説明

変異体逆転写酵素および使用方法

本発明は、安定なMMLV逆転写酵素変異体の生成および特徴に関する。本発明はまた、MMLV逆転写酵素変異体を用いる方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、2005年8月10日出願の米国特許仮出願第60/707,019号の恩典を請求する。
【0002】
本発明は、安定性が増大された変異体逆転写酵素に関する。
【背景技術】
【0003】
レトロウイルス逆転写酵素の3つのプロトタイプ型が徹底的に研究されている。モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)(M−MLV)の逆転写酵素は、RNA依存性DNAポリメラーゼおよびRNase H活性を有する78kDaの単一のサブユニットを含有する。この酵素は、E.coliにおいて完全な活性型でクローニングされて発現されている(Prasad,V.R.,Reverse Transcriptase,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press,p.135(1993)に概説される)。ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)の逆転写酵素は、p66およびp51のサブユニットのヘテロ二量体であって、この小さい方のサブユニットは、タンパク質分解性の切断によって大きい方から誘導される。p66サブユニットは、RNA依存性DNAポリメラーゼおよびRNase Hドメインの両方を有するが、p51サブユニットは、DNAポリメラーゼドメインのみを有する。活性なHIVのp66/p51逆転写酵素は、E.coliを含む多数の発現宿主において首尾よくクローニングされかつ発現されている(Le Grice,S.F.J.,Reverse Transcriptase,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory press,p.163(1993)に概説される)。HIVのp66/p51ヘテロ二量体では、51−kDのサブユニットは触媒的に不活性であり、そして66−kDのサブユニットがDNAポリメラーゼおよびRNase H活性の両方を有する(Le Grice,S.F.J.,et al.,EMBO Journal 10:3905(1991);Hostomsky,Z.,et al.,J.Virol.66:3179(1992))。トリ肉腫白血病ウイルス(Avian Sarcoma−Leukosis Virus)(ASLV)逆転写酵素としては、限定はしないが、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)(RSV)の逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus)(AMV)の逆転写酵素、トリ(ニワトリ)赤芽球症ウイルス(Avian Erythroblastosis Virus)(AEV)ヘルパーウイルスMCAVの逆転写酵素、トリ骨髄球腫症ウイルス(Avian Myelocytomatosis Virus)MC29ヘルパーウイルスMCAVの逆転写酵素、トリ細網内皮症ウイルス(Avian Reticuloendotheliosis Virus)(REV−T)ヘルパーウイルスREV−Aの逆転写酵素、トリ肉腫ウイルス(Avian Sarcoma Virus)UR2のヘルパーウイルスUR2AVの逆転写酵素、トリ肉腫ウイルスY73のヘルパーウイルスYAVの逆転写酵素、ラウス随伴ウイルス(Rous Associated Virus)(RAV)の逆転写酵素、および骨髄芽球症随伴ウイルス(Myeloblastosis Associated Virus)(MAV)の逆転写酵素が挙げられるが、この逆転写酵素はまた2つのサブユニットであるα(約62kDa)およびβ(約94kDa)のヘテロ二量体であり、ここでαは、タンパク分解性切断によってβから誘導される(Prasad,V.R.,Reverse Transcriptase,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1993),p.135に概説される)。ASLV逆転写酵素は、2つのさらなる触媒的に活性な構造型であるββおよびαで存在し得る(Hizi,A.およびJoklik,W.K.,J.Biol.Chem.252:2281(1977))。沈降分析によって、αβおよびββは、二量体であって、そのα型は、単量体型と二量体型との間で平衡に存在するということが示唆される(Grandgenett,D.P.,et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 70:230(1973);Hizi,A.およびJoklik,W.K.,J.Biol.Chem.252:2281(1977);ならびにSoltis,D.A.およびSkalka,A.M.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85:3372(1988))。ASLVのαβおよびββ逆転写酵素は、同じタンパク質複合体において以下の3つの異なる活性を含むレトロウイルス逆転写酵素の唯一の公知の例である。DNAポリメラーゼ活性、RNase H活性、およびDNAエンドヌクレアーゼ(インテグラーゼ)活性(Skalka,A.M.,Reverse Transcriptase,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press(1993),p.193に概説される)。このα型は、インテグラーゼのドメインおよび活性を欠く。
【0004】
逆転写酵素媒介性逆転写によるmRNAからcDNAへの変換は、多くの遺伝子発現研究における本質的な工程である。しかし、逆転写を触媒する未改変の逆転写酵素(RT)の使用は、多数の理由のために不十分である。第一に、逆転写酵素は時に、逆転写酵素に存在する内因性のRNase H活性に主に起因して、第一鎖反応が開始されるかまたは終了される前にRNAテンプレートを分解する。さらに、mRNAテンプレート分子のミスプライミングは、cDNA第一鎖における誤りの誘導をもたらし得る。RTは、cDNA合成の間にHIVのRTについては3000〜6000ヌクレオチドあたり1つ、そしてAMVのRTについては1/10,000ヌクレオチドあたり1つの塩基エラーを組み込むことが実際に示されている(Berger,S.L.,et al.,Biochemistry 22:2365−2372(1983);Krug,M.S.,およびBerger,S.L.,Meth.Enzymol.152:316(1987);Berger et al.Meth.Enzymol.275:523(1996))。mRNA分子自体の二次構造が、第一鎖合成に対して抵抗性のいくつかのmRNAを作成し得る。逆転写酵素の有効性に影響する別の要因は、RNAが二次構造を形成する能力である。このような二次構造は、例えば、RNA分子の領域がハイブリダイズして二本鎖RNAを形成するのに十分な相補性を有する場合に、形成し得る。一般には、RNA二次構造の形成は、RNA分子を有する溶液の温度を上昇させることによって低減され得る。従って、多くの場合には、37℃を超える温度でRNAを逆転写させることが望ましい。しかし、当分野で公知の逆転写酵素は一般的に、37℃よりかなり高い温度(例えば、50℃)でインキュベートされると活性を失う。
【0005】
熱安定性逆転写酵素を操作するための試みの種々の方法が当分野で公知である。これらの方法は、逆転写酵素活性を含有する熱安定性DNAポリメラーゼを用いる工程(Shandilya et al.,Extremophiles,2004 8:243)と、熱安定性DNAポリメラーゼを変異誘発させてそれらの逆転写酵素活性を増大させる工程(米国特許第2002/0012970号)と、熱不安定性の逆転写酵素を変異誘発させる工程(米国特許第2004/0209276号)と、Taq/Tth DNAポリメラーゼの存在下でMg2+の代わりにMn2+を用いる工程(Myers et al.,Biochemistry 1991 30:7661)と、熱不安定性逆転写酵素とともにトレハロースのような添加物を用いる工程(Carninci et al.,1999 Proc Natl Acad Sci USA 95:520)とを含む。
【0006】
この分野における科学者はまた、DNAまたはRNAテンプレート上での重合化の忠実度を増大するための種々の酵素組成物および方法を試みてきた。例えば、Shevelev et al.,Nature Rev.Mol.Cell Biol.3:364(2002)は、3’−5’エキソヌクレアーゼに対する概説を提供している。Perrino et al.,PNAS,86:3085(1989)は、仔ウシ胸腺DNAポリメラーゼαの忠実度を増大するためのE.coliのDNAポリメラーゼIIIのεサブユニットの使用を報告している。Bakhanashvili,Eur.J.Biochem.268:2047(2001)は、p53タンパク質のプルーフリーディング活性を記載しており、そしてHuangらのOncogene,17:261(1998)は、p53がDNA複製の忠実度を増強する能力を記載している。Bakhanashvili,Oncogene,20:7635(2001)はまた、p53が、I型HIVの逆転写酵素によるDNA合成の忠実度を強化することを報告する。Hawkinsらは、長mRNA転写物からの全長cDNAの合成を記載する(2002,Biotechniques,34:768)。
【0007】
米国特許出願第2003/0198944A1号および米国特許第6,518,019号は、2つ以上の逆転写酵素(例えば、各々の逆転写酵素は、異なる転写停止部位を有する)および必要に応じて1つ以上のDNAポリメラーゼを含有する酵素混合物を提供する。米国特許出願第2002/0119465A1号は、変異体熱安定性DNAポリメラーゼおよび変異体逆転写酵素(例えば、変異体Taq DNAポリメラーゼおよび変異体MMLV−RT)を含む組成物を開示する。米国特許第6,485,917B1号および米国特許出願第2003/0077762号および欧州特許出願EP1 132470は、逆転写酵素活性を有する酵素および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するα型DNAポリメラーゼの存在下でcDNAを合成する方法を提供する。
【0008】
逆転写酵素のRNase H活性の除去は、RNAテンプレートのRNA分解の問題を排除し、そして逆転写の有効性を改善し得る(Gerard,G.F.,et al.,FOCUS 11(4):60(1989);Gerard,G.F.,et al.,FOCUS 14(3):91(1992))。しかし、このような逆転写酵素(「RNase H−」型)は、ミスプライミングおよびmRNA二次構造のさらなる問題には対応していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
当分野には安定性の増大を示す逆転写酵素の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱安定性MMLV逆転写酵素の構築および特徴付けに関する。本発明はまた、本明細書において記載される熱安定性MMLV逆転写酵素を用いる方法、およびこの酵素を含むキットに関する。
【0011】
本発明は、変異体MMLV逆転写酵素であって、以下のアミノ酸位置:E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つにある変異を含む、変異体MMLV逆転写酵素に関する。
【0012】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素であって、位置E69でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のアルギニンへの変異、位置W313でのトリプトファンのフェニルアラニンへの変異、位置L435でのロイシンのグリシンへの変異、位置L435でのロイシンのメチオニンへの変異、位置N454でのアスパラギンのリジンへの変異、位置N454でのアスパラギンのアルギニンへの変異、および位置M651でのメチオニンのロイシンへの変異のうちの少なくとも1つを含む、変異体MMLV逆転写酵素に関する。
【0013】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素であって、E302R/E69K/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G;E302R/E69K/N454K;E302R/W313F;およびE69K/E302R/W313F/L435G/N454K/D524Nからなる群より選択される、変異体MMLV逆転写酵素に関する。
【0014】
1実施形態では、変異体MMLV逆転写酵素はさらにC末端伸長を含む。
【0015】
別の実施形態では、C末端伸長は、RDRNKNNDRRKAKENE(配列番号1)である。
【0016】
別の実施形態では、変異体MMLV逆転写酵素はRNase H活性を欠く。
【0017】
別の実施形態では、この変異体MMLV逆転写酵素は、安定性の増大、正確性の増大、プロセッシビティー(processivity)の増大および特異性の増大のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0018】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素をコードする核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドであって、この逆転写酵素が、以下のアミノ酸位置:E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つが、ある変異を含む、単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0019】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、この逆転写酵素が、位置E69でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のアルギニンへの変異、位置W313でのトリプトファンのフェニルアラニンへの変異、位置L435でのロイシンのグリシンへの変異、位置L435でのロイシンのメチオニンへの変異、位置N454でのアスパラギンのリジンへの変異、位置N454でのアスパラギンのアルギニンへの変異、および位置M651でのメチオニンのロイシンへの変異のうちの少なくとも1つを含む、単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0020】
本発明はまた、単離されたポリヌクレオチドであって、E302R/E69K/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G;E302R/E69K/N454K;E302R/W313F;およびE69K/E302R/W313F/L435G/N454K/D524Nからなる群より選択される、変異体MMLV逆転写酵素をコードする核酸配列を含む、単離されたポリヌクレオチドに関する。
【0021】
1実施形態では、この単離されたポリヌクレオチドは、C末端伸長をさらにコードする。
【0022】
1実施形態では、上記C末端伸長は、RDRNKNNDRRKAKENE(配列番号1)である。
【0023】
本発明はまた、以下のアミノ酸位置:E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つが、ある変異を含む、変異体MMLV逆転写酵素を含む組成物に関する。
【0024】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素を含む組成物であって、この逆転写酵素が、位置E69でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のアルギニンへの変異、位置W313でのトリプトファンのフェニルアラニンへの変異、位置L435でのロイシンのグリシンへの変異、位置L435でのロイシンのメチオニンへの変異、位置N454でのアスパラギンのリジンへの変異、位置N454でのアスパラギンのアルギニンへの変異、および位置M651でのメチオニンのロイシンへの変異のうちの少なくとも1つを含む、組成物に関する。
【0025】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素を含む組成物であって、この変異体が、E302R/E69K/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G;E302R/E69K/N454K;E302R/W313F;およびE69K/E302R/W313F/L435G/N454K/D524Nからなる群より選択される、組成物に関する。
【0026】
1実施形態では、この組成物の変異体逆転写酵素はさらにC末端伸長を含む。
【0027】
別の実施形態では、このC末端伸長は、RDRNKNNDRRKAKENE(配列番号1)である。
【0028】
別の実施形態では、この変異体逆転写酵素はさらに、安定性の増大、正確性の増大、プロセッシビティーの増大、および特異性の増大のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0029】
別の実施形態では、この逆転写酵素はRNase H活性を欠く。
【0030】
別の実施形態では、この組成物は、真正細菌由来のεサブユニットをさらに含む。
【0031】
別の実施形態では、このεサブユニットは、大腸菌由来である。
【0032】
別の実施形態では、このεサブユニットは、大腸菌由来のε186である。
【0033】
別の実施形態では、この組成物は、ホルムアミド、ベタインまたはDMSOをさらに含む。
【0034】
本発明はまた、以下のアミノ酸位置:E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つが、ある変異を含む、変異体MMLV逆転写酵素と、そのパッケージング材料とを含む、キットを提供する。
【0035】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素であって、この逆転写酵素が、位置E69でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のリジンへの変異、位置E302でのグルタミン酸のアルギニンへの変異、位置W313でのトリプトファンのフェニルアラニンへの変異、位置L435でのロイシンのグリシンへの変異、位置L435でのロイシンのメチオニンへの変異、位置N454でのアスパラギンのリジンへの変異、位置N454でのアスパラギンのアルギニンへの変異、および位置M651でのメチオニンのロイシンへの変異のうちの少なくとも1つを含む、変異体MMLV逆転写酵素と、そのパッケージング材料とを含む、キットを提供する。
【0036】
本発明はまた、変異体MMLV逆転写酵素であって、この変異体が、E302R/E69K/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G/N454K;E302R/W313F/L435G;E302R/E69K/N454K;E302R/W313F;およびE69K/E302R/W313F/L435G/N454K/D524Nからなる群より選択される、変異体MMLV逆転写酵素と、そのパッケージング材料とを含む、キットを提供する。
【0037】
1実施形態では、このキットの変異体逆転写酵素はRNase H活性を欠く。
【0038】
別の実施形態では、このキットの変異体MMLV逆転写酵素は、C末端伸長をさらに含む。
【0039】
別の実施形態では、このC末端伸長は、RDRNKNNDRRKAKENE(配列番号1)である。
【0040】
別の実施形態では、このキットの変異体逆転写酵素は、安定性の増大、正確性の増大、プロセッシビティーの増大、および特異性の増大のうちの少なくとも1つをさらに含む。
【0041】
別の実施形態では、このキットは、真正細菌由来のεサブユニットをさらに含む。
【0042】
別の実施形態では、このεサブユニットは、Escherichia coli由来である。
【0043】
別の実施形態では、このεサブユニットは、Escherichia coli由来のε186である。
【0044】
別の実施形態では、このキットは、ホルムアミド、ベタインまたはDMSOをさらに含む。
【0045】
本発明はまた、cDNA合成のための方法であって、本発明の変異体逆転写酵素を準備する工程と;この変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させてcDNAを合成する工程とを含む、方法を提供する。
【0046】
本発明はまた、クローニングのための方法であって、本発明の変異体逆転写酵素を準備する工程と;この変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて合成cDNA産物を生成させる工程と、この合成されたcDNA産物をクローニングベクターに挿入する工程とを含む、方法を提供する。
【0047】
本発明はまた、RT−PCRのための方法であって、本発明の変異体逆転写酵素を準備する工程と;この変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させてこの核酸テンプレートを複製および増幅する工程とを含む、方法を提供する。
【0048】
1実施形態では、このRT−PCRは、エンドポイントRT−PCRを含む。
【0049】
別の実施形態では、このRT−PCRは、リアルタイムで行われる。
【0050】
本発明はまた、cDNAライブラリー構築のための方法であって、本発明の変異体逆転写酵素を準備する工程と;この変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて合成cDNA産物を生成させる工程と、この合成されたcDNA産物をベクターに挿入する工程とを含む、方法を提供する。
【0051】
本発明はまた、マイクロアレイを調製するための方法であって、本発明の変異体逆転写酵素を準備する工程と;この変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて合成cDNA産物を生成させる工程と、このcDNA産物を基板に結合させる工程とを含む、方法を提供する。
【0052】
(定義)
本明細書において用いる場合、「逆転写酵素活性(reverse transcriptase activity)」および「逆転写(reverse transcription)」とは、ある酵素が、RNA鎖をテンプレートとして利用して、DNA鎖(すなわち、相補的なDNAまたはcDNA)を合成する能力をいう。逆転写酵素活性は、例えば、実施例3に記載のように、適切な条件下、適切な緩衝液の存在下において、RNAテンプレートおよびデオキシヌクレオチドの存在下で、酵素をインキュベートすることによって測定され得る。
【0053】
本明細書において用いる場合、「逆転写酵素(RT)」とは、その最も広い意味では、本明細書において開示されるかまたは当分野で公知の方法によって測定した場合、逆転写酵素活性を示す任意の酵素をいうために用いられる。従って、本発明の「逆転写酵素(reverse transcriptase)」とは、レトロウイルス、他のウイルス由来の逆転写酵素、ならびに、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ、Tne DNAポリメラーゼ、Tma DNAポリメラーゼなどのような逆転写酵素活性を示すDNAポリメラーゼを含む。レトロウイルス由来のRTとしては、限定はしないが、モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)(M−MLV)のRT、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)のRT、トリ肉腫白血病ウイルス(Avian Sarcoma−Leukosis Virus)(ASLV)のRT、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)(RSV)のRT、トリ骨髄芽球症ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus)(AMV)のRT、トリ(ニワトリ)赤芽球症ウイルス(Avian Erythroblastosis Virus)(AEV)ヘルパーウイルスMCAVのRT、トリ骨髄球腫症ウイルス(Avian Myelocytomatosis Virus)MC29ヘルパーウイルスMCAVのRT、トリ細網内皮症ウイルス(Avian Reticuloendotheliosis Virus)(REV−T)ヘルパーウイルスREV−AのRT、トリ肉腫ウイルス(Avian Sarcoma Virus)UR2のヘルパーウイルスUR2AVのRT、トリ肉腫ウイルスY73のヘルパーウイルスYAVのRT、ラウス随伴ウイルス(Rous Associated Virus)(RAV)のRT、および骨髄芽球症随伴ウイルス(Myeloblastosis Associated Virus)(MAV)のRTが挙げられ、そして(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)米国特許出願第2003/0198944号に記載されるとおりである。概説については、例えば、Levin,1997,Cell,88:5−8;Brosius et al.,1995,Virus Genes 11:163−79を参照のこと。ウイルス由来の公知の逆転写酵素は、RNAテンプレートからDNA転写物を合成するためにプライマーを必要とする。逆転写酵素は、主にRNAをcDNAに転写するために用いられており、次いでこれがさらなる操作のためにベクターにクローニングされてもよいし、または種々の増幅方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、NASBA法、転写媒介性増幅(TMA)、または3SR法(self−sustained sequence replication)において用いられてもよい。
【0054】
本明細書において用いる場合、「逆転写活性(reverse transcription activity)」および「逆転写酵素活性(reverse transcriptase activity)」という用語は、交換可能に用いられ、ある酵素(例えば、逆転写酵素またはDNAポリメラーゼ)がRNA鎖をテンプレートとして利用してDNA鎖(すなわち、cDNA)を合成する能力をいう。RT活性を測定するための方法は、本明細書において以下に説明されており、そしてまた、当分野で周知である。例えば、Quan−T−RTアッセイシステムは、Amersham(Arlington Heights,I11.)から市販されており、そしてBosworth,et al.,Nature 1989,341:167−168に記載されている。
【0055】
本明細書において用いる場合、「増大した(increased)」逆転写酵素活性という用語は、その野性型と比較した、変異体酵素(例えば、変異体逆転写酵素)の逆転写酵素活性のレベルをいう。変異体酵素は、その逆転写酵素活性のレベル(本明細書において記載されるかまたは当分野で公知の方法によって測定した場合)が、その野性型よりも少なくとも10%以上大きい、例えば、少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%以上、または少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍もしくは10倍以上大きい場合、「増大した」逆転写酵素活性を有するといわれる。
【0056】
本発明の逆転写酵素とは、本明細書に記載の特性のうちの1つまたは組み合わせを有する任意の逆転写酵素を含む。このような特性としては、限定はしないが、安定性の増大、熱安定性の増強、RNase H活性の低下または除去、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性の低下、正確性の増大、プロセッシビティーの増大、特異性の増大および/または忠実度の増大が挙げられる。
【0057】
「相補的な(complementary)」とは、塩基対合を通じた、2つのポリヌクレオチド鎖の領域の間、または2つのヌクレオチドの間の配列相補性の広範な概念をいう。アデニンヌクレオチドが、チミンまたはウラシルであるヌクレオチドと特異的な水素結合(「塩基対合」)を形成し得ることが公知である。同様に、シトシンヌクレオチドは、グアニンヌクレオチドと塩基対合し得ることが公知である。
【0058】
本明細書において用いる場合、「変異(mutation)」とは、DNAによってコードされるアミノ酸配列を変化させる、または親のまたは野性型のDNA配列へ導入される変化をいい、これには、限定はしないが、置換、挿入、欠失、ポイントミューテーション、複数のヌクレオチドまたはアミノ酸の変異、転位(transposition)、逆位(inversion)、フレームシフト、ナンセンス変異、短縮、または、遺伝子もしくは遺伝子産物の野性型配列とはポリヌクレオチドもしくはタンパク質配列が異なる他の形態の異常が挙げられる。変異の結果としては、限定はしないが、親のDNAによってコードされるタンパク質に見出されない新規な特徴、特性、機能または形質の作成が挙げられ、これには、限定はしないが、N末端短縮、C末端短縮または化学的修飾が挙げられる。「変異(mutation)」はまた、N末端またはC末端の伸長を含む。
【0059】
本発明は、詳細には、変異体または修飾された逆転写酵素であって、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、10、12、15、20など)のアミノ酸が変異しており、これが、未変異または未修飾の逆転写酵素に比較して、酵素を核酸合成においてより安定にさせる逆転写酵素に関する。当業者によって理解されるとおり、特定されたアミノ酸のうちの1つ以上が、1つもしくは多数のアミノ酸残基を欠失しても、および/または1つもしくは多数のアミノ酸残基で置換されてもよい。好ましい態様では、アミノ酸のうち任意の1つ以上が、任意の1つ以上のアミノ酸残基、例えば、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr、および/またはValで置換されてもよい。
【0060】
本発明の逆転写酵素は、以下の特性のうちの2つ以上を有してもよい。(a)上昇した温度での安定性の増大または半減期の増大;(b)減少した、実質的に減少した、または検出不能なRNase H活性、(c)減少したまたは実質的に減少した末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性、(d)正確性の増大、(e)特異性の増大、(f)プロセッシビティーの増大、および/または(d)忠実度の増大。ある実施形態では、本発明の逆転写酵素は、上記で列挙される複数の特性を有してもよい(例えば、逆転写酵素は、熱安定性の増強、RNase H活性の減少、および正確性の増強を有し得る)。本発明の逆転写酵素は、以下の特性のうちの1つ以上を有してもよい。(a)上昇した温度での熱安定性の増大または半減期の増大;(b)減少した、実質的に減少した、または検出不能なRNase H活性、(c)減少したまたは実質的に減少した末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ活性、および/または(d)忠実度の増大。
【0061】
「野性型(wild−type)」という用語は、遺伝子または遺伝子産物であって、天然に存在する供給源から単離された場合、その遺伝子または遺伝子産物の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物をいう。対照的に、「改変された(modified)」または「変異体(mutant)」という用語は、野性型の遺伝子または遺伝子産物に比較した場合、変更された特徴を提示する遺伝子または遺伝子産物をいう。例えば、本発明における変異体DNAポリメラーゼは、減少したウラシル検出活性を示すDNAポリメラーゼである。
【0062】
本明細書において用いる場合、野性型酵素に比較した場合、「増大した(increased)」とは、10%より大きい(例えば、11%、12%、13%、14% 15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%以上)ことをいう。「増大した」とはまた、野性型酵素に比較した場合、少なくとも2倍より大きい(例えば、3、4、5、10、20、50、100、1000、10,000倍以上)ことをいう。
【0063】
本明細書において用いる場合、「安定な(stable)」とは、同一の変性条件に供された野性型酵素の活性に比較した場合、より高温(例えば、37℃より大きい(例えば、38、39、40、50、55、60、65、70、75、80、85℃以上)を含むがこれに限定されない変性条件のもとで、またはDMSOもしくはホルムアミドまたはベタインを含むがこれに限定されない、変性剤の存在下で、本明細書に規定されるような、増大した活性を示すことをいう。
【0064】
本明細書において用いる場合、「安定な(stable)」とは、本明細書に規定されるような「熱安定性な(の)(thermostable)」を含む。
【0065】
本明細書において用いる場合、「熱安定性な、熱安定性の」とは、熱による不活性化に抵抗性である酵素をいう。「熱安定性な(の)」とはまた、例えば、同様の活性を有する酵素の熱安定性でない型と比較した場合、熱に対して、好ましくは約38〜100℃の間、例えば、38、39、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100℃およびより好ましくは、約40〜80℃(例えば、40、41、42、43、44、45、50、55、60、65、70、75、80℃)程度の大きさの温度で、安定でかつ活性である酵素をいう。熱安定性は以下にさらに定義される。
【0066】
1実施形態では、本発明は、改変または変異した逆転写酵素であって、上昇した温度、すなわち37℃よりより大きい温度で、対応する未修飾のまたは未変異の逆転写酵素よりも大きい半減期を有する逆転写酵素活性を有する、改変または変異した逆転写酵素を提供する。ある実施形態では、本発明の逆転写酵素の半減期は、50℃で5分以上、そして好ましくは10分以上であってもよい。ある実施形態では、本発明の逆転写酵素は、約25分以上、好ましくは約50分以上、さらに好ましくは、約100分以上、そして最も好ましくは、約200分以上の半減期(例えば、50℃で)を有し得る。
【0067】
ある実施形態では、本発明の逆転写酵素は、約10分〜約200分、約10分〜約150分、約10分〜約100分、約10分〜約75分、約10分〜約50分、約10分〜約40分、約10分〜約30分、または約10分〜約20分という50℃での半減期を有し得る。
【0068】
本発明の変異または改変された逆転写酵素は、対応する未変異のまたは未修飾の逆転写酵素の逆転写酵素活性よりも55℃でより長い半減期を有する逆転写酵素活性(例えば、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性)を有し得る。55℃では、本発明の変異した、または修飾された逆転写酵素の逆転写酵素活性の半減期は、約2分より大きくても、約3分より大きくても、約4分より大きくても、約5分より大きくても、約6分より大きくても、約7分より大きくても、約8分より大きくても、約10分より大きくても、約15分より大きくても、約20分より大きくても、または約30分より大きくてもよい。55℃では、本発明の逆転写酵素の逆転写酵素活性の半減期は、約2分〜約60分、約2分〜約45分、約2分〜約30分、約2分〜約20分、約2分〜約15分、約2分〜約10分、約2分〜約8分、約2分〜約7分、約2分〜約6分、約2分〜約5分、約2分〜約4分、または約2分〜約3分であってもよい。
【0069】
本発明の逆転写酵素は、他の逆転写酵素よりも高い温度でより多くの生成物(例えば、全長生成物)を生成し得る。1態様では、全長生成物合成の比較は、異なる温度で行われる(例えば、1方の温度は低く、例えば、37℃〜50℃で、そして一方の温度は高く、例えば、50℃〜78℃で)が、全ての他の反応条件は類似または同じで維持する。生成される全長生成物の量は、当分野で周知の技術を用いて、例えば、第一の温度(例えば、37℃、38℃、39℃、40℃など)での逆転写酵素反応を行うこと、および生成される全長転写物の量を決定すること、第一の温度よりも高い温度(例えば、45℃、50℃、52.5℃、55℃など)で第二の逆転写酵素反応を行うこと、および生成される全長生成物の量を決定すること、および2つの温度で生成された量を比較することによって決定され得る。好都合な比較の形態は、第二(すなわち、上昇した)温度で生成される第一の温度での全長生成物の量の割合を決定することである。2つの反応物に用いられる反応条件(例えば、塩濃度、緩衝液濃度、pH、二価金属イオン濃度、ヌクレオシド三リン酸濃度、テンプレート濃度、逆転写酵素濃度、プライマー濃度、行われる反応時間の長さなど)は好ましくは、両方の反応に同じである。適切な反応条件としては、限定はしないが、約1nM〜約lμM、約100nM〜1μM、約300nM〜約750nM、または約400nM〜約600nMのテンプレート濃度、そして約1nM〜約1μM、約10nM〜500nM、約50nM〜約250nM、または約75nM〜約125nMの逆転写酵素濃度が挙げられる。逆転写酵素の濃度に対するテンプレートの濃度の比は、約100:1〜約1:1、約50:1〜約1:1、約25:1〜約1:1、約10:1〜約1:1、約5:1〜約1:1、または約2.5:1〜1:1であり得る。反応は、約5分〜約5時間、約10分〜約2.5時間、約30分〜約2時間、約45分〜約1.5時間、または約45分〜約1時間行われ得る。適切な反応時間は約1時間である。他の適切な反応条件は、慣用的な技術を用いて当業者によって決定され得、そしてこのような条件の例は下に提供される。
【0070】
上昇した温度で本発明の逆転写酵素によって生成した全長生成物の量を、低温で同じ逆転写酵素によって生成した全長生成物の量に比較した場合、高温では、本発明の逆転写酵素は、低温で生成された全長生成物の量の約25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、95%、100%以上生成され得る。ある場合には、本発明の逆転写酵素は、より低温で逆転写酵素によって生成された全長生成物の量よりも大きい高温での全長生成物の量を生成し得る(例えば、1%〜約100%以上)。1態様では、本発明の逆転写酵素は、より高温で作成される全長生成物の量に比較して、より低温で全長生成物のほぼ同じ量(例えば、25%以下の相違)を生成する。
【0071】
本発明の逆転写酵素は、ある量の全長生成物を合成する逆転写酵素であってもよく、50℃で合成されたこの全長生成物の量は、40℃で合成する全長生成物の量の10%以上(例えば、約10%〜約95%、約10%〜約80%、約10%〜約70%、約10%〜約60%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約10%〜約30%、または約10%〜約20%)である。ある実施形態では、本発明の逆転写酵素は、50℃で合成される全長生成物の量が、40℃で合成する全長生成物の量の50%以上(例えば、約50%〜約95%、約50%〜約80%、約50%〜約70%、または約50%〜約60%)である、逆転写酵素である。いくつかの実施形態では、本発明の逆転写酵素は、50℃で合成される全長生成物の量が、40℃で合成する全長生成物の量の75%以上(例えば、約75%〜約95%、約75%〜約90%、約75%〜約85%、または約75%〜約80%)である、逆転写酵素である。他の実施形態では、本発明の逆転写酵素は、50℃で合成される全長生成物の量が、40℃で合成する全長生成物の量の85%以上(例えば、約85%〜約95%、または約85%〜約90%)である、逆転写酵素である。
【0072】
本発明の逆転写酵素は、ある量の全長生成物であって、52.5℃で合成される全長生成物の量が、40℃で合成する全長生成物の量の10%以上(例えば、約10〜約30%、約10%〜約25%、約10%〜約20%、約10%〜約15%、約20%〜約60%、約20%〜約40%、約20%〜約30%、約30%〜約80%、約30%〜約60%、約30%〜約45%、約40%〜約90%、約40%〜約80%、約40%〜約60%、約40%〜約50%、約50%〜約90%、または約50%〜約70%)である量の全長生成物を合成する逆転写酵素であってもよい。ある実施形態では、52.5℃で合成される全長生成物の量は、40℃で合成する全長生成物の量の30%以上(例えば、約30%〜約70%、約30%〜約60%、約30%〜約50%、または約30%〜約40%)である。ある実施形態では、52.5℃で合成される全長生成物の量は、40℃で合成される全長生成物の量の50%以上(例えば、約50%〜約70%、約50%〜約65%、約50%〜約60%、または約50%〜約55%)である。
【0073】
本発明の逆転写酵素は、ある量の全長生成物であって、55℃で合成される全長生成物の量が、40℃で合成する全長生成物の量の1%以上(例えば、約1%〜約30%、約10%〜約25%、約1%〜約20%、約1%〜約15%、約1%〜約10%、または約1%〜約5%)である量の全長生成物を合成する逆転写酵素であってもよい。ある実施形態では、55℃で合成される全長生成物の量は、40℃で合成する全長生成物の量の5%以上(例えば、約5%〜約30%、約5%〜約25%、約5%〜約20%、約5%〜約15%、または約5%〜約10%)である。ある実施形態では、55℃で合成される全長生成物の量は、40℃で合成する全長生成物の量の10%以上(例えば、約10%〜約30%、約10%〜約〜約25%、約10%〜約20%、約10%〜約15%、約20%〜約60%、約20%〜約40%、約20%〜約30%、約30%〜約80%、約30%〜約60%、約30%〜約45%、約40%〜約90%、約40%〜約80%、約40%〜約60%、約40%〜約50%、約50%〜約90%、または約50%〜約70%)である。
【0074】
別の態様では、本発明の逆転写酵素は、対応する非変異または未改変の逆転写酵素(例えば、コントロールの逆転写酵素)と比較して、1つまたは多数の上昇した温度(代表的には40℃〜78℃)で、より多くの核酸生成物(例えば、cDNA)および好ましくはより多くの全長生成物を生成し得る。このような比較は代表的には、同様のまたは同じ反応条件下で行い、そしてコントロールの逆転写酵素によって合成される生成物の量を、本発明の逆転写酵素によって合成された生成物の量に比較する。好ましくは、本発明の逆転写酵素は、同じ反応条件および温度のもとで、対応するコントロールの逆転写酵素に比較して、少なくとも約5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、または少なくとも200%多くの生成物または全長生成物を生成する。本発明の逆転写酵素は好ましくは、同じ反応条件およびインキュベーション温度のもとで、コントロールの逆転写酵素に比較して、約10%〜約200%、約25%〜約200%、約50%〜約200%、約75%〜約200%、または約100%〜約200%多くの生成物または全長生成物を生成する。本発明の逆転写酵素は好ましくは、同じ反応条件および温度のもとで、コントロールの逆転写酵素(例えば、対応する未変異または未修飾の逆転写酵素)に比較して、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、少なくとも200倍、少なくとも300倍、少なくとも400倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも5,000倍、または少なくとも10,000倍多くの生成物または全長生成物を生成する。本発明の逆転写酵素は好ましくは、同じ反応条件および温度のもとで、コントロールの逆転写酵素よりも、2〜10,000倍、5〜10,000倍、10〜5,000倍、50〜5,000倍、50〜500倍、2〜500倍、5〜500倍、5〜200倍、5〜100倍、または5〜75倍多くの生成物または全長生成物を生成する。
【0075】
1態様では、本発明の逆転写酵素は、50℃で、コントロールの逆転写酵素(これは好ましくは対応する野性型逆転写酵素である)よりも、少なくとも25%以上、より好ましくは少なくとも50%以上、そしてより好ましくは少なくとも100%以上の核酸生成物または全長生成物を生成する。別の態様では、52.5℃で、本発明の逆転写酵素は、コントロールの逆転写酵素に比較して少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍の量の核酸生成物または全長生成物を生成する。別の態様では、55℃で、本発明の逆転写酵素は、コントロールの逆転写酵素に比較して、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも15倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも50倍、少なくとも75倍、少なくとも100倍の量の核酸生成物または全長生成物を生成する。このような比較は好ましくは、同じ反応条件および温度のもとで行われる。
【0076】
本発明の改変または変異された逆転写酵素は、対応する未修飾または未変異の逆転写酵素に比較した場合、上昇した温度で熱安定性の増大を有し得る。それらは、RNAテンプレートの有無において、熱安定性の増大を示し得る。ある場合には、本発明の逆転写酵素は、RNAテンプレートの有無に関わらず、熱安定性の増大を示し得る。当業者は、逆転写酵素が代表的には、RNAテンプレートの存在下において、より熱安定性であるということを理解する。熱安定性の増大は、対応する未改変または未変異の逆転写酵素のパラメーターに対して、本発明における修飾されるかまたは変異された逆転写酵素の適切なパラメーターを比較することによって測定され得る。比較するための適切なパラメーターとしては、限定はしないが、同じ温度で対応する未修飾または未変異の逆転写酵素によって合成される生成物および/または全長生成物の量に比較した、上昇した温度で修飾または変異された逆転写酵素によって合成される生成物および/または全長生成物の量、ならびに/あるいは対応する未修飾または未変異の逆転写酵素の半減期に比較した、上昇した温度での修飾または変異された逆転写酵素の上昇した温度での逆転写酵素活性の半減期が挙げられる。
【0077】
本発明の修飾されるかまたは変異された逆転写酵素は、例えば、対応する未変異のまたは未修飾の逆転写酵素に比較して、50℃で少なくとも約1.5倍(例えば、約1.5倍〜約100倍、約1.5倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、約1.5倍〜約10倍)という熱安定性の増大を有してもよい。本発明の逆転写酵素は、例えば、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、50℃で少なくとも約10倍(例えば、約10倍〜約100倍、約10倍〜約50倍、約10倍〜約25倍、または約10倍〜約15倍)という熱安定性の増大を有してもよい。本発明の逆転写酵素は、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、50℃で少なくとも約25倍(例えば、約25倍〜約100倍、約25倍〜約75倍、約25倍〜約50倍、または約25倍〜約35倍)という熱安定性の増大を有してもよい。
【0078】
本発明はまた、改変されたまたは変異された熱安定性の逆転写酵素であって、例えば、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、52.5℃で約1.5倍(例えば、約1.5倍〜約100倍、約1.5倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約10倍)という熱安定性の増大を有する逆転写酵素を意図する。本発明の逆転写酵素は、例えば、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、52.5℃で少なくとも約10倍(例えば、約10倍〜約100倍、約10倍〜約50倍、約10倍〜約25倍、または約10倍〜約15倍)という熱安定性の増大を有してもよい。本発明の逆転写酵素は、例えば、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、52.5℃で少なくとも約25倍(例えば、約25倍〜約100倍、約25倍〜約75倍、約25倍〜約50倍、または約25倍〜約35倍)という熱安定性の増大を有してもよい。
【0079】
他の実施形態では、本発明は、逆転写酵素であって、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、55℃で約1.5倍より大きい(例えば、約1.5倍〜約100倍、約1.5倍〜約50倍、約1.5倍〜約25倍、または約1.5倍〜約10倍)という熱安定性の増大を有する逆転写酵素を提供する。ある実施形態では、本発明の逆転写酵素は、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、55℃で少なくとも約10倍(例えば、約10倍〜約100倍、約10倍〜約50倍、約10倍〜約25倍、または約10倍〜約15倍)という熱安定性の増大を有してもよい。ある実施形態では、本発明の逆転写酵素は、対応する未変異のまたは未改変の逆転写酵素に比較して、55℃で少なくとも約25倍(例えば、約25倍〜約100倍、約25倍〜約75倍、約25倍〜約50倍、または約25倍〜約35倍)という熱安定性の増大を有してもよい。
【0080】
本発明のこの態様に従う逆転写酵素に適した核酸テンプレートとしては、任意の核酸分子または核酸分子の集団(好ましくは、RNAそして最も好ましくはmRNA)、特に細胞または組織由来のものが挙げられる。特定の態様では、mRNA分子の集団(代表的には、特定の細胞または組織タイプから得られる、多数の異なるmRNA分子)を用いて、本発明に従ってcDNAライブラリーを作製する。核酸テンプレートの細胞供給源の例としては、細菌細胞、真菌細胞、植物細胞および動物細胞が挙げられる。
【0081】
本明細書において用いる場合、「C末端伸長(C−terminal extension)」とは、ランダム配列のペプチドテール(peptide tail)の付加をいう。C末端伸長は好ましくは、1〜500個のアミノ酸、より好ましくは1〜100個のアミノ酸、そして最も好ましくは2〜50アミノ酸である。
【0082】
本明細書において用いる場合、「ランダム(random)」とは、アミノ酸配列に関して、その配列の各々のアミノ酸が等しい出現確率を有するアミノ酸配列を意味する。
【0083】
本明細書において用いる場合、「RNase H活性(RNase H activity)」とは、2〜9塩基長である5’リン酸塩終止オリゴヌクレオチドを生成するためのDNA−RNAハイブリッドのRNAのエンドリボヌクレアーゼ分解をいう。RNase H活性とは、一本鎖核酸、二重鎖DNAまたは二本鎖RNAの分解は含まない。
【0084】
本明細書において用いる場合、「RNase H活性を実質的に欠く(substantially lacks RNase H activity)」という句は、野性型酵素の活性の10%、5%、1%、0.5%、または0.1%未満を有することを意味する。「RNase H活性を欠く(lacking RNase H activity)」という句は、検出不能なRNase H活性を有するか、または野性型酵素のRNase H活性の約1%、0.5%、または0.1%未満を有することを意味する。
【0085】
RNase H活性が「低下した(reduced)」酵素とは、この酵素が、RNase H活性を含有する対応する野性型酵素のRNase H活性の50%未満、例えば、40%未満、30%、または25%未満、20%、より好ましくは15%未満、10%未満、または7.5%未満、そして最も好ましくは5%未満または2%未満を有することを意味する。酵素のRNase H活性は、種々のアッセイによって、例えば、その全ての開示が参照によって本明細書に全体に組み込まれる、米国特許第5,405,776号;同第6,063,608号;同第5,244,797号;および同第5,668,005号において、Kotewicz,M.L.,et al.,Nucl.Acids Res.16:265(1988)およびGerard,G.F.,et al.,FOCUS 14(5):91(1992)において記載されるアッセイによって決定され得る。
【0086】
本明細書において用いる場合、「プロセッシビティー(processivity)」とは、核酸を修飾する酵素、例えば逆転写酵素核酸が、テンプレートまたは基板に結合したまま残り、そして複数の修飾反応を行う能力をいう。「修飾反応、改変反応(modification reactions)」とは、限定はしないが、合成を含む。「プロセッシビティー」とはまた、核酸を修飾する酵素、例えば逆転写酵素が、成長しているDNA鎖からの酵素の解離を中断することなく一連の工程を行う能力もいう。「プロセッシビティー」は、核酸を修飾する酵素の性質、核酸テンプレートの配列、および反応条件、例えば、塩濃度、温度または特定のタンパク質の存在に依存し得る。
【0087】
本明細書において用いる場合、「プロセッシビティーの増大(increased processivity)」とは、野性型の逆転写酵素に比較した場合、5〜10%の増大、好ましくは10〜50%、より好ましくは50〜100%以上の増大をいう。プロセッシビティーおよびプロセッシビティーの増大は、Malboeuf et al.,2001,Biotechniques 30:1074に記載されるように測定され得る。
【0088】
本明細書において用いる場合、「正確性(accuracy)」とは、本明細書において下に規定される「忠実度(fidelity)」をいう。正確性または忠実度は、その全体が本明細書において参照によって組み込まれる、米国特許出願第60/559,810号および同第11,100,183号に記載されるとおり測定され得る。
【0089】
本明細書において用いる場合、「特異性(specificity)」とは、同一の条件下で行う野性型逆転写酵素によるミスプライミングの量に比較して、より高温で反応が行われる場合の、逆転写酵素によるミスプライミングの量の減少をいう。特異性は、Mizuno Y,et al.,Nucleic Acids Research,1999,27:1345−1349に記載のとおり測定され得る。
【0090】
本明細書において用いる場合、「減少する、低下する(decrease)」とは、同一の条件下で行う野性型酵素よりも、少なくとも1倍以上、例えば、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、1000倍以上小さいことをいう。「減少する、低下する」とはまた、同一の条件下で行う野性型酵素よりも少なくとも5%以上、(例えば、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、99、100%)小さいことをいう。
【0091】
「忠実度(fidelity)」という用語は、本明細書において用いる場合、逆転写酵素またはテンプレート依存性のDNAポリメラーゼ、例えば、RNA依存性またはDNA依存性のDNAポリメラーゼによるヌクレオチド合成の正確性をいう。逆転写酵素を含むDNAポリメラーゼの忠実度は、誤りの率(error rate)(不正確なヌクレオチド、すなわち、テンプレート依存性の方式で組み込まれないヌクレオチドを組み込む頻度)によって測定される。DNA重合化の正確性または忠実度は、ポリメラーゼ活性および3’−5’エキソヌクレアーゼ活性の両方によって維持される。「高い忠実度(high fidelity)」という用語は、1塩基対あたり33×10-6以下という誤り率をいう(全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Roberts J.D.et al.,Science,1988,242:1171−1173を参照のこと)。DNAポリメラーゼの忠実度または誤り率は、当分野で公知のアッセイを用いて測定され得る(例えば、Lundburg et al.,1991 Gene,108:1−6を参照のこと)。
【0092】
「忠実度の増大(または増強または上昇)(increased(or enhanced or higher)fidelity)」を有する逆転写酵素は、その野性型または未修飾型に比較して忠実度のなんらかの増大をともなう、すなわち、所与の長さの任意の所与の核酸分子の合成の間に誤って組み込まれるヌクレオチドの数が減少している、変異体または改変された逆転写酵素(逆転写酵素活性を示すDNAポリメラーゼを含む)として規定される。好ましくは、所与の長さの任意の所与の核酸分子の合成の間に誤って組み込まれるヌクレオチドの数の1.5〜1,000倍(より好ましくは2〜100倍、より好ましくは3〜10倍)の減少がある。例えば、変異した逆転写酵素は、1000塩基のサイズのセグメントで10ヌクレオチドを誤って組み込む未変異の逆転写酵素に比較して、同じサイズの1000塩基の核酸分子セグメントの合成において1ヌクレオチドを誤って組み込み得る。このような変異体逆転写酵素は、忠実度において10倍の増大を有するといわれる。
【0093】
本明細書において用いる場合、「核酸(nucleic acid)」、「ポリヌクレオチド(polynucleotide)」および「オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)」という用語は、検出されるべきプライマー、プローブおよびオリゴマーのフラグメントをいい、そしてポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含有する)に、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有する)に、そして任意の他のタイプのポリヌクレオチドであって、プリンもしくはピリミジン塩基のN−グリコシドであるか、または修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基(脱塩基部位を含む)であるポリヌクレオチドに一般的である。「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語の間で長さの区別は意図しておらず、これらの用語は交換可能に用いられる。これらの用語は、分子の一次構造のみをいう。従って、これらの用語は、二本鎖および一本鎖のDNA、ならびに二本鎖および一本鎖のRNAを含む。
【0094】
本明細書において用いる場合、「ヌクレオチド(nucleotide)」とは、塩基−糖−リン酸塩の組み合わせをいう。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)の単量体単位であり、そしてデオキシリボヌクレオチドは、DNAポリメラーゼによってDNAに「組み込まれる(incorporated)」。ヌクレオチドという用語は、限定はしないが、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、例えば、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTP、またはその誘導体を含む。このような誘導体としては、例えば、[aS]dATP、7−デアザ(deaza)−dGTP、7−デアザ−dATP、アミノ−アリルdNTP、蛍光標識dNTPが挙げられ、これにはCy3、Cy5標識dNTPが挙げられる。本明細書において用いる場合、ヌクレオチドという用語はまた、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTPおよび非環式ヌクレオチド)およびそれらの誘導体(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Martinez et al.,1999,Nucl.Acids Res.27:1271−1274に記載される)を指す。
【0095】
本明細書において用いる場合、「プライマー(primer)」とは、少なくとも3つのヌクレオチドを含むデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドの配列をいう。一般には、このプライマーは、約3〜約100ヌクレオチド、好ましくは約5〜約50ヌクレオチド、そしてさらにより好ましくは約5〜約25ヌクレオチドを含む。50ヌクレオチド未満を有するプライマーはまた本明細書において、「オリゴヌクレオチドプライマー(oligonucleotide primer)」とも呼ばれる。本発明のプライマーは、例えば、ヌクレオチドの段階的な付加によって、合成的に生成されてもよいし、または、他のヌクレオチド酸分子のフラグメント、一部、部分または伸長生成物であってもよい。「プライマー(primer)」という用語は、任意の長さのヌクレオチドであってその最も一般的な意味で用いられ、増幅目的で用いられた場合、RNAまたはDNAテンプレートのいずれかを用いて、DNAポリメラーゼによるDNA合成の開始のための遊離の3’ヒドロキシル基を提供し得る。DNA合成は、プライマーの伸長を生じて、プライマーがハイブリダイズする核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸長生成物を生成する。
【0096】
本明細書において用いる場合、「相同性、ホモロジー(homology)」という用語は、アルゴリズムのコンピューター実行によって行われ得る、配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸のいずれか)の最適のアラインメントをいう。例えば、ポリヌクレオチドに関して「相同性(homology)」とは、デフォールトパラメーターを用いるBLASTNバージョン2.0での分析によって決定され得る。ポリペプチド(すなわち、アミノ酸)に関して「相同性」とは、デフォールトパラメーターを用いるBLASTPバージョン2.2のようなプログラムを用いて決定され得、ここでは比較されるポリペプチドまたはフラグメントを整列して、それらの間のアミノ酸の同一性または類似性の程度を決定する。アミノ酸「相同性(homology)」とは、保存的置換、すなわち、同様の特徴の別のアミノ酸によってポリペプチド中の所与のアミノ酸を置換する置換を含むことが理解される。代表的には、保存的置換ととられるのは、以下の置換である。脂肪族アミノ酸、例えば、Ala、Val、LeuおよびIleの別の脂肪族アミノ酸での置換;SerのThrでの置換、または逆も同様;酸性残基、例えば、AspまたはGluの別の酸性残基での置換;AsnまたはGlnのようなアミド基を保有する残基の、アミド基を保有する別の残基での置換;塩基性残基、例えば、LysまたはArgの別の塩基性残基での置換;ならびに芳香族残基、例えばPheまたはTyrの別の芳香族残基での置換。それぞれ、別のアミノ酸配列もしくは別の核酸配列に対して少なくとも50%の相同性を含む、ポリペプチド配列(すなわち、アミノ酸配列)またはポリ核酸配列は、50%、または50%を超える、例えば、60%、70%、80%、90%または100%(すなわち同一)の相同性を含む。
【0097】
「E.coliのDNAポリメラーゼIIIホロ酵素(E.coli DNA polymerase III holoenzyme)」という用語は、例えば、Kelman,Z.&O’Donnell,M.(1995).Annu.Rev.Biochem.64,171200(全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されるような、2つの触媒コア、2つのスライドクランプおよびクランプローダーでアセンブルされる10個のサブユニットから構成されるE.coliのポリメラーゼIIIホロ酵素をいう。
【0098】
本発明による「イプシロン(ε)サブユニット(epsilon(ε)subunit)」という用語は、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有するεサブユニットをいう。εサブユニットは、任意の真正細菌由来、例えば、E.coli由来、または他の生物体由来であってもよい。E.coliのDNAポリメラーゼIIIホロ酵素のイプシロン(ε)サブユニットは、ホロ酵素の3’−5’エキソヌクレアーゼであって、α(ポリメラーゼユニット)およびθ(機能は未知)サブユニットと相互作用する(例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Fijalkowska et al.,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:2856−2861を参照のこと)。E.coliのDNAポリメラーゼIIIホロ酵素のイプシロン(ε)サブユニット(図9を参照のこと)は、dnaQ遺伝子によってコードされる(図9を参照のこと)。本発明のεサブユニットはまた、図9に提示される配列に対して少なくとも50%相同性(例えば、60%、70%、80%、90%、または同一)である野性型ポリペプチドを含み、そして3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を含有する。本発明によるイプシロン(ε)サブユニットはさらに、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を依然として含有する変異体イプシロン(ε)サブユニットを含む。このような変異体εは、野性型εサブユニットに対して、欠失(例えば、短縮)、置換、ポイントミューテーション、複数のアミノ酸の変異、または挿入を含んでもよい。例えば、本発明によって有用な短縮εは、例えば、全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Hamdan S.et al.,Biochemistry 2002,41:5266−5275に開示されるとおりであり得る。
【0099】
本明細書において用いる場合、「ε186(epsilon 186)」とは、前出のHamdanらに開示されるような、εサブユニット(dnaQのコドン2−186)のN末端ドメインをいう。
【0100】
「θεサブユニット複合体(θε subunit complex)」または「θεl86サブユニット複合体(θεl86 subunit complex)」という用語は、E.coliのDNAポリメラーゼIIIホロ酵素のθサブユニットと組み合わせた、E.coliのDNAポリメラーゼIIIホロ酵素のεサブユニットまたは変異体εサブユニット(例えば、ε186)の組み合わせをいう。
【0101】
本明細書において用いる場合、「真正細菌(eubacteria)」という用語は、原核生物である単細胞性生物体をいう(例えば、Garrity,et al.,2001,Taxonomic outline of the procaryotic genera.Bergey’s Manual(登録商標)of Systematic Bacteriology,第2版.Release 1.0,April 2001において、そしてWerren,1997,Annual Review of Entomology 42:587−609において記載されるとおり)。真正細菌としては、以下の属が挙げられる。エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、プロテウス属(Proteus)、ミクロコッカス属(Micrococcus)、アシネトバクター属(Acinetobacter)、クレブシエラ属(Klebsiella)、レジオネラ属(Legionella)、ナイセリア属(Neisseria)、ボルデテラ属(Bordetella)、ビブリオ属(Vibrio)、スタヒロコッカス(ブドウ球菌)属(Staphylococcus)、乳酸桿菌属(Lactobaccilus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、バシラス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacteria)、マイコバクテリウム属(Mycobacteria)、クロストリジウム属(Clostridium)、など(Kandler,O.,Zbl.Bakt.Hyg.,IAbt.Orig.C3,149 160(1982)を参照のこと)、ならびに真正細菌の主な小集団、例えば、Aquifex(極めて好熱性の化学合成無機栄養生物)、Thermotoga、(極めて好熱性の化学合成有機栄養生物)、Chloroflexus(好熱性の光合成細菌)、Deinococcus(放射線耐性菌)、Thermus(好熱性の化学合成従属栄養生物)、スピロヘータ(Spirochaetes)(鞭毛がある螺旋状の細菌)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)(グラム陰性でかつ紫色の光合成細菌)、シアノバクテリア(Cyanobacteria)(青−緑色の光合成細菌)、グラム陽性(グラム陽性の細菌)、バクテロイデス属/フラボバクテリウム属(Bacteroides/Flavobacterium)(滑走運動性のある偏性嫌気性生物/偏性好気性生物)、Chlorobium(光独立栄養のイオウ酸化生物)、プランクトミセス(Planctomyces)(ペプチドグリカンのない出芽細菌)、クラミジア(Chlamydia)(細胞内寄生生物)。真正細菌としては、全ての熱安定性の細菌が挙げられる。
【0102】
本明細書において用いる場合、「合成(synthesis)」とは、テンプレートに依存した方式で、ポリヌクレオチドの新規な鎖を作製するか、または既存のポリヌクレオチド(すなわち、DNAまたはRNA)を伸長させるための任意のインビトロの方法をいう。本発明による合成とは、ポリメラーゼの使用によってポリヌクレオチドテンプレート配列のコピーの数を増大する、増幅を含んでもよい。ポリヌクレオチド合成によって、ヌクレオチドのポリヌクレオチド(すなわちプライマー)への組み込みが生じ、これによって、ポリヌクレオチドテンプレートに相補的な新規なポリヌクレオチド分子が形成される。この形成されたポリヌクレオチド分子およびそのテンプレートは、さらなるポリヌクレオチド分子を合成するためのテンプレートとして用いられ得る。
【0103】
本明細書において用いる場合、「増幅産物、増幅生成物(amplified product)」とは、増幅反応の終わりの一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチド集団をいう。この増幅生成物は、増幅反応の間にポリヌクレオチドテンプレートを用いてDNAポリメラーゼによって合成された、もとのポリヌクレオチドテンプレートおよびポリヌクレオチドを含む。好ましくは増幅された生成物は、逆転写酵素および/またはDNAポリメラーゼによって生成される。
【0104】
本明細書において用いる場合、「ポリヌクレオチドテンプレート(polynucleotide template)」または「標的ポリヌクレオチドテンプレート(target polynucleotide template)」とは、テンプレートに依存した方式でDNAを合成するDNAポリメラーゼのためのテンプレートとして働く、ポリヌクレオチド(RNAまたはDNA)をいう。本明細書において用いる場合、この「増幅領域(amplified region)」とは、逆転写酵素によって合成されるか、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅されるかのいずれかによって合成されるべきポリヌクレオチドの領域である。例えば、ポリヌクレオチドテンプレートの増幅領域は、2つのPCRプライマーが相補的である2つの配列の間に存在し得る。
【0105】
本明細書において用いる場合、「テンプレート依存性の方式(template dependent manner)」という用語は、プライマー分子(例えば、DNAポリメラーゼによるDNA合成)のテンプレート依存性の伸長を含むプロセスをいう。「テンプレート依存性の方式(template dependent manner)」とは、RNAまたはDNAのポリヌクレオチド合成をいい、このポリヌクレオチドの新規に合成された鎖の配列は、相補的な塩基対合の周知の規則によって決定される(例えば、Watson,J.D.et al.,:Molecular Biology of the Gene,第4版,W.A.Benjamin,Inc.,Menlo Park,CA(1987)を参照のこと)。
【0106】
本明細書において用いる場合、「ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)」(「PCR」)という用語は、K.B.Mullisの方法,例えば、米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、および同第4,965,188号(各々が参照によってその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるような、そして当分野で公知の任意の他の改善方法をいう。PCRとは、クローニングまたは精製なしに、ゲノムDNAの混合物中において標的配列のセグメントの濃度を増大するための方法である。標的配列を増幅するためのこのプロセスは代表的には、所望の標的配列を含むDNA混合物への大過剰の2つのオリゴヌクレオチドプライマーの導入、その後のDNAポリメラーゼの存在下でのサーマルサイクリングの正確な配列から構成される。この2つのプライマーは二本鎖標的配列のそれぞれの鎖に対して相補的である。増幅を達成するために、この混合物を変性し、次いでそのプライマーを標的分子内のそれらの相補的な配列にアニーリングする。アニーリング後、このプライマーをポリメラーゼで伸長させて、相補的な鎖の新規な対を形成する。変性、プライマーアニーリングおよびポリメラーゼ伸長の工程を、多数回繰り返して(すなわち、変性、アニーリングおよび伸長は、1つの「サイクル」を構成し;多数の「サイクル」であってもよい)、所望の標的配列の高濃度の増幅されたセグメントを得てもよい。所望の標的配列の増幅されたセグメントの長さは、お互いに対するプライマーの相対的な位置によって決定され、従って、この長さは、制御可能なパラメーターである。このプロセスの繰り返し態様のために、この方法は、「ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)」(本明細書において以降では「PCR」)と呼ばれる。標的配列の所望の増幅セグメントは、混合物中で優勢な(濃度に関して)配列となるので、それらは、「PCR増幅された(PCR amplified)」といわれる。
【0107】
本明細書において用いる場合、「RT−PCR」という用語は、RNA配列の複製および増幅をいう。この方法では、逆転写は、例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,322,770号に記載されるように、PCRに組み合わされる。RT−PCRでは、RNAテンプレートを酵素の逆転写酵素活性に起因してcDNAに変換し、次いで、同じまたは異なる酵素の重合化活性を用いて増幅する。安定な熱安定性または熱不安定性の逆転写酵素およびポリメラーゼが用いられ得る。
【0108】
本明細書で同定されるアミノ酸残基は、天然のL立体配置が好ましい。標準的なポリペプチド命名法、J.Biol.Chem.,243:3557−3559,1969を順守して、アミノ酸残基についての略号は以下の表1に示すとおりである。
【0109】
【表1】

【0110】
「ダブル・チューブRT−PCR(double tube RT−PCR)」または「2ステップRT−PCR(two step RT−PCR)」とは、RT工程を第一のチューブ中で行い、次いで、cDNAを増幅のために第二のチューブに移す反応をいう。従って、cDNA合成およびPCRは、2つの別のチューブ中で起こる。「シングル・チューブRT−PCR(single tube RT−PCR)」または「1ステップRT−PCR(one step RT−PCR)」とは、cDNA合成およびPCRの両方とも同じチューブで行う反応をいう。
【0111】
本明細書において用いる場合、「エンドポイントRT−PCR(end−point RT−PCR)」とは、PCR反応の開始時点でテンプレートが添加され、そしてその反応が多数のサイクルで、通常は20〜50サイクルで行われる、RT−PCRをいう。これが、検出されるか、および/または定量される増幅反応の最終生成物である。
【0112】
本明細書において用いる場合、「リアルタイムRT−PCR(real time RT−PCR)」または「定量的(quantitative)」または「QRT−PCR」とは、RT−PCR増幅の進行が、起こっているとおりに測定または検出されるRT−PCRプロセスをいう。リアルタイムRT−PCR技術では、シグナル(通常は蛍光)は生じたとおりにモニターされ、それらがバックグラウンドよりも大きくなり、反応がプラトーに達する前に記録される。
【0113】
本明細書において用いる場合、「リアルタイム(real−time)」という用語は、モニターされるか、測定されるかまたは観察される事象と同時に行われるものであって、かつそれを、モニターされるか、測定されるかまたは観察される事象の出現と、同時に、または効率的に、実施者に対して、モニタリング、測定または観察の結果を提供することをいう。従って、「リアルタイム」のアッセイまたは測定は、測定されたそして定量された結果、例えば、生成されたシグナルを含むだけでなく、これをリアルタイムで、すなわち、数時間、数分、数秒、数ミリ秒、数ナノ秒、数ピコ秒などで表現する。
【0114】
本明細書において用いる場合、「マイクロアレイ(microaray)」とは、基板と安定に会合される複数の核酸のメンバーをいう。「アレイ(array)」という用語は、「マイクロアレイ」という用語と交換可能に用いられるが、「マイクロアレイ」という用語を用いて、顕微鏡で可視であるというさらなる特性を有するアレイを規定する。
【0115】
本明細書において用いる場合、「顕微鏡で可視(viewable microscopically)」とは、解剖用または複合顕微鏡のステージにおくことが可能であって、顕微鏡の接眼レンズを用いて見ることができる少なくとも一部を有する対象物をいう。
【0116】
本明細書において用いる場合、「安定に会合した(stably associated)」とは、核酸ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件の下で変化しない基板上の位置との会合をいう。
【0117】
本発明は以下の配列を含む。
A.WT−MMLV−RT核酸配列(配列番号2)
B.MMLV−RT E69K核酸配列(配列番号3)
C.MMLV−RT E302K核酸配列(配列番号4)
D.MMLV−RT E302R核酸配列(配列番号5)
E.MMLV−RT W313F核酸配列(配列番号6)
F.MMLV−RT L435G核酸配列(配列番号7)
G.MMLV−RT L435M核酸配列(配列番号8)
H.MMLV−RT N454K核酸配列(配列番号9)
I.MMLV−RT N454R核酸配列(配列番号10)
J.MMLV−RT D524N核酸配列(配列番号11)
K.MMLV−RT M651L核酸配列(配列番号12)
L.MMLV−RT E302R/E69K/W313F/L435G/N454K核酸配列(配列番号13)
M.MMLV−RT E302R/W313F/L435G/N454K核酸配列(配列番号14)
N.MMLV−RT E302R/W313F/L435G核酸配列(配列番号15)
O.MMLV−RT E302R/E69K/N454K核酸配列(配列番号16)
P.MMLV−RT E302R/W313F核酸配列(配列番号17)
Q.MMLV−RT E302R/E69K/W313F/L435G/N454K/D524N核酸配列(配列番号18)
R.WT−MMLV−RTタンパク質配列(配列番号19)
S.MMLV−RT E69Kタンパク質配列(配列番号20)
T.MMLV−RT E302Kタンパク質配列(配列番号21)
U.MMLV−RT E302Rタンパク質配列(配列番号22)
V.MMLV−RT W313Fタンパク質配列(配列番号23)
W.MMLV−RT L435Gタンパク質配列(配列番号24)
X.MMLV−RT L435Mタンパク質配列(配列番号25)
Y.MMLV−RT N454Kタンパク質配列(配列番号26)
Z.MMLV−RT N454Rタンパク質配列(配列番号27)
AA.MMLV−RT D524Nタンパク質配列(配列番号28)
BB.MMLV−RT M651Lタンパク質配列(配列番号29)
CC.MMLV−RT E302R/E69K/W313F/L435G/N454Kタンパク質配列(配列番号30)
DD.MMLV−RT E302R/W313F/L435G/N454Kタンパク質配列(配列番号31)
EE.MMLV−RT E302R/W313F/L435Gタンパク質配列(配列番号32)
FF.MMLV−RT E302R/E69K/N454Kタンパク質配列(配列番号33)
GG.MMLV−RT E302R/W313Fタンパク質配列(配列番号34)
HH.MMLV−RT E302R/E69K/W313F/L435G/N454K/D524Nタンパク質配列(配列番号35)
図9は、E.coliのDNAポリメラーゼIIIホロ酵素(A)およびdnaQ遺伝子(B)のイプシロンサブユニット(ε)の配列を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0118】
本発明は、変異体逆転写酵素(RT)に関する。1実施形態では、この変異体RTは、野性型酵素に比較した場合、安定性、例えば、熱安定性の増大を示す。本発明の変異体RTは、cDNA合成、クローニング、cDNAライブラリーまたはマイクロアレイの生成およびRT−PCRに有用である。
【0119】
(I.逆転写酵素)
遺伝子発現の研究への1つの一般的なアプローチは、相補的DNA(cDNA)の生成である。レトロウイルスからのRNA依存性のDNAポリメラーゼ、いわゆる逆転写酵素(RT)の発見によって、逆転写反応が可能になり、ここではcDNAがRNAをテンプレートとして用いて合成される。RTの同定の結果として、mRNA分子を分析するための方法は、急速に進行した。逆転写酵素を用いるmRNA分子を分析するための方法はいまや、遺伝子発現および機能を研究するための必須の実験方法となっている。結果として、クローニングおよびPCR技術にあてはめられているこれらの方法はまた、生物学、医薬および農業を含む広範な種々の分野で不可欠の技術となっている。
【0120】
本発明は、以下からなる群より選択される逆転写酵素(RT)に関する。モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)(M−MLV)のRT、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)のRT、トリ肉腫白血病ウイルス(ASLV)のRT、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)(RSV)のRT、トリ骨髄芽球症ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus)(AMV)のRT、トリ(ニワトリ)赤芽球症ウイルス(Avian Erythroblastosis Virus)(AEV)ヘルパーウイルスMCAVのRT、トリ骨髄球腫症ウイルス(Avian Myelocytomatosis Virus)MC29ヘルパーウイルスMCAVのRT、トリ細網内皮症ウイルス(Avian Reticuloendotheliosis Virus)(REV−T)ヘルパーウイルスREV−AのRT、トリ肉腫ウイルス(Avian Sarcoma Virus)UR2のヘルパーウイルスUR2AVのRT、トリ肉腫ウイルスY73のヘルパーウイルスYAVのRT、ラウス随伴ウイルス(Rous Associated Virus)(RAV)のRT、および骨髄芽球症随伴ウイルス(Myeloblastosis Associated Virus)(MAV)のRT。
【0121】
本発明の組成物、方法およびキットにおける使用のための酵素としては、逆転写酵素活性を有する任意の酵素が挙げられる。このような酵素としては、限定はしないが、レトロウイルスの逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、B型肝炎逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルス逆転写酵素、E.coliのDNAポリメラーゼおよびクレノウフラグメント、Tth DNAポリメラーゼ、Taq DNAポリメラーゼ(Saiki,R.K.,et al.,Science 239:487−491(1988);米国特許第4,889,818号および同第4,965,188号)、Tne DNAポリメラーゼ(WO96/10640)、Tma DNAポリメラーゼ(米国特許第5,374,553号)、Carboxydothermus hydrogenoformans由来のC.Therm DNAポリメラーゼ(欧州特許第0921196A1号,Roche,Pleasanton,CA,カタログ番号2016338)、ThermoScript(Invitrogen,Carsbad,CA、カタログ番号11731−015)およびそれらの変異体、フラグメント、改変体または誘導体が挙げられる。当業者によって理解されるとおり、改変された逆転写酵素は、当分野で慣用的であってかつ周知である組み換えまたは遺伝子操作の技術によって得ることができる。変異体逆転写酵素は、例えば、部位特異的突然変異誘発またはランダム突然変異誘発によって目的の逆転写酵素をコードする遺伝子(単数または複数)を変異することによって得ることができる。このような変異は、ポイントミューテーション、欠失変異および挿入変異を含んでもよい。好ましくは、1つ以上のポイントミューテーション(例えば、1つ以上のアミノ酸の1つ以上の異なるアミノ酸での置換)を用いて、本発明の変異体逆転写酵素を構築する。逆転写酵素のフラグメントは、当分野で慣用的であってかつ周知である組み換え技術による欠失変異によって、または任意の多数の周知のタンパク質分解性酵素を用いる目的の逆転写酵素の酵素的な消化によって得ることができる。例えば、その全体が参照によって組み込まれる、米国特許出願第10/435,766号に記載されるような逆転写酵素活性を含有する変異体DNAポリメラーゼもやはり本発明に従って有用である。
【0122】
本発明の方法において有利に用いられ得る逆転写酵素活性を有するポリペプチドとしては限定はしないが、モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)(M−MLV)の逆転写酵素、ラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)(RSV)の逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus)(AMV)の逆転写酵素、ラウス随伴ウイルス(Rous−Associated Virus)(RAV)の逆転写酵素、骨髄芽球症随伴ウイルス(Myeloblastosis Associated Virus)(MAV)の逆転写酵素、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)の逆転写酵素、トリ肉腫白血病ウイルス(ASLV)の逆転写酵素、レトロウイルスの逆転写酵素、レトロトランスポゾン逆転写酵素、B型肝炎ウイルスの逆転写酵素、カリフラワーモザイクウイルスの逆転写酵素、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermotoga neopolitana(Tne)DNAポリメラーゼ、Thermotoga maritima(Tma)DNAポリメラーゼ、Thermococcus litoralis(TliまたはVENTRTM)DNAポリメラーゼ、Pyrococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、DEEPVENT(商標)、パイロコッカス(Pyrococcus)種GB−D DNAポリメラーゼ、Pyrococcus woesi(Pwo)のDNAポリメラーゼ、Bacillus sterothermophilus(Bst)のDNAポリメラーゼ、Bacillus caldophilus(Bca)のDNAポリメラーゼ、Sulfoloblus acidocaldarius(Sac)のDNAポリメラーゼ、Thermoplasma acidophilum(Tac)のDNAポリメラーゼ、Thermus flavus(Tfl/Tub)のDNAポリメラーゼ、Thermus ruber(Tru)のDNAポリメラーゼ、Thermus brockianus(DYNAZYME(商標))のDNAポリメラーゼ、Methanobacterium thermoautotrophicum(Mth)のDNAポリメラーゼ、およびそれらの変異体、改変体および誘導体が挙げられる。本発明はまた、残留逆転写酵素活性を有する細菌のDNAポリメラーゼ、例えばTaq DNAポリメラーゼを含む(説明については、例えば、Shadilya et al.,2004 Extremophiles,8:243を参照のこと)。
【0123】
本発明における使用に特に好ましいのは、RNase H活性が減少しているこれらの酵素の改変体である(すなわち、RNase H−酵素)。好ましくは、この酵素は、野性型または「RNase H+」酵素、例えば、野性型M−MLV逆転写酵素のRNase H活性の20%未満、より好ましくは15%、10%または5%未満、そして最も好ましくは2%未満を有する。任意の酵素のRNase H活性は、その全ての開示が参照によって本発明に詳細に組み込まれる、例えば、米国特許第5,244,797号;同第5,405,776号;同第5,668,005号;および同第6,063,608号に;Kotewicz,M.L.,et al.,Nucl.Acids Res.16:265(1988)に、そしてGerard,G.F.,et al.,FOCUS 14(5):91(1992)に記載されるアッセイのような種々のアッセイによって決定され得る。
【0124】
本発明における使用のために特に好ましいRNase H−逆転写酵素としては、限定はしないが、例えば、前に記載されたような、M−MLV H−逆転写酵素、RSV H−逆転写酵素、AMV H−逆転写酵素、RAV H−逆転写酵素、MAV H−逆転写酵素、およびHIV H−逆転写酵素が挙げられる(参照によって各々の全体が組み込まれる、米国特許第5,244,797号;同第5,405,776号;同第5,668,005号および同第6,063,608号;およびWO98/47912を参照のこと)。任意の酵素のRNase H活性は、種々のアッセイ、例えば、参照によってその全体の開示が本明細書に詳細に組み込まれる、米国特許第5,244,797号;同第5,405,776号;同第5,668,005号および同第6,063,608号に;Kotewicz,M.L.,et al.,Nucl.Acids Res.16:265(1988)に;そしてGerard,G.F.,et al.,FOCUS 14(5):91(1992)に記載されるアッセイなどによって決定され得る。しかし、RNase H活性が実質的に減少しているリボ核酸分子からDNA分子を生成し得る(すなわち、逆転写酵素活性を有する)任意の酵素が、本発明の組成物、方法およびキットにおいて等しく用いられ得るということが当業者に理解される。
【0125】
本発明における使用のための逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、商業的に、例えば、Invitrogen,Inc.(Carlsbad,CA)、Pharmacia(Piscataway,N J.)、Sigma(Saint Louis,Mo.)またはRoche Molecular System(Pleasanton,CA)から入手してもよい。あるいは、逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、当業者に周知である天然のタンパク質を単離および精製するための標準的な手順に従って、それらの天然のウイルス供給源または細菌供給源から単離され得る(例えば、Houts,G.E.,et al.,J.Virol.29:517(1979)を参照のこと)。さらに、逆転写酵素活性を有するポリペプチドは、当業者に周知である組み換えDNA技術によって調製され得る(例えば、Kotewicz,M.L.,et al.,Nucl.Acids Res.16:265(1988);Soltis,D.A.,およびSkalka,A.M.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:3372−3376(1988)を参照のこと)。上記の引用文献の全体的な教示は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0126】
RNase H活性が減少している酵素は、当分野で公知の方法によって、例えば、目的の逆転写酵素内のRNase Hドメインを変異することによって、好ましくは、上記されるような、例えば、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,063,608号に記載されるような、1つ以上のポイントミューテーション、1つ以上の欠失変異、および/または1つ以上の挿入変異によって、得てもよい。
【0127】
逆転写酵素活性を有する2つ以上の酵素を、単一の組成物、例えば同じ反応混合物中で用いてもよい。この方式で用いられる酵素は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2003/0198944A1号に記載されるとおり、テンプレート核酸に関して、別個の逆転写停止部位を有し得る。
【0128】
本発明の逆転写酵素活性を含む酵素はまた、変異体または改変された逆転写酵素を含んでもよく、この逆転写酵素では、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、例えば、国特許出願2003/0003452A1号に記載されるように、1つ以上のアミノ酸変化が、この酵素を核酸合成においてより正確に(高度に忠実に)させる。
【0129】
(εサブユニット)
本発明は、E.coliのDNAポリメラーゼIIIのθサブユニットおよびE.coliのDNAポリメラーゼIIIのεサブユニットとを含む複合体と組み合わせて本発明の逆転写酵素を提供する(例えば、Hamdan et al.,2002,Biochemistry,41:5266−5275を参照のこと)。このθサブユニットをまた、εサブユニットの任意の他の変異型、例えば、εサブユニットのε186短縮バージョンとともに用いて、この酵素の安定性を増大するか、ならびに/または逆転写酵素の正確性、特異性および/もしくはプロセッシビティーを改善してもよい。
【0130】
本発明の1実施形態では、変異体逆転写酵素は、θεサブユニット複合体と組み合わせて提供される。あるいは、変異体逆転写酵素は、θおよびεサブユニットの変異型、例えばε186を含む複合体と組み合わせて提供される。
【0131】
(変性剤および有機溶媒)
本発明はまた、限定はしないがホルムアミドおよびDMSOを含む変性剤または有機溶媒と組み合わせて逆転写酵素を提供する。
【0132】
本発明はまた、PCR増強因子、例えば、ベタインと組み合わせて逆転写酵素を提供する。
【0133】
(II.遺伝子組み換え−突然変異誘発)
変異体逆転写酵素を調製する好ましい方法は、遺伝子改変による(例えば、野性型逆転写酵素のDNA配列を改変することによる)。DNA配列のランダムな変異および標的化変異を可能にする多数の方法が当分野で公知である(例えば、Ausubel et.al.Short Protocols in Molecular Biology(1995)第3版.John Wiley & Sons,Inc.を参照のこと)。さらに、従来の方法およびPCRに基づく方法の両方を含む、部位特異的な突然変異誘発のための多数の市販のキットがある。例としては、GeneMorph Random突然変異誘発キット(mutagenesis kit)(Stratageneカタログ番号600550または200550)、Stratageneから入手可能なEXSITE(商標)PCR−Based Site−directed Mutagenesis Kit(カタログ番号200502)およびStratageneから入手のQUIKCHANGE(商標)Site−directed mutagenesis Kit(カタログ番号200518)、およびこれもStratageneから入手のCHAMELEON(登録商標)二本鎖部位特異的突然変異誘発キット(double−stranded Site−directed mutagenesis kit)(カタログ番号200509)が挙げられる。
【0134】
さらに、変異体逆転写酵素は、当業者に公知の方法論に従って、挿入変異または短縮(N末端、内部、またはC末端)によって生成され得る。
【0135】
当分野で公知の部位特異的な突然変異誘発の古い方法は、一本鎖DNAテンプレートの単離を可能にする、M13バクテリオファージベクターのようなベクターへの変異されるべき配列のサブクローニングに依拠する。これらの方法では、当業者は、突然変異誘発プライマー(すなわち、突然変異されるべき部位にアニーリングし得るが、突然変異されるべき部位で1つ以上のミスマッチしたヌクレオチドを保有し得るプライマー)を一本鎖テンプレートに対してアニーリングし、次いで、変異原性プライマーの3’末端から出発するテンプレートの相補体を重合する。次いで、得られた二重鎖を宿主細菌に形質転換して、所望の変異についてプラークをスクリーニングする。
【0136】
より近年では、部位特異的突然変異誘発は、一本鎖テンプレートを必要としないという利点を有するPCR方法を使用している。さらに、サブクローニングを必要としない方法が開発されている。PCRに基づく部位特異的な突然変異誘発が行われる場合、いくつかの問題が考慮されなければならない。第一に、これらの方法では、ポリメラーゼによって誘導される望ましくない変異の拡大を防ぐためにPCRサイクルの回数を減らすことが所望される。第二に、反応中に残存する変異されていない親の分子の数を減らすために選択を行わなければならない。第三に、単一のPCRプライマーセットの使用を可能にするためには、伸長した長PCR法(extended−length PCR)が好ましい。第四に、いくつかの熱安定性ポリメラーゼの非テンプレート依存性末端伸長活性のせいで、PCR生成された変異体生成物のブラント・エンド(平滑端)ライゲーション(blunt−end ligation)の前にエンドポリッシング工程(end−polishing)を組み込むことがしばしば必要である。
【0137】
本発明の有用な変異体逆転写酵素の単離のための非限定的な例は、実施例1および2に詳細に記載される。
【0138】
1つ以上の無作為に位置する変異を保有する変異体のパネルを生じるランダム突然変異誘発の方法が当分野には存在する。次いで、このようなパネルの変異体を、所望の特性、例えば、野性型逆転写酵素に対する安定性の増大を示すものについてスクリーニングしてもよい。ランダム突然変異誘発のための方法の例は、いわゆる「エラー・プローン(誤りがちな)PCR法(error−prone PCR method)」である。この名称が意味するとおり、この方法は、DNAポリメラーゼが高い忠実度の組み込みを支持しない条件下で所定の配列を増幅する。異なるDNAポリメラーゼについてエラー・プローン組み込みを促進する条件は変化するが、当業者は、所定の酵素についてこのような条件を決定し得る。増幅の忠実度における多くのDNAポリメラーゼについての重要な変数は、例えば、緩衝液中の二価金属イオンのタイプおよび濃度である。従って、マンガンイオンの使用および/またはマグネシウムもしくはマンガンイオン濃度の変動は、ポリメラーゼの誤り率に影響するように適用され得る。
【0139】
突然変異誘発によって生成される所望の変異体逆転写酵素のための遺伝子を配列決定して、変異の部位および数を特定してもよい。1つ以上の変異を含むそれらの変異体について、所定の変異の影響は、特定の変異体に担われる他の変異からの単離において、部位特異的な突然変異誘発による野性型遺伝子への特定された変異の導入によって評価され得る。次いで、このように生成した単一の変異体のスクリーニングアッセイによって、その変異単独の効果の決定が可能になる。
【0140】
野性型MMLV逆転写酵素のアミノ酸およびDNAコード配列は図8に示す。本発明に従って有用な変異体MMLV逆転写酵素を調製するための非限定的な詳細な手順は、実施例1および2に示す。
【0141】
本開示の恩典を有する当分野の当業者は、他の逆転写酵素由来の変異体逆転写酵素ポリメラーゼであって、限定はしないが、モロニーマウス白血病ウイルス(Moloney Murine Leukemia Virus)(M−MLV);ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)(HIV)の逆転写酵素、ならびにトリ肉腫白血病ウイルス(avian−Sarcoma−Leukosis Virus)(ASLV)の逆転写酵素であって、限定はしないがラウス肉腫ウイルス(Rous Sarcoma Virus)(RSV)の逆転写酵素、トリ骨髄芽球症ウイルス(Avian Myeloblastosis Virus)(AMV)の逆転写酵素、トリ(ニワトリ)赤芽球症ウイルス(Avian Erythroblastosis Virus)(AEV)ヘルパーウイルスMCAVの逆転写酵素、トリ骨髄球腫症ウイルス(Avian Myelocytomatosis Virus)MC29ヘルパーウイルスMCAVの逆転写酵素、トリ細網内皮症ウイルス(Avian Reticuloendotheliosis Virus)(REV−T)ヘルパーウイルスREV−Aの逆転写酵素、トリ肉腫ウイルス(Avian Sarcoma Virus)UR2のヘルパーウイルスUR2AVの逆転写酵素、トリ肉腫ウイルスY73のヘルパーウイルスYAVの逆転写酵素、ラウス随伴ウイルス(Rous Associated Virus)(RAV)の逆転写酵素、および骨髄芽球症随伴ウイルス(Myeloblastosis Associated Virus)(MAV)の逆転写酵素を含む逆転写酵素を含む、変異体逆転写酵素ポリメラーゼが、本発明の組成物において適切に用いられ得るということを認識する。
【0142】
本発明の組成物の酵素は、まだ単離されていない逆転写酵素を含んでもよい。
【0143】
酵素の熱安定性を増大しようと企図して、Bacillus stearothermophilusのカタラーゼIのC末端に対してランダム配列を有するペプチドテールの付加を使用する方法が記載されている(Matsuura et al.,1999 Nature Biotechnology 17:58)。本発明は、C末端伸長を含む変異体逆転写酵素を意図する。
【0144】
本明細書において用いる場合、「C末端伸長(C−terminal extension)」とは、ランダムな配列のペプチドテールをいう。C末端伸長は好ましくは1〜500個のアミノ酸,より好ましくは1〜100個のアミノ酸,そして最も好ましくは2〜50個のアミノ酸である。
【0145】
(III.熱安定性の増大について変異体を評価する方法)
当分野で公知のとおり、または本明細書において記載されたとおり生成され、そして細菌で発現されたランダムなまたは部位特異的な変異体は、いくつかの異なるアッセイによってRT活性およびRT活性の安定性の増大についてスクリーニングしてもよい。好ましくは、RT酵素は、本明細書において下の実施例3に記載されるようなRT熱安定性のスクリーニングにおいてスクリーニングされる。
【0146】
(IV.本発明による野性型または変異体酵素の発現)
当分野で公知の方法は、本発明による変異型の逆転写酵素を発現して単離するために適用され得る。本明細書に記載される方法はまた、本発明において有用な野性型酵素の発現にも適用され得る。多くの細菌発現ベクターは、外来の配列によってコードされるタンパク質の高レベルの誘導性発現を可能にする配列エレメントまたは配列エレメントの組み合わせを含む。例えば、T7 RNAポリメラーゼ遺伝子の組み込まれた誘導性型を発現する細菌を、T7プロモーターに連結された変異型DNAポリメラーゼ遺伝子を保有する発現ベクターで形質転換してもよい。適切な誘導因子、例えば、lac誘導性プロモーターについてのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によるT7 RNAポリメラーゼの誘導によって、T7プロモーターからの変異された遺伝子の高レベル発現が誘導される。
【0147】
細菌の適切な宿主株は、当業者によって当分野で入手可能な宿主株から選択され得る。非限定的な例として、E.coli株BL−21が外来性のタンパク質の発現のために通常用いられる。なぜならこの株は、E.coliの他の株に比べてプロテアーゼ欠損であるからである。誘導性T7 RNAポリメラーゼ遺伝子を保有するBL−21株としては、WJ56およびER2566が挙げられる(Gardner & Jack,1999,前出)。特定の逆転写酵素遺伝子についてのコドン用法がE.coli遺伝子で通常みられるものと異なる状況については、tRNAをコードするtRNA遺伝子をまれなアンチコドン(例えば、argU、ileY、leuWおよびproL tRNA遺伝子)とともに担持するように改変されているBL−21の株があり、これによってクローニングされたタンパク質遺伝子、例えば、クローニングされた古細菌酵素遺伝子の高度に効率的な発現が可能になる(まれなコドンtRNAを担持しているいくつかのBL21−CODON PLUSTM細胞株は、例えば、Stratageneから入手可能である)。
【0148】
(V.本発明の適用)
(cDNA合成)
本発明によれば、cDNA分子(一本鎖または二本鎖)は、種々の核酸テンプレート分子から調製され得る。本発明における使用のための好ましい核酸分子としては、一本鎖または二本鎖のDNAおよびRNA分子、ならびに二本鎖のDNA:RNAハイブリッドが挙げられる。より好ましい核酸分子としては、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)分子が挙げられるが、mRNA分子が、本発明による好ましいテンプレートである。
【0149】
本発明は、特異性および正確性が増大しているcDNA合成のための組成物および方法を提供する。本発明は、高い忠実度のcDNA合成のための組成物および方法を提供する。本発明の組成物および方法はまた、逆転写の効率および合成されるcDNAの長さを増大し得る。結果として、合成されたcDNAの忠実度、効率および引き続く操作(例えば、増幅、配列決定、クローニングなど)の収率も増大する。本発明の方法に従ってcDNA分子を調製するために用いられる核酸分子は、当業者に周知である標準的な有機化学合成方法に従って合成的に調製されてもよい。より好ましくは、この核酸分子は、種々の細胞、組織、器官または生物体のような天然の供給源から得ることができる。核酸分子の供給源として用いられ得る細胞は、原核生物(限定はしないが、エシェリキア属(Escherichia)、バシラス属(Bacillus)、セラチア属(Serratia)、サルモネラ属(Salmonella)、スタヒロコッカス(ブドウ球菌)属(Staphylococcus)、連鎖球菌属(Streptococcus)、クロストリジウム属(Clostridium)、クラミジア属(Chlamydia)、ナイセリア属(Neisseria)、トレポネーマ属(Treponema)、マイコプラズマ属(Mycoplasma)、ボレリア属(Borrelia)、レジオネラ属(Legionella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、エルビニア属(Erwinia)、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)、根粒菌属(Rhizobium)、キサントモナス属(Xanthomonas)およびストレプトマイセス属(Streptomyces)の種を含む細菌細胞)、または真核生物(真菌(特に酵母)を含む)、植物、原生動物および他の寄生生物、ならびに昆虫(特にDrosophila spp.細胞)、線虫(特に、Caenorhabditis elegans細胞)および哺乳動物(特にヒト細胞)を含む動物であってもよい。
【0150】
核酸の供給源として用いられ得る哺乳動物の体細胞としては、血球(網状赤血球および白血球)、内皮細胞、上皮細胞、神経細胞(中枢神経系または末梢神経系由来)、筋細胞(骨格筋、平滑筋または心筋由来の筋細胞および筋芽細胞を含む)、結合組織細胞(線維芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、軟骨芽細胞、骨細胞および骨芽細胞を含む)および他の間質細胞(例えば、マクロファージ、樹状細胞、シュワン細胞)が挙げられる。哺乳動物の生殖細胞(精母細胞および卵母細胞)はまた、本発明における使用のための核酸の供給源として用いられ得、上記の体細胞および生殖細胞を生じさせる前駆体(progenitor)、前駆体(precursor)および幹細胞も同様であり得る。また、核酸供給源としての使用に適切なのは、哺乳動物の組織または器官、例えば、脳、腎臓、肝臓、膵臓、血液、骨髄、筋、神経、皮膚、尿生殖器、循環器、リンパ系、胃腸、および結合組織源由来の組織または器官、ならびに哺乳動物(ヒトを含む)の胚または胎児由来の組織または器官である。
【0151】
任意の上記の原核生物または真核生物の細胞、組織および器官は、正常でも、疾患でも、形質転換されても、樹立されても、前駆体(progenitors)でも、前駆体(precursors)でも、胎児性でもまたは胚性であってもよい。疾患の細胞としては、例えば、感染性疾患(細菌、真菌または酵母、ウイルス(AIDS、HIV、HTLV、ヘルペス、肝炎などを含む)または寄生生物によって起こる)に、遺伝的なまたは生化学的な病理(例えば、嚢胞性線維症、血友病、アルツハイマー病、筋ジストロフィーまたは多発性硬化症)に、またはガンの過程に関与する細胞を挙げることができる。形質転換されたまたは樹立された動物細胞株としては、例えば、COS細胞、CHO細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、HepG2細胞、K562細胞、293細胞、L929細胞、F9細胞などを挙げることができる。本発明における使用のための核酸の供給源として適切な他の細胞、細胞株、組織、器官および生物体は、当業者に明らかである。
【0152】
一旦、出発する細胞、組織、器官または他のサンプルを得れば、それから核酸分子(例えば、mRNA)を、当分野で周知である方法によって単離してもよい(例えば、Maniatis,T.,et al.,Cell 15:687−701(1978);Okayama,H.,およびBerg,P.,Mol.Cell.Biol.2:161−170(1982);Gubler,U.,and Hoffman,B.J.,Gene 25:263−269(1983)を参照のこと)。次いで、このように単離した核酸分子を用いてcDNA分子およびcDNAライブラリーを本発明に従って調製してもよい。
【0153】
本発明の実施において、cDNA分子またはcDNAライブラリーは、上記のように得られた1つ以上の核酸であって、好ましくは1つ以上のmRNA分子、例えば、mRNA分子の集団である核酸分子と、本発明の組成物とを、cDNA分子(一本鎖または二本鎖)を形成するための組成物の酵素の作用による核酸分子の逆転写に好都合な条件下で混合することによって生成され得る。従って、本発明の方法は、(a)1つ以上の核酸テンプレート(好ましくは、1つ以上のRNAまたはmRNAテンプレート、例えば、mRNA分子の集団)と本発明の変異体RTとを混合する工程と、(b)cDNA合成を例えば、1つ以上のテンプレートの全てまたは一部に対して可能にするのに十分な条件下でこの混合物をインキュベートする工程とを含む。
【0154】
本発明の組成物を、cDNA合成の方法、例えば、下の実施例に記載される方法、または当分野で周知の他の方法(例えば、Gubler,U.,およびHoffman,B.J.,Gene 25:263−269(1983);Krug,M.S.,およびBerger,S.L.,Meth.Enzymol.152:316−325(1987);Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press,pp.8.60−8.63(1989)を参照のこと)と組み合わせて用いて、cDNA分子またはライブラリーを生成してもよい。
【0155】
本発明は、当分野で公知であるような第一鎖および第二鎖のcDNAをさらに生成するこのような方法に関する。本発明によれば、この方法によって生成される第一および第二の鎖のcDNAは、二本鎖のDNA分子を形成し得、このDNA分子は全長cDNA分子であってもよい。
【0156】
本発明に有利であり得るcDNA合成の他の方法は、当業者に容易に明らかである。
【0157】
(合成cDNAの引き続く操作)
本発明によってcDNA分子またはライブラリーを得れば、これらのcDNAは、単離してもよいし、またはこのcDNAを含む反応混合物をさらなる分析または操作のために直接用いてもよい。cDNAの精製のための詳細な方法論は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれるGENETRAPPER(商標)マニュアル(Invitrogen,Inc.Carlsbad,CA)に教示されるが、cDNA単離の別の標準的な技術、例えば、下の実施例に記載される技術または当分野で公知である他の技術(例えば、Sambrook,J.,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor,N.Y.:Cold Spring Harbor Laboratory Press,pp.8.60−8.63(1989)を参照のこと)を用いてもよい。
【0158】
本発明の別の態様では、本発明は、核酸分子を増幅するための方法に用いられ得る。本発明の態様による核酸増幅方法は、1工程(例えば、1工程RT−PCR)反応であっても、または2工程(例えば、2工程RT−PCR)反応であってもよい。本発明によれば、1工程RT−PCRタイプの反応は、1チューブで達成して、それによって混入の可能性を低くしてもよい。このような1工程反応は、(a)核酸テンプレート(例えば、mRNA)と本発明の酵素とを混合する工程と、(b)この混合物を増幅させるのに十分な条件下でインキュベートさせる工程とを含む。2工程RT−PCR反応は、2つの別の工程で達成され得る。このような方法は、(a)核酸テンプレート(例えば、mRNA)と本発明の酵素とを混合する工程と、(b)この混合物をcDNA合成を可能にするのに十分な条件下でインキュベートさせる工程と、(c)1つ以上のDNAポリメラーゼを(b)における反応混合物と混合させる工程と、(d)増幅を可能にするのに十分な条件下で工程(c)の混合物をインキュベートする工程とを含む。長い核酸分子(すなわち、長さが約3−5Kbより大きい)の増幅のためには、DNAポリメラーゼの組み合わせ、例えば、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有する1つのDNAポリメラーゼと、3’−5’エキソヌクレアーゼ活性が減少している別のDNAポリメラーゼとの組み合わせを用いてもよい。
【0159】
本発明に従って用いられ得る増幅方法としては、PCR(例えば、米国特許第4,683,195号および同第4,683,202号)、鎖置換増幅(Strand Displacement Amplification)(SDA;例えば、米国特許第5,455,166号;欧州特許第0684315号)、および核酸配列ベースの増幅(Nucleic Acid Sequence−Based Amplification)(NASBA;例えば、米国特許第5,409,818号;欧州特許0329822号)が挙げられる。特に好ましい態様では、本発明は、1つ以上のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、例えば、任意の上記のPCRベースの方法を含む核酸分子を増幅する方法で用いられ得る。全ての引用文献は参照によって全体として組み込まれる。
【0160】
種々の特異的なPCR増幅適用が当分野で利用可能である(概説としては、例えば、Erlich,1999,Rev Immunogenet.,1:127−34;Prediger 2001,Methods Mol.Biol.160:49−63;Jurecic et al.,2000,Curr.Opin.Microbiol.3:316−21;Triglia,2000,Methods Mol.Biol.130:79−83;MaClelland et al.,1994,PCR Methods Appl.4:S66−81;Abramson and Myers,1993,Current Opinion in Biotechnology 4:41−47を参照のこと;その各々は参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0161】
本発明は、限定はしないが以下を含む、PCR適用において用いられ得る、i)非特異的な増幅を減少させるホット−スタート(hot−start)PCR;ii)高アニーリング温度で開始して、次いで段階的にアニーリング温度を下げて非特異的なPCR産物を減らす、タッチダウン(touch−down)PCR;iii)プライマーの外部セットおよびプライマーの内部セットを用いてより信頼できる生成物を合成するネスト化PCR;iv)公知の配列に隣接する領域の増幅のためのインバース(inverse)PCR。この方法では、DNAを消化して所望のフラグメントをライゲーションによって環化して、次いで外向きに伸長する公知の配列に相補的なプライマーを用いるPCRをする;v)AP−PCR(恣意的プライマー(arbitrary primed))/RAPD(ランダム増幅ポリマーDNA(random amplified polymorphic DNA))。これらの方法は、恣意的なオリゴヌクレオチドを用いて増幅することによってほとんど未知の標的配列を有する種からゲノムフィンガープリントを行う;vi)次にPCRに用いられるcDNAを合成するためのRNA指向性DNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素)を用いるRT−PCR。この方法は、組織または細胞中で特定の配列の発現を検出するために極めて鋭敏である。これはまたmRNA転写物を定量するためにも用いられ得る;vii)RACE(cDNA末端の迅速増幅(rapid amplification of cDNA ends))。これは、DNA/タンパク質配列についての情報が限られている場合に用いられる。この方法は、各々1つの特異的なプライマーのみ(加えて1つのアダプタープライマー)を用いてcDNAのフラグメントを生成するcDNAの3’または5’末端を増幅する。次いで、重複するRACE生成物を組み合わせて全長cDNAを生成してもよい;viii)異なる組織で示差的に発現される遺伝子を特定するために用いられるDD−PCR(示差的ディスプレイPCR(differential display PCR))。DD−PCRにおける第一の工程は、RT−PCRに関与し、次いで増幅は、短い意図的に非特異的なプライマーを用いて行われる;ix)同じ標本中のDNA配列の2つ以上の固有の標的が同時に増幅されるMultiplex−PCR。1つのDNA配列が、PCRの質を検証するためのコントロールとして用いられ得る;x)同じセットのプライマーについて標的DNA(競合的PCR)と競合する内部コントロールDNA配列(ただしサイズは異なる)を用いる、Q/C−PCR(定量的比較的(Quantitative comparative));xi)遺伝子を合成するために用いられる再帰的(Recursive)PCR。この方法で用いられるオリゴヌクレオチドは、遺伝子のストレッチ(>80塩基)に対して、あるいは、末端重複(約20塩基)を有するセンス鎖に対しておよびアンチセンス鎖に対して相補的である;xii)非対称性のPCR;xiii)インサイチュPCR;xiv)部位特異的なPCR突然変異誘発。
【0162】
本発明は、任意の特定の増幅システムに限定されないことが理解されるべきである。他のシステムが開発される場合、それらのシステムは、本発明の実施によって利益があり得る。
【0163】
本発明におけるテンプレートとしてRNAからcDNAを合成するために用いられるプライマーは、そのプライマーが、テンプレートRNAのものに相補的な核酸配列を有し、かつ用いられる反応条件下でテンプレートRNAにアニーリングし得るオリゴヌクレオチドである限りは、特定のプライマーには限定されない。このプライマーは、ランダム配列(ランダムプライマー)または遺伝子特異的なプライマーを有するオリゴ(dT)またはオリゴヌクレオチドのようなオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0164】
本発明の方法によって調製された核酸分子(例えば、合成されたcDNAまたは増幅された生成物)またはcDNAライブラリーは、例えば、クローニングおよび配列決定(すなわち、核酸分子の核酸配列を決定すること)によって、本発明の配列決定方法によって、またはその他当分野で標準であるものによって(例えば、DNA配列決定の方法に関する、米国特許第4,962,022号および同第5,498,523号を参照のこと)さらに特徴付けられ得る。あるいは、これらの核酸分子は、当分野で周知である方法によるハイブリダイゼーションプローブのような、産業的プロセスにおける種々の物質の製造のために用いられ得る。cDNA由来のハイブリダイゼーションプローブの生成によって、例えば、医学の分野における、例えば、特定の遺伝子マーカー、例えば、ガンのマーカー、感染性もしくは遺伝性の疾患のマーカー、または胚発達のマーカーの存在について患者の細胞または組織を試験する、その能力が得られる。さらに、このようなハイブリダイゼーションプローブは、さらなる特徴づけのための異なる細胞、組織または生物体から調製されるゲノムDNAまたはcDNAライブラリーからDNAフラグメントを単離するために用いられ得る。
【0165】
被験体酵素を用いて生成される増幅産物が、当分野で公知の任意の方法によってクローニングされ得るということが理解される。1実施形態では、本発明は、PCR増幅産物の直接クローニングを可能にする組成物を提供する。
【0166】
PCR産物をクローニングするための最も一般的な方法は、プライマー分子の末端上に隣接する制限部位の組み込みを含む。PCRサイクリングを行って、次いで増幅DNAを精製して、適切なエンドヌクレアーゼで制限して、適切なベクター調製物に連結する。
【0167】
PCR産物を直接クローニングするための方法は、制限認識配列を有するプライマーを調製する必要性を省いて、クローニングのためのPCR産物を調製するための制限工程の必要性を省く。さらに、このような方法で好ましくは、精製工程を介在させることなしにPCR産物を直接クローニングすることが可能になる。
【0168】
米国特許第5,827,657号および同第5,487,993号(全体が本明細書に組み込まれる)は、PCR生成された核酸の3’末端に結合された単一の3’−デオキシ−アデノシン一リン酸(dAMP)残基を利用するDNAポリメラーゼを用いるPCR産物の直接クローニングのための方法を開示する。ベクターは、適切な制限酵素との反応の際に3’末端デオキシ−チミジン一リン酸(dTMP)残基を与える認識配列で調製される。従って、遺伝子のPCR生成されたコピーは、ベクター中に、そこで適切な制限部位を有するプライマーを調製する必要性なしに直接クローニングされ得る。
【0169】
Taq DNAポリメラーゼは、末端トランスフェラーゼ活性を示し、この活性は、テンプレートの非存在下でPCR産物の3’末端に対して単一のdATPを付加する。この活性は、TAクローニング方法の基礎であって、ここではTaqで増幅されたPCR産物が直接、単一の3’dTオーバーハングを含むベクターに連結される。Pfu DNAポリメラーゼは他方では、末端トランスフェラーゼ活性を欠き、従って、ブラント・エンドの(blunt−ended)ベクターに効率的にクローニングされる、ブラント・エンドのPCR産物を生成する。
【0170】
1実施形態では、本発明は、ウラシル検出活性が減少した変異体DNAポリメラーゼの存在下で生成された、PCR産物を提供し、これを引き続いて、72℃で15〜30分間、dATPの存在下でTaq DNAポリメラーゼとともにインキュベートする。次いで、増幅したDNA産物の末端への3’−dAMPの付加によって、当業者に周知である方法に従うTAクローニングベクターへのクローニングが可能になる。
【0171】
本発明の核酸分子(例えば、合成されたcDNAまたは増幅された産物)はまた、組み換えDNA方法における使用のための組成物を調製するために用いられてもよい。従って本発明は、本発明のcDNAまたは増幅された核酸分子を含む組み換えベクターに、この組み換えベクターで遺伝子操作される宿主細胞に、これらのベクターおよび宿主細胞を用いる組み換えポリペプチドの生成のための方法に、そしてこれらの方法を用いて生成された組み換えポリペプチドに関する。
【0172】
組み換えベクターは、当分野で周知である方法を用いて、本発明の方法に従って調製された1つ以上のcDNA分子または増幅された核酸分子をベクターに挿入することによって、本発明のこの態様に従って生成され得る。本発明のこの態様で用いられるベクターは、例えば、ファージまたはプラスミドであってもよく、そして好ましくはプラスミドである。好ましいのは、目的のポリペプチドをコードする核酸に対するシス作用性コントロール領域を含むベクターである。適切なトランス作用因子は、宿主によって供給されてもよく、補完性のベクターによって供給されてもよく、または宿主への導入の際にベクター自体によって供給されてもよい。
【0173】
これに関する特に好ましい実施形態では、このベクターは、誘導性であっても、および/または細胞タイプ特異的であってもよい、特異的な発現を提供する(従って、「発現ベクター(expression vectors)」と呼ばれる)。このようなベクターのなかで特に好ましいのは、温度および栄養素添加物のような、操作の容易である環境要因によって誘導性であるベクターである。
【0174】
本発明において有用な発現ベクターとしては、染色体由来、エピソーム由来およびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミドまたはバクテリオファージ由来のベクター、ならびにその組み合わせ由来のベクター、例えば、コスミドおよびファージミドが挙げられ、そして好ましくは、細菌宿主細胞における培養のためのテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子のような少なくとも1つの選択マーカーが挙げられる。このような発現ベクターへの挿入の前に、本発明のcDNAまたは増幅された核酸分子は、適切なプロモーター、例えば、ファージλPLプロモーター、E coliのlac、trpおよびtacプロモーターに作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターが当業者に公知である。
【0175】
なかでも本発明における使用に好ましいベクターとしては、Qiagenから入手可能なpQE70、pQE60およびpQE−9;Stratageneから入手可能なpBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A;Invitrogenから入手可能なpcDNA3;Pharmaciaから入手可能なpGEX、pTrxfus、pTrc99a、pET−5、pET−9、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5;ならびにLife Technologies,Inc.から入手可能なpSPORTl、pSPORT2およびpSV.multidot.SPORT1が挙げられる。他の適切なベクターは、当業者に容易に明白である。
【0176】
本発明はまた、本発明のcDNA分子、増幅された核酸分子または組み換えベクターを含む組み換え宿主細胞を生成する方法、ならびにこのような方法によって生成される宿主細胞を提供する。本発明によって生成され得る代表的な宿主細胞(原核生物または真核生物)としては、限定はしないが、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞および動物細胞が挙げられる。好ましい細菌宿主細胞としては、Escherichia coliの細胞(最も好ましくは、市販されているE.coli株DH10BおよびStb12(Life Technologies,Inc;Rockville,Md.))、Bacillus subtilis細胞、Bacillus megaterium細胞、Streptomyces spp.細胞、Erwinia spp.細胞、Klebsiella spp.細胞およびSalmonella typhimurium細胞が挙げられる。好ましい動物宿主細胞としては、昆虫細胞(最も好ましくはSpodoptera frugiperdaのSJ9およびSf21細胞ならびにTrichoplusa High−Five細胞)および哺乳動物細胞(最も好ましくはCHO、COS、VERO、BHKおよびヒト細胞)が挙げられる。このような宿主細胞は、当業者に周知である、周知の形質転換、エレクトロポレーションまたはトランスフェクションの技術によって調製されてもよい。
【0177】
さらに、本発明は、組み換えポリペプチドおよびこれらの方法によって生成されたポリペプチドを生成するための方法を提供する。本発明のこの態様によれば、組み換えポリペプチドは、それからのポリペプチドの生成およびポリペプチドの単離に有利である条件下で任意の上記の組み換え宿主細胞を培養することによって生成され得る。組み換え宿主細胞を培養するため、そしてそれからのポリペプチドの生成および単離のための方法は、当業者に周知である。
【0178】
本明細書に記載される方法および適用に対する他の適切な改変および適合は、明白であって、本発明の範囲またはその任意の実施形態から逸脱することなくなされ得るということは当業者には容易に明白である。本発明をここで詳細に記載しているが、同じことが以下の実施例を参照してより明白に理解され、以下の実施例は、例示の目的でのみ本明細書に含まれるものであり、本発明を限定するものではない。
【0179】
(VI.キット)
本発明の組成物は、核酸分子の逆転写、クローニングまたは増幅における使用のためにキットにアセンブルされ得る。本発明のこの態様によるキットは、キャリア手段、例えば、ボックス、カートン、チューブなどを備え、これは、その中の閉じた区画に1つ以上の容器手段、例えば、バイアル、チューブ、アンプル、ボトルなどを有する。本発明のキットはまた、(同じまたは別の容器中に)1つ以上の逆転写酵素、適切な緩衝液、1つ以上のヌクレオチド、および/または1つ以上のプライマー、または本発明の組成物に記載される任意の他の試薬を含んでもよい。
【0180】
本発明のキットは、当分野で公知のとおり合成されたcDNAの引き続く操作を容易にする試薬を含んでもよい。
【実施例】
【0181】
(VII.実施例)
(実施例1.熱安定性スクリーニングのためにRNase HマイナスMMLV−RTポイントミューテーションライブラリーを生成する)
RNase HマイナスMMLV−RT(D524N)遺伝子(2kb)に、製造業者の推奨に従って、GeneMorph Random Mutagenesis Kit(Stratageneカタログ番号200550または600550)およびプライマーpSTRAT−FおよびpSTRAT−R(表2)を用いて突然変異誘発した。変異したPCR産物「メガプライマー(Mega primers)」を用いて、製造業他の推奨に従って、QuikChange Site−directed Mutagenesis Kit(Stratageneカタログ番号200518)を用いて野性型RNase HマイナスMMLV−RT遺伝子を置き換えた。得られたプラスミドをXL−10 Goldコンピテント細胞(Stratageneカタログ番号200317)中にクローニングした。ライブラリーのサイズは5×104(1kbあたり1〜6個の変異を含む)であった。DNAは、StrataPrep Plasmid Miniprep Kit(Stratageneカタログ番号400761)を用いて全体的なライブラリーから抽出した。次いで、このDNAの一部をBL21−DE3−RIL細胞(Stratageneカタログ番号230240)中に形質転換して、5×104のサイズを有するライブラリーを生成した。
【0182】
(結果)
このライブラリー中のクローンは、1kbあたり1〜6個の変異を含んだ。
【0183】
(実施例2.熱安定性スクリーニングのためにRNase HマイナスMMLV−RTランダムC末端伸長ライブラリーを生成する)
プライマーRTSSC12AXhoIおよびRTSSEI−vecF(表2)を用いて、Herculase DNAポリメラーゼ(Stratageneカタログ番号600260)を用いて、RNase HマイナスMMLV−RT遺伝子を増幅した。次いで、PCR産物をEcoRIおよびXhoIで消化して、Calmodulin結合単位およびFLAG配列を失っているpCal−n−FLAG(Stratageneカタログ番号214311)中にクローニングした。得られたC末端伸長ライブラリーを、XL−10 Goldコンピテント細胞(Stratageneカタログ番号200317)中にクローニングした。StrataPrep Plasmid Miniprep Kit(Stratageneカタログ番号400761)を用いてライブラリー全体からDNAを抽出して、BL21−DE3−RIL細胞(Stratageneカタログ番号230240)中に形質転換した。
【0184】
(結果)
ライブラリーのサイズは104であった。配列決定した17個のクローンから、12は7〜14個のアミノ酸付加を有し、2つは、1〜2個のアミノ酸付加を有し、1つは18個のアミノ酸付加を有し、1つは30個のアミノ酸付加を有し、そして1つは付加を有さなかった。
【0185】
(実施例3.RT熱安定性スクリーニングアッセイ)
BL21−DE3−RILライブラリー由来の変異体コロニー(ポイントミューテーションでかつC末端伸長ライブラリー)を、100μg/mlのアンピシリンおよび35μg/mlのクロラムフェニコール(Costar96ウェルプレート(29444−102))を含有する120μlのLB培地に接種して、37℃で一晩増殖させた。これらの培養物の10μlを、100μg/mlのアンピシリン、35μg/mlのクロラムフェニコール、および1mMのIPTGを含有する110μlのLB培地中に接種して(Costar 96ウェルプレート(29444−102))、一晩増殖させた。細胞を、30μlの溶解緩衝液(125mMのTris(pH8)、4.5%グルコース、50mMのEDTA、2.5%のTriton、5mg/mlのリゾチームおよび50mMのDTT)を用いて溶解した。10μlの溶解物を、50mMのTris(pH8.3)、75mMのKCl、8mMのMgCl2、2μgのポリ(rC)、0.5μgのオリゴ(dG)、10mMのDTT、50mMのdGTP、および0.5μCiのα33pdGTPを含有する50μlのアッセイ中で用いた。反応は、42℃または55℃で60分間インキュベートした(図1)。これらの反応物の4μlをDE−81フィルターにスポットして、乾燥させた。次いで、このフィルターを2×SSCで5回洗浄して乾燥した。次いで、このフィルターをKodak BioMax MR−1フィルム(VWR IB8941114))に一晩露光させた。
【0186】
(結果)
ポイントミューテーションライブラリー由来の3400個のクローンを、上記の熱安定性アッセイを用いてスクリーニングした。WTの酵素に比較して55℃でより高い活性を示す変異体(図1)を選択して、同じRT活性アッセイを3回以上用いて再スクリーニングした。最も活性の高い変異体を選択して、配列決定して、His−tag精製した(実施例6のとおり)。変異E69K、L435M、N454KおよびM651Lを発見して、それらの52℃/42℃でのRT活性(実施例4のとおり)をWTの酵素と比較した(図2)。全てのHisタグ化精製変異体が、WTの酵素に比較して52℃/42℃でより高い活性を示した。
【0187】
C末端伸長ライブラリー由来の4000個のクローンをまた、上記の熱安定性アッセイを用いてスクリーニングした。WT酵素に比較して55℃で高い活性を示す変異体を選択して、同じRT活性アッセイをさらに3回用いて再スクリーニングした。最高の変異体を選択して、配列決定して、His−tag精製した(実施例6のとおり)。マルチペプチドテール(multiple peptide tails)は、WTの酵素に比較して52℃/42℃でRTの活性(実施例4にアッセイされるとおり)を増大した(図3)。
【0188】
(実施例4.RT活性アッセイ:)
His−tag精製したWTおよび変異体についてのRNA依存性DNA重合化アッセイを以下のとおり行なった。各々の酵素の約5単位(SDS−PAGEゲル上のタンパク質の等価量)を、50mMのTris(pH8.3)、75mMのKCl、8mMのMgCl2、2μgのポリ(rC)、0.5μgのオリゴ(dG)、10mMのDTT、50mMのdGTP、および0.5μCiのα33pdGTPを含有する50μlのアッセイ中で用いた。反応物は、42℃または52℃で30分間インキュベートした。これらの反応物の5μlをDE−81フィルターにスポットして、乾燥させた。次いで、このフィルターを2×SSCで5回洗浄し、続いて100%エタノールで短時間洗浄した。次いで、このフィルターを乾燥させた。取り込まれた放射能をシンチレーションカウンティングによって測定した。酵素を欠く反応物を、サンプルインキュベーションとともに設定して、「総cpm(total cpms)」(フィルター洗浄工程省略)および「最小cpm(minimum cpms)」(上記のとおりフィルターを洗浄する)を決定した。最小cpmをサンプルcpmから差引きして、「補正したcpm(corrected cpms)」を決定した。
【0189】
(実施例5.各々の部位で独立して最高の変異を特定する推定の「熱安定性(thermostability)」残基での飽和突然変異誘発)
飽和突然変異誘発は、製造業者の推奨に従って、QuikChange部位特異的突然変異誘発キット(Site−directed Mutagenesis Kit)(Stratageneカタログ番号200518)、およびE69、E302、F303、G305、W313、L435、N454、M651(表2)に縮重部位を含むプライマーを用いて行った。あらゆるライブラリーからの200個のクローンをスクリーニングした(実施例3のとおり)。55℃で最高の活性を有する変異体を選択して、配列決定した。
【0190】
(結果)
以下の変異は、55℃で最高の活性を示す:
E69K、E302K、E302R、W313F、L435M、L435G、N454K、N454R、M651L。
【0191】
(実施例6.熱安定性変異の組み合わせ)
QuikChange Multi Site−directed Mutagenesis Kit(Stratageneカタログ番号200514)を4つのプライマー(表2)とともに用いて、変異E69K、W313F、L435G、およびN454Kを、既にE302R変異体を含んだRNase HマイナスMMLV−RT遺伝子に導入した。10個のクローンを配列決定した。
(結果)
以下の組み合わせを得た。
クローン1:E302R/E69K/W313F/L435G/N454K
RKFGK(配列番号36)
クローン2:E302R/W313F/L435G/N454K
RFGK(配列番号37)
クローン3:E302R/W313F/L435G
RFG
クローン4:E302R/E69K/N454K
RKK
クローン5:E302R/W313F
RF
【0192】
活性アッセイ(実施例3と同様−DE−81フィルターおよびポリ(rC):オリゴ(dG)18を用いる)を42℃および57℃で行って、その結果(図4)、野性型酵素に比較して単一または複数の変異を含むクローンについて57℃でより高い活性が示される。
【0193】
(実施例7.ポリ(A)RNAラダーを用いる活性アッセイ:)
全長cDNAプロファイリングは、ポリ(A)テールのRNAラダー(Ambion#7150)を用いて、WT RT対RKFGK変異体RT(His−tag化タンパク質)について行った。反応物は、2μgのRNAラダー、0.5μgのオリゴ(dT)18、3.2mMのdNTPおよび約100単位の酵素(SDS−PAGEゲル上で等価なタンパク質量)を、3または6mMのMg2+を含有する1×StrataScript緩衝液中に含んだ。反応物は、42℃、50℃、および52℃で60分間インキュベートして、1%のアルカリアガロースゲル上で泳動して、SYBR Goldで染色した。
【0194】
(結果)
RKFGK(配列番号36)変異体RTは、WT酵素に比較してより高温(52℃)でより長いcDNAラダーを生成する(図5)。
【0195】
(実施例8.最終構築物の精製および熱安定性の比較:)
3つのHisタグ化構築物であって、RNase HマイナスMMLV−RT(D524N)、RNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)、およびRNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)プラスC末端伸長(RDRNKNNDRRKAKENE)(配列番号1)を含む構築物を、QIAexpressionist(Qiagen)に従って発現および精製した。ポリ(rC):ポリ(dG)を用いるRT活性アッセイは、実施例4と同様に行った。
【0196】
(結果)
C末端伸長(RDRNKNNDRRKAKENE)(配列番号1)を有するRNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)が、55℃および60℃で最高の活性を示す(図6)。
【0197】
(実施例9.半減期決定:)
本発明の変異体逆転写酵素の半減期は以下のとおり決定した。
【0198】
3つの非Hisタグ化構築物であって、RNase HマイナスMMLV−RT(D524N)(図7A、プロット1)、RNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)(図7B、プロット2)、およびRNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)プラスC末端伸長(RDRNKNNDRRKAKENE)(配列番号1)(図7C、プロット3)を含む構築物を以下のとおりアッセイした。2μgのpoly(rC)、0.5μgのオリゴ(dG)18の存在下で各々の酵素の0.5pmolを含む混合物を、プロットに示されるとおり種々の時間55℃でインキュベートした。インキュベーションは、氷上にチューブを置くことによって停止させた。50mMのTris(pH8.3)、75mMのKCl、3mMのMgCl2、10mMのDTT、50mMのdGTP、および0.5μCiのα33pdGTP中で残留活性についてアリコートをアッセイした。反応物を42℃で30分間インキュベートした。これらの反応物の5μlを、DE−81フィルター上にスポットして、乾燥させた。次いで、このフィルターを2×SSCを用いて5回洗浄し、続いて100%のエタノールで短時間洗浄した。次いで、このフィルターを乾燥させた。取り込まれた放射能を、シンチレーションカウンティングによって測定した。酵素を欠く反応物を、サンプルインキュベーションとともに設定して、「総cpm(total cpms)」(フィルター洗浄工程省略)および「最小cpm(minimum cpms)」(上記のとおりフィルターを洗浄する)を決定した。最小cpmをサンプルcpmから差引きして、「補正したcpm(corrected cpms)」を決定した。
【0199】
(結果)
RNase HマイナスMMLV−RT(D524N)の半減期(図7A、プロット1)は、5分未満であるが、RNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)の半減期(図7B、プロット2)は、30分より大きく、RNase HマイナスMMLV−RT(D524N、E302R、E69K、W313F、L435G、N454K)プラスC末端伸長(RDRNKNNDRRKAKENE)(配列番号1)の半減期(図7C、プロット3)は、55℃で約30分である。
【0200】
【表2】

【0201】
本明細書に組み込まれる全ての特許、特許出願および公表された引用文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明は、その好ましい実施形態を参照して詳細に示されかつ記載されているが、形態および詳細における種々の変化が、添付の特許請求の範囲によって含まれる本発明の範囲から逸脱することなく本発明においてなされ得るということが当業者によって理解される。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】MMLV−RT熱安定性スクリーニングの結果を示す。
【図2】Hisタグ化精製されたMMLV−RTポイントミューテーションの熱安定性を示す。
【図3】C末端伸長した変異体の熱安定性を示す。
【図4】複数の変異を有するRTについての活性アッセイの結果を示す。
【図5】Hisタグ化変異体RTによるcDNAラダー合成を示す。
【図6】本発明の変異体RTの熱安定性を示す。
【図7】本発明による変異体RTの半減期を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つのアミノ酸に変異を含む変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項2】
逆転写酵素が、E69の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からアルギニンへの変異、W313の位置でトリプトファンからフェニルアラニンへの変異、L435の位置でロイシンからグリシンへの変異、L435の位置でロイシンからメチオニンへの変異、N454の位置でアスパラギンからリジンへの変異、N454の位置でアスパラギンからアルギニンへの変異、およびM651の位置でメチオニンからロイシンへの変異のうちの少なくとも1つを含む変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項3】
変異体が、E302R、E69K、W313F、L435G及びN454Kの変異と、E302R、W313F、L435G及びN454Kの変異と、E302R、W313F及びL435Gの変異と、E302R、E69K及びN454Kの変異と、E302R及びW313Fの変異と、並びにE69K、E302R、W313F、L435G、N454K及びD524Nの変異からなる群より選択される変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項4】
C末端伸長をさらに含む請求項1に記載の変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項5】
前記C末端伸長が、RDRNKNNDRRKAKENEである請求項4に記載の変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項6】
前記逆転写酵素がRNase H活性を欠く請求項1に記載の変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項7】
安定性の増大、正確性の増大、プロセッシビティーの増大および特異性の増大のうちの少なくとも1つをさらに含む請求項1に記載の変異体MMLV逆転写酵素。
【請求項8】
E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つのアミノ酸に変異を含む、変異体MMLV逆転写酵素をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項9】
変異体MMLV逆転写酵素をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記逆転写酵素が、E69の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からアルギニンへの変異、W313の位置でトリプトファンからフェニルアラニンへの変異、L435の位置でロイシンからグリシンへの変異、L435の位置でロイシンからメチオニンへの変異、N454の位置でアスパラギンからリジンへの変異、N454の位置でアスパラギンからアルギニンへの変異、およびM651の位置でメチオニンからロイシンへの変異のうち少なくとも1つを含む単離されたポリヌクレオチド。
【請求項10】
変異体MMLV逆転写酵素をコードする核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、前記変異体が、E302R、E69K、W313F、L435G、及びN454Kの変異と、E302R、W313F、L435G、及びN454Kの変異と、E302R、W313F、及びL435Gの変異と、E302R、E69K、及びN454Kの変異と、E302R及びW313Fの変異と、並びにE69K、E302R、W313F、L435G、N454K、及びD524Nの変異からなる群より選択される単離されたポリヌクレオチド。
【請求項11】
C末端伸長をさらにコードする請求項8に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記C末端伸長が、RDRNKNNDRRKAKENEである請求項11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
【請求項13】
E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つのアミノ酸に変異を含む変異体MMLV逆転写酵素を含む組成物。
【請求項14】
変異体MMLV逆転写酵素を含む組成物であって、前記逆転写酵素が、E69の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からアルギニンへの変異、W313の位置でトリプトファンからフェニルアラニンへの変異、L435の位置でロイシンからグリシンへの変異、L435の位置でロイシンからメチオニンへの変異、N454の位置でアスパラギンからリジンへの変異、N454の位置でアスパラギンからアルギニンへの変異、およびM651の位置でメチオニンからロイシンへの変異のうち少なくとも1つを含む組成物。
【請求項15】
変異体MMLV逆転写酵素を含む組成物であって、前記変異体が、E302R、E69K、W313F、L435G、及びN454Kの変異と、E302R、W313F、L435G、及びN454Kの変異と、E302R、W313F、及びL435Gの変異と、E302R、E69K、及びN454Kの変異と、E302R及びW313Fの変異と、並びにE69K、E302R、W313F、L435G、N454K、及びD524Nの変異からなる群より選択される、組成物。
【請求項16】
C末端伸長をさらに含む請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記C末端伸長が、RDRNKNNDRRKAKENEである請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
安定性の増大、正確性の増大、プロセッシビティーの増大および特異性の増大のうちの少なくとも1つをさらに含む、求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記逆転写酵素がRNase H活性を欠く請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
真正細菌由来のεサブユニットをさらに含む請求項13に記載の組成物。
【請求項21】
前記εサブユニットが、大腸菌由来である請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記εサブユニットが、大腸菌由来のε186である請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
ホルムアミド、ベタインまたはDMSOをさらに含む請求項13に記載の組成物。
【請求項24】
E69、E302、W313、L435、N454およびM651のうちの少なくとも1つのアミノ酸に変異を含む変異体MMLV逆転写酵素と、そのパッケージング材料とを含むキット。
【請求項25】
変異体MMLV逆転写酵素と、そのパッケージング材料とを含むキットであって、前記逆転写酵素が、E69の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からリジンへの変異、E302の位置でグルタミン酸からアルギニンへの変異、W313の位置でトリプトファンからフェニルアラニンへの変異、L435の位置でロイシンからグリシンへの変異、L435の位置でロイシンからメチオニンへの変異、N454の位置でアスパラギンからリジンへの変異、N454の位置でアスパラギンからアルギニンへの変異、およびM651の位置でメチオニンからロイシンへの変異のうちの少なくとも1つを含むキット。
【請求項26】
変異体MMLV逆転写酵素と、そのパッケージング材料とを含むキットであって、前記変異体が、E302R、E69K、W313F、L435G、及びN454Kの変異と、E302R、W313F、L435G、及びN454Kの変異と、E302R、W313F、及びL435Gの変異と、E302R、E69K、及びN454Kの変異と、E302R及びW313Fの変異と、並びにE69K、E302R、W313F、L435G、N454K、及びD524Nからなる群より選択されるキット。
【請求項27】
前記逆転写酵素がRNase H活性を欠く請求項24に記載のキット。
【請求項28】
前記変異体MMLV逆転写酵素がC末端伸長をさらに含む請求項24に記載のキット。
【請求項29】
前記C末端伸長が、RDRNKNNDRRKAKENEである請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記逆転写酵素が、安定性の増大、正確性の増大、プロセッシビティーの増大および特異性の増大のうちの少なくとも1つをさらに含む請求項24に記載のキット。
【請求項31】
真正細菌由来のεサブユニットをさらに含む請求項24に記載のキット。
【請求項32】
前記εサブユニットが、大腸菌由来である請求項31に記載のキット。
【請求項33】
前記εサブユニットが、大腸菌由来のε186である請求項31に記載のキット。
【請求項34】
ホルムアミド、ベタインまたはDMSOをさらに含む請求項24に記載のキット。
【請求項35】
(a)請求項1に記載の変異体逆転写酵素を準備する工程と;
(b)前記変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させてcDNA合成をする工程と
を含むcDNA合成のための方法。
【請求項36】
(a)請求項1に記載の変異体逆転写酵素を準備する工程と;
(b)前記変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて合成cDNA産物を生成する工程と、
(c)前記合成されたcDNA産物をクローニングベクターに挿入する工程と、
を含むクローニングのための方法。
【請求項37】
(a)請求項1に記載の変異体逆転写酵素を準備する工程と;
(b)前記変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて前記核酸テンプレートを複製および増幅する工程と、
を含むRT−PCRのための方法。
【請求項38】
前記RT−PCRが、エンドポイントRT−PCRを含む請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記RT−PCRが、リアルタイムRT−PCRである請求項37に記載の方法。
【請求項40】
(a)請求項1に記載の変異体逆転写酵素を準備する工程と;
(b)前記変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて合成cDNA産物を生成する工程と、
(c)前記合成されたcDNA産物をベクターに挿入する工程と、
を含むcDNAライブラリー構築のための方法。
【請求項41】
(a)請求項1に記載の変異体逆転写酵素を準備する工程と;
(b)前記変異体逆転写酵素と核酸テンプレートとを接触させて合成cDNA産物を生成する工程と、
(c)前記cDNA産物を基板に結合させる工程と
を含むマイクロアレイを作成するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−504162(P2009−504162A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526271(P2008−526271)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/031567
【国際公開番号】WO2007/022045
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(302019809)ストラタジーン カリフォルニア (23)
【氏名又は名称原語表記】Stratagene California
【Fターム(参考)】