかを含む形質移入された宿主細胞をさらに提供する。
【0013】
本発明は、PRRSウイルスによる感染からブタを保護するワクチンをさらに提供し、上記ワクチンは、PRRSウイルスによる感染に対する免疫防御を生み出すのに有効な量の、上述の遺伝的に改変されたPRRSウイルス;上記遺伝的に改変されたPRRSウイルスをコードする上述の感染性RNA分子;遺伝的に改変されたPRRSウイルスをコードする上述の単離されたポリヌクレオチド分子(プラスミドの形態でもよい);または遺伝的に改変されたPRRSウイルスをコードする上述のウイルスベクター;および獣医学的使用に許容できる担体を含む。
【0014】
本発明は、PRRSウイルスによる感染に対する免疫防御を生み出すのに有効な量の、上述のワクチンを動物に接種するステップを含む、PRRSウイルスによる感染からブタを保護する方法をさらに提供する。
【0015】
本発明は、上述のPRRSウイルスをコードする感染性RNA分子をコードするDNA配列に変異導入するステップと、適切な発現系を用いて遺伝的に改変されたPRRSウイルスを発現するステップとを含む、遺伝的に改変されたPRRSウイルスを作製する方法を提供する。
【0016】
PRRSウイルスは、野生型のものも、遺伝的に改変されたものも、当技術分野で一般的に知られている適当な発現系を用いて、単離されたポリヌクレオチド分子から発現させることができ、そのような発現系の例は、本出願に記載されている。例えば、単離されたポリヌクレオチド分子は、下記にさらに詳述する通り、コードされているウイルスを適当な宿主細胞で、in vitroで発現することができるプラスミドの形態のものでよい。
【0017】
本発明の他の特徴は、概観することで明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者らは、上記ウイルスのE(または2b)タンパク質中にある、特定のシステイン残基に変異導入するか、あるいはこれを欠失させることによって病原性のPRRSウイルスを弱毒化する方法、前記弱毒化ウイルスを含む免疫原性組成物、および前記免疫原性組成物を用いたワクチン接種によってPRRSからブタを保護する方法をここに開示する。この方法によって弱毒化されたPRRSウイルスは、病原性野生株の抗原性の特徴を保持し、それゆえ、細胞培養によって弱毒化されたウイルスに基づくワクチンより効果的な防御を提供するに違いない。
【0019】
アルテリウイルスは、暫定的にエンベロープ(E)タンパク質と名付けられた小さな疎水性の構造タンパク質をコードする(Snijder,E.J.ら(1999年)、Identification of a novel structural protein of arteriviruses.Journal of Virology 73(8)、6335−6345)。
【0020】
Eタンパク質の機能は未知であるが、このタンパク質はすべてのアルテリウイルスで保存されている。ウマ動脈炎ウイルスにおけるノックアウト変異は、細胞培養でのウイルス複製にEタンパク質が必須であることを示した。PRRSウイルスの他の構造タンパク質はそれぞれ、対応する特有のサブゲノムRNAによってコードされているが、それらとは異なり、Eタンパク質およびGP2タンパク質は、単一のサブゲノムRNAを共有する。ORF2b(Eをコードしている)は、より大きなORF2a(GP2をコードしている)の内部に完全に含有されており、かつ異なったリーディングフレームを用いている。ORF2bのATG開始コドンはORF2a開始コドンの下流に位置するが、前者は、翻訳開始により好適なコンテクストの中にあり、おそらく、このサブゲノムRNAから産生される主要産物である(Wu,W.H.ら(2001年)、A 10−kDa structural protein of porcine reproductive and respiratory syndrome virus encoded by ORF2b.、Virology 287(1)、183−191)。
【0021】
北米遺伝子型PRRSウイルスは、それらのEタンパク質のアミノ酸配列中に、通常2つのシステイン残基を、位置49および54に含有する。北米型PRRSの単離株P129の感染性cDNAクローンを用いて、C49およびC54を個別にセリンに変異させた。この結果得られたC49S変異体は、生育可能であった。同様に、C54S変異体も生育可能であり、感染性クローンから多量の子孫ウイルスを産生した。P129−E−C49SおよびP129−E−C54Sウイルスは、MARC細胞上で容易に継代および力価測定された。しかし、P129−E−C54Sウイルスは、改変されたプラーク形態(小型で透明なプラーク)と、加速された細胞変性効果(CPE)とを示した。この変異は、ブタにおける弱毒化を導くはずである。
【0022】
ヨーロッパ遺伝子型PRRSウイルスは、位置51に単一のシステイン残基を含有し、これは、Eタンパク質配列をアラインメントした場合、北米型PRRSウイルスのC54に正確に対応している。本発明者らは、ヨーロッパ型PRRSV Eタンパク質におけるC51の消失(欠失または置換による)が、細胞培養において、P129−E−C54Sに類似した改変表現型を有し、ブタで弱毒化されるであろうと予測する(下記の通り、本発明者らは、北米型PRRSおよびヨーロッパ型PRRS Eタンパク質の両方に存在しているシステイン残基を「保存されているシステイン」と名付けた)。このタイプのウイルス変異は、単独でも、他の弱毒化変異と併用する場合でも、新規なPRRSワクチンを設計するのに貴重である。
【0023】
定義
CPEは、細胞変性効果である。
【0024】
PRRSV「Eタンパク質」または「ORF2bタンパク質」という用語は、本明細書で使用される場合、PRRSウイルスのヨーロッパ単離株およびアメリカ単離株両方のORF2bによってコードされているポリペプチドと定義される。PRRSウイルスの他の構造タンパク質はそれぞれ、対応する特有のサブゲノムRNAによってコードされているが、それらとは異なり、Eタンパク質およびGP2タンパク質は、単一のサブゲノムRNAを共有する。ORF2b(Eをコードしている)は、より大きなORF2a(GP2をコードしている)の内部に完全に含有されており、かつ異なったリーディングフレームを用いている。ORF2bのATG開始コドンはORF2a開始コドンの下流に位置するが、前者は、翻訳開始により好適なコンテクストの中にありおそらく、このサブゲノムRNAから産生される主要産物である(Wuら、2001年)。
【0025】
「ヨーロッパ型PRRSウイルス」という用語は、1991年頃にヨーロッパで最初に単離されたPRRSウイルス(例えば、Wensvoort,G.ら、1991年、Vet.Q.13:121−130)に関連した遺伝的特性を有する、いかなる株のPRRSウイルスも意味する。当技術分野では、「ヨーロッパ型PRRSウイルス」を「レリスタットウイルス」と呼ぶこともある。
【0026】
「遺伝的に改変された」という用語は、本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、人的な介入により遺伝的に変異されていることを意味する。
【0027】
「PRRSウイルスの複製を支持できる宿主細胞」という用語は、本発明のウイルスまたはポリヌクレオチドで感染または形質移入させた感染性PRRSを生じることができる細胞系を意味する。そのような細胞には、ブタ肺胞マクロファージ細胞およびブタ肺胞マクロファージ細胞に由来する細胞、MA−104細胞およびMA−104細胞に由来する細胞、ならびにMARC−145細胞およびMARC−145細胞に由来する細胞が含まれる。本発明のプラークが小さい表現型を実証するには、MARC−145細胞が特に好ましい。「PRRSウイルスの複製を支持できる宿主細胞」という用語には、生きているブタの体内にある細胞も含まれうる。
【0028】
本発明の目的では、「免疫応答」という用語は、1つまたは複数の特定の抗原エピトープに対する抗体および/または細胞(Tリンパ球など)、あるいは上記エピトープの分解または阻害を補助する抗体および/または細胞の産生を意味する。「効果的免疫防御反応」という句ならびに「免疫防御」および同様な用語は、本発明の目的では、ワクチン接種された動物体内で病原体による感染に対して防御する、上記病原体の1つまたは複数の抗原エピトープに向けられた免疫応答を意味する。本発明の目的では、病原体による感染に対する防御には、感染の絶対的予防のみでなく、ワクチン接種されなかった感染動物と比較した際の、病原体による感染の程度または速度におけるいかなる検出可能な低減も、あるいはワクチン接種された動物体内の病原体による感染から生じた疾患またはなんらかの症候もしくは状態の重症度におけるいかなる検出可能な低減も含まれる。効果的免疫防御反応は、以前に病原体に感染していない、かつ/もしくはワクチン接種時に病原体に感染していない動物で誘導できる。効果的免疫防御反応は、ワクチン接種時に既に病原体に感染していた動物でも誘導できる。
【0029】
「変異導入された」という用語は、あるアミノ酸から別のアミノ酸への交換、または、あるコーディングヌクレオチドから別のヌクレオチドへの交換(例えばTからCへ)、すなわち、いわゆる「置換」、好ましくはコードされているアミノ酸を変更するやり方での置換、あるいは「欠失」または「挿入」などの他の任意な変異を意味する。上記の変異は常に、コーディングヌクレオチド配列中で行われたものである。
【0030】
「北米型PRRSウイルス」という用語は、限定されるものではないが、1990年代初期に米国で最初に単離されたPRRSウイルス(例えば、Collins,J.E.ら、1992年、J.Vet.Diagn.Invest.4:117−126を参照);北米型PRRSウイルス単離株MN−1b(Kwang、J.ら、1994年、J.Vet.Diagn.Invest.6:293−296);PRRSのQuebec IAF−exp91株(Mardassi、H.ら、1995年、Arch.Virol.140:1405−1418);および北米型PRRSウイルス単離株VR2385(Meng,X.−Jら、1994年、J.Gen.Virol.75:1795−1801)などの北米型PRRSウイルス単離株に関連した遺伝的特性を有するいかなるPRRSウイルスも意味する。遺伝的特性とは、北米型PRRSウイルス株が共有するゲノムヌクレオチド配列類似性およびアミノ酸配列類似性を意味する。
【0031】
「オープンリーディングフレーム」または「ORF」という用語は、本明細書で使用される場合、特定のPRRSウイルスタンパク質を、終止コドンの介在なしにコードするのに必要な最小限のヌクレオチド配列を指す。
【0032】
「ブタの(porcine)」および「ブタ(swine)」という用語は、本明細書では同義的に使用され、例えば豚(pig)など、イノシシ(Suidae)科の一員であるいかなる動物も指す。「PRRSウイルス」、または「PRRSV」という用語は、本明細書で使用される場合、別段の指示がない限り、北米型またはヨーロッパ型いずれかのいかなるPRRSウイルス株も意味する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「PRRS」という用語は、PRRSウイルス感染によって引き起こされる、ブタの疾患症候を包含する。そのような症候の例には、妊娠したメスの流産、ならびに若いブタの成長遅滞、呼吸困難、食欲不振、および死亡が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「PRRSを生じさせることができない」PRRSウイルスは、ブタに感染することができるウイルスであって、通常はブタのPRRS感染に関連している疾患症候のうちいかなるものも生じさせないウイルス、あるいはそのような症候を生じさせるが、野生型の病原性の感染と比較して、その程度が小さいか、もしくは生じさせるそのような症候の数が少ないか、またはその両方であるウイルスを指す。
【0034】
「形質移入された宿主細胞」という用語は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5600662号に記載のものなど、PRRSウイルスRNAで形質移入された際に第1ラウンドのPRRSビリオンを産生できる実際的にいかなる宿主細胞も指す。さらに増殖性の感染が望ましい場合には、以下に定義する「PRRSウイルスの複製を支持できる宿主細胞」が使用されるであろう。
【0035】
ポリヌクレオチド分子は、当技術分野で知られている部位特異的変異導入による技法、または化学変異原もしくは放射線照射への曝露による技法などの、無作為変異導入による技法を含めた、当業者に知られている組換え技法を用いて遺伝的に変異させることができる。前記変異導入は、当技術分野で知られている標準法によって、例えば、記載(例えば、Meulenbergら、Adv.Exp.Med.Biol.、1998年、440:199−206)の通り、感染性コピーの部位特異的変異導入(例えば、Sambrookら(1989年)、A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press社、米国ニューヨーク州Cold Spring Harbor所在)によって実施できる。
【0036】
したがって、本発明は、上述のPRRSウイルスをコードする感染性RNA分子をコードするDNA配列に変異導入するステップと、適切な発現系を用いて遺伝的に改変されたPRRSウイルスを発現するステップとを含む、遺伝的に改変された北米型PRRSウイルスを作製する方法をさらに提供する。遺伝的に改変されたPRRSウイルスは、当技術分野で一般的に知られている適当な発現系を用いて、単離されたポリヌクレオチド分子から発現させることができる。そのような発現系の例は、本出願で記載されている。例えば、上記単離されたポリヌクレオチド分子は、下記に詳細に記述する通り、コードされているウイルスを適当な宿主細胞で、in vitroで発現できるプラスミドの形態のものでもよい。
【0037】
現在知られている、Eタンパク質の特定のイソ型の例には、アメリカ型PRRSの73アミノ酸ポリペプチドとして、Genbankアクセッション番号U87392に報告されている配列(VR2332としても知られている)のゲノム位置12078〜12299によって予測されているもの、およびGenbankアクセッション番号AF494042の配列(P129としても知られている)によって予測されており、かつタンパク質AAM18560.1として報告されているものがあり、さらに、70残基のヨーロッパ型PRRS Eタンパク質として、Genbankアクセッション番号M96262(Lelystad(レリスタット)単離株としても知られている)のゲノム位置11801〜12013によって予測されているものがある。
【0038】
これらの北米型PRRSVのEタンパク質配列は高度に保存されており、報告されている配列は、相互に約93%の同一性を有する。北米型およびヨーロッパ型のPRRSV Eタンパク質は約83%同一であり、VR2332およびP129Eタンパク質単離体の残基54、そして、Lelystad単離Eタンパク質の残基51にある、保存されているシステインを(他の多くの残基と共に)共有している。図3は、本発明者らが「保存されているシステイン」と指摘したシステイン、すなわちヨーロッパ型およびアメリカ型のPRRS単離株の間で保存されているシステインを明示したものである。上記で参照したアミノ酸付番は、言及したデータベースの記載に従ったものである。他のPRRS単離株では、付番が異なっているかもしれないが、それらすべてで、対象のPRRS株にある、保存されている特徴的なアミノ酸を同定し、それを標準株とアラインメントすることによって、適切なシステインが容易に同定される。置換、欠失、または挿入によって、保存されているシステインが欠失し、その結果、プラークの小さい表現型が生ずるように、PRRSウイルスまたはそれをコードする核酸を改変することは、本発明の目的の1つである。
【0039】
保存されているシステインを除去する欠失または置換の導入は、本発明のウイルスをコードするポリヌクレオチドの改変によって行う。好ましい実施形態では、欠失または挿入が、保存されているシステインの除去をもたらす、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸を含む欠失または挿入であり、その際、前記欠失または置換の結果、それによって生じるウイルスが、プラークの小さい表現型のものとなる。好ましい実施形態は、5アミノ酸またはそれ未満の欠失または挿入であろう。
【0040】
アミノ酸は、物理学的特性、ならびにタンパク質の二次構造および三次構造への寄与に応じて分類することができる。保存的置換は、当技術分野において、あるアミノ酸から、類似の特性を有する別のアミノ酸への置換であると認識されている。保存的置換の例を、すぐ下の表Aに示す(国際公開第97/09433号パンフレット、10ページ、1997年3月13日公開(1996年9月6日出願のPCT出願第GB96/02197号)より)。
【0041】
【表1】

【0042】
別法では、すぐ下の表Bに示す通り、保存的アミノ酸をLehninger(Biochemistry、第2版、Worth Publishers社、米国ニューヨーク州ニューヨーク所在(1975年)、pp.71−77)に従って分類することができる。
【0043】
【表2】

【0044】
さらに別の別法として、保存的置換の例をすぐ下の表Cに示す。
【0045】
【表3】

【0046】
遺伝的に改変されたPRRSウイルスの調製
組換えDNA技術は、核酸をDNAレベルで改変することを目的とした極めて多様かつ強力な分子生物学技法を含み、分子レベルでのゲノムの分析および改変を可能にする。この点に関して、PRRSウイルスなどのウイルスは、そのゲノムのサイズが小さいため、そのような操作がとりわけ容易である。しかし、レトロウイルスではないRNAウイルスは、それらの複製においてDNA中間体の段階を包含しないため、組換えDNA技術は、それらに直ちに適用することができない。そのようなウイルスに関しては、改変ウイルスを生成させるために、それらのゲノムに組換えDNA技術を適用できるようになる前に、感染性のcDNAクローンを発生させなければならない。感染性クローンは、研究しているウイルスの完全長(ゲノム長)cDNA(ここでは、RNAのDNAコピーに関する広い意味で用いられおり、厳密な意味でのmRNAのDNAコピーのみではない)を構築し、その後、その完全長cDNAで形質移入された細胞で、in vivoで感染性転写産物を合成させることを介して得ることができる。感染性転写物は、完全長cDNA、または、完全なウイルスゲノムを含む、連結された部分長cDNA断片からのin vitro転写によっても得ることができる。すべての場合において、転写されたRNAは、上記cDNAに導入されたすべての改変を保有し、そのように改変されたウイルスのさらなる継代に使用することができる。
【0047】
ヨーロッパ型PRRSウイルス単離株であるレリスタットウイルスの感染性クローンの調製は、参照により本明細書に完全に組み込まれている米国特許第6268199号明細書、Meulenbergら、2001年7月31日に記載されている。P129と名付けられた北米型PRRSウイルス単離株の感染性cDNAクローンの調製は、参照により本明細書に完全に組み込まれている米国特許第6500662号明細書、Calvertら、2002年12月31日に記載されている。P129のcDNA配列は、Genbankアクセッション番号AF494042および米国特許第6500662号明細書、Calvertら、2002年12月31日に開示されている。本発明者らの下記の研究は、プラスミドの状態でCMV前初期プロモーターによって発現されるそのような感染性クローンを利用している。この感染性クローンは、pCMV−S−P129と呼ばれ、米国特許第6500662号明細書、Calvertら、2002年12月31日の中でも開示されている。米国特許第6500662号明細書、Calvertら、2002年12月31日に記載の通り、他のプラスミドおよびプロモーターも適している。
【0048】
対象とするいかなるオープンリーディングフレームも、その完全な配列、および対象とするアミノ酸残基の位置が得られれば、当業者が、所望の特定の位置における変化を設計するのに、コドン表を参照するのみで十分であるのは明らかである。
【0049】
【表4】

【0050】
アミノ酸、ならびにそれらを表す短縮表記、シンボル、およびコドンの表を、以下の表Eに詳細に示す。
【0051】
【表5】

【0052】
当技術分野でよく知られている通り、コドンは、mRNA分子およびそれらに対応するcDNA分子において、ヌクレオチドのトリプレット配列を構成する。コドンは、mRNA分子中に存在する場合には、ウラシル(U)塩基を特徴とするが、DNA中に存在する場合には、チミジン(T)塩基を特徴とする。ポリヌクレオチド中における、同じアミノ酸残基をコードするコドンの単純な変化は、コードされているポリペプチドの配列も、構造も変化させないであろう。ある特定の3ヌクレオチド配列が、いずれのアミノ酸であれ、特定のアミノ酸を「コードしている」と述べる句が存在する場合、当業者ならば、上記の表から、問題としている特定のヌクレオチドを同定する手段が得られると認識するであろうことは明らかである。一例として、ある特定の3ヌクレオチド配列がシステインをコードしている場合、上記の表は、可能である2つのトリプレット配列がUGC(DNAではTGC)およびUGU(DNAではTGT)であることを開示している。セリンは、AGC、AGU(DNAではAGT)、UCA(DNAではTCA)、UCC(DNAではTCC)、UCG(DNAではTCG)、およびUCU(DNAではTCT)によってコードされている。コードされているタンパク質中にある、あるシステインをセリン残基に変えるには、コードしている核酸中のTGCまたはTGTトリプレットを、AGC、AGT、TCA、TCC、TCG、またはTCTのうちのいずれかに交換できよう。
【0053】
まさしくそのような変異体Eタンパク質のポリヌクレオチド配列の構築を、例示によって以下に示す。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
シャトルプラスミドPTB−SHUTTLE−PRRSV−3997の構築
完全長PRRSウイルスゲノムcDNAクローンへの特定の改変の導入を容易にするために、シャトルプラスミドを構築した。ウイルスゲノムの最も3’末端側に相当する3997bp断片(21残基のポリアデノシンテールを含むヌクレオチド位置11504から15416まで)および下流のベクター配列84bpをPCR増幅させた。このPCR反応は、5ngのpCMV−S−P129プラスミドDNA(米国特許6500662号明細書)、300ngの順方向プライマーP−shuttle−Fwd、配列番号1(5’−ACTCAGTCTAAGTGCTGGAAAGTTATG−3’:位置11504から11530まで)、300ngの逆方向プライマーP−shuttle−Revプライマー、配列番号2(5’−ATCTTATCATGTCTGGATCCCCGCGGC−3’:位置15500から15475まで)、各1mMのdNTP、1×PCR緩衝液(10mM KCl、10mM (NHSO、20mM Tris−HCl(pH8.8)、2mM MgSO、0.1% TritonX−100)、および2.5UのPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene社)を含有し、GeneAmp PCRシステム2400(Perkin Elmer社)を用いて行った。反応物を95℃で5分間加熱し、下記の条件、すなわち、95℃で30秒の変性、55℃で1分間のプライマーアニーリング、および72℃で3分間の伸長で、35サイクルの増幅を行った。このPCR産物を、TrueBlue MicroCartridge(商標)PCRクローニングキットXL(Genomics One社;米国ニューヨーク州Buffalo所在)を用いて、pTrueBlueベクター中にクローニングして、pTB−shuttle−PRRSV−3997を作製した。
【0055】
(実施例2)
P129−E−C54Sウイルスを生成させるための、タンパク質E(または2B)のシステイン残基54の置換
PRRSV P129のEタンパク質は、ORF2bによってコードされており、アミノ酸位置49および54に2つのシステイン残基を含有する。配列番号5、MGSIQSLFDKIGQLFVDAFTEFLVSIVDIIIFLAILFGFTIAGWLVVFIRLVCSAVFRARPAIHPEQLQKILを参照のこと。配列番号5のcDNAは、配列番号6ATGGGGTCTATACAAAGCCTCTTCGACAAAATTGGCCAGCTTTTTGTGGATGCTTTCACGGAATTTTTGGTGTCCATTGTTGATATCATCATATTTTTGGCCATTTTGTTTGGCTTCACCATCGCCGGTTGGCTGGTGGTCTTTTGCATCAGATTGGTTTGCTCCGCGGTATTCCGTGCGCGCCCTGCCATTCACCCTGAGCAATTACAGAAGATCCTATGAである。
【0056】
位置54のシステイン残基(P129ゲノムのヌクレオチド位置12221〜12223)を、PCRベースの部位特異的変異導入を用いてセリンで置換した。変異原プライマー2b−C54S−Fwd、配列番号3(5’−GCATCAGATTGGTTAGCTCCGCGGTATTCCG−3’:ヌクレオチド位置12207から12238まで)および2b−C54S−Rev、配列番号4(5’−CGGAATACCGCGGAGCTAACCAATCTGATGC−3’:ヌクレオチド位置12207から12238まで)と共に、シャトルプラスミドpTB−shuttle−PRRSV−3997を鋳型として用いた。変異導入されたコドンには下線が引かれている。PCR増幅は、5ngのpTB−shuttle−PRRSV−3997プラスミドDNA、順方向プライマーおよび逆方向プライマーそれぞれ300ng;dCTP、dGTP、dATP、およびdTTPのそれぞれ1mM濃度、1×PCR緩衝液(10mM KCl、10mM (NHSO、20mM Tris−HCl(pH8.8)、2mM MgSO、0.1%TritonX−100)ならびに2.5UのPfu DNAポリメラーゼ(Stratagene社)を用いて行った。下記の条件、すなわち、94℃で30秒間の変性、55℃で1分間のプライマーアニーリング、および68℃で12分30秒間のプライマー伸長で、試料の増幅を16サイクル行った。PCRサイクルの後に、メチル化されているプラスミドDNA鋳型を除去するために、10UのDpnIでPCR産物を消化させた。変異導入されたプラスミドを含有するPCR−Dpn I消化反応物4μlを用い、熱ショックによって大腸菌(E.coli)XL1−Blue細胞を形質転換させ、アンピシリンを含有するLBアガープレート上に広げた。コロニーを無作為に選択し、終夜培養した。プラスミドDNAは、QIAprep spinミニプレップキット(Qiagen社)を用いて調製した。システインからセリンへ(C54S)の所望の変異の存在を、ヌクレオチド配列の決定によって確認し、結果として得られたプラスミドをpTB−shuttle−E−C54Sと命名した。変異導入されたORF2bの配列は、配列番号7ATGGGGTCTATACAAAGCCTCTTCGACAAAATTGGCCAGCTTTTTGTGGATGCTTTCACGGAATTTTTGGTGTCCATTGTTGATATCATCATATTTTTGGCCATTTTGTTTGGCTTCACCATCGCCGGTTGGCTGGTGGTCTTTTGCATCAGATTGGTTAGCTCCGCGGTATTCCGTGCGCGCCCTGCCATTCACCCTGAGCAATTACAGAAGATCCTATGAであり、コードされているペプチドは、配列番号8MGSIQSLFDKIGQLFVDAFTEFLVSIVDIIIFLAILFGFTIAGWLVVFCIRLVSSAVFRARPAIHPEQLQKILである。
【0057】
シャトルプラスミドpTB−shuttle−E−C54Sおよび野生型完全長ゲノムクローンpCMV−S−P129は両方とも、ユニークなEco47 III部位およびBsrG I部位を含有している(それぞれ位置285および1192、ならびに位置11785および12692)。各プラスミドをEco47 IIIおよびBsrG Iで消化させた。908bpのEco47 III−BsrG I断片をpTB−shuttle−E−C54Sからゲル精製し、17984bpのEco47 III−BsrG I断片をpCMV−S−P129からゲル精製した。これら2つの断片をT4 DNAリガーゼ(Invitrogen社)を用いて連結し、C54S改変完全長ゲノムcDNAクローンを構築した。10μlの連結反応物で大腸菌株DH5−αを形質転換させた。アンピシリンを含有するLBプレートから細菌コロニーを選択し、プラスミドDNAを調製した。Xma I消化パターンに基づいて、全長クローンを選択した。完全長ゲノムcDNAクローンにおけるC54S改変の存在を確認するために、選択されたクローンの配列決定を行った。この結果得られたプラスミドを、pCMV−S−P129−E−C54Sと名付けた。
【0058】
MARC−145細胞を、8%ウシ胎児血清(FBS;Gibco BRL社)、ペニシリン(100U/ml)、およびストレプトマイシン(50μg/ml)を補ったダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、5%CO2存在下、37℃で培養した。直径35mmの培養皿中に細胞を播種し、70%集密状態まで培養した。これらの細胞に、2μgのpCMV−S−P129−E−C54Sまたは親プラスミドpCMV−S−P129のDNAで、24時間、Lipofectin(Invitrogen社)を用いて形質移入した。形質移入細胞を、8%FBSを補ったDMEM中、37℃で5日間インキュベートした。PRRSV特異的な細胞変性効果(CPE)は、形質移入の3日後から観測され、近傍の細胞へのさらなる伝搬は、形質移入の5日後から見られた。CPEの特異性は、非構造タンパク質nsp2およびnsp3に対するウサギ抗血清、ならびにN特異的MAb SDOW17を用いた免疫蛍光細胞染色によって確認した。形質移入の5日後に、形質移入細胞の培養上清を採取し、「P129−E−C54S継代1」(P1)と名付けた。継代1ウイルスを用いて、新たなMARC−145細胞に播種し、5日後に採取したものを「継代2」(P2)と名付けた。「継代3」ウイルスも、P2と同様に調製した。各ウイルス継代の1mlアリコートを、使用するまで−80℃で保存した。P129−E−C54Sウイルスの各継代をプラークアッセイによって力価決定した。継代1、2、および3の力価は、それぞれ、1.5×10、5×10、および1×10pfu/mlと測定された。平行して、野生型P129ウイルスをpCMV−S−P129から産生し、力価決定した。その結果得られた、継代1、2、および3の力価は、それぞれ、1×10、1×10、および5×10pfu/mlであった。
【0059】
P129−E−C54Sウイルスは、P129親ウイルスと比較して、遅いCPE出現開始を示す明確に異なった細胞変性効果(CPE)の発生を誘導し、プラークが小さい表現型を示した。親cDNAクローンPCMV−S−P129または変異体cDNAクローンpCMV−S−P129−E−C54SでMARC−145細胞に形質移入した結果として、感染細胞の可視的な増殖巣が生じた。また、P129−E−C54Sウイルスによって媒介されたCPEは、サイズが極めて類似したものであったが、形質移入の4日後までに現れるP129親ウイルスによるCPEに比べて、出現が遅かった。しかしその後、変異体ウイルスは、増殖巣の中に死細胞または脱離細胞の領域を伴う急速かつ広範なCPEを引き起こし(形質移入の約5日後)、一方、親ウイルスは、同期間中には単に、増殖巣サイズの中程度な増大を示した。CPEの相違を図1に示す。ウイルス力価は、CPEのこの相違に対応して、最初2代のウイルス継代の間、変異体ウイルスが親ウイルスより多くの(しかし3代目では少ない)子孫ウイルスを産生した。プラーク形態の相違を図2に示す。P129−E−C54Sウイルスは、親ウイルスであるP129のプラークと比較して、直径が小さく、形態の異なるプラークを産生する。P129−E−C454Sプラークは、その中心にある細胞がP129プラークより早くかつ完全に死亡および脱離するため、より透明であった。プラークが小さい表現型に関しては、いくつかの生物学的説明が存在しうるが、小さいプラークが観察されたことは、細胞から細胞までの、P129−E−C54Sウイルスの伝搬が、親ウイルスより遅いことの直接的証拠である。この特徴は、病原性の親ウイルスから弱毒化された(病原性がより弱い)生ワクチンウイルスを生成させるのに本発明で使用できる。
【0060】
実際、プラークが小さい表現型を生じるウイルスであって、かつそれらの天然宿主中で弱毒化されているウイルスの多数の例が存在する(Mathewら、「The extracellular domain of vaccinia virus protein B5R affects plaque phenotype,extracellular enveloped virus release,and intracellular actin tail formation」、Journal of Virology 72(3):2429−38(1998年);Engelstadら、「The vaccinia virus 42−kDa envelope protein is required for the envelopment and egress of extracellular virus and for virus virulence」、Virology 194(2):627−37(1993年);Lewisら、「An African swine fever virus ERV1−ALR homologue,9GL,affects virion maturation and viral growth in macrophages and viral virulence in swine」、Journal of Virology 74(3):1275−85(2000年);Leeら、「Common E protein determinants for attenuation of glycosaminoglycan−binding variants of Japanese encephalitis and West Nile viruses」Journal of Virology 78(15):8271−80(2004年);Framptonら、「Contribution of gene products encoded within the unique short segment of equine herpesvirus 1 to virulence in a murine model」、Virus Research 90(1−2):287−301(2002年);Leeら、「Mechanism of virulence attenuation of glycosaminoglycan−binding variants of Japanese encephalitis virus and Murray Valley encephalitis virus」、Journal of Virology 76(10):4901−11、(2002年);Butrapetら、「Attenuation markers of a candidate dengue type 2 vaccine virus,strain 16681(PDK−53),are defined by mutations in the 5’ noncoding region and nonstructural proteins 1 and 3」、Journal of Virology 74(7):3011−9(2000年))。米国特許出願公開第2002/0012670号に由来する下記の実施例は、PRRSウイルスの2つの異なった株の病原性の特性を比較するための明確な手引きを提供する。
【0061】
(実施例3)
システイン残基54の復帰抵抗性変異
TGC(システイン)からAGC(セリン)に、単一コドン中の単一ヌクレオチドを改変することによって、実施例2に記載したC54S変異を生成させた。変異の表現型の決定に関しては適切であるが、無作為な変異と自然選択とによって比較的高い頻度で、この結果生じたウイルスが親配列(そして、親表現型)に復帰するかもしれないと予測されるであろう。本発明の好ましい実施形態、特にワクチンを目的としたものでは、位置54の残基がシステインに戻る確率を最小にするように、そして、他の隣接残基(特に残基51〜57)が変異してシステインになる確率を最小にするように設計された複数のヌクレオチド置換および/または欠失を含有するであろう。遺伝暗号を調べることによって、システインは2つのコドン(TGTおよびTGC)のみによってコードされていることが明らかになる。システインコドンになるのに、2もしくは3回の別々のヌクレオチド変異事象を必要とするコドンの使用は、1回のみを必要とするものより好ましい。そのような「復帰抵抗性」の変異の例を表Fに示す。これらは、限定ではなく、代表であると意図されている。当業者ならば、復帰抵抗性変異の例を他にも多数想起することができる。
【0062】
C54S−2変異(表Fを参照)は、C54S変異と同じアミノ酸変化をもたらすが、セリンコドンの選択がAGCからTCGに変わっている。したがって、システインコドンを生成するのに2回の独立したヌクレオチド変異が必要であり、表現型が復帰する確率がC54Sと比較して低下している。変異C54S−3は、位置54に同じセリンコドンを組み入れているが、ロイシン52(TTGからCTGに)、バリン53(GTTからGTAに)、およびセリン55(TCCからTCGに)のコドン改変も有する。その結果、これら3つのコドンがシステインコドンに変異する確率が低下しており、したがって、位置54におけるシステイン残基の不在を機能的に補足する確率が低下している。CS54−55AA変異では、C54およびS55が両方とも、アラニン残基をコードするように変異させられている。セリンと同様にアラニンも、小型で無電荷の側鎖を有しており、システインが有するジスルフィド結合を形成する能力も、金属イオンと相互作用する能力ももたない。4つの可能なアラニンコドンのうち2つ(GCGおよびGCA)はシステインコドンとは十分に相違しており、システインコドンを生成するには、3つのヌクレオチドすべてに変異導入しなければならない。したがって、アラニン置換は、表現型復帰の可能性をさらに低下させる好ましい方法である。最後に、CS54−55delA変異では、位置54のコドンが除去されている。加えて、セリン55がアラニンに改変され、ロイシン52およびバリン53のコドンが改変されている。そのような変異体ウイルスの表現型復帰は、極めてまれであると予測されている。
【0063】
復帰抵抗性の変異を設計する場合、ときに制限酵素認識部位が生成または破壊されるように、代替コドンを選択することができる。これらの相違は、変異していないプラスミドおよびウイルスから変異したものを識別するのに好都合なマーカーとして利用できる。C54S−3、CS54−55AA、およびCS54−55delA変異(表F)の場合、S55コドンTCCからTCG(セリン)またはGCG(アラニン)のいずれかへの変異は、天然に存在するSac II制限部位(CCGCGG)の破壊をもたらす。
【0064】
ORF2bはORF2a(異なったリーディングフレームでGP2をコードする)とオーバーラップしているので、ORF2b中のコドンを改変する過程でORF2aに終止コドンを導入しないように注意しなければならない。場合によっては、ORF2bに加えたコドン変化が、ORF2aによってコードされているアミノ酸配列を変化させることがある。GP2タンパク質機能に加えられたそのような変化の影響は予測が困難である可能性があり、経験的に判定するのが最良である。
【0065】
【表6】

【0066】
(実施例4)
弱毒化の確立
各試験には、無PRRSV農場から得られた妊娠経験のないメスブタが、1群あたり少なくとも10匹含まれている。
【0067】
動物が、PRRSウイルス特異的な血清抗体を有していないかどうか、また、PRRSVに関して陰性であるかどうか試験した。試験に含まれているすべての動物は、供給源および品種が同一のものである。群への動物の分配は無作為化して行った。
【0068】
攻撃は、鼻孔あたり10TCID50のPRRSV 1mlを鼻腔内投与することによって、妊娠90日目に行う。試験設定ごとに、少なくとも3群が存在する。すなわち、1群は、P129に曝露させるため;1試験群は、弱毒化している可能性のあるウイルスに攻撃させるため;そして1群は厳密な対照群である。
【0069】
試験期間全体を通して、厳密な対照がPRRSV陰性のまま残り、かつ、P129曝露された群では、厳密な対照と比較して、生きた健康な子ブタの誕生が少なくとも25%少ない場合に、この試験は有効であるとする。
【0070】
弱毒化は、換言すれば病原性の低減であり、自己増殖能力を決定する1つまたは複数のパラメータの統計的に有意な変化と定義され、P129感染群との比較で、試験群(弱毒化ウイルスである可能性がある)に関する以下のパラメータ、すなわち、
a.)死産の頻度、
b.)妊娠112日目またはその以前における流産、
c.)ミイラ変性した子ブタの数、
d.)不活発で弱い子ブタの数、
e.)離乳前の死亡率
のうちの少なくとも1つにおける有意な減少が好ましく、さらに、P129感染群との比較で、試験群に関する以下のパラメータ、すなわち、
f.)メスブタ1匹あたりの離乳した子ブタの数、
g.)メスブタ1匹あたりに産まれた、生きていて健康な子ブタの数
のうちの1つにおける有意の増大が好ましい。
【0071】
ワクチン
弱毒化株はワクチンの製剤に貴重である。本ワクチンが有効であるというのは、PRRSウイルスによる感染からブタを保護する場合である。あるワクチンがPRRSウイルスによる感染からブタを保護するというのは、1匹または複数の非罹患ブタにワクチンを投与した後、それに続いて、生物学的に純粋なウイルス単離株(例えば、VR2385、VR2386、P129など)で攻撃した結果、疾患のなんらかの肉眼的または組織病理学的な変化(例えば肺における病変)および/または症候の重症度が、保護されなかった同様なブタで上記単離株によって通常引き起こされるそれらの変化または症候と比較して(すなわち適切な対照と比較して)低下している場合である。より詳細には、本ワクチンは、それを必要とする1匹または複数の適当なブタに本ワクチン投与し、その後、適当な期間(例えば4週間)の後に、生物学的に純粋なPRRSV単離株の大量の試料(10(3〜7)TCID(50))で攻撃することによって、有効であることを示すことができる。その後、約1週間後に、攻撃されたブタから血液試料を採取し、次に、血液試料からウイルスを単離する試み(例えば、下記実験VIIIに例示するウイルス単離過程を参照)を行う。ウイルスの高レベルの単離(ワクチン接種されておらず、攻撃された対照ブタと同様)は、ワクチンが有効でないであろうことの指標である。ウイルス単離ができないことまたは単離されたウイルスの量の減少は、ワクチンが有効であろうことの指標である。
【0072】
したがって本ワクチンの有効性は、定量的(すなわち、適切な対照群と比較しての圧縮された(consolidated)肺組織の割合の低下)にも、定性的(例えば、血液からのPRRSVの単離、免疫アッセイ法による肺、扁桃腺、またはリンパ節組織標本中のPRRSV抗原の検出)にも評価できる。ブタ生殖器呼吸器疾患の症候は、定量的(例えば体温/熱)にも、準定量的(例えば、呼吸困難(下記に詳細に説明する)の重症度)にも、または定性的(例えば、チアノーゼ、肺炎、心臓および/もしくは脳障害などの1つもしくは複数の症候が存在するかどうか、もしくはそれらにおける重症度低下)にも評価できる。
【0073】
非罹患ブタとは、ブタ生殖器呼吸器疾患感染因子に曝露されていないブタ、またはブタ生殖器呼吸器疾患感染性因子に曝露されているが上記疾患の症候を示していないブタである。罹患ブタとは、PRRSの症候を示しているか、あるいはPRRSVを単離することができるブタである。
【0074】
本発明のワクチンは、標準的な緩衝剤、安定化剤、希釈剤、保存剤、および/または可溶化剤など、ヒト(適切な場合)を含めた動物にとって許容できる担体を含むように、許容できる通例に従って製剤でき、また、持続放出を容易にするように製剤することもできる。希釈剤には、水、食塩水、ブドウ糖、エタノール、グリセロールなどが含まれる。等張化添加物には、とりわけ、塩化ナトリウム、ブドウ糖、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが含まれる。安定化剤には、とりわけ、アルブミンが含まれる。他の適当なワクチン媒体および添加物には、改変生ワクチンを製剤するのに特に有用なものが含まれ、当業者には既知であるか、明らかであろう。例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Remington’s Pharmaceutical Science、第18版、1990年、Mack Publishing社を参照のこと。
【0075】
本発明のワクチンは、例えば中でもアジュバントまたはサイトカインなど、1つまたは複数の追加免疫調節性成分もさらに含むことができる。本発明のワクチンで使用できるアジュバントの非限定例には、RIBIアジュバントシステム(Ribi社、米国モンタナ州Hamilton所在)、ミョウバン、水酸化アルミニウムゲルなどの鉱物ゲル、水中油型乳剤、油中水型乳剤、例えばフロインドの完全および不完全アジュバント、ブロック共重合体(CytRx、米国ジョージア州Atlanta所在)、QS−21(Cambridge Biotech社、米国マサチューセッツ州Cambridge所在)、SAF−M(Chiron、米国カリフォルニア州Emeryville所在)、AMPHIGEN(登録商標)アジュバント、サポニン、Quil Aもしくは他のサポニン画分、モノホスホリル脂質A、ならびにアブリジン脂質アミンアジュバントが含まれる。本発明のワクチンで有用な水中油型乳剤の非限定例には、改変SEAM62およびSEAM1/2製剤が含まれる。改変SEAM62は、5%(v/v)スクアレン(Sigma)、1%(v/v)SPAN(登録商標)85界面活性剤(ICI Surfactants)、0.7%(v/v)TWEEN80(登録商標)界面活性剤(ICI Surfactants社)、2.5%(v/v)エタノール、200pg/ml Quil A、100[mgr]g/mlコレステロール、および0.5%(v/v)レシチンを含有する水中油型乳剤である。改変SEAM1/2は、5%(v/v)スクアレン、1%(v/v)SPAN(登録商標)85界面活性剤、0.7%(v/v)Tween80界面活性剤、2.5%(v/v)エタノール、100μg/ml Quil A、および50μg/mlコレステロールを含む水中油型乳剤である。ワクチンに含有させることができる他の免疫調節剤には、例えば、1つまたは複数のインターロイキン、インターフェロン、または他の既知なサイトカインが含まれる。
【0076】
本発明のワクチンは、任意選択で、本発明のウイルス、感染性RNA分子、プラスミド、またはウイルスベクターの持続放出用に製剤することもできる。そのような持続放出製剤の例には、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、コラーゲンなど生体適合ポリマーの複合物と併せたウイルス、感染性RNA分子、プラスミド、またはウイルスベクターが含まれる。薬物送達媒体における分解性高分子の構造、選択、および使用は、参照により本明細書に組み込まれている、A.Dombら、1992年、Polymers for Advanced Technologies 3:279−292を含めたいくつかの出版物に概説されている。製剤におけるポリマーの選択および使用に関する追加の手引きは、当技術分野で知られている教科書、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、Drugs and the Pharmaceutical Sciences、第45巻(M.Dekker、米国ニューヨーク州所在)中のM.ChasinおよびR.Langer(編集)、1990年、「Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems」で見出すことができる。別法または追加として、ウイルス、プラスミド、またはウイルスベクターは、投与および効力を改善するためにマイクロカプセルに入れることができる。抗原をマイクロカプセルに入れる方法は、当技術分野で周知であり、例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第3137631号;第3959457号;第4205060号;第4606940号;第4744933号;第5132117号明細書;および国際特許公開第95/28227号パンフレットに記載の技法が含まれる。
【0077】
ウイルス、プラスミド、またはウイルスベクターの持続放出を提供するのに、リポソームを用いることもできる。リポソーム製剤をどのように作製および使用するかに関する詳細は、とりわけ、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4016100号;第4452747号;第4921706号;第4927637号;第4944948号;第5008050号;および第5009956号明細書に見出すことができる。
【0078】
上述したどのワクチンも、効果をモニターしながら、低用量のウイルス、プラスミドまたはウイルスベクターから開始して、その後、用量を増強する従来の方法によってその有効量を決定することができる。有効量は、ワクチンの単独投与後に得られても、ワクチンの多回投与後に得られてもよい。動物あたりの最適用量を決定する際には、既知な因子を考慮に入れることができる。これらには、種、サイズ、動物の年齢、一般的な健康状態、動物体内における他剤の存在などが含まれる。実際の用量は、他の動物試験から得られた結果を考慮した後に選択することが好ましい。
【0079】
適切な免疫応答が実現されたかどうか検出する方法の1つは、ワクチン接種後に動物体内における血清転換および抗体価を測定することである。ワクチン接種のタイミング、および追加免疫が必要な場合におけるその数は、好ましくは、すべての関連要因の分析に基づいて、医師または獣医によって決定されるであろう。そのような関連要因の一部は上述されている。
【0080】
本発明のウイルス、感染性RNA分子、プラスミド、またはウイルスベクターの有効用量は、既知な技法を使用し、ワクチン接種される動物の体重などの、当業者によって測定できる因子を考慮に入れて決定することができる。本発明のワクチン中の本発明のウイルスの用量は、好ましくは約10から約10pfu(プラーク形成単位)まで、より好ましくは約10から約10pfuまで、そして最も好ましくは約10から約10pfuまでの範囲にある。本発明のワクチン中の本発明のプラスミドの用量は、好ましくは約0.1μgから約100mgまで、より好ましくは約1μgから約10mgまで、さらにより好ましくは約10μgから約1mgまでの範囲にある。本発明のワクチン中の本発明の感染性RNA分子の用量は、好ましくは約0.1μgから約100mgまで、より好ましくは1μgから約10mgまで、さらにより好ましくは約10μgから約1mgまでの範囲にある。本発明のワクチン中の本発明のウイルスベクターの用量は、好ましくは約10pfuから約10pfuまで、より好ましくは約10pfuから約10pfuまで、そして最も好ましくは約10から約10pfuまでの範囲にある。適当な用量サイズは、約0.5mlから約10mlまで、より好ましくは約1mlから約5mlまでの範囲にある。
【0081】
本発明はさらに、本明細書に記載のPRRSウイルス、感染性RNA分子、プラスミド、またはウイルスベクターを含むワクチンを調製する方法を提供し、この方法は、本発明のPRRSウイルス、感染性RNA分子、プラスミド、またはウイルスベクターのうち1つの有効量を、薬学的または獣医学的使用に許容できる担体と合わせるステップを含む。
【0082】
加えて、本発明の弱毒化生ワクチンは、米国特許第6500662号明細書に記載の通り、既知な組換え技法を用いて、PRRSウイルスゲノムに挿入された異種抗原エピトープをコードするように改変することができる。本発明の異種抗原エピトープとして有用な抗原エピトープには、PRRSウイルス以外のブタ病原体由来の抗原エピトープが含まれ、これらには、限定されるものではないが、ブタパルボウイルス、ブタシルコウィルス、ブタロタウイルス、ブタインフルエンザ、仮性狂犬病ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、ブタ呼吸器コロナウイルス、古典的ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、脳心筋炎ウイルス、ブタパラミクソウイルス、アクチノバシラスプルロニュウモニエ、炭疽菌、気管支敗血症菌、クロストリジウムヘモリティクム、クロストリジウムパーフリンジェンス、破傷風菌、大腸菌、ブタ丹毒菌、ヘモフィルスパラスイス、レプトスピラ属全種、マイコプラズマ−ヒオニューモニエ、マイコプラズマ−ヒオリニス、パスツレラヘモリチカ、パスツレラムルトシダ、ブタコレラ菌、ネズミチフス菌、ストレプトコッカスエクイシミリス、およびブタ連鎖球菌からなる群から選択されたブタ病原体由来の抗原エピトープが含まれる。前述のブタの病原体から抗原性のエピトープをコードするヌクレオチド配列は、当技術分野で知っていて、NCBIによって提供されたGenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Web/Genbank/index.html)などの公共の遺伝子データベースから得ることができる。
【0083】
本発明の追加の機能および変異は、詳細な説明を含めた本出願全体から、当業者には明らかであろう。そのような特徴のすべてが本発明の態様として意図されている。同様に、本明細書に記載の本発明の特徴は、それらの特徴の組合せが、本発明の一態様または実施形態として、上記に特別に言及されているかどうかに関係なく、それらを再結合して、追加の実施形態にすることができ、それらも本発明の態様として意図されている。本発明に重要であると本明細書に記述されているような限定のみを、限定として考えるべきである。本明細書に重要な限定と記述されていない本発明の変法は、本発明の態様と意図されている。以上の説明および実施例で特に記載されている方法とは別の方法で、本発明を実施できることは明らかであろう。
【0084】
上記の教示に照らして、多数の本発明の修正および変形が可能であり、それゆえ、それらも本発明に包含される。
【0085】
本明細書に引用したすべての出版物の全開示を参照により本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0086】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下のもの、すなわち、
a)Eタンパク質中の保存されているシステイン残基に変異導入されるように改変された遺伝的に改変されたPRRSウイルス;
b)a)の遺伝的に改変されたPRRSウイルスをコードする感染性RNA分子;および、
c)b)の感染性RNA分子をコードするDNA配列を含む単離されたポリヌクレオチド分子
のうちの1つを含む組成物。
【請求項2】
前記保存されているシステインが欠失しているか、あるいは非システイン残基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記システインが別の非システイン残基で置換されており、ただし、前記非システイン残基はチロシンではない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記保存されているシステインがセリンまたはセリンの保存的置換基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記保存されているシステインが、セリン、トレオニン、メチオニン、およびチロシンからなる群から選択されたアミノ酸残基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記保存されているシステインが、セリン、トレオニン、およびメチオニンからなる群から選択されたアミノ酸残基で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
位置54の残基がシステインに復帰する確率を最小にするために、前記保存されているシステインの変異が復帰抵抗性にされている、請求項1から6に記載の組成物。
【請求項8】
前記PRRSウイルスが、北米型PRRSウイルスまたはヨーロッパ型PRRSウイルスのいずれかである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記改変の結果、プラークが小さい表現型のウイルスが生じる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
PRRSウイルスによる感染に対する免疫防御を生み出すのに有効な量の請求項1から9のいずれかに記載の組成物および獣医学的使用に許容できる担体を含むPRRSウイルスによる感染からブタを保護するためのワクチン。
【請求項11】
PRRSウイルスによる感染からブタを保護する方法であって、PRRSウイルスによる感染に対する免疫防御を生み出すのに有効な量の請求項10に記載のワクチンを前記動物に接種するステップを含む方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の組成物を含む、形質移入された宿主細胞。
【請求項13】
遺伝的に改変された北米型PRRSウイルスを作製する方法であって、
a)PRRSウイルスをコードする感染性RNA分子をコードするDNA配列に変異導入して、Eタンパク質中の保存されているシステインが非システイン残基に変更されている遺伝的に改変されたPRRSウイルスを産生するステップと、
b)PRRSウイルスの複製を支持できる宿主細胞に、前記遺伝的に改変された北米型PRRSウイルスを導入するステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記PRRSの複製を支持できる宿主細胞がMARC−145細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記PRRSの複製を支持できる宿主細胞が生きているブタの体内に含まれている、請求項13に記載の方法。

【図1】親cDNAクローンであるpCMV−S−P129(上部)または変異体cDNAクローンであるpCMV−S−P129−E−C54S(下部)を用いた形質移入の4日後(左)および5日後(右)におけるMARC−145細胞の細胞変性効果(CPE)を示す図である。
【図2】親ウイルスであるP129ウイルス(上部)および変異体であるP129−E−C54Sウイルス(下部)のプラーク形態を示す図である。MARC−145細胞の単層培養を感染させ、アガロースの上敷きで覆い、プラークが透明になるまでインキュベートし、ニュートラルレッドで染色してプラークを可視化した。変異体ウイルスプラークの方が小さく、中心により完全なCPEがあった。
【図3】PRRSウイルス北米型およびヨーロッパ型単離株由来のEタンパク質のアラインメントを示す図である。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−519594(P2008−519594A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540744(P2007−540744)
【出願日】平成17年11月2日(2005.11.2)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003366
【国際公開番号】WO2006/051396
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】